特許第5715689号(P5715689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5715689パーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715689
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】パーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 13/26 20060101AFI20150423BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20150423BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20150423BHJP
   D21H 27/06 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   D21H13/26
   D21H15/02
   D21H27/00 B
   D21H27/06
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-514748(P2013-514748)
(86)(22)【出願日】2011年6月13日
(65)【公表番号】特表2013-533928(P2013-533928A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】FI2011050556
(87)【国際公開番号】WO2011157892
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2013年2月21日
(31)【優先権主張番号】10166077.7
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504029499
【氏名又は名称】アールストロム コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーラ、フェルナンドー
(72)【発明者】
【氏名】プランシャール、エルヴェ
【審査官】 中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−090693(JP,A)
【文献】 特開平06−212593(JP,A)
【文献】 特開2002−317392(JP,A)
【文献】 特開昭57−061798(JP,A)
【文献】 特開平04−262317(JP,A)
【文献】 特開2001−181951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸でパーチメント化した、パーチメント化可能な合成繊維及びフィブリドを含むパーチメント化した繊維質の支持体であって、
該パーチメント化可能な合成繊維及びフィブリドは、アラミド繊維及びアラミドフィブリドを含む、パーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項2】
前記パーチメント化した繊維質の支持体が、
アラミド繊維及びアラミドフィブリド
ポリアミド系繊維材料、ポリエステル系繊維材料、炭素繊維、ガラス繊維、及びそれらの混合物からなる群から選択される合成繊維
を含む、請求項1に記載のパーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項3】
前記繊維質の支持体は、不織支持体である、請求項1又は2に記載のパーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項4】
前記繊維質の支持体は、天然繊維も含む、請求項1〜3のいずれかに記載のパーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項5】
前記繊維質の支持体は、非繊維性物質を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のパーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項6】
前記合成繊維及びフィブリドの重量%が、前記パーチメント化した繊維質の支持体の100重量%である請求項1〜のいずれかに記載のパーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項7】
前記パーチメント化した繊維質の支持体は、
アラミド繊維、
アラミドフィブリド、
天然繊維、及び
有機及び/又は無機の非繊維質フィラー
を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のパーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項8】
前記パーチメント化した繊維質の支持体は、カレンダー加工されている、請求項1〜7のいずれかに記載のパーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項9】
前記パーチメント化した繊維質の支持体は、スーパーカレンダーで、又は80℃から350℃の温度でのホットカレンダーでカレンダー加工されている、請求項8に記載のパーチメント化した繊維質の支持体。
【請求項10】
パーチメント化可能な合成アラミド繊維及びアラミドフィブリドを含む繊維質の支持体を製造し、
繊維質の支持体をHSOで処理することによりパーチメント化し、
場合によって、パーチメント化した繊維質の支持体をカレンダー加工する、
工程によって、請求項1〜9のいずれかに記載のパーチメント化した繊維質の支持体を製造する方法。
【請求項11】
前記繊維質の支持体を、HSOで5〜60秒処理する、請求項10に記載のパーチメント化した繊維質の支持体を製造する方法。
【請求項12】
前記HSOの濃度が、5〜100%である、請求項10又は11に記載のパーチメント化した繊維質の支持体を製造する方法。
【請求項13】
前記HSOの温度が、−20℃〜+50℃である、請求項10〜12の何れか1項に記載のパーチメント化した繊維質の支持体を製造する方法。
【請求項14】
前記繊維質の支持体を、水流交絡(hydroentanglement)によって製造される、請求項10〜13の何れか1項に記載のパーチメント化した繊維質の支持体を製造する方法。
【請求項15】
前記パーチメント化した繊維質の支持体は、一緒にパーチメント化された少なくとも2つの繊維質の支持体を備える、請求項10に記載のパーチメント化した繊維質の支持体を製造する方法。
【請求項16】
電気絶縁体、複合材料、ハニカム、又は濾過装置を製造するための請求項1〜9の何れか1項に記載のパーチメント化した繊維質の支持体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体、及びそのような支持体を作製する関連方法に関する。
本発明の可能性のある用途を幾つか挙げると、電気絶縁体、複合材料、ハニカム、ろ過装置がある。
【背景技術】
【0002】
不織繊維地の一体化は、当該繊維地を加熱又はホットカレンダー加工することによって達成することができ高温でシートをカレンダー加工すると、通常、その強度が増加し、その気孔率が低下するが、加熱だけでは同じ物理的特性を達成するのに十分でないことが証明されている。しなしながら、特定の用途で要求される高気孔率は、なお加熱単独で得られる。温度と圧力の両方が適用された場合、繊維地は、強化された性質を示す。
【0003】
このような特性のために、一般的に、アラミド繊維及びアラミドフィブリドを繊維地に組み込んで、良好な電気絶縁性を示す、強く高温耐性の支持体を調製する。
【0004】
米国特許第5667900号は、高い表面平滑性を持つアラミド支持体を記述する。このペーパーは、メタ−アラミドフィブリドとアラミドフロックを含む層を積層することにより調製される。このペーパーに含まれるアラミドポリマーの性質及び特性は、電気絶縁紙、又は耐熱紙として使用されるのに特に適するものとする。
【0005】
パラ−アラミド繊維を含む積層体は、米国特許第6558512号に教示されている。この積層体は、高強度で、薄く、軽量である。この不織布は、パラ−アラミド繊維のみならず熱硬化性樹脂を含む。
【0006】
米国特許第5948543号に開示されている積層体は、本質的に、パラ‐アラミド繊維及びメタ‐アラミド繊維を含み、これらが樹脂バインダーにより相互に接着されている不織布からなる。更に、メタ‐アラミド繊維の間、及びメタ−アラミド繊維とパラ‐アラミド繊維との間の熱結合が、ホットカレンダー加工によって達成されている。
【0007】
このようなペーパーは、好ましくは完全にアラミド繊維で作られる。なぜなら、無機繊維の存在は気孔率の増加につながる可能性があり、その一方で、良好な電気絶縁性は確かに低い気孔率を要求するからである。
【0008】
一方、ハニカムを作るために使用されるペーパーは、アラミドに加えて、セルロース、ガラス繊維又は炭素繊維を、この特定の用途のための特性に負の影響なしに含められることがある。
【0009】
実際、ペーパーの組成は、意図されている用途に直接関連する。例えば、アラミド系のNomex(登録商標)は、電気絶縁に使用され、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)(=メタ−アラミドポリマー)のフロック及びフィブリドを混合し、混合物をホットプレスカレンダーに供することにより製造される。
【0010】
アラミド製の布地は、高温耐性繊維で作られており、それは、通常アラミド繊維とアラミドフィブリドである。既に述べたように、それらはセルロースなどの他の繊維と組み合わせることがでる。
【0011】
アラミド繊維などの合成繊維を含むこれらの布地は、カレンダー加工されて強化される。通常、樹脂バインダーが要求される。しかし、それによって、アラミド繊維の本来の性質を完全に保持することができなくなる。
【0012】
本出願人は、合成繊維を含む一体化された支持体を開発した。従来技術の標準的な支持体に比べて、その剛性と強度が30%を超えるほど増加している。更には、合成繊維の特性は、この繊維質支持体の製造中に変化しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5667900号
【特許文献2】米国特許第6558512号
【特許文献3】米国特許第5948543号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、類似の先行技術の支持体に比べて、改善された剛性(stiffness)、硬直性(rigidity)及び強度(strength)を発揮する支持体に関する。その多孔性も、特定の用途で要求されるような高い水準で維持することができる。
【0015】
本明細書で用いられる際、用語「支持体」は、「シート」、「布地」、「ペーパー」又は「ウェブ」を意味する。
【0016】
本明細書で用いられる際、用語「剛性(stiffness)」は、曲げに対する耐性又は支持体が自重を支える能力を意味する。一方、用語「硬直性(rigidity)は、付加された曲げ力に耐える特性に関し、これはヤング率に比例する。支持体の強度(strength)は、比破裂強さ(burst index)を乗じた比引裂強さ(tear index)の平方根として定義され、比引裂強さは、支持体を継続的に引き裂くのに必要な力であり、比破裂強さは、支持体が破裂する圧力である。
【0017】
出願人は、繊維質の支持体をパーチメント化すると、支持体の剛性、硬直性及び強度を向上できることを発見した。驚くべきことに、本出願人は、いくつかの合成繊維はパーチメント化できることを見出した。
【0018】
より正確には、本発明は、パーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体に関する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、パーチメント化可能な合成繊維は、アラミド繊維及び/又はアラミドフィブリドなどのアラミド系(aramid based)繊維材料である。
【0020】
好ましくは、本発明のパーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体は不織支持体である。但し、本発明は、織物の支持体にも関する。
【0021】
「不織支持体(non woven support)」は、相互に入り込んでいる(interlaid)ランダムに配列された個々の繊維から製造された材料を意味する。個々の繊維は、例えば、接着剤、熱と圧力、又はニードリングによって一緒に保持することができる。そのような不織支持体を製造するための多くのプロセスは、当業者に利用可能であり、メルトブロープロセス、回転施工(spin laying)プロセス、カーディングプロセス、エア式施工(air laying)プロセス及び湿式施工 (water laying)プロセスがある。本発明においては、個々の繊維は、従来のバインダー(例えば、ラテックス、ポリビニルアルコール、でんぷんなど)によっては相互に保持されない。
【0022】
本発明のパーチメント化した繊維質の不織支持体は、好ましくは、いわゆる湿式プロセス(wet laid process)に従って、水性媒体中で繊維及びフィブリドを混合することによって調製される。繊維質の支持体は、モノ又はマルチレイヤ湿式施工マシンで作製することができる。
【0023】
特に特定しない限り、用語「繊維」は、直径に対する長さの極めて高い比(例えば50/1)によって特徴付けられる材料形態を意味する。本発明においては、適当な繊維の長さは、約0.3cmから約4cmである。
【0024】
当技術分野で知られているように、用語「短繊維(short fibers)」、「フロック(flock)」及び「フロウ(floes)」は、同じ意味を持ち、比較的短い長さの繊維に関し相互交換可能に使用できる。
【0025】
米国特許第2999788号で記載されているように、用語「フィブリド(fibrids)」は、本明細書で使用する際、三つの寸法のうちの少なくとも一つが、最も大きな寸法に対してより小さな寸法である、非常に小さく、非顆粒状(nongranular)で、繊維状又はフィルム状の粒子を意味する。このような粒子は、一般に、高剪断下で、非溶媒物質を用いて高分子材料の溶液を沈殿させることによって調製される。
【0026】
既に述べたように、本発明は、パーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体に関する。
【0027】
従来技術の植物性パーチメントは、例えば、硫酸などのゲル化剤で処理したセルロース系の支持体である。ゲル化剤とセルロースとの反応時間は、セルロースの溶解、加水分解及び分解を制御するために制限される。処理後、ゲル化剤は、処理された支持体を乾燥する前に洗い流される。
【0028】
この処理の間、セルロースは部分的に溶解又はゲル化する。溶解したセルロースは、ゲル化剤が希釈されたり、洗い流されていると、沈殿する。パーチメント化プロセスにより、非常に強靭(tough)で硬く(stiff)滑らかな(smooth)支持体が得られる。
【0029】
ここで、パーチメント化した繊維質の支持体は、好ましくは、その形成後に硫酸浴で処理された支持体である。もっとも、この硫酸処理は、幾つか例を挙げると、スプレー、コーティング装置、プレス装置などの他の手段を用いても行うことができる。
【0030】
硫化プロセスの間、繊維の膨潤及び/又は部分溶解の結果、支持体の可塑化が達成される。しかし、繊維質の支持体の完全な溶解(dissolution)を回避するために、硫酸の濃度と硫酸に晒す時間の両方を監視することが重要である。
実際に、当業者は、支持体の組成に応じて硫酸濃度を調整するだろう。
【0031】
パーチメント化プロセスは、繊維の化学式を変えることなく、繊維の構造を変更することができる。
【0032】
本明細書において用いる際、用語「合成繊維」とは、例えば、ガラス、ポリマー、ポリマー、金属、カーボンの組み合わせなどの人工材料を意味する。合成繊維は、パーチメント化可能なものも、そうでないものもある。
【0033】
本発明において、繊維質の支持体をパーチメント化することは、必ずしも支持体に含まれる種々の繊維の総てを化学修飾することを意味しない。一方、支持体の外観上の特徴は明確に変化し、処理後、支持体は、パーチメント化した支持体で一般的に観察されるガラス状の外観を提示する。しかしながら、繊維及び/又はフィブリドの少なくとも一部が硫酸処理に対して反応したと推定するのが妥当である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、合成繊維を、パーチメント化可能なコーティングでコートされた繊維とすることもできる。実際、硫化工程で、繊維のコアはパーチメント化する必要はなく、その一方で、外層を形成するコーティングは、パーチメント化される。コアはパーチメント化されても、されなくてもよい。
【0035】
既に述べたように、本発明は、パーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体であって、好ましくは不織支持体である繊維質の支持体に関する。それは長繊維及び/又は短繊維及び/又はフィブリドで形成することができる。このような繊維質の支持体は、複数種類の合成繊維を含むことができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、パーチメント化した繊維質の支持体は、特に
−アラミド繊維及び/又はアラミドフィブリドなどのアラミド系繊維材料;
−ポリアミド系繊維材料;
−ポリエステル系繊維材料;
−炭素繊維などの有機系繊維;
−ガラス繊維などの無機系繊維;
− 又はそれらの混合物
を含む群から選択される合成繊維を含むことができる。
【0037】
合成繊維のこのリストは網羅的なものではなく、当業者は、他の適当な合成繊維を選択することができるであろう。
【0038】
繊維質材料とは、ここでは、繊維又はフィブリドを意味する。
【0039】
合成繊維は、好ましくは、平均約3mmから約40mmの長さである。
【0040】
合成繊維は、支持体に幾分の多孔性を付与しながらも、繊維質の支持体の強度を向上させることができる。
【0041】
繊維質の支持体は、無機非繊維質フィラー(例えば、二酸化チタン、マイカ、タルク、クレーなど)、及び/又は有機非繊維質フィラー(例えばポリメチル尿素など)のような非繊維質材料を含むことができる。
【0042】
好ましい実施形態において、パーチメント化した繊維質の支持体に含まれる合成繊維は、フィブリド及び繊維であり、これらはアラミドポリマーであってもよい。アラミド繊維及びアラミドフィブリドは、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)及びこれらの共重合体を含む群から選択することができる。一の興味深い実施形態では、パーチメント化可能な外層と、十分な強度を有する材料のコアを有する2成分繊維を使用する。
【0043】
当業者は、適当なアラミド材料を選択し、適切な重量で混合物を調整して、的確な特性を有するパーチメント化した繊維質の支持体を調製することができる。例えば、一部のアラミドポリマーは、防火性を向上するために特に適しており、他のアラミドポリマーには、耐摩耗性を向上させる得るものがある。
【0044】
パラ−アラミドフィブド又は繊維は、黄色で、高いヤング率を有する。これらは卓越した強度対重量特性を提示する。
【0045】
メタ−アラミド繊維は、白であり、約273℃の軟化点を有する。
【0046】
本明細書において用いる際、用語「アラミドフィブリド」は、芳香族ポリアミドの非顆粒状でフィルム状の粒子を意味する。好ましくは、アラミドポリマーは、320℃を超える分解点を有する。これらは、高い比表面積を持ち、且つ支持体に強度を与える。
【0047】
本発明の特定の実施形態では、アラミド系繊維材料は、アラミドパルプ、即ちファイバートランクに結合している、又はしていない多くのフィブリルを有するアラミド材料とすることができる。フィブリルは細い繊維であり、トランクはフィブリルが結合している幹である。
【0048】
適切な場合、繊維は機械的に処理されて、その繊維質による特徴を増大させることもできる。
【0049】
本発明のパーチメント化した繊維質の支持体は、区別無く、メタ−及び/又はパラ−アラミド繊維及び/又はフィブリドで有り得るアラミド系繊維材料を含むことができる。例えば、本発明は、メタ−アラミド繊維とパラ−アラミドフィブリドの両方を含むパーチメント化した繊維質の支持体に関することがある。
【0050】
適切な場合、他のアラミド材料を、本発明の目的のために考慮することができる。
【0051】
本発明では、合成繊維は、パーチメント化した繊維質の支持体の20〜100重量%であり、好ましくは80〜100重量%であり、より好ましくは95〜100重量%である。
【0052】
本発明の特定の実施形態では、合成繊維は、パーチメント化した繊維質の支持体の100%であり、例えば天然繊維などの追加の繊維を含まない。
【0053】
さらに、特定の支持体の組成物は、アラミド系繊維材料、有利には、アラミド繊維及び/又はアラミドフィブリドである合成繊維のみを含む。結果として、本発明はまた、百パーセントのアラミド系合成繊維からなるパーチメント化した繊維質の支持体に関する。
【0054】
本発明はまた、完全にアラミド繊維で作られた、即ち、アラミド繊維がパーチメント化した繊維質の支持体の100重量%である、パーチメント化した繊維質の支持体に関する。パーチメント化した繊維質の支持体はまた、完全にアラミドフィブリドで作ること、即ちアラミドフィブリドがパーチメント化した繊維質の支持体の100重量%を占めることができる。
【0055】
アラミド繊維の重量パーセントは、有利には、パーチメント化した繊維質の支持体の約20〜約100%の範囲とすることができ、好ましくは約30%〜約100%であり、最も好ましくは約50%〜約100%である。
【0056】
他方、アラミドフィブリドの重量パーセントは、パーチメント化した繊維質の支持体の約20〜約100%の範囲とすることができ、好ましくは約20%〜約100%であり、最も好ましくは約30%〜約100%である。
【0057】
繊維状の支持体はまた、セルロース又は再生セルロースなどの天然繊維を含んでもよい。
【0058】
本明細書で用いる際、用語「セルロース繊維」は、実質的にセルロースからなる繊維を意味する。セルロース繊維は、人工起源(例えば、レーヨン繊維のような再生セルロース繊維)、又は天然起源(木本植物又は非木材植物からのセルロース繊維又はセルロースパルプなど)に由来する。木本植物は、例えば、落葉樹と針葉樹がある。非木材植物としては、例えば、綿、亜麻、エスパルト草、ケナフ、サイザル麻、アバカ、トウワタ、わら、ジュート、大麻、バガスがある。
【0059】
パーチメント化で使用するのに有利なセルロース繊維は、ユーカリ、バーチ、レッドシダー、アバカ、アカシア、亜麻及びリネンを含む。
【0060】
それらはまた、繊維業界で受け入れられていない材料を含む。
【0061】
本明細書で使用される際、用語「セルロースパルプ」は、セルロース繊維又はフィブリル化された人工の繊維を意味し、これらは精製されたり、フィブリル化するための他の特別な処理に供される。
【0062】
天然繊維は、同じ形状、大きさ、又は厚さを有しないので、多様な特性と構造特性を持ち得る。更に、セルロースの重合度は、種類によって大きく異なる。
【0063】
本発明のパーチメント化した繊維質の支持体は、
− アラミド繊維、
− アラミドフィブリド、
− 天然繊維、及び
− 有機及び/又は無機の非繊維質フィラー
を含むことができる。
【0064】
好ましい実施形態では、天然繊維は、パーチメント化した繊維質の支持体の約0〜約80重量%であり、好ましくは約0%〜約40重量%である。
【0065】
好ましい実施形態では、有機及び/又は無機の非繊維質フィラーは、パーチメント化した繊維質の支持体の約0〜約60重量%であり、好ましくは約0〜約30%である。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明のパーチメント化した繊維質の支持体は、カレンダー加工される。この追加の工程は、繊維質の支持体の質感や特性をさらに改善することができる。但し、パーチメント化した繊維質の支持体の剛性、硬直性及び高強度は、カレンダー加工なしで得ることができる。
【0067】
カレンダー加工は、ここでは、不織支持体を対向面の間を通して押圧することで、支持体の表面を平滑化するプロセスを意味する。対向面には、平坦なプラテンローラー、突起を有するローラー及びそれらの組み合わせがある。対向面のどちらか一方又は両方を加熱してもよい。
【0068】
当業者に知られているように、パーチメント化した繊維質の支持体は、スーパーカレンダー、又はホットカレンダーでカレンダー加工することができる。ホットカレンダー工程で達成される温度は、約80℃〜約350℃であり、好ましくは約180℃〜約320℃である。
【0069】
また、本発明は、パーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体を作製する方法であって、
−線維質の支持体を製造し、
−硫酸で処理することにより、当該繊維質の支持体をパーチメント化し、
−場合によって、パーチメント化した繊維質の支持体をカレンダー加工する、
パーチメント化した繊維質の支持体を作製する方法に関する。
【0070】
温度、硫酸濃度、及び処理時間は、繊維質の支持体の組成に応じて調整されるパラメータである。
【0071】
好ましくは、繊維質の支持体のHSO処理は、約5〜約60秒続ける。
【0072】
有利には、HSO濃度は、約50%〜約100%とすることができる。
【0073】
好ましくは、HSOは、約−20℃〜+約50℃の温度である。
【0074】
本発明の特定の実施形態では、繊維質の支持体は、適切な場合、合成繊維と天然繊維の水流交絡処理(hydroentanglement)によって製造される。
【0075】
不織支持体のための他の適当な接合プロセスとは対照的に、水流交絡(hydroentanglement)によって、繊維の特性を正確に反映する軽量な支持体を得ることができる。実際、熱接合では、繊維を共に溶接しこれで繊維間の移動を防止し、一方、ラテックス接合ではポリマー層で繊維が覆われる。
【0076】
本発明の特定の実施形態では、パーチメント化した繊維質の支持体を作製するプロセスは、パーチメント化した繊維質の支持体が、一緒にパーチメント化された少なくとも2つの繊維質の支持体を含むことを特徴とする。
【0077】
本発明の特定の実施形態では、パーチメント化した繊維質の支持体を作製するプロセスは、パーチメント化した繊維質の支持体が、予め別々に、更に一緒にパーチメント化された少なくとも2つの繊維質の支持体を含むことを特徴とする。
【0078】
本発明のさらに特定の実施形態では、パーチメント化した繊維質の支持体は、予めパーチメント化された少なくとも1つの繊維質の支持体と、予めパーチメント化しなかった少なくとも1つの繊維質の支持体を含むことができる。これらの予めパーチメント化された繊維質の支持体と予めパーチメント化されなかった繊維質の支持体は、その後に一緒にパーチメント化される。
【0079】
本発明はまた、電気絶縁体、複合材料、ハニカム、高温ガスフィルターなどの濾過装置を作製するためのパーチメント化可能な合成繊維を含むパーチメント化した繊維質の支持体の使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0080】
例−本発明の実施の形態の詳細な説明
本発明及びその利点は、以下の実施例から、当業者にはより明らかになるであろう。
【0081】
以下の例では、パーチメント化の温度は20℃である。
【0082】
例1:
40%のメタ−アラミドフィブリド、及び60%のメタ−アラミド繊維(6mm、2dTex)を含む支持体を、傾斜ワイヤーパイロットマシンで作製した。次いで、支持体の一部を、異なる時間、及び異なる硫酸濃度でパーチメント化した。
【0083】
支持体の特性は、以下の通りであった(強度(strength)は、支持体の比引裂強さ(tear index)を乗じた比破裂強さ(burst index)の平方根として定義される)。
−酸の濃度=72%
・標準(非パーチメント化):強度=4.68N.m/g(比引裂強=14.6mN.m/g、比破裂強さ=1.5kPa.m/g)
・試料1(10秒間パーチメント化):強度=6.3N.m/g
・試料2(20秒間パーチメント化):強度=6.9N.m/g
−酸の濃度=85%
・標準(非パーチメント化):強度=4.68N.m/g
・試料3(10秒間パーチメント化):強度=16.27N.m/g
・試料4(20秒間パーチメント化):強度=15.4N.m/g
【0084】
この例は、明らかにパーチメント化が劇的にメタ−アラミド支持体の強度を増加させることを示す。物理特性の最適化は、硫酸濃度を調整して、パーチメント化の反応時間を変化させることによって成し得るであろう。
【0085】
例2:
40%のパラ−アラミドフィブリド、及び60%のパラ−アラミド繊維(6mm、2dTex)を含む支持体を、傾斜ワイヤーパイロットマシンで作製した。次いで、支持体の一部を、異なる硫酸濃度でパーチメント化たた。
【0086】
支持体の特性は、以下の通りであった(強度(strength)は、支持体の比引裂強さ(tear index)を乗じた比破裂強さ(burst index)の平方根として定義される)。
−酸の濃度=85%
・標準(非パーチメント化):強度=5.18N.m/g
・試料(20秒間パーチメント化):強度=6.38N.m/g
−酸の濃度=90%
・標準(非パーチメント化):強度=5.18N.m/g
・試料(20秒間パーチメント化):強さ=16.1N.m/g
【0087】
パラ−アラミド支持体は、高強度特性を達成するために、メタ−アラミドよりも高い濃度での酸処理を必要とする。
【0088】
例3:
40%のメタ−アラミドフィブリド、及び60%のメタ−アラミド繊維(6mm、2dTex)を含む支持体を、傾斜ワイヤーパイロットマシンで作製した。支持体を、従来の技術(280℃で加熱、又は高温でカレンダー処理:圧力=280N/mmで、温度=300℃)に従って一体化した。一体化処理をしなかった支持体の一部を、パイロットパーチメント化装置でパーチメント化し(硫酸濃度=85%、時間=20秒)、このプロセスで得られた支持体の特性を、従来の技術で得られたものと比較した(表1参照)。
【0089】
【表1】
【0090】
メタ−アラミドのパーチメント化によって、高気孔率と優れた濡れ性(Cobb値を参照)を維持しながら、最終製品の高い物理的特性及び剛性を達成することが可能となる。
【0091】
例4:
40%のパラ−アラミドフィブリド、及び60%のパラ−アラミド繊維(6mm、2dTex)を含む支持体を、傾斜ワイヤーパイロットマシンで作製した。次いで、支持体を、従来の技術(高温でのカレンダー加工:圧力=280N/mm、温度=300℃)に従って一体化した。この一体化処理をしなかった支持体の一部を、パイロットパーチメント化装置でパーチメント化し(硫酸濃度=90%、時間=10秒)、このプロセスの後に得られた支持体の特性を、従来の技術で得られた物と比較した(表2を参照)。表2に示すように、パーチメント化プロセスは、従来の技術(ホットカレンダー)を使用することによっては達成可能ではなかった高い気孔率を維持しながら、パラ−アラミド支持体の強度を増加させる。
【0092】
【表2】
【0093】
例5:
25%のパラ−アラミドフィブリド、25%のパラ−アラミド繊維(6mm、2dTex)、及び50%のガラス繊維(6mm、2.2dTex)を含む支持体を、傾斜ワイヤーパイロットマシンで作製した。支持体の一部をパーチメント化し(硫酸濃度=90%、時間=10秒)、このプロセスの後に得られた支持体の特性を、比処理の支持体と比較した(表3参照)。
【0094】
【表3】
【0095】
パーチメント化は、ガラス繊維を含有し、高い気孔率と組み合わせて高い物理的特性を示す支持体の生産を可能にする。
【0096】
例6:
2つのタイプのアラミド支持体を、傾斜ワイヤーマシンで作製した。
−支持体1は40%のパラ−アラミドフィブリドと60%のパラ−アラミド繊維(6mm、2dTex)から成る。
−支持体2は90%のパラ−アラミドフィブリド/10%のパラ−アラミド繊維(6mm、2dTex)の支持体である。
【0097】
2つの支持体1の間に1つの支持体2を含む多層構造体を、90%の硫酸濃度で30秒間パーチメント化した。得られた生成物は、3つの層間の高い結合力を示し、あたかも単層物のように使用できる。
【0098】
例7:
既に説明したようにして(例4を参照)、パラアラミド支持体を傾斜ワイヤーマシンで作製した。乾燥させる前に、この支持体を、高圧の水流を用いて、水流交絡処理した(hydroentangled)。次いで、支持体の一部を、パーチメント化した(硫酸濃度=90%、時間=10秒)。水流交絡し、パーチメント化した支持体は、水流交絡処理のみ行ったアラミド支持体の測定値に対して2倍の剛性を提示する。