特許第5715781号(P5715781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715781
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】かつら及び補助装飾具
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20150423BHJP
   A45D 8/40 20060101ALN20150423BHJP
【FI】
   A41G3/00 H
   A41G3/00 D
   A41G3/00 E
   !A45D8/40 501Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-186968(P2010-186968)
(22)【出願日】2010年8月24日
(65)【公開番号】特開2012-46830(P2012-46830A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2013年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】504112001
【氏名又は名称】坂上 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】坂上 昇
(72)【発明者】
【氏名】坂上 史乃
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−321282(JP,A)
【文献】 実開昭47−23086(JP,U)
【文献】 実開昭47−7084(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
A45D 8/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭に装着する帽子状のベース部に毛髪を取り付けたかつらであって、
当該ベース部はネット布からなり、且つ伸縮性を有する帯状の開口縁部を備え、
ベース部の表面に毛髪の端部を取り付ける取付位置は、ベース部の上部で、且つ、装着時に頭部の上部となる位置を起点とし、開口縁部側の任意の点を終点とする三次元螺旋の軌跡となる位置とし、
当該取付位置以外のベース部を、当該取付位置に端部が取り付けられた毛髪で覆うことを特徴とするかつら。
【請求項2】
前記ベース部の上部の起点は、当該ベース部を頭に装着した場合の前側の開口縁部からの距離が4cm〜20cmである請求項1に記載のかつら。
【請求項3】
三次元螺旋形の前記取付位置は、起点に近い位置ほど隣接する周との離間距離が狭く、終点に近いほど隣接する周間の離間距離が広いものである請求項1又は請求項2に記載のかつら。
【請求項4】
前記毛髪の長さは、前記取付位置における三次元螺旋形状の隣接する周の離間距離の2倍以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のかつら。
【請求項5】
前記取付位置は、長さが2m〜3mである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のかつら。
【請求項6】
前記ベース部の開口縁部は、幅1cm〜6cmの伸縮素材からなる請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のかつら。
【請求項7】
増毛ピース及び/又は装飾具である補助装飾具と、前記ベース部の取付位置の三次元螺旋形状の周間の隙間とに、それぞれが接合可能な着脱手段を備え、
当該着脱手段を介して、補助装飾具を、当該ベース部に着脱自在に装着可能である請求項1〜請求項6のいずれかに記載のかつら。
【請求項8】
増毛ピース及び/又は装飾具の基部に着脱手段を取り付けたものであり、
請求項7に記載のかつらのベース部に取り付けた着脱手段に装着可能であることを特徴とする補助装飾具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、人の頭部に装着するかつらと、当該かつらに着脱自在に装着する増毛ピースや装飾具等の補助装飾具に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢、疾患あるいは医療上の服用薬の副作用等により髪が完全に脱毛したり薄毛となる場合がある。特に、癌治療等、医療上の治療の副作用により急激な脱毛が生じる場合があり、闘病者にとって、外見の変化は精神的苦痛を伴う。このような場合に、かつらを利用することがある。かつらは、部分的に頭皮を覆う部分かつらと、頭部の発毛する領域(以下、「頭髪部」と記す。)の略全域を覆う全かつら(フルウィッグ)とに大別できる。そして、頭髪部の略全域を覆う全かつらには種々の課題がある。
【0003】
第一に、かつらは、頭皮が見えないように毛髪が密植され、特に、全かつらは、頭髪部の略全域を覆うので必然的に毛髪量が多くなる。そのため、かつらが重くなるとともに、かつら内部の通気性が悪くなり、蒸れ易く装着時の不快感がある。
【0004】
この他、装着時のかつらが不慮にずれたり、外れたりすることが不安となる点が課題となる。自毛がある人がかつらを使用する場合は、特許文献1に開示の多重かつらのように、留め具を用いてかつらを髪に留めて固定することができるが、自毛が殆ど無い場合は留めることができない。そこで、皮膚用の両面テープや特許文献2に開示のエアゾール型の接着剤等を用いて頭皮とかつらとを接着させて使用する例がある。しかし、病気療養中の患者等、常時かつらを装着するのではなく、一日に複数回かつらを着脱する者にとっては、接着剤を毎回つけたり、除去したりする手間が負担となる。
【0005】
また、特許文献3に開示の医療用かつらは、帽子の内側に、かつら帽子と頭皮との間にベルクロ(登録商標、以下同じ。)のループ側を配置してクッション材とし、かつ、適合手段により、かつらのサイズを調節可能にしている。しかし、特許文献3に用いるベルクロのようなテープは、クッション材となる反面、ある程度の厚さと密度があるために、かつらの内部が蒸れ易い。また、頭部及び頭皮は、意外と動作による影響を受けやすく、特許文献3に開示の技術のような適合手段では、装着時の動作等により適合手段が緩くなり脱落する不安が、使用者に常に生じてしまう。
【0006】
さらに、全かつらは、使用者の顔や頭の形状に合わない場合、かつらを装着していることが外観から判ってしまう場合がある。例えば、特許文献3に開示の医療用かつらの場合、ベルクロが嵩張るために頭部の外形寸法が大きくなり、自然な形状の頭部を形成することを妨げてしまう。更に、頭髪部の略全域が脱毛や薄毛の人にとって、特許文献3に開示の技術では、頭皮側の面に複数の凹凸が生じると不快感が生じる。この課題を解決するために、使用者に合わせて製造されるオーダーメイドのかつらがある。オーダーメイドのかつらは、使用者の頭部のサイズ等に合うという利点がある反面、髪型の変更が困難であり、且つ、一般に高価であり、異なる髪型のものを複数所有することが難しい場合がある。したがって、髪型を簡単に変えることができず、不自由であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−273016号公報
【特許文献2】特開2010−84027号公報
【特許文献3】特開平8−60421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本件発明は、着脱が容易であり、且つ装着時に快適な使用感が得られ、髪型のアレンジも可能なかつら及び補助装飾具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下のかつら及び補助装飾具を採用することで上記課題を達成するに到った。
【0010】
本件発明に係るかつらは、頭に装着する帽子状のベース部に毛髪を取り付けたかつらであって、当該ベース部はネット布からなり、且つ伸縮性を有する帯状の開口縁部を備え、ベース部の表面に毛髪の端部を取り付ける取付位置は、ベース部の上部で、且つ、装着時に頭部の上部となる位置を起点とし、開口縁部側の任意の点を終点とする三次元螺旋の軌跡となる位置とし、当該取付位置以外のベース部を、当該取付位置に端部が取り付けられた毛髪で覆うことを特徴とする。
【0011】
本件発明に係るかつらは、前記ベース部の上部の起点は、当該ベース部を頭に装着した場合の前側の開口縁部からの距離が4cm〜20cmであるものがより好ましい。
【0012】
本件発明に係るかつらは、三次元螺旋形の前記取付位置は、起点に近い位置ほど隣接する周との離間距離が狭く、終点に近いほど隣接する周間の離間距離が広いものがより好ましい。
【0013】
本件発明に係るかつらは、前記毛髪の長さは、前記取付位置における三次元螺旋形状の隣接する周の離間距離の2倍以上であることがより好ましい。
【0014】
本件発明に係るかつらは、前記取付位置の長さは、2m〜3mであることがより好ましい。
【0015】
本件発明に係るかつらは、より好ましくは、前記ベース部の開口縁部は、幅1cm〜6cmの伸縮素材からなる。
【0016】
本件発明に係るかつらは、更に、増毛ピース及び/又は装飾具である補助装飾具と、前記ベース部の取付位置の三次元螺旋形状の周間の隙間とに、それぞれが接合可能な着脱手段を備え、当該着脱手段を介して、補助装飾具を、当該ベース部に着脱自在に装着可能であるものが好ましい。
【0017】
本件発明に係る補助装飾具は、増毛ピース及び/又は装飾具の基部に着脱手段を取り付けたものであり、上記かつらのベース部に取り付けた着脱手段に装着可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本件発明に係るかつらは、ネット布からなる帽子状のベース部に毛髪の端部を取り付ける位置を、ベース部表面に三次元螺旋形状を描く位置に形成したことにより、ベース部の露出を防ぎながら取り付ける毛髪の量を抑えることができる。その結果、軽く、通気性に優れたかつらとなる。また、本件発明にかつらは、ベース部に伸縮性を有する帯状の開口縁部を備えるので、安定した装着感が得られ、装着時にかつらが脱落する心配がない。そして、本件発明に係るかつらは、ベース部における毛髪の取付位置を三次元螺旋形状とすることにより、毛髪を取り付けないスペースがあり、その部分に着脱手段を取り付け、当該着脱手段を介して、増毛ピース及び/又は装飾具を容易にかつらに装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本件発明に係るかつらのベース部に対する毛髪の取付位置を模式的に示した側面図である。
図2】本件発明に係るかつらのベース部に対する毛髪の取付位置を模式的に示した上面図である。
図3】本件発明に係るかつらのベース部に対する毛髪の取り付けを説明するための模式図である。
図4】本件発明に係る補助装飾具の一例を示す図である。
図5】本件発明に係る補助装飾具の一例を示す図である。
図6図4の補助装飾具の取り付け例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るかつらの好ましい実施の形態を説明する。本件発明に係るかつらは、頭に装着する帽子状のベース部に毛髪を取り付けたものである。図1は、本件発明に係るかつらのベース部を模式的に示した側面図である。
【0021】
図1に示すように、ベース部1は、ネット布からなり、頭に装着する帽子状の形状であり、その開口縁部2は帯状の伸縮性を有する部材からなる。ネット布は、網目状に織られた布や貫通孔が形成された布等であり、通気性を有する。ネット布の素材は特に限定されるものはなく、例えば、化学繊維、絹、麻、綿等が挙げられる。このベース部1は、例えるならば、水泳用のメッシュキャップの様に、ネット布の部分で頭髪部を覆い、伸縮性を有する帯状の開口縁部により脱落を防ぎながら頭部に装着するものである。なお、ネット布の部分も水泳用のメッシュキャップと同様にある程度伸縮性を有するものを用いると、使用者の頭部の形状にフィットしやすいので、外形状が使用者の頭と違和感が無いかつらとすることができる。
【0022】
さらに、ベース部1の開口縁部2は、幅1cm〜6cmの帯状の伸縮素材を採用し、ネット布に縫いつけると、適度な締め付けにより装着時にかつらがずれ難いため好ましい。伸縮素材は、ゴム、ゴムを織り込んだ織物等が挙げられる。そして、帯状の伸縮素材からなる開口縁部2の幅を1cm未満とすると、頭皮への圧着力が弱く、装着時にずれ易く、安定感が得られない。一方、伸縮素材からなる開口縁部2の幅を6cmより広くすると、その分、ネット布部分の面積が少なくなり、通気性の妨げとなる。開口縁部2の幅は、2cm〜4cmとするとより好ましい。
【0023】
このベース部に、複数の毛髪の端部を取り付けてかつらとする。毛髪は、人毛、化学繊維やタンパク質を用いた人工毛のいずれを用いても良い。
【0024】
本件発明に係るかつらは、毛髪の取付位置が特徴の一つである。図1及び図2に示すように、ベース部1の上部を起点Aとし、開口縁部2側の任意の一点を終点Bとする螺旋形状の仮想線を描くと、略半球状のベース部1の表面において、一つの三次元螺旋形状となる。このベース部1の表面における三次元螺旋形状の軌跡に沿った位置を取付位置とし、ここに毛髪3の端部を取り付ける。このように、毛髪の取付位置を三次元螺旋形状の軌跡上とすると、ベース部に取り付ける毛髪量を少なく抑えながら、ベース部が露出することなく、自然な外観のかつらを形成することができる。
【0025】
取付位置の起点Aは、ベース部1の上部であり、具体的には、当該ベース部1を頭に装着した場合に、左右方向においては略中央部であり、前後方向においては前側の開口縁部2からの距離が4cm〜20cmとなる位置に配置した。図2に示すように、この取付位置の起点Aは、かつらを装着した場合に、左右方向の略中間位置であり、頭頂部より前方の領域である。この位置は、一般に旋毛がある位置であり、そこを起点とする螺旋形状に毛髪を取り付けることにより、自然な外観のかつらが得られる。
【0026】
一方、三次元螺旋形状の取付位置の終点Bは、開口縁部2側の任意の点とする。本件発明に係るかつらの取付位置は、少なくともベース部1の上半分の領域は三次元螺旋形状とすることが望ましい。頭頂部を自然な生え具合の外観とすることができ、且つベース部1内の通気性にも優れるからである。そして、取付位置の終点Bとなる開口縁部2側の任意の点は、開口縁部2上を終点Bとして、ベース部1の表面全域にわたる三次元螺旋形状の取付位置としても良いし、ベース部1の上半分程度の位置を終点Bとして、当該終点Bから開口縁部2までの両域は同心円状に毛髪を取り付けても良い。
【0027】
そして、図1及び図2に示すように、毛髪3の取付位置は、三次元螺旋形の起点Aに近い位置ほど隣接する周との離間距離L1が狭く、終点Bに近いほど隣接する周間の離間距離L2を広くすることが好ましい。まず、毛髪3の取付位置は、起点Aに近い位置ほど、隣接する周との離間距離L1を狭くする。起点Aは、かつらの装着時に頭部の上部となる位置であり、ベース部1が露出しやすい領域である。そこで、毛髪3の取付位置は、起点Aに近い位置ほど、隣接する周との離間距離L1を狭くして毛髪を取り付けることにより、ベース部1の露出を抑える。そして、毛髪3の取付位置を螺旋形状として、旋毛がある位置の発毛状態に近い外観を得ることができる。一方、毛髪3の取付位置は、終点Bに近いほど隣接する周間の離間距離L2を広くする。毛髪3の取付位置の終点Bに近い領域は、起点A側に取り付けた毛束の毛先が及ぶので、ベース部1が露出し難い。そこで、開口縁部3側の終点Bに近付くほど、隣接する周間の離間距離L2を広くして、全体として取り付ける毛髪量を抑えることが可能となる。また、本件発明に係るかつらは、取付位置を三次元螺旋形状としたことにより、徐々に取付位置の離間距離が広がるので自然な外観を得ることができる。
【0028】
さらに、本件発明に係るかつらは、図1図3に示すように、装着した場合に、前側より後ろ側の方が、毛髪3の取付位置の隣接する周間の離間距離L2を広くすることが好ましい。起点Aより前側は、ベース部1が露出しやすいので、取付位置の周間の離間距離を狭くした方が良い。また、起点Aより前側の毛髪3の取付位置の周間の離間距離を狭くすると、より自然な外観とすることができる。一方、起点Aより後方は、前方に比べてベース部1が露出し難い。そこで、本件発明は、より好ましくは、毛髪3の取付位置を起点Aの後方側において、周間の離間距離を広くする。この結果、ベース部1が露出し難い後頭部側が通気性に優れ、且つ、軽量化を図ることができる。
【0029】
毛髪3は、図3に示すように、三次元螺旋形状の取付位置に毛髪の端部を取り付ける。また、当該取付位置以外のベース部1を、取付位置に端部が取り付けられた毛髪で覆う。そこで、取付位置に取り付ける毛髪の長さは、三次元螺旋形状の隣接する周の離間距離の2倍以上とすることが好ましい。三次元螺旋形状の隣接する周の離間距離の長さの2倍より短いと、動作によっては、取付位置やベース部が露出するおそれがある。
【0030】
また、三次元螺旋形の取付位置の全長は、2m〜3mであることが好ましい。この範囲であると、軽く、装着時にずれ難く、蒸れ難いかつらとすることができる。取付位置の全長は、ベース部1に取り付ける毛髪量と相関する。三次元螺旋形の取付位置の全長が2m未満であると、毛髪量が少なすぎて、ベース部1が露出する可能性が高くなる。一方、三次元螺旋形の取付位置の全長を3mより長くすることは可能であるが、かつらが重くなり、通気性も低下する。なお、図3は、毛髪3の取り付け方法を説明するために、毛髪3がベース部1の取付位置の一部に取り付けられた状態を模式的に示しているが、図3に点線で示した取付位置となる軌跡に沿って、ベース部1全体を覆うように毛髪3を取り付けるものであることは言うまでもない。
【0031】
上述の通り、本件発明に係るかつらは、毛髪の取付位置が特徴の一つである。従来のかつらは、特許文献1に開示の多重かつらのように格子状の網目のネット地に均等に植毛したものや、毛束を一列に並べたものを複数段取り付けたものがあり、いずれも、自毛の発毛状態に近付けるべく、密集して毛髪を取り付けるものだった。しかし、本件発明は、毛髪の取付位置を三次元螺旋形状としたことにより、従来のかつらに比べて、取り付ける毛髪の間隔が広く、少ない毛髪量であっても頭皮やベース部の露出を防ぎ、自然な外観のかつらとすることができるのである。その結果、軽量で、通気性に優れ、材料コストを抑えたかつらを提供可能とした。なお、かつらに用いる毛髪には、人毛と人工毛とがあることは述べたが、人毛を材料とした方が、より自然な外観が得られるが、人毛は流通価格が高価であるため材料コストが高くなる。しかし、本件発明に係るかつらでは、必要な毛髪量を少なく抑えることができるので、人毛を用いた高品質のかつらであっても材料コストを低減できる。
【0032】
ベース部に毛髪の端部を取り付ける方法は、ベース部に糸を使って縫合する方法、毛髪をベース部に直接結びつける方法、接着剤を用いて毛束を貼り付ける方法等が考えられる。毛髪をベース部に直接結びつける方法は、より自然な毛並みを作りやすい点で好ましいが、製造コストがかかり、かつらの流通価格が高くなる。接着剤を用いて毛束を貼り付ける方法を用いる場合は、ベース部にネット布を使用するため、接着剤がベース部の内側の頭皮と当接する部分まで達する可能性があるので、皮膚への影響や、接着後の接着剤の塊による頭部への違和感が無いこと等に留意して接着剤を選定する必要がある。そして、ベース部に糸を使って縫合する方法の場合、接着剤に比べて頭皮への刺激等の心配が無く、また、ベース部が接着剤により嵩張る心配が無いので、好ましい。
【0033】
なお、ベース部に取り付ける毛髪は、ヘアーエクステンションあるいはヘアーエクステンションの形態と同様に複数の毛髪を毛筋に沿って並べ、それらの端部を縫合等により連結させて幅方向に長くした毛束を用いると製造が容易となる。この場合、取付位置の長さの一つのヘアーエクステンション等を用いても良いし、複数のヘアーエクステンション等を用いても良い。なお、近年、流通しているヘアーエクステンションは、自毛に比べると、色、長さ、パーマ等の形状のバリエーションが多い。ヘアーエクステンションの中には、自毛では実現が困難な色と形状の組み合わせもある。そこで、本件発明にかかるかつらの毛髪として、そのようなヘアーエクステンションを用いると、多彩な髪型が可能となり、装飾の幅を広げることができる。
【0034】
このように、本件発明に係るかつらは、毛髪を三次元螺旋形状の軌跡に沿って取り付けることにより、少ない毛髪量でも自然な生え具合の髪型のかつらとなる。なお、上記説明では、一つの螺旋形状の軌跡としたが、毛髪量を多くしたい場合は、一つの起点から、異なる複数の三次元螺旋形状の軌跡の仮想線を想定し、これに沿った取付位置にすることにより、自然な生え具合の髪型を維持できる。
【0035】
なお、本件発明にかかるかつらの取付位置は、ベース部1の上部を起点Aと称し、開口縁部2側を終点Bと称しているが、これは、三次元螺旋形状の軌跡を説明するための便宜上の用語であり、毛髪を取り付ける順序を限定するものではない。
【0036】
また、毛髪の取付位置は、三次元螺旋形状の軌跡に沿う位置の他、前髪の生え際に位置する部分等、ベース部が露出しやすい部分には、適宜、毛髪を追加して取り付けても良い。次に、補助装飾具について説明する。
【0037】
本件発明に係るかつらは、上述の通り、螺旋状に毛髪の端部を取り付けるので、ベース部には、毛髪を取り付けない領域が十分にある。そこで、ベース部における毛髪が取り付けられない箇所に、着脱手段を用いて、増毛ピースや装飾具を装着することも可能である。
【0038】
従来の全かつらの場合、かつらの髪型は固定される。そのため、不自然な髪型となることやベース部分の露出をおそれて、かつらに装飾具等のヘアアレンジを行うことはされてこなかった。しかし、全かつらの使用者も、自毛の場合のように髪型のアレンジを楽しみたい。そこで、本件発明に係るかつらにおいて、かつらのベース部の毛髪が取り付けられない箇所における任意の位置に着脱手段を取り付け、当該箇所に着脱手段を介して補助装飾具を取り付け可能とした。補助装飾具は、毛束に着脱手段を付けた増毛ピースや、図4に示すような装飾具が挙げられる。着脱手段としては、布ファスナー、スナップボタン、クリップ等が考えられる。特に、布ファスナーは、簡易な構成であり、補助装飾具を安定して取り付けられ、補助装飾具を装着しない時に目立ちにくいので、着脱手段として好ましい。
【0039】
図4に、本件発明に係る補助装飾具を一例を示す。図4(1)は、ヘアバンドの様に使用する帯状の補助装飾具、図4(2a)は、ワンポイントで取り付ける補助装飾具の一例である。図4(1)に示す補助装飾具の場合、その両端部に布ファスナーを取り付け、その両端部の布ファスナー5a,5aを、それぞれかつらの左右に縫合された布ファスナー4に貼り合わせることにより、ヘアバンドとして髪を留めている外観とすることができる。この帯状の補助装飾具51は着脱自在で汎用性に優れるので、様々なデザインのヘアバンドとして使用可能である。また、帯状の補助装飾具51は、前髪や前頭部の毛髪を押さえることができるので、装着時に風等の外的要因により前髪が分かれてベース部1が露出するのではないかという使用者の不安を解消することも可能である。
【0040】
図4(2a)は、本件発明に係る補助装飾具の他の例を示す斜視図であり、図4(2b)は、その背面図である。図4(2a)に示す補助装飾具52は、布及び羽根を用いて造形した髪飾りである。この髪飾りも、図4(2b)に示すように、背面に、布ファスナー5aを取り付け、これを本件発明に係るかつらのベース部に縫合された布ファスナー4に貼り合わせることで、髪飾りをかつらに装着することができる。
【0041】
図5及び図6に毛髪の補助装飾具の例を示す。既述の通り、補助装飾具として、所望の長さや色の増毛ピースを用いても良い。この他、図5に示すように、2つの三つ編みパーツ53a,53bの端部を一つにまとめた補助装飾具53としても良い。この補助装飾具53aは、2つの三つ編みパーツ53a,53bのそれぞれの編み始め部分の背面に布ファスナー(不図示)を取り付ける。これを、図6に示すように、後頭部側の毛髪の外方側から、ベース部1の左右に縫合された布ファスナー(不図示)にそれぞれ取り付ける。なお、図6では、かつらに取り付けられた毛髪の図示を省略している。このようにすることにより、ヘアアレンジを楽しむことができる。また、後頭部側の毛髪3を外方から軽く抑えることとなるので、取り付け量の少ない後頭部側の毛髪3が整った状態を保つことができる。
【0042】
このように、本件発明に係るかつらは縫合する毛髪量を少なく抑えているが、本件発明に係る補助装飾具を用いることにより、ベース部が露出することなく装飾具をかつらに取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るかつらは、特に、医療用のかつらとして効果を奏するものであるが、用途はこれに限られない。本発明に係るかつらは、軽量且つ通気性に優れ、安定した装着感が得られるので、自毛がある人にとっても、蒸れや重量感が気にならず、例えば、髪型を変えたい人が、気軽に楽しめる装飾用かつらとしても利用可能である。また、本件発明に係る補助装飾具は、上記かつらを使用する場合に、簡易な構成で髪を装飾可能であり、デザインのバリエーションも広く考えられるため、自毛がある場合とは異なる形態の装飾を楽しむことが可能である。したがって、本件発明に係るかつら及び補助装飾具は、医療用の他、自毛がある人にとっても、多彩な髪型や装飾を楽しむ道具として使用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・ベース部
2・・・開口縁部
3・・・毛髪
4・・・着脱手段
51,52,53・・・補助装飾具
図1
図2
図3
図4
図5
図6