特許第5715857号(P5715857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715857
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】粘着シートの剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/00 20060101AFI20150423BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   C09J5/00
   C09J7/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-57745(P2011-57745)
(22)【出願日】2011年3月16日
(65)【公開番号】特開2012-193264(P2012-193264A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年3月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船田 俊明
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−043934(JP,A)
【文献】 特開2004−170907(JP,A)
【文献】 特開2003−342542(JP,A)
【文献】 特開2010−107063(JP,A)
【文献】 特開2005−338103(JP,A)
【文献】 特開2000−191995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートを介して機能性部材と表示部材とが接着されて形成された積層体において、前記機能性部材と前記粘着シートとを剥離する剥離方法であって、
前記粘着シートは、表示部材と、当該表示部材上に設ける機能性部材とを貼合する粘着シートであり、該粘着シートが、芯材フィルムと、該芯材フィルムの一方の表面に設けられた第一の粘着層と、該芯材フィルムの他方の表面に設けられた第二の粘着層とを有し、
前記第一の粘着層の端部は、前記芯材フィルムの端部よりも内側に入り込んだ後退部とされており、
前記第二の粘着層の端部は、前記芯材フィルムの端部よりも内側に入り込んだ後退部とされており、
前記第一の粘着層が、機能性部材と接着するための機能性部材接着用の粘着層であり、
前記第二の粘着層が、表示部材と接着するための表示部材接着用の粘着層であり、
前記第一の粘着層と前記機能性部材との粘着強度F1が、前記第一の粘着層と前記芯材フィルムとの粘着強度F2よりも小さく、
前記第二の粘着層と前記表示部材との粘着強度F4が、前記第二の粘着層と前記芯材フィルムとの粘着強度F3よりも小さく、
(1)前記積層体を、前記第一の粘着層を構成する粘着剤のガラス転移温度未満に冷却する工程と、
(2)前記第一の粘着層の後退部に剥離用治具を入れる工程と、
(3)前記剥離用治具により、冷却された前記積層体に応力を加える応力付加工程と、
(4)前記応力付加工程において応力を加え、前記機能性部材から前記粘着シートを剥離する剥離工程
を有する剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シートおよび該粘着シートの剥離方法に関するものであり、特に再剥離性(リワーク性)を有し、芯材の入った透明粘着シートおよび該粘着シートの剥離方法に関する。例えば本発明の粘着シートを用いてガラス同士を貼り合わせた場合、必要に応じて、ガラスに傷を付けたり破損したりせず、かつガラス面に粘着剤が残ることなく、粘着層を綺麗に剥がすことができる。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや液晶パネル、タッチパネル等の表示機器は、偏光板や位相差板、ITO膜等が組み込まれた表示部材と、当該表示部材の表面に積層させた各種の機能性部材とから構成されている。機能性部材としては、表示部材から発生する有害な紫外線や電磁波をカットするカットフィルム、表示部材を衝撃や摩擦から保護し傷入りを防止するための保護部材、蛍光灯などの外光の写り込みを防止する反射防止フィルムなどがある。これら表示部材と機能性部材とは、粘着層を介して積層させている。粘着層は作業の簡便性、耐熱性や耐候性等の点からアクリル系を主成分とすることが多い。
【0003】
機能性部材の中でも、表面保護用光学部材はその性質上、高い硬度を有する素材で形成されており、例えばガラス製の表面保護用光学部材(カバーガラス)や、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の硬質樹脂板が用いられている。これら高硬度の表面保護用光学部材は、表示部材と貼り合わせることが技術的に難しく、貼り合わせ時に気泡を噛み込んでしまい不良品が発生しやすい問題がある。これは、例えばガラス製の表示部材とカバーガラスとを接着する用途で顕著となっている。そのため、不良品から粘着層を剥がして、表示部材および機能性部材(カバーガラスや硬質樹脂板)を再利用できるよう、粘着剤には再剥離性(リワーク性)が求められている。
特許文献1には、粘着型光学フィルムの剥離方法として、ガラス基板を温度40〜98℃かつ相対湿度60〜99%の環境下に曝す方法により、粘着型光学フィルムが貼付されているガラス基板から、ガラス基板に損傷を与えることなく、ガラス基板に糊残りが生じることなく、かつ容易に粘着型光学フィルムを剥離する方法等が開示されている。また、特許文献2には、粘着剤中にポリビニルアセタールを含有させることにより、リワーク性に優れた粘着シートが開示されている。さらに、特許文献3には、所定のアクリル系共重合体と架橋剤およびポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン共重合体を含むアクリル系感圧粘着剤組成物を使用することにより、リワーク性に優れた粘着シートが提供されることが開示されている。しかしながら、これら特許文献に開示されている積層体の構成は、図7に示すとおりである。すなわち、粘着層6を挟むように上下にそれぞれカバーガラス1、表示部材3が設けられている。そして、かかる構成を有する積層体Lからカバーガラス1または表示部材3を剥離して再利用するためには、矢印A1または矢印A2で示す箇所に応力を加えることとなる。この場合、加えた応力はカバーガラス1または表示部材3にほぼ直接伝えられるため、カバーガラス1や表示部材3に傷をつけたり、場合によっては破損し、再利用できないものが多く発生する。その結果、効率的に採用をすることができず、歩留まりの悪化が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2009/093577号パンフレット
【特許文献2】特許第4421714号公報
【特許文献3】特許第4537450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示部材と、機能性部材とを粘着層により貼り合わせた積層体において、機能性部材を傷つけたり破損したりせず、粘着剤の残りなく粘着層のみを剥がすことができ、粘着層が高温多湿、高温環境下での耐久性を有する粘着シートおよび該粘着シートの剥離方法を提供する。
特に、ガラス製の表示部材と、ガラス製の表面保護用光学部材(カバーガラス)とを粘着層により貼り合わせた場合でも、必要に応じて、ガラスを傷つけたり破損したりせず、ガラス面に粘着剤の残りなく粘着層のみを剥がすことができる(リワーク性を有する)粘着シートおよび該粘着シートの剥離方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘着シートは、表示部材と、当該表示部材上に設ける機能性部材とを貼合する粘着シートであって、該粘着シートが、芯材フィルムと、該芯材フィルムの一方の表面に設けられた第一の粘着層と、前記芯材フィルムの他方の表面に設けられた第二の粘着層とを有し、前記第一の粘着層の端部は、前記芯材フィルムの端部よりも内側に入り込んだ後退部とされており、前記第一の粘着層が、機能性部材と接着するための機能性部材接着用の粘着層であり、前記第二の粘着層が、表示部材と接着するための表示部材接着用の粘着層であり、前記第一の粘着層と前記機能性部材との粘着強度F1が、前記第一の粘着層と前記芯材フィルムとの粘着強度F2よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明は、かかる構成を有することにより、硬質の機能性部材、特にガラス製の表示部材と、ガラス製の表面保護用光学部材(カバーガラス)とを粘着層により貼り合わせた場合でも、必要に応じて、ガラスを傷つけたり破損したりせず、ガラス面に粘着剤の残りなく粘着層のみを剥がすことができる(リワーク性を有する)。また、粘着層に高温多湿および高温環境下での耐久性を有する粘着シートを提供することができる。
【0008】
また、本発明の粘着シートは、前記第二の粘着層の端部が、前記芯材フィルムの端部よりも内側に入り込んだ後退部とされ、前記第二の粘着層と前記表示部材とが接着した際の粘着強度F4が、前記第二の粘着層と前記芯材フィルムとが接着した際の粘着強度F3よりも小さいことを特徴とする。かかる構成を有することにより、より確実に、硬質の機能性部材、特にガラスを破損せず、ガラス面に粘着剤の残りなく粘着層のみを剥がすことができる(リワーク性を有する)。
【0009】
前記第一の粘着層および第二の粘着層を形成する粘着剤に占める、アクリル酸の含有量が3質量%未満であり、前記芯材フィルムの主成分がポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。かかる構成を有することにより、リワーク性が向上する傾向がある。
【0010】
また、本発明の粘着シートの剥離方法は、上記粘着シートを介して機能性部材と表示部材とが接着されて形成された積層体において、前記機能性部材から前記粘着シートを剥離する剥離方法であって、(1)前記積層体を、前記第一の粘着層を構成する粘着剤のガラス転移温度未満に冷却する工程と、(2)前記第一の粘着層の後退部に剥離用治具を入れる工程と、(3)前記剥離用治具により、冷却された前記積層体に応力を加える応力付加工程と、(4)前記応力付加工程において応力を加え、前記機能性部材から前記粘着シートを剥離する剥離工程を有することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、上記粘着シートを介して機能性部材と表示部材とが接着されて形成された積層体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表示部材と機能性部材、特にガラス製の表示部材と、ガラス製の表面保護用光学部材(カバーガラス)とを粘着層により貼り合わせた場合でも、必要に応じて、ガラスを傷つけたり破損したりせず、ガラス面に粘着剤の残りなく粘着層のみを剥がすことができる(リワーク性を有する)粘着シートおよび該粘着シートの剥離方法を提供することができる。さらに、粘着層が高温多湿および高温環境下での耐久性を有する粘着シートおよび該粘着シートの剥離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態1)にかかる粘着シート10の物理的構成を示す断面図
図2】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態1)にかかる粘着層6の物理的構成を示す断面図
図3】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態1)にかかるタッチパネルディスプレイ11の物理的構成を示す断面図
図4a】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態1)にかかる粘着シートの剥離方法の説明図
図4b】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態1)にかかる粘着シートの剥離方法の説明図
図4c】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態1)にかかる粘着シートの剥離方法の説明図
図5】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態2)にかかる粘着層6の物理的構成を示す断面図
図6a】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態2)にかかる粘着シートの剥離方法の説明図
図6b】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態2)にかかる粘着シートの剥離方法の説明図
図6c】本発明の粘着シートの一実施形態(実施の形態2)にかかる粘着シートの剥離方法の説明図
図7】従来の積層体からカバーガラスを剥離する際の応力付加位置を説明する断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態における粘着シート10について、図面を参照して説明する。なおこれらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。また、機能性部材はガラス製の表面保護用光学部材(カバーガラス)について記載するが、機能性部材をカバーガラスにのみ限定する趣旨ではなく、当然に他の硬質な機能性部材に対しても本発明の技術を用いることができる。
【0015】
(実施の形態1)
図1を参照し、粘着シート10の物理的構成について説明する。図1に示すように、粘着シート10は、粘着層6と、粘着層6を挟み込むようにして粘着層6に貼合される剥離シート5および剥離シート7とを備えている。図2に示すように、粘着層6は、芯材フィルム2の一方の面側に第一の粘着層61と、他方の面側に第二の粘着層62を有している。第一の粘着層61と他方の面側に第二の粘着層62には、粘着剤、架橋剤、可塑剤を含んでいる。第一の粘着層61の端部は、芯材フィルム2の端部よりも内側に入り込んだ後退部61aとされている。図1に示す例では、剥離シート7の上側に粘着層6が積層し、粘着層6の上側に剥離シート5が配置している。
【0016】
図3を参照し、粘着シート10(図1参照)の応用例の一例を示す。図3では、タッチパネルディスプレイ11に、図1に示された粘着シート10が適用された場合を示している。図3においては、図1に示された粘着シート10から剥離シート5および剥離シート7が剥離されて使用されている。タッチパネルディスプレイ11は、表示素子(LCDやEL素子等)、ガラス、透明プラスチック、フィルム等で形成されるディスプレイ4とディスプレイ4の上部にITO膜等で回路形成されたガラス、透明プラスチック、フィルム等で形成されたタッチパネル3を備えており、通常タッチパネル3の上部に同モジュールを保護するためにカバーガラス1を使用する。図3に示されるように、カバーガラス1とタッチパネル3とは、粘着層6により粘着されてなる。上記第一の粘着層61と上記カバーガラス1とが接着した際の粘着強度F1が、上記第一の粘着層61と上記芯材フィルム2とが接着した際の粘着強度F2よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
はじめに、上記粘着層6を構成する粘着剤について説明する。粘着剤としては、従来、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが使用されてきた。本実施の形態では、粘着剤として、ITO膜を腐食させて電気抵抗値を増大させる要因として考えられるカルボキシル基を含む粘着剤ではなく、カルボキシル基を含まないアクリル酸変性物を主に用いる。しかしながら、カルボキシル基を全く含まない場合、後述するとおり耐久性が低下しやすいため、カルボキシル基を有する粘着剤成分を多少、含有させることが好ましい。カルボキシル基を有する粘着剤成分の含有量としては、粘着剤のうち0.5〜3.0質量%とすることが好ましい。0.5質量%を下回ると十分な耐久性が得られにくくなるため好ましくない。3.0質量%を超過するとリワーク性が低下しやすいため好ましくない。特に後述するとおり、芯材フィルムとしてPCを使用し、かつカルボキシル基を有する粘着剤成分の含有量が0.5質量%を下回ると、十分な耐久性が得られにくくなるため好ましくない。このため、芯材フィルムとしてPCを使用する場合は、カルボキシル基を有する粘着剤成分を3.0質量%以上まで含有させることが好ましい。この場合は、カルボキシル基を有する粘着剤成分の含有量を増加させることにより発生するリワーク性の低下を、後述するタッキファイヤー(粘着付与剤)として、スチレン系およびメタクリル酸系の2種類を併用することでリワーク性の低下を防止できるため好ましい。
【0018】
上記アクリル酸変性物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらの中でも、表示部材および機能性部材への粘着力やリワーク性、耐久性の観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルが好ましい。これらのアクリル酸変性物を用いると、カバーガラスや硬質樹脂板に対する粘着力を、芯材フィルムに対する粘着力よりも低く設計しやすくなるため好ましい。また、カルボキシル基を有する粘着剤成分としてアクリル酸の含有量は、3.0質量%以下とすることが好ましい。3.0質量%を超過すると、上記F2とF1との差(ΔF2−F1)、および、後述する実施の形態2におけるF4とF3との差(ΔF4−F3)の値が小さくなることでリワーク性が低下しやすいため好ましくない。
【0019】
タッキファイヤーについて説明する。タッキファイヤーの使用によって、リワーク性向上の効果が得られるため、含有させることが好ましい。タッキファイヤーとしては、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン系、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セスタテルペン、トリテルペン、テトラテルペンなどのテルペン系、ポリスチレンなどのスチレン系、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸系等が挙げられるが、この中でもスチレン系のポリスチレンおよび/またはメタクリル酸系のメタクリル酸メチルを用いると、カバーガラスや硬質樹脂板に対する粘着力を、芯材フィルムに対する粘着力よりも低く設計しやすくなり、リワーク性が向上するため好ましい。タッキファイヤー成分の含有量としては、粘着剤のうち5〜30質量%とすることが好ましい。5質量%を下回るとリワーク性の効果が低くなるため好ましくない。30質量%を超過すると粘着力が低下するため好ましくない。また、スチレン系のポリスチレンおよびメタクリル酸系のメタクリル酸メチルを併用すると、特にリワーク性に優れるため好ましい。
【0020】
粘着剤およびタッキファイヤーの重合方法としては付加重合、縮合重合、ラジカル重合などがあり、この中でもラジカル重合を用いると安定した分子量が得られるため優れるため好ましい。
ラジカル重合の開始剤としては、過酸化物系、アゾ系重合開始剤等が挙げられるが、この中でもアゾ系重合開始剤を用いると安定した分子量が得られるため好ましい。
アゾ系重合開始剤の使用量としては、モノマー100質量部に対して、0.005質量部から1.0質量部であることが望ましい。また得られるアクリル系ポリマーの質量平均分子量は50万〜150万が好ましく、70万〜120万であることがより好ましい。質量平均分子量がこの範囲であると、架橋剤との反応により適度な凝集効果が得られるため好ましい。
【0021】
架橋剤について説明する。架橋剤は一般的に用いられているものを使用することができる。たとえば、m−キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート系化合物;エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンアミン等のアミン系化合物;アルミニウムに代表される多価金属や金属キレート化合物;N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド等のアジリジン系化合物が挙げられる。これらのうち、1種類あるいは2種類以上を混合して使用することができる。この中でもm−キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート系化合物が好ましく、中でもm−キシリレンジイソシアネートを使用した場合は、特に粘着シートの黄変化を防止しやすく、より高い透明性が得られるため好ましい。また、アクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤ポリマーを分子間架橋させやすく、十分な粘着性を維持でき、高温、高温多湿および低温環境下での耐久性が良好となるため好ましい。
【0022】
添加剤について説明する。添加剤の一つとしてシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、メルカプト系化合物、アミノ系化合物、カルボキシル系化合物、アルコキシ系化合物等があるが、用途に応じて任意のシランカップリング剤を添加しても良い。
【0023】
上述のとおり、粘着剤の成分として(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルのいずれかを含有させ、かつタッキファイヤーとしてスチレン系のポリスチレンおよび/またはメタクリル酸系のメタクリル酸メチルを用いると、カバーガラスや硬質樹脂板に対する粘着力を、芯材フィルムに対する粘着力よりも特に低く設計しやすくなり、リワーク性に優れた粘着シートが得られやすいため好ましい。
【0024】
次に、芯材フィルム2について説明する。光学用途で用いられる芯材フィルム2の材質としては、従来、PET、PC、アクリル系樹脂、単結合オレフィン系樹脂などが好ましい。粘着層にリワーク性を付与する必要があるため、芯材フィルム2には高い引張強度が求められる。芯材フィルム2の材質としては、高強度を有するPETまたはPCが特に好ましい。
【0025】
また、芯材フィルム2の材質としては、ガラス(ガラス製の表示部材やカバーガラス1)と粘着シート10との接着性よりも、弱い接着性を有する材質を用いることが必須である。これは、ガラスと接着シートの接着性よりも、芯材フィルム2と粘着シート10の接着性が高いと、粘着シート10とカバーガラス1とが綺麗に剥離できず、再剥離性に劣るためである。このような材質としては、上述の材質のうち、PET、PC、アクリル等が挙げられる。但し、極性の低いシクロオレフィン系等を芯材フィルムとして用いた場合は粘着剤と接着し難いため、コロナ処理等の易接着処理を施すことが好ましい。易接着処理を施すことで、粘着強度F2を向上しやすくなり、F1で容易に剥離しやすくなる。
【0026】
上記のとおり、粘着剤のうちカルボキシル基を有する粘着剤成分を含有させ、かつ芯材フィルム2としてPCを用いた場合、十分な耐久性が得られにくくなるため好ましくない。このため、芯材フィルム2としてPETを用い、かつカルボキシル基を有する粘着剤成分を0.5〜3.0質量%含有させることが、特に高いリワーク性と耐久性が得られるため好ましい。
【0027】
また、芯材フィルム2の厚みは10〜250μmが好ましい。芯材フィルム2の厚みが10μm未満であると、芯材の強度が低下し、リワーク性を発揮できなくなり、250μmを超えると基材が剛性を帯び、製品とした際の加工適性が低下する問題が生じる。
【0028】
粘着層6の形成方法について説明する。粘着層6は、剥離処理を施した剥離シート5に、粘着剤、架橋剤、好ましくはシランカップリング剤を調合した塗液を塗工し、乾燥および架橋させた塗面に、芯材フィルム2を貼合する。続いて、もう一方の剥離シート7に同塗液を塗工し、剥離シート5と粘着層6の反対側の芯材と塗面を貼合する。この時、粘着層6を形成する方法については特に限定されることはなく、また、塗工方式としては、グラビア印刷法、スプレー法、ロールコーター法、ダイコーター法等の公知の方法を使用することができる。
【0029】
粘着層6の厚さについては特に限定されないが、10μm以上であることが好ましく、15μm以上が特に好ましい。10μm未満では剥離用治具により加えられた応力を粘着シートが十分吸収しにくくなり、表示部材や機能性部材が傷つきやすく破損しやすくなるため好ましくない。また、粘着力不足により光学部材や基材の剥がれが発生しやすい。逆に100μmを超える場合は、剥離用治具により加えられた応力を粘着シートが分散させすぎて、表示部材や機能性部材が剥離しにくくなるため好ましくない。また、粘着剤中の溶剤成分が残留したり、加工時の粘着層の切断面積が大きくなり、スリット刃に粘着剤が付着したり、スリット刃の刃圧による端面の変形の恐れがある。
【0030】
本実施の形態における粘着シート10の剥離シート5および剥離シート7としては、粘着剤組成物と接着せず、剥離できるフィルム状のものであれば特に限定されるものではない。たとえば、紙、合成樹脂フィルムに剥離剤を塗工したものを挙げることができる。剥離剤を使用する場合には適宜、剥離力を調整し、粘着層の層間剥離などを防止することが好ましい。
【0031】
本発明で用いる表示部材や機能性部材は特に限定されず、カバーガラスや硬質樹脂板など公知のものを用いることができる。芯材フィルムに対する粘着性よりも、表示部材や機能性部材に対する粘着性を低くするためには、上述のとおり粘着層に用いる粘着剤やタッキファイヤー、架橋剤等の成分および含有量を調整すればよいが、さらに好ましくは、表示部材や機能性部材として、本発明の粘着剤に対する粘着性が低いカバーガラスや硬質樹脂板を用いることが好ましい。
表示部材や機能性部材に用いるガラスには、一般に強化ガラスが用いられている。強化ガラスには、ガラスを軟化点温度近くまで加熱し、その後ガラス表面に空気を吹きつけ急激に冷却した熱強化ガラスと、ガラス表面のナトリウムイオンを、より大きなカリウムイオン等に置換した化学強化ガラスがある。ナトリウムイオンをカリウムイオン等へ置き換える化学処理は、通常は積層体最表面(機能性部材の粘着層と接触しない面)に行われることが多いが、本発明においては、粘着層と接触する側にも化学処理を行うことで、本発明で用いる粘着剤に対する粘着力を低下させることができ、表示部材や機能性部材から粘着シートを綺麗に剥離させやすくなる。
表示部材や機能性部材に硬質樹脂板(PETやPC、PMMA等)を用いる場合は、硬質樹脂板の表面にハードコート剤を塗工してハードコート処理を行うことで、本発明の粘着シートに対する粘着力を低下させることができる。ハードコート剤にはアクリル系、シラン系、アクリル−シリコン系、フッ素系、ホスファゼン系等があり、塗工方法にはスピンコート法、スプレー法、フロー法、ディップ法等の方法がある。これら公知のハードコート剤を、公知の塗工方法により硬質樹脂板に塗布し、数μmの被膜を形成させることでハードコート処理を行い、本発明で用いる粘着剤に対する粘着性を低下させることができるため、表示部材や機能性部材から粘着シートを綺麗に剥離させやすくなる。
一方、芯材フィルムにはハードコート処理を行わず、本発明の粘着シートに対する粘着力を向上させることで、表示部材や機能性部材から粘着シートを綺麗に剥離させることができる。仮に、表示部材や機能性部材に用いた硬質樹脂板と同じ材質の樹脂を、芯材フィルムにも用いたとしても、ハードコート処理の有無により粘着力に差を持たせることができる。
【0032】
本実施の形態にかかる粘着シート10は、図4(a)に示されるように、当該粘着シート10を介してカバーガラス1と表示部材3とを接着することにより、積層体を形成することができる。その際、接着時に気泡を噛み込んでしまった場合であっても、粘着層6を剥がして、表示部材およびカバーガラスを再利用することができる。以下、図4(a)〜(c)を参照しながら当該粘着シート10の剥離方法を説明する。
【0033】
まず、上記積層体において、上記積層体を、上記第一の粘着層61を構成する粘着剤のガラス転移温度未満に冷却する。かかるガラス転移温度としては、粘着剤の種類により異なるが、たとえば、アクリル酸メチルの場合8℃であり、アクリル酸エチルの場合−22℃であり、アクリル酸ブチルの場合−55℃であり、メタクリル酸メチルの場合105℃であり、アクリル酸2―ヒドロキシエチルの場合−55℃であり、アクリル酸の場合106℃である。
粘着シートのガラス転移温度としては、0℃〜−50℃が好ましく、−10℃〜−40℃がより好ましい。硬質の表示部材および機能性部材を均一に貼合し積層体を製造する場合、粘着剤にはガラス転移温度が低く柔軟性が高いことが求められる。但し、粘着剤のガラス転移温度を−50℃よりも低くすると、冷却するための費用や設備が膨らむだけでなく、冷却状態を維持しながら剥離させる剥離作業性が低下しやすいため好ましくない。ガラス転移温度が0℃を超過すると、柔軟性が低く硬い粘着シートとなるため、表示部材および機能性部材を均一に貼合しにくくなり、製品の歩留りが悪化する可能性がある。
【0034】
本発明において設ける後退部としては、カバーガラスまたは表示部材の縁部から0.1〜10mm程度で設けることが好ましい。後退部は、剥離用治具を挿入して応力を加えることで粘着シートを剥離させるためのものであり、その長さは剥離用治具により適宜、変更することができる。なお、後退部は表示装置の周辺部材(液晶ディスプレイであればガワの部分)に収まる範囲とし、表示領域にまで及ばないようにすることが好ましい。
次に、上記第一の粘着層61の後退部61aに剥離用治具を入れる。剥離用治具としては、後退部に応力を付加できるものであれば特に限定されず、例えば針状、棒状、鉤状の剛体を用いることができる。かかる剛体の材質としては特に限定されないが、たとえば金属としてステンレスが挙げられる。形状としては、先端の太さが1mm以下となるような針状が好ましい。
【0035】
かかる剥離用治具Bを入れることにより、冷却された上記積層体に応力を加えることとなる。加える応力としては、たとえば0.5MPa〜1.0MPaである。このように応力を加える際に、上記カバーガラス1から粘着シート6を剥離する。なお、応力が上記範囲内にある場合、表示部材3に加わる応力を第二の粘着層62が緩和するため、表示部材3が破損することがない。また、カバーガラス1が傷つくこともない。上記のとおり、上記第一の粘着層61と上記カバーガラス1とが接着した際の粘着強度F1が、上記第一の粘着層61と上記芯材フィルム2とが接着した際の粘着強度F2よりも小さいため、図4(c)に示されるようにカバーガラス1および表示部材3を破損せず、カバーガラス1のガラス面に粘着剤の残りなく粘着層61のみを剥がすことができる(リワーク性を有する)。剥がされたカバーガラス1は再利用することが可能である。
【0036】
(実施の形態2)
本実施の形態にかかる粘着シートは、図5に示されるように、後退部61aとされているほか、粘着層6の構成において、第二の粘着層62の端部が、芯材フィルム2の端部よりも内側に入り込んだ後退部62aとされている以外は、実施の形態1にかかる粘着シート10と同様であり、同一の参照符号を付して説明を省略する。
本実施の形態において、上記第二の粘着層62と表示部材3とが接着した際の粘着強度F4が、上記第二の粘着層62と上記芯材フィルム2とが接着した際の粘着強度F3よりも小さいことを特徴とする。
【0037】
本実施の形態にかかる粘着シートにおいて、粘着層を表示部材3から剥離する場合について図6(a)〜(c)を参照しながら説明する。図6(a)に示される積層体は、粘着シート10を介してカバーガラス1と表示部材3とが接着された構成を有する。実施の形態1において説明した場合と同様に、まず、積層体を、第二の粘着層62を構成する粘着剤のガラス転移温度未満に冷却する。その後、図6(b)に示されるように、後退部62aに剥離用治具Bを入れ、上記剥離用治具Bにより、冷却された前記積層体に応力を加えて、上記表示部材3から上記粘着シート6を剥離する。なお、応力が上記範囲内にある場合、カバーガラス1に加わる応力を第一の粘着層61が緩和するため、カバーガラス1が破損することがない。また、表示部材3が傷つくこともない。上記のとおり、上記第二の粘着層62と表示部材3とが接着した際の粘着強度F4が、上記第二の粘着層62と上記芯材フィルム2とが接着した際の粘着強度F3よりも小さいため、図6(c)に示されるようにカバーガラス1および表示部材3を破損せず、表示部材3の表面に粘着剤の残りなく粘着層6を剥がすことができる(リワーク性を有する)。剥がされた表示部材3は再利用することが可能である。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態1および実施の形態2に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施の形態1および実施の形態2では、タッチパネルディスプレイ11に粘着シート10が適用される場合を想定して説明したが、本発明はこの例に限定されない。従って粘着シート10は他の応用例に適用されてもかまわない。
【0039】
実施例1
本発明の粘着シートを、以下に具体的に実施例に従って説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下、(1)試料作製、(2)評価内容、(3)評価結果、の順に説明する。
【0040】
(1)試料作製
表1に示している条件の異なる2種類(実施例1〜12、比較例1〜)の第一の粘着層、第二の粘着層、芯材フィルムからなる粘着シートを作製した。表に記載の種類および割合のモノマー100質量部、重合開始剤としてAIBN0.6質量部、溶剤として酢酸エチル335質量部からなる混合物を、60℃で8時間重合させ、重量平均分子量100万の粘着剤を得た。この粘着剤25質量部を溶媒75質量部(トルエン22質量部と酢酸エチル42質量部、MEK(メチルエチルケトン)11質量部を混合した溶媒)に溶解し、固形分25質量部の粘着剤溶液を得た。粘着剤溶液100質量部に対して、溶媒(酢酸エチル)5質量部、表に記載の成分および量のタッキファイヤー、架橋剤を加えたものを粘着剤溶液とした。なおイソシアネート系の架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、エポキシ系の架橋剤として1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを用いた。また、芯材フィルムとしてPET、PCの2種類のフィルムを使用した。次いで、上記粘着剤溶液と芯材フィルムをダイコーターで芯材フィルムを含めた総厚み175μmとなるように塗工した。第一の粘着層と第二の粘着層は、いずれも表1に記載の粘着剤を用いた。第一の粘着層と第二の粘着層の後退部は表に記載の長さとし、粘着層の周囲全てが後退部を有するよう、粘着剤を塗工した。
【0041】
尚、表1に記載のアクリル酸変性物は、BAはブチルアクリレートポリマー、EAはエチルアクリレートポリマー、MAはメチルアクリレートポリマー、2EHAはアクリル酸2−ヒドロキシエチルポリマー、AAはアクリル酸ポリマーを示す。また、タッキファイヤーは、スチレン系はポリスチレン、MMAはメタクリル酸メチルを示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(2)評価
(a)粘着力
作製した粘着シートの粘着力を次のとおり評価した。粘着シートの一方の面に支持体を貼り合わせ、他方の面にカバーガラス、芯材フィルムまたは表示部材を貼り合わせ、23℃・50%環境下で30分放置した。その後、支持体を剥離角度180°、剥離速度300mm/分で引っ張ることで、カバーガラス、芯材フィルムまたは表示部材から粘着シートを剥離させ、(a)カバーガラス1に対する粘着力F1、(b)芯材に対する粘着力F2およびF3、(c)表示部材に対する粘着力F4を評価した。評価はオートグラフ(島津製作所製、型番AGS500NG)を使用し、25mm巾の試験片について行った。支持体、機能性部材、芯材フィルムおよび表示部材は次のとおり。
支持体:PET、コスモシャインA4100(東洋紡績社製)
機能性部材(カバーガラス):ソーダライムフロートガラス(森商会製)
芯材フィルム:PET、コスモシャインA4100(東洋紡績社製)
PC、1種G1600(タキロン社製)
表示部材:溶融カリウムで表面処理した化学強化ガラス
【0044】
粘着力差ΔF2−F1およびΔF3−F4が5.0N/25mm以上であれば、リワーク性が十分にあり製品として十分に使用できるレベルであることを示している。粘着力が5.0N/25mm未満3.0N/25mm以上であればリワーク性にやや劣るが、製品として使用可能なレベルであることを示している。粘着力が3.0N/25mm未満1.0N/25mm以上であればさらにリワーク性が劣り、製品としては使用できる下限レベルであることを示している。粘着力が1.0N/25mm未満であれば、リワーク性が低く、製品として使用できないレベルであることを示している。
【0045】
(b)耐久性
作製した粘着シートを使用して、耐久性を評価した。タッチパネルディスプレイの構成で、高温湿熱環境(60℃90%)高温環境(85℃)に1,000時間放置した後、粘着層の浮き剥がれ程度を評価した。表2のうち、「○」は端部における浮き剥がれがなく、製品として使用可能なレベルであることを示している。「△」は端部における浮き剥がれがあるものの、製品として使用できる下限レベルであることを示している。「×」は浮き剥がれが大きく、製品として使用できないレベルであることを示している。
【0046】
(c)リワーク性
作製した粘着シートを使用して、リワーク性を評価した。タッチパネルディスプレイの構成で、低温環境(−40℃)に24時間放置して取り出した直後に、カバーガラスまたは表示部材を剥がした。この際に、後退部を設けたものは後退部に鋼製の針を入れ、てこを使い剥がす方式を取り、後退部を設けなかったものは、鋼製の針を粘着シートとカバーガラスまたは表示部材の境界部に刺して剥がす方式を取った。表2のうち、「○」はカバーガラスまたは表示部材の破損や糊残りなく完全に剥がすことができ、十分に使用できるレベルであることを示している。「△」はカバーガラスまたは表示部材の破損や糊残りなく剥がすことが難しく、製品として使用できる下限レベルであることを示している。「×」はカバーガラスまたは表示部材の破損や糊残りなく剥がすことができない、製品として使用できないレベルであることを示している。
【0047】
【表2】
【0048】
(3)評価結果
実施例の積層シートは、本発明の構成を満たすためカバーガラスからの再剥離性に優れるものである。比較例の積層シートは、本発明の構成を満たさないため、カバーガラスからの再剥離性に劣るものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の粘着シートおよび該粘着シートの剥離方法によれば、剛体部材同士の貼り合わせ工程で、気泡等の混入した不良品から粘着層のみを剥がし、光学部材を再利用する(リワーク性を付与する)ことができるため、製造工程における歩留り向上を期待でき、液晶ディスプレイや液晶パネル、タッチパネル等の表示部材の製造工程等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 カバーガラス
2 芯材フィルム
3 表示部材(タッチパネル)
4 ディスプレイ
5、7 剥離シート
6 粘着層
61 第一の粘着層
61a、62a 後退部
62 第二の粘着層
10 粘着シート
11 タッチパネルディスプレイ
B 剥離用治具
L 積層体
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b
図6c
図7