(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に嵌め合わされる蓋体と、容器本体の開口部に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構とを備えた基板収納容器であって、
施錠機構は、蓋体の外部から操作される回転操作体と、この回転操作体の回転によりスライドして容器本体の開口部内周の施錠凹部に先端部を接離させる施錠バーとを含み、
回転操作体は、施錠バーを揺動可能に支持するカムを有し、このカムは、対向する第一、第二のカム部を有し、
蓋体を施錠する場合に、回転操作体を施錠方向に回転させてその第一、第二のカム部に施錠バーを追従させることにより、蓋体から容器本体の施錠凹部内に施錠バーの先端部を非接触で突出させた後、蓋体の厚さ方向に施錠バーを移動させてその先端部を施錠凹部を形成する壁面に接触させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
蓋体は、容器本体の開口部に嵌め合わされる蓋本体と、この蓋本体の開口面を被覆するカバープレートとを含み、これら蓋本体とカバープレートのいずれかに、施錠機構の回転操作体用の回転規制部材を設け、蓋本体の周壁に、容器本体の施錠凹部に対向する施錠バー用の出没孔を設けた請求項1記載の基板収納容器。
蓋体に、施錠機構の施錠バー用の誘導突起を内蔵し、施錠バーの誘導突起に対向する対向部に支点部を形成し、これら誘導突起と支点部との接触部分を支点にして、施錠バーの先端部を蓋体の厚さ方向に傾斜させるようにした請求項2記載の基板収納容器。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、図示しないが、半導体ウェーハを収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体と、容器本体の正面に嵌合された蓋体を施錠する施錠機構とを備え、蓋体に施錠機構が設置されている(特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
容器本体は、例えば所定の成形材料を使用して複数枚の半導体ウェーハを上下方向に整列収納するフロントオープンボックスに成形され、正面内周の上部両側と下部両側とに、施錠機構用の施錠穴がそれぞれ設けられている。また、蓋体は、世界的な標準規格であるSEMI規格に基づいて厚さ等が決定され、周壁の上部両側と下部両側とには、容器本体の施錠穴に対向する施錠機構用の出没孔がそれぞれ穿孔されており、蓋体開閉装置に吸着保持されて容器本体の開口した正面に嵌合されたり、正面から取り外される。
【0004】
施錠機構には様々なタイプがあるが、例えば特許文献1に開示されたタイプは、蓋体開閉装置により蓋体の外部から回転操作される複数のカムプレートと、各カムプレートの回転に伴いスライドして容器本体の施錠穴に接離する複数のラッチバーとから構成され、これら複数のカムプレートとラッチバーとが所定の成形材料によりそれぞれ成形されるとともに、カムプレートの表裏いずれか一方からラッチバーが連結されており、カムプレートの表面に、ラッチバー用の傾斜突起が突出形成されている。
【0005】
特許文献2に開示されたタイプの施錠機構は、蓋体の外部から回転操作される複数のカムプレートと、各カムプレートに端部のカムフロワを介して連結され、容器本体の施錠穴に移動して接離する複数のラッチバーとから構成され、これら複数のカムプレートとラッチバーとが所定の成形材料によりそれぞれ成形されており、カムプレートの表面には、ラッチバー用の立体カムである傾斜突起が突出形成されるとともに、ラッチバーのカムフロワが略S字形に湾曲形成されている。
【0006】
特許文献3に示されたタイプの施錠機構は、基本的には上記タイプと同様、成形された複数のカムプレートとラッチバーとの組み合わせにより構成されている。但し、カムプレートの周縁部に、ラッチバー用の隆起リップが形成され、ラッチバーの端部が直線形ではなく、二股に分岐して形成されている。
【0007】
特許文献4のタイプの施錠機構は、蓋体開閉装置により蓋体の外部から回転操作される複数の回転プレートと、各回転プレートの周縁部に貫通して切り欠かれた円弧溝に端部の連結ピンが嵌挿されて上下方向に進退動可能な複数の連結バーと、各連結バーの進出に伴い揺動して蓋体の出没孔から容器本体の施錠穴内に接離する複数の施錠爪とから構成され、複数の回転プレート、連結バー、及び施錠爪が所定の成形材料でそれぞれ成形されており、蓋体の出没孔の内部近傍と連結バーの先端部とに施錠爪が耐久性に優れる複数の金属ピンを介して軸支されている。
【0008】
このような基板収納容器は、容器本体の開口した正面に蓋体が蓋体開閉装置により浅く嵌合されてその正面側が容器本体の正面から外部にやや突出(容器本体の施錠穴まで3mm手前の位置で蓋体が停止し、完全に嵌合されていない状態)し、施錠機構が蓋体開閉装置により操作されて容器本体の施錠穴にラッチバーの先端部や施錠爪を係止し、容器本体の正面内に浅く嵌合した蓋体が深く引き込まれることにより、容器本体の正面に蓋体が適切に嵌合され、かつ強固に施錠される。
【0009】
この蓋体の施錠の際、ラッチバーの先端部や施錠爪は、容器本体の正面から蓋体の正面側が外部にやや突出した段階では、施錠穴を区画する正面側壁面に僅かに接触し、その後、施錠穴内に擦接しながら斜めに深く挿入されて係止することにより、蓋体を十分に引き込んでその正面と容器本体の正面とを略面一に揃えるよう機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来における基板収納容器は、以上のように施錠機構のカムプレートにラッチバーの端部がただ単に連結されたり、回転プレートの円弧溝に連結バーの連結ピンが単に嵌入軸支されるに止まり、これらが比較的外れ易い構成なので、例えば落下等で施錠機構に強い衝撃が作用すると、施錠機構が解錠して半導体ウェーハを破損させたり、外部からの空気の流入で半導体ウェーハの汚染を招くという問題がある。
【0012】
また、施錠機構のラッチバーや施錠爪が施錠穴を区画する正面側壁面に僅かに接触した後、施錠穴内に深く挿入されることで蓋体を引き込むので、施錠動作が不安定化したり、施錠穴や施錠爪を損傷させるおそれがあり、しかも、蓋体の十分な引き込み量を確保できないことがある。
【0013】
また、ラッチバーの先端部や施錠爪が施錠穴内に擦接しながら斜めに挿入されるので、施錠機構に過大な施錠力が作用すると、擦接に伴いパーティクルが発生したり、ラッチバーの先端部や施錠爪の変形を招くおそれがある。このような斜めに傾きながらの挿入動作は、カムプレートの傾斜突起により実現されるが、この実現のためには、カムプレートの傾斜突起とラッチバーとの連結構造が複雑になる。したがって、カムプレートやラッチバーを高精度に成形する作業が困難化したり、施錠機構の組立作業に遅延や煩雑化が生じることとなる。
【0014】
また、施錠機構が複数の回転プレート、連結バー、及び施錠爪により構成されるタイプの場合、部品点数が増加するので、施錠機構を迅速に組み立てることができないという問題が生じる。また、蓋体の出没孔の内部近傍と連結バーの先端部とに施錠爪が軸支される関係上、出没孔の強度が低下するので、施錠時に出没孔の開口が拡大するよう蓋体が変形したり、連結バーが共に変形するおそれがある。さらに、施錠爪は、小さな複数の金属ピンにより軸支されるが、各金属ピンが脱落しないよう挿着する必要があるので、迅速な組立作業を期待することができないという問題がある。
【0015】
本発明は上記に鑑みなされたもので、基板、蓋体、施錠機構の損傷や変形のおそれを排除し、施錠機構の施錠動作を安定させて蓋体の十分な引き込み量を確保し、施錠機構の構成を簡素化して組み立ての迅速化を図ることができるとともに、衝撃等で回転操作体と施錠バーとの係合部が外れること等により施錠機構が解錠するのを防ぐことのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に嵌め合わされる蓋体と、容器本体の開口部に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構とを備えたものであって、
施錠機構は、蓋体の外部から操作される回転操作体と、この回転操作体の回転によりスライドして容器本体の開口部内周の施錠凹部に先端部を接離させる施錠バーとを含み、
回転操作体は、施錠バーを揺動可能に支持するカムを有し、このカムは、対向する第一、第二のカム部を有し、
蓋体を施錠する場合に、回転操作体を施錠方向に回転させてその第一、第二のカム部に施錠バーを追従させることにより、蓋体から容器本体の施錠凹部内に施錠バーの先端部を
非接触で突出させた後、蓋体の厚さ方向に施錠バーを移動させてその先端部を施錠凹部を形成する壁面に接触させるようにしたことを特徴としている。
【0017】
なお、蓋体は、容器本体の開口部に嵌め合わされる蓋本体と、この蓋本体の開口面を被覆するカバープレートとを含み、これら蓋本体とカバープレートのいずれかに、施錠機構の回転操作体用の回転規制部材を設け、蓋本体の周壁に、容器本体の施錠凹部に対向する施錠バー用の出没孔を設けることができる。
また、蓋体に、施錠機構の施錠バー用の誘導突起を内蔵し、施錠バーの誘導突起に対向する対向部に支点部を形成し、これら誘導突起と支点部との接触部分を支点にして、施錠バーの先端部を蓋体の厚さ方向に傾斜させることができる。
【0018】
また、蓋体の蓋本体に、回転操作体を支持する支持部材を設けてその
周面に位置決め突起を形成することもできる。
【0019】
また、
回転操作体は、蓋体の蓋本体に内蔵されてカバープレートに対向する中心部に、カバープレートのキースロットに対向する操作孔を設け、カムに沿って施錠バー用の係合部を形成し、
施錠バーの末端部を第一、第二のカム部の間に揺動可能に挟み持たせ、この施錠バーの
末端部に、回転操作体の係合部にスライド可能に嵌まる嵌合部を設けることが可能である。
【0020】
また、第一のカム部は、
回転操作体の係合部に隣接する第一水平カム面と、係合部の周縁側部に設けられて係合部の一端部から他端部方向に向かうにしたがい徐々に高くなる第一傾斜カム面と、係合部の周縁他端部付近に設けられて第一傾斜カム面と一体化する第一係合カム面とを含み、第一傾斜カム面の最も低い低位部分を係合部の変曲点付近に位置させるとともに、最も高い高位部分を係合部の他端部近傍付近に位置させ、第一係合カム面を第一傾斜カム面の高位部分と略同じ高さとし、
第二のカム部は、
第二水平カム面と、この第二水平カム面の端部に連続して
回転操作体の周方向に向かうにしたがい徐々に高さが変化する第二傾斜カム面と、外側フランジの他端部側に形成されて第二傾斜カム面の端部に連続する第二係合カム面とを含み、第二傾斜カム面から第二係合カム面に向かうにしたがい徐々に
回転操作体の中心方向に向かうことが可能である。
【0021】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも所定枚数の半導体ウェーハ(例えばφ300mmや450mmのシリコンウェーハ等)、ガラスウェーハ、マスクガラス等が含まれる。また、容器本体は、正面が開口したタイプでも良いし、上面が開口したタイプでも良い。蓋体の蓋本体に設けられる支持部材は、円筒形のリブ等でも良いが、円筒を複数に分割した構成でも良い。
【0022】
また、施錠機構は、前段階と後段階の二段階で蓋体を施錠する機構であることが好ましい。この施錠機構の回転操作体は、単数複数を特に問うものではない。
回転操作体の係合部には、少なくとも屈曲して貫通した溝、凹部、各種のカム構造等が含まれる。また、施錠バーは、板形や棒形等に形成されて回転操作体の数に応じて増減され、末端部が側面視で略T字形であることが好ましい。この施錠バーの嵌合部は、突起やピン、突起に回転可能に嵌合したローラ等とすることができる。
【0023】
さらに、施錠機構は、施錠した蓋体を解錠する場合に、回転操作体を解錠方向に回転させてその第一、第二のカム部に施錠バーを追従させることにより、蓋体のカバープレート側から蓋本体側に施錠バーを傾斜させてその先端部を施錠凹部を形成する開口部側壁面から離した後、容器本体の施錠凹部から蓋体内に施錠バーの先端部を略非接触で後退させることができる。
【0024】
本発明によれば、容器本体の開口部に蓋体を嵌めて施錠する場合には、先ず、容器本体の開口部に蓋体が浅く嵌められてその表面側を容器本体から外部に僅かに突出させる。この際、施錠機構における第一のカム部の第一水平カム面と第二のカム部の第二係合カム面とに施錠バーが支持され、施錠バーの係合部である末端部が蓋体の表面側に位置し、施錠バーの先端部が表面側とは反対側に位置する。
【0025】
この状態で施錠機構の回転操作体が蓋体の外部から操作されて施錠方向に所定の回転角で回転すると、施錠バーが第一、第二のカム部の間を移動するとともに、第一、第二のカム部の傾斜カム面間に施錠バーの係合部である末端部が支持され、施錠バーの先端部が蓋体から容器本体の施錠凹部内に接触しないよう突出する。
【0026】
回転操作体が施錠方向に所定の回転角でさらに回転すると、第一のカム部の第一係合カム面と第二のカム部の第二水平カム面とに施錠バーの末端部が支持され、施錠バーの突出した先端部が蓋体の表面側方向に移動し、この先端部が施錠凹部の開口部側の壁面に接触する。この接触により、容器本体の開口部に浅く嵌め合わされた蓋体が深く引き込まれ、蓋体が適切かつ強固に嵌合施錠される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、基板、蓋体、施錠機構の損傷や変形のおそれを排除することができるという効果がある。また、
回転操作体に施錠バーの係合部を挟み持たせるので、施錠機構の施錠時と解錠時のいずれの場合にも、回転操作体の係合部と施錠バーの係合部とのガタツキを防いで施錠動作や解錠動作を安定させ、蓋体の十分な引き込み量を確保することができるという効果がある。また、施錠機構の構成を簡素化して組み立ての迅速化を図ることもできる。さらに、
回転操作体に施錠バーの係合部を挟み持たせるので、例え衝撃等が作用しても、回転操作体と施錠バーとが外れにくく、施錠機構が解錠するのを防ぐことが可能になる。
【0028】
また、請求項2記載の発明によれば、回転規制部材を回転操作体に干渉させることにより、回転操作体の回転を制御することができる。また、蓋本体の出没孔が施錠バーの先端部を円滑に案内して蓋体の外部に突出させたり、蓋体の外部から内部に施錠バーの先端部を支障なく退没させる。
また、請求項3記載の発明によれば、誘導突起と支点部との接触部分を施錠バーの支点にするので、施錠バーの先端部を蓋体のカバープレート方向や蓋本体方向に容易に傾けることができる。
【0029】
また、請求項4又は5記載の発明によれば、支持部材が回転操作体を支持するので、ガタツキや位置ずれを招くことなく、回転操作体を施錠方向や解錠方向に回転させることが
可能になる。
【0030】
したがって、例え施錠機構用の操作キーに
対して回転操作体の操作孔が正規の位置からずれていても、操作キーに操作孔を追従させてその位置を補正し、操作キーと操作孔とを適切に嵌め合わせることが
可能になる。
【0031】
また、請求項6記載の発明によれば、第一のカム部の第一水平カム面と第二のカム部の第二係合カム面とが施錠操作前の段階において施錠バーの末端部を挟み持つので、施錠バーの先端部を蓋体の蓋本体側に位置させることができる。また、第一、第二のカム部の傾斜カム面が施錠操作される前段階において施錠バーの末端部を挟み持つので、施錠バーの先端部を蓋体のカバープレート側に位置させることができる。さらに、第一のカム部の第一係合カム面と第二のカム部の第二水平カム面とが施錠操作の後段階において施錠バーの末端部を挟み持つので、施錠バーの先端部を蓋体のカバープレート側に傾斜させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
【
図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体と施錠機構とを模式的に示す分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋本体を模式的に示す斜視説明図である。
【
図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるカバープレートの裏面側を模式的に示す斜視説明図である。
【
図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構を模式的に示す分解斜視図である。
【
図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における回転操作体を模式的に示す斜視説明図である。
【
図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における回転操作体を模式的に示す側面説明図である。
【
図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における第一の回転操作体を模式的に示す表面説明図である。
【
図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における第一の回転操作体と第一のカム部とを模式的に示す斜視説明図である。
【
図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における第二の回転操作体を模式的に示す表面説明図である。
【
図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態における第二の回転操作体と第二のカム部とを模式的に示す斜視説明図である。
【
図12】本発明に係る基板収納容器の実施形態における第一、第二の回転操作体と位置決め突起とを模式的に示す説明図である。
【
図13】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠バーを模式的に示す側面説明図である。
【
図14】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠バーを模式的に示す平面説明図である。
【
図15】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体と施錠機構とを模式的に示す断面説明図である。
【
図16】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体の開口した正面に蓋体を浅く嵌合した状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【
図17】
図16の施錠機構における施錠操作の回転操作体が施錠方向に45°回転した前段階を模式的に示す部分断面説明図である。
【
図18】
図17の施錠機構における施錠操作の回転操作体が施錠方向に45°回転した後段階を模式的に示す部分断面説明図である。
【
図19】本発明に係る基板収納容器の実施形態における第一、第二のカム部と施錠バーとの関係を模式的に示す説明図である。
【
図20】本発明に係る基板収納容器の実施形態における回転操作体が施錠方向に45°回転した場合の第一、第二のカム部と施錠バーとの関係を模式的に示す説明図である。
【
図21】
図20の回転操作体が施錠方向に90°回転した場合における第一、第二のカム部と施錠バーとの関係を模式的に示す説明図である。
【
図22】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体の開口した正面に蓋体が浅く嵌合した場合の施錠バーの状態を模式的に示す断面説明図である。
【
図23】
図22の施錠機構における施錠操作の回転操作体が施錠方向に45°回転した場合の施錠バーの状態を模式的に示す断面説明図である。
【
図24】
図23の施錠機構における施錠操作の回転操作体が施錠方向に45°回転した場合の施錠バーの状態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図24に示すように、例えばφ450mmのシリコンウェーハからなる半導体ウェーハを収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面に着脱自在に嵌合される蓋体10と、容器本体1の正面に嵌合された蓋体10を二段階の施錠操作で施錠する施錠機構40とを備え、施錠機構40の回転操作体41を第一、第二の回転操作体42・42Aに分割してこれらには第一、第二のカム部51・60をそれぞれ複数形成し、第一、第二のカム部51・60の間に施錠機構40の施錠バー64を介在させるようにしている。
【0034】
容器本体1、蓋体10、及び施錠機構40は、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料に含まれる樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0035】
これらの樹脂には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されたり、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維等も選択的に添加される。
【0036】
容器本体1は、
図1、
図16ないし
図18、
図22ないし
図24に示すように、正面が横長に開口したフロントオープンボックスに成形され、その内部両側、換言すれば、両側壁の内面には、図示しない半導体ウェーハの周縁側部を水平に支持する左右一対の支持片が対設されるとともに、この左右一対の支持片が上下方向に所定のピッチで配列されており、各支持片が前後方向に細長い屈曲板に形成される。
【0037】
容器本体1の両側壁の内面後部には、図示しない支持片の後方に位置する位置決め支持部がそれぞれ複数形成され、各位置決め支持部が前後方向に伸びる断面略V字形等の溝に凹み形成される。この位置決め支持部は、蓋体10の嵌合施錠に伴い、容器本体1内の背面方向に押し込まれた半導体ウェーハの周縁側部に接触して位置決めし、一対の支持片から僅かに浮上する半導体ウェーハを水平に支持するよう機能する。
【0038】
容器本体1の底板下面の前部両側と後部中央とには、図示しない半導体加工装置の位置決めピンに上方から嵌合する位置決め具が配設され、容器本体1の底板下面には、センシングや固定用のボトムプレートが装着されており、容器本体1の天井中央部には、図示しない搬送機構に握持されるロボティックフランジ2が着脱自在に装着される。
【0039】
容器本体1の開口部である正面は、
図16ないし
図18図、
図22ないし
図24に示すように、外方向に屈曲して張り出し形成され、内周面の上部両側と下部両側とに、施錠機構40用の施錠穴3がそれぞれ穿孔される。各施錠穴3は、左右方向に細長い略長方形に形成され、その正面側壁面4と反対側の背面側壁面との間を施錠バー64の先端部65が移動あるいは揺動する。このような施錠バー64の先端部65は、施錠穴3を回繞する壁面の少なくとも一つに接触して係合する。
【0040】
蓋体10は、
図1ないし
図4、
図15ないし
図18、
図22ないし
図24に示すように、容器本体1の横長に開口した正面に着脱自在に嵌合される略トレイ形の蓋本体11と、この蓋本体11の開口した正面に複数の締結具を介して螺着されるカバープレート30とを備え、これら蓋本体11とカバープレート30との間に施錠機構40が組み立てて内蔵される。
【0041】
蓋本体11は、
図2や
図3、
図22ないし
図24に示すように、基本的には四隅部がそれぞれ丸く面取りされた長方形のベース板を備え、このベース板の周縁部に略枠形の周壁12が周設されており、この周壁12の上部両側と下部両側とに、容器本体1の施錠穴3に対向する矩形の出没孔13がそれぞれ貫通して穿孔される。
【0042】
蓋本体11の内部は、
図2や
図3に示すように、三分割されて凹凸に形成され、中央部が高く、左右両側部がそれぞれ低く凹んで形成されており、この凹んだ両側部が施錠機構40用の設置空間14をそれぞれ形成するとともに、各設置空間14には、施錠機構40を包囲する包囲リブ15が形成される。この包囲リブ15は、設置空間14の中央部に形成される回転操作体用リブ16と、蓋本体11の出没孔13と回転操作体用リブ16との間に縦長に連結される複数の施錠バー用リブ24とから形成され、回転操作体用リブ16内の中心部に、回転操作体41を回転可能に支持する支持リブ19が併設される。
【0043】
回転操作体用リブ16は、平面視でリングを描くよう複数の円弧リブ17に四分割され、この複数の円弧リブ17の最上端部と最下端部とに施錠バー用リブ24がそれぞれ接続されており、回転操作体41を包囲する。複数の円弧リブ17は、隣接する円弧リブ17と円弧リブ17との間に空間が区画形成される。
【0044】
支持リブ19は、平面視でリングを描くよう複数の湾曲リブ20に四分割され、隣接する湾曲リブ20と湾曲リブ20との間に空間が区画形成されており、各湾曲リブ20の外周面両端部に長さの異なる一対の位置決め突起21が一体形成されるとともに、各位置決め突起21が湾曲リブ20の高さ方向に伸びる断面略半円形に形成される。一対の位置決め突起21は、長い位置決め突起22が支持リブ19の高さと略同じ長さに形成され、短い位置決め突起23が支持リブ19の高さの半分以下の長さに形成されており、第一、第二の回転操作体42・42Aを個別に位置決めして回転させるよう機能する。
【0045】
各施錠バー用リブ24は、間隔をおき相対向して施錠バー64を挟持する左右一対の直線リブ25を備え、この一対の直線リブ25の先端部が出没孔13の周縁両側部付近に接続されており、一対の直線リブ25の末端部が回転操作体用リブ16に接続される。一対の直線リブ25の先端部間には、出没孔13に近接する複数の誘導リブ26が一列に並設され、各誘導リブ26が施錠バー64のスライド方向に伸びる台形等に形成されて施錠バー64を蓋体10の厚さ方向に揺動させる。
【0046】
蓋本体11の半導体ウェーハに対向する裏面両側部には、左右一対のフロントリテーナ27がそれぞれ着脱自在に装着され、各フロントリテーナ27の複数の弾性片28がそれぞれ撓みながら半導体ウェーハの周縁前部を保持溝で保持することにより、複数枚の半導体ウェーハが容器本体1内の背面方向に押し込まれる。
【0047】
蓋本体11の裏面周縁部には、枠形の取付溝が凹み形成され、この取り付け溝にエンドレスのシールガスケット29が圧入して嵌合される。このシールガスケット29は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等を使用して弾性変形可能な枠形に成形され、蓋体10の嵌合施錠時に容器本体1の正面内周と蓋体10とに挟持されて圧縮変形し、シール機能を発揮して外気との接触に伴う半導体ウェーハの汚染を防止する。
【0048】
カバープレート30は、
図1や
図2、
図4に示すように、蓋本体11の開口した正面に対応する略長方形の板に形成され、中央部に、洗浄水を流通させる細長い複数の洗浄孔31が放射状に穿孔される。このカバープレート30の左右両側部の中央には、施錠機構40用のキースロット32がそれぞれ貫通して長方形に穿孔され、各キースロット32が蓋体開閉装置80の操作キー81に回転可能に貫通される。
【0049】
カバープレート30の裏面両側部の中央付近には
図4に示すように、包囲リブ15の回転操作体用リブ16に対向するエンドレスの対応リブ33がそれぞれ周設され、各対応リブ33の一部が略へ字形に屈曲して回転規制部材である一対の回転規制片34を形成する。また、カバープレート30裏面の上部両側と下部両側とには、キースロット32の上下方向に位置する三角突起35がそれぞれ配設され、各三角突起35が蓋本体11に接近するにしたがい徐々に先細りとなるよう傾斜する。
【0050】
施錠機構40は、
図2、
図5ないし
図12に示すように、設置空間14の支持リブ19に回転可能に嵌合支持されてそのカバープレート30側の外部から回転操作される左右一対の回転操作体41と、各回転操作体41の回転により設置空間14の上下方向にスライドして容器本体1の施錠穴3に先端部65を接離させる複数の施錠バー64とを備え、蓋体10の施錠時に回転操作体41が施錠方向に回転した場合に、蓋体10の出没孔13から容器本体1の施錠穴3内に施錠バー64の先端部65を非接触で突出させ、その後、蓋体10のカバープレート30側に施錠バー64を揺動させてその先端部65を施錠穴3の正面側壁面4に接触させるよう機能する。
【0051】
各回転操作体41は、
図2や
図5に示すように、対向する第一、第二の回転操作体42・42Aに二分割され、これら第一、第二の回転操作体42・42Aの相対向する対向面には、立体的なカムを形成する第一、第二のカム部51・60がそれぞれ複数形成されており、第一、第二のカム部51・60が略一定の空隙を介して対向することにより、施錠バー64の末端部を支持して施錠バー64が簡単に脱落するのを防止する。
【0052】
第一の回転操作体42は、
図5ないし
図9に示すように、設置空間14の回転操作体用リブ16に包囲されてカバープレート30に対向する円板43と、この円板43の第二の回転操作体42Aに対向する対向面の中央部に立設される円筒形リブ49とから構成され、この円筒形リブ49の周壁端部付近には、対向する一対の位置合わせ切り欠き50が180°の間隔でそれぞれ切り欠かれており、各位置合わせ切り欠き50が第一の位置決め部として矩形に形成される。
この第一の位置決め部としては、少なくとも凹部、切り欠き、突起、突片等が該当する。
【0053】
円板43は、その中心部に、キースロット32を貫通した蓋体開閉装置80の操作キー81に嵌合される長方形の操作孔44が穿孔され、対向面の中心部付近には、操作孔44を貫通した操作キー81を収納する一対の収納リブ45が間隔をおいて配列形成されており、各収納リブ45が断面略コ字形に屈曲形成される。
【0054】
円板43の周縁部付近には、施錠バー64をスライドさせる一対の円弧溝46が180°の間隔でそれぞれ貫通して切り欠かれ、円板43の周縁部には、係合部である円弧溝46に隣接する一対の凹部47が180°の間隔でそれぞれ内方向に切り欠かれるとともに、円板43の周縁部と各凹部47との境界付近には、可撓性を有する略鉤形の位置制御片48が周方向に突出して凹部47を囲んでおり、この一対の位置制御片48がカバープレート30の回転規制片34に係合することにより、回転操作体41の回転が制御される。
【0055】
円筒形リブ49は、支持リブ19を形成する複数の湾曲リブ20に回転可能に嵌合され、内周面が複数の位置決め突起21中、短い複数の位置決め突起21には接触せず、長い複数の位置決め突起21にのみ接触する。したがって、第一の回転操作体42は、
図12の上下方向よりも左右方向に大きく回転することとなるので、例え蓋体開閉装置80の操作キー81に対して操作孔44が正規の位置から多少ずれていても、操作キー81に操作孔44を追従させてこれらを嵌合させることができる。
【0056】
各第一のカム部51は、
図9等に示すように、円板43の対向面に形成される第一水平カム52と、円弧溝46の周縁両側部に部分的に立設されて円弧溝46の一端部から他端部方向に向かうにしたがい徐々に高くなる第一傾斜カム53と、円弧溝46の周縁他端部付近に立設されて第一傾斜カム53と一体となる第一係合カム54とを備えて構成される。
【0057】
第一水平カム52は、円弧溝46と凹部47との間に平坦に位置し、円弧溝46の一端部に隣接する。また、第一傾斜カム53は、円弧溝46を左右から挟む一対の湾曲した略三角形の壁に形成され、最も低い低位部分が円弧溝46中央の変曲点付近に位置しており、最も高い高位部分が円弧溝46の他端部手前付近に位置する。第一係合カム54は、円弧溝46の他端部を包囲する断面略U字形の壁に形成されて第一傾斜カム53の高位部分と同じ高さを有し、第一傾斜カム53の高位部分に整合されて滑らかに連続する。
【0058】
第二の回転操作体42Aは、
図2、
図5ないし
図7、
図10ないし
図12等に示すように、第一の回転操作体42の円筒形リブ49に外側から嵌合される円筒リブ55と、この円筒リブ55の外周面から半径外方向に張り出す外側フランジ58とから構成されて蓋本体11側に位置し、円筒リブ55の外周面には、外側フランジ58を二分割する一対の分割壁59が180°の間隔をおきそれぞれ突出形成されており、この一対の分割壁59に分割された一対の外側フランジ58が立体的な第二のカム部60をそれぞれ形成する。
【0059】
円筒リブ55は、その開口した一端部の内周面に蓋本体11側に位置するリング形の内側フランジ56が形成され、この内側フランジ56に、間隔をおき一列に並ぶ一対の位置合わせリブ57が複数立設されて一対の位置合わせリブ57と一対の位置合わせリブ57とが相互に対向する。
【0060】
これら複数の位置合わせリブ57は、第二の位置決め部として第一の回転操作体42の位置合わせ切り欠き50に位置決め嵌合し、第一、第二の回転操作体42・42Aを共に回転させるよう機能する。各位置合わせリブ57は、円筒リブ55の高さよりも短いバーに形成されて円筒リブ55の内周面に密着し、内側フランジ56から円筒リブ55の高さ方向における中央部付近まで伸長する。
第二の位置決め部としては、少なくとも凹部、切り欠き、突起、突片等が該当する。
【0061】
円筒リブ55は、その内側フランジ56と円筒形リブ49の周壁端部とが接触するが、円筒形リブ49とは異なり、内側フランジ56が複数の位置決め突起21、具体的には、長い位置決め突起22と短い位置決め突起23の全てに接触し、略真円に回転が制御される。したがって、第二の回転操作体42Aは、第一の回転操作体42と異なり、
図12の上下左右方向への回転が均等に規制される。
【0062】
各第二のカム部60は、
図10や
図11に示すように、外側フランジ58の一端部側に水平に形成されて一方の分割壁59の一端部に接続される第二水平カム61と、この第二水平カム61の端部に連続して他方の分割壁59方向に向かうにしたがい徐々に高さが変化する第二傾斜カム62と、外側フランジ58の他端部側に形成されて第二傾斜カム62の端部と他方の分割壁59の他端部との間に連続して位置する第二係合カム63とを備えて構成される。
【0063】
第二水平カム61は、施錠機構40が施錠操作される後段階において、第一のカム部51の第一係合カム54と対向して施錠バー64の末端部を挟持する。また、第二傾斜カム62と第二係合カム63とは、第二傾斜カム62から第二係合カム63に向かうにしたがい張り出し量が徐々に小さくなる関係に形成される。第二傾斜カム62の一部は、施錠機構40が施錠操作される前段階において、第一のカム部51の第一傾斜カム53の一部と対向して施錠バー64の末端部を挟持する。また、第二係合カム63は、施錠操作前の段階において、第一のカム部51の第一水平カム52と対向して施錠バー64の末端部を挟持する。
【0064】
各施錠バー64は、
図13ないし
図15、
図22ないし
図24に示すように、基本的には略長方形の板に形成され、設置空間14の施錠バー用リブ24内、換言すれば、一対の直線リブ25間にスライド可能に収納されており、蓋体10の施錠時に矩形を呈した先端部65が蓋体10の出没孔13から突出して容器本体1の施錠穴3に嵌入する施錠爪として機能する。
【0065】
施錠バー64の表面は、先端部65が平坦に形成され、先端寄り部が湾曲形成されており、この先端寄り部から末端部にかけては徐々に薄くなるよう傾斜形成される。これに対し、施錠バー64の裏面は、先端寄り部から末端部にかけて薄くなるよう緩やかに傾斜形成される。このような形の施錠バー64は、先端部65が厚肉に形成され、先端寄り部が最も厚い厚肉に形成されており、この先端寄り部から末端部にかけて次第に薄くされる。
【0066】
施錠バー64のカバープレート30に対向する表面には、長手方向に伸びる複数本の補強リブ66が横一列に並設され、この複数本の補強リブ66の間にカバープレート30の三角突起35が常時は非接触で遊挿されており、この近接した三角突起35が施錠バー64のガタツキや落下時の強い衝撃に伴う位置ずれ等を有効に防止する。また、施錠バー64の蓋本体11に対向する裏面の先端寄り部には、断面略台形で先細りの支点部67が突出形成され、この支点部67の先端部が蓋本体11の誘導リブ26にスライド可能に接触する。
【0067】
施錠バー64の末端部中央には取付片68が一体形成され、この取付片68には、回転操作体41、換言すれば、第一の回転操作体42の円弧溝46に第二の回転操作体42A側からスライド可能・揺動可能に遊嵌する係合部、すなわち嵌合ピン69がリブを介して立設されるとともに、円筒リブ55の外周面に対向する受け部70が形成される。
【0068】
施錠バー64の末端部、取付片68、及び嵌合ピン69は、第一、第二のカム部51・60の間に介在して揺動可能に挟持され、これら第一、第二のカム部51・60から蓋体10の厚さ方向に対する揺動運動が伝達される。嵌合ピン69は、円弧溝46との接触を円滑にする観点から、円筒形や円柱形に形成され、蓋体10の施錠時に第一、第二のカム部51・60の間を移動する。
【0069】
なお、嵌合ピン69は取付片68を二分割するが、一方の取付片68は、円弧溝46に対する嵌合ピン69の遊嵌を容易にし、かつ干渉を回避する観点から、他方の取付片68よりも薄肉に形成される。
【0070】
上記構成において、施錠機構40を組み立てて蓋体10にセットする場合には、先ず、第一、第二の回転操作体42・42Aに一対の施錠バー64の末端部を第一、第二のカム部51・60を介してそれぞれ挟持させるとともに、第一の回転操作体42の各円弧溝46に施錠バー64の嵌合ピン69を挿入して施錠機構40を組み立て、この施錠機構40を蓋体10の一対の包囲リブ15にそれぞれ嵌合し、各包囲リブ15の支持リブ19に回転操作体41を回転可能に嵌入支持させれば、組み立てた施錠機構40を蓋体10にセットすることができる。
【0071】
次に、複数枚の半導体ウェーハを整列収納した容器本体1の開口した正面に蓋体10を嵌合して施錠する場合には、先ず、容器本体1の開口した正面に蓋体10が蓋体開閉装置80に吸着保持された状態で浅く嵌合され、蓋体10のカバープレート30側が容器本体1の正面から外部にやや突出する(
図16、
図22参照)。
【0072】
この際、蓋体開閉装置80は、蓋体10を浅く嵌合するものの、施錠機構40を施錠操作しないので、第一のカム部51の第一水平カム52と第二のカム部60の第二係合カム63とに施錠バー64の末端部が挟持され、施錠バー64の末端部が蓋体10のカバープレート30側に位置する。このように末端部が蓋体10のカバープレート30側に位置することにより、施錠バー64は、先端部65が蓋本体11側に位置し、先端部65と末端部とを結ぶ仮想線が
図16の斜め下向きの状態となる。
【0073】
次いで、蓋体開閉装置80の操作キー81がカバープレート30のキースロット32を貫通して第一の回転操作体42の操作孔44に嵌入し、回転操作体41が施錠方向に45°の回転角で回転すると、円弧溝46に遊嵌した施錠バー64の嵌合ピン69が第一、第二のカム部51・60の間を移動するとともに、第一のカム部51の第一傾斜カム53と第二のカム部60の第二傾斜カム62との途中に施錠バー64の末端部が挟持される。
【0074】
すると、施錠バー64は、その支点部67を蓋体10の誘導リブ26に摺接させつつ、蓋体10の周壁12方向にスライドして出没孔13から先端部65を貫通突出させ、この突出した先端部65が容器本体1の施錠穴3内に接触しないよう従来よりも深く嵌入する(
図17、
図23参照)。
この際、例え操作キー81に操作孔44が適切に対向していなくても、第一の回転操作体42が上下方向よりも左右方向に大きく回転可能なので、操作キー81に操作孔44が追従して容易に嵌合し、トラブルが生じて作業が中断するのを回避することができる。
【0075】
また、施錠バー64は、
図16と
図17とを対比すれば明らかなように、第二のカム部60の第二傾斜カム62に沿って末端部が下方側に支持されるので、先端部65が僅かに上向きに揺動して位置することとなる。このように先端部65が僅かに上向きに指向することにより、施錠バー64は、先端部65と末端部とを結ぶ仮想線が下向きではあるものの、
図16よりも緩やかな傾斜となる。
【0076】
次いで、蓋体開閉装置80の操作キー81が回転操作体41をさらに施錠方向に45°の回転角で回転させ、回転操作体41が合計90°回転すると、円弧溝46に遊嵌した施錠バー64の嵌合ピン69が第一、第二のカム部51・60の間を移動するとともに、第一のカム部51の第一係合カム54と第二のカム部60の第二水平カム61とに施錠バー64の末端部が挟持される。
【0077】
すると、施錠バー64は、その支点部67を蓋体10の誘導リブ26に摺接させつつさらに蓋体10の周壁12方向にスライドし、支点部67と誘導リブ26との接触部分を支点にしてカバープレート30側に揺動し、先端部65が施錠穴3の正面側壁面4に圧接する(
図18、
図24参照)。この圧接により、容器本体1の正面内に浅く嵌合した蓋体10が深く引き込まれ、蓋体10が適切かつ強固に嵌合施錠される。
【0078】
この際、施錠バー64は、蓋体10の誘導リブ26を支点とし、第一のカム部51の第一係合カム54と第二のカム部60の第二水平カム61とにより末端部が蓋本体11側に変位するので、先端部65が
図17の状態よりもさらに上向きに位置することとなる。このように先端部65が上向きに指向することにより、施錠バー64は、先端部65と末端部とを結ぶ仮想線が斜め上向きの状態となる。
【0079】
なお、回転操作体41が90°回転すると、第一の回転操作体42の操作孔44がカバープレート30のキースロット32と平行な状態になるので、操作孔44から蓋体開閉装置80の操作キー81が円滑に取り外し可能となる。また、蓋体10が嵌合施錠されると、左右一対の支持片に支持された半導体ウェーハは、フロントリテーナ27の圧接保持により、容器本体1内の背面方向に押し込まれる。
【0080】
また、容器本体1の正面に嵌合した蓋体10の施錠機構40を解錠操作し、蓋体10を取り外す場合には、蓋体10を蓋体開閉装置80が吸着保持した後、上記操作と逆の操作が行われる。この場合、施錠機構40は、回転操作体41が施錠方向とは反対の解錠方向に回転すると、蓋体10のカバープレート30側から蓋本体11側に施錠バー64が揺動してその先端部65を施錠穴3の正面側壁面4から背面側壁面方向に離隔し、その後、施錠穴3から蓋体10の出没孔13内に施錠バー64の先端部65が非接触で退没することとなる。
【0081】
上記構成によれば、第一、第二の回転操作体42・42Aが施錠バー64を第一、第二のカム部51・60を介して表裏方向から挟持するので、施錠バー64の外れ難い構造を構成することができる。したがって、例え落下等で施錠機構40に強い衝撃が作用しても、施錠機構40が解錠して半導体ウェーハを破損させたり、外部からの空気の流入で半導体ウェーハの汚染を招く事態を未然に防止することができる。
【0082】
また、容器本体1の施錠穴3内に施錠バー64の先端部65が従来よりも深く突出した後、蓋体10のカバープレート30側に揺動して施錠穴3の正面側壁面4に接触し、蓋体10を深く引き込むので、施錠動作が安定化し、施錠バー64の先端部65や施錠穴3を損傷させるおそれが全くなく、しかも、蓋体10の十分な引き込み量を確保することができる。また、容器本体1の施錠穴3内に施錠バー64の先端部65が接触しないよう突出するので、例え施錠機構40に過大な施錠力が作用しても、擦接に伴いパーティクルが発生したり、施錠バー64の先端部65の変形を招くおそれがない。
【0083】
また、第一、第二の回転操作体42・42Aの間に施錠バー64を挟持するだけで良いので、第一、第二の回転操作体42・42Aと施錠バー64との関係が複雑になるのを防止することが可能になる。したがって、第一、第二の回転操作体42・42Aや施錠バー64を高精度に成形する作業が実に容易となり、施錠機構40の組立作業に遅延や煩雑化が何ら生じることがない。また、施錠機構40に施錠爪を要しないので、部品点数を削減して施錠機構40を迅速に組み立てることが可能になる。
【0084】
また、施錠爪の軸支に伴う出没孔13の強度低下を防止することができるので、施錠時に出没孔13の開口が拡大するよう蓋体10が変形したり、施錠バー64が共に変形するおそれを排除することができる。また、施錠爪やその挿着用の金属ピンを省略することができるので、迅速な組立作業が大いに期待できる。
【0085】
また、一対の位置決め突起21が第一の回転操作体42を左右方向に大きく回転させ、操作キー81に位置ずれした操作孔44を追従させてこれらを嵌合させるので、蓋体10の自動開閉時にトラブルが生じて停止するのを回避することができ、生産性の大幅な向上が期待できる。さらに、寸法誤差を吸収することもできるので、操作キー81と操作孔44との擦れに伴うパーティクルの発生を防止することもできる。
【0086】
なお、上記実施形態における容器本体1の側壁外面には、手動操作用のグリップ具や搬送用のサイドレール等を適宜装着しても良い。また、蓋本体11や任意の円弧リブ17の内周面に必要数の回転規制片34を形成しても良いし、対応リブ33とは別体の回転規制片34をカバープレート30に形成しても良い。また、誘導リブ26は、蓋本体11の設置空間14に形成するのが好ましいが、特に支障を来たさなければ、カバープレート30の裏面に形成することができる。さらに、各施錠バー64の嵌合ピン69には、磨耗防止の観点から、回転可能なローラを嵌合することができる。