【実施例1】
【0019】
  図1は、本発明の塔状構造物のメンテナンス方法の1つの実施例を示す全体側面および正面図である。図示の例では、供用中の風力発電装置の供用部品に保守・点検あるいは交換の必要が生じた場合に、風力発電装置の既設タワー1を利用して、該既設タワー1の1側面に僅かに間隔を置いて、最小限の部材として一対の第1および第2メンテナンス支柱2A、2Bおよびこれらを上下の多数か所で連結梁2Cにて連結して構成されるメンテナンス支柱2を立設するものである。既設タワー1とメンテナンス支柱2とは上下の複数か所で帯ステー(図示の例では、ステーリング1〜5の5か所)3および突張り部材4(後述する
図2参照)により接続される。
【0020】
  一対の第1および第2メンテナンス支柱2A、2Bおよびこれらを上下の多数か所で連結梁2Cにて連結して構成されるメンテナンス支柱2は、
図9の第1にて説明した塔状構造物におけるガイドタワーの構築方法と同様の方法で組み上げられる。詳述はしないが、好適には例えば、
図1(B)に示すような連結梁2Cにて区画されるブロック毎の部品・部材をメンテナンス支柱2に対して昇降する昇降フレーム5に載置して、順次組み上げられる。
図1(B)の正面図における第1および第2メンテナンス支柱2A、2Bの外側の左右両側面に多数の孔あるいは溝(
図9の係合孔120a〜e・・・に相当)が設けられ、これらの孔あるいは溝に出没して選択的に係脱するピン(
図9のピン147や104bに相当)が互いに伸縮するシリンダおよびピストンに設置されている。前記メンテナンス支柱2A、2Bの両側面の孔あるいは溝と、これらに係脱するピンを設けた昇降フレーム5に設置された互いに伸縮するシリンダおよびピストンとで、メンテナンス支柱2に対する昇降フレーム5のリフトアップ装置が構成される。
【0021】
  昇降フレーム5は
図1(A)の側面図に示すように、メンテナンス支柱2に対して交差するようにほぼ水平状に配設され、メンテナンス支柱2A、2Bの両側面にガイドされて鉛直状に添設される縦フレーム5Dを有する。昇降フレーム5の水平部と縦フレーム5Dとの間には補強用の斜めフレーム5Eが渡設される。メンテナンス支柱2A、2Bの両側面に配設される昇降フレーム5の水平部と縦フレーム5Dとの間は連結梁5Cによって連結されている。昇降フレーム5の水平部の端部間も連結梁5Cによって連結されている。昇降フレーム5の縦フレーム5Dとメンテナンス支柱2A、2Bの前後面(
図1(A)の左右)との間には充分に隔離した上下の位置にガイドローラ17が設置される。かくして、メンテナンス支柱2に対して交差する昇降フレーム5の水平度が確実に維持されるとともに、昇降フレーム5の偏った位置に積載された重量物によるモーメントも確実に受け止めることが可能となる。
【0022】
  前記昇降フレーム5の水平部の上面には、門型フレーム6あるいは台車8(サブ台車8A、8B)がスライド自在に設置される。図示しての説明は省略されるが、昇降フレーム5における門型フレーム6および台車8のためのスライドレールは互いに独立して敷設される。例えば、
図1(B)において、左右両側上面に門型フレーム6の下部に設置されたスライド台車7のためのスライドレールが敷設され、それらのレールの敷設部の内側下段に台車8のためのスライドレールが敷設される。昇降フレーム5がメンテナンス支柱の昇降途中に位置する場合には、メンテナンス支柱2A、2Bが邪魔となって昇降フレーム5の水平部の上面を前後(
図1(A)の左右方向)に移動することはできないが、後述する
図5〜
図8に示すように、メンテナンス支柱2の上端部位置にては、門型フレーム6のスライド台車7およびサブ台車8A、8Bが前後に移動して分解された部品の移動を行うことができる。門型フレーム6についても、第1門型フレーム6Aと第2門型フレーム6Bとそれらを連結する連結梁6Cとから構成される。
【0023】
  また、前記メンテナンス支柱2の組上げ完了後に、図示はしないが、該メンテナンス支柱2およびその近傍に適宜形式および構造の作業員昇降用のリフト装置が設置される。それによって、作業のために作業員が迅速に昇降することができる。例えば、前述した第1および第2メンテナンス支柱2A、2Bの外側の左右両側面に多数の孔あるいは溝と選択的に係脱するピンを互いに伸縮するシリンダおよびピストンに設置した作業員用昇降リフトにより、尺取り虫的に昇降したり、あるいは、第1および第2メンテナンス支柱2A、2Bの外側の左右両側面に設けた多数の孔あるいは溝を利用して、これらに係脱するピンを無限軌道帯の表面に突設したものを接触させて駆動させる作業員用昇降リフトを構成してもよい。
【0024】
  図2は、
図1(A)におけるステーリング(例えば、No.1)位置での断面で、本発明の塔状構造物のメンテナンス方法における、既設タワーとメンテナンス支柱との接続状態を示す要部断面図および接続部品図である。メンテナンス支柱2と既設タワー1とは、上下方向の複数部位にて既設タワー1の周囲に掛け渡された帯ステー3と、メンテナンス支柱2と既設タワー1との間に介設された突張り部材4とにより接続される。突張り部材4は、
図2(A)に示すように、連結梁2Cにより連結された一対の第1および第2メンテナンス支柱2A、2Bに適宜の固定具により固定される固定梁4Eに、第1突張り部材4Aと第2突張り部材4Bとが斜材4Cと補虚梁4Dにより設置される。
【0025】
  これらの各突張り部材4A、4Bには、既設タワー1の周囲に掛け渡された帯ステー3の両端部がそれぞれ帯ステー保持具13および長さ調整具14によって接続される。帯ステー3は、既設タワー1の周囲を傷付けることのないナイロン等の素材が好適であるが、鋼帯やチェーン等の採用を妨げるものではない。その場合には、帯ステー3と既設タワー1の周囲との間に緩衝材を介在させるとよい。前記各突張り部材4A、4Bの斜材4Cには、既設タワー1の周面に圧接される接触子15が調整具16によって進退調整自在に配設される。既設タワー1の周囲に掛け渡された帯ステー3の突張り部材4に対する調整具14による張力調整と、既設タワー1の周面に圧接される接触子15の調整具16による進退調整によって、既設タワー1とメンテナンス支柱2との間の平行度すなわち間隙調整が適切になされる。かくして、帯ステー3と突張り部材4という単純な部材により、メンテナンス支柱2を組み上げながら、簡便にメンテナンス支柱2を既設タワー1に平行を維持しつつ確実・強固に接続できることとなる。
【0026】
  図3は、幾分大径の既設タワー1とメンテナンス支柱との接続状態を示す要部断面図である。本例では、大径の既設タワー1に沿って立設される一対のメンテナンス支柱2A、2Bがほぼ既設タワー1に掛け渡された略平行な帯ステー3の接線の延長線上に位置して配設される。したがって、前記
図2の例では一対の突張り部材4A、4Bは隣接して配置されていたが、本例では、補強梁4Dは省略される。
【0027】
  図4は、風力発電装置に適用された塔状構造物のメンテナンス方法を示す全体側面図で、昇降フレームがメンテナンス支柱上を昇降する状態を示す。既設タワー1の上端部にはヨーリング11を介して伝動装置等からなるナセル9が首振り制御自在に設置される。ナセル9の前面には複数枚のブレード10が回転自在に軸支されている。メンテナンス支柱2の組上げが完了すると、前述したように、昇降フレーム5内に設置されたピストンとシリンダを伸縮させつつ、それらに出没自在に設けられたピンを、前記メンテナンス支柱2A、2Bの両側面の孔あるいは溝に選択的に係脱させたリフトアップ装置によって尺取り虫的な動作により、メンテナンス支柱2に対して昇降フレーム5が昇降できる。
【0028】
  図5は、風力発電装置におけるヨーリング交換のために、門型フレームを用いてナセルを懸吊した状態を示す要部拡大側面図である。昇降フレーム5の水平部の上面をスライド台車7によって門型フレーム6をナセル9の重心位置に移動させ、その位置で固定する。次いで、門型フレーム6における連結梁6Cを利用して懸吊索6Cによりナセル9を吊り上げる。図示の例は、ナセル9を既設タワー1の上端部に支持するヨーリング11が既設タワー1の上端部側に固定される形式のものである。
図5では、交換すべき古いヨーリング11Aが既設タワー1の上端部に固定されたものも、新しい替ヨーリング11Bがサブ台車8Bに吊り下げたものが示されている。昇降フレーム5の水平部の右側には古いヨーリング11Aを取り外して移動させるサブ台車8Aが待機している。ヨーリング11がナセル9の下部に取り付けられる形式の場合は、サブ台車8A、8Bはナセル9の下部の取付位置にてヨーリング11A、11Bの脱着作業が行われる。
【0029】
  図6は、風力発電装置における台車を用いたヨーリング交換の工程を示す要部拡大側面図である。
図6(A)に示すように、サブ台車8Aを右側から移動させて、交換すべき古いヨーリング11Aの上部に位置させた上で、ネジジャッキ等により古いヨーリング11Aを取り外して右側に移動させ地上への降下運搬のために待機させる。次いで。
図6(B)に示すように、新しい替ヨーリング11Bを吊り下げたサブ台車8Bを図面左側から所定位置に移動させて、既設タワー1の上端部に設置して交換を終了する。そして、
図6(C)に示すように、ナセル9を吊り下ろして新しい替ヨーリング11Bを介して既設タワー1の上端部に首振り自在に設置される。その後、古いヨーリング11Aは昇降フレーム5により地上に降下運搬されて廃棄ないし修理される。
【0030】
  図7は、風力発電装置における門型フレームを用いたブレード取外し工程を示す要部拡大側面図である。複数あるブレード10の1枚が損傷したような場合には、
図7(A)に示すように、昇降フレーム5を上昇させ、次いで、既設タワー1の上端部において、
図7(B)に示すように、昇降フレーム5の水平部の上面において門型フレーム6のスライド台車7をナセル9とブレード10の軸支部近傍に移動させる。この位置にて門型フレーム6の連結梁6Cを利用して懸吊索12によりブレード10を吊り下げ、ナセル9とブレード10の軸支を解く。そして、
図7(C)に示すように、門型フレーム6をスライド台車7によってブレード10とともに昇降フレーム5の図面右側に移動させて待機させる。
【0031】
  図8は、風力発電装置における地上付近でのクレーン車等を用いたブレード荷扱い工程を示す要部拡大側面図である。
図8(A)に示すように、門型フレーム6にブレード10を吊り下げたまま昇降フレーム5が地上近傍に到達すると、地上に待機した20tクレーン車や100tクレーン車によってブレード10を吊り代える。次いで、
図8(B)に示すように、20tクレーン車や100tクレーン車によりブレード10を吊り上げて地上に下ろして、修理あるいは交換に供される。
【0032】
  以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、既設タワーの形状(図示の例では円形断面であるが、楕円断面や方形断面を排除するものではない)、形式、メンテナンス形態(既設タワーの上端部の部品の分解しての地上へ降下させてのメンテナンスの他、既設タワーの周囲の塗装や溶接部の補修メンテナンス等も含まれる)、既設タワーの上端部に設置した構造物のの形態(好適には風力発電装置における、ナセル、ヨーリングあるいはブレードのメンテナンスに適用されるが、その他の保守・点検を要する塔状構造物の上端部に設置した部品等のメンテナンスにも適用が可能である)、メンテナンス支柱に対する昇降フレームのリフトアップ形態(実施例の、メンテナンス支柱側面の孔あるいは溝に対して係脱する上下のピンと、これらピンの間を伸縮させるジャッキとの組合せによる尺取り虫的に動作するリフトアップ装置を構成する他、適宜の方式のリフトアップ装置が構成され得る)、昇降フレームの形状、形式およびそのリフトアップ装置を構成するメンテナンス支柱における孔あるいは溝の形成面の方向(実施例のメンテナンス支柱の側面に限定されることなく、メンテナンス支柱の前面でもよい)、メンテナンス支柱と既設タワーとの接続形態(実施例の、既設タワーの周囲に掛け渡された帯ステーと、メンテナンス支柱と既設タワーとの間に介設された突張り部材とにより接続するものの他、メンテナンス支柱と既設タワーとの間に介設された突張り部材と、メンテナンス支柱と既設タワーとの双方の周囲に渡って掛け渡された帯ステーとから構成してもよい)、メンテナンス支柱に対する昇降フレームの少なくとも上下に隔離した2か所の部位にてローラ等によりガイドされる他、2か所以上にてガイドされてもよい。昇降フレームにおける門型フレームあるいは台車のスライド形態、門型フレームあるいは台車の形状、形式、門型フレームにおける分解部品の吊下げ形態、メンテナンス支柱への作業員昇降用のリフト装置の設置形態等ついては適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。