(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、第1の実施形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0009】
図5において、11はいわゆるキャニスタ型の電気掃除機を示し、この電気掃除機11は、掃除機本体12と、この掃除機本体12に着脱可能に接続される風路形成体である管部13とを有している。
【0010】
掃除機本体12は、被掃除面としての床面上を旋回および走行可能であり、電動送風機18、この電動送風機18の動作を制御する図示しない本体制御部、および、これら電動送風機18および本体制御部などに給電するための図示しない電源コードを巻回した電源部としての図示しないコードリール装置などを収容しているとともに、電動送風機18の吸込側に連通する図示しない集塵部を備えている。また、掃除機本体12の前部には、集塵部に連通するとともに管部13の基端側が接続される本体吸込口19が開口形成されている。
【0011】
また、管部13は、ホース体21と、このホース体21に対して着脱可能な延長管22と、この延長管22に対して着脱可能な吸込口体としての床ブラシ23とを備えている。
【0012】
ホース体21は、可撓性を有するホース部25と、このホース部25の基端側(下流側)に設けられ本体吸込口19に接続される接続管部26と、ホース部25の先端側(上流側)に設けられた手元操作部27とを有している。
【0013】
手元操作部27には、延長管22の基端側(下流側)が着脱可能に接続される。また、この手元操作部27には、作業者が把持する把持部28が基端側に突出して形成されており、この把持部28には電動送風機18の動作モードを本体制御部に設定するための設定ボタン29が配置されている。
【0014】
また、
図4および
図5に示すように、床ブラシ23は、左右幅方向に長手状、すなわち横長に形成されたケース体31と、このケース体31に回動可能に配置される複数、例えば1対の前部車輪である走行輪部32,32、および、電気掃除機用車輪としての後部車輪である走行輪33と、ケース体31の後部に突出し延長管22の先端側(上流側)に着脱可能に接続される接続管34とを備えている。そして、この床ブラシ23は、走行輪部32,32および走行輪33により床面上を走行可能となっている。
【0015】
ケース体31の床面に対向する下面36には、接続管34と連通する横長の吸込口37が前側寄りに開口形成されている。この吸込口37には、図示しないが、例えば回転清掃体を回転可能に配置してもよい。さらに、ケース体31の後部には、接続管34を回動可能に軸支する軸支部39が突設されている。
【0016】
走行輪部32,32および走行輪33は、それぞれケース体31が床面上を走行する際にこの床面に接触して回動する従動輪である。走行輪部32,32は、ケース体31の下面36の最前部の両側にそれぞれ位置する開口部41,41に回動可能に軸支されており、吸込口37よりも前方で、かつ、この吸込口37の両側部よりも左右幅方向の中央側に位置している。また、走行輪33は、ケース体31の下面36の軸支部39の後端部に切り欠き形成された取付開口部としての切欠開口部42に回動可能に軸支されており、吸込口37よりも後方で、かつ、左右幅方向の中央部に位置している。
【0017】
そして、走行輪33は、
図1に示すように、円筒状の車輪本体としての走行輪本体45と、この走行輪本体45の軸方向の両端部に取り付けられた円筒状の軸受としてのスリーブ46,46と、走行輪本体45およびスリーブ46,46に挿通された回動軸47と、走行輪本体45の外周に貼着された保護部材である起毛布48とを一体的に有している。
【0018】
走行輪本体45は、例えば硬質の合成樹脂などにより円筒状に形成されており、中央部に挿通孔45aを有している。
【0019】
また、各スリーブ46は、例えば硬質の合成樹脂などにより円筒状に形成されており、中央部に図示しない挿通孔部を有している。さらに、各スリーブ46は、走行輪本体45の挿通孔45aに一端側がそれぞれ挿入されて一体的に固定されている。また、各スリーブ46の外周面には、走行輪本体45との間で起毛布48の両側部を挟持して固定保持する固定鍔部46aが鍔状に突設されている。さらに、各スリーブ46の他端部の外周面には、切欠開口部42に対する走行輪33の左右幅方向の位置を規制する鍔部46bが鍔状に突設されている。そして、これら固定鍔部46aと鍔部46bとの間に、溝部46cが形成されている。
【0020】
また、回動軸47は、走行輪本体45の挿通孔45aと各スリーブ46の挿通孔部とに亘って圧入(挿通)されて両端部が各スリーブ46から外部に露出している。
【0021】
また、起毛布48は、走行輪33により床ブラシ23(ケース体31)を床面上で走行させた際の床面の傷付きを防止するもので、
図1ないし
図3に示すように、シート状の基部48aと、この基部48aに植毛された複数の起毛48bとを一体に有している。
【0022】
基部48aは、例えば互いに略平行に対向する二対の直線状の辺部48a1,48a1と辺部48a2,48a2とを有する平行四辺形状に形成されており、例えば辺部48a1,48a1を走行輪本体45の両端部の位置で周方向に沿わせた状態で、走行輪本体45の外周面に接着剤などにより貼着されている。すなわち、これら辺部48a1,48a1近傍の位置は、走行輪本体45の両端部とスリーブ46,46の固定鍔部46a,46aとの間で挟持されている。また、辺部48a2,48a2は、基部48aを走行輪本体45に貼着した状態(起毛布48を走行輪本体45に対して取り付けた状態)で走行輪本体45の軸方向に対して傾斜しており、走行輪本体45の外周面上で互いに隣接している。すなわち、基部48aは、走行輪本体45の外周面全周を覆って取り付けられている。
【0023】
また、起毛48bは、例えば合成樹脂などにより形成された複数の毛を束ねて構成されており、一端側と他端側とがともに基部48aに植毛されてループ状となっている。換言すれば、各起毛48bは、それぞれ開放端(自由端)を有しない状態で基部48aに植毛されている。さらに、これら起毛48bは、基部48aに略隙間なく規則的に植毛されて配置されている。本実施形態において、各起毛48bは、基部48aの辺部48a1,48a1に沿って列Cをなし、各列Cの起毛48bの位置が基部48aの辺部48a2,48a2に沿って傾斜するように配置されている。すなわち、各列Cの起毛48bの位置は、走行輪本体45の一端側に位置する列Cから他端側に位置する列Cへと、走行輪本体45の回転方向(周方向)に略均等に徐々にずれている。換言すれば、各列Cの起毛48bの位置と、その列Cに隣接する列Cの起毛48bとの位置は、それぞれ走行輪本体45の回転方向(周方向)へと一定距離ずつ異なっている。なお、各列Cの起毛48bの位置とその列Cに隣接する列Cの起毛48bとの走行輪本体45の回転方向(周方向)へのずれ距離は、走行輪本体45の回転方向(周方向)に沿う起毛48bの長さよりも短く、本実施形態では、走行輪本体45の回転方向(周方向)に沿う起毛48bの長さの半分より小さく設定されている。そして、起毛48bは、基部48aの辺部48a1,48a1および辺部48a2,48a2から離間された位置に配置されており、辺部48a1,48a1および辺部48a2,48a2近傍の位置に配置されていない。
【0024】
次に、上記第1の実施形態の作用を説明する。
【0025】
起毛布48を製造する際には、
図3(a)に示す大判の起毛布体49から、
図3(b)に示すように、必要な大きさに対応する切断線Lに沿って起毛布48を切り出す。このとき、基部48aの辺部48a1,48a1および辺部48a2,48a2の位置に生じた一方が開放した起毛48baを、
図3(c)に示すように基部48aに対して溶着または圧着することで、基部48aの端部である辺部48a1,48a1および辺部48a2,48a2の位置に、一方が開放した起毛が存在しないようになっている。
【0026】
そして、
図1(a)および
図1(b)に示す走行輪33を製造する際には、予め形成した走行輪本体45に対して、上記形成した起毛布48の基部48aを巻き付けて貼着し、走行輪本体45の挿通孔45aの両端部に、予め形成したスリーブ46をそれぞれ挿入して各固定鍔部46aと走行輪本体45の両端部との間で起毛布48の基部48aの辺部48a1,48a1近傍を挟持し、さらに、予め形成した回動軸47を各スリーブ46の挿通孔部および走行輪本体45の挿通孔45aに亘って圧入することで、走行輪33が完成する。
【0027】
このように製造した走行輪33は、ケース体31の切欠開口部42に回動軸47の両端部を回動可能に軸支することで、床ブラシ23に用いられる。
【0028】
そして、
図1ないし
図5に示すように、掃除の際には、掃除機本体12の本体吸込口19にホース体21の接続管部26を接続し、このホース体21の手元操作部27に延長管22を接続し、この延長管22に床ブラシ23の接続管34を接続する。この結果、床ブラシ23が、(延長管22、ホース体21、本体吸込口19および集塵部を介して)電動送風機18の吸込側に連通接続される。
【0029】
そして、作業者は、電源コードを壁面などのコンセントに接続した後、把持部28を把持し、所望の設定ボタン29を操作することにより、本体制御部を介して電動送風機18を所望の動作モードで起動させる。この電動送風機18の駆動により、負圧が集塵部、本体吸込口19、ホース体21、延長管22および床ブラシ23へと順次作用する。そして、作業者は、床ブラシ23を床面上に載置して走行輪部32,32および走行輪33により前後に走行させることで、吸込口37から塵埃を空気とともに吸い込む。このとき、特に走行輪33では、軟質の起毛布48の起毛48bが床面に接触することにより床面の傷付きを防止する。また、床面に接触する起毛48bは、それぞれ走行輪33(走行輪本体45)の回転方向(周方向)に沿うループ状となっているため、床面上の例えば人毛、ペットなどの毛、あるいは糸くずなどの線状の塵埃を引っ掛けて巻き付けることがない。
【0030】
吸込口37から空気とともに吸い込まれた塵埃は、接続管34、延長管22、ホース体21、本体吸込口19を介して集塵部へと吸い込まれ、集塵部において分離捕集される。また、塵埃が捕集された空気は、電動送風機18へと吸い込まれ、この電動送風機18を冷却した後、排気されて排気風となり、掃除機本体12の外部へと排気される。
【0031】
上述したように、上記第1の実施形態によれば、起毛48bを走行輪本体45の軸方向に複数列配置するとともに、各列Cの起毛48bの配置を、走行輪本体45の回転方向に徐々にずらすことで、起毛48bが走行輪33(走行輪本体45)の軸方向に対して傾斜状に並ぶこととなる。したがって、起毛布48が床面と接触して走行輪33(走行輪本体45)が回転する際に、各列Cの起毛48b,48b間が互いに隣接する複数の列Cで同時に床面に対向することがない、換言すれば一の列Cの起毛48b,48b間が床面に対向するときにこの一の列Cに隣接する他の列Cの起毛48b,48b間が床面に対向することがないので、毛、あるいは糸くずなどの線状の塵埃が同時に複数の列Cの起毛48b,48b間に入り込みにくくなり、起毛布48に対して塵埃が付着しにくくなる。
【0032】
次に、第2の実施形態を
図6を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0033】
この第2の実施形態は、上記第1の実施形態の起毛布48の各起毛48bが基部48aに対して、走行輪本体45の一端側(他端側)から奇数列目の起毛48bと偶数列目の起毛48bとが走行輪本体45の回転方向(周方向)にずれて植毛されているものである。
【0034】
本実施形態では、奇数番目の列C1の起毛48bと、偶数番目の列C2の起毛48bとは、例えば走行輪本体45の回転方向(周方向)に沿って、互いに略半分ずつずれている。換言すれば、走行輪33を軸方向から見て、奇数番目の列C1の起毛48bの両端部の略中間位置に偶数番目の列C2の起毛48bの端部が位置している。また、走行輪33を軸方向から見て、各奇数番目の列C1の起毛48bは、互いに重なっている。同様に、走行輪33を軸方向から見て、各偶数番目の列C2の起毛48bは、互いに重なっている。
【0035】
そして、上記第2の実施形態によれば、起毛48bを走行輪本体45の軸方向に複数列配置するとともに、走行輪本体45の一端側から奇数列目の起毛48bと偶数列目の起毛48bとの配置を走行輪本体45の回転方向にずらすことで、起毛48bが走行輪33(走行輪本体45)の軸方向に対してジグザグ状に並ぶこととなる。したがって、起毛布48が床面と接触して走行輪33(走行輪本体45)が回転する際に、奇数番目の列C1の起毛48b,48b間と偶数番目の列C2の起毛48b,48b間とが同時に床面に対向することがないので、毛、あるいは糸くずなどの線状の塵埃が同時に複数の列C1,C2の起毛48b,48b間に入り込みにくくなり、起毛布48に対して塵埃が付着しにくくなる。
【0036】
このように、以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、走行輪本体45の外周に取り付けた基部48aに複数の起毛48bをループ状に配置して起毛布48を構成することで、床面上に散在する毛、あるいは糸くずなどの線状の塵埃を引っ掛けにくく、これら線状の塵埃の起毛布48への付着を抑制できる。したがって、これら線状の塵埃が走行輪33(走行輪本体45)の回転によって走行輪33の回動軸47などに巻き付くことを抑制でき、この塵埃の巻き付きによる走行輪33のロックを抑制でき、走行輪33による走行性を確保できる。
【0037】
また、起毛布48に、一方が開放した起毛を基部48aの端部(辺部48a1,48a1および辺部48a2,48a2)に存在させないことで、起毛布48の起毛48が基部48aの端部の位置でほつれることを防止できる。
【0038】
具体的に、起毛布48は、基部48aの端部(辺部48a1,48a1および辺部48a2,48a2)に位置する一方が開放した起毛48baを基部48aに対して溶着または圧着することで、一方が開放した起毛を基部48aの端部に確実に存在させない状態とすることができる。
【0039】
さらに、起毛48bは、基部48aに密集させて配置しているので、線状の塵埃が起毛48bの根元まで入り込みにくく、起毛布48(走行輪33)への絡み付きをより確実に抑制できる。
【0040】
そして、このような走行輪33を床ブラシ23に備えることで、掃除中の床ブラシ23の走行性を確保できるとともに、走行輪33に絡み付いた塵埃を除去するなどのメンテナンスも不要となり、使い勝手が向上する。
【0041】
また、走行輪33を備える床ブラシ23を電気掃除機11に用いることで、特に掃除を開始する前などの塵埃が多い床面であっても床ブラシ23を確実に走行させることができ、良好な掃除性を得ることができるとともに、走行輪33への塵埃の付着を抑制できるため、走行輪33に絡み付いて吸込口37から吸い込むことができなくなる塵埃の量が低減され、床面上の塵埃をより効果的に除去できる。
【0042】
なお、上記各実施形態において、例えば走行輪部32,32についても、走行輪33と同様の構成としてもよい。
【0043】
また、電気掃除機用車輪は、床ブラシ23のケース体31の下面の任意の位置に任意の個数配置できる。
【0044】
さらに、起毛48bは、走行輪33(走行輪本体45)の回転方向(周方向)に沿ってループ状としたが、例えば走行輪33(走行輪本体45)の軸方向に沿ってループ状としたり、走行輪33(走行輪本体45)の回転方向(周方向)あるいは軸方向に対して傾斜状にループ状としたりしてもよい。
【0045】
そして、電動送風機18および本体制御部などに対して商用交流電源により給電する構成としたが、例えば二次電池などの電池を電源部として掃除機本体12に内蔵する構成などでもよい。
【0046】
また、床ブラシ23は、例えば上下方向に長手状の掃除機本体の下部に接続管34が接続された、いわゆるアップライト型の電気掃除機などにも適用できる。
【0047】
さらに、電気掃除機用車輪は、床ブラシ23だけでなく、例えばキャニスタ型の電気掃除機の掃除機本体に設けられた旋回輪、あるいは自走式の電気掃除機の掃除機本体に設けられた旋回輪または従動輪などの床面上の走行用の車輪に適用することもできる。
【0048】
そして、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。