(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補償速度は、前記演算加重値とバッテリー電圧、永久磁石同期モータの回転速度を入力変数として使用するモータ速度の正規化式から計算されることを特徴とする請求項1または4記載の永久磁石同期モータの制御方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照にして本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。
図2は本発明の実施例による制御過程を行うハイブリッドや燃料電池自動車用の駆動モータ制御システムを図示したものである。
本発明は、モータの回転速度及び要求トルク(トルク指令)による電流指令生成時に既存の基準電圧マップ、即ち、特定の基準電圧で設定された電流指令マップデータをそのまま利用し、運転中に電力源であるバッテリーの電圧変動を実時間反映できる特徴を有するモータ制御システム及び制御方法に関するものである。
【0018】
図2の符号11は永久磁石同期モータを表す。例えば、永久磁石同期モータは埋込永久磁石同期モータである。
符号21は永久磁石同期モータ11の電力源となるバッテリー(高電圧バッテリー)を表し、これはEVモードまたはHEVモードでモータの駆動電力を提供するが、回生制動(RB)モードでは発電モードで作動するモータにより生成される電気エネルギーを貯蔵する。また、燃料電池自動車(燃料電池−バッテリーハイブリッドシステム)ではバッテリー21が主動力源である燃料電池スタック(図示なし)と共に具備されて、モータの駆動電力を提供する補助動力源(回生制動時は充電)となる。
【0019】
符号13は永久磁石同期モータ11に3相交流電流が印加されるようにするPWMインバータを表す。PWMインバータ13はモータに印加される3相電流(i
us,i
vs,i
ws)制御のために、パルス幅変調(PWM)を通したモータ印加電圧(インバータ出力電力)制御を行い、高速スイッチングが可能な半導体スイッチ(例えば、IGBT)と発電時に電流ループを形成するダイオードで構成されたパワーモジュール(図示なし)を含む。
パルス幅変調(PWM)制御方式はインバータで半導体スイッチをスイッチングするためのスイッチングパルスの幅を変化させることで、電圧(または電流)を制御する方式にて、三角波比較パルス幅変調と空間ベクターパルス幅変調方式が広く利用されており、
図2は空間ベクターパルス幅変調方式を採用した例を表している。インバータのパルス幅変調及び3相電流制御については、本発明が属する技術分野で広く知られている公知の技術であるため詳細な説明は省略する。
【0020】
本発明による制御システムはモータ回転子の絶対角位置(q)を検出する位置検出部17を含み、絶対角位置(q)は永久磁石同期モータ11にて電流が印加される角位置を意味する。位置検出部17はレゾルバとなる。
符号19はPWMインバータ13の出力電圧により永久磁石同期モータ11に流入する各相電流(i
us,i
vs,i
ws)を検出するための電流検出部19であり、これにより検出される相電流がインバータ制御に使用できる。
本発明による制御システムはバッテリー電圧変動を実時間補償するためにバッテリー電圧変動をモニタリングし、これをモータ制御に反映するため、バッテリー電圧変動をモニタリングするための電圧値にてインバータの直流端(DCリンク端)電圧(V
DC)を検出して使用する。
【0021】
即ち、本発明はバッテリー電圧として直流端電圧(V
DC)を検出するための電圧検出部23を含み、これはインバータ動作による直流電圧の高周波リップル成分を吸収し、直流電圧を平滑化する直流端キャパシター(図示なし)の両端電圧を測定するように具備される。本発明で基準電圧マップ(
図3の符号36a、36b)としてモータの出力仕様を満足させる最低DCリンク端電圧(V
DC,MAP)での設定されたマップを利用するため、電圧検出部23を通して直流端電圧、即ち、DCリンク端直流電圧(V
DC)を検出した後、これを電圧変動を補償するのに使用するのが好ましい。
【0022】
一方、本発明による制御システムは、位置検出部17の信号に基づいてモータ回転速度(ω
rpm)を算出する速度計算器31と、位置検出部17の信号と電流検出部19の信号に基づいてd軸フィードバック電流(i
d)とq軸フィードバック電流(i
q)を算出する3相/d−q座標変換器33と、上位制御器から印加されるトルク指令(T
e*)、速度計算器31から入力されるモータ回転速度(ω
rpm)、及び電圧検出部23の信号を基に電圧変動が補償されたd軸電流指令(i
d*)とq軸電流指令(i
q*)を生成する電流指令生成器35と、d軸電圧指令(V
d*)とq軸電圧指令(V
q*)を各々算出する電流制御器37と、位置検出部17の信号と電流制御器37から入力されるd軸電圧指令(V
d*)及びq軸電圧指令(V
q*)を基に3相電圧指令(V
u*,V
v*,V
w*)を算出するd−q/3相座標変換器39を更に含む。
【0023】
ここで、速度計算器31は位置検出部17、即ち、レゾルバにより検出される絶対角位置(q)の入力を受けて、これを基にモータ回転速度(ω
rpm)を算出する。例えば、速度計算器31は微分器を含む。
3相/d−q座標変換器33は位置検出部17により検出される絶対角位置(q)と電流検出部19により検出される相電流(i
us,i
vs,i
ws)の入力を受けて、絶対角位置を利用して相電流をd軸フィードバック電流(i
d)とq軸フィードバック電流(i
q)に座標変換する。
そして、本発明で電流指令生成器35は上位制御器で印加されるトルク指令(T
e*)、速度計算器31により計算されるモータ回転速度(ω
rpm)、電圧検出部23により検出される直流端電圧(VDC)の入力を受け、これを基に既設定された電流指令データを利用して電圧変動が補償されたd軸電流指令(i
d*)とq軸電流指令(i
q*)を生成する。ここで、上位制御器はトルク指令を生成して出力する通常の車両制御器(HCU)となる。
【0024】
前記既設定された電流指令データは、トルク指令と回転速度を入力とする既存の電流指令データがそのまま利用され、トルク指令と回転速度に対応するd軸電流指令(i
d*)を生成するための既設定されたd軸電流指令データと、q軸電流指令(i
q*)を生成するための既設定されたq軸電流指令データを含む。
前記d軸電流指令データとq軸電流指令データはトルク指令と回転速度から電流指令を算出できるマップデータであり、特定の基準電圧で生成した既存のd軸電流指令マップ(
図3の符号36a)とq軸電流指令マップ(
図3の符号36b)がそのまま利用される。
【0025】
既設定されたd軸電流指令マップ36aは複数のトルク値と複数の回転速度に対して各々マッピングされている複数の最適d軸電流指令値を含み、また、既設定されたq軸電流指令マップ36bは複数のトルク値と複数の回転速度に対して各々マッピングされている複数の最適q軸電流指令値を含む。
前記のようなd軸電流指令マップとq軸電流指令マップは先行実験を通して得られたデータを利用して設定できるが、例えば、両方向ダイナモメータを使用してトルク及び回転速度別に最適d軸電流指令とq軸電流指令を実験を通して算出した後、これらの値をマッピングして生成することができる。
【0026】
本発明での電流指令生成器35は、前述したように電圧変動補償を行うために、上位制御器で印加されるトルク指令(T
e*)、速度計算器31により計算されるモータ回転速度(ω
rpm)、電圧検出部23により検出される直流端電圧(バッテリー電圧)(V
DC)の入力を受けて、これを基に電圧変動が補償されたモータ回転速度(ω
rpm)を算出する電圧変動補償部35aを更に含む(
図3参照)。
即ち、本発明での電流指令生成器35は前記したd軸、q軸電流指令マップ36a,36bを利用して電流指令(i
d*,i
q*)を生成するが、バッテリー電圧変動を補償するために実時間検出される直流端電圧(V
DC)を追加で入力し、また、電圧変動補償部35aがトルク命令値(T
e*)と検出値であるモータ回転速度(ω
rpm)及び直流端電圧(バッテリー電圧)(V
DC)値を利用して、電圧変動が補償されたモータ回転速度(ω
rpm,Nom)を算出し、補償されたモータ回転速度(以下、補償速度と称す)(ω
rpm,Nom)をトルク命令(T
e*)と共に、電流指令生成のためのd軸電流指令マップ36aとq軸電流指令マップ36bの入力として使用する。
【0027】
結局、本発明ではd軸電流指令マップ36aとq軸電流指令マップ36bでトルク命令(T
e*)と合わせて、補償速度(ω
rpm,Nom)を入力としてd軸電流指令(i
d*)とq軸電流指令(i
q*)を生成するため、生成された各々の電流指令は電圧変動が補償された電流指令となる。
電流指令生成器35の電圧変動補償部35aが直流端電圧(V
DC)を利用して行う補償速度算出過程、即ち、モータ回転速度(ω
rpm)に対して電圧変動を補償する詳細な過程については
図3と
図4を参照して後述する。
【0028】
次に、電流制御器37は電流指令生成器35から出力されるd軸電流指令(i
d*)及びq軸電流指令(i
q*)、3相/d−q座標変換器33から出力されるd軸フィードバック電流(i
d)及びq軸フィードバック(i
q)の入力を受けて、これを基にd軸電圧指令(V
d*)とq軸電圧指令(V
q*)を算出する。前記d軸電圧指令とq軸電圧指令の算出時、速度計算器31から出力されるモータ回転速度(ω
rpm)が追加で利用されることもある。
d−q/3相座標変換器39は位置検出部17から入力される絶対角位置(q)を利用して電流制御器37から入力されるd軸電圧指令(V
d*)とq軸電圧指令(V
q*)を3相電圧指令(V
u*、V
v*、V
w*)に座標変換する。
【0029】
結局、d−q/3相座標変換器39から出力される3相電圧指令(V
u*、V
v*、V
w*)が空間ベクターパルス幅変調アルゴリズムモジュール15に入力されて、スイッチ制御信号に対するデューティ(D
u、D
v、D
w)が生成され、このデューティを基にPWMインバータ13が永久磁石同期モータ11に印加される3相電流を制御する。
前記した電圧指令算出過程と合わせて、各座標変換器の座標変換過程、空間ベクターパルス幅変調を利用したデューティ生成及び3相電流制御過程については、本発明が属する技術分野で公示技術であるためより詳細な説明は省略する。
【0030】
次に、
図3と
図4を参照して電流指令生成器の電圧変動補償部が行う補償速度算出過程について詳述する。
図3に示す通り、電流指令生成器35は、前述したようにトルク指令(T
e*)とモータ回転速度(ω
rpm)及びバッテリー電圧(V
DC)の入力を受け、これらを入力として電圧変動が補償されたモータ回転速度、即ち、補償速度(ω
rpm,Nom)を算出する電圧変動補償部35aを具備する。
本発明では、運転中にバッテリー電圧変動を反映するために、電流指令生成器35の電圧変動補償部35aが電圧検出部により検出されるバッテリー電圧(直流端電圧)(V
DC)を利用して電流指令マップデータ36a,36bの入力値に対して電圧変動を補償するが、このとき電流指令マップデータの入力値であるモータ回転速度(ω
rpm)に対して電圧変動を補償するように構成される。
【0031】
特に、電圧変動によるモータ速度正規化方式を採用し、モータ回転速度、トルク指令、バッテリー電圧に加重値を適用したモータ速度正規化方式を通してバッテリー電圧変動を補償する。以下、本発明でのバッテリー電圧は、マッピング時の直流電圧、即ち、電流指令マップが設定される基準電圧を基準に、運転中に発生するバッテリー電圧の変動を意味する。前記電流指令マップ設定において、前記基準電圧(以下、マップ設定基準電圧と称す)は通常モータ出力仕様を満足させる最低DCリンク端電圧として定められる。
【0032】
図4は本発明の実施例による永久磁石同期モータの制御方法を表すフローチャートである。
図4に示す通り、電圧変動補償部が補償速度を算出する過程では、まず必要なパラメーター値があらかじめ設定されなければならない。
本発明でロジックに必要なパラメーター値としては、加重値適用開始速度(ω
0)、速度に対する加重値(K
ω)、トルク指令に対する加重値(K
T)、演算加重値(K
N)、補償開始電圧(V
0)があり、これらパラメーター値は多様な条件の先行実験を通して求められ貯蔵される。
【0033】
前記のようにパラメーター値が設定された状態で、永久磁石同期モータの作動中に検出されるモータ回転速度(ω
rpm)を速度計算器を通して入力し、現在の直流端電圧(V
DC)を電圧検出部から入力し、上位制御器からはトルク指令(T
e*)を入力して(S11)、まずモータ回転速度(ω
rpm)が加重値適用を必要とするか否かを判別する(S12)。
即ち、検出されたモータ回転速度(ω
rpm)をあらかじめ設定された加重値適用開始速度(ω
0)と比較して加重値適用速度に該当するかを判別し、モータ回転速度(ω
rpm)加重値適用開始速度(ω
0)以上ならば、加重値適用速度であると判定して、下記(数1)から回転速度及びトルク指令に対して各々加重値(K
ω,K
T)を適用して計算される演算加重値(K
N)を求める(S13)。
【0034】
モータ回転速度(ω
rpm)が加重値適用開始速度(ω
0)未満である状態、即ち、加重値適用条件ではない状態と判定されると、演算加重値は0(K
N=0)となる(S13’)。
モータの全ての速度で加重値を適用する場合、計算効率面で好ましくないため、計算効率と電圧変動補償に起因する電圧利用率の向上効果などを考慮して加重値が適用される最適の臨界速度を実験的に求めた後、これを加重値適用開始速度(ω
0)に設定しておき、これを基に加重値適用条件に該当する場合のみ加重値が適用されるようにする。
演算加重値(K
N)が求められると、演算加重値(K
N)と合わせて、バッテリー電圧(V
DC)、直流指令マップ設定時の基準電圧(V
DC,MAP)を利用してモータ回転速度(ω
rpm)からバッテリー電圧変動が補償された補償速度(ω
rpm,Nom)を算出する。
【0035】
好ましい実施例において、バッテリー電圧、即ち、電圧検出部により検出された直流端電圧(V
DC)によって電圧変動補償が必要であるかの可否を判断し(S14)、直流端電圧(V
DC)が電圧変動補償を必要とする状態と判定されると、所定の計算式から電圧変動による補償速度(ω
rpm,Nom)を計算する(S15,S16)。
即ち、直流端電圧(V
DC)をあらかじめ設定された補償開始電圧(V
0)と比較して電圧変動補償が必要な電圧状態であるかを判断し、直流端電圧V
DC)が補償開始電圧(V
0)以上の場合、電圧変動補償が必要な電圧状態と判定して(S15)、所定の計算式から電圧変動による補償速度(ω
rpm,Nom)を求める(S16)。
【0036】
例えば、前記計算式は電圧変動によるモータ速度正規化式となり、モータ速度正規化式は次の(数2)のように表される。
ここで、V
DC,MAPはマップ設定時の基準電圧を表す。
(数2)のFは補償適用可否を表すロジック内フラッグ値であり、電圧変動補償が必要な直流端電圧状態である場合、F=1(S15)、電圧変動補償が不必要な直流端電圧状態である場合、F=0(S15’)となる。
(数2)は(数1)から計算される演算加重値(K
N)、検出された直流端電圧(V
DC)、モータ回転速度(ω
rpm)を入力変数として正規化されたモータ速度(ω
rpm,Nom)を計算する計算式であり、式(2)により計算される正規化されたモータ速度(ω
rpm,Nom)が電流指令マップの入力となる補償速度となる。これは速度計算器から入力されるモータ回転速度(ω
rpm)に対して電圧変動を補償した速度値となる。
【0037】
但し、直流端電圧(V
DC)が補償開始電圧(V
0)未満である場合は(数2)でF=0であるため、補償速度の代りに、現在のモータ回転速度(ω
rpm)が電流指令マップデータの入力としてそのまま使用される(ω
rpm,Nom=ω
rpm)。
補償開始電圧(V
0)は、電圧変動補償に起因する電圧利用率の向上効果の側面などを考慮して先行実験から補償必要可否の決定のための最適の臨界電圧を求めて設定する。
結局、本発明では電圧変動が補償されたモータ回転速度(ω
rpm,Nom)をトルク指令(T
e*)と共にd軸電流指令マップ36aとq軸電流指令マップ36bの入力として使用して、d軸、q軸電流指令を求め(
図3参照)、電圧変動が反映されたd軸、q軸電流指令が得られると、これを永久磁石同期モータの制御に使用する。
【0038】
このようにして、本発明による永久磁石同期モータの制御方法では、永久磁石同期モータの制御においてバッテリー電圧変動を反映することができるようになり、これはモータ/インバータシステムの電圧利用率を向上させ、究極的にはモータ/インバータシステムの効率向上により車両性能(動力性能及び燃費性能など)の向上を可能にする。
更に、高電圧、高速運転領域で電流制御安定性が確保され、電流指令生成のためのデータ及び貯蔵空間の縮小、データの構築及び検証に所要される人力及び時間の節減が可能となる
【0039】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。