(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バーナーと熱交換器とを設けた燃焼ユニットを複数備え、燃焼ファンを回転させて、該燃焼ファンを共用する複数の該燃焼ユニットに対して同時に燃焼用空気を供給しながら該複数の燃焼ユニットの少なくとも一つのバーナーに燃料を供給することによって、該燃料が供給された燃焼ユニットの燃焼運転を行う複合熱源機において、
前記複数の燃焼ユニットの中で単独の燃焼ユニットが燃焼運転している状態である単独運転時に、該単独運転している燃焼ユニットについての前記熱交換器のフィン目詰まりに関する指標を取得する指標取得手段と、
前記フィン目詰まりに関する指標を取得すると、該指標を前記燃焼ユニット毎に記憶する指標記憶手段と、
2つ以上の前記燃焼ユニットが同時に燃焼運転している状態である同時運転時には、該同時運転している燃焼ユニットについての前記指標に基づいて、前記燃焼ファンの回転速度を補正する回転速度補正手段と
を備え、
前記回転速度補正手段は、前記同時運転中の前記燃焼ユニットについて記憶されている複数の前記指標の中で、前記フィン目詰まりが進んでいない方の指標に応じて定められた許容量以内で、前記フィン目詰まりが進んでいる方の指標に基づいて前記回転速度の補正量を決定する補正量決定手段を備え、
前記補正量決定手段によって決定された補正量に従って、前記燃焼ファンの回転速度を補正することを特徴とする複合熱源機。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.複合熱源機の構造:
B.フィン目詰まりの検出原理:
C.同時運転時の燃焼ファン回転速度補正の概要:
C−1.給湯側ランクおよび風呂側ランクの取得処理:
C−2.第1実施例のファン回転速度補正処理:
C−3.第2実施例のファン回転速度補正処理:
D.変形例:
D−1.第1変形例:
D−2.第2変形例:
D−3.第3変形例:
【0022】
A.複合熱源機の構造 :
図1は、本実施例の複合熱源機10の大まかな構造を示した断面図である。図示した複合熱源機10は、缶体1の内部が、仕切り壁8によって2つの領域に区分されており、それぞれの領域には、後述するバーナーおよび熱交換器が搭載されている。たとえば、
図1の紙面上で右側に表示された領域(以下、「第1領域」と称することがある)について説明すると、右側の第1領域の下部には第1バーナー2−1が搭載されており、第1領域の上部には第1熱交換器3−1が搭載され、そして第1バーナー2−1と第1熱交換器3−1との間には第1燃焼室7−1が形成されている。
【0023】
第1バーナー2−1は、缶体1の前後方向(
図1の紙面に対して直交する方向)に細長く形成された複数の単位バーナー2aが、所定の隙間を空けて、缶体1の左右方向(
図1の紙面に平行な方向)に複数配列して構成されている。また、第1熱交換器3−1は、缶体1の前後方向に隙間を空けて多数積層した吸熱フィン3aと、これら吸熱フィン3aを貫通して蛇行する吸熱管3bと、吸熱フィン3aの端部を封止する封止板3cなどによって形成されている。また、第1熱交換器3−1の吸熱管3bの上流側には、図示しない給水管が接続されており、吸熱管3bの下流側には、図示しない出湯管が接続されている。そして、出湯管の下流端に設けられた出湯栓を開いて第1熱交換器3−1に通水すると、第1バーナー2−1に点火されて、出湯栓から設定温度の湯が出湯されるようになっている。
【0024】
図1の紙面上で左側に表示された領域(以下、「第2領域」と称することがある)についても同様に、第2領域の下部には第2バーナー2−2が搭載されて、第2領域の上部には第2熱交換器3−2が搭載され、そして第2バーナー2−2と第2熱交換器3−2との間には第2燃焼室7−2が形成されている。第2バーナー2−2は複数の単位バーナー2aから構成されており、第2熱交換器3−2は多数積層した吸熱フィン3aと、蛇行する吸熱管3bと、封止板3cなどによって形成されている。また、第2熱交換器3−2の吸熱管3bの上流側には、図示しない戻り管が接続されており、吸熱管3bの下流側には、図示しない往き管が接続されている。そして、図示しない循環ポンプを起動すると、浴槽内の湯水が汲み上げられるとともに第2バーナー2−2に点火されて、第2熱交換器3−2で温められた湯水が浴槽に戻されるようになっている。尚、風呂よりも給湯の方が大きな加熱能力を要求されるため、風呂用の第2バーナー2−2を構成する単位バーナー2aの個数よりも、給湯用の第1バーナー2−1を構成する単位バーナー2aの個数の方が多くなっている。
【0025】
缶体1の下部は分布板4で仕切られることによって給気室5が形成されており、分布板4には多数の分布孔4aが形成されている。そして、給気室5に接続された燃焼ファン6を回転させると、燃焼ファン6からの空気が給気室5に流入し、分布板4の分布孔4aを介して、燃焼用空気として第1バーナー2−1および第2バーナー2−2に供給されるようになっている。そして、第1バーナー2−1の燃焼ガスは第1燃焼室7−1を介して第1熱交換器3−1に導かれ、第1熱交換器3−1に設けられた吸熱フィン3aの間を通過する際に、吸熱管3b内の湯水を温める。同様に、第2バーナー2−2の燃焼ガスは第2燃焼室7−2を介して第2熱交換器3−2に導かれ、第2熱交換器3−2に設けられた吸熱フィン3aを通過する際に、吸熱管3b内の風呂水を温める。その後、第1熱交換器3−1および第2熱交換器3−2の上方に設けられた共通の排気フード9を通って、排気口9aから缶体1の外部に排出される。
【0026】
また、複合熱源機10には、第1バーナー2−1あるいは第2バーナー2−2への燃料ガスの供給および点火や、浴槽用の循環ポンプの動作などを制御するコントローラー12も搭載されている。詳細には後述するがコントローラー12には、後述する温度センサー11からの信号が入力され、その結果に基づいて燃焼ファン6の回転速度を制御するようになっている。
【0027】
図2は、
図1中のP−P位置での断面を取ることによって単位バーナー2aの構造を示した説明図である。図示されるように単位バーナー2aの下部には、缶体1の前方向(
図2の紙面上では左方向)にのびる混合管部2bが設けられている。また、混合管部2bの下方には分布板4が設けられており、分布板4の前部は上方に向かって折り曲げられて、給気室5の前部に立上り部5aが形成されている。この立上り部5aの前面側はガスマニホールド2cによって閉塞されており、ガスマニホールド2cには、複数のガスノズル2dが設けられ、そして、ガスノズル2dに対向する位置の立上り部5aには、円形の開口部が設けられている。この開口部に臨むように、混合管部2bのラッパ状に開口した流入端が設けられている。従って、図中に破線の矢印で示したように、ガスノズル2dから燃料ガスを噴射すると、立上り部5aの燃焼用一次空気とともに混合管部2bに流入して、混合管部2bの内部で混合気を形成した後、単位バーナー2aへと供給される。
【0028】
図3は、缶体1の内部に設けられた仕切り壁8の構造を示す断面図である。図示されるように、仕切り壁8は、2枚の壁板81の間に、隙間を空けて中仕切り板83が設けられた中空構造となっている。このうち、壁板81には、単位バーナー2aの上端と同等の高さの位置で外側に折り曲げて形成された肩部81aと、肩部81aの外縁から下方に延びる垂下板部81bとが形成されている。従って、2つの壁板81の間の隙間は、垂下板部81bの部分で広くなっている。そして、この広くなった部分が、分布板4に形成された連通孔4aを介して給気室5に連通している。また、それぞれの壁板81の肩部81aには、複数の空気吹出し孔82が開設されている。更に、壁板81の上端には、内側に折り曲げて形成された折曲げ部81cが形成されており、折曲げ部81cの端部で中仕切り板83の上端を挟むようにして結合されている。また、折曲げ部81cには、複数の通気孔84が形成されている。
【0029】
このため、燃焼ファン6を回転させると、給気室5を介して、2つの垂下板部81b間の隙間に比較的多量の空気が供給され、この空気の一部が肩部81aに設けられた空気吹出し孔82から壁板81の外面に沿って上方に吹き出すとともに、残りの空気は、壁板81と中仕切り板83との間の隙間を通って、上端に形成された通気孔84から流れ出る。その結果、壁板81の外側は空気吹出し孔82から吹き出す空気によって冷却され、内側は中仕切り板83との隙間を流れる空気によって冷却されることになって、仕切り壁8の耐熱性を確保することが可能となる。
【0030】
更に、
図3に示されるように、2つの壁板81の間には温度センサー11が挿入されている。そして、壁板81の温度センサー11が挿入された部分は、外側に膨出する膨出部85が形成されている。そして、膨出部85が形成されることによって、壁板81に接触しないような状態で温度センサー11が挿入されている。
【0031】
図4は、
図1中のQ−Q位置での断面を取ることによって、温度センサー11が取り付けられた状態を示した説明図である。温度センサー11は、パイプ状のセンサー本体11cの先端に、サーミスターや熱電対などの感温素子が内蔵されて感温部11aが形成されており、尾端側にはフランジ状の固定部11bが形成されている。また、固定部11bからは、感温素子に接続されたリード線11dが引き出されている。このリード線11dはコントローラー12に接続される。
【0032】
そして、温度センサー11の固定部11bが缶体1の前面に当接するまでセンサー本体11cを挿入すると、感温部11aが、仕切り壁8の前後方向のほぼ中央位置にまで挿入される。また、こうして感温部11aが挿入される位置にも膨出部85が形成されている。このため、2つの壁板81,81に接触しないように、感温部11aを設置することが可能となっている。尚、温度センサー11がその全長に亘って両壁板81,81に非接触であると、温度センサー11は、尾端の固定部11bだけで固定されることになって、温度センサー11の先端の感温部11aの位置にばらつきが生じる。そこで、壁板81の温度センサー11が挿入される部分から挿入方向に沿って細長く形成された膨出部85には、途中の部分(感温部11aの手前側)に平らな挟持部86が形成されており、この挟持部86でセンサー本体11cを両側から挟むようにして、温度センサー11を位置決めするようになっている。
【0033】
以上のような構成を有する複合熱源機10では、第1バーナー2−1で発生した燃焼ガスは第1熱交換器3−1の吸熱フィン3aの間を通過し、第2バーナー2−2で発生した燃焼ガスは第2熱交換器3−2の吸熱フィン3aの間を通過する。そして、複合熱源機10を長期に亘って使用する間には、吸熱フィン3aの間に煤や埃が堆積して、燃焼ガスが通り難くなる「フィン目詰まり」が発生することがある。フィン目詰まりが発生すると、燃焼ガスが通り難くなる分だけ、燃焼ファン6からの燃焼用空気の供給量が減少し、燃料ガスに対する空気の比率(いわゆる空燃比)が設計時の最適な比率からずれてしまう。その結果、正常な燃焼状態を維持できなくなる虞が生じる。そこで、本実施例の複合熱源機10では、第1熱交換器3−1あるいは第2熱交換器3−2でフィン目詰まりが発生しているか否かを、以下のような方法によって検出する。
【0034】
B.フィン目詰まりの検出原理 :
図5は、本実施例の複合熱源機10が第1熱交換器3−1または第2熱交換器3−2でのフィン目詰まりの発生有無を検出する原理を示した説明図である。
図5では、複合熱源機10の断面の一部が拡大して示されている。フィン目詰まりが発生していない場合は、単位バーナー2aでの燃焼によって生じた燃焼ガスは、
図5(a)中に破線の矢印で示されるように、吸熱フィン3aの間を上方に向かって通過していく。これに対して吸熱フィン3aの一部にフィン目詰まりが発生すると、その部分は燃焼ガスが通り難くなるので、燃焼ガスはフィン目詰まりが発生した部分を避けて通過するようになる。
図5(b)中には、斜線を付すことによってフィン目詰まりの発生している部分が表示され、破線の矢印によって燃焼ガスの流れが表示されている。
【0035】
このように第1熱交換器3−1あるいは第2熱交換器3−2でフィン目詰まりが発生すると、燃焼ガスが仕切り壁8の側に偏って流れるようになる。加えて、熱交換器(第1熱交換器3−1または第2熱交換器3−2)での通路抵抗が増加するから、燃焼ファン6から供給される空気量が減少して燃焼ガスの温度が高くなる。その結果、仕切り壁8に設けられた膨出部85の温度が高くなり、膨出部85からの輻射熱によって温度センサー11の感温部11aが加熱され、高い温度が検出されるようになる。
【0036】
図6は、フィン目詰まりの程度を異ならせて、温度センサー11による検出温度の変化を計測した結果を示した説明図である。図示されているように、温度センサー11の出力(検出温度)は、燃焼を開始すると次第に上昇して、やがてある温度で安定する。また、安定化したときの温度は、フィン目詰まりの程度が大きくなるほど高くなる。従って、燃焼開始後から、検出温度が安定化するまでの時間(安定化時間)が経過した後の温度を検出することによって、フィン目詰まりの程度に関する情報を得ることができる。本実施例の複合熱源機10では、このような原理を利用して、第1熱交換器3−1および第2熱交換器3−2のフィン目詰まりの程度を検出する。
【0037】
尚、
図3を用いて前述したように、温度センサー11は2つの壁板81の間に挿入されており、そして、2つの壁板81は隙間を空けた状態で設けられている。従って、一方の壁板81の膨出部85が加熱された時に、その熱が熱伝導(いわゆる熱引け)によって他方の壁板81に伝わることがない。更に、間には中仕切り板83が設けられているから、一方の壁板81からの輻射によって、他方の壁板81が加熱されることもない。このため温度センサー11は、第1熱交換器3−1あるいは第2熱交換器3−2の何れでフィン目詰まりが発生した場合も、加熱されている方の壁板81の影響を受けることなく、フィン目詰まりが発生した側の膨出部85が加熱されたことを同じように検出することができる。加えて、温度センサー11のセンサー本体11cは、挟持部86によって両側から挟まれるようにして位置決めされている。このため、温度センサー11の感温部11aからは、何れの側の膨出部85までの距離も同じとなるので、第1熱交換器3−1または第2熱交換器3−2の何れのフィン目詰りも精度良く検出することが可能となっている。
【0038】
一般に、フィン目詰まりが検出された場合には、燃焼ファン6の回転速度をアップさせることが行われる。燃焼ファン6の回転速度を増加させれば空気の供給量が増えるので、フィン目詰まりによる空気量の減少を補って、燃料ガスと燃焼用空気との比率を適正な比率に戻すことができる。その結果、燃焼状態を良好な状態に復帰させるとともに、燃焼ガス温度を正常な温度に回復させることができる。
【0039】
しかし、
図1に示した本実施例の複合熱源機10のように、1つの燃焼ファン6から、第1バーナー2−1および第2バーナー2−2に同時に燃焼用空気を供給している場合には、事情が若干異なったものとなる。すなわち、第1バーナー2−1および第2バーナー2−2が同時に燃焼している状態で、一方の熱交換器でフィン目詰まりが発生したからといって燃焼ファン6の回転速度を増加させると、他方のバーナーへの空気の供給量も増加してしまう。その結果、他方のバーナーでは燃料ガスに対する空気の比率(空燃比)が設計時の最適な値よりも大きく(空気が過剰に)なって、良好な燃焼状態を維持することが困難となる場合が生じ得る。もちろん、フィン目詰まりが発生しているにも拘わらず燃焼ファン6の回転速度を増加させなければ、フィン目詰まりが発生した方のバーナーで良好な燃焼状態を維持できなくなる場合が生じ得る。
【0040】
そこで、本実施例の複合熱源機10では次のような制御を行うことにより、第1バーナー2−1および第2バーナー2−2が同時に燃焼している場合でも、燃焼ファン6の回転速度を適切に補正することで、良好な燃焼状態を維持することが可能となっている。
【0041】
C.同時運転時の燃焼ファン回転速度補正の概要 :
図7は、本実施例の複合熱源機10が、第1バーナー2−1および第2バーナー2−2の同時燃焼中にも燃焼ファン6の回転速度を補正するために行っている制御の概要を示したフローチャートである。この処理は、複合熱源機10に搭載されたコントローラー12によって実行される処理である。
【0042】
処理を開始すると、複合熱源機10が運転中か否か(すなわち、第1バーナー2−1または第2バーナー2−2の何れかが燃焼中か否か)を判断する(ステップS10)。前述したようにコントローラー12は、第1熱交換器3−1への通水を検出して第1バーナー2−1に点火する動作や、浴槽用の循環ポンプを動作させたり、第2バーナー2−2に点火したりする動作などを制御していることから、複合熱源機10が運転中か否かを直ちに判断することができる。その結果、複合熱源機10が運転中でなければ(ステップS10:no)、そのまま処理を終了した後、再び先頭に戻って、ステップS10の判断を繰り返す。これに対して、複合熱源機10が運転中であった場合は(ステップS10:yes)、風呂側が運転中(すなわち、第2バーナー2−2が燃焼中)であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0043】
その結果、風呂側が運転中ではなかった場合は(ステップS12:no)、給湯側が単独で運転している状態(第1バーナー2−1は燃焼中であるが、第2バーナー2−2は燃焼中ではない状態)と判断できる。そこで、この場合は、給湯側のランクを取得する処理を開始する(ステップS100)。ここでランクとは、フィン目詰まりが発生しているか否か、およびフィン目詰まりが発生している場合は、その程度を示す指標である。また、
図1を用いて前述したように本実施例の複合熱源機10には、給湯用の第1熱交換器3−1と風呂用の第2熱交換器3−2とが設けられており、それぞれでフィン目詰まりが発生し得るから、フィン目詰まりの程度を示す指標であるランクも給湯側と風呂側とで取得する。給湯側のランクを取得する処理については、後ほど詳しく説明する。
【0044】
一方、風呂側が運転中(第2バーナー2−2が燃焼中)であった場合は(ステップS12:yes)、今度は、給湯側が運転中(第1バーナー2−1が燃焼中)であるか否かを判断する(ステップS14)。その結果、給湯側は運転中ではなかった場合は(ステップS14:no)、風呂側が単独で運転している状態(第1バーナー2−1は燃焼中ではないが、第2バーナー2−2は燃焼中である状態)と判断できる。そこで、この場合は、風呂側のランクを取得する処理を開始する(ステップS200)。尚、風呂側のランクは、給湯側のランクとほとんど同じ処理によって取得することができる。そこで、風呂側のランクを取得する処理の詳細については、給湯側のランクを取得する処理とまとめて説明する。
【0045】
これに対して、給湯側が運転中であった場合は(ステップS14:yes)、第1バーナー2−1および第2バーナー2−2が同時に燃焼していることになる。そこで、第1熱交換器3−1でのフィン目詰まりの状態、および第2熱交換器3−2でのフィン目詰まりの状態に応じて、燃焼ファン6の回転速度を適切に補正するべく、ファン回転速度補正処理を開始する(ステップS300)。詳細については後述するが、ファン回転速度補正処理では、給湯側ランク取得処理(ステップS100)で取得した給湯側のランク、および風呂側ランク取得処理(ステップS200)で取得した風呂側のランクに基づいて、燃焼ファン6の回転速度を補正する。その結果、給湯側と風呂側とでフィン目詰まりの程度が異なっている状態で、給湯側の第1バーナー2−1および風呂側の第2バーナー2−2を同時燃焼させた場合でも、何れのバーナーも良好な燃焼状態に保つことが可能となる。
【0046】
C−1.給湯側ランクおよび風呂側ランクの取得処理 :
図8は、給湯側のランクを取得するために行われる給湯側ランク取得処理のフローチャートである。この処理は、
図7を用いて前述したように、給湯用のバーナー(第1バーナー2−1)が単独で燃焼している場合(給湯側が単独運転している場合)に、コントローラー12によって実行される処理である。給湯側ランク取得処理を開始すると、先ず始めに、給湯側の単独運転が開始されてから安定化時間が経過したか否かを判断する(ステップS102)。ここで安定化時間とは、
図6を用いて前述したように、温度センサー11の検出温度がほぼ安定化するまでに要する時間である。安定化時間としては、代表的には120秒〜180秒程度の時間に設定される。その結果、単独運転が開始されてから未だ安定化時間が経過していない場合は(ステップS102:no)、温度センサー11の検出温度が変化している途中であり、フィン目詰まりの程度を反映した温度になっていないと考えられるので、フィン目詰まりの程度に関する指標であるランクを取得することなく、給湯側ランク取得処理を終了する。
【0047】
これに対して、給湯側の単独運転が開始されてから安定化時間が経過している場合は(ステップS102:yes)、現在の給湯側ランクの値(ランク値L)を取得する(ステップS104)。すなわち、コントローラー12に内蔵されたメモリーには、給湯側および風呂側のそれぞれについてランク値Lを記憶する領域が設けられており、初期状態ではそれぞれのランク値Lは「0」に設定されているが、給湯側あるいは風呂側のランクを取得するたびに、対応するランク値Lが更新されるようになっている。ステップS104では、コントローラー12のメモリーに記憶されている給湯側ランクのランク値Lを読み出す処理を行う。
【0048】
そして、読み出した給湯側のランク値Lが「0」であるか否かを判断し(ステップS106)、ランク値Lが「0」であれば(ステップS106:yes)、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(0)よりも高いか否か(等しい場合は含めない)を判断する(ステップS108)。ここで閾値温度Th(0)とは、ランク値Lが「0」であるか「1」であるかを判断するための閾値となる温度である。すなわち、
図6を用いて前述したように、安定化時間が経過した後の温度センサー11の検出温度は、フィン目詰まりが発生していない場合が最も低く、フィン目詰まりの程度が大きくなるにつれて高くなる。従って、フィン目詰まりの程度を、全く目詰まりしていない状態(ランク値L=0)から、目詰まりが非常に進んだ状態(ランク値L=5)までの6段階に分けるのであれば、Th(0)〜Th(4)へと次第に温度が高くなるように5つの閾値温度Thを設定しておき、温度センサー11の検出温度と、それら閾値温度Thとを比較することによって、ランク値Lを決定することができる。コントローラー12のメモリーには、給湯側のランク値Lを決定するために5つの閾値温度Th(0)〜Th(4)が記憶されている。そして、ここでは、現在の給湯側のランク値Lが「0」であるとしているから(ステップS106:yes)、ランク値Lが「0」または「1」の何れであるかを判断するための閾値温度Th(0)をメモリーから読み出して、温度センサー11の検出温度と比較するのである。
【0049】
その結果、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(0)よりも高くない場合は(ステップS108:no)、フィン目詰まりは発生しておらず、現在のランク値L「0」から変更する必要はないので、そのまま給湯側ランク取得処理を終了して、
図7の処理に復帰する。これに対して、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(0)よりも高かった場合は(ステップS108:yes)、所定の保持時間(たとえば30秒)が経過しても、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(0)よりも高い状態が変わらないことを確認して(ステップS110:yes)、給湯側のランク値Lを1つ増加させる(ステップS112)。これに対して、所定の保持時間が経過する間に、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(0)よりも低くなった場合は(ステップS110:no)、ランク値Lを増加させることなく、そのまま給湯側ランク取得処理を終了して、
図7の処理に復帰する。
【0050】
前述したように温度センサー11の感温部11aは、膨出部85からの輻射熱によって間接的に加熱されるだけであり、更に感温部11aやセンサー本体11cにも熱容量があるので、そもそも温度センサー11の検出温度は急激に変化するものではない。逆に言えば、保持時間が経過すると、検出温度が閾値温度Th(0)よりも低くなったということは、何らかのノイズの影響で検出温度が高くなってしまったか、あるいは検出温度が閾値温度Th(0)とほとんど一致している場合に該当するものと考えられる。従って、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(0)よりも高かった場合は(ステップS108:yes)、所定の保持時間(たとえば30秒)が経過しても、その状態が変わらないことを確認することにより、本当にフィン目詰まりが発生している場合にだけ、ランク値Lを増加させることが可能となる。尚、保持時間が経過しても状態が変わらないことを確認するに際しては、最も簡単には保持時間の経過後にもう一度、検出温度と閾値温度とを比較するようにしても良いが、できれば保持時間が経過するまでの間、継続的にあるいは一定の間隔で何回かに亘って、検出温度と閾値温度とを比較することが望ましい。
【0051】
以上では、現在のランク値Lが「0」と判断した場合(ステップS106:yes)の処理について説明した。これに対して、現在のランク値Lが「0」では無かった場合は(ステップS106:no)、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(L)よりも高いか否か(等しい場合は含めない)を判断する(ステップS114)。たとえば、現在のランク値Lが「1」であれば、ランク値Lを「2」に増やすか否かを判断するための閾値温度Th(1)と、温度センサー11の検出温度とを比較する。また、現在のランク値Lが「2」であれば、ランク値Lを「3」に増やすか否かを判断するための閾値温度Th(2)と比較する。このように、現在のランク値Lに応じて定まる閾値温度Th(L)と、温度センサー11の検出温度とを比較して、検出温度が閾値温度Th(L)よりも高いか否かを判断する。尚、前述したように閾値温度Th(0)〜Th(4)は、コントローラー12のメモリー内に記憶されている。
【0052】
その結果、温度センサー11の検出温度が、現在のランク値Lに対応する閾値温度Th(L)よりも高かった場合は(ステップS114:yes)、所定の保持時間(たとえば30秒)が経過しても、その状態が変わらないことを確認して(ステップS116:yes)、給湯側のランク値Lを1つ増加させる(ステップS118)。これに対して、所定の保持時間が経過する間に、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(L)よりも低くなった場合は(ステップS116:no)、ランク値Lを増加させることなく、そのまま給湯側ランク取得処理を終了して、
図7の処理に復帰する。尚、保持時間が経過しても状態が変わらないことを確認するに際しては、保持時間が経過するまでの間、継続的にあるいは一定の間隔で何回かに亘って、検出温度と閾値温度とを比較することが望ましい。
【0053】
また、現在のランク値Lを1つ増加させた場合には(ステップS118)、増加後のランク値Lが「5」に達したか否かを判断する(ステップS120)。そして、ランク値Lが「5」に達している場合は(ステップS120:yes)、フィン目詰まりがたいへんに進んでいるものと考えられるので、安全のために給湯側の運転を緊急停止させる。一方、ランク値Lが「5」に達していない場合は(ステップS120:no)、そのまま給湯側ランク取得処理を終了して、
図7の処理に復帰する。
【0054】
一方、温度センサー11の検出温度が、現在のランク値Lに対応する閾値温度Th(L)よりも高くはなかった場合は(ステップS114:no)、今度は、その閾値温度Th(L)−30よりも低いか否か(等しい場合は含めない)を判断する(ステップS122)。その結果、検出温度が閾値温度Th(L)−30よりも低かった場合は(ステップS122:yes)、所定の保持時間が経過してもその状態が変わらないことを確認して(ステップS124:yes)、現在のランク値Lを1つ減少させる(ステップS126)。これに対して、温度センサー11の検出温度が閾値温度Th(L)−30よりも低くはなかった場合や(ステップS122:no)、あるいは検出温度が閾値温度Th(L)−30よりも低くなったものの(ステップS122:yes)、保持時間が経過するまでの間にその状態が変わった場合(ステップS124:no)は、現在のランク値Lを減少させることなく、そのまま給湯側ランク取得処理を終了して
図7の処理に復帰する。
【0055】
このように、本実施例の給湯側ランク取得処理では、現在のランク値Lに対応する閾値温度Th(L)を取得すると、その閾値温度Th(L)を、ランク値Lを増加させるか否かを判断するための閾値として使用し、また、その閾値温度Th(L)より30度だけ低い温度を、ランク値Lを減少させるか否かを判断するための閾値として使用している。もちろん、ランク値Lを減少させるか否かを判断するための閾値となる温度を、ランク値L毎に閾値温度Th(L)として記憶しておき、この閾値温度Th(L)を読み出して、現在のランク値Lを減少させるか否かを判断しても良い。
【0056】
以上では、給湯用の第1バーナー2−1が単独燃焼している場合(
図7のステップS12:yes)に行われる給湯側ランク取得処理(ステップS100)について説明した。これに対して、風呂用の第2バーナー2−2が単独燃焼している場合(
図7のステップS14:yes)には、風呂側ランク取得処理(ステップS200)を行う。この風呂側ランク取得処理では、
図8を用いて説明した給湯側ランク取得処理と全く同様な処理が行われる。但し、風呂側ランク取得処理で参照する閾値温度Th(0)〜Th(4)には、給湯側ランク取得処理で参照する閾値温度Th(0)〜Th(4)よりも、若干高めの温度が設定されている
【0057】
以上に説明したように本実施例の複合熱源機10では、給湯側または風呂側の単独運転時に、それぞれ給湯側または風呂側でのフィン目詰まりの程度を示すランク値Lを取得しておく。そして、給湯側および風呂側の同時運転時には、予め取得しておいたランク値Lに基づいて、以下に説明するファン回転速度補正処理を行う。
【0058】
C−2.第1実施例のファン回転速度補正処理 :
図9は、第1実施例のファン回転速度補正処理を示すフローチャートである。
図7を用いて前述したように、この処理は、給湯側および風呂側が同時運転されている場合に、コントローラー12によって実行される処理である。
【0059】
第1実施例のファン回転速度補正処理(ステップS300)を開始すると、先ず始めに、コントローラー12のメモリー内に記憶されている給湯側ランク値および風呂側ランク値を取得する(ステップS302)。続いて、給湯側および風呂側の何れのランク値も「0」であるか否かを判断する(ステップS304)。前述したようにランク値「0」は、フィン目詰まりが発生していないことを示すランク値である。そこで、何れのランク値も「0」であれば(ステップS304:yes)、燃焼ファン6の回転速度を補正する必要はないので、
図9のファン回転速度補正処理を終了して、
図7に示した処理に復帰する。
【0060】
これに対して、給湯側あるいは風呂側の何れかのランク値が「0」ではなかった場合は(ステップS304:no)、補正テーブルを参照することによって、燃焼ファン6の回転速度の補正量を決定する(ステップS306)。
図10は、コントローラー12のメモリーに予め記憶されている補正テーブルを示した説明図である。図示されるように補正テーブルには、給湯側のランク値および風呂側のランク値の組み合わせに対応付けて、燃焼ファン6の回転速度の補正量が設定されている。たとえば、給湯側ランク値が「0」で、風呂側ランク値が「2」の組み合わせに対しては、標準として設定されている燃焼ファン6の回転速度を5%だけ増加させる旨が設定されている。従って、ステップS302で取得した給湯側ランク値および風呂側ランク値に基づいて、
図10の補正テーブルを参照することにより、燃焼ファン6の回転速度の補正量を決定することができる。ここで、給湯側ランク値および風呂側ランク値に対する補正量は、次のようにして設定されている。
【0061】
図11は、給湯側ランク値および風呂側ランク値に対する補正量が決定される様子を示した説明図である。給湯側も風呂側もフィン目詰まりが発生していない状態(何れのランク値も「0」)では、
図11(a)に示されるように、給湯用のバーナー(第1バーナー2−1)も、風呂用のバーナー(第2バーナー2−2)も、空気過剰率が標準値となるように、燃焼ファン6の回転速度が設定されている。ここで空気過剰率とは、燃料ガスに対して空気がどの程度過剰であるかを示す指標である。空気過剰率「1」は燃料ガスをちょうど燃焼させるだけの空気が供給されている状態(過剰な空気が存在しない状態)を表し、「1」より小さい空気過剰率は、燃料ガスを完全に燃焼させるだけの空気が供給されていない状態(空気が不足している状態)を表し、「1」より大きい空気過剰率は、燃料ガスを完全に燃焼させる以上の空気が供給されている状態(空気が過剰な状態)を表している。空気過剰率が小さくなると燃料ガスが不完全燃焼となり、逆に大きくなると燃料ガスが燃焼しなくなる(失火する)。このため、給湯用のバーナー(第1バーナー2−1)や、風呂用のバーナー(第2バーナー2−2)を適切な状態で安定して燃焼させるためには、空気過剰率を適正な範囲(許容可能な下限値から許容可能な上限値の間)に保っておく必要がある。そして、フィン目詰まりが発生していない状態では、給湯側の空気過剰率も風呂側の空気過剰率も、下限値および上限値の何れに対しても余裕を持たせた標準値となるように、燃焼ファン6の回転速度が設定されている。
【0062】
尚、上述したように空気過剰率が小さくなると不完全燃焼状態となり、更に空気過剰率が小さくなると燃料ガスが燃焼できなくなる(失火する)。従って、空気過剰率には、燃料ガスが燃焼可能な下限値および上限値が存在する。しかし、
図11に示した空気過剰率の下限値および上限値は、このような燃焼可能な限界値(失火限界値)ではなく、燃料ガスを許容可能なレベルで安定して燃焼させることが可能な限界値(失火限界値に対しては余裕を持たせた限界値)である。
【0063】
ところが、給湯側あるいは風呂側の何れか一方で目詰まりが発生したとする。すると、目詰まりが発生した側は熱交換器での通路抵抗が増加するので、空気の供給量が減少して空気過剰率が低下する。また、目詰まりが発生していない側では、もう一方の側で通路抵抗が増加したことによる影響で、空気の供給量が増加して空気過剰率が増加する。
図11(b)には、給湯側で軽度(ランク値1)のフィン目詰まりが発生し、その影響で給湯側の空気過剰率が低下するとともに、風呂側の空気過剰率が高くなっている様子が示されている。尚、給湯側の空気過剰率が黒い丸印で示されており、風呂側の空気過剰率が白い丸印で示されているのは、給湯側の方が風呂側よりもフィン目詰まりが進んでいることを表している。
【0064】
図11(b)に示されるように、一方でランク値1程度のフィン目詰まりが発生した程度では、給湯側および風呂側のどちらの空気過剰率も、許容範囲内(下限値から上限値までの間)に留まっている。従って、この状態では、燃焼ファン6の回転速度を補正する必要はない。また、給湯側の空気過剰率は標準値よりも低下しているものの、風呂側の空気過剰率は標準値よりも高くなっているので、給湯側の空気過剰率を標準値に近づけようとして燃焼ファン6の回転速度を増加すると、風呂側の空気過剰率は標準値から遠ざかることになる。このため、仮に燃焼ファン6の回転速度を補正しても、補正によって改善できる余地は大きくはない。
【0065】
ところが、一方側(ここでは給湯側)でのフィン目詰まりがランク値2まで進行すると、
図11(c)中に実線で示されるように、給湯側の空気過剰率が許容可能な下限値よりも低下してしまう。そこで、給湯側の空気過剰率が下限値よりも大きくなるように、燃焼ファン6の回転速度を増加させる。また、これに伴って風呂側に供給される空気量も増加するので風呂側の空気過剰率も大きくなる。しかし、給湯側の空気過剰率が下限値を超える程度しか回転速度を増加させないので、風呂側の空気過剰率が上限値を超えることはない。
図11(c)には、燃焼ファン6の回転速度を増加させた状態での、給湯側および風呂側の空気過剰率が破線によって示されている。
【0066】
給湯側のフィン目詰まりがランク値3まで進行した場合も、ほぼ同様にして燃焼ファン6の回転速度の増加量を決定することができる。すなわち、フィン目詰まりが発生している側(ここでは給湯側)の空気過剰率が許容可能な下限値を超える程度まで、燃焼ファン6の回転速度を増加させる。また、このとき、風呂側の空気過剰率が許容可能な上限値を超えないことを確認しておく。
【0067】
もちろん、フィン目詰まりが発生した側の空気過剰率が下限値よりも大きくなるように燃焼ファン6の回転速度を増加させた時に、もう一方の空気過剰率が許容可能な上限値を超えてしまう場合も起こり得る。たとえば、
図11(d)に示したように、風呂側はフィン目詰まりしていないにも拘わらず、給湯側ではかなりの程度まで(ランク値4まで)フィン目詰まりが進んだような場合、給湯側では空気の供給量が減少して空気過剰率がかなり低下し、その一方で風呂側では、空気の供給量が増加して空気過剰率がある程度まで上昇する。このため、給湯側の空気過剰率を許容可能な下限値を超えるまで燃焼ファン6の回転速度を増加させると、風呂側の空気過剰率が許容可能な上限値を超えてしまう。これでは、フィン目詰まりが発生した側(ここでは給湯側)の燃焼を正常な状態に戻すために、正常に燃焼している側(ここでは風呂側)の燃焼状態を正常ではない状態にしていることになるから本末転倒である。そこで、このような場合には、
図11(d)に破線で示したように、フィン目詰まりが発生していない風呂側の空気過剰率が上限値となるまで、燃焼ファン6の回転速度を増加させる。その結果、給湯側の空気過剰率は下限値を若干下回る状態となってしまうが、それでも燃焼ファン6の回転速度を増加させる前に比べれば、燃焼状態を大きく改善することが可能となる。
【0068】
以上では、給湯側でのみフィン目詰まりが発生し、風呂側ではフィン目詰まりが発生していない場合について説明した。もちろん、給湯側ではフィン目詰まりが発生しておらず、風呂側でのみフィン目詰まりが発生した場合にも、全く同様にして燃焼ファン6の回転速度の増加量を決定することができる。また、給湯側および風呂側の何れでもフィン目詰まりが発生している場合は、次のようにして燃焼ファン6の回転速度の増加量を決定する。
【0069】
図12は、給湯側および風呂側のどちらでもフィン目詰まりが発生している場合に、燃焼ファン6の回転速度の増加量を決定する様子を示した説明図である。先ず、給湯側および風呂側が同じ程度にフィン目詰まりしている場合(すなわち、給湯側ランク値と風呂側ランク値とが等しい場合)は、どちらも同じように空気過剰率が低下しているものと考えられる。従ってこの場合は、給湯側および風呂側のどちらの空気過剰率も標準値となるように、燃焼ファン6の回転速度を増加させればよい。
図12(a)には、給湯側および風呂側のランク値が何れも「2」の場合に、燃焼ファン6の回転速度を増加させる様子が示されている。尚、どちらのランク値も「1」の場合のように、給湯側および風呂側の何れの空気過剰率も許容範囲内(下限値から上限値の間)に存在する。このような場合は、燃焼ファン6の回転速度を増加させなくても構わない。
【0070】
次に、給湯側および風呂側でフィン目詰まりの程度が大きく異なる場合(たとえばランク値の差が「2」以上の場合)は、次のようにして燃焼ファン6の回転速度の増加量を決定する。たとえば、
図12(b)に示したように、給湯側のランク値が「3」で、風呂側のランク値が「1」の場合、ランク値の大きい方の空気過剰率は大きく低下するが、ランク値の小さい方の空気過剰率の低下は、それよりは少ない。従ってこの場合は、ランク値の大きい方(ここでは給湯側)の空気過剰率が下限値を超えるように、燃焼ファン6の回転速度を増加させる。また、このときランク値の小さい方(ここでは風呂側)の空気過剰率が上限値を超えないように注意しておく。その結果、ランク値の小さい方の空気過剰率が上限値を超えるようであれば、上限値を超えない程度に、燃焼ファン6の回転速度の増加を止めておく。従って、ランク値の差が「3」以上の場合は、燃焼ファン6の回転速度の増加に制限がかかることになるため警告ランプなどで報知し、ランク値の大きい方は単独でしか使用できないようにすることが望ましい。
【0071】
また、給湯側および風呂側でフィン目詰まりの程度が異なるが、程度の差はそれ程大きくない場合(たとえば、それぞれのランク値の差が「1」の場合)は、ランク値の大きい方の空気過剰率が下限値を超えるまで燃焼ファン6の回転速度を増加させた時に、ランク値の小さい方の空気過剰率が標準値まで戻らない場合も起こり得る。このような場合は、もう少し回転速度を増加させることも可能である。たとえば、
図12(c)に示したように、給湯側のランク値が「2」で、風呂側のランク値が「1」の場合、ランク値が大きい方(給湯側)の空気過剰率が下限値になる程度まで燃焼ファン6の回転速度を増加させただけでは、ランク値の小さい方(風呂側)の空気過剰率は標準値付近までしか戻らない。そこで、
図12(c)に破線で示したように、どちらの空気過剰率も標準値付近となるまで、燃焼ファン6の回転速度の増加量を決定しても良い。
【0072】
図10に示した補正テーブルには、以上のようにして給湯側および風呂側のランク値に応じて決定された燃焼ファン6の回転速度の増加量が設定されている。そして、
図9のファン回転速度補正処理のステップS306では、予め取得しておいた給湯側ランク値および風呂側ランク値に基づいて、
図10の補正テーブルを参照することで、燃焼ファン6の回転速度の補正量を決定する。そして、こうして決定した補正量に従って、燃焼ファン6の回転速度を補正した後(ステップS308)、
図9のファン回転速度補正処理を終了して、
図7の処理に復帰する。
【0073】
以上に説明した第1実施例のファン回転速度補正処理では、給湯側のフィン目詰まりに関する指標である給湯側ランク値と、風呂側のフィン目詰まりに関する指標である風呂側ランク値との組み合わせに基づいて、給湯側および風呂側のどちらの空気過剰率も、許容可能な範囲内にできるだけ収まるように、燃焼ファン6の回転速度を補正することができる。このため、給湯側と風呂側とでフィン目詰まりの程度が異なった場合でも、どちらの側でも適切な燃焼状態が維持されるように、燃焼ファン6の回転速度を補正することが可能となる。
【0074】
また、給湯側ランク値および風呂側ランク値は、それぞれ給湯側あるいは風呂側の単独運転時に予め取得されており、そして、給湯側および風呂側の同時運転が開始されると、予め取得しておいた給湯側ランク値および風呂側ランク値から補正テーブルを参照するだけで、燃焼ファン6の回転速度の補正量を決定することができる。このため同時運転を開始すると、適切に補正された回転速度で、直ちに燃焼ファン6を回転させることが可能となる。
【0075】
C−3.第2実施例のファン回転速度補正処理 :
上述した第1実施例のファン回転速度補正処理では、給湯側ランク値および風呂側ランクの組み合わせに応じた補正量が、コントローラー12のメモリー内の補正テーブルに予め設定されているものとして説明した。しかし、補正テーブルを用いずとも、給湯側および風呂側のランク値に応じて回転速度を補正することも可能である。以下では、このような第2実施例のファン回転速度補正処理について説明する。
【0076】
図13は、第2実施例のファン回転速度補正処理を示すフローチャートである。この処理は、
図7に示した処理の中で、前述した第1実施例のファン回転速度補正処理(ステップS100)の代わりに実行される処理である。
図13に示されるように第2実施例のファン回転速度補正処理(ステップS350)を開始すると、先ず始めに、給湯側ランク値および風呂側ランク値を取得する(ステップS352)。これらのランク値は、コントローラー12のメモリー内に記憶されている。続いて、給湯側および風呂側の何れのランク値も「0」であるか否かを判断する(ステップS354)。その結果、何れのランク値も「0」であった場合は(ステップS354:yes)、燃焼ファン6の回転速度を補正する必要はないので、
図13のファン回転速度補正処理を終了して、
図7に示した処理に復帰する。
【0077】
これに対して、給湯側あるいは風呂側の何れかのランク値が「0」ではなかった場合は(ステップS354:no)、以下のようにして燃焼ファン6の回転速度の補正量を決定する。先ず、給湯側ランク値および風呂側ランク値の中で大きい方のランク値を選択し、そのランク値に基づいて、補正量の候補値を取得する(ステップS356)。ここで補正量の候補値としているのは、後ほど補正量が修正される場合があることに対応したものである。また、補正量の候補値は、「1」〜「4」のランク値毎に、コントローラー12のメモリー内に予め記憶されている。尚、給湯側および風呂側のランク値が同じであった場合には、ランク値が「0」の場合を除いて、何れか一方のランク値に基づいて補正量の候補値を取得する。このことに対応して、ランク値「0」に対しては、補正量の候補値は設定されていない。
【0078】
図14は、大きい方のランク値に対応づけて、燃焼ファン6の回転速度についての補正量の候補値が設定されている様子を示した説明図である。
図14(a)には、それぞれのランク値に対応づけて補正量の候補値が設定された候補値テーブルが例示されている。また、
図14(b)には、それら候補値テーブルの値が、どのような根拠によって設定されているかが説明されている。たとえば、大きい方のランク値が「1」である場合、小さい方のランク値は「0」または「1」の何れかの値しか取り得ない。そして何れの場合でも、燃焼ファン6の回転速度を大きく増加させる必要はない。そこで、ランク値「1」に対する補正量の候補値としては、比較的小さな補正量を設定しておけばよい。ここでは、どちらのランク値も「1」である場合を想定して、ランク値「1」に対する補正量の候補値としては、回転速度を2%増加させる旨が設定されている。
【0079】
また、たとえば、大きい方のランク値が「3」である場合、小さい方のランク値は「0」〜「3」の何れかの値を取り得る。仮に、小さい方のランク値が「0」であるとすると(すなわち、ランク値「3」とランク値「0」との組み合わせとすると)、
図14(b)に示すように、ランク値が「3」の側のバーナーでは空気過剰率が大きく低下し、逆にランク値が「0」の側のバーナーでは空気過剰率が標準値よりも高くなっているものと考えられる。もちろん、小さい方のランク値は「1」〜「3」の値も取り得るから、その値に応じて、ランク値の小さい側での空気過剰率も変化する。そこで、とりあえずはランク値が小さい方については目をつぶり、ランク値が大きい方にのみ着目して、ランク値が大きい方での空気過剰率が下限値を超えるように、燃焼ファン6の回転速度の補正量を候補値テーブルに設定する。尚、ランク値が大きい方での空気過剰率が下限値を超えるように、燃焼ファン6の回転速度を補正すると、ランク値の小さい方での空気過剰率が上限値を超えてしまうことも起こり得るが、候補値テーブルでは、この点については考慮することなく、補正量の候補値が設定されている。
【0080】
図13に示したファン回転速度補正処理のステップS356では、以上のようにして設定された候補値テーブルを参照することによって、大きい方のランク値に対する補正量の候補値を取得する。続いて、今度は、小さい方のランク値に基づいて、回転速度の補正量の許容値を取得する(ステップS358)。補正量の許容値も、「0」〜「4」のランク値毎に、コントローラー12のメモリー内に予め記憶されている。尚、小さい方のランク値が「4」の場合についても補正量の許容値が記憶されているのは、給湯側および風呂側のランク値が何れも「4」であった場合を考慮しているためである。
【0081】
図15は、小さい方のランク値に対応づけて、燃焼ファン6の回転速度についての補正量の許容値が設定されている様子を示した説明図である。
図15(a)には、それぞれのランク値に対応づけて補正量の許容値が設定された許容値テーブルが例示されている。また、
図15(b)には、それら許容値テーブルの値が、どのような根拠によって設定されているかが説明されている。たとえば、小さい方のランク値が「0」である場合、大きい方のランク値は「1」〜「4」の値を取り得る。仮に、大きい方のランク値が「1」であるとすると(すなわち、小さい方のランク値が「0」、大きい方のランク値が「1」という組み合わせとすると)、ランク値が「0」の側でのバーナーの空気過剰率は、もう一方の側でのバーナーでの空気過剰率が少し低下した影響で、標準値よりも高くなるものの、僅かに高くなっているに過ぎない。従って、燃焼ファン6の回転速度をかなり大きく増加させても、ランク値が「0」の側の空気過剰率が上限値に達することはないと考えられる。これに対して、仮に、大きい方のランク値が「4」であったとすると(すなわち、小さい方のランク値が「0」、大きい方のランク値が「4」という組み合わせとすると)、ランク値が「4」の側での空気過剰率が大きく低下している影響で、ランク値が「0」の側でも空気過剰率は標準値よりもかなり上昇する。従って、この場合は、燃焼ファン6の回転速度をあまり大きく増加させると、ランク値が「0」の側の空気過剰率が上限値を超えてしまうと考えられる。
【0082】
このことから、小さい方のランク値が同じように「0」の場合でも、大きい方のランク値が「0」の場合と「4」の場合とでは、ランク値が「4」の場合の方が許容可能な回転速度の増加量が小さいことになる。一般に、大きい方のランク値が大きくなるほど、許容可能な回転速度の増加量は小さくなる。そこで、小さい方のランク値が「0」である場合には、大きい方のランク値が「4」であるものとして、そのときにランク値の小さい側(ここでは、ランク値が「0」の側)での空気過剰率が上限値に達するような回転速度の増加量を、小さい方のランク値「0」に対する補正量の許容値として設定する。
【0083】
以上では、小さい方のランク値が「0」の場合に、補正量の許容値を設定する方法について説明したが、小さい方のランク値が「1」〜「4」の値をとる場合も、ほぼ同様にして、それぞれのランク値に対する補正量の許容値を設定することができる。すなわち、大きい方のランク値が「4」であるものとして、そのときにランク値の小さい側での空気過剰率が上限値に達するような回転速度の増加量を、小さい方のランク値「0」に対する補正量の許容値として設定する。尚、小さい方のランク値が大きくなるということは、ランク値が大きい側および小さい側の何れについても空気過剰率が低下することを意味している。従って、
図15(a)に示されるように、許容値テーブルに設定される補正量の許容値は、小さい方のランク値が大きくなるほど、大きな値が設定されることになる。
【0084】
図13に示したファン回転速度補正処理のステップS358では、以上のようにして設定された許容値テーブルを参照することにより、小さい方のランク値に対する補正量の許容値を取得する。そして、先に取得した補正量の候補値と、補正量の許容値とを比較して、候補値が許容値以下であるか否かを判断する(ステップS360)。すなわち、大きい方のランク値に基づいて決定した補正量の候補値が、小さい方のランク値に照らして許容される補正量であるか否かを判断していることになる。その結果、候補値が許容値以下であれば(ステップS360:yes)、候補値を最終的な補正量として決定する(ステップS362)。これに対して、候補値が許容値を超えている場合は(ステップS360:no)、許容値の方を最終的な補正量として決定する(ステップS364)。そして、こうして決定した補正量に従って、燃焼ファン6の回転速度を補正した後(ステップS366)、
図13に示した第2実施例のファン回転速度補正処理を終了して、
図7の処理に復帰する。
【0085】
以上に説明した第2実施例のファン回転速度補正処理においても、給湯側のフィン目詰まりに関する指標である給湯側ランク値と、風呂側のフィン目詰まりに関する指標である風呂側ランク値との組み合わせに基づいて、給湯側および風呂側のどちらの空気過剰率も、許容可能な範囲内に収まるように燃焼ファン6の回転速度を補正することができる。このため、給湯側と風呂側とでフィン目詰まりの程度が異なった場合でも、どちらの側でも適切な燃焼状態が維持されるように、燃焼ファン6の回転速度を補正することが可能となる。
【0086】
また、第2実施例のファン回転速度補正処理では、大きい方のランク値に対応する補正量の候補値(
図14参照)と、小さい方のランク値に対応する補正量の許容値(
図15参照)とを記憶しているだけで良く、
図10に示すような行列状の補正テーブルを記憶しておく必要がない。このため、コントローラー12のメモリー容量を節約することが可能となる。
【0087】
それでいながら、上述したように、大きい方のランク値に対応する補正量の候補値と、小さい方のランク値に対応する補正量の許容値とを読み出して、それらを比較するだけで適切な補正量を迅速に決定することができる。このため、給湯側および風呂側の同時運転を開始すると、速やかに回転速度の補正量を決定して、適切に補正された回転速度で燃焼ファン6を回転させることが可能となる。
【0088】
D.変形例 :
以上に説明した第1実施例および第2実施例においては、給湯側および風呂側のそれぞれについてフィン目詰まりに関する指標であるランク値が分かっていることが必要である。上述した説明では、給湯側あるいは風呂側の単独運転が所定の安定化時間以上継続されている状態で、温度センサー11が出力した検出温度に基づいてランク値を取得するものとして説明した(
図9参照)。しかし、給湯側および風呂側のフィン目詰まりに関する指標が得られるのであれば、
図9に示した方法に限らず、異なる方法でランク値を取得することも可能である。以下では、これらランク値を取得するための変形例について説明する。
【0089】
D−1.第1変形例 :
図16は、同時運転状態から単独運転状態に切り替わったときに、温度センサー11で検出される温度変化に基づいてランク値を検出する原理を示した説明図である。たとえば、給湯側および風呂側が同時運転されている時の温度センサー11の検出温度がThであったとして、この状態から単独運転に切り替えると、温度センサー11の検出温度が低下していく。この時、検出温度が低下する速度は、単独運転で安定化する温度に応じて異なったものとなる。
【0090】
図16(a)には、単独運転で安定化する温度が、前述した閾値温度Th(0)、Th(1)、Th(2)、Th(3)、Th(4)のそれぞれとなる場合について、同時運転から単独運転に切り替わった後に、温度センサー11の検出温度が低下する様子が示されている。図示されているように、安定化した時の温度が低いほど、検出温度が低下する速度は速くなる。更に、検出温度が安定化するまでの途中の期間では、時間とともに低下する検出温度を、比較的単純な式(たとえば直線)で近似することが可能である。従って、この期間(近似可能期間)内であれば、温度センサー11で検出した検出温度を近似式と比較することにより、安定化した時の検出温度が閾値温度Th(0)〜Th(4)よりも高いのか低いのかを予想することができ、その結果、ランク値を取得することが可能である。
【0091】
近似可能期間の設定の仕方や、近似可能期間内での近似式の立て方は種々の方法を取り得るが、たとえば、
図16(b)に例示したように、同時運転から単独運転に切り替わってからの所定時間を近似可能期間に設定し、この期間内では、温度センサー11の検出温度の低下を直線で近似することが可能である。そして、この時の直線の傾きは、切り替え時の検出温度Thと、安定化後の温度との温度差を、安定化時間の8割の時間で低下する時の傾きによって近似することができる。たとえば、仮に安定化後の検出温度が閾値温度Th(3)であれば、
図16(b)に示したように、近似可能期間内では、ほぼ(Th(3)−Th)/(0.8×安定化時間)の傾きで、温度センサー11の検出温度が低下するものと予想できる。従って、実際に温度センサー11で検出された温度が、予想された温度よりも低いのであれば、安定化したときの温度は閾値温度Th(3)よりも低くなっている筈である。第1変形例では、このような原理を利用して、同時運転から単独運転に切り替わった後で安定化時間が経過する前の段階でも、ランク値を取得することが可能である。
【0092】
図17は、第1変形例における給湯側ランク取得処理を示したフローチャートである。この処理は、
図7に示した処理の中で、前述した給湯側ランク取得処理(ステップS100)の代わりに実行される処理である。図示されるように、第1変形例の給湯側ランク取得処理(ステップS150)を開始すると、給湯側および風呂側の同時運転から、給湯側の単独運転に切り替わったのか、それとも、給湯側および風呂側の何れも運転されていない状態から、給湯側の単独運転が開始されたのかを判断する(ステップS152)。その結果、何れも運転されていない状態から給湯側の単独運転が開始されたのであれば(ステップS152:no)、ランク値を取得する処理は行わずに、第1変形例の給湯側ランク取得処理を終了する。
【0093】
これに対して、給湯側および風呂側の同時運転から給湯側の単独運転に切り替わっていた場合は(ステップS152:yes)、コントローラー12に内蔵されているタイマーをONにした後(ステップS154)、同時運転から単独運転に切り替わった時点での温度センサー11の検出温度Th、および現在のランク値L(ここでは給湯側ランク値)を取得する(ステップS156)。そして、取得した検出温度Thおよびランク値Lに基づいて、現在のランク値を増加させるか否かを判断するための閾値温度の近似式(ランクアップ用の近似式)と、現在のランク値を減少させるか否かを判断するための閾値温度の近似式(ランクダウン用の近似式)とを生成する(ステップS158)。
【0094】
図18には、ランクアップ用の閾値温度の近似式、およびランクダウン用の閾値温度の近似式が図示されている。すなわち、現在のランク値が「L」であるから、温度センサー11の検出温度が、切り替え時の温度Thから、(Th(L)−Th)/(0.8×安定化時間)の傾きよりもゆっくりと低下するのであれば、安定化時間が経過した後の温度は閾値温度Th(L)よりも高くなると考えられる。この場合は、現在のランク値を増加してもよい。従って、この近似式は、ランクアップ用の閾値温度の近似式として用いることができる。また、温度センサー11の検出温度が、切り替え時の温度Thから、(Th(L)−30−Th)/(0.8×安定化時間)の傾きよりも速く低下するのであれば、安定化時間が経過した後の温度は閾値温度Th(L)−30よりも低くなると考えられる。この場合は、現在のランク値を減少してもよい。従って、この近似式は、ランクダウン用の閾値温度の近似式として用いることができる。
図17のステップS158では、このようなランクアップ用の閾値温度の近似式、およびランクダウン用の閾値温度の近似式を生成する。
【0095】
続いて、温度センサー11の検出温度と、ランクアップ用の閾値温度、および/または、ランクダウン用の閾値温度とを比較する(ステップS160)。すなわち、温度センサー11の検出温度がランクアップ用の閾値温度よりも高い場合、あるいはランクダウン用の閾値温度よりも低い場合は、もう一方の閾値温度との比較は行わない。一方、温度センサー11の検出温度がランクアップ用の閾値温度よりも低い場合、あるいはランクダウン用の閾値温度よりも高い場合は、もう一方の閾値温度とも比較する。そして、近似可能期間が終了したか否かを、タイマーのカウント値に基づいて判断し(ステップS162)、近似可能期間が終了していなければ(ステップS162:no)、再びステップS160に戻って温度センサー11と、ランクアップ用および/またはランクダウン用の閾値温度とを比較する。尚、この比較は、近似可能期間内に最低1回行うことができればよいが、できれば複数回の比較を行えるように、所定の時間間隔で行うことが好ましい。
【0096】
こうして、温度センサー11の検出温度と閾値温度との比較を行った後(ステップS160)、近似可能期間が終了したら(ステップS162:yes)、検出温度がランクアップ用の閾値温度よりも高かったか否かを判断する(ステップS164)。近似可能期間中に検出温度と閾値温度との比較を1回しか行っていない場合は、その比較結果に基づいて判断する。また、近似可能期間中に複数回の比較を行っている場合は、それら比較結果の中で数が多い方の比較結果に基づいて判断する。この場合は、近似可能期間中に奇数の複数回の比較を行っておくことが望ましい。あるいは、複数回の比較結果が全て、検出温度がランクアップ用の閾値温度よりも高かった場合にだけ、検出温度が閾値温度より高い(ステップS164:yes)と判断するようにしてもよい。ランクアップ用の閾値温度は近似式によって与えられるから、温度センサー11の検出温度と閾値温度とが接近している場合は誤判断してしまう可能性がある。そこで、複数回の比較を行って、全ての結果が、検出温度がランクアップ用の閾値温度よりも高かった場合にだけ、検出温度が閾値温度よりも高い(ステップS164:yes)と判断するようにすれば、誤判断を回避することが可能となる。
【0097】
尚、ここでは、同時運転から単独運転に切り替わった後、近似可能期間が終了するまで、その状態が維持されるものとして説明している。しかし、近似可能期間が終了する前に同時運転に戻ってしまった場合、あるいは運転が終了してしまった場合は、次のようにすればよい。最も簡単には、単独運転の期間が十分に取れなかったものとして、直ちに処理を終了すればよい。この場合は、現在のランク値がそのまま維持されることになる。もっとも、たとえば近似可能期間に少しだけ満たない場合のように、近似可能期間が終了していなくても、十分にランク値を評価可能な場合を存在する。そこで、単独運転の時間が所定時間以上継続していれば、近似可能期間が終了していなくても、終了したものとみなして、以降の処理を継続するようにしても良い。
【0098】
そして、ステップS164で「yes」と判断した場合は、現在のランク値Lを「1」だけ増加させる(ステップS166)。その後、増加された結果、ランク値Lが「5」に達したか否かを判断し(ステップS168)、ランク値Lが「5」に達していた場合は(ステップS168:yes)、燃焼中のバーナー(ここでは、給湯側のバーナーである第1バーナー2−1)を緊急停止する。これに対して、ランク値Lが「5」に達していない場合は(ステップS168:no)、
図17に示した第1変形例の給湯側ランク取得処理(ステップS150)を終了する。
【0099】
これに対して、温度センサー11の検出温度がランクアップ用の閾値温度よりも高くはなかったと判断した場合は(ステップS164:no)、今度は、検出温度がランクダウン用の閾値温度よりも低かったか否かを判断する(ステップS170)。この判断も、ステップS164における判断と同様にして行うことができる。すなわち、近似可能期間中に検出温度と閾値温度との比較を1回しか行っていない場合は、その比較結果に基づいて判断する。また、近似可能期間中に複数回の比較を行っている場合は、それら比較結果の中で数が多い方の比較結果に基づいて判断する。あるいは、複数回の比較結果が全て、検出温度がランクダウン用の閾値温度よりも低かった場合にだけ、検出温度が閾値温度より低い(ステップS170:yes)と判断することもできる。こうすれば、ランクダウン用の閾値温度の近似式が有する誤差によって、誤判断してしまうことを回避することができる。
【0100】
その結果、温度センサー11の検出温度がランクダウン用の閾値温度よりも低いと判断した場合は(ステップS170:yes)、現在のランク値Lから「1」を減算した後(ステップS172)、
図17に示した第1変形例の給湯側ランク取得処理を終了する。これに対して、検出温度がランクダウン用の閾値温度よりも低くはないと判断した場合は(ステップS170:no)、現在のランク値Lを変更することなく、そのまま第1変形例の給湯側ランク取得処理を終了する。
【0101】
以上では、給湯側ランクを取得する処理について説明したが、風呂側ランクを取得する処理についても全く同様に行うことができる。但し、閾値温度Th(0)〜Th(4)の値については、給湯側ランクを取得する場合と異なる値に設定しても良い。また、ランクアップ用あるいはランクダウン用の閾値温度の近似式についても、給湯側ランクを取得する場合と、風呂側ランクを取得する場合とで、異なる近似式とすることも可能である。更には、近似可能期間についても、給湯側ランクを取得する場合と、風呂側ランクを取得する場合とで、異なる近似式とすることも可能である。たとえば、上述した給湯側ランクを取得する際には、同時運転から単独運転に切り替わった直後から近似可能期間が開始されるものとして説明した。しかし、単独運転に切り替わった直後からではなく、所定時間が経過した後から近似可能期間が開始されるようにしても良い。
【0102】
以上に説明した第1変形例の給湯側ランク取得処理(および風呂側ランク取得処理)によれば、給湯側および風呂側の同時運転から単独運転に切り替わった後、安定化時間が経過する前(すなわち、温度センサー11の検出温度が変化している状態)でも、現在のランク値を更新することができる。安定化時間は、温度センサー11の検出温度が安定化するために要する時間であるから、実際には、120秒あるいは180秒といった比較的長い時間に設定される。従って、複合熱源機10の使用状況によっては、安定化時間よりも長い時間に亘って、単独運転状態が継続されることは、必ずしも頻繁に発生するとは限らない。このような場合でも、上述した第1変形例の給湯側ランク取得処理(および風呂側ランク取得処理)によれば、十分な頻度でランク値を更新することができるので、給湯側および風呂側のフィン目詰まりの状態を常に適切に把握しておくことができ、その結果、フィン目詰まりの程度に拘わらず、給湯側および風呂側のバーナーを常に適切な燃焼状態に維持しておくことが可能となる。
【0103】
D−2.第2変形例 :
上述した第1変形例では、給湯側および風呂側の同時運転から単独運転に切り替わった時に、温度センサー11の検出温度が低下する速度に基づいてランク値を取得するものとして説明した。しかし、温度センサー11の検出温度が上昇する速度に基づいてランク値を取得するものとしても良い。以下では、このような第2変形例について説明する。
【0104】
図19は、第2変形例においてランク値を取得する原理を示した説明図である。図には、複合熱源機10が運転されていない状態から、給湯側あるいは風呂側の単独運転が開始された時に、温度センサー11の検出温度が上昇する様子が示されている。前述したように、温度センサー11の検出温度が安定化する温度は、フィン目詰まりが進むほど高くなる。このことに対応して、検出温度が上昇する速度(傾き)は、フィン目詰まりが進むほど速く(傾きが急に)なる。そこで、このことに着目すれば、次のようにしてランク値を取得することができる。
【0105】
先ず、基準温度Thcを予め設定しておく。そして、給湯側あるいは風呂側の単独運転が開始された後、温度センサー11の検出温度が基準温度Thcを超えたらタイマーをONにする。その後、所定時間dtが経過した時点で温度センサー11の検出温度(基準温度Thcからの温度上昇量)を取得して、温度上昇量に基づいて、現在のランク値を更新するか否か(増加させるか、減少させるか、あるいは維持するか)を判断するようにしてもよい。
【0106】
特に、
図3および
図4を用いて前述したように、温度センサー11は、壁板81の膨出部85に接触しておらず、膨出部85からの輻射熱によって間接的に加熱されるので、温度センサー11の検出温度は、外乱などの影響を受けることなくゆっくりと変化する。従って、上述したように所定時間dt内での温度上昇量を検出する方法によっても、正確なランク値を取得することが可能となる。
【0107】
もちろん、温度センサー11の検出温度が基準温度Thcを超えた時点からではなく、単独運転が開始されてから所定時間が経過した時点から、所定時間dt内での温度上昇量を検出するようにしても良い。但し、温度センサー11の検出温度が基準温度Thcを超えた時点からの温度上昇量を検出するようにすれば、計測開始時の温度が固定されているので、所定時間dt経過後の検出温度がそのまま温度上昇量に対応することになる。このため、計測開始時の温度を、所定時間dt経過後の検出温度から減算する処理が不要となって、コントローラー12の制御を簡単にすることができる。
【0108】
また、温度センサー11の検出温度が基準温度Thcを超えた時点からの温度上昇量を検出するようにしておけば、単独運転が開始されたときの状態(すなわち、複合熱源機10が完全に室温に戻った状態から単独運転が開始されたのか、あるいは完全には室温に戻る前に単独運転が開始されたのか)に拘わらず、常に同じ条件でランク値を取得することが可能となるので好ましい。
【0109】
D−3.第3変形例 :
以上に説明した各種の実施例および変形例では、
図1に示したように、単一の缶体1内に、2つの燃焼ユニット(第1バーナー2−1と第1熱交換器3−1、および第2バーナー2−2と第2熱交換器3−2)が搭載されており、それら2つの燃焼ユニットに対して、1つの燃焼ファン6から燃焼用空気が供給されているものとして説明した。しかし、複数の燃焼ユニットに対して1つの燃焼ファン6から燃焼用空気を供給する構成であれば、どのような複合熱源機に対しても本発明を好適に適用することができる。たとえば、
図20に例示したように、第1缶体1−1の中に第1の燃焼ユニット(第1バーナー2−1および第1熱交換器3−1)が搭載されており、第2缶体1−2の中には第2の燃焼ユニット(第2バーナー2−2および第2熱交換器3−2)が搭載されて、これらに対して1つの燃焼ファン6から燃焼用空気を供給するような複合熱源機10に対しても、本発明を好適に適用することが可能である。
【0110】
以上、各種実施例および変形例の複合熱源機10について説明したが、本発明は上記の実施例あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0111】
たとえば、上述した各種の実施例および変形例では、第1熱交換器3−1は給湯に用いられ、第2熱交換器3−2は風呂の追い炊きに用いられるものとして説明した。しかし、このような構成に限らず、たとえば、第2熱交換器3−2を暖房用に用いる複合熱源機10や、あるいは第1熱交換器3−1を、給湯用、および風呂の給湯用に兼用するようにした複合熱源機10に対しても、本発明を好適に適用することが可能である。