特許第5715877号(P5715877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715877
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】空気弁、及び空気弁付き消火栓
(51)【国際特許分類】
   F16K 24/00 20060101AFI20150423BHJP
   F16K 31/18 20060101ALI20150423BHJP
   E03B 9/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   F16K24/00 J
   F16K31/18 C
   E03B9/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-109897(P2011-109897)
(22)【出願日】2011年5月16日
(65)【公開番号】特開2012-26570(P2012-26570A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2014年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-144472(P2010-144472)
(32)【優先日】2010年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397007066
【氏名又は名称】協和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】清水 勝也
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−61618(JP,A)
【文献】 実開昭47−14550(JP,U)
【文献】 特開平10−267148(JP,A)
【文献】 米国特許第4209032(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 24
F16K 31
E03B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水を下部の給水口から内部へ導入する筒状のシリンダと、
シリンダの内側に昇降自在に配設される柱状フロート弁と、
上下方向に貫通する細長い空気孔を有し、水道水から浮力を受けて上昇する柱状フロート弁が空気孔を塞ぐように密着し得るエンドブロックと、
空気孔に連通する中空部が形成され、エンドブロックの上側に位置するエンドブロック補助体と、
エンドブロック補助体を覆ってシリンダに固定され得るエンドキャップと、を備えてなり、
前記エンドブロック補助体は、前記エンドキャップに覆われて押さえ付けられることによって前記エンドブロックと前記エンドキャップの両方に隙間なく密着し、かつ、前記中空部からその側壁を貫通する第2空気孔が形成され、該側壁の外周面に所定の弾性力でもって密着して第2空気孔を塞ぎ得るリング状の弾性体が設けられていることを特徴とする空気弁。
【請求項2】
水道水を下部の給水口から内部へ導入する筒状のシリンダと、
シリンダの内側に昇降自在に配設される柱状フロート弁と、
上下方向に貫通する細長い空気孔を有し、水道水から浮力を受けて上昇する柱状フロート弁が空気孔を塞ぐように密着し得るエンドブロックと、
空気孔に連通する中空部が形成され、エンドブロックを覆ってシリンダに固定され得るエンドキャップと、を備えてなり、
前記エンドキャップは、前記エンドブロックに押さえ付けられることによってそれに隙間なく密着し、かつ、前記中空部からその側壁を貫通する第2空気孔が形成され、側壁の外周面に所定の弾性力でもって密着して第2空気孔を塞ぎ得るリング状の弾性体が設けられていることを特徴とする空気弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気弁において、
第2空気孔の断面積は、前記空気孔における直径が最小の部分の断面積よりも大きいことを特徴とする空気弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気弁において、
第2空気孔は1個だけ形成されていることを特徴とする空気弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気弁と消火栓本体部を有してなり、
消火栓本体部は、水道管から水道水が導入される水道水導入路と、水道水導入路から水道水を導入して放水口から放水可能とする消火放水路と、水道水導入路と消火放水路の間を開閉する開閉弁部と、を備え、
前記水道水導入路から前記空気弁の給水口に連通する空気弁連通路が設けられていることを特徴とする空気弁付き消火栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管の内部に溜まった空気を管外へ排気する空気弁、及びこのような空気弁が取付けられた空気弁付き消火栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水道管の内部に空気が溜まることによる弊害を防止するために、水道管内部の空気を外部に排出する空気弁がいろいろな場所で広く用いられている。空気弁は、水道管の設置、水道管の調査、天災による給水ポンプ事故や水道管破損、及び水道管の工事などの後に水道管の中の多量の空気を排気する多量排気(急速排気)の機能と、水道水が通常の圧力で水道管を流れている状態で様々な原因で水道管に混入した空気を少量ずつ排気する少量排気の機能と、を有するものが一般的である。
【0003】
本願出願人は、本願発明者が発明者である特許文献1において、多量排気の機能をなくし少量排気の機能だけを残した特別構造の小型の空気弁を開示している。この小型化の空気弁は、単体の空気弁に適用されるのみではなく、空気弁が消火栓の能力を維持するように機能する空気弁付き消火栓に用いると、更に好適である。本願では、特に指定しなければ、「空気弁」は、単体の空気弁及び他の水道用資機材(例えば、消火栓)と一体となった空気弁の部分を示すものとする。
【0004】
図6に示す空気弁101は、特許文献1で開示され、外部からの雨水等の浸入に対する阻止能力を高めた構造の空気弁と同様のものである。空気弁101は、基本構造として、水道水を下部の給水口121から内部へ導入する筒状のシリンダ102と、シリンダ102のすぐ内側に(シリンダ102との隙間を少なくしてその内方に)昇降自在に配設される柱状フロート弁103と、少量排気用の細長い空気孔141が上下方向に貫通し、水道水から浮力を受けて柱状フロート弁103が上昇した場合にそれが空気孔141を塞ぐように密着し得る弁座機能を有するエンドブロック104と、エンドブロック104を覆ってシリンダ102に固定されるとともに、その側面に排気口161が形成されたエンドキャップ106と、を備えている。水道管からの空気は、シリンダ102の内部でエンドブロック104の下方に溜まり、柱状フロート弁103を押し下げて空気孔141を開放し、細長い空気孔141から、エンドキャップ106とエンドブロック104の間の隙間部162を通って、エンドキャップ106の排気口161に至り、そこから外部に排出される。このエンドキャップ106は、メンテナンス時に、シリンダ102に対して回転させるだけでエンドブロック104や柱状フロート弁103を着脱できるようにすることが可能である。
【0005】
また、空気弁101は、雨水等に対する阻止能力を高めるために、柱状フロート弁103の下端付近にOリングの弁体107を固定し、シリンダ102の下端、すなわち給水口121に、すり鉢状の弁座の役割を果たすシールブロック108を設けている。水道管の使用前や、水道管の調査、天災による給水ポンプ事故や水道管破損、及び水道管の工事のときには、下部の給水口121近傍が大気圧レベル或いは負圧レベルになり、外部の雨水や塵埃などを含んだ空気が浸入(逆行)し易い状況になる。空気弁101において、外部から排気口161、上記隙間部162を通って空気孔141に至った雨水等は、空気孔141に浸入するときも有り得る。シリンダ102の内部に浸入した雨水等は、柱状フロート弁103がシリンダ102のすぐ内側にあるので、付着する水の表面張力の効果(シール効果)により長くて狭い隙間を通り難くなる。更に、そのときには柱状フロート弁103が下降し、弁体107がシールブロック108に密着しているので、給水口121が遮断され、それより下方に雨水等が浸入するのが阻止される。
【0006】
図7に示す空気弁201は、これも特許文献1で開示され、雨水等に対する阻止能力を高めた構造のもう一つの空気弁と同様のものである。この空気弁201は、上記の空気弁101のように給水口121の近傍の構造ではなく、空気孔241の近傍の構造により、雨水等に対する阻止能力を高めている。すなわち、空気弁201は、上記と同様な機能の、給水口221を有するシリンダ202と、柱状フロート弁203と、エンドブロック204と、を備え、エンドブロック204の上側に、その空気孔241に連通する中空部251が形成されたエンドブロック補助体205を備えている。中空部251にはボール弁252が入っており、また、中空部251にはパイプ206が固定されている。空気孔241からの空気はボール弁252を浮かしてその隙間から流出し、中空部251からパイプ206を通って排出される。空気孔241から空気が流出しないときは、通常、空気孔241をボール弁252が塞いでいるので、雨水等を阻止できる。なお、空気弁201は、空気弁101のエンドキャップ106を用い、エンドキャップ106とエンドブロック補助体205の間の隙間部をパイプの代わり用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−61618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、空気弁101の弁体107とシールブロック108による阻止は、柱状フロート弁103自体の重量を用い、空気弁201のボール弁252による阻止は、ボール弁252自体の重量を用いたものであり、雨水等の圧力のかかり方によっては阻止能力が十分でない場合も有り得る。また、空気弁が極度の傾斜に設置された場合は、阻止能力は弱まる。
【0009】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、雨水等に対する阻止能力を増大させ、かつ、傾いて設置された場合も雨水等に対する阻止能力が弱まらない空気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の空気弁は、水道水を下部の給水口から内部へ導入する筒状のシリンダと、シリンダの内側に昇降自在に配設される柱状フロート弁と、上下方向に貫通する細長い空気孔を有し、水道水から浮力を受けて上昇する柱状フロート弁が空気孔を塞ぐように密着し得るエンドブロックと、空気孔に連通する中空部が形成され、エンドブロックの上側に位置するエンドブロック補助体と、エンドブロック補助体を覆ってシリンダに固定され得るエンドキャップと、を備えてなり、前記エンドブロック補助体は、前記エンドキャップに覆われて押さえ付けられることによって前記エンドブロックと前記エンドキャップの両方に隙間なく密着し、かつ、前記中空部からその側壁を貫通する第2空気孔が形成され、該側壁の外周面に所定の弾性力でもって密着して第2空気孔を塞ぎ得るリング状の弾性体が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の空気弁は、水道水を下部の給水口から内部へ導入する筒状のシリンダと、シリンダの内側に昇降自在に配設される柱状フロート弁と、上下方向に貫通する細長い空気孔を有し、水道水から浮力を受けて上昇する柱状フロート弁が空気孔を塞ぐように密着し得るエンドブロックと、空気孔に連通する中空部が形成され、エンドブロックを覆ってシリンダに固定され得るエンドキャップと、を備えてなり、前記エンドキャップは、前記エンドブロックに押さえ付けられることによってそれに隙間なく密着し、かつ、前記中空部からその側壁を貫通する第2空気孔が形成され、側壁の外周面に所定の弾性力でもって密着して第2空気孔を塞ぎ得るリング状の弾性体が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の空気弁は、請求項1又は2に記載の空気弁において、第2空気孔の断面積は、前記空気孔における直径が最小の部分の断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の空気弁は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気弁において、第2空気孔は1個だけ形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の空気弁付き消火栓は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気弁と消火栓本体部を有してなり、消火栓本体部は、水道管から水道水が導入される水道水導入路と、水道水導入路から水道水を導入して放水口から放水可能とする消火放水路と、水道水導入路と消火放水路の間を開閉する開閉弁部と、を備え、前記水道水導入路から前記空気弁の給水口に連通する空気弁連通路が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空気弁によれば、シリンダの内部に導入された水道水の上方に空気が溜まったときは、空気はその圧力により、エンドブロックの空気孔を通ってエンドブロック補助体(又はエンドキャップ)に形成された中空部に至り、第2空気孔を通って空気の圧力により弾性体を伸ばして隙間を開けて流出し、外部に排出される。他方、シリンダの内部が大気圧レベル或いは負圧レベルのときは、弾性体が第2空気孔を塞ぐように密着しているので、外部からの雨水等に対する阻止能力が非常に高く、また、空気弁が傾いていても阻止能力が弱まらない。また、本発明に係る空気弁付き消火栓は、上記の空気弁を備えているので、消火栓本体部の能力の維持がされ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る空気弁1の断面図である。
図2】同上の空気弁1の一部を拡大して示した断面図である。
図3】同上の空気弁1を単体として用いる場合の接続例の断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る空気弁付き消火栓10の断面図である。
図5】同上の空気弁1の変形例の一部を拡大して示した断面図である。
図6】従来の空気弁101の断面図である。
図7】従来の別の空気弁201の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を説明する。本発明の第1の実施形態に係る空気弁1は、図1に示すように、シリンダ2、柱状フロート弁3、エンドブロック4、エンドブロック補助体5、エンドキャップ6、を備えてなる。この空気弁1は、シリンダ2の軸方向が上下方向になるように設置されるものである。図2は、エンドブロック4よりも上方を拡大して示すものである。空気弁1は、単体の空気弁として用いる場合は、例えば図3の例に示すように、その下方に管継手19を介して止水バルブ(図示せず)などが接続され、その先で水道管に接続される。なお、図3(及び後述の図4)の中の符号18は、柱状フロート弁3が下降したときに緩衝となるクッション材である。以下、シリンダ2、柱状フロート弁3、エンドブロック4、エンドブロック補助体5、エンドキャップ6の構成を、少量排気時(通常動作時)の動作とともに説明する。
【0018】
シリンダ2は、軸方向に長い筒状をなし、下部開口部が給水口21になっており、水道管からの水道水を下部の給水口21から内部へ導入する。例えば、シリンダ2は円筒状である。また、好ましくは、図示のように、その上端部(上部開口部)には、雄ねじが形成されており、後述のエンドキャップ6の雌ねじと螺合することにより、それらはねじ固定される。
【0019】
柱状フロート弁3は、シリンダ2のすぐ内側に(シリンダ2の内方に少ない隙間でもって)昇降自在に配設されている。柱状フロート弁3の重量は、シリンダ2の内部に水道水が導入されて浮力を受けたとき、後述のエンドブロック4の空気孔41をしっかりと塞ぎ得るように、かつ、シリンダ2の内部上部に空気が溜まったとき、適度に押し下げられるように決められる。また、柱状フロート弁3の中央上端部は、エンドブロック4の空気孔41をしっかりと塞ぎ得るようにエンドブロック4の底面の形状に応じた形状、例えば、図に示すように凸状になっている。
【0020】
エンドブロック4は、柱状フロート弁3をシリンダ2に閉じ込めるように柱状フロート弁3の上方に配置され、シリンダ2の上部開口部に固定されている。エンドブロック4は、その周辺部がシリンダ2の内周面に形成された段差(図1参照。)と後述するエンドブロック補助体5に挟まれ、更にエンドブロック補助体5が後述するようにエンドキャップ6に押さえ付けられることによって、上下に移動しないように固定される。
【0021】
エンドブロック4は、少量排気用の上下方向に貫通する細長い空気孔41を有する。水道水から浮力を受けて柱状フロート弁3が上昇したとき、柱状フロート弁3が空気孔41を塞ぐように密着する。また、シリンダ2の内部上部に空気が溜まり柱状フロート弁3が押し下げられたとき、空気孔41が開放されて空気孔41からその空気が排出される。
【0022】
例えば、エンドブロック4は、大略円柱状であり、基部4aの中央に弾力性の有るパッキン材4bを有しており、パッキン材4bの上方にはパッキン固定部材4cを有している。パッキン材4bとパッキン固定部材4cには、その中心軸に沿うように空気孔41が形成されている。空気孔41は、パッキン固定部材4cにおける直径がパッキン材4bにおける直径よりも大きくなっている。パッキン材4bは、弁座機能を有するものであって、その弾力性により、柱状フロート弁3が当接したときの密着性を良くしている。
【0023】
エンドブロック補助体5は、エンドブロック4の上側に設けられ、後述のエンドキャップ6に覆われている。エンドブロック補助体5は、エンドキャップ6がシリンダ2に当てられ固定されるときに、エンドブロック4及びエンドキャップ6の両方に押さえ付けられることによって、それら両方に隙間なく密着し、上下に移動しないように固定される。よって、エンドブロック補助体5とエンドブロック4との間隙及びエンドブロック補助体5とエンドキャップ6との間隙は、シールされる。なお、エンドブロック補助体5は、エンドブロック4との間隙及びエンドキャップ6との間隙が良好にシールできるように、適度に柔軟性を有するABS樹脂などの合成樹脂製のものが好適に用いられる。
【0024】
エンドブロック補助体5は、基部5aの中に中空部51が形成されており、中空部51はエンドブロック4の空気孔41に連通している。また、中空部51を形成する側壁(基部5aの一部分)5abには、中空部51から横方向に貫通する第2空気孔52が形成されている。従って、エンドブロック補助体5がエンドブロック4とエンドキャップ6の両方に隙間なく密着すると、中空部51は、第2空気孔52と空気孔41以外に、空気の通路はない。なお、中空部51は、図1のように上下に貫通するものであってもよいし、上側は貫通しないものであってもよい。
【0025】
中空部51の側壁5abの外周面には、所定の弾性力でもって密着し、第2空気孔52を塞ぎ得るリング状の弾性体53が設けられている。この弾性体53の直径は、第2空気孔52の直径よりも大きいものである。弾性体53は、側壁5abの外周面によって拡げられて、常にテンションがかかった状態(張った状態)になっており、それにより所定の弾性力でもって密着している。より詳細には、中空部51の側壁5abの外周面における第2空気孔52の開口部の位置にリング状の凹部が形成されており、それに弾性体53が嵌り込んでいる。
【0026】
エンドブロック補助体5の中空部51には、エンドブロック4の空気孔41から排出された空気が溜まり、予め設定した圧力(設定圧力)よりも高くなると、第2空気孔52の外側に所定の弾性力でもって密着しているリング状の弾性体53を押し広げる。図2(及び図1)は、このときの状態を示している。そうすると、弾性体53と側壁5abの間に隙間ができて第2空気孔52から中空部51の空気が流出する。他方、エンドブロック4の空気孔41から空気が中空部51に排出されないか、或いは、中空部51の空気の圧力が設定圧力よりも低い場合には、リング状の弾性体53は第2空気孔52を塞いだままであり、中空部51の空気は排出されない。なお、設定圧力は、水道管の中を流れている水道水の圧力を考慮して決められる。また、いわゆるウォーターハンマーやエアハンマーなどによって水道管内の圧力が局所的に異常に高くなり、中空部51の空気の圧力が設定圧力を大きく超えた場合は、シールされていたエンドブロック補助体5とエンドブロック4との間隙又はエンドブロック補助体5とエンドキャップ6との間隙が開いて外部に空気を排出することができ、それにより弾性体53のズレや破裂などが防止される。
【0027】
例えば、エンドブロック補助体5は、大略円柱状であり、その上部5aaはエンドキャップ6の内側にしっかり嵌り込む程度の、すなわちエンドキャップ6の内径とほぼ同じ程度の外径である。これに対し、エンドブロック補助体5の下部は上部5aaよりも小さい外径である。この下部は、中空部51を形成する側壁5abであり、前述のように中空部51から側壁5abを貫通する第2空気孔52が形成されている。エンドブロック補助体5の側壁5abの外周面とエンドキャップ6の後述する側部内周面との間には、所定の大きさの後述する隙間部54が形成される。なお、図示しているように、エンドブロック補助体5の上部5aaの外周面に雄ねじを形成し、後述するエンドキャップ6の側部内周面に雌ねじを形成し、これらを螺合させてエンドブロック補助体5がエンドキャップ6に適切に嵌り込み易くすることも可能である。
【0028】
エンドキャップ6は、エンドブロック補助体5を覆い、シリンダ2に当てられ固定されている。エンドキャップ6は、シリンダ2に固く固定される力により、エンドブロック補助体5をも押し付けることになる。エンドキャップ6の側部内周面とエンドブロック補助体5の側壁5abの外周面との間には、前述したように、隙間部54が形成されており、また、この隙間部54と連通する排出孔61がエンドキャップ6の側部に形成されている。隙間部54は、エンドブロック補助体5の中空部51を形成する側壁5abの外周面と弾性体53との間に隙間ができたときに第2空気孔52と連通する。エンドブロック補助体5の中空部51から第2空気孔52を通って流出した空気は、隙間部54から排出孔61を通って外部へ排出される。
【0029】
例えば、エンドキャップ6は、有底略円筒状である。また、好ましくは、図示のように、その側部内周面の下端部近傍には、雌ねじが形成されており、前述したように、シリンダ2の雄ねじと螺合させることにより、それらはねじ固定される。
【0030】
空気弁1は、通常動作時と異なり空気弁1の下部の給水口21近傍が大気圧レベル或いは負圧レベルの状態になったときは以下のように動作する。この状態では、シリンダ2内の柱状フロート弁3は下降し、エンドブロック4の空気孔41は開放状態になる。そうすると、エンドブロック補助体5の中空部51は、大気圧レベル或いは負圧レベルであるので、外部から隙間部54に雨水等が浸入したとき、更に第2空気孔52に浸入しようとする。しかし、このとき、弾性体53が第2空気孔52に密着し塞いでいるので、雨水等の浸入が阻止される。弾性体53が第2空気孔52にテンションがかかった状態で密着しているので、阻止能力が非常に高く、また、空気弁1が傾いていても阻止能力が弱まらない。また、雨水等によって中空部51の側壁5abの外周面に異物が付着しても横方向に形成された第2空気孔52を通っては中空部51には侵入し難く、万一侵入したとしても、中空部51の中を通って空気孔41までは到達し難いので、細長い空気孔41が異物により閉塞されることが防止される。
【0031】
更に好ましい形態としては、第2空気孔52の断面積を、空気孔41における直径が最小部分(パッキン材4bに形成された部分)の断面積よりも大きくする。そうすると、通常動作時に、空気孔41から中空部51に排出された空気は、第2空気孔52からスムーズに外部に向かって排出される。よって、空気弁の本来的な動作、すなわちシリンダ2の内部上部に溜まった所定気圧の空気をシリンダ2外に排出するという動作は、中空部51によってほとんど妨げられないようにすることができ、中空部51の存在による影響をほぼ無くすことができる。なお、第2空気孔52を複数個形成した場合の断面積は、総断面積を指すことになる。
【0032】
また、第2空気孔52は1個だけ形成するのが好ましい。そうすると、雨水等の浸入のルートが1つなのでその阻止能力が高くなるのは勿論、通常動作時に第2空気孔52から中空部51の空気を排出するとき、弾性体53を押し広げる圧力が安定し易くなる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態に係る空気弁付き消火栓10について説明する。空気弁付き消火栓10は、図4に示すように、上記の第1の実施形態に係る空気弁と同様の空気弁1と消火栓本体部11を有している。消火栓本体部11は、一般的な消火栓と同様な構造のものであり、水道管から水道水が導入される水道水導入路12と、水道水導入路12から水道水を導入して放水口13aから放水可能とする消火放水路13と、水道水導入路12と消火放水路13の間を開閉する開閉弁部14と、を備えている。また、水道水導入路12から空気弁1の給水口21に連通する空気弁連通路15が設けられている。水道水は、水道水導入路12から空気弁連通路15を通って、空気弁1のシリンダ2の内部に導入される。なお、開閉弁部14は、上端14aを回栓具等を用いて締付ける方向へ回転させると、下端14bが水道水導入路12と消火放水路13の間を閉じるように機能する。また、図中の16は放水しないときに放水口13aを塞ぐ放水口蓋である。
【0034】
空気弁付き消火栓10は、単体の空気弁1を独立に設置する必要がないので、経済的に有効である他に、消火栓本体部11の能力を維持するように機能する。すなわち、水道管に混入した空気が上昇して消火栓本体部11の水道水導入路12に入ってくると、空気弁連通路15を通って、空気弁1から排出される。従って、空気が水道水導入路12に溜まるのを防止し、それによる消火栓本体部11での赤さびの発生が抑止され、また、開閉弁部14を開いたとき放水口13aから高圧の空気の激しい吹き出しが防止される。また、雨水や塵埃を含んだ空気の浸入が阻止されるので、更に、赤さびの発生が抑止され、放水口13aからの高圧の空気の激しい吹き出しが防止される。なお、赤さびが成長すると、放水能力が低下するとともに、さびの塊が消火時に放水ポンプに入って損傷を起こす場合も起こり得る。
【0035】
以上、本発明の実施形態に係る空気弁、及び空気弁付き消火栓について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、エンドブロック補助体5は、図5に示すように、エンドキャップ6と一体化することが可能である。その場合、中空部51、側壁5ab、第2空気孔52などはエンドキャップ6に形成され、エンドキャップ6は、シリンダ2に当てられ固定されるときに、エンドブロック4に押さえ付けられることによってそれに隙間なく密着し、エンドキャップ6とエンドブロック4との間隙は、シールされることになる。また、空気弁1の給水口21は、シリンダ2の下部のいずれの箇所にでも設けることが可能である。また、エンドキャップ6の雄ねじとシリンダ2の雌ねじ以外で、エンドキャップ6とシリンダ2を固定することも場合によっては可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 空気弁
21 空気弁の給水口
2 シリンダ
3 柱状フロート弁
4 エンドブロック
41 空気孔
5 エンドブロック補助体
51 エンドブロック補助体の中空部
52 第2空気孔
53 弾性体
5ab 中空部を形成する側壁
6 エンドキャップ
10 空気弁付き消火栓
11 消火栓本体部
12 水道水導入路
13 消火放水路
13a 放水口
14 開閉弁部
15 空気弁連通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7