(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715699
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】LNG船
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20150423BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20150423BHJP
B63B 11/02 20060101ALI20150423BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20150423BHJP
B63B 3/20 20060101ALI20150423BHJP
B65D 88/12 20060101ALI20150423BHJP
B65D 90/52 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
B63B25/16 103
B63B25/16 101Z
B63B35/44 C
B63B11/02
B63B11/04 Z
B63B25/16 Z
B63B25/16 E
B63B25/16 P
B63B3/20
B65D88/12 Z
B65D90/52
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-529014(P2013-529014)
(86)(22)【出願日】2012年8月13日
(86)【国際出願番号】JP2012070594
(87)【国際公開番号】WO2013024835
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2013年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-177360(P2011-177360)
(32)【優先日】2011年8月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-197904(P2011-197904)
(32)【優先日】2011年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506261143
【氏名又は名称】森元 信吉
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】森元 信吉
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭45−008380(JP,B1)
【文献】
特開平06−270986(JP,A)
【文献】
実開昭49−129290(JP,U)
【文献】
特表2011−513140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
B63B 3/20
B63B 11/02
B63B 11/04
B63B 35/44
B65D 88/12
B65D 90/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンブレン式LNG貯蔵タンクを備えており、該タンクが、多重船殻で囲まれた船内スペース内に形成された主タンクと、該主タンクの直上の上甲板上に延びて設けられた、該主タンクより幅の小さな箱型の頭部タンクからなり、該主タンクと該頭部タンクは該上甲板にあいた穴を介して連通しており、
該頭部タンクの幅が、該主タンクの幅の50パーセントから70パーセントである、
該頭部タンクの高さが、該頭部タンクの幅の20パーセントから60パーセントの範囲である、
ことを特徴とするLNG船。
【請求項2】
自立角型LNG貯蔵タンクを備えており、
該タンクが、多重船殻で囲まれた船内スペース内に形成された主タンクと、該主タンクの直上の上甲板上に延びて設けられた、該主タンクより幅の小さな箱型の頭部タンクからなり、
該主タンクと該頭部タンクは該上甲板にあいた穴を介して連通しており、
該頭部タンクの幅が、該主タンクの幅の50パーセントから70パーセントである、
該頭部タンクの高さが、該頭部タンクの幅の20パーセントから60パーセントの範囲である、
ことを特徴とするLNG船。
【請求項3】
該二重船殻構造と上甲板で囲まれたスペース内に左右縦隔壁を設け、それら縦隔壁で前記スペース内を3つの区画、すなわち中央区画と左右の側部区画とに分かち、該中央区画内に前記主部タンクを形成した請求項1または2に記載のLNG船。
【請求項4】
該側部区画がコンデンセートタンクに形成される請求項3に記載のLNG船。
【請求項5】
該側部区画がバラスト用ディープタンクに形成される請求項3に記載のLNG船。
【請求項6】
LNG生産プラントを有し、LNG−FPSOとして用いられる請求項1記載のLNG船。
【請求項7】
メンブレン式LNG貯蔵タンクを備えており、該タンクが、多重船殻で囲まれた船内スペース内に形成された主タンクと、該主タンクの直上の上甲板上に延びて設けられた、該主タンクより幅の小さな箱型の頭部タンクからなり、該主タンクと該頭部タンクは該上甲板にあいた穴を介して連通しており、
該頭部タンクの幅が、該主タンクの幅の50パーセントから70パーセントである、
該頭部タンクの高さが、該頭部タンクの幅の20パーセントから60パーセントの範囲であり、
さらに、該メンブレン式LNGタンクのほかに、少なくとも1つの独立式LNG貯蔵タンクを備えていることを特徴とするLNG船。
【請求項8】
LNGの運搬に用いられる請求項1に記載のLNG船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LNG(液化天然ガス)を貯蔵するためのタンクを備えたLNG船に関する。この「LNG船」の語は、LNGを産地から消費地に運ぶためのLNG運搬船だけでなく、LNG貯蔵タンクとLNG液化プラントを台船に搭載したLNG-FPSO(Floating LNG Production, Storage and Off-loading system)、および、LNG貯蔵タンクと再ガス化プラントを台船に搭載したLNG-FSRU(Floating LNG Storage and Re-gasification Unit)をも含むものとして使用する。
【背景技術】
【0002】
世界的にエネルギー価格が高騰する中、陸上から遠く離れた大規模海底ガス田の開発プロジェクトが現在本格化している。これに用いるLNG-FPSOは、海底ガス田から生ずるガスを洋上で液化してLNGを生産し、それをタンクに貯蔵し、LNG運搬船に積み出す機能を備えている。(なお、LNG-FSRUは、LNG運搬船から受容したLNGをガス化して陸上に送り出す機能を有する。)
【0003】
LNG-FPSOは、生産した大量のLNGを貯蔵するためのタンクを備えるが、そのタンク構造は、これまでのLNG運搬船の建造で培われてきたLNGタンク技術が採用される見通しである。しかし、LNG-FPSOとLNG運搬船では、LNG貯蔵タンクの使われ方は同じではないので注意を要する。LNG運搬船の場合、LNG貯蔵タンクは満載か空荷のいずれかの状態で運用され、半載状態はないので、荒天時でも、タンク内の貨液が激しく波立つ現象(スロッシング現象)は起きにくい。荷役作業時だけは、タンク液位が大きく変化するが、荷役作業はたいてい波風の静かな港内で行われていたので、スロッシングはほとんど無視することができた。
【0004】
一方、LNG-FPSOは、気象条件の厳しい外洋に常時係留され、そのLNG貯蔵タンクの液位は、LNG生産量とLNG運搬船への積み出し量の兼ね合いで刻々変動し、半載状態が日常的に生じるので、スロッシング現象が起き易いと考えられている。LNG-FPSOでもう一つ重要なことは、LNG運搬船への貨液の積込みが、STS(ship to ship)で、特に、LNG-FPSOにLNG運搬船を横付け(side by side)してローディングアームを使って行なうことが考えられている。これまでのLNG運搬船が安全な港内に設けられたバースに係船して荷役が行われていたことを考えると、このような外洋でのSTS荷役はリスクが高く、LNG-FPSOとそれに接舷しようとするLNG運搬船との間で衝突事故が起こって船体を損傷したり、ローディングアームからの貨液の漏れによって船体損傷などの事故が起こり得ると考えられる。したがって、LNG-FPSOのタンク設計に当たっては、このようなリスクも十分に考慮することが必要である。
また、これからのLNG運搬船は、気象条件の厳しい外洋において、LNG-FPSOからLNGの積み込みを受けることも考慮しておく必要があり、特に積荷中のスロッシング対策が必要となる。
【0005】
LNG運搬船で従来から用いられてきたLNG貯蔵タンクには、自立球形タンク(MOSS方式タンク)、自立角型タンク(SPB方式)およびメンブレンタンクがあり、LNG-FPSOでも、これら3つのタンク形式のいずれかが採用されることが予想されている。まず、自立球形タンクであるが、これはアルミ合金で作られた自立式のタンクであり、その赤道部から伸びるスカートを介して、二重船殻で作られた船倉内に支持される。断熱層はタンクの外面に施される(外断熱方式)。自立球形タンクは球形であるが故に、船倉内への収まりが悪く、容積効率がよくないという欠点がある。この方式のタンクでは、外断熱式であるので、荒天時に積荷が波立っても、断熱層に損傷が生ずることはない。
【0006】
自立角型タンクは、本体がアルミ合金製の方形タンクであり、タンクを補強する桁材はタンクの内側に設けられ、断熱材はタンクの外面に設けられる。このものでは、角型タンクと船の内殻の間にボイドスペースが必要であり、その分、タンクの容積効率が小さくなる。他方、タンク内に桁材を設けることができるので、荒天時、液荷のスロッシングが起こりにくく、たとえ起こっても、タンクの外面にある断熱層は損傷を受けない。
【0007】
メンブレン方式であるが、これは二重船殻構造で作られた船倉内面に、断熱層を間に挟んでニッケル鋼やステンレス鋼の薄板(メンブレン)を張ってLNGタンクを形成する。この方式では、船倉容積のほとんどをタンク容積として利用することができ、容積効率が優れる。反面、液荷のスロッシングによって、メンブレンや断熱層が損傷を受けやすいという欠点がある。また、保冷工事、特にメンブレン同士の溶接が複雑であり、建造に長い工期を要するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、主としてメンブレン式LNG貯蔵タンクを有するLNG船(すなわち、LNG運搬船、LNG-FPSO、LNG-FSRU)に関し、タンクの容積効率がよく、また、荒天時における液荷のスロッシングが起こりにくいものを提供とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のLNG船は、メンブレン式または自立角型(SPB方式)のLNG貯蔵タンクを有する。それらLNG貯蔵タンクは、多重船殻で囲まれた船内スペースに形成されるた主タンクと、該主タンクの真上の甲板上に設けられた、該主タンクより幅の小さな箱型の頭部タンクから構成される。これら主および頭部タンクは互いに連通して一つのタンクを形成していることを特徴としている。
【0010】
このように、船内に形成される主タンクだけでなく、甲板上に箱型の頭部タンクを備えているので、船体そのものを大きくしなくとも、大きなタンク容積を得ることができる。また、頭部タンクはその下の主タンクより幅が狭いので、積荷の液面が頭部タンクに達している場合には、スロッシングが起こりにくいという利点がある。スロッシング低減の効果を十分なものにするには、該頭部タンクの幅は該主タンクの幅の約50から約70パーセントの範囲であることが好ましい。頭部タンクは、背が低いと容積が増えないし、背が高すぎると、構造的に不安定になるので、頭部タンクの高さは同タンクの幅の20パーセントから60パーセントの範囲にすることが好ましい。
【0011】
主タンクは、船体を二重船殻構造とし、該二重船殻構造と上甲板で囲まれたスペース内に形成することができる。さらには、二重船殻構造と上甲板で囲まれたスペース内に左右縦隔壁を設け、それら縦隔壁で前記スペース内を3つの区画、すなわちに中央区画と左右の側部区画とに分かち、該中央区画内に前記主タンクを形成するすることができる。この構造では、主タンクが三重船殻構造(すなわち、外板、内殻および縦通隔壁)で守られるので、他船との衝突事故で船体が損傷したような場合でも、主タンクが損傷する危険を少なくすることができる。
【0012】
三重船殻構造によってできた左右側部区画は、LNG-FPSOの場合、LNGの生産過程で生ずるLPG等の副産物を貯蔵するコンデンセートタンクや清水タンクとしてとして有効に使用することができる。LNG運搬船の場合は、左右側部区画はバラストタンクとして用い、海水バラストの量を加減して喫水調整や、船体の横揺周期の調整に用いる。
【0013】
このLNG船は、LNG貯蔵タンクがメンブレン方式であり、激しいスロッシングが起きたとき、激しく波立つ貨液の圧力でメンブレンや断熱材が損傷を受けやすい。他方、独立式LNG貯蔵タンクは、タンクの外面に断熱層があるので、スロッシングが起こって断熱層の損傷は起こりにくい。スロッシングは、タンク内の貨液の液面位置が問題であり、液面がタンクの深さの20パーセントから80パーセント位の間にあるとスロッシングが起こりやすく危険であると考えられている。そこで、LNG貯蔵タンクを全部メンブレン式にするのではなく、一つだけでも独立式LNG貯蔵タンク、たとえば、独立式自立タンク(Moss)または独立式角型タンク(SPB方式)を加えるとよい。このように独立式タンクあれば、LNG-FPSOにおいては、LNG生産プラントにより生産されるLNGは、まずこの独立タンクに溜めるようにし、まとまった量のLNGが溜まったら、そのLNGを、一気にメンブレンタンクに移送するようにすることで、メンブレンタンクの液面が危険液面ゾーンに長時間留まることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1または
図4のB方向から見た上甲板の平面図である。
【
図5】SPBタンクを搭載したLNG船の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1はこの発明による、符号1aで示すLNG-FPSOの側面図である。なお、この船は、もともと原油/鉱石専用船であったものを改装したものである。もちろん、はじめから新たに建造することも可能である。船尾に機関室2があり、その前方がタンクスペース3になっている。上甲板後部に居住区4があり、その前にLNG生産プラント5が搭載されている。船首部にはLNG-FPSOにつきもののタレット6が設けられており、海底に固定されたアンカーから延びる係留索7はこのタレットに接続され、一点係留の状態で各種作業を行う。タレットには、海底から立ち上がってくるライザーパイプ8も接続され、ガス田で採取された天然ガスは、このパイプを通って、船上のLNG生産プラント5に送られる。天然ガスはここで精製、液化され、タンクスペース3に設けられたいくつかのLNG貯蔵タンク16、23に送られ、貯蔵される。貯蔵したLNGの払い出しは、LNG-FPSO(1a)にLNG運搬船を横付けし、上甲板上に設けられたローディングアーム(図示しない。)を用いて貨液がLNG運搬船に積み込まれる。
【0016】
図3はLNG-FPSOの中央タンク部断面図であり、改装前の原油/鉱石専用船が備えていた外殻10と内殻11からなる二重船殻構造をそのまま使い、外殻と内殻の間のスペース12を海水バラストタンクとして用いる。内殻11と上甲板13で囲まれたスペースも、原油/鉱石専用船であったころから、左右一対の縦隔壁14と何枚かの横隔壁15とでいくつかの区画に仕切られている。左右縦隔壁14の間に形成される中央列の区画は、もともと原油兼鉱石艙であったところであり、これらの区画を利用して、いくつかのメンブレン式のLNG貯蔵タンク16を形成する。左右の列区画17(もとの原油タンク)は、清水やコンデンセートなどの貯蔵スペースとして用いる。
【0017】
各メンブレン式タンク16は、甲板下の主タンク16aと甲板上の箱状の頭部タンク16bから構成される。この船が原油/鉱石専用線であった頃、上甲板には、鉱石を積むための倉口(ハッチウエー)が開いており、倉口の周りを取り囲んでハッチコーミングが立っていた。改装時には、このハッチコーミングに継ぎ足すようにして側壁を上に伸ばし、天井を設けることで頭部タンク16bが作られる。こうして作られる頭部タンクは、甲板上に開いてい穴18(もとの倉口)を通じて主タンクと、一つのタンクを形成している。
主タンク16aは、二重底19および左右の縦隔壁14の内側に断熱層20を形成し、さらにその上をインバー等のメンブレン21で液密に覆うことにより形成される。符号24は上甲板13の下側に形成されたボイドスペースである。なお、前後のLNGタンクの間には、2枚の横隔壁で囲まれれる形でコッファーダム22を設ける(
図1および
図2参照)。頭部タンク16bも、同様に内面に断熱層20とメンブレン21を設ける。
符号25は頭部タンクの周りに設けられている補強用のブラケットである。
なお、頭部タンク16bは、
図3に鎖線で示すように、側板を傾斜させて、横断面を台形に形成することもできる。
【0018】
このLNG船のLNG貯槽タンク16は、主タンク16aの真上の甲板上に頭部タンク16bを付加した点が特徴的である。こうすることによる第一のメリットは、全体として大きなタンク容量を確保することができることである。主タンクだけの場合に比べ15から25パーセント前後の容量増加が見込める。第二のメリットは、主タンクに頭部タンクを付加することにより、全体としてボトルのようなタンク形状になり、主タンクに比べて頭部タンクは横幅が小さいので、貨液の液面が頭部タンクにかかるほど高い位置にあれば、スロッシングが起こりにくくなるという効果がある。
【0019】
図1に示すように、この船は、自立式LNG貯蔵タンク23を一つだけ最前部に備えており、自立式LNGタンクは球形タンク(MOSSタイプ)でもよいが、ここでは角型タンク(SPB方式)を採用している。この自立式タンクは、前述の通り、メンブレン式LNG貯蔵タンク16の貨液の液面がスロッシング危険ゾーンに留まることを回避することを意図したものである。
【0020】
図4はこの発明によるLNG運搬船1b(生産設備5を有しないもの)の側面図である。このLNG運搬船もまた、原油/鉱石専用船を改装したものであるが、はじめから新たに建造してもよい。このLNG運搬船は、LNG生産プラント5、タレット6および最前部の独立式LNGタンク23は持たないが、その他は前述のLNG-FPSOと同様の構造を備えている。LNG運搬船の中央タンク部も、前述のLNG-FPSOと同じであり、前出の
図2および
図3で示される通りである。左右の列区画17(もとの原油タンク)は、LNG-FPSOでは清水やコンデンセートなどの貯蔵スペースとして用いたが、このLNG運搬船ではバラストを積むためのディープタンクとして用いる。
【0021】
LNG運搬船が外洋においてLNG-FPSOからLNGの積み込みを受ける場合、LNGタンクの液面はゼロからほとんど満タンまで変動するので、LNG運搬船でもスロッシング対策が必要になる。その対策として、このバラストディープタンク17が役に立つ。一般に、空荷の状態から液荷を積み込んでいくと、積み込んだ液荷はLNGタンクの底から徐々に溜まっていくので、はじめのうち、船の重心が低くなる傾向がある。すなわち、船はボトムヘビーの状態になって、固有横揺れ周期が小さく、船は横揺れしやすくなり、LNGタンク内で液荷が激しく波立つ危険が生じる。(しかし、その後、積込みが進行すると、LNGタンクの液面が高くなって行くので、船の重心も高くなって、横揺は治まっていく。)
【0022】
このLNG運搬船では、LNGの積み込みに先立ち、バラストタンクに十分な量の海水を張っておき、LNGの積込み中は、そのバラストタンク17の海水を少しづつ船外に排出していくようにする。こうすれば、ボトムヘビーの状態に陥るのを回避することができ、船の横揺れを小さく抑え、スロッシングを抑制することができる。
【0023】
また、積荷作業中は、LNG-FPSOが徐々に浮き上がり、他方、LNG運搬船は徐々に沈むが、ディープバラストタンク17に予め積んでおいた海水バラストを積荷作業中に徐々に排出するようにすれば、両船の上下の相対変位を小さくでき、ローディングアームに無理な力が掛かるのを防止できる効果もある。
【0024】
図5はLNG船のLNG貯蔵タンク1を、メンブレンタンク16に代えて自立角型(SPB方式)タンク30で構成したものである。タンク形状は、
図3のメンブレンタンクと同様に、甲板下の主タンク30aと甲板上の頭部タンク30bから構成されている。タンク壁31を補強する桁材32はタンクの内面に設けられており、断熱層33はタンクの外面に形成される。符号34は、タンクの底部および側部を支える支持ブロックである。このように、メンブレンタンクではなく自立角型タンクを採用すると、荒天時にスロッシングが生じ難くなる利点がある。さらに、タンク壁31と縦隔壁14の間に空間が形成されて、縦隔壁はLNGタンクからの低温影響を受けに難くなり、縦隔壁に高張力鋼を使える範囲が拡大するというメリットがある。
【符号の説明】
【0025】
1 LNG船
1a LNG-FPSO
1b LNG運搬船
10 外殻
11 内殻
13 上甲板
14 縦隔壁
15 横隔壁
16 LNG貯蔵タンク
16a 主タンク
16b 頭部タンク
17 左右の側部区画
18 穴
23 自立式角型LNGタンク
30 自立式角型LNGタンク
30a 主タンク
30b 頭部タンク