特許第5715841号(P5715841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715841
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ソレノイド
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/126 20060101AFI20150423BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   H01F7/16 K
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-24794(P2011-24794)
(22)【出願日】2011年2月8日
(65)【公開番号】特開2012-164857(P2012-164857A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100114236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】土屋 秀樹
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−028025(JP,A)
【文献】 特開平11−067534(JP,A)
【文献】 特開平11−067527(JP,A)
【文献】 特開2005−005652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/06 − 7/122
H01F 7/126 − 7/128
H01F 7/13 − 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを収容するコイルケースアッシと、
前記コイルに発生する磁界によってプランジャを駆動するチューブアッシと、を備えるソレノイドであって、
前記コイルケースアッシは、
前記コイルを収容する円筒状のケースと、
前記ケースのケース開口端を塞ぐ円盤状のエンドキャップと、
前記ケースと前記エンドキャップの間に形成され前記コイルを包囲するモールド樹脂と、を備え、
前記ケースは前記ケース開口端に開口するケース切り欠き窓を有し、
前記モールド樹脂は前記ケース切り欠き窓から突出するコネクタ部を有し、
前記エンドキャップの内周面が前記チューブアッシに嵌合され、
前記エンドキャップの外周面は、
前記ケース開口端に嵌合される外周嵌合面と、
前記ケース切り欠き窓に対峙して前記モールド樹脂に面する外周モールド面と、を有し、
前記外周モールド面は前記外周嵌合面に沿って延びる外周嵌合面延長円弧より内側に配置されることを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
前記外周嵌合面は前記チューブアッシの中心線を中心とする円筒面状に形成され、
前記外周モールド面は前記チューブアッシの中心線より前記ケース切り欠き窓と反対側にオフセットされる中心線を中心とする円筒面状に形成され、
前記外周モールド面の曲率半径が前記外周嵌合面の曲率半径より大きく形成されることを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記チューブアッシの中心線と前記外周嵌合面の中心線間の距離であるオフセット量は、前記外周嵌合面の曲率半径と前記外周モールド面の曲率半径との差より大きく設定されることを特徴とする請求項2に記載のソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルに発生する磁界によってプランジャを駆動するソレノイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のソレノイドは、コイルを包囲するモールド樹脂と、このモールド樹脂を介してコイルを収容する円筒状のケースと、このケースの開口端を塞ぐ円盤状のエンドキャップとがコイルケースアッシとしてユニット化されるものがある。
【0003】
この種のコイルケースアッシは、ケースに切り欠き窓が形成され、モールド樹脂にケースの切り欠き窓から突出するコネクタ部が形成される。
【0004】
ソレノイドは、コネクタ部に差し込まれる相手コネクタ及びリード線を介してコイルが通電されると、コイルのまわりに磁界が発生するようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−121231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のソレノイドにあっては、ケースの取り付けが圧入等によって行われる場合に、ケースから突出したコネクタ部に過大なトルクが働くと、ケースが回動してコネクタ部の突出方向にズレが生じるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コネクタ部の突出方向がズレにくいソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コイルを収容するコイルケースアッシと、コイルに発生する磁界によってプランジャを駆動するチューブアッシと、を備えるソレノイドであって、コイルケースアッシは、コイルを収容する円筒状のケースと、このケースのケース開口端を塞ぐ円盤状のエンドキャップと、ケースとエンドキャップの間に形成されコイルを包囲するモールド樹脂と、を備え、ケースはケース開口端に開口するケース切り欠き窓を有し、モールド樹脂はケース切り欠き窓から突出するコネクタ部を有し、エンドキャップの内周面がチューブアッシに嵌合され、エンドキャップの外周面は、ケース開口端に嵌合される外周嵌合面と、ケース切り欠き窓に対峙してモールド樹脂に面する外周モールド面と、を有し、外周モールド面は外周嵌合面に沿って延びる外周嵌合面延長円弧より内側に配置されることを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0009】
上記構成に基づき、ケースに対してコネクタ部を回動させるトルクが加わる場合に、回動しようとする外周モールド面によって外周モールド面を包囲するモールド樹脂が押圧され、モールド樹脂の圧縮反力によってエンドキャップに対するモールド樹脂の回り止めが行われ、コネクタ部の突出方向にズレが生じることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態を示すソレノイドの側面断面図。
図2】同じくソレノイドの正面図。
図3】同じく曲率半径Raと曲率半径Rbと差(Ra−Rb)の寸法関係を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1、2に示すソレノイド1は、コイル12に発生する磁界によってプランジャ6を駆動し、プランジャ6に結合されたシャフト5を軸方向に移動させる電磁アクチュエータである。
【0013】
ソレノイド1は、シャフト5の先端部5aが、図示しない母機に備えられる油圧バルブ9を構成し、この油圧バルブ9を開閉駆動する。
【0014】
なお、これに限らず、ソレノイド1は、空圧機器や他の機械、設備に設けられ、空圧バルブや他の可動部を駆動してもよい。
【0015】
ソレノイド1は、主な構成部品として、チューブアッシ20、コイルケースアッシ10等を備える。
【0016】
チューブアッシ20は、主な構成部品として、スリーブ3、ベース2、フィラーリング8、シャフト5、プランジャ6等を備え、コイル12に発生する磁界によってプランジャ6を駆動する。
【0017】
スリーブ3とベース2は、厚肉円筒状に形成される。フィラーリング8は、薄肉円筒状に形成され、スリーブ3の外周端部とベース2の外周端部に渡って嵌合し、溶接によって結合される。
【0018】
円柱状のシャフト5の中程に円筒状のプランジャ6が嵌合される。シャフト5とプランジャ6は、圧入または溶接によって結合される。このシャフト5とプランジャ6によってプランジャアッシ4が形成される。
【0019】
シャフト5は、スリーブ3に軸受21を介して摺動可能に支持される。シャフト5を開弁方向(図において右方向)に付勢するスプリング22と、閉弁方向(図において左方向)に付勢するスプリング23が設けられる。
【0020】
チューブアッシ20は、ベース2、スリーブ3の内側に軸受21、スプリング22、プランジャアッシ4、スプリング23、アジャスタボルト24が介装された後、ベース2とスリーブ3がフィラーリング8を介して結合され、これらがユニット化される。
【0021】
ベース2の内側に螺合するアジャスタボルト24の位置が変えられることにより、シャフト5に加わるスプリング22、23のバネ力が調整される。
【0022】
プランジャ(可動鉄心)6は、コイル12に生じるソレノイド推力によってシャフト5を開弁方向(図において右方向)に駆動する。コイル12に流れる電流が増えるとともに、シャフト5がスプリング22、23のバネ力に抗して図において右方向に変位する。
【0023】
ケース19、エンドキャップ30、ベース2、スリーブ3、プランジャアッシ4は、それぞれ磁性材によって形成される。ベース2とスリーブ3との間に環状の磁気ギャップ18が形成される。コイル12の内側に生じる磁束は、ケース19、エンドキャップ30、ベース2、プランジャ6、スリーブ3によって導かれる。ベース2とスリーブ3との間を通る磁束は、磁気ギャップ18によって遮られることによって、プランジャ6を経由して導かれ、ベース2にプランジャ6を吸着する磁力が発生する。
【0024】
スリーブ3は、油圧バルブ9を構成する部位としてバルブ構成部3cを有する。このバルブ構成部3cは、複数の通孔3d、弁室3e、バルブ穴3f、弁室3gを有し、これらが母機の作動流体通路(図示せず)を構成する。母機の作動流体は、図1に矢印で示すように、通孔3d、弁室3e、バルブ穴3f、弁室3gを順に通って流れる。なお、これに限らず、作動流体が図1に矢印で示す方向と逆方向に流れる構成としてもよい。
【0025】
シャフト5はその先端部5aが円錐状に形成される。先端部5aを円錐状に形成することにより、シャフト5が図1において右方向に変位するのに伴って、先端部5aとバルブ穴3fとの間で画成される流路の開口面積が次第に大きくなり、バルブ構成部3cを通過する作動流体の流量が増大する。
【0026】
コイルケースアッシ10は、主な構成部品として、ケース19、エンドキャップ30、ボビン11、コイル12、ターミナル13、モールド樹脂14等を備える。
【0027】
ボビン11は、両端に鍔部を有する円筒状に形成される。コイル12は、ボビン11にマグネットワイヤが巻回して形成される。コイル12の電極として、マグネットワイヤの両端部に対のターミナル13が結合される。
【0028】
ケース19の内側には、溶融樹脂が充填され、ボビン11、コイル12を包囲するモールド樹脂14が形成される。
【0029】
モールド樹脂14は、ボビン11及びコイル12が収まる円筒状のコイル包囲部14aと、このコイル包囲部14aの一端から突出してターミナル13が臨むコネクタ部14cを有する。
【0030】
コイルケースアッシ10を製造するのにあたって、以下の工程が順に行われる。
【0031】
(1)ケース19の内側に、コイル12、ターミナル13、ボビン11が介装される。
【0032】
(2)ケース19のケース開口端19bの内側に、エンドキャップ30が圧入して組み付けられる。
【0033】
(3)図示しない金型に、組み立てられたケース19、ボビン11、コイル1
2、ターミナル13、エンドキャップ30が設置された後、加圧された溶融樹脂が金型に充填される射出成形が行われる。この樹脂が固化することによって、コネクタ部14cを有するモールド樹脂14が形成される。
【0034】
(4)金型からモールド樹脂14を介して一体化したコイルケースアッシ10が取り出される。
【0035】
ケース19は、円筒状のケース筒部19aと、このケース筒部19aの一端から円盤状に延びるケース底部19cと、ケース筒部19aの他端に開口するケース開口端19bと、ケース筒部19aに開口するケース切り欠き窓19eとを有する。
【0036】
ケース切り欠き窓19eは、コネクタ部14cをケース19の外側に突出させる開口部として設けられる。ケース切り欠き窓19eは、コネクタ部14cの突出方向から見て矩形の開口部を形成し、コネクタ部14cの大きさに対応してケース筒部19aに対して所定の角度範囲に渡って開口される。
【0037】
ケース切り欠き窓19eは、ケース開口端19bと連続して開口する。これにより、前記(1)のケース19にボビン11を組み付ける工程にて、ボビン11から突出したターミナル13がケース19に干渉することがなく、ボビン11がケース19の内側に介装される。
【0038】
ソレノイド1は、チューブアッシ20に対してブラケット7、コイルケースアッシ10のエンドキャップ30がそれぞれ圧入して組み付けられる。
【0039】
スリーブ3は、円筒面状の外周面3aを有し、この外周面3aにブラケット7がそれぞれ圧入される。
【0040】
ブラケット7は、チューブアッシ20から側方に突出し、図示しない母機に対する取り付け部材として設けられる。
【0041】
ブラケット7は、ボルト穴7aと、フック部7bを有し、これらを挿通する2本のボルト(図示せず)によって母機の取り付け座に締結される。
【0042】
スリーブ3は、外周面3aとバルブ構成部3cの間に環状溝部3bが形成され、この環状溝部3bにOリング25が介装される。スリーブ3は、Oリング25を介して母機の取り付け穴(図示せず)に嵌合され、Oリング25によって密封される。
【0043】
ベース2は、円筒面状の外周面2aを有し、この外周面2aにエンドキャップ30の内周面31が圧入される。
【0044】
このようにして、ソレノイド1は、チューブアッシ20にブラケット7とコイルケースアッシ10のエンドキャップ30がそれぞれ圧入して組み付けられることにより、チューブアッシ20に対してブラケット7とコネクタ部14cがそれぞれ突出する方向を任意に設定できる。これにより、母機のまわりに設けられるスペースに応じて、コネクタ部14cに接続される相手コネクタ(図示せず)の差し込み方向を適正に設定し、ソレノイド1の配線作業が円滑に行われる。
【0045】
コイルケースアッシ10は、ベース2の外周面2aに圧入されるエンドキャップ30を介してチューブアッシ20に固定される。ドーナツ形の円盤状をしたエンドキャップ30は、その内周面31がベース2の外周面2aに圧入され、その外周面32がケース19のケース内周面19fに圧入される。
【0046】
ケース19は、ケース切り欠き窓19eが開口しているため、ケース切り欠き窓19eが開口しない形状に比べて、ケース開口端19bの剛性が低い。これにより、エンドキャップ30のケース19に対する結合力が、エンドキャップ30のベース2に対する結合力より小さくなるため、コイルケースアッシ10をチューブアッシ20に対して回動させようとする過大なトルクがコネクタ部14cに働くと、ケース内周面19fに対するエンドキャップ30の圧入部分が摺動して、チューブアッシ20に対してコイルケースアッシ10が回動し、コネクタ部14cの突出方向にズレが生じる。
【0047】
これに対処して、図2に示すように、エンドキャップ30の外周面32は、ケース内周面19fに圧入される外周嵌合面32aと、モールド樹脂14に面する外周モールド面32bとを有し、外周モールド面32bの曲率半径Rbが外周嵌合面32aの曲率半径Raより大きく形成され、エンドキャップ30に対してモールド樹脂14が回動することを係止する構造とする。
【0048】
外周嵌合面32aは、チューブアッシ20(ベース2)の中心線Oを中心とする曲率半径Raの円筒面状に形成される。これにより、外周嵌合面32aがケース内周面19fに所定のシマリバメの関係で嵌合される。
【0049】
外周モールド面32bは、チューブアッシ20の中心線Oよりケース切り欠き窓19eと反対側にオフセットされる中心線Obを中心とする曲率半径Rbの円筒面状に形成される。
【0050】
図2において、外周嵌合面延長円弧Sは、チューブアッシ20の中心線Oを中心とし、曲率半径Raの円弧であり、外周嵌合面32aに沿って延びる。外周モールド面32bは、上記構成に基づき外周嵌合面延長円弧Sより内側(中心線Oに近接する側)に配置される。
【0051】
中心線Oと中心線Ob間の距離であるオフセット量Lは、曲率半径Raと曲率半径Rbとの差(Ra−Rb)より大きく設定され、外周嵌合面32aと外周モールド面32bが互いに段差なく接続される。こうして、エンドキャップ30は、外周面32の曲率が外周モールド面32bにて部分的に大きく形成されることによって、非円形の外形を有する円盤状に形成される。
【0052】
図3は、曲率半径Raと曲率半径Rbと差(Ra−Rb)の寸法関係を示す線図である。点A、O、Obを頂点とする三角形は、三辺の長さが、Ra、Rb、Lとなる。点C、O、Obを頂点とする直角三角形において、点O、Obを結ぶ斜辺の長さLは、点C、Obを結ぶ辺の長さより大きくなる。点C、Obを結ぶ辺の長さは、差(Ra−Rb)より大きくなる。したがって、オフセット量Lを、曲率半径Raと曲率半径Rbとの差(Ra−Rb)より大きく設定することによって、図3に示す寸法関係が成立し、頂点Aにおいて、外周嵌合面32aと外周モールド面32bが段差なく接続される。
【0053】
外周嵌合面32aと外周モールド面32bは、互いに段差なく接続されることにより、エンドキャップ30が金属板から打ち抜かれる工程にて、外周嵌合面32aと外周モールド面32bの境界部にバリが生じることがなく、バリを削除する切削加工を施す必要がない。
【0054】
外周モールド面32bは、ケース切り欠き窓19eに対峙する範囲に形成される。前記(2)のケース19のケース開口端19bの内側にエンドキャップ30が圧入して組み付けられる工程にて、組み付けジグ(図示せず)を介して両者の位置決めが行われ、外周嵌合面32aと外周モールド面32bの境界部が、ケース切り欠き窓19eの開口縁部に対峙するように組み付けられる。
【0055】
前記(3)の射出成形工程にて、金型に組み立てられたケース19、ボビン11、コイル12、ターミナル13、エンドキャップ30が設置された後、金型に加圧された溶融樹脂が充填される。
【0056】
これにより、外周モールド面32bを包囲するモールド包囲部14bを有するモールド樹脂14が形成される。モールド包囲部14bは、外周モールド面32bの全面に渡って形成され、コネクタ部14cの基端部を構成する。
【0057】
コイルケースアッシ10をチューブアッシ20に対して回動させようとするトルクがコネクタ部14cに働くと、モールド樹脂14がエンドキャップ30に対して中心線Oを中心に回動しようとするため、モールド包囲部14bの樹脂が外周モールド面32bをコネクタ部14cと反対側(図2にて下方)に押圧し、モールド包囲部14bの圧縮反力によってエンドキャップ30に対するモールド樹脂14のズレ(ケース19の回動)が止められる。
【0058】
このようにコイルケースアッシ10は、モールド樹脂14の圧縮反力によって固定される構成のため、モールド樹脂14の剪断反力によって固定される構成に比べて、コイルケースアッシ10の強度を大幅に高められる。
【0059】
コイル12に生じる磁束は、ケース19、エンドキャップ30、ベース2、プランジャ6、スリーブ3によってコイル12のまわりに環状に導かれる。エンドキャップ30は、外周モールド面32bがケース切り欠き窓19eに向けて突出する円筒面状に形成されるため、ケース19からエンドキャップ30を介してベース2へと導かれる磁束の磁路断面積が十分に確保され、ベース2にプランジャ6が吸着される磁力が損なわれない。
【0060】
以下、本実施形態の要旨と作用、効果を説明する。
【0061】
本実施形態では、コイル12を収容するコイルケースアッシ10と、コイル12に発生する磁界によってプランジャ6を駆動するチューブアッシ20と、を備えるソレノイド1であって、コイルケースアッシ10は、コイル12を収容する円筒状のケース19と、このケース19のケース開口端19bを塞ぐ円盤状のエンドキャップ30と、ケース19とエンドキャップ30の間に形成されコイル12を包囲するモールド樹脂14と、を備え、ケース19はケース開口端19bに開口するケース切り欠き窓19eを有し、モールド樹脂14はケース切り欠き窓19eから突出するコネクタ部14cを有し、エンドキャップ30の内周面31がチューブアッシ20に嵌合され、エンドキャップ30の外周面32は、ケース開口端19bに嵌合される外周嵌合面32aと、ケース切り欠き窓19eに対峙してモールド樹脂14に面する外周モールド面32bと、を有し、外周モールド面32bは外周嵌合面32aに沿って延びる外周嵌合面延長円弧Sより内側に配置される構成とした。
【0062】
上記構成に基づき、ケース19に対してコネクタ部14cを回動させるトルクが加わる場合に、チューブアッシ20の中心線Oを中心として回動しようとするモールド樹脂14の樹脂が外周モールド面32bを押圧し、モールド樹脂14の圧縮反力によってエンドキャップ30に対するモールド樹脂14の回り止めが行われ、チューブアッシ20に対するコネクタ部14cの回動がエンドキャップ30を介して係止され、コネクタ部14cの突出方向にズレが生じることが防止される。
【0063】
エンドキャップ30は、その外周面32に凹状に窪む部位を持たないため、コイル12に発生する磁束を導く磁路断面積が損なわれず、プランジャ6を駆動する磁力が十分に確保される。
【0064】
本実施形態では、外周嵌合面32aはチューブアッシ20の中心線Oを中心とする円筒面状に形成され、外周モールド面32bはチューブアッシ20の中心線Oよりケース切り欠き窓19eと反対側にオフセットされる中心線Obを中心とする円筒面状に形成され、外周モールド面32bの曲率半径Rbが外周嵌合面32aの曲率半径Raより大きく形成される構成とした。
【0065】
上記構成に基づき、エンドキャップ30は非円形の外形を有する円盤状に形成されるため、エンドキャップ30の外周に切削等の仕上げ加工を施す必要がなく、製品のコストアップを抑えられる。
【0066】
本実施形態では、チューブアッシ20の中心線Oと外周嵌合面32aの中心線Ob間の距離であるオフセット量Lは、外周嵌合面32aの曲率半径Raと外周モールド面32bの曲率半径Rbとの差(Ra−Rb)より大きく設定される構成とした。
【0067】
上記構成に基づき、エンドキャップ30は、外周嵌合面32aと外周モールド面32bは互いに段差なく接続され、その外周面32が段差を持たない円盤状に形成されるため、エンドキャップ30の外周に切削等の仕上げ加工を施す必要がなく、製品のコストアップを抑えられる。
【0068】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0069】
1 ソレノイド
2 ベース
2a 外周面
3 スリーブ
6 プランジャ
10 コイルケースアッシ
12 コイル
13 ターミナル
14 モールド樹脂
14b モールド包囲部
19 ケース
19b ケース開口端
19e ケース切り欠き窓
20 チューブアッシ
30 エンドキャップ
31 内周面
32 外周面
32a 外周嵌合面
32b 外周モールド面
図1
図2
図3