(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各需要家に設置される計量器端末と、マルチホップ方式の無線通信ネットワークと、前記無線通信ネットワークの終端となる集約装置とを備えて構成され、前記各計量器端末から、予め規定される送信開始タイミングで、前記無線通信ネットワークを介して検針データを順次送信し、集約装置で集約するようにした検針データ収集方法において、
前記送信開始タイミングは、
前記無線通信ネットワークを構成する全ての計量器端末を予め定めるホップ数を境界として複数のグループに区分し、
予め設定される通信可能時間において、各グループには、ホップ数が大のグループから、所属する計量器端末数に応じた通信割当時間が規定され、
前記通信割当時間内で、ランダムな待ち時間が経過した時点に設定されるものであって、
前記各グループGi(i=1,2,3,・・・,n)に割り当てられる前記通信割当時間をWGiとし、ランダム付加時間をWRとし、そのランダム付加時間WRを有効とするか無効とするかを決定するフラグをS(S=1or0)とするとき、グループiにおける各計量器端末において、前記送信開始タイミングを規定するための予め定める基準時刻からの分散送信待ち時間Wiが、
Wi=WR×S+TGi−1
ただし、
TGi−1=WG1+WG2+・・・+WGi−1
から求められ、さらに、
前記検針データの収集可能な通信可能時間をW0、前記境界のホップ数をHth、前記無線通信ネットワークにおける最大のホップ数をHmax、対象計量器端末のホップ数をHとして、前記グループGiをGbigとGsmallとの2つとし、さらに比較的ホップ数が多いグループGbigへの通信割当時間をTbig、各計量器端末に予め固有に設定されるランダムな遅延時間をTDとするとき、比較的ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wbigおよび少ないグループGsmallの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wsmallが、
Wbig=(Hmax−H)〔Tbig÷(Hmax−Hth)〕
Wsmall=(Hth−H)〔(W0−Tbig−(TD×S))÷Hth]
+(TD×S)+Tbig
からそれぞれ求められることを特徴とする検針データ収集方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献2は、前記数百万を超えるような計量器端末を備える検針データ収集システムにおいて、たとえば1つのゲートウェイの収容端末数を1000としても、数千を超えるようなゲートウェイからの集約データのホスト装置での収集に、非常に効果的である。しかしながら、前記1000近くの計量器端末からゲートウェイへの検針データの収集については、各計量器端末でゲートウェイからのホップ数を記憶しておき、ホップ数が多い端末程、前記検針データの送出タイミングを早くすることで、不達の際の再送時間を確保することが示されているに止まる。
【0008】
ところで、前述のような細かな検針を行っても、課金や負荷の把握などのためには、検針の基準タイミングから、所定の短時間内でのデータの収集が必要になる。たとえば、毎時0分と30分とに、30分検針を行い、検針データは検針から5分以内に集約サーバへ収集する必要がある。一方で、前記ゲートウェイからホスト装置への有線ネットワークが高速であっても、その有線ネットワークでは、多数のゲートウェイから、それぞれ重い集約データを送信することになり、結果的には、収集に或る程度の時間を要し、前記多数の計量器端末からゲートウェイへの検針データの収集には、2分程度しか確保できないことになる。
【0009】
このような短時間で、低速の無線LANネットワークを介して、多数の計量器端末の検針データをゲートウェイに収集しようとすると、ゲートウェイ付近でのトラヒックの錯綜を生じる。ここで、前記特許文献2の手法を各計量器端末に適用して、各計量器端末は、下流側の各計量器端末から送られて来た検針データに、自局の検針データを組み合わせて、集約データを上流側に送信してゆくことも考えられる。しかしながら、その場合には、各計量器端末にデータを集約する複雑な処理が必要になり、端末コストが増加するとともに、集約する時間が必要になり、結果的に時間内で集約できないケースが生じる可能性もある。
【0010】
本発明の目的は、集約装置付近のトラヒックの輻輳を回避しつつ、予め設定された通信可能時間内で、ネットワークに収容されている総ての計量器端末の検針データを低コストかつ安定的に収集することができる計量器端末およびそれを備える検針データ収集システムならびに検針データ収集方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の計量器端末は、各需要家に設置され、マルチホップ方式の無線通信ネットワークを介して、集約装置へ順次検針データを送信する計量器端末において、前記無線通信ネットワークを構成する全ての計量器端末を予め定めるホップ数を境界として複数のグループに区分し、予め設定される通信可能時間において、各グループには、ホップ数が大のグループから、所属する計量器端末数に応じた通信割当時間が規定されており、その通信割当時間を記憶している記憶部と、前記通信割当時間内で、ランダムな待ち時間が経過した時点で、前記検針データの前記集約装置への送信を開始する通信制御部とを含
み、前記通信制御部は、前記各グループGi(i=1,2,3,・・・,n)に割り当てられる前記通信割当時間をWGiとし、ランダム付加時間をWRとし、そのランダム付加時間WRを有効とするか無効とするかを決定するフラグをS(S=1or0)とするとき、グループiにおける各計量器端末において、前記送信開始タイミングを規定するための予め定める基準時刻からの分散送信待ち時間Wiを、Wi=WR×S+TGi−1、ただし、TGi−1=WG1+WG2+・・・+WGi−1、から求めるものであり、さらに、前記通信制御部は、前記検針データの収集可能な通信可能時間をW0、前記境界のホップ数をHth、前記無線通信ネットワークにおける最大のホップ数をHmax、対象計量器端末のホップ数をHとして、前記グループGiをGbigとGsmallとの2つとし、さらに比較的ホップ数が多いグループGbigへの通信割当時間をTbig、各計量器端末に予め固有に設定されるランダムな遅延時間をTDとするとき、比較的ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wbigおよび少ないグループGsmallの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wsmallを、
Wbig=(Hmax−H)〔Tbig÷(Hmax−Hth)〕
Wsmall=(Hth−H)〔(W0−Tbig−(TD×S))÷Hth]
+(TD×S)+Tbig
からそれぞれ求めることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の検針データ収集方法は、各需要家に設置される計量器端末と、マルチホップ方式の無線通信ネットワークと、前記無線通信ネットワークの終端となる集約装置とを備えて構成され、前記各計量器端末から、予め規定される送信開始タイミングで、前記無線通信ネットワークを介して検針データを順次送信し、集約装置で集約するようにした検針データ収集方法において、前記送信開始タイミングは、前記無線通信ネットワークを構成する全ての計量器端末を予め定めるホップ数を境界として複数のグループに区分し、
予め設定される通信可能時間において、各グループには、ホップ数が大のグループから、所属する計量器端末数に応じた通信割当時間が規定され、前記通信割当時間内で、ランダムな待ち時間が経過した時点に設定される
ものであって、前記各グループGi(i=1,2,3,・・・,n)に割り当てられる前記通信割当時間をWGiとし、ランダム付加時間をWRとし、そのランダム付加時間WRを有効とするか無効とするかを決定するフラグをS(S=1or0)とするとき、グループiにおける各計量器端末において、前記送信開始タイミングを規定するための予め定める基準時刻からの分散送信待ち時間Wiが、Wi=WR×S+TGi−1、ただし、TGi−1=WG1+WG2+・・・+WGi−1から求められ、さらに、前記検針データの収集可能な通信可能時間をW0、前記境界のホップ数をHth、前記無線通信ネットワークにおける最大のホップ数をHmax、対象計量器端末のホップ数をHとして、前記グループGiをGbigとGsmallとの2つとし、さらに比較的ホップ数が多いグループGbigへの通信割当時間をTbig、各計量器端末に予め固有に設定されるランダムな遅延時間をTDとするとき、比較的ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wbigおよび少ないグループGsmallの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wsmallが、
Wbig=(Hmax−H)〔Tbig÷(Hmax−Hth)〕
Wsmall=(Hth−H)〔(W0−Tbig−(TD×S))÷Hth]
+(TD×S)+Tbig
からそれぞれ求められることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、多数の計量器端末が各需要家に設置され、それら多数の計量器端末が、終端となる集約装置との間に介在される他の計量器端末を中継局として構成されるマルチホップ方式の無線通信ネットワークを介して、前記集約装置に順次検針データを送信し、該集約装置で集約するにあたって、トラヒックの輻輳を避けるために、以下のようにして各計量器端末からの検針データの送信開始タイミングを規定する。
【0014】
すなわち、先ず前記無線通信ネットワークを構成する全ての計量器端末を予め定めるホップ数を境界として複数のグループに区分し、予め設定される通信可能時間を、各グループに収容する端末数に応じて分割し、各グループに対する通信割当時間を規定する。これによって、各収容端末には、グループに拘わらず、ほぼ均等な通信時間が割当てられる。ただし、ホップ数が大のグループの送信が前記通信可能時間の後半になると、該通信可能時間の終了時点で、送信した検針データがホップ中となるケースも生じるので、そのようなことの無いように、各グループの内、ホップ数が大のグループから、そのグループの通信割当時間を前記通信可能時間の始めの方に割り当て、記憶部に記憶させておく。さらに、割り当てられた通信割当時間内でのトラヒック(発呼タイミング)の集中を避けるために、通信制御部は、該通信割当時間内で、ランダムな待ち時間が経過した時点を、各計量器端末の最終的な送信開始タイミングとする。
【0015】
したがって、集約装置付近での前記トラヒックの輻輳を回避しつつ、予め設定された通信可能時間内で、ネットワーク(集約装置)に収容されている総ての計量器端末の検針データを安定的に収集することができる。また、各計量器端末は、自局に決められたタイミングで検針データを送信するだけでよく、複雑な演算処理は不要で、低コストに実現することができる。
【0016】
さらにまた、本発明の計量器端末では、前記通信制御部は、前記各グループGi(i=1,2,3,・・・,n)に割り当てられる前記通信割当時間をWGiとし、ランダム付加時間をWRとし、そのランダム付加時間WRを有効とするか無効とするかを決定するフラグをS(S=1or0)とするとき、グループiにおける各計量器端末において、前記送信開始タイミングを規定するための予め定める基準時刻からの分散送信待ち時間Wiを、Wi=WR×S+TGi−1、ただし、TGi−1=WG1+WG2+・・・+WGi−1から求めることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、前記各計量器端末の送信開始タイミングを、毎時0分や30分等の予め定める基準時刻からの分散送信待ち時間Wiとして定義する。分散には、先ずランダム付加時間WRを定義し、ただしそのグループが前記集約装置から遠い下流側の端末であるなどして収容端末数が極めて少ない場合などで、特にそのランダム付加時間WRを設けなくてもよい場合があるので、そのランダム付加時間WRを有効とするか無効とするかを決定するフラグS(S=1or0)を設定し、前記そのランダム付加時間WRに乗算するようにしておく。
【0018】
一方、前記基準時刻から開始される前記通信可能時間の内、各グループGiには前述のようにそのグループGiの収容端末数に応じた通信割当時間WGiが予め割り当てられている。したがって、その通信割当時間WGiが前記基準時刻からi番目のグループGiについては、それ以前のi−1番目までのグループGi−1についての通信割当時間の合計時間TGi−1が、基準の待ち時間として含まれることになる。すなわち、TGi−1=WG1+WG2+・・・+WGi−1であり、Wi=WR×S+TGi−1となる。
【0019】
これによって、任意のi番目のグループにおける計量器端末に対して、前記のようなトラヒックの輻輳を回避しつつ、予め設定された通信可能時間内で、ネットワーク(集約装置)に収容されている総ての計量器端末の検針データを収集することができる送信開始タイミングを規定することができる。
【0020】
また、本発明の計量器端末では、前記通信制御部は、前記検針データの収集可能な通信可能時間をW0、前記境界のホップ数をHth、前記無線通信ネットワークにおける最大のホップ数をHmax、対象計量器端末のホップ数をHとして、前記グループGiをGbigとGsmallとの2つとし、さらに比較的ホップ数が多いグループGbigへの通信割当時間をTbig、各計量器端末に予め固有に設定されるランダムな遅延時間をTDとするとき、比較的ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wbigおよび少ないグループGsmallの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wsmallが、Wbig=(Hmax−H)〔Tbig÷(Hmax−Hth)〕、Wsmall=(Hth−H)〔(W0−Tbig−(TD×S))÷Hth]+(TD×S)+Tbigからそれぞれ求めることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、前記グループGiをGbigとGsmallとのを2つとするとき、比較的ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末では、先ずそのグループGbigへの通信割当時間Tbigを、最大ホップ数Hmaxとグループの境界ホップ数Hthとの差(Hmax−Hth)で除して、単位通信割当時間(スロット期間)を求める。次に、その単位通信割当時間に、前記最大ホップ数Hmaxと自局のホップ数Hとの差(Hmax−H)を乗算して、前記分散送信待ち時間Wbigを求める。ここで、前記境界のホップ数Hthは、ホップ数が多いグループに対して、少ないグループの収容端末数が多くなるように、Hmax≧Hthに設定される。したがって、比較的ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末では、前記収容端末数が少なくなるために、前記分散送信待ち時間Wbigは、ランダムな分散を行うことなく、単純に自局のホップ数Hの多さに対応したタイミングに設定される。
【0022】
これに対して、前記収容端末数が多い比較的ホップ数が少ないグループGsmallの対象計量器端末では、先ず、前記検針データの収集可能な通信可能時間W0から、前記ホップ数が多いグループGbigに対する通信割当時間Tbigと、後述する遅延時間TDに前記フラグSを乗算した値とを減算することで、ホップ数Hに応じたランダム化に使用可能な時間Trandを求める。次に、その時間Trandを境界ホップ数Hthで除して、分散の単位通信割当時間(スロット期間)を求める。続いて、その単位通信割当時間に、境界のホップ数Hthと自局のホップ数Hとの差(Hth−H)を乗算して、前記ホップ数Hに応じた第1の前記分散送信待ち時間Wbig−1を求める。
【0023】
一方、各計量器端末には、そのID番号などに応じた固有の遅延時間TDも予め設定されており、この遅延時間TDに前記フラグSを乗算したものを第2の分散送信待ち時間Wbig−2とし、これらの分散送信待ち時間Wbig−1+Wbig−2を前記のランダム付加時間WRとする。さらに、ホップ数が多いグループGbigに対する通信割当時間Tbigが、このホップ数が少ないグループGsmallに対する基礎的な遅延合計時間TGi−1となる。したがって、ホップ数が少ないグループGsmallに対する分散送信待ち時間Wsmallを充分に分散されたものとすることができる。
【0024】
さらにまた、本発明の検針データ収集システムは、前記の計量器端末と、前記集約装置としてのゲートウェイと、前記ゲートウェイと有線ネットワークを介して接続されるホスト装置とを備えて構成され、前記ゲートウェイは、前記各計量器端末から送信された前記検針データを受信する第1の通信部と、前記第1の通信部で受信された複数の検針データをホスト装置側の有線通信回線のパケットサイズ毎に集約するデータ処理部と、前記データ処理部で集約された検針データを前記ホスト装置へ向けて送信する第2の通信部と、基準となる時刻から、該集約装置に予め設定される遅延時間が経過した時点で、前記第2の通信部にホスト装置への送信を開始させる通信制御部とを含むことを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、各需要家に設置された多数の計量器端末から検針データを収集する前記集約装置を、前記マルチホップ方式の無線通信ネットワークと、有線ネットワークとの間に介在されるゲートウェイとして構成し、そのゲートウェイが前記有線ネットワークを介してホスト装置へ検針データを送信することで、検針データ収集システムを構成する。
【0026】
そして、前記ゲートウェイは、収集した検針データをホスト装置へ送信するに際して、データ処理部で複数の検針データをホスト装置側の有線通信回線のパケットサイズ毎に集約する。したがって、各ゲートウェイは、検針データをホスト装置へ短時間で送信することができる。そしてさらに、通信制御部が、該ゲートウェイからホスト装置への送信タイミングを分散するので、ホスト装置付近でのトラヒックの錯綜を抑えることができる。こうして、コストが無闇に増加することなく、結果的に短時間で、かつ高い信頼性で検針データを収集することができる。
【0027】
また、有線と無線との境界のゲートウェイを集約装置とすることで、各集約装置間の並列度が高く(集約装置が異なる階層に散らばらない)、効率良く集約を行うことができる。
【0028】
また、本発明の検針データ収集システムでは、前記各計量器端末は、無線LAN規格での通信を行うことを特徴とする。
【0029】
上記の構成によれば、前記無線LANの規格であるIEEE802.11では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式を用いて、空きチャネルの有無を確認し、データの送信を行うことで、データの衝突は回避されているけれども、前記各計量器端末とホスト装置とが直接TCP/IPプロトコルで通信を行えば、1:1の通信であるので、多くの計量器端末が存在する場合に、検針データの送信に非常に時間が掛かる。
【0030】
そこで上述のようにゲートウェイから成る集約装置で一旦検針データを集約してホスト装置へ纏めて送信することで、該ホスト装置付近でのトラヒックを抑えることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の計量器端末およびそれを備える検針データ収集システムならびに検針データ収集方法は、以上のように、多数の計量器端末の検針データをマルチホップ方式の無線通信ネットワークを介して集約装置に送信させるにあたって、各計量器端末を複数のグループに区分して、その収容端末数に応じて通信割当時間を規定するとともに、ホップ数が大のグループから、その通信割当時間内で、ランダムなタイミングで検針データの送信を行う。
【0032】
それゆえ、集約装置付近での前記トラヒックの輻輳を回避しつつ、予め設定された通信可能時間内で、ネットワーク(集約装置)に収容されている総ての計量器端末の検針データを安定的に収集することができる。また、各計量器端末は、自局に決められたタイミングで検針データを送信するだけでよく、複雑な演算処理は不要で、低コストに実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の実施の一形態に係る検針データ収集システムの概略的構成を示すブロック図である。この検針データ収集システムは、各需要家H1,H2,・・・(総称するときは、以下参照符号Hで示す)にそれぞれ設置された計量器端末U1,U2,・・・(総称するときは、以下参照符号Uで示す)が、マルチホップ無線通信ネットワークを構成して、その検針データを予め定める時間毎や予め定める事象の発生時点などに、ホスト装置である集約サーバ1へ向けて送信し、収集することで、自動検針を実現するようにしたシステムである。
【0035】
前記計量器端末Uは、本実施の形態では積算電力量計として実現され、無線LAN規格での通信を行う。そのため、各計量器端末Uは、無線LANの端末間通信用のアドホックモードによって、参照符号A1,A2,A3,・・・で示すように、1:1の無線通信を行う。また、各計量器端末Uは、起動(電源投入)すると、必要に応じて、周囲の電波状況を監視し、最も通信品質の良好な計量器端末(ぶら下がり先:
図1の例では計量器端末U1に対してU2、U4に対してU5等)を判定して接続、すなわちネットワークに参加するとともに、無線通信ネットワークの終端である集約装置3に至る経路を自律的に選択して、該集約装置3へのルートマップを作成し、前記アドホックモードによって、前記検針データを送信する。そのルートマップから、各計量器端末Uは、隣接局の状況や、後述するような集約装置3から自局までのホップ数を認識することができる。
【0036】
前記集約装置3は、無線通信ネットワークと、電力会社などのネットワーク運営会社専用の有線ネットワーク4とを接続するもので、前記有線ネットワーク4には前記集約サーバ1が接続されている。この集約装置3は、たとえば主要な電柱に設けられ、収容端末数は数百〜千程度である。また、各計量器端末Uのホップ数は、最大で数十、好ましくは十ホップ以下である。そして、集約サーバ1の下層に設けられるこの集約装置3が、後述するようにして、その傘下の各計量器端末Uからの検針データを集約して前記集約サーバ1へ送信する。
【0037】
上述のようにして決定される各計量器端末Uのホップ先であるが、計量器端末Uの増加や取り外し、或いは故障などによって、該ホップ先には変化が生じる。このため各計量器端末Uは、定期的に上述のような電波状況およびぶら下がり先の判定を行い、ルートマップの変更を行っている。なお、各計量器端末U側から電波状況のデータを送信して、前記集約サーバ1または集約装置3側で、ルートマップを作成して(ぶら下がり先を決定して)、各計量器端末Uに設定するようにしてもよい。
【0038】
なお、本実施の形態では、集約装置3は、有線ネットワーク4と無線ネットワークとの境界、すなわちマルチホップ無線通信ネットワークの終端に設けられるゲートウェイとしているけれども、集約サーバ1の下層であればよく、前記マルチホップ無線通信ネットワークの途中に設けられてもよく、またその途中とこの集約装置3との複数のステップに設けられてもよい。しかしながら、このような有線と無線との境界のゲートウェイを集約装置3とすることで、各集約装置3間の並列度が高く(集約装置3が異なる階層に散らばらない)、効率良く集約を行うことができる。
【0039】
図2は、前記集約装置3の一構成例を示すブロック図である。この集約装置3は、前記各計量器端末Uと通信を行う無線LAN規格(IEEE802.11)のインタフェイス11と、その通信制御部12と、有線ネットワーク4を介して集約サーバ1と通信を行う有線LAN(Ethernet(登録商標))規格(IEEE802.3)のインタフェイス13と、その通信制御部14と、前記インタフェイス11で受信された各計量器端末Uからの複数の検針データを、集約サーバ1側の有線ネットワーク4(通信回線)のパケットサイズ毎に集約するデータ処理部15と、そのデータ処理のために使用されるワークメモリ16と、この集約装置3の全体の動作を制御する制御部17と、前記制御部17の動作の基準となる時刻情報を保持する時計部18とを備えて構成される。
【0040】
前記インタフェイス11と通信制御部12とは、前記各計量器端末Uから前記マルチホップで個別に送信された検針データを受信する第1の通信部を構成し、前記インタフェイス13と通信制御部14とは、前記データ処理部15で集約された検針データを前記集約サーバ1へ向けて送信する第2の通信部を構成する。なお、マルチホップの無線通信には、無線LANに限らず、無線LAN以外の他の規格が用いられてもよい。同様に、有線通信にも、有線LAN以外の規格が用いられてもよい。
【0041】
上述のように構成される検針データ収集システムにおいて、
図3および
図4は、本発明の実施の一形態の検針データの収集方法を説明するための図である。
図3で示すように、各計量器端末U11〜U1m;U21〜U2n;Ux1〜Uxkは、たとえば毎時0分と30分とに、内蔵の積算電力計の検針を行い、たとえば32バイトのそのデータを、無線LAN(IEEE802.11)のプロトコルで送信を行う。このとき、各計量器端末Uは、CSMA/CA方式を用いて、使用する無線チャネルの空き状態を確認することに加え、
図4で示すように、前記集約装置3に至る経路のホップ数の多いグループ程、速くの時点で、ランダム送信を開始するように、送信開始タイミングが設定されている。この計量器端末Uによる検針データの送信動作については、詳述する。
【0042】
一方、前記各計量器端末Uから送信された検針データは、集約装置A,B,・・・,Xの所へ到着し、前記インタフェイス11で受信され、通信制御部12からデータ処理部15を通してワークメモリ16に順次記憶されてゆく。これらの第1段階として、たとえば1000個の計量器端末Uからの検針データの収集に120秒が設定される。こうして収集された検針データは、前記データ処理部15が、ワークメモリ16を使用して、所定台数分のデータを1パケットに集約して、通信制御部14からインタフェイス13を通して、集約サーバ1に向けて、逐次送信する。こうして、数万の集約装置3からの集約された検針データの収集に、第2段階として、たとえば180秒の時間を要する。こうして計300秒で、検針データの自動収集は終了する。
【0043】
なお、各集約装置3の制御部17は、前記第1段階で、規定の120秒以内に到達せず、以降に到達した検針データは、破棄してゆく。このため、検針データが不達となった計量器端末に対しては、集約サーバ1は、前記第2段階の後、所定のインターバル期間を経て、個別に前記不達検針データの送信要求を行い、その要求をマルチホップの通信経路を介して目的の計量器端末まで伝達させ、返信されてきた検針データを逐次該集約サーバ1へ転送させるバックアップ検針を行う。
【0044】
ところで、前記集約装置3から集約サーバ1への検針データの送信にあたっては、前記通信制御部14は、検針データを高い信頼度で集約サーバ1に収集させるために、その送信に用いる前記有線ネットワーク4において、データの到達保証通信を行うことができるTCP/IPプロトコルで通信を行う。このため、前記データ処理部15は、前記32バイトの各計量器端末Uからの検針データを、前記TCP/IPプロトコルでの伝送規格(IEEE802.3)の最大MTUに対応したサイズである1500バイトに対応するよう、前記計量器端末Uで44台分のデータを1パケットに集約する。
【0045】
図5(a)は、前記集約装置3から集約サーバ1へ送信される検針データを集約した送信パケットの構造を示す図である。先ず、先頭には電文種別を表すデータD01およびデータ件数を表すデータD02が設けられ、それらに続いて実際の検針データD1,D2,・・・(前記のように最大でD44)が設けられ、最後にエンドマークD03が挿入される。そして、前述のように1件当りの検針データは32バイト、最大の44台分で1408バイト、前記データD01,D02,D03はそれぞれ4,1,1バイトであり、送信パケットは合計最大で1414バイトとなる。これにIP,TCPの各ヘッダのそれぞれ20,20バイトを加え、1500バイト以下となる。前記電文種別を表すデータD01は、検針データの送信開始(最初のパケット)、送信中(途中のパケット)および送信完了(最後のパケット)のいずれかを表し、前記データ件数を表すデータD02は、1〜44の数値となる。
【0046】
そして、制御部17は、
図6で示すように、基準となる時刻(前記検針タイミング)t0から、それぞれの集約装置3に予め設定される遅延時間τ1,τ2,τ3,・・・だけ待機して、前記集約したパケットの集約サーバ1への送信を開始させる。具体的には、前記各計量器端末Uには、予め連番の固有値で与えられるIDナンバーやIPアドレスが与えられている。それらを、たとえば15で除算し、その余りを0〜14の15のグループに分割し、グループ毎に、1秒ずつずれた前記遅延時間が、前記通信制御部14に予め定め設定され、或いは制御部17がタイミングを制御する。そして、1パケット送信すると、全グループに送信タイミングが1巡した15秒後に、次のパケットを送信する。
【0047】
したがって、1パケットの収容データ数を前記44台分とし、集約装置3の収容端末数を500台とすると、各集約装置3は、1回の検針につき、12パケットのデータの送信が必要となり、送信周期が前記15秒とすると、送信所要時間は前記180秒となる。そして、総端末数を1200万台とすると、集約装置3の台数は24000台となり、その台数を前記15秒で分散すると、1台当り0.625msecとなる。したがって、前記0.625秒当りに1つの集約装置3が1パケット送信するので、1秒当りのパケット数は、
1[秒]/0.625[msec/パケット]=1600[パケット]
となり、集約サーバ1の処理能力を3000PPSとすると、1台での処理が可能となる。
【0048】
このようにして、集約装置3のデータ処理部15で複数の検針データD1,D2,・・・を集約サーバ1側の有線通信回線4のパケットサイズ毎に集約することで、各集約装置3は、検針データD1,D2,・・・を集約サーバ1へ短時間で送信することができる。そしてさらに、通信制御部14が、該集約装置3から集約サーバ1への送信タイミングを分散するので、集約サーバ1付近でのトラヒックの錯綜を抑えることができる。こうして、コストが無闇に増加することなく、結果的に短時間で、かつ高い信頼性で検針データD1,D2,・・・を集約サーバ1に収集することができる。
【0049】
特に、本実施の形態では、前記各計量器端末Uは、無線LANの規格であるIEEE802.11での通信を行う。その場合、各計量器端末Uが、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式を用いて、空きチャネルの有無を確認し、データの送信を行うことで、データの衝突は回避されているけれども、前記各計量器端末Uと集約サーバ1とが直接TCP/IPプロトコルで通信を行えば、1:1の通信であるので、多くの計量器端末Uが存在する場合に、検針データD1,D2,・・・の送信に非常に時間が掛かる。そこで上述のようにゲートウェイから成る集約装置3で一旦検針データを集約してホスト装置である集約サーバ1へ纏めて送信することで、該集約サーバ1付近でのトラヒックを抑えることができる。
【0050】
一方、
図7は、前記計量器端末Uの一構成例を示す正面図である。この計量器端末Uは、宅内の各配電線が接続される端子台6側から、負荷開閉器7、電力量計8および無線通信装置5が配列されて構成されている。前記電力量計8は、積算電力量を前記の予め定める周期、たとえば30分毎に検針し、その検針データを、無線通信装置5が、後述するように計量器端末Uに予め設定されたタイミングに、自機の属する集約装置3へ向けて送信し、集約サーバ1に転送される。一方、集約サーバ1からは、負荷開閉器7の開閉や、不達検針データを再送する前記のバックアップ検針などを行わせるための制御データが、必要に応じて、集約装置3を介して各無線通信装置5へ向けて送信される。
【0051】
図8は、前記無線通信装置5の一構成例を示すブロック図である。この無線通信装置5は、前記無線LANの無線通信部21と、その通信を制御し、通信制御部である無線通信制御部22と、時計部23と、電力量計8から検針データを受信するインタフェイス24と、前記負荷開閉器7へ制御情報を送信するインタフェイス25と、それらの電力量計8および負荷開閉器7との通信を制御する機内通信制御部26と、前記検針データをバックアップ記憶しておくメモリ27と、前記ルートテーブルを記憶しているメモリ28とを備えて構成される。
【0052】
前記機内通信制御部26は、前記時計部23の内部時計に応答して、予め定められた検針時刻、たとえば1分毎に、前記インタフェイス24を介して電力量計8から検針データを受信し、参照符号27aで示すようにメモリ27に格納してゆく。その検針データを、無線通信制御部22は、前記内部時計に応答して、後述するようにして求められる送信タイミングとなると、前記毎時0分と30分との検針タイミング間分のデータを読出し、無線通信部21から送信する。無線通信部21は、前記内部時計に応答して、所定時間毎に、前述のように周囲を見渡してホップ先を判定しており、前記検針データをそのホップ先へ送信するとともに、受信した他の計量器端末Uからの検針データを転送する。
【0053】
上述のように構成される各計量器端末Uにおいて、本実施の形態の無線通信制御部22で注目すべきは、各計量器端末Uが順次検針データを送信するにあたって、集約装置3付近でのトラヒックの輻輳を回避できるようなタイミングで送信を行うことである。具体的には、上述のように時計部23の内部時計に応答して、前記機内通信制御部26が1分毎に収集し、メモリ27に格納しておいた検針データを、無線通信制御部22は、前記毎時0分および30分の検針タイミングとなると、1つに纏めて、集約サーバ1へ送信すべき検針データを作成する。そして、無線通信制御部22は、前記メモリ28に記憶されているルートテーブルから求めることができる集約装置3から自局までのホップ数に応じた送信タイミングで、前記検針データの送信を開始する。
【0054】
図9は、本実施の形態の送信タイミングの作成方法を説明するための図である。先ず、本実施の形態で注目すべきは、各計量器端末Uは、予め定めるホップ数を境界として複数のグループGiに区分されていることである。
図9は、その簡単な例を示すもので、無線通信ネットワークは、それぞれ分岐無しの3つの直列ルートで構成されており、上流(集約装置3)側から順に、第1のルートは計量器端末U11−U12−U13−U14−U15で構成され、第2のルートは計量器端末U21−U22−U23−U24−U25で構成され、第3のルートは計量器端末U31−U32−U33−U34−U35で構成されている。そして、この
図9では、最も簡単に、各計量器端末Uは、2つのグループGsmallとGbigとに分割されており、ホップ数の少ない上流側の計量器端末U11−U12−U13−U14;U21−U22−U23−U24;U31−U32−U33−U34がグループGsmallを構成し、ホップ数の多い下流側の計量器端末U−15,U−25,U−35がグループGbigを構成する。
【0055】
次に本実施の形態で注目すべきは、前述のように、各計量器端末Uから集約装置3へ検針データを送信するのに許容されている時間W0(前述の例では120秒)を通信可能時間とするとき、各グループGiには、所属する計量器端末数に応じた通信割当時間WGiが規定されることである。さらに、ホップ数が大のグループGbigでは、検針データDの到達時間は相対的に長くかかることが予想されるので、該グループGbigから前記時間W0の前半に割り当てられる。たとえば、グループGsmall,Gbigにおける台数比が9:1である場合、グループGbigには前半の12秒が割り当てられ、グループGsmallには後半の108秒が割り当てられる(
図9の例では、4:1で、24秒と96秒)。こうして、不達の際の再送などにも対応することができる。
【0056】
さらにまた、本実施の形態で注目すべきは、前記通信割当時間WGi内で、各グループGiに属する端末は、ランダムな待ち時間WRが経過した時点で、前記検針データの前記集約装置3への送信を開始することである。
【0057】
図10は、前記無線通信制御部22による本実施の形態の送信タイミングの作成方法を詳しく説明するためのフローチャートである。先ずステップS1では、前記メモリ28に記憶されているルートテーブルが読み込まれる。ステップS2では、そのルートテーブルが解析され、自局のホップ数Hが算出される。ステップS3では、その自局のホップ数Hを予め設定されている境界のホップ数Hth1,Hth2,・・・(前記の例ではHth1のみ、総称するときは、以下参照符号Hthで示す)と比較し、自局の属するグループGi(i=1,2,3,・・・,n)が判定される。ステップS4では、ランダムな付加時間WRが求められる。ステップS5では、前記の通信割当時間WGiから、自局の属するグループiに割り当てられるグループ待ち時間TGi−1が求められる。その後、ステップS6で、各計量器端末Uにおいて、前記毎時0分や30分等の予め定める基準時刻からの分散送信待ち時間Wiが求められる。
【0058】
すなわち、
Wi=WR×S+TGi−1 ・・・(1)
である。ただし、Sは、前記のランダム付加時間WRを有効とするか無効とするかを決定するフラグであり、S=1or0である。これは、グループGiが、前記集約装置3から遠い下流側の端末であるなどして収容端末数が極めて少ない場合などで、特にランダム付加時間WRを設けなくてもよい場合があるためである。
【0059】
そして、前記基準時刻から開始される前記通信可能時間W0の内、各グループGiには、順次前述のようにそのグループGiの収容端末数に応じた通信割当時間WGiが予め割り当てられているので、その通信割当時間WGiが前記基準時刻からi番目のグループGiについては、それ以前のi−1番目までのグループGi−1についての通信割当時間の合計時間TGi−1が、基準の待ち時間として含まれることになる。そこで、
TGi−1=WG1+WG2+・・・+WGi−1 ・・・(2)
である。
【0060】
上述のようにして作成される待ち時間Wi(送信タイミング)は、基本的にルートテーブルに変更のない場合は不変であり、該ルートテーブルが更新される毎に更新されて、予めメモリ28に記憶されていてもよい。しかしながら、前記通信割当時間WGi内での分散を行う付加時間WRを変更する等で、送信の都度、求められてもよい。さらに、本実施の形態では、この待ち時間Wi(送信タイミング)の作成は、計量器端末Uの無線通信制御部22で行われることとしているが、無線通信ネットワークの全体を把握している集約装置3や、集約サーバ1で行われ、各計量器端末Uに設定されるようにしてもよい。
【0061】
一方、上述のように待ち時間Wi(送信タイミング)の作成を計量器端末Uの無線通信制御部22側で行う場合は、境界のホップ数Hth等を変更すれば、適宜設定する必要があり、収容端末数に伴って変化するグループ待ち時間TGi−1や、通信割当時間WGi内に設定される付加時間WRの範囲も、自局の周辺の端末環境に応じて設定されることが望ましい。
【0062】
以上のように、本実施の形態の計量器端末Uおよびその検針データ収集方法によれば、各計量器端末Uが、マルチホップ方式の無線通信ネットワークを介して、集約装置3へ順次検針データを送信するにあたって、先ず前記無線通信ネットワークを構成する全ての計量器端末Uを予め定めるホップ数Hthを境界として複数のグループGiに区分し、予め設定される通信可能時間W0を、各グループGiに収容する端末数に応じて分割し、各グループGiに対する通信割当時間WGiを規定する。これによって、各収容端末には、グループに拘わらず、ほぼ均等な通信時間が割当てられることになる。
【0063】
ただし、ホップ数が大のグループの送信が前記通信可能時間W0の後半になると、該通信可能時間W0の終了時点で、送信した検針データがホップ中となるケースも生じるので、そのようなことの無いように、各グループGiの内、ホップ数Hが大のグループから、そのグループの通信割当時間WGiを前記通信可能時間W0の始めの方に割り当てる。さらに、割り当てられた通信割当時間WGi内でのトラヒック(発呼タイミング)の集中を避けるために、該通信割当時間WGi内で、ランダムな待ち時間WRが経過した時点を、各計量器端末Uの最終的な送信開始タイミング(待ち時間Wi)とする。
【0064】
したがって、集約装置3付近での前記トラヒックの輻輳を回避しつつ、予め設定された通信可能時間W0内で、ネットワーク(集約装置3)に収容されている総ての計量器端末Uの検針データを安定的に収集することができる。また、各計量器端末Uは、自局に決められたタイミングで検針データを送信するだけでよく、複雑な演算処理は不要で、低コストに実現することができる。
【0065】
また、そのような待ち時間Wiを、上式1で求めることで、任意のi番目のグループGiにおける計量器端末に対して、前記のようなトラヒックの輻輳を回避しつつ、予め設定された通信可能時間内で、ネットワーク(集約装置3)に収容されている総ての計量器端末の検針データを収集可能な送信開始タイミングを規定することができる。
【0066】
なお、上述の説明では、グループGiの区分は、無線通信制御部22が、実際のホップ数Hと境界のホップ数Hthとを比較して判定しており、この場合は、特許請求の範囲における記憶部は上記無線通信制御部22およびメモリ28となる。しかしながら、このグループGiの区分は、上流側の集約サーバ1や集約装置3で決定されて制御信号などで各計量器端末Uに設定されてもよく、その場合は設定を記憶する記憶部が前記特許請求の範囲における記憶部となる。また、上述のようなグループ分けは、ホップ数Hの変化などに対応してダイナミックに変更可能な例であるが、以下の具体例のように、前記グループGiをGsmallとGbigとの2つとするような少数のグループにしか分割しない場合は、計量器端末Uの設置の際にディップスイッチなどで固定設定するようにしてもよく、その場合は前記ディップスイッチなどが特許請求の範囲における記憶部となる。
【0067】
前記待ち時間Wi(送信タイミング)のより具体的な作成アルゴリズムを説明すると、以下の通りである。以下の説明では、前述の
図9と同様に、境界のホップ数HthはHth1の1つ、すなわち前記グループGiはGsmallとGbigとの2つで説明しているが、3つ以上であってもよいことは言うまでもない。そして、前述の通り、検針データの収集可能な通信可能時間はW0であり、さらに無線通信ネットワークにおける最大のホップ数をHmax、対象計量器端末のホップ数をHとして、ホップ数Hが多いグループGbigへの通信割当時間をTbigとする。一方、各計量器端末Uに予め固有に設定されるランダム化のための遅延時間をTDと新たに定義する。
【0068】
それぞれのパラメータの設定可能範囲としては、たとえば、Hmax=1〜127、Tbig=1〜590[秒]、TD=10〜590[秒]、W0=20〜600[秒]である。具体的には、各ホップ数Hに対する計量器端末数の分布の関係は、
図11で示すように、ホップ数が小さい範囲(およそ1〜10ホップ)に偏ることから、前記2つにグループ分けする場合の境界のホップ数Hthとして、たとえばHth=10に設定すると、Gsmall:Gbigが前記9:1程度になることが多く、前記W0=120[秒]の場合に、Tbig=12[秒]である。また、TD=60[秒]、最大のホップ数Hmaxは、現実的には20程度である。
【0069】
そうして、ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末における分散送信待ち時間Wbigおよび少ないグループGsmallの対象計量器端末における前記分散送信待ち時間Wsmallを、
Wbig=(Hmax−H)〔Tbig÷(Hmax−Hth)〕
Wsmall=(Hth−H)〔(W0−Tbig−(TD×S))÷Hth]+(TD×S)+Tbig
と規定する。
【0070】
すなわち、前記グループGiをGbigとGsmallとの2つとするとき、比較的ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末では、先ずそのグループGbigへの通信割当時間Tbigを、最大ホップ数Hmaxとグループの境界ホップ数Hthとの差(数Hmax−Hth)で除して、単位通信割当時間(スロット期間)を求める。次に、その単位通信割当時間に、前記最大ホップ数Hmaxと自局のホップ数Hとの差(Hmax−H)を乗算して、前記分散送信待ち時間Wbigを求める。ここで、前述のように、境界のホップ数Hthは、ホップ数が多いグループGbigに対して、少ないグループGsmallの収容端末数が多くなるように、Hmax≧Hthに設定されている。したがって、比較的ホップ数が多いグループGbigの対象計量器端末では、前記収容端末数が少なくなるために、前記分散送信待ち時間Wbigは、ランダムな分散を行うことなく、単純に自局のホップ数Hの多さに対応したタイミングに設定している。
【0071】
これに対して、前記収容端末数が多い比較的ホップ数が少ないグループGsmallの対象計量器端末では、先ず、前記検針データの収集可能な通信可能時間W0から、前記ホップ数が多いグループGbigに対する通信割当時間Tbigと、後述する遅延時間TDに前記フラグSを乗算した値とを減算することで、ホップ数Hに応じたランダム化に使用可能な時間TD’を求める。次に、その時間TD’を境界ホップ数Hthで除して、分散の単位通信割当時間(スロット期間)を求める。続いて、その単位通信割当時間に、境界のホップ数Hthと自局のホップ数Hとの差(Hth−H)を乗算して、前記ホップ数Hに応じた第1の前記分散送信待ち時間Wsmall−1を求める。
【0072】
一方、各計量器端末Uには、そのID番号などに応じた固有の遅延時間TDも予め設定されており、この遅延時間TDに前記フラグSを乗算したものを第2の分散送信待ち時間Wsmall−2とし、これらの分散送信待ち時間Wsmall−1+Wsmall−2を前記のランダム付加時間WRとする。さらに、ホップ数が多いグループGbigに対する通信割当時間Tbigが、このホップ数が少ないグループGsmallに対する基礎的な遅延合計時間TGi−1となる。したがって、ホップ数が少ないグループGsmallに対する分散送信待ち時間Wsmallを充分に分散されたものとすることができる。
【0073】
図12は、本件発明者のシミュレーション結果を示すグラフである。このシミュレーションでは、計量器端末数が200台の環境において、10ホップまでの端末が9割、11ホップ〜20ホップまでの端末が1割を占める環境を想定し、通信可能時間W0は120[秒]としている。
図12(a)は、単純にホップ数の大きい端末から順に送信する場合を示しており、前半(0〜60秒)と後半(60〜120秒)とで、時間当り(10秒単位で見た場合)のトラヒックの偏りが大きい。特に、1ホップ当りの割り当てが6秒であるので、6〜7ホップまでの端末が送信を開始する80〜120秒のピークが大きいことが理解される。
【0074】
図12(b)は、
図12(a)の前に、ホップ数に対する端末数の分布から通信割当時間WGiを規定した例を示しており、前記時間当り(10秒単位で見た場合)のトラヒックの偏りは軽減しているものの、トラヒックのピークは依然大きい(60〜100秒に集中)ことが理解される。さらに、
図12(c)は、
図12(b)に加えて、ランダムな待ち時間を付加したもので、前記ピークが大幅に縮小していることが理解される。