(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各カム部は前記頂部分から切換えの前後方向になだらかに傾斜した傾斜部分を備え、前記フランジ部が前記傾斜部分と係合する位置を変更することにより、前記弁体が開閉する前記出口側ポートを通じて流れる流量を可変としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の電動弁。
前記弁体の配置と前記カム部材の形状とに基づいて、前記カム部材の回転位置に対応して、前記複数の弁体の開閉についての全組合せパターンが用意されており、前記カム部材の前記回転位置を選択することで、前記複数の弁体の一つの前記開閉パターンが選択されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載の電動弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えば、冷蔵庫においては、冷凍室、冷蔵室及び野菜室にそれぞれ蒸発器を設けてそれぞれの室の冷却を確実に行わせるようにする傾向にあり、このような冷蔵庫では上記のような従来の三方弁、或いは四方弁のような切換弁では対応できない。また、飲料等の自動販売機の冷凍システムにおいては、季節に応じて運転モードの変更に伴って流路や流量を切り換える必要があるが、従来の切換弁では対応できない。更に、電動弁は、モータの回転出力を、ねじ機構のような回転運動を軸方向運動に変換する運動変換機構を介して弁体のリフトに変換しているが、複数の流路の選択(切換)パターンが限定的で流路選択の自由度が小さい、という問題がある。
【0006】
また、切換先の流出口数が増加すると、各弁のリフトを制御するためのモータ出力の分解能が低下して精密な弁開度制御が更に困難になるとともに、流出口とその流出口を開閉する弁体とを配置するためのスペースが増大して当該電動弁が大型化する傾向がある、という問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、上記問題を解消できる電動弁として、冷凍室、冷蔵室及び野菜室にそれぞれ蒸発器を設けてそれぞれの室の冷却を確実に行わせる冷蔵庫等に対応可能であって、切り換える流路の数が増えても大型化せず、流路に設けた弁の可能な限り多くの、そして好ましくは全ての開閉パターンを確保することを可能にし、更に差圧の大きな作動流体を用いる場合や大容量の作動流体を扱う場合であっても微小流量での制御性を確保することができる四方弁等の電動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動弁は、流体が流入する入口側ポート及び流体が流出する複数の出口側ポートを有する弁本体と、前記弁本体に取り付けられる非磁性金属材料製の円筒形状のキャンと、前記キャンの内側に配置されると共にフランジ部を有し、前記複数の出口側ポートをそれぞれ開閉するように進退動可能な複数の棒状の弁体と、前記キャンの内側に回転自在に支持されるロータと、前記ロータの回転力が伝達されて回転し、前記複数の弁体のフランジ部を駆動するカム部材と、ステータとして機能するコイルユニットとを備えて、前記入口側ポートを複数の前記出口側ポートに選択的に連通するように流路を切換える電動弁であって、前記カム部材は、前記フランジ部を押し上げる頂部分を有すると共に、その径方向に同心状に配置された複数のカム部を備え、前記複数の弁体は、それぞれのフランジ部の先端が前記複数のカム部に対して選択的に当接するように、それらのフランジ部の半径が定められていることを特徴としている。
【0009】
この複数の弁体を備える電動弁によれば、切換えの数が増えて、そのために弁体の数が増えることがあっても、弁体に備わるフランジ部の半径を異ならすように選択し、弁体を駆動するカム部材についても、フランジ部の半径の種類に応じた数のカム部が設けられているので、各弁体の開閉する動作パターンが数多く、好ましくは全ての開閉パターンにまで用意することができる。弁体の配置とカムの形成位置との組み合わせによって、リングカムが回転されるとき、リフトされる弁体の組み合わせが全開閉パターンの中からいずれか一つの開閉パターンを選択することができる。
【0010】
また、上記電動弁において、前記複数の弁体を、前記カム部材の中心からほぼ等距離の位置に配置するようにしたことを特徴としている。このような構成により、各弁体を収容するための弁ガイド孔を穿孔等により形成する際、前記カム部材(あるいはロータ)の中心を基準として加工を行えば、該加工が容易となる。また、各弁体と複数のカム部のそれぞれとの距離がほぼ一定になるので、フランジ部の半径の種類を抑えることができ、当該電動弁の構造が簡略化される。
【0011】
また本発明の電動弁は、流体が流入する入口側ポート及び流体が流出する複数の出口側ポートを有する弁本体と、前記弁本体に取り付けられる非磁性金属材料製の円筒形状のキャンと、前記キャンの内側に配置されると共にフランジ部を有し、前記複数の出口側ポートをそれぞれ開閉するように進退動可能な複数の棒状の弁体と、前記キャンの内側に回転自在に支持されるロータと、前記ロータの回転力が伝達されて回転し、前記複数の弁体の前記フランジ部を駆動するカム部材と、ステータとして機能するコイルユニットとを備えて、前記入口ポートを複数の前記出口側ポートに選択的に連通するように流路を切換える電動弁であって、前記カム部材は、前記フランジ部を押し上げる頂部分を有すると共に、その径方向に同心状に配置された複数のカム部を備え、前記複数の弁体のフランジ部は、それぞれほぼ同一の半径を有すると共に、それぞれの前記フランジ部の先端が前記複数のカム部に対して選択的に当接するように、前記複数の弁体それぞれの、前記カム部材の中心からの位置が定められていることを特徴としている。
【0012】
この複数の弁体を備える電動弁によれば、切換えの数が増えて、そのために弁体の数が増えることがあっても、カム部材の中心から弁体までの距離を異ならすだけで、複数の弁体として同一品を用いることができるので、各弁体の開閉する動作パターンが数多く、好ましくは全ての開閉パターンにまで用意することができ、また当該電動弁の構成が簡略化される。弁体の配置とカムの形成位置との組み合わせによって、リングカムが回転されるとき、リフトされる弁体の組み合わせが全開閉パターンの中からいずれか一つの開閉パターンを選択することができる。
【0013】
また、上記電動弁において、前記フランジ部は、弁体の外周全周に亘って形成されたことを特徴としている。この電動弁によれば、弁体がその昇降時に回転しても、フランジ部とカム部との当接を常に良好に維持することができる。
【0014】
また、上記電動弁において、前記カム部材は、前記複数の弁体の外側に配置されていることを特徴としている。
また、上記カム部材が前記複数の弁体の外側に配置されている電動弁において、前記カム部材の外側に配置されたカム部の頂部分は、該カム部材の内側に配置されたカム部の頂部分よりも高くされていることを特徴としている。
【0015】
また、上記電動弁において、前記カム部材は、前記複数の弁体の内側に配置されていることを特徴としている。
また、上記カム部材が前記複数の弁体の内側に配置されている電動弁において、前記カム部材の内側に配置されたカム部の頂部分は、該カム部材の外側に配置されたカム部の頂部分よりも高くされていることを特徴としている。
【0016】
また、上記電動弁において、前記各カム部は前記頂部分から切換えの前後方向になだらかに傾斜した傾斜部分を備え、前記フランジ部が前記傾斜部分と係合する位置を変更することにより、前記弁体が開閉する前記出口側ポートを通じて流れる流量を可変としたことを特徴としている。
【0017】
また、上記電動弁において、前記弁体の配置と前記カム部材の形状とに基づいて、前記カム部材の回転位置に対応して、前記複数の弁体の開閉についての全組合せパターンが用意されており、前記カム部材の前記回転位置を選択することで、前記複数の弁体の一つの前記開閉パターンが選択されることを特徴としている。
【0018】
また、上記電動弁において、前記ロータの回転を減速して伝達する遊星歯車機構を備え、 前記カム部材は、前記頂部分が前記遊星歯車機構の側へ突出するように形成されていることを特徴としている。このように遊星歯車機構を用いてロータの回転を減速することにより、カム部材の回転角度を微小に設定することが可能であり、各弁体の開閉動作、あるいは流量制御動作が精緻に行われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による電動弁は、上記のように前記フランジ部を押し上げる頂部分を有すると共に、その径方向に配置された複数のカム部を備えるようにカム部材を構成し、かつそれぞれのカム部に、それぞれが動作を必要とする各弁体のフランジ部先端が対向して、当接(係合)するように、各弁体を構成し配置したので、カム部材がロータによって回転される間に弁体の切換えを数多く行うことができ、切り換える流路の数が増えても大型化せず、流路に設けた弁の開閉パターンのバリエーションをより多く作ることができ、好ましくは全ての開閉パターンを確保することを可能にすることができる。
即ち、従来の電動弁では、一つの弁体についてのみ開閉することを考慮しており、他の弁体の開閉の組み合わせまでは考慮されていなかった。例えば、一つの弁について全開か全閉の二通りの開閉制御があるとするとき、3つの弁が対象となっていれば、合計で八つの開閉パターンが存在するが、一つの環状のカム部では、周方向に数多くのリフト用の凸部を用意することは困難であった。しかしながら、本発明によれば、他の弁体の開閉動作との組合せまでを含めた種々の開閉パターンについて作動させることができる電動弁を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面に基づいて、この発明による電動弁の実施例を説明する。
図1は、本発明の電動弁の一実施例の全体構造を示す断面図であり、
図2は
図1に示す電動弁の要部の機構を、四方弁を例に取って概念的に示す説明図である。
【0022】
全体を符号1で示す電動弁は、複数の直径を有する段付きの柱状体である弁本体10を有し、弁本体10には後述する冷媒等の入口となる常時開放された入口側ポート11(
図2)と複数の出口側ポート12がロータ30の回転軸に平行な軸線方向に設けられる。図示の例は四方弁であるので、一つの入口側ポート11に対して三つの出口側ポート12が設けられる。なお、入口側ポート11は、ロータ30の回転軸に平行な軸線方向以外の方向に設けられても良い。
【0023】
図に示す各ポートには配管14が接続される。弁本体10の上部には、入口側ポート11と各出口側ポート12とを連通するように、該弁本体10の外周方向に環状に形成された連通空間(空隙部)200を介して弁支持部100が一体に形成され、出口側ポート12の上端に弁シート110a〜110c(110で総称する)が形成される。この例においては、入口側ポート11と3本の出口側ポート12はほぼ90度間隔で、かつ中心からの距離がほぼ同一となるように配置されている。また、前記環状の連通空間200は、キャン20の内部に連通している。
【0024】
弁支持部100は3本の出口側ポート12のそれぞれと同軸(即ちロータ30の回転軸に平行)でかつ上下に貫通する3つの弁ガイド孔210を備え、各弁ガイド孔210内において3本の棒状の弁体120a〜120c(120で総称する)がその軸方向に摺動自在に支持される。即ち、3本の出口側ポート12(弁シート110)は、それぞれ3つの弁体120及び弁体120が挿入された弁ガイド孔210の軸線と同一軸線を備えている。
【0025】
上述のように、弁本体10の外周面からその内側に向かって環状の連通空間200が形成され、連通空間200内の上下相対向する面に弁シート110と弁ガイド孔210が正対して開口するように該弁本体10が形成されているため、出口ポート12、弁シート110及び弁ガイド孔210を同一の加工機(ドリル)を用いて同時に加工を行うことができ、この結果、弁シート110と弁ガイド孔210とをそれぞれ別部材に構成して配置する場合に比較して、各出口側ポート12の中心軸と各弁ガイド孔210の中心軸とがずれることなく、それぞれの同軸度が確保され、各弁による流体の制御を極めて良好に行うことができる。また、弁シート110と弁ガイド孔210とをそれぞれ別部材に構成して配置する場合では、弁体120が複数であるときに同心度のずれが累積して生じるおそれがあるが、この実施例ではそのような懸念もない。また、入口側ポート11も、出口側ポート12と同様に(出口側ポート12と平行に)弁本体10に形成されているので、その加工や成形も出口側ポート12の場合と同様に行うことができ、弁本体10の製作が複雑化することがない。
なお、
図1の例においては、弁本体10にはさらに配管14が挿入される孔が形成されているが、該孔は弁本体とは別の部品に形成し、該部品に弁本体10を固定する構成をとっても良い。
【0026】
弁本体10の上部には、非磁性の金属材料で製作される円筒形状のキャン20がリング状の受部材10aを介して取り付けられる。キャン20のキャン内部20aには、入口側ポート11から流入する冷媒等が充満される。なお、受部材10aは弁本体10に直接形成されても良く、その場合、キャン20は直接弁本体10に取り付けることができる。
【0027】
キャン20内には磁性材料で製作されるロータ30が回転自在に配設される。ロータ30は連結部材32を介して回転部材70に連結され、回転部材70の下部には回転カム部材80が取り付けられる。回転カム部材80は円筒状であり、その内部には、当該回転カム部材80の中心軸方向に突出する環状の複合カム部150が設けられている。この複合カム部150の周方向の一部領域には、3本の弁体120a〜120cを選択的に上方に移動させるための凸部(
図2に関して後述する内側カム部151及び外側カム部152の頂部分)が上方に突出するように設けられている。
環状の複合カム部150の下面は、弁支持部100の上面に摺動自在に載置される。
【0028】
シャフト60は、回転部材70の中心に挿通され、該回転部材70を回動自在に支持し、その下端部は弁本体10に設けた穴に圧入等により固定されている。またシャフト60の上部は、キャン20の頂部近傍に設けた受け部材62により保持される。
シャフト60の外周部には、回転部材70の下面と若干の間隙を保つようにキャップ90が固定され、キャップ90と弁体120の段付きを構成するフランジ部122(
図2)との間に縮装されたスプリング92により、弁体120は弁シート110に向けて付勢される。
【0029】
上記の構成を有することにより、シャフト60及びキャップ90は、一体となって弁本体10に固定され、このシャフト60を中心軸として、ロータ30、連結部材32、回転部材70及び回転カム部材80が一体となって回転可能となっている。なお、受け部材62をキャン20内に固定すると共に、シャフト60をさらに受け部材62に固定するようにしても良い。
【0030】
各弁体120は、弁本体10内において、回転カム部材80の径方向内側に、該カム部材の中心からほぼ等距離の位置に配置されている。弁体リフト用の複合カム部150は、回転カム部材80の内側に付設されていて且つ弁体120よりも中心軸線から外寄り側に配置されているので、弁体120のフランジ部122(
図2)に対してロータ30の回転中心の外寄りかつ下側から係合する。リフトしている弁体120aでは、複合カム部150が弁体120aのフランジ部122aの下面に当接して、弁体120aを押し上げている。また、リフトしていない弁体120bは、弁シート110bに着座しており、弁体120bのフランジ部122bと複合カム部150との間には隙間はあって当接していない。
【0031】
キャン20の外周部にはステータとして機能するコイルユニット40が着脱自在に取り付けられる。このコイルユニット40は巻線42を巻き付けたボビン44を樹脂46で覆った構造を有する。
巻線42は電線50を介してターミナル54に接続され、リード線52を介して外部の給電装置に接続される。ステータとして機能するコイルユニット40とキャン20の内部のロータ30は、ステッピングモータ(パルスモータ)を構成する。このステッピングモータは例えば96パルスでロータ30が360度回転する仕様を備える。
【0032】
弁本体10における弁体120の配置は、複合カム部150の内側に円形状に並んだ配置(弁本体10や弁支持部100と同心の円上に弁体120の軸線が置かれた配置)となっている。複合カム部150の凸部が弁体120のフランジ部の先端に当接し、該弁体120がリフトされることにより弁シート110が開となる。リフトしていない弁体120は弁シート110に着座しているので、複合カム部150と弁体120のフランジ部122の先端との間には隙間がある。
【0033】
図2は、本発明の電動弁の一実施例の要部を概念的に示す説明図であり、
図2(a)は電動弁の要部の斜視図、
図2(b)は
図2(a)に示す電動弁に用いられている環状のカム部材80に設けられた複合カム部150を示す斜視図、
図2(c)は
図2(a)に示す電動弁に用いられている弁体の斜視図である。
【0034】
図2(a)には、弁本体10の弁シート形成面10b及び弁支持部100、連通空間200、弁支持部100のガイド孔210に摺動自在に挿入された3本の弁体120a〜120c、及び回転カム部材80に設けられた環状の複合カム部150のみが示されている。
弁本体10には、前述のように常時開放される入口側ポート11が出口側ポート12と同様に設けられる。本発明の弁本体10にあっては出口側の3つのポート12に連通する3個の弁シート110a,110b,110cが形成される。図示の状態では、弁体120a及び120cが弁シート110a,110cを開いており、弁体120bが弁シート110bを閉じている。
この実施例では、弁体120a及び弁シート110aを備える第1の弁、弁体120b及び弁シート110bを備える第2の弁、及び弁シート110cを備える第3の弁は、弁本体10の中心(シャフト60の中心軸線)からほぼ等距離で、かつ第1の弁と第2の弁との間、及び第2の弁と第3の弁との間は、該中心回りでほぼ90度の角度で離れているが、この配置はあくまでも例示であり、設計により変更可能である。
【0035】
図2(c)に示すように、本実施例では、2本の弁体120a及び120bはほぼ同じ形状(直径や長さがほぼ同一)を有しているが、他の1本の弁体120cはフランジの半径のみ異なるものの、その他の形状については弁体120a及び120bと同じである。各弁体120a〜120cは、弁体の弁軸方向の同じ位置にフランジ122a〜122cを備えているが、弁体120cに備わるフランジ部122cの半径R2は、弁体120a,120bに備わるフランジ部122a,122bの半径R1と比べて大きく設定されている。いずれの弁本体120a〜120cも、弁シート110a〜110c側の端部は、テーパー状に形成されていて、その円錐面が弁シート110a〜110cの開口周縁に係合・離脱することで弁を開閉する先端部123a〜123cを有している。なお、各弁体120a〜120cは、既に説明したように、フランジ部122a〜122cの上面に作用するスプリング92によって、常に弁を閉じる方向に付勢されている。
【0036】
図2に示されているように、環状の複合カム部150は、3本の弁体120a〜120cを内側に囲むように弁支持部100上に載置されている。複合カム部150は、その径方向に同心状に重ねられた内外2層のカム部(内側カム部151と外側カム部152)を備えた複合カムであり、即ち、径方向の幅w1の内側カム部151と径方向の幅w2の外側カム部152とから構成されている。複合カム部150の製作については、内外の2層のカム部151,152を接合させてもよいが、一体物として2層構造のように形成してもよい。
【0037】
内側カム部151は、半径R1でフランジ部122a,122bが形成されている弁体120a,120bを昇降させるためのカム部である。即ち、弁体120a,120bは、そのフランジ部122a,122bの半径R1が小さいために、内側カム部151にのみ係合可能である。一方、弁体120cは、そのフランジ部122cの半径R2が大きいので、外側カム部152(及び内側カム部151)に係合可能である。
【0038】
このように、弁体120a、120bは、それらのフランジ部122a、122bの先端が内側カム部151と対向するように配置され、また弁体120cは、そのフランジ部122cの先端が外側カム部152と対向するように配置されている。そして、各弁体120a、120b、120cは、それぞれのフランジ部122a、122b、122cが、前記内側カム部151又は外側カム部152に選択的に当接するように、構成されている。
【0039】
この例では、内側カム部151は、周方向に並ぶ凸部として、弁体120a,120bをリフトする三つの頂部分153と、頂部分153から切換えの前後方向(周方向)になだらかに傾斜した傾斜部分154とを備えた山状凸部であり、周方向に隣合う凸部の間は、底部分155となっている。一方、外側カム部152は、一つの頂部分156と、頂部分156から切換えの前後方向(周方向)になだらかに傾斜した傾斜部分157とを備えた山状凸部であり、周方向に隣合う傾斜部分157,157の間は、底部分158となっている。
【0040】
内側カム部151の頂部分153の高さと、外側カム部152の頂部分156の高さとは同じ高さ(即ち、頂部分153と頂部分156とは同じレベルの最大カム高さを有する)であり、互いに繋がっている場合には、連続する一つの頂部分を形成している。
【0041】
内側カム部151は、それ自体が内側に配設されているので、外側カム部152の形状に関わらず弁体120a,120bのリフトを制御することができる。外側カム部152は、頂部分156が存在している領域では、内側カム部151の形状に関わらず弁体120cをリフト状態に制御できる。しかしながら、頂部分156が存在しない領域では弁体120cを閉弁状態に制御しようとするものであるが、このとき、内側カム部151の頂部分153が存在していると、弁体120cはフランジ部122cが頂部分153に従う動作をしてしまうので、設計の際にこうした状況は回避されるものにする。
【0042】
かかる頂部分の形成に際しての制限を考慮し、内側カム部151と外側カム部152とを合わせた環状のカム部を、各弁体に対して遠い側から近い側にまで広がった幅広の頂部分(内側カム部151の頂部分153及び外側カム部152の頂部分156)と、各弁体に対して遠い側にのみ存在する幅狭となった頂部分(外側カム部152の頂部分156)とにより構成する。
【0043】
したがって、半径が大きいフランジ部122cを備える弁体120cは、幅広の頂部分にも幅狭の頂部分にも係合可能である。一方、半径の小さいフランジ部122a,122bを備える弁体120a,120bは、幅広の頂部分には係合可能であるが、幅狭の頂部分には係合不能となっている。幅広の頂部分においては、半径が大きいフランジ部122cは、内側カム部151が凸部として備えている頂部分153及び外側カム部152の頂部分156の双方によってリフトされるので、その頂部分153に隣接する外側カム部152の頂部分156を低くなるように形成してもよい(外側カム部152の低くなった部分のフランジ部122cへの作用は無効である)。
【0044】
内側カム部151又は外側カム部152が、その頂部分153,156において、弁体120a〜120cのフランジ部122a〜122cに係合して弁体120a〜120cをリフトしている状態では、弁体120a〜120cは弁シート110a〜110cから離れて、弁は開弁状態にある。
【0045】
このように、本電動弁の基本動作は各弁体の開閉動作であるが、凸部の傾斜部分の途中で回転カム部材80の回転を停止し弁体のリフトを止めることで、流量制御を行うこともできる。即ち、内側カム部151と外側カム部152の各凸部は、弁体を押し上げる頂部分153,156から切換の前後方向になだらかに傾斜した傾斜部分154,157を備えており、弁体120のフランジ122が傾斜部分154,157に係合するときには、出口側ポート110は部分的な開き状態となる。したがって、複合カム部150の回転位置を調整して各弁体120の傾斜部分154,157への係合位置を変えることによって、各弁体120が開閉する出口側ポート110の弁開度が変更され、出口側ポート110を通じて流れる流量を制御することができる。
【0046】
更に、弁体120a〜120cのフランジ部122a〜122cが、内側カム部151の底部155又は外側カム部152の底部158に対応した位置にあるときは、弁体120a〜120cは、スプリング92の作用によって弁本体10の弁シート形成面10bに向かって付勢されており、弁シート110a〜110cを閉じている。
【0047】
図1に示す電動弁の要部の機構とその動作が、
図3a及び
図3b(以下、総称するときは
図3という)において、概念的に説明されている。
図3は、本発明による電動弁が、環状カム部材80の回転に応じて、出口側ポート110a〜110cを切り換えられる構造の一例を説明する図であり、
図3の上側部分は平面模式図、下側部分は各弁体の動作を示す展開図である。ここで、展開図は、弁体とその近傍を所定範囲だけ描いており、周方向(展開方向)に完全に連続しているわけではなく、説明用の図である。
【0048】
図3においては、幅広の頂部及び幅狭の頂部のレイアウトの一例、すなわち、内側カム部151の頂部分153及び底部分155、並びに外側カム部152の頂部分156及び底部分158のレイアウト(カムレイアウト)の一例が示されており、入口側ポート11の図示は省略されている。また
図3の模式図においては、前記幅広の頂部分は右上がりのハッチングで示され、幅狭の頂部分はクロスハッチングで示されている。さらに
図3の展開図においては、さらに底部分155、158も右上がりのハッチングで示されている。
【0049】
さて、環状の複合カム部150はパルスモータによって回転駆動されるが、ここでは、パルスモータにおける96パルス駆動で複合カム部150が1回転するように設計されている。また適宜設定されるパルスモータの回転の基準位置からの回転角(すなわちパルスモータに供給されるパルス数)に応じて、弁シート110a〜110cの開閉が行われる。
【0050】
図3では、同図に示されたカムレイアウトを備えた複合カム部150の回転角と、各弁体120a〜120cの動作との関係が示されており、パルス数(0P,10P,16P,24P,38P,48P,58P及び74P)に応じて、
図3aに示す動作パターン[1],[2],[3]及び[4]、
図3bに示す動作パターン[5],[6],[7]及び[8]が得られることを示している。すなわち
図3は、三本の弁体120a〜120cの開閉についての全組合せである八つの動作パターンが得られることを示している。もちろん、頂部分にはその円周方向に幅を有しているので、そのパルス数の近傍のパルス数においてもそれぞれの動作パターンが維持される。なお、
図3においては、回転角と動作パターンとの代表的な組合せのみを示しており、他の回転角と動作パターンの組み合わせもあるが、これについては後述する。
【0051】
図3に示す図では、
図2に示す同じ要素や部位には
図2に用いたのと同じ符号を用いることで、再度の説明を省略する。動作パターンは[1]から[8]まで、複合カム部150が時計方向に回転することで順次得ることができる。
【0052】
図3aに示すように、動作パターン[1](パルス0P)では、弁体120aは、そのフランジ部122aにおいて内側カム部151の頂部分153に係合することでリフトされていて、出口側ポート110aが開いている状態にある。また、弁体120cは、そのフランジ部122cにおいて内側カム部151の頂部分153と外側カム部152の頂部分156に係合することでリフトされていて、出口側ポート110cが開いている状態にある。弁体120bは、スプリング92に付勢されていて出口側ポート110bを閉じている状態にあり、そのフランジ部122bは、内側カム部151の底部分155から離れていて非係合の状態にある。したがって、弁体120aと120cとが開弁している。
【0053】
動作パターン[2](パルス10P)では、弁体120a及び120bは、フランジ部122a,122bにおいて内側カム部151の頂部分153に係合することなく、スプリング92により下方向に付勢されていて、出口側ポート110a,110bを閉じている状態にある。また、弁体120cも、そのフランジ部122cが内側カム部151の底部分155と外側カム部152の底部分158とに対応する位置にあって、スプリング92により下方向に付勢されていて出口側ポート110cを閉じている状態にある。即ち、全弁体120a〜120cは全て閉弁状態にある。
なお、動作パターン[1]の状態から弁体120aのフランジ部122aが内側カム部151の頂部分153から外れた直後においては、弁体120cのフランジ部122cは外側カム部152の頂部分156にまだ係合しているので、該動作パターン[1]から[2]に移行する間には、短時間ではあるが、弁体120a及び120bが閉、弁体120cが開(後述の動作パターン[7])の状態が存在する。
【0054】
動作パターン[3](パルス16P)では、弁体120b及び120cについては閉弁状況は変わらない。弁体120aのみが、フランジ部122aにおいて内側カム部151の頂部分153に係合することでリフトされ、出口側ポート110aを開弁している。
動作パターン[4](パルス24P)では、弁体120aは引き続き内側カム部151の頂部分153に係合しているが、弁体120bがそのフランジ部122bにおいて内側カム部151の頂部分153に係合し始めてリフトし、出口側ポート110bを開く。弁体120cは閉弁状態を維持している。したがって、弁体120aと120bが開弁している。
【0055】
図3bに示すように、動作パターン[5](パルス38P)では、弁体120aは、内側カム部151の頂部分153から外れて底部分155に対応した位置を占め、スプリング92により下方向に付勢されていて出口側ポート110aを閉じる状態に変更される。弁体120bは、動作パターン[4]から[5]へ至る途中で、フランジ部122bと内側カム部151の頂部153との係合が一旦外れ、弁体120bが一旦閉弁するが、その後、再度、フランジ部122bにおいて内側カム部151の頂部分153に再度係合開始してリフトし、出口側ポート110bを開く。弁体120cは閉弁状態を維持している。したがって、弁体120bのみ開弁している。
なお、動作パターン[4]の状態から弁体120bのフランジ部122bが内側カム部151の頂部分153から外れた直後においては、まだ弁体120aのフランジ部122aが内側カム部151の頂部分153に係合しているので、この状態では弁体120aは開、弁体120b及び120cは閉(前述の動作パターン[3])の状態となる。またその後、動作パターン[5]に至るまでの間は、弁体120aのフランジ部122aは内側カム部151のフランジ部153から外れるため、全ての弁体120a〜120cが閉(前述の動作パターン[2])の状態が存在する。
【0056】
動作パターン[6](パルス48P)では、弁体120aは、フランジ部122aが内側カム部151の頂部分153に係合し、弁体120bについては開弁状況に変更はなく、弁体120cは、そのフランジ部122cにおいて内側カム部151の頂部分153及び外側カム部152の頂部分156に係合を開始してリフトし、出口側ポート110cを開く。したがって、全弁体120a〜120cが開弁している。
なお、この動作パターン[6]に至る直前においては、弁体120cのフランジ部122cが内側カム部151の頂部153及び外側カム部152の頂部156に係合してから、弁体120aのフランジ部122aが内側カム部151の頂部153に係合するので、その期間のみ、弁体120aが閉、弁体120b及び120cが開(後述の動作パターン[8])の状態が存在する。
【0057】
動作パターン[7](パルス58P)では、弁体120a及び弁体120bは、フランジ部122a,122bが内側カム部151の頂部分153,153からそれぞれ外れて閉弁状態となり、弁体120cのみが、そのフランジ部122cにおいて外側カム部152の頂部分156との係合を維持し、出口側ポート110cを開いた状態を保つ。したがって、弁体120cのみが開弁している。
【0058】
動作パターン[8](パルス74P)では、弁体120aの閉弁状態は変わらないが、弁体120bは、フランジ部122bが内側カム部151の頂部分153に係合して開弁状態となる。弁体120cにおいては、そのフランジ部122cにおいて外側カム部152の頂部分156との係合を維持するので、出口側ポート110cを開いた状態を維持する。したがって、弁体120b及び弁体120cが開弁している。
【0059】
上記のような動作の基準位置となるパルス0Pの位置は、例えば
図1に示すように、固定側である弁支持部100の外周部にストッパとなるピン102を植設し、回転カム部材80の下方に脚部84を突出するように形成し、これらを突き当てることにより設定することができる。
【0060】
図4には、本発明による電動弁の別の実施例の断面図が示されている。
図4に示す電動弁1aでは、マグネットロータの回転をそのまま、弁体よりも径方向外側に配置されているカム部に伝える構造を採用している
図1に示す電動弁1に代えて、マグネットロータの回転を、不思議遊星歯車機構を用いることにより大きく減速し、且つその中心軸上に配置した出力軸に出力させる構造を備えている。
図4に示す実施例はこの点以外は
図1に示す実施例と同等の構造になっているので、それら同等のものには
図1に示す電動弁について使用した符号と同じ符号を用いることで再度の説明を省略する。
【0061】
不思議遊星歯車機構93は、連結部材32と一体に構成され且つロータ30の回転が連結部材32を介して入力されるサンギア94と、サンギア94に噛み合う複数の遊星ギア95と、弁支持部100に固着された筒体96aに支持されており且つ遊星ギア95の上半分と噛み合う固定のリングギア96と、遊星ギア95の下半分と噛み合い且つ固定リングギア96と歯数が僅かに異なる出力ギア97とを備えている。
【0062】
出力リングギア97にはその中心側に円柱状の回転カム部材81が固定されており、出力リングギア97は回転カム部材81を介してシャフト60の回りに回転可能と支持されている。また回転カム部材81の下端部の外周には、弁体リフト用の複合カム部160が取り付けられている。このように、出力リングギア97、回転カム部材81及び複合カム部160は、一体的に構成されている。
遊星ギア95の回転を支持しながら自らも回転するキャリア98が出力リングギア97に相対回転可能に支持されている。
【0063】
複合カム部160は弁本体10のシート形成面10bに回転可能に載置されており、また、出力リングギア97と、スプリング92の上端を受けるばね受け99との間に微小な隙間が形成されるように、該ばね受け99が筒体96aの内部に固定されている。
各弁体120は、弁本体10において、回転カム部材81の径方向外方に配置されている。弁体リフト用の複合カム部160は、回転カム部材81の外側に付設されていて且つ弁体120よりも中心軸線寄りに配置されているので、弁体120のフランジ部122に対してロータ30の回転中心寄りの下側から係合する。
リフトしている弁体120aでは、複合カム部160が弁体120aのフランジ部122a先端の下面に当接して、弁体120aを押し上げている。また、リフトしていない弁体120bは、弁シート110bに着座しており、弁体120bのフランジ部122b先端と複合カム部160との間には隙間はあって当接していない。
【0064】
不思議遊星歯車機構93を用いることにより、ロータの回転が大きく減速されてカム部材81に伝達されるので、出力トルクが大きくなって、冷媒のような差圧の大きな作動流体を用いる場合や大容量の作動流体を扱う場合にも作動可能であり、しかもステータに入力される制御用パルスに対する弁体120のリフト量を高精度に制御できるので、微小流量制御が可能となっている。
【0065】
図5は、
図4に示されている電動弁1aの要部の機構を、四方弁を例に取って概念的に示す説明図である。
図5(a)はその斜視図、
図5(b)は
図4に示す電動弁に用いられている環状のカム部材を示す斜視図である。
図5に示す実施例において、弁本体10、弁支持部100及び各弁体120については、
図2に示す実施例の構造と同じであるので、同じ符号を付すことで、これらの重複する説明を省略する。
【0066】
回転カム部材81に設けられた環状の複合カム部160は、外側カム部161と内側カム部162との内外2層に構成されている。外側カム部161がフランジ部の半径が小さい弁体120a及び120bのリフト制御のためのカム部であり、内側カム部162がフランジ部の半径が大きい弁体120cのリフト制御のためのカム部である。外側カム部161及び内側カム部162のカム形状(頂部分163,166;傾斜部分164,167;底部分165,168)については、それぞれ
図2に示す内側カム部151と外側カム部152と内外の位置及びサイズが異なる以外は同等であるので、その形状及び作用について再度の説明を省略する。
【0067】
以上、本発明について、図面を参照しつつ実施例について説明したが、本電動弁はこうした実施例に限られるものではない。
すなわち、前述の各実施例は、本発明が、入口ポートが一つで出口ポートが三つある四方弁に適用された事例を示しているが、本発明はこれのみに限定されることはなく、二方弁、三方弁、あるいは五方弁以上の多方切換弁や流量制御弁に適用されても良い。
【0068】
また、回転カム部材80、81は、複合カム部150、160と一体成型されても、あるいは別体で成形しそれらを一体化するものであっても良い。さらに、複合カム部160は、複合カム部150と同様に、外側カム部161及び内側カム部162を一体成型しても、あるいは別体で成形しそれらを一体化するものであっても良い。
また、フランジ部の半径に関わらず、各弁体にはほぼ同一の弁軸が設けられるものとしたが、例えば、各出口ポートの口径がそれぞれ異なる場合には、それに応じて直径の異なる弁軸としても良い。
【0069】
さらに、
図2、
図3及び
図5に示されるように、各フランジ部は弁軸の全周に亘って円盤状に形成されているが、各弁体をその昇降時に回転しないように構成すれば、フランジ部は円盤状である必要はなく、カム部に対応する部分にのみ形成されれば良い。
【0070】
さらにまた、
図1から
図3に示された実施例においては、各弁体は、回転カム部材の中心からの距離がほぼ同一となるように配置されると共に、内側カム部にのみ係合する短い半径を有するフランジ部を備えた弁体と、外側カム部(及び内側カム部)に係合する長い半径を有するフランジ部を備えた弁体とを用いるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、フランジ部の半径を各弁体においてほぼ同一とし、内側カム部にのみ係合する弁体の、回転カム部材の中心からの距離を小さくして、該弁体のフランジ部を内側カム部にのみに係合するようにすると共に、外側カム部(及び内側カム部)に係合する弁体の、その回転カム部材の中心からの距離を大きくして、該弁体のフランジ部を外側カム部(及び内側カム部)に係合するようにしても、各弁体を、それぞれのフランジ部が前記内側カム部又は外側カム部に選択的に当接、係合するように、構成することが出来る。
【0071】
同様に、
図4及び
図5に示された実施例においても、フランジ部の半径を各弁体においてほぼ同一とし、外側カム部にのみ係合する弁体の、回転カム部の中心からの距離を大きくすると共に、内側カム部(及び外側カム部)に係合する弁体の、その回転カム部の中心からの距離を小さくするようにしても、外側カム部にのみ係合する弁体と、内側カム部(及び外側カム部)に係合する弁体とを得る事が出来る。
【0072】
また、環状の複合カム部の形状・構造については、実施例で示した内外2層構造に限らず、径方向に3層、4層等となった多層構造でも実現可能である。図示の例は、環状の複合カム部の幅は、内側カム部及び外側カム部により構成された幅広のカム部と幅狭のカム部との2種類しか形成していないが、例えば3層構造のカム部を構成するには、内側カム部及び外側カム部の間にそれらの中間に位置する中間カム部を準備し、それらを一体成型又は一体化すると共に、弁体120のフランジ122についても中程度の張出のものを形成して、3種類の幅のカム部と弁体との組み合わせを構成してもよい。また、更にカム部と弁体のフランジとの幅の種類を増やして、組合わせの種類を増やすことも可能である。
また、図示の例では、弁の開閉に利用される回転カム部材の回転角度は、全周の4分の3(リングカムとしては4分の3回転で全パターンを実現可能になっている。)程度であるが、全周(一周)を利用してもよいことは明らかであり、これにより出口ポートの数を多くした場合における複雑な開閉パターンへの対応、出口ポートの口径を大とした場合の対応、あるいはカム部の傾斜部分の傾斜を緩やかにすることができるからこれによる流量調整の精緻な制御が可能となる。
【0073】
一方、回転カム部材の回転角度を全周の4分の3未満とすることも出来、これにより出口ポートの数を少なくした場合において各弁体の開閉切換速度の向上、当該電動弁の小型化などの対応が可能となる。
回転カム部材の回転角度を全周としない場合には、該回転カム部材をその回転角度の範囲で形成するようにしても良い。
【0074】
また、本電動弁において、内側又は外側のカム部151,152;161,162においては凸部としての山(頂部分)の高さを同じにしたもので説明したが、例えば、
図1〜
図3の実施例においては、弁本体120の中心から遠い側の外側カム部152の頂部分156の高さを、内側カム部151の頂部分153より高くする等の変更をすることもできる。
【0075】
この場合、内側カム部にのみ係合するフランジ部を備えた弁体の弁シート部と、内側カム部及び外側カム部の双方に係合するフランジ部を備えた弁体の弁シート部との位置(高さ)を共通としておけば、内側カム部及び外側カム部の双方に係合する弁体の昇降ストロークを、内側カム部にのみ係合する弁体の昇降ストロークよりも大きくすることが出来、これにより、内側カム部にのみ係合する弁体と、内側カム部及び外側カム部の双方に係合する弁体とにより開閉される各弁を通過する流体の最大流量を異なる量にすることができる。すなわち、それぞれの出口ポートの径が同一であるとした場合には、内側カム部にのみ係合する弁体の開弁動作により流れる流量が、出口ポートの最大流量よりも小さくなるようにしておけば(出口ポートの全開状態時における流量よりも絞られるようにしておけば)、そのときの流量よりも、内側カム部及び外側カム部の双方に係合する弁体を開としたときの流量の方が大きくなる。
【0076】
また、外側カム部の頂部分の高さと、内側カム部の頂部分の高さを異ならせる場合でも、その高さの差分だけ弁シート部の高さを変えれば、それぞれの弁体の開閉ストロークを変わらないこととすることができるので、各弁の開時における流量をほぼ同一とすることができる。
【0077】
またもちろん、
図4及び
図5の実施例においても、上記同様に、内側カム部162の頂部分166を外側カム部分161の頂部分163より高くする等の変更をすることもできる。
【0078】
更に、前述の実施例における電動弁において、使用するパターンは、必ずしも8パターンを全て使うということではない。ニーズに応じて使用するパターンを選択することが可能である。すなわち、
図3に示されたカムレイアウトは一例であり、当該電動弁の大きさや、出口ポートの数、フランジ部の半径、カム部の半径、あるいは流量制御を行う場合にはカム部の傾斜部分の傾斜角度等に応じて適宜、カムレイアウトを設計することができる。
さらにまた、
図1〜
図3の実施例においては、回転カム部材の内側に弁体を配置する場合の駆動源として、パルスモータの回転が直接回転カム部材に伝達される形態のものを用いるとし、また
図4〜
図5の実施例においては、回転カム部材の外側に弁体を配置する場合の駆動源として、パルスモータのロータの回転が減速機構を介して回転カム部材に伝達される形態のものを用いるとしたが、本発明はこれのみに限定されることはなく、減速機構の有無、あるいはその形態はいかなるものであっても良く、また回転駆動源も、特にパルスモータである必要はないことは当然である。