(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715747
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】回路装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20150423BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20150423BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L21/56 T
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2008-252997(P2008-252997)
(22)【出願日】2008年9月30日
(65)【公開番号】特開2010-87123(P2010-87123A)
(43)【公開日】2010年4月15日
【審査請求日】2011年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】300057230
【氏名又は名称】セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(72)【発明者】
【氏名】中里 功
(72)【発明者】
【氏名】吉羽 茂治
(72)【発明者】
【氏名】関端 隆
【審査官】
水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/083352(WO,A1)
【文献】
特開2007−067205(JP,A)
【文献】
特開平08−034608(JP,A)
【文献】
特開2003−110065(JP,A)
【文献】
特開2003−218145(JP,A)
【文献】
特開2004−074713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00−23/31
H01L 21/56
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
金属細線を経由して前記半導体素子と接続された導電部材と、
フィラーが混入された樹脂材料から成り、前記半導体素子および前記金属細線を樹脂封止する封止樹脂と、を備え、
前記金属細線の最頂部を被覆する前記封止樹脂の厚みを、前記フィラーの最大径よりも薄くすると共に、最表層に位置する前記フィラーを前記樹脂材料により被覆し、
連続する一体の前記封止樹脂により前記半導体素子および前記金属細線が被覆されることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
前記金属細線の最頂部を被覆する前記封止樹脂の厚みは、40μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記封止樹脂の表面は、梨地面であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の回路装置。
【請求項4】
前記フィラーは、球状の形状を呈することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか記載の回路装置。
【請求項5】
前記封止樹脂の主面に前記フィラーが露出しないことを特徴とする請求項4記載の回路装置。
【請求項6】
前記導電部材は、基板の主面に形成された導電パターンであり、
前記基板の主面が被覆されるように前記封止樹脂は形成されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の回路装置。
【請求項7】
半導体素子の上面に形成された電極と導電部材とを金属細線を経由して接続する工程と、
モールド金型を用いた射出成形により、フィラーが混入された樹脂材料から成る封止樹脂で、前記半導体素子および前記金属細線を連続して一体に被覆する工程と、を備え、
前記被覆する工程では、前記金属細線の最頂部を被覆する前記封止樹脂の厚みを、前記フィラーの最大径よりも薄くすると共に、最表層に位置する前記フィラーを前記樹脂材料により被覆することを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項8】
前記被覆する工程では、前記樹脂材料として熱硬化性樹脂を採用したトランスファーモールドを行うことを特徴とする請求項7に記載の回路装置の製造方法。
【請求項9】
前記被覆する工程では、前記モールド金型の内壁を、剥離シートにより被覆することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の回路装置の製造方法。
【請求項10】
前記剥離シートの内側に面する面は梨地面であることを特徴とする請求項9に記載の回路装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーが混入された封止樹脂により半導体素子が薄く被覆される回路装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路装置の製造工程は、一枚の半導体ウェハの表面に所望の素子を組み込む前工程と、半導体ウェハを分割して得られた半導体素子をパッケージングする後工程とに大別される。近年に於いては、1回の封止工程にて複数の回路装置を樹脂封止して、封止された樹脂封止体をダイシングにより分割することで個々の回路装置を得る製造方法が開発されている(下記特許文献1を参照)。
【0003】
図8を参照して、上記した回路装置の製造方法を説明する。
図8の各図は、各工程を示す断面図である。
【0004】
図8(A)を参照して、先ず、基板100の上面に多数個の回路装置を構成する導電パターン102および半導体素子106を配置する。基板100はセラミックや樹脂材料から成り、基板100の上面には複数の導電パターン102が形成されている。ここでは、1つの回路装置となるユニット108が、複数の導電パターン102から構成されている。そして、各ユニット108の導電パターン102には半導体素子106が固着され、半導体素子106の電極と導電パターン12とは金属細線106を経由して接続されている。
【0005】
図8(B)を参照して、複数のユニット108が被覆されるように基板100の上面に封止樹脂110を塗布する。封止樹脂110は、シリカ(SiO
2)等から成る粒状のフィラーが充填された樹脂から成り、液状又は半固形状の状態で基板100の上面に供給された後に硬化される。
【0006】
図8(C)を参照して、次に、封止樹脂110の上面をグラィンディグすることにより、封止樹脂110を薄くすると共に、封止樹脂110の上面を平坦化する。
【0007】
図8(D)を参照して、次に、各ユニット108の境界にて、封止樹脂110および基板100をダイシングにより分割して、個別の回路装置を得る。
【0008】
上記工程により、多数個の回路装置が一括して製造されるので、回路装置の生産性が向上される利点がある。
【特許文献1】特開2000−164609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した製造方法では、製造される回路装置を薄型にするために、
図8(C)に示す封止樹脂110の厚みを薄くすると、被覆樹脂110を透過して外側から金属細線104等が透けてしまう問題があった。
【0010】
具体的には、樹脂封止に使用される封止樹脂110は、シリカ等から成るフィラーが充填された樹脂材料から成る。そして、シリカは容易に光を透過させる透明な材料である。従って、封止樹脂110の上面を研削して、金属細線104を被覆する封止樹脂110の厚み50μm程度に薄くすると、フィラーを経由して外部からの光が金属細線104に容易に到達する。
【0011】
図9は、従来型の回路装置の断面を撮影した画像であり、金属細線104と、金属細線を被覆する封止樹脂110が撮影されている。この画像では、封止樹脂110の上面を点線にて示し、一部が封止樹脂110の上面から外部に露出するフィラーを白い楕円にて囲んでいる。
【0012】
この画像を参照して、金属細線104を被覆する封止樹脂110の厚みは、例えば50μ程度であり、この厚みはフィラーの直径よりも薄い場合がある。この様になると、金属細線104が、樹脂材料ではなくフィラーのみによって被覆される箇所が出現する。そして、フィラーは樹脂材料よりも透明な材料であるので、フィラーを経由して外部からの光が容易に金属細線104に到達し、結果的に外側から金属細線104が透けてしまう。この様に、金属細線104が外側から透けてしまうと外観が劣化する。
【0013】
本発明は上記した問題を鑑みて成され、本発明の目的は、金属細線の透けを防止しつつ薄型とされた回路装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の回路装置は、半導体素子と、金属細線を経由して前記半導体素子と接続された導電部材と、フィラーが混入された樹脂材料から成り、前記半導体素子および前記金属細線を樹脂封止する封止樹脂と、を備え、前記金属細線の最頂部を被覆する前記封止樹脂の厚みを、前記フィラーの最大径よりも薄くすると共に、
最表層に位置する前記フィラーを前記樹脂材料により被覆し、
連続する一体の前記封止樹脂により前記半導体素子および前記金属細線が被覆されることを特徴とする。
【0015】
本発明の回路装置の製造方法は、半導体素子の上面に形成された電極と導電部材とを金属細線を経由して接続する工程と、モールド金型を用いた射出成形により、フィラーが混入された樹脂材料から成る封止樹脂で、前記半導体素子および前記金属細線を
連続して一体に被覆する工程と、を備え、被覆する工程では、前記金属細線の最頂部を被覆する前記封止樹脂の厚みを、前記フィラーの最大径よりも薄くすると共に、
最表層に位置する前記フィラーを前記樹脂材料により被覆することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属細線の最頂部を被覆する封止樹脂の厚みを、封止樹脂に含まれるフィラーの最大径よりも薄くし、更に、再表層に位置するフィラーを樹脂により被覆している。従って、透明なフィラーが外部に露出しないので、金属細線が外側から透けて見えてしまう不具合が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を参照して、本実施の形態の回路装置10の構成を説明する。
図1(A)は回路装置10を示す断面図であり、
図1(B)は一部を拡大した断面図であり、
図1(C)は実際に製造された回路装置10の断面を撮影した画像である。
【0018】
図1(A)を参照して、回路装置10は、第1基板12および第2基板14から成る基板と、第2基板14の上面に形成されたパッド34と、第1基板12の上面に固着された半導体素子24と、半導体素子24とパッド34とを接続させる金属細線22と、半導体素子24および金属細線22を被覆して樹脂封止する封止樹脂18とを主要に備えている。
【0019】
第1基板12は、セラミックまたは樹脂材料等の絶縁材料から構成される基板である。第1基板12の平面的な大きさは、半導体素子24よりも若干大きい程度であり、厚みは例えば100μm程度である。回路装置10の下部の左右端部はダイシングにより矩形状に削除されている。また、第1基板12の下面には、銅箔等から成る外部電極36が形成されており、回路装置10を実装する際には、外部電極36に半田等の導電性接着材を溶着させて面実装される。
【0020】
第2基板14は、第1基板12の上面両端に積層されており、上面にパッド34が形成されている。また、第2基板14の材料および厚みは、第1基板12と同じでよい。第2基板14の上面に形成されたパッド34には、金やアルミニウムから成る金属細線22が接続される。
【0021】
また、第2基板14の上面に形成されたパッド34と、第1基板12の下面に設けられた外部電極36とは、両基板を連続的に貫通して設けたスルーホール16を経由して接続される。このスルーホール16には、金や銅などの導電材料が埋め込まれている。また、第2基板14に設けられるパッド34や、第1基板12に設けられる外部電極36は、タングステン等を含む導電ペーストを基板上に所定形状に形成し、この導電ペーストを金メッキ膜により被覆することで形成される。
【0022】
半導体素子24は、MOSFETやバイポーラトランジスタ等のディスクリートのトランジスタまたはIC等である。半導体素子24の下面は、半田等の導電性接着材や絶縁性接着材を介して第1基板12の上面に固着される。ここでは、1つの半導体素子24が第1基板12に実装されているが、複数の素子が第1基板12の上面に固着されても良い。また、第1基板12の上面にアイランドを設け、このアイランドの上面に半導体素子24を実装しても良い。
【0023】
金属細線22は、金やアルミニウムから成る直径が10μm程度の細線であり、半導体素子24の上面に設けられた電極と、第2基板14の上面に設けられたパッド34とを電気的に接続する。本実施の形態では、金属細線22の形状は、一部が湾曲を呈し、残りの部分が直線状を呈している。具体的には、金属細線22に接続される端部付近の金属細線22は、円または楕円の一部を呈する形状でありこの部分が金属細線の頂部を含んでいる。また、金属細線22の湾曲を呈する部分は、ワイヤボンディングの工程に於いて加熱されることにより再結晶されることで高硬度とされており、金属細線22の直線状を呈する部分は比較的低硬度である。この様にすることで、金属細線22が一様に湾曲するように形成された場合と比較すると、金属細線22の頂部の位置を比較的低くすることが可能となり、結果的に装置全体を薄型にすることができる。
【0024】
封止樹脂18は、フィラーが混入された樹脂材料から成る。フィラーとしては、例えば球状のシリカが採用され、フィラーの最大粒径は例えば55μm程度である。封止樹脂18にフィラーが混入される割合は、例えば70体積%程度である。また、封止樹脂18に含まれる樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂でも良いし、熱可塑性樹脂でも良い。本実施の形態では、回路装置10の上面には基本的にはフィラー20は露出せずに、封止樹脂18に含まれる樹脂材料から回路装置10の上面が構成される。
【0025】
図1(B)を参照して、金属細線22の最頂部を被覆する封止樹脂18の厚みは、封止樹脂18に含まれるフィラー20の最大粒径よりも短く構成されている。具体的には、例えば球状であるフィラー20の最大粒径が上記したように55μmの場合、金属細線22を被覆する封止樹脂18の厚みT2は、40μm程度である。そして、封止樹脂18の再表層に位置するフィラー20は樹脂材料により被覆されており、この被覆される厚みT1は例えば8μm程度である。即ち、本実施の形態では、封止樹脂18の上面付近に位置するフィラー20は、樹脂材料により被覆されており、フィラー20は上面から外部に露出しない。
【0026】
本実施形態では、回路装置10を薄型化するために、半導体素子24を被覆する封止樹脂18の厚みを極力薄くしている。しかしながら、封止樹脂18の厚みを薄くすると、封止樹脂18に含まれるフィラーを光が透過して、金属細線22やパッド34が外部に透けてしまう恐れがある。この透けを防止するために、本実施形態では、再表層に位置するフィラー20を、少なくともフィラー20よりも遮光性に優れた樹脂材料により被覆している。この様にすることで、フィラー20を被覆する樹脂材料により外部から入射される光が遮光され、フィラー20に入射する外部からの光が低減される。結果的に、金属細線22やパッド34の透けが抑制される。更に、フィラー20が封止樹脂18から外部に露出しないことにより、フィラー20と樹脂材料との境界が上面から外部に露出しないので、耐圧性も向上される利点がある。
【0027】
更に、本実施形態では、封止樹脂18の上面は、微細な凹凸が形成された梨地面とされている。従って、この梨地面によって外部からの光が散乱されて装置内部に入射する光が抑制されるので、金属細線22の透けを抑制する効果が大きくなる。
【0028】
図1(C)は、実際に製造された回路装置を撮影した断面図である。この図を参照しても明らかなように、封止樹脂18の最上層に位置するフィラーは、樹脂材料により被覆されており、上面には露出していない。
【0029】
図2を参照して、回路装置10の構成を更に説明する。
図2(A)は回路装置10を示す斜視図であり、
図2(B)および
図2(C)は、認識マーク30が設けられた箇所を拡大して示す断面図である。
【0030】
図2(A)を参照して、封止樹脂18の上面には、位置マーク26と記号マーク28とから成る認識マーク30が刻印されている。位置マーク26は、回路装置10の平面的な位置(角度)を検出するために設けられている。ここでは、位置マーク26は、回路装置10の左下の角部に設けられている。一方、記号マーク28は文字や数字等から成り、製造会社名、製造時期、製品名、ロット番号、内蔵される素子の特性等で構成されている。
認識マーク30は、封止樹脂18の上面に対してレーザーを照射し、封止樹脂18を表面から部分的に除去することにより形成される。
【0031】
上記したように、回路装置10の薄型化のために半導体素子や金属細線22を被覆する封止樹脂18は極めて薄く形成されている。従って、レーザーの出力を強くして認識マーク30を構成すると、レーザーによる熱により半導体素子が悪影響を受ける恐れがある。ここでは、その悪影響を抑制するために、レーザーの出力を通常よりも弱くしている。
【0032】
図2(B)を参照して、レーザーを封止樹脂18の上面に照射することにより、封止樹脂18の上部は10μm程度(T3)除去されて、認識マーク30が形成される。一般的には、認識マーク用のレーザー処理では樹脂材料が20μm程度除去されるので、この深さT3は刻印される深さとしては非常に浅い。この様に、照射されるレーザーの出力を調節することにより、認識マーク30の視認性を一定以上の確保しつつ、レーザー照射に伴う半導体素子の破壊が防止される。
【0033】
図2(C)には、認識マーク30の他の構造が示されている。ここでは、封止樹脂18の上面が被覆層32により全面的に被覆され、この被覆層32を部分的に除去することにより認識マーク30が形成されている。被覆層32は、例えば封止樹脂18とは色が異なる白色の塗料等である。そして、封止樹脂18の上面を全面的に被覆層32により被覆した後に、レーザー照射により被覆層32を部分的に除去して封止樹脂18を露出させることで、認識マーク30が形成される。この様にすることで、封止樹脂18のレーザーによる除去が殆ど無いので、レーザー照射による半導体素子の破壊が防止される。
【0034】
図3から
図7を参照して、次に、上記した構成の回路装置の製造方法を説明する。
【0035】
図3を参照して、先ず、基板を用意して半導体素子を実装する。
図3(A)は基板40を示す平面図であり、
図3(B)は基板40の部分的な断面図であり、
図3(C)は半導体素子24を接続した後の基板40の断面図である。
【0036】
図3(A)を参照して、例えばセラミック等の絶縁材料から成る基板40は短冊形の外形を呈し、複数のブロック42が離間して配置されている。ここでは、2つのブロック42が示されているが、更に複数個のブロック42が基板40に配置されても良い。1つのブロック42には、マトリックス状に多数個のユニット44が含まれている。本実施の形態では、ブロック42毎に、トランスファーモールドによる樹脂封止を行っている。
【0037】
図3(B)を参照して、基板40は第1基板46と第2基板48とを積層して形成されている。第1基板46は、厚みが100μm程度のセラミック基板等から成り、裏面に外部電極36が設けられている。更に、第2基板48は、各ユニット44の周辺部に対応する箇所にて第1基板46の上面に積層されている。第2基板48の上面にはパッド34が設けられている。また、第2基板48の上面に設けられたパッド34と、第1基板46の下面に設けられた外部電極36とは、両基板を貫通して設けたスルーホールにより電気的に接続されている。
【0038】
図3(C)を参照して、次に、基板40の各ユニット44に半導体素子24を接続する。ディスクリートのトランジスタまたはIC等である半導体素子24の裏面は、第1基板46の上面に固着される。そして、半導体素子24の上面に設けられた電極は、金属細線22を経由して、パッド34と接続される。上記したように、本実施の形態では、半導体素子24と接続される端部付近の金属細線22の形状は、円または楕円の一部分の如き湾曲形状を呈する。そして、パッド34と接続される方の金属細線22は直線形状を呈している。
【0039】
図4を参照して、次に、半導体素子が実装された基板40を金型50にセットする。
図4(A)を参照して、本工程では、上金型52および下金型54から成る金型50を用いたトランスファーモールドを行っている。ここでは、上金型52の一部は、上下方向に移動可能な可動部58とされている。可動部58を上昇させることにより形成される封止樹脂の厚みが厚くなり、可動部58を下降させることで形成される封止樹脂の厚みが薄くなる。本実施の形態は、樹脂から成る剥離シート56を上金型52の内壁に密着させている。この様にすることで、樹脂封止後の金型50からの封止樹脂の離型が容易になる。更にまた、剥離シート56の下面には微細な凹凸が形成されており、このことにより形成される封止樹脂の表面も微細な凹凸が形成された梨地面となる。
【0040】
図4(B)を参照して、上記した構成の上金型52と下金型54とを当接させることで、キャビティ60が形成され、
図3(A)に示した各ブロック42は個別にキャビティ60に収納される。
【0041】
図5を参照して、次に、液状または半固形状の封止樹脂18をキャビティ60に注入する。
図5(A)は本工程を示す断面図であり、
図5(B)は樹脂封止が終了した後の基板40を示す平面図であり、
図5(C)は封止樹脂18を拡大して示す断面図である。
【0042】
図5(A)を参照して、不図示のゲートからキャビティ60に封止樹脂を注入することにより、1つのブロックに含まれる半導体素子、金属細線および基板40の上面が被覆される。封止樹脂18の充填が終了した後は、封止樹脂18を硬化させる加熱処理を行い、上金型52と下金型54とを離間させた後に、封止樹脂18が形成された基板40を金型50から取り出す。
【0043】
図5(B)を参照いて、上記工程が終了した後は、基板40の各ブロックを被覆するように封止樹脂18が形成されている。また、後のダイシングの工程にて、ダイシングブレードによる樹脂の欠けが、製品に影響することを防止するために、封止樹脂18が形成される領域は、ユニット44が形成されるブロック42よりも広い。
【0044】
図5(C)を参照して、本工程では、モールド金型を使用した射出成形により封止樹脂18を形成するので、封止樹脂18に含まれるフィラー20は樹脂材料により被覆されている。再表層に位置するフィラー20を被覆する樹脂材料の厚みT1は、例えば8μm以上程度である。更に、金属細線22の頂部を被覆する封止樹脂18の厚みT2は40μm程度以下であり、封止樹脂18に含まれるフィラー20の最大粒径(55μm)よりも薄く形成されている。
【0045】
上記したように、再表層に位置するフィラー20が遮光性の樹脂材料により被覆されており、透明なフィラー20まで外部からの光が到達しないので、金属細線やパターンの透けが防止されている。なお、封止樹脂18の上面は、剥離シート56の下面の凹凸形状に即した梨地面と成っている。
【0046】
図6を参照して、次に、封止樹脂18の上面に認識マーク30を刻印する。
図6(A)は本工程を示す平面図であり、
図6(B)はレーザー照射を示す断面図である。
【0047】
図6(A)を参照して、ブロック42に含まれる各ユニット44の表面には、位置マーク26および記号マーク28から成る認識マーク30がレーザーにより刻印される。
【0048】
図6(B)を参照して、封止樹脂18の上面に対して上方からレーザー62を照射することにより、封止樹脂18を上面から僅かに除去することで、溝状の認識マーク30を形成している。本実施の形態では、薄型パッケージを実現するために封止樹脂18が極めて薄く形成されているため、封止樹脂18に照射されたレーザーのエネルギーにより半導体素子が悪影響を受けやすい。この悪影響を防止するために、レーザーのエネルギーを弱く調節して、認識マーク30の厚みを10μm以下としている。
【0049】
またここで、
図2(C)に示すように、封止樹脂18の上面を被覆層32により被覆し、この被覆層32を部分的にレーザー照射により除去して認識マーク30を形成しても良い。
【0050】
図7を参照して、次に、各ユニット44の境界にて封止樹脂18および基板40を分割して個別の回路装置を得る。具体的には、先ず、基板40をダイシングシート64に貼着する。ここでは、封止樹脂18が形成された基板40の主面がダイシングシート64に貼着されている。そして、各ユニット44の境界にて、基板40および封止樹脂18が分離されるようにダイシングを行う。
【0051】
本工程では、封止樹脂18の周辺部が部分的に下方に突出する形状を呈しており、この部分にて樹脂封止が破損してしまう恐れがある。しかしながら、封止樹脂18はユニット44が形成される領域よりも広く基板40を被覆するように形成されているので、この破損はユニット44を構成する封止樹脂までは及ばない。
【0052】
以上の工程により、
図1に構成を示す回路装置10が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の回路装置を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は拡大された断面図であり、(C)は回路装置の断面を撮影した画像である。
【
図2】本発明の回路装置を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)および(C)は拡大された断面図である。
【
図3】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)および(C)は断面図である。
【
図4】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)及び(B)は断面図である。
【
図5】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図であり、(C)は拡大された断面図である。
【
図6】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は拡大された断面図である。
【
図7】本発明の回路装置の製造方法を示す断面図である。
【
図8】(A)から(D)は背景技術の回路装置の製造方法を示す断面図である。
【0054】
10 回路装置
12 第1基板
14 第2基板
16 スルーホール
18 封止樹脂
20 フィラー
22 金属細線
24 半導体素子
26 位置マーク
28 記号マーク
30 認識マーク
32 被覆層
34 パッド
36 外部電極
40 基板
42 ブロック
44 ユニット
46 第1基板
48 第2基板
50 金型
52 上金型
54 下金型
56 剥離シート
58 可動部
60 キャビティ
62 レーザー
64 ダイシングシート