(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フェルール本体幅方向に複数のファイバ位置決め孔が配列されたフェルール本体の接続端部のすぐ後ろに、幅方向寸法を縮小する切り欠きを形成して、前記接続端部における幅方向辺縁部を第1張出部とし、
前記フェルール本体は、互いに別体の前側部材本体と後側部材本体を結合したものであり、前記前側部材本体は、前記接続端部と、その後側に延出し且つ幅方向寸法および厚さ方向寸法をそれぞれ縮小した延出片とを備え、前記後側部材本体は、前記延出片を収容する貫通孔を備えるフェルール。
前記接続端部のすぐ後ろに、厚さ方向寸法を縮小する切り欠きを形成して、前記接続端部における厚さ方向辺縁部を第2張出部とした請求項1又は2に記載のフェルール。
前記フェルール本体に、その後端面から前記接続端部端面に向かって延在し且つ前記複数のファイバ位置決め孔に連通するファイバ挿入口を形成し、このファイバ挿入口の前端を、前記第1張出部の後端と同じかそれよりも後ろとした請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェルール。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1、
図2に例示したフェルール10は、JIS C5981等に準拠する規格品のMT形光コネクタとピン結合位置決め方式で突き合わせ接合可能な多心用フェルールである。
このフェルール10は、矩形板状に形成されたプラスチック製(樹脂製。例えばエポキシ樹脂)の一体成形品であるフェルール本体20に一対のガイドピン穴21が貫設された概略構成になっている。フェルール本体20の突き合わせ接合用の前端面22(接続端面)が位置する前端(接続端)とは反対側の後端部には、その外周全周にフランジ部23が突設されている。
フェルール本体20において、一対のガイドピン穴21は、互いに離隔させて互いに平行に形成されている。
【0018】
図1、
図3に例示した光ファイバ付きフェルール50は、
図2に例示するフェルール10に光ファイバ(光ファイバテープ心線1)の先端を内挿固定したものである。
ここで、フェルール20(光ファイバ先端を内挿固定する前のフェルール)について説明する。
図2に示すように、フェルール20(光ファイバ先端を内挿固定する前のフェルール)のフェルール本体20には、その後端面20aから前側(前端面22側)に向かって延在する穴状のファイバ挿入口25が形成されている。
図3に示すように、フェルール10、フェルール本体20は、ファイバ挿入口25内に光ファイバテープ心線1の先端部を収納できる。
【0019】
図2、
図4に示すように、前記フェルール本体20の前端部である接続端部26には、ファイバ挿入口25に連通してフェルール本体20の前端面22に開口するファイバ位置決め孔27が複数形成されている。
各ファイバ位置決め孔27は、具体的には、フェルール本体20のうち前記ファイバ挿入口25の前側に位置する部分(以下、前壁部20cとも言う)にフェルール前後方向に貫設され、それぞれファイバ挿入口25の前端に連通している。ファイバ位置決め孔27は、該ファイバ位置決め孔27に挿入された光ファイバを高精度に位置決めする微細孔である。
【0020】
図1に示すように、図示例のフェルール10には、複数のファイバ位置決め孔27を横並びに配列してなる孔列27Aが互いに平行に複数列形成されている。
フェルール本体20のファイバ挿入口25は、フェルール本体20における前記孔列27Aの延在方向、すなわち孔列27Aを構成する複数のファイバ位置決め孔27の配列方向である幅方向の中央部に形成されている。
【0021】
図示例のフェルール10において、前記孔列27Aの複数のファイバ位置決め孔27の配列方向は、フェルール本体20の一対のガイドピン穴21の間隔方向に一致している。
前記フェルール10には、複数のファイバ位置決め孔27が、フェルール本体20の一対のガイドピン穴21の間隔方向に一致する幅方向に一列に配列された孔列27Aが互いに平行に複数列形成されている。前記孔列27Aは、フェルール本体20において、その長方形状の前端面22(接続端面)の長手方向(フェルール本体20の幅方向と一致)に直交する上下方向(フェルール本体20の厚さ方向)の複数箇所に互いに平行に設けられている。
【0022】
フェルール本体20の複数のファイバ位置決め孔27は、全て、フェルール本体20の幅方向中央部に形成され、前端面22の中央部に開口している。
図示例のフェルール10においては、ファイバ挿入口25に挿入される2本の光ファイバテープ心線1の先端にそれぞれ口出しされた複数の裸光ファイバ1a(
図3参照)を位置決めするべく、フェルール本体20に前記孔列27Aが互いに平行に2列形成されている。1本の光ファイバテープ心線1の先端の複数の裸ファイバ1aは、複数の孔列27Aから選択したひとつを構成するファイバ位置決め孔27に挿入される。
【0023】
ファイバ位置決め孔27には、被覆光ファイバ先端に口出しされた裸光ファイバ、あるいは被覆が設けられていない裸光ファイバといった光ファイバの先端部が1本(1心)だけ挿入される。
光ファイバテープ心線1の先端の複数の裸ファイバ1aは、1本のファイバ位置決め孔27に対して1本だけ挿入され、ファイバ位置決め孔27の内周面によって位置決めされる。
【0024】
なお、ファイバ挿入口25に挿入される光ファイバテープ心線1の本数は2本に限定されず、1又は3本以上であっても良い。複数本の光ファイバテープ心線1は
図1に示すように段積み状態にしてファイバ挿入口25に挿入される。
フェルール本体20に形成する孔列27Aの数、及び1つの孔列27Aを構成するファイバ位置決め孔27の数は、ファイバ挿入口25に挿入される1又は複数本の光ファイバの心数の合計数に応じて設定できる。フェルール本体20に形成される孔列27Aは、例えば、ファイバ挿入口25に挿入される光ファイバテープ心線1の本数に対応する数が設けられる。
フェルール本体20に形成する孔列27Aの数は、2列に限定されず、1列又は3列以上であっても良い。但し複数列の孔列27Aは、長方形状の前端面22の長手方向に直交する上下方向の複数箇所に、互いに平行に形成される。
【0025】
フェルール本体20の孔列27Aは、フェルール本体20の幅方向に複数のファイバ位置決め孔27を一列に配列形成したものであり、フェルール本体20の幅方向に延在している。前記孔列27Aは、該孔列27Aを構成する複数のファイバ位置決め孔27にそれぞれ挿入された光ファイバ(図示例では裸光ファイバ1a)を、互いに並列にフェルール幅方向に一列に配列させる。
フェルール本体20の前記ファイバ挿入口25の前側の前壁部20cは、複数のファイバ位置決め孔によって複数の光ファイバをフェルール前後方向の軸線を以て位置決めし、互いに並列に配列させるファイバ配列部として機能する。
【0026】
図1、
図3に例示した光ファイバ付きフェルール50は、光ファイバテープ心線1の先端をフェルール10に内挿固定して組み立てられる。
この光ファイバ付きフェルール50の組み立ては、まず、光ファイバテープ心線1先端をフェルール10の後側から空のファイバ挿入口25に挿入し、この光ファイバテープ心線1先端に予め口出ししておいた裸光ファイバ1aをそれぞれファイバ位置決め孔27(空のファイバ位置決め孔27)に挿入する。そして、光ファイバテープ心線1のフェルール本体20内に挿入された部分を接着剤によってフェルール本体20に接着固定する。光ファイバテープ心線1のフェルール本体20に接着固定される部分は、複数本の裸光ファイバ1aを被覆材によって一括被覆したテープ状に構成されている。光ファイバテープ心線1先端に口出しされフェルール10のファイバ位置決め孔27に挿入された裸光ファイバ1aは、ファイバ位置決め孔27に注入した接着剤によってフェルール本体20に接着固定するか、あるいは接着剤による接着固定を省略する。
【0027】
図4、
図5に示すように、前記ファイバ位置決め孔27は、前端面22から後側へ延在する主孔部27aの後側に、主孔部27a後端から末広がりに拡がるテーパ状開口部27bを有し、光ファイバテープ心線1先端に口出しされた裸光ファイバ1aをファイバ挿入口25側から円滑に挿入できる。
【0028】
ファイバ位置決め孔27に挿入した裸光ファイバ1aは、その先端をフェルール本体20の前端面22から突出させておく。
次に、フェルール本体20の前端面22を、該前端面22から突出させた裸光ファイバ1a先端とともに研磨する。この研磨の完了によって、光ファイバ付きフェルール50が得られる。なお、光ファイバ付きフェルール50は、裸光ファイバ1a先端がフェルール本体20の前端面22から僅かに突出した状態になっている。
フェルール本体20について、前端面22中央部のファイバ位置決め孔27に挿入された裸光ファイバ1a先端が配列状態に露出されている領域を、以下、ファイバ配列領域とも言う。一対のガイドピン穴21は、フェルール幅方向において、中央部のファイバ配列領域を介して両側に位置する。
【0029】
また、図示例の光ファイバ付きフェルール50は、光ファイバテープ心線1に外挿してファイバ挿入口25後端部に内挿固定されたゴムブーツ51を有している。このゴムブーツ51はフェルール10後側に突出している。
【0030】
なお、光ファイバ付きフェルール50は、研磨済みの前端面22を有するフェルール10に光ファイバ先端を内挿固定して組み立てても良い。この場合は、フェルール10に挿入した光ファイバの先端を、フェルール10の前端面22から僅かに突出した状態に位置決めし、光ファイバを接着剤を用いた接着固定等によってフェルール10に固定する。この場合は、フェルール10に対する光ファイバの内挿固定後に、フェルール10の前端面22の研磨を省略することが可能である。
光ファイバ先端を内挿固定する前のフェルールの前端面は、研磨済み、未研磨のいずれであっても良い。
【0031】
図示例では、フェルール10に内挿固定する光ファイバテープ心線1として12心のものを例示しているが、光ファイバテープ心線1としては12心以外の、例えば2心、4心、8心等のものも採用可能である。また、ファイバ挿入口25に挿入する光ファイバとしては、光ファイバテープ心線に限定されず、単心の光ファイバ心線、光ファイバ素線等も採用可能である。前記光ファイバとしては、さらに、光ファイバ心線、光ファイバ素線といった被覆付き光ファイバ以外に、被覆が設けられていない裸光ファイバを用いることも可能である。
【0032】
フェルール本体20において前記ファイバ挿入口25を介してフェルール幅方向両側に形成されているガイドピン穴21は、フェルール本体20をその前後方向(前端面22側が前、後端面20a側が後)に貫通している。
【0033】
図1、
図2に示すように、フェルール本体20には、フェルール本体20のフランジ部23から前側の板状部である本体板部24の幅方向両側の側面24aから窪む切り欠き28(幅方向切り欠き)が形成されている。本体板部24の幅方向両側の側面24aは互いに平行に形成されている。
なお、本体板部24の幅方向の側面24aは、フェルール本体20の幅方向の側面の一部である。
【0034】
本体板部24の幅方向両側の切り欠き28は、フェルール前後方向における形成位置が揃えられており、幅方向両側の互いに対応する位置に形成されている。また、前記切り欠き28は、板状のフェルール本体20をその厚さ方向に貫通する溝状に形成されており、フェルール本体20の幅方向寸法を縮小する。また、前記切り欠き28は、フェルール本体20の前端面22から若干後側にずれた位置に形成されている。
フェルール本体20は、切り欠き28が形成された箇所の幅方向寸法が、他の部位の幅方向寸法に比べて小さくなっている。
【0035】
図示例のフェルール10において、前記切り欠き28は、それぞれ、フェルール本体20の幅方向両端部のガイドピン穴21を横断して、フェルール本体20における一対のガイドピン穴21の間に位置する部位に達している。また、前記切り欠き28は、フェルール本体20の幅方向の側面からファイバ挿入口25及びファイバ位置決め孔27に達しない深さで窪む凹部となっている。
【0036】
図6は、光ファイバ付きフェルール50同士を突き合わせ接続して、各光ファイバ付きフェルール50の光ファイバ(図示例では光ファイバテープ心線)同士を光接続した状態を示す。
光ファイバ付きフェルール50同士の突き合わせ接続は、互いに接続する一対の光ファイバ付きフェルール50の一方(ここでは符号50Aの光ファイバ付きフェルール)について、そのフェルール10の一対のガイドピン穴21のそれぞれに挿入したガイドピン52を接続端面22(前端面)から突出させておく。そして、該ガイドピン52のフェルール10からの突出部分を、他方の光ファイバ付きフェルール50Bのフェルール10の空のガイドピン穴21に挿入、嵌合し、一対の光ファイバ付きフェルール50のフェルール10の接続端面22同士を突き合わせ力を以て突き合わせ接合することで接続が達成される。一対の光ファイバ付きフェルール50のフェルール10に作用させる突き合わせ力は、光ファイバ付きフェルール50同士の接続を解除するまで、付与を継続する。
【0037】
なお、
図6において、一対のガイドピン52を接続端面22から突出状態に設ける光ファイバ付きフェルール50Aについては、一対のガイドピン52のフェルール10後側に突出させた後端部を、フェルール10の後側に配置したピンクランプ53に固定している。ピンクランプ53は、突き合わせ接続状態の光ファイバ付きフェルール50の接続を解除する際に、光ファイバ付きフェルール50Aのガイドピン穴21からのガイドピン52の抜け出しを規制する。
【0038】
図2、
図6に示すように、フェルール本体20の接続端部26は、具体的には、フェルール前後方向において、切り欠き28の最深部に対応する部位、すなわち切り欠き28の形成によってフェルール本体20の幅方向寸法が最小とされた部位である幅狭部20eから前側の部分全体を指す。フェルール本体20の前端面22は、接続端部26の前側の端面である。フェルール本体20の切り欠き28は、接続端部26のすぐ後に形成されている。
接続端部26の幅方向中央部はフェルール本体20の既述の前壁部20cによって構成されている。前記前壁部20cはその一部又は全部が接続端部26の幅方向中央部に位置し、接続端部26の一部を構成している。
【0039】
図6に示す突き合わせ接続状態において、光ファイバ付きフェルール50は、フェルール10の接続端部26のうち、その幅方向両側の辺縁部、すなわち切り欠き28と前端面22との間に位置する部分29が他の部分に比べて容易に弾性変形する張出部(以下、第1張出部とも言う)とされている。このため、光ファイバ付きフェルール50は、フェルール10の前端面22中央部の裸光ファイバ1a先端が露出するファイバ配列領域の周囲の領域への突き当て力の分散を抑えることができる。その結果、光ファイバ付きフェルール50は、前記ファイバ配列領域に突き当て力を集中的に作用させることができる。したがって、光ファイバ付きフェルール50は、光ファイバ同士(図示例では裸光ファイバ1a)の突き当て力を充分に確保でき、光ファイバ同士のPC(Physical Contact)を容易に実現できる。
【0040】
図2に示すように、前記第1張出部29は、接続端部26のうち、フェルール本体20の幅方向寸法が最小とされた部位である幅狭部20eの前側からフェルール本体幅方向に突出する突片状に形成されている。第1張出部29は、接続端部26のうち、切り欠き28の前側に位置する部分を指す。この第1張出部29は、切り欠き28の最深部の前側に位置する部分を含む。
図1、
図2に示すように、フェルール本体20の接続端部26は、フェルール前後方向に直交する方向に延在する板状となっている。
【0041】
図1、
図2に示すように、図示例のフェルール10の切り欠き28は、フェルール本体20の本体板部24の側面24aから、該側面24aに垂直に、フェルール幅方向に沿ってフェルール本体20に真っ直ぐに切り込む角溝状に形成されている。この切り欠き28の前端は接続端部26後側にフェルール前後方向に垂直の平坦面を形成している。また、この切り欠き28は、その溝底に、フェルール幅方向に垂直の平坦な底面を有し、該底面がこの切り欠き28の最深部となっている。
【0042】
フェルール本体20における前記切り欠き28の前端から前端面22までの寸法(距離)は、例えば1〜2mm程度に設定される。但し、この寸法は、1〜2mmに限定されず、適宜変更可能である。
なお、
図1〜
図6に例示したフェルール10の前後方向寸法、本体板部24の幅方向寸法及び厚さ寸法及び前後方向寸法は適宜設定可能であり、例えばJIS C 5981等の周知の規格に準拠する寸法を採用できる。このことは、フランジ部23に係る寸法についても同様である。一例としては、フェルール10の前後方向寸法を8mm、本体板部24については幅方向寸法を6.4mm、厚さ寸法を2.5mm、前後方向寸法を6mm、フランジ部23が形成された部分について、幅方向寸法を7mm、厚さ寸法を3mmとすることができる。
【0043】
図2に示すように、図示例のフェルール10のファイバ挿入口25は、フェルール本体20の後端面20aからフェルール前後方向において第1張出部29後端付近に到達して形成されている。
図4に示すように、図示例のフェルール10は、前壁部20cのファイバ挿入口25前端に臨む面であるファイバ配列部後面20dが、フェルール前後方向における切り欠き28の前端と一致あるいは前記切り欠き28前端よりも後側に位置している。但し、フェルールとしては、ファイバ挿入口25の前端が、フェルール本体20の幅狭部20eに位置している構成や、幅狭部20eの後側に位置する構成も採用可能である。
【0044】
ファイバ配列部後面20dが第1張出部29後端と一致あるいは前記第1張出部29後端よりも後側に位置する構成であれば、ファイバ配列部後面20dが第1張出部29後端よりも前側に位置する場合に比べて、第1張出部29後端付近におけるフェルール本体20の肉厚を大きく確保できる。この構成は、フェルール本体20における切り欠き28の最深部に対応する部位である幅狭部20eと第1張出部29後端との境界付近の塑性変形や破壊の防止に有利であり、フェルールの耐久性を高めることができる。
但し、本発明に係る実施形態のフェルールとしては、ファイバ配列部後面20dが切り欠き28前端よりも前側に位置する構成も採用可能である。
【0045】
図2に示すように、フェルール10のガイドピン穴21は、前記切り欠き28によって、該切り欠き28から前側の前側孔部21aと、切り欠き28から後側の後側孔部21bとに分断されている。また、このガイドピン穴21の後側孔部21bは、前側孔部21aに比べて径大とされている。このため、
図6に示すように、前側孔部21aに挿入、嵌合されたガイドピン52は、後側孔部21b内にて遊挿状態となる。
【0046】
図示例のフェルール10のガイドピン穴21の前側孔部21aは、フェルール10の第1張出部29を貫通している。このフェルールは、第1張出部29が弾性変形したときに、ガイドピン穴21のうち第1張出部29に形成された部分に嵌合されているガイドピン52が、第1張出部29と一体的に、フェルール本体20の第1張出部29以外の部位に対して傾動することを許容する。したがって、この構成では、フェルールの突き合わせ接続時に生じる第1張出部29の若干の弾性変形に応じて、前側孔部21aに挿入嵌合されたガイドピン52の向きに若干の変動が許容される。
また、この構成であれば、ガイドピン穴21のうち、前側孔部21aのみ、ガイドピン52を高精度に位置決めするべく高い形成精度を確保すれば良く、後側孔部21bに高い形成精度を確保する必要が無いから、フェルールの製造性を向上できる。
【0047】
なお、本発明に係る実施形態のフェルールのガイドピン穴21としては、前側孔部21aの内径と、後側孔部21bの内径とが同じで、同軸上に位置する構成も採用可能である。
また、本発明に係る実施形態のフェルールの切り欠き28は、図示例のように、ガイドピン穴21を横断して、フェルール本体20における一対のガイドピン穴21間に位置する部位にも切り込む構成に限定されない。切り欠き28のフェルール本体の幅方向の側面からの深さは適宜設定可能である。フェルールとしては、一対のガイドピン穴21間に位置する部位に切り欠き28が切り込んでいない構成も採用可能である。
フェルール本体20における一対のガイドピン穴21間に位置する部位とは、フェルール幅方向において一対のガイドピン穴21の間であって、かつフェルール厚さ方向においてガイドピン穴21が存在しない領域を指す。
【0048】
図7(a)、(b)、(c)は、切り欠き28の変形例を示す。
図7(a)、(b)、(c)に示すフェルールにおける切り欠き281、282、283は、いずれも、フェルール本体20に形成されている。また、これら切り欠き281、282、283は、いずれも、図示例の平面視形状(溝状の切り欠きの延在方向に直交する断面形状)を保ってフェルール本体20をその厚さ方向に貫通する溝状に形成されている。
図7(a)、(b)、(c)に例示したフェルールの切り欠き以外の構成は、
図1〜
図6に例示したフェルール10と同様である。
【0049】
図7(a)、(b)に示す切り欠き281、282は、そのフェルール前後方向における前端から後側へ行くに従って、フェルール本体20の幅方向の側面(具体的には本体板部24の側面24a)からの深さが連続的に増大する前端部を有する構成となっている。
図7(a)の切り欠き281の前端部281aは、前端から後側へ行くに従って、深さがフェルール本体20の幅方向の側面から連続的に増大する形状となっている。
図7(a)のフェルールの第1張出部291は、その後側の切り欠き281に臨む後面(後側の壁面)全体が、フェルール前後方向後側に行くにしたがって、フェルール本体20の幅方向の側面からの深さ方向(フェルール幅方向)の距離が大きくなる傾斜面となっている。
前記切り欠き28Aの前端部281aから後側の部分(後側延在部281b)は、フェルール本体20の幅方向の側面からの深さが前端部後端と同じで前端部から後側に延在形成されている。
【0050】
図7(b)の切り欠き282の前端部282aの前端は、接続端部26後端にフェルール前後方向に垂直の平坦面282cを形成している。また、この前端部282aは、前記前端から後側へ行くに従って、フェルール本体20の幅方向の側面からの深さが連続的に増大する形状になっている。この切り欠き28Bの前端部から後側の部分(後側延在部282b)は、フェルール本体20の幅方向の側面からの深さが前端部後端と同じで前端部から後側に延在形成されている。
図7(b)のフェルールの第1張出部292の、その後側の切り欠き282に臨む後面(後側の壁面)は、前記平坦面282cと、該平坦面282cからフェルール前後方向後側へ行くにしたがってフェルール本体20の幅方向の側面からの深さ方向(フェルール幅方向)の距離が大きくなる傾斜面とを有している。
【0051】
図7(a)、(b)に示すフェルールのフェルール本体20は、切り欠き281、282の後側延在部281b、282bに対応する部分が、フェルール前後方向において幅方向が最小の幅狭部20eとなっている。
図7(a)、(b)に示すフェルール本体20の接続端部26は、その後側の、幅狭部20eから前側に位置して切り欠き281、282に臨む部分の壁面(フェルール幅方向の壁面)が、フェルール前後方向後側へ行くに従ってフェルール本体20側面からの深さが増大するように形成されている。
図7(a)、(b)に示すフェルールの第1張出部291、292は、その後側に、フェルール本体20後側に行くにしたがってフェルール幅方向の寸法が減少して幅狭部20eに至るテーパ状に形成された後側張出部291a、292aを有している。つまり、前記第1張出部291、292を構成する後ろ側の壁面(後面)は、後ろに行くほど幅方向寸法を縮小するように形成されている。第1張出部291、292は、前記後側張出部291a、292aの大きさを調整することで、弾性を調整できる。
【0052】
図7(a)、(b)に示すフェルールの第1張出部291、292の後側張出部291a、292aは、後ろに行くにしたがって幅方向寸法を連続的に縮小するテーパ状に形成されている。
図7(c)に示すフェルールの切り欠き283は、そのフェルール前後方向における全体が、その前端から後側へ行くに従って、フェルール本体20の幅方向の側面からの深さが段階的に増大する構成となっている。
図7(c)に示すフェルールのフェルール本体20は、切り欠き283後端に対応する部分が、フェルール前後方向において幅方向が最小の幅狭部20eとなっている。
図7(c)に示すフェルールの第1張出部293は、その後側に、フェルール本体20後側に行くにしたがってフェルール幅方向の寸法が段階的に減少して幅狭部20eに至るテーパ状に形成された後側張出部293aを有している。第1張出部293は、この後側張出部293aの大きさを調整することで、弾性を調整できる。
【0053】
図7(a)、(b)、(c)に示すフェルールは、前記後側張出部291a、292a、293aの前側(接続端側)に、フェルール本体20の幅方向両側の側面、具体的には本体板部24の幅方向両側の側面24aの一部を形成する部分(張出部本体)を有する。
【0054】
なお、フェルールの切り欠きとしては、
図7(a)、(b)に示す切り欠き281、282の後側延在部281b、282bを省略して、前端部281a、282aのみからなる構成としても良い。この切り欠きは、フェルール前後方向における全体が、その前端から後側へ行くに従って、フェルール本体20の幅方向の側面からの深さが連続的に増大する構成のものである。
【0055】
また、フェルール本体20の前後方向前側から後側へ行くに従って、フェルール本体20の幅方向の側面からの深さが連続的に増大する前端部の後側に、該前端部の後端と同じ深さで延在する後側延在部を有する切り欠きとしては、後側延在部が本体板部24後端(フランジ部23前端)、あるいはフェルール本体後端に達している構成も採用可能である。
【0056】
図8に示すように、フェルールの切り欠き28としては、フェルール前後方向における全体が、その前端から後側へ行くに従って、フェルール本体20の幅方向の側面からの深さが連続的に浅くなる(小さくなる)構成のものも採用可能である。
図8の切り欠き28に、図中符号284を付記する。
【0057】
フェルールとしては、フェルール本体20に、その幅方向両側あるいは片側の切り欠き(幅方向切り欠き。例えば
図9のフェルールの幅方向切り欠き285a)に加えて、厚さ方向両側あるいは片側の切り欠き(厚さ方向切り欠き。例えば
図9のフェルールの厚さ方向切り欠き285b)を形成し、接続端部26に、第1張出部29及び厚さ方向の端部(辺縁部)の第2張出部(厚さ方向張出部)を確保した構成も採用可能である。
第1張出部は、フェルール幅方向において、接続端部の、前記幅方向切り欠きの前側に位置する部分(幅方向切り欠きの最深部の前側に位置する部分を含む)を指す。第2張出部は、フェルール厚さ方向において、接続端部の、前記厚さ方向切り欠きの前側に位置する部分(厚さ方向切り欠きの最深部の前側に位置する部分を含む)を指す。
【0058】
図9に示すように、フェルールの切り欠き28は、フェルール本体20の周方向(フェルール本体20の前後方向に垂直の断面の外周方向)全周に連続して周設した溝状に形成しても良い。
図9の切り欠き28に図中符号285を付記する。また、この切り欠き285を、以下、周方向連続切り欠きとも言う。
周方向連続切り欠き285は、フェルール本体20の幅方向両側にそれぞれ形成されフェルール本体20の幅方向寸法を縮小する幅方向切り欠き285a(切り欠き)と、フェルール本体20の厚さ方向両側にそれぞれ形成されフェルール本体20の厚さ方向寸法を縮小する厚さ方向切り欠き285b(切り欠き)とが連続したものである。
【0059】
図9に例示したフェルール本体20において、周方向連続切り欠き285の幅方向切り欠き285aの形成によって幅方向寸法が最小とされた部位である幅狭部20eは、厚さ方向切り欠き285bによって、フェルール厚さ方向の寸法も最小の部位となっている。このフェルール本体20において、前記幅狭部20eから前側の部分である接続端部26は、周方向連続切り欠き285の前側に位置する外周部がフランジ状の張出部(フランジ状張出部295)とされている。フランジ状張出部295は、幅狭部20eを介して両側の幅方向切り欠き285aに臨む幅方向両端部(辺縁部)である第1張出部295aと、幅狭部20eを介して両側の厚さ方向切り欠き285bに臨む厚さ方向両端部(辺縁部)である第2張出部295bとが連続したものであり、接続端部26の周方向全周に延在している。第1張出部295aは、フェルール幅方向において接続端部26の幅方向切り欠き285aの前側に位置する部分、第2張出部295bは、フェルール厚さ方向において接続端部26の厚さ方向切り欠き285bの前側に位置する部分、を指す。
【0060】
このフェルール10に光ファイバ先端を内挿固定した光ファイバ付きフェルールは、フェルール本体に幅方向切り欠きのみを形成した構成に比べて、フェルール本体の前端面22中央部のファイバ配列領域の周囲の領域への突き当て力の分散を一層効果的に抑えることができ、前端面22中央部のファイバ配列領域への突き当て力の集中を効率良く行える。
【0061】
フェルールのフェルール本体は、プラスチック製の一体成形品である構成に限定されず、複数部材によって構成されたものも採用可能である。
図10は、複数部材によって構成されるフェルール本体の一例を示す。
図10は、
図9のフェルール10のフェルール本体と同様の外観に組み立てられるフェルール本体31を例示する。
このフェルール本体31は、その幅狭部20e及び該幅狭部20eから前側(前端面22側。接続端側)の部分(接続端部26)全体を含む前側部材本体32を、該前側部材本体32とは別体の後側部材本体33に一体化することで組み立てられる。後側部材本体33は、フェルール本体31の幅狭部20eから後側の部分を構成する部材である。
【0062】
図示例の前側部材本体32は、フェルール本体31の接続端部26に、前記後側部材本体33に形成された固定用穴部33aに挿入固定される固定用延出片32bを延出させた構成になっている。この固定用延出片32bは、板状の接続端部26から、前側部材本体32前端の前端面22とは反対の後側に延出する細長片である。この固定用延出片32bは、接続端部26からの延出方向(延在方向)に直交する断面外形が矩形に形成されている。固定用延出片32bは、接続端部26とは反対側の突端部が角筒状(角筒部)とされている。角筒部内側の穴部32aは固定用延出片32bの突端に開口する開口部から、固定用延出片32bの前端部内側に形成されたファイバ配列部後面まで延在形成されている。
但し、固定用延出片32bの構成は、前側部材本体32の前後方向におけるファイバ配列部後面の位置に左右される。前側部材本体32は、固定用延出片32bの全長が角筒状、あるいは角棒状(全長が、フェルール本体の前壁部20cの一部として機能する角棒状)である構成も採り得る。
【0063】
一方、後側部材本体33は、フェルール本体31のファイバ挿入口の一部(あるいは全部)を構成する角孔状の貫通孔33bが貫設された角筒状に形成されている。この後側部材本体33の固定用穴部33aは、後側部材本体33のフランジ部23が突設されている後端部とは反対の前端側に開口する前記貫通孔33bの開口部を該貫通孔33bの他の部分に比べて拡張したものである。
【0064】
そして、フェルール本体31は、前側部材本体32の固定用延出片32bを、後側部材本体33の固定用穴部33aに挿入し、例えば接着剤を用いた接着固定等によって内挿固定して組み立てられる。
図9に例示したフェルール本体の切り欠き285は角溝状になっている。角溝状の切り欠きを得るには、前側部材本体32は、固定用延出片32bの全体を後側部材本体33に内挿固定するのではなく、固定用延出片32bの軸線方向の一部が後側部材本体33の前側に突出状態に配置されるようにする。
【0065】
図示例の前側部材本体32の接続端部26は、フェルール本体の組み立てによって角溝状の切り欠き(周方向連続切り欠き285)を得るために、固定用延出片32bの軸線に対して垂直の板状に形成されている。固定用延出片32bは、前側部材本体32前後方向に垂直の断面外周の輪郭のサイズが、接続端部26の前側部材本体32前後方向に垂直の断面外周の輪郭よりも小さい。前側部材本体32は、接続端部26のフランジ状張出部295が、固定用延出片32bの前端からフランジ状に張り出された構造となっている。
【0066】
前側部材本体32は、後側部材本体33の固定用穴部33aに挿入した固定用延出片32bの軸線方向の一部を後側部材本体33の前側に突出状態に配置して、固定用延出片32bを後側部材本体33に固定する。これにより、前側部材本体32の接続端部26が、前側部材本体32の固定用延出片32bを固定した後側部材本体33から前側に離隔して配置され、後側部材本体33と前側部材本体32のフランジ状張出部295との間に周方向連続切り欠き285を確保できる。また、固定用延出片32bの後側部材本体33の前側に突出状態に配置された部分が、フェルール本体31の幅狭部20eとなる。
【0067】
図示例の後側部材本体33の貫通孔33bには、該固定用穴部33aと、貫通孔33bにおける固定用穴部33aから後側に位置する部分(後側孔部33d)との境界位置の段差33cが存在する。図示例のフェルール本体31は、固定用穴部33aに挿入した前側部材本体32の固定用延出片32bの突端を、該固定用穴部33aの後端(奥端)に位置する前記段差33cに突き当てることで、前側部材本体32を後側部材本体33に対して、所望の溝幅の角溝状の切り欠きが得られる適切位置に位置決めできる。後側部材本体33の前記段差33cは、前側部材本体32を後側部材本体33に対して所望の固定位置に位置決めするための位置決め手段(位置決め用当接部)として機能する。
【0068】
なお、前側部材本体32は、固定用延出片32bを、その突端を前記段差33cに突き当てて後側部材本体33に内挿固定することで、固定用延出片32b突端側の角筒部内面が、後側部材本体33の貫通孔33bの固定用穴部33aから後側の後側孔部33dの内面と面一の連続面を形成する。これにより、固定用延出片32bの角筒部内側の穴部32aと、後側部材本体33の後側孔部33dとによって、フェルール本体31のファイバ挿入口が構成される。
【0069】
前側部材本体32を後側部材本体33に対して所望の固定位置に位置決めするための位置決め手段(位置決め用当接部)としては、前記段差33cに限定されない。
一例として、前側部材本体32の固定用延出片を後側部材本体33に内挿固定することで、
図1、
図2に例示したフェルールと同様の外観形状のフェルール、すなわち本体板部24の幅方向両側のみに切り欠き28を有するフェルール本体を組み立てる場合について説明する。この場合は、
図11に示す前側部材本体34を用いる。
図11に例示した前側部材本体34は、
図10を参照して説明した既述の前側部材本体32の固定用延出片32bの基端部(接続端部26側の端部)の、前側部材本体の厚さ方向(
図11上下方向)における両側を厚肉にして、フェルール本体の幅狭部20eに相当する部分(幅狭部相当部)を形成した構成になっている。なお、
図11では、前側部材本体34におけるフェルール本体の幅狭部20eに相当する幅狭部相当部に幅狭部と同じ符号20eを付し、本明細書において幅狭部相当部について幅狭部と称して説明する。
【0070】
図11の前側部材本体34は、
図10の前側部材本体32の固定用延出片32bの基端部に前記幅狭部20eを形成した構成の固定用延出片34bが、接続端面26から接続端面22が形成された前端側とは反対の後端側へ延出された構成になっている。
前記固定用延出片34bは、幅狭部20eと、該幅狭部20eの接続端部26とは反対の側に幅狭部20eに比べて断面(固定用延出片34bの延在方向に直交する断面)の輪郭サイズが小さい突端部34aとを有する。
【0071】
前記前側部材本体34は、固定用延出片34bの幅狭部20eから延出する突端部34a先端(固定用延出片34bの突端)を後側部材本体33の前記段差33cに突き当てるとともに、固定用延出片34bの突端部34aと幅狭部20eとの境界の段差34cを後側部材本体33の前端面に当接させた状態で、固定用延出片34bの突端部34aを後側部材本体33に固定して一体化される。この場合、前記段差33c以外に、前側部材本体34の幅狭部20e(詳細には段差34c)、後側部材本体33の前端部も、前側部材本体32を後側部材本体33に対して所望の固定位置に位置決めするための位置決め手段(位置決め用当接部)として機能する。
【0072】
なお、前側部材本体を後側部材本体に固定して組み立てられるフェルール本体としては、前側部材本体34の幅狭部20e、後側部材本体33の前端部のみを位置決め手段(位置決め用当接部)として機能させた構成も採用可能である。
また、後側部材本体としては、その貫通孔の全長の断面(軸線方向に直交する断面)を、固定用穴部の断面と同じにした構成のものも採用可能である。
【0073】
フェルール本体の幅狭部及び接続端部を含む前側部材本体を後側部材本体に固定、一体化して組み立てられるフェルール、フェルール本体としては、
図1、
図2に例示したフェルールと同様の外観形状のフェルール、フェルール本体に限定されない。例えば、
図7(a)〜(c)、
図8に例示したフェルールと同様の外観形状のフェルール、フェルール本体についても、フェルール本体の幅狭部を含む固定用延出片が接続端部から延出された構成の前側部材本体を後側部材本体に一体化して組み立てる構成を適用できる。ここで用いる前側部材本体としては、後側部材本体の貫通孔に挿入して固定する突端部が幅狭部から突出する構成の固定用延出片を有するものを好適に用いることができる。
【0074】
前側部材本体を後側部材本体に固定、一体化して組み立てられる構成のフェルールは、前側部材本体の固定用延出片を後側部材本体に固定するだけで切り欠きを有するフェルール本体を得ることができる。つまり、フェルール本体の幅狭部20eと該幅狭部20eから前側の部分である接続端部とを含む前側部材本体の固定用延出片を後側部材本体の貫通孔に挿入して内挿固定するだけで、所望形状の切り欠きを有するフェルールを得ることができる。
また、この構成であれば、前側部材本体を後側部材本体に固定した後に、前側部材本体及び/又は後側部材本体に切り欠きを形成するための加工を行う必要が無い。また、接続端部を形成済みの前側部材本体を後側部材本体に固定するので、前側部材本体の接続端部に高い成形精度を容易に確保できるといった利点がある。また、この構成であれば、プラスチック製の一体成形品のフェルール本体に比べて、後側部材本体の構造及び材質の自由度を高めることができる。その結果、フェルール、フェルール本体に高い設計自由度を確保できる。
【0075】
前側部材本体を後側部材本体に固定、一体化して組み立てられる構成のフェルール本体としては、前側部材本体の固定用延出片を後側部材本体の貫通孔に挿入して内挿固定し、一体化する構成に限定されない。例えば、樹脂成形用金型を用いて、前側部材本体の固定用延出片に、インサートモールド成形によって後側部材本体を樹脂成形して、一体化した構成のフェルール本体も採用可能である。
【0076】
図12は、フェルール本体41の接続端部26の幅方向片側のみに切り欠き28を有する構成のフェルール40を示す。
また、
図12は、このフェルール40に光ファイバ(図示例では光ファイバテープ心線1)の先端を内挿固定して組み立てた光ファイバ付きフェルール40A同士を突き合わせ接続した状態を示す。前記フェルール40のフェルール本体41は、その接続端部26の幅方向片側のみに切り欠き28を形成した構成であるので、切り欠き28の形成によって接続端部26において幅方向寸法が最小となっている部位である幅狭部20eの前側から幅方向片側のみに第1張出部29が形成されている。フェルール幅方向において幅狭部20eの前側から第1張出部29とは反対の切り欠きを形成していない側を、以下、切り欠き無し前端部とも言う。
【0077】
図12に示すように、前記光ファイバ付きフェルール40A同士の突き合わせ接続は、各光ファイバ付きフェルール40Aのフェルール40同士を、
図1〜
図6に例示したフェルール10と同様にガイドピン21を用いて高精度に位置決めする。そして、一方のフェルール40の第1張出部29に他方のフェルール40の切り欠き無し前端部に当接させる向きで前端面22同士を突き合わせ接合する。これにより、フェルール本体41の前端面22の中央部に突き当て力を集中的に作用させることができ、一対の光ファイバ付きフェルール40Aのフェルール40の前端面22に露出する光ファイバ(図示例では裸光ファイバ1a)のPCを容易に実現できる。
【0078】
図12に例示したフェルール40は、
図1〜
図6に例示したフェルール10について、接続端部26の幅方向両側の切り欠き28の片方を省略した構成になっている。但し、
図1〜
図6に例示したフェルール10について変更可能な構成は、このフェルール40にも適用可能である。例えば、フェルール厚さ方向に延在する溝状の切り欠きの延在方向に垂直の断面形状(フェルールの平面視における切り欠きの形状)は、
図7(a)〜(c)、
図8に例示したフェルールの切り欠きと同様のものに変更可能である。
【0079】
上述の実施形態にて説明したフェルールは、例えばMPO形光コネクタ等の多心光コネクタのフェルールとして用いることができる。
前記フェルールを光コネクタ用のハウジング内に収納して組み立てた光コネクタ(多心光コネクタ)は、対応心数が多くても、突き合わせ接続時の光ファイバのPC(Phisical Contact)を容易に実現できる。
なお、この光コネクタとしては、光ファイバ先端を内挿固定したフェルールをハウジングに収納した構成、すなわち光ファイバ付きフェルールをハウジングに収納した構成を採用できる。
【0080】
上述の実施形態にて説明した切り欠きの具体的形状、フェルール本体のファイバ挿入口前側のファイバ配列部後面と切り欠きとの位置関係、切り欠きのフェルール幅方向における深さ(形成深さ)とガイドピン穴との関係等は、本発明に係る実施形態に共通して適用可能である。
また、本発明に係る実施形態のフェルールは、ガイドピン穴が形成されていないフェルール本体を採用することも可能である。
【0081】
本発明に係る実施形態のフェルールは、フェルール本体の幅方向両側あるいは片側に幅方向切り欠きが形成され、かつフェルール本体の厚さ方向両側あるいは片側に厚さ方向切り欠きが形成された構成を採用できる。
フェルール本体に幅方向切り欠き及び厚さ方向切り欠きを形成したフェルールとしては、厚さ方向切り欠きのフェルール前後方向における形成位置が、必ずしも幅方向切り欠きの位置と一致している必要はない。このフェルールとしては、厚さ方向切り欠きが、フェルール前後方向において幅方向切り欠きに対してずれた形成され、幅方向切り欠きと連通していない構成も採用可能である。但し、厚さ方向切り欠きは、フェルール幅方向に延在してその延在方向両端がフェルール本体の幅方向両端に開口する溝状、すなわちフェルール本体をその幅方向に貫通する溝状に形成する。
【0082】
また、フェルールとしては、
図13〜
図15に示すように、フェルール本体20にその厚さ方向両側の面(主面)の片方からファイバ挿入口25に連通する接着剤注入用孔20bを形成した構成も採用可能である。
図13〜
図15に例示したフェルール10に図中符号10Aを付記する。
前記接着剤注入用孔20bは、ファイバ挿入口25からフェルール本体20の厚さ方向片側のみに形成されている。このフェルール10Aは、前記接着剤注入用孔20bを介してフェルール外側からファイバ挿入口25内へ、光ファイバの接着固定用の接着剤を注入可能である。
【0083】
図13〜
図15に例示したフェルール10Aにおいて、接着剤注入用孔20bは、具体的には、フェルール本体20の本体板部24に形成されている。また、このフェルール10Aの接着剤注入用孔20bは角穴状に形成されているが、接着剤注入用孔20bの具体的形状は、その軸線に垂直の断面形状(以下、平面視形状とも言う)が矩形の角穴状に限定されない。接着剤注入用孔20bとしては、例えば平面視形状が台形、五角形等の多角形状のものや、丸穴等も採用可能であり、適宜変更可能である。
【0084】
図1〜
図12を参照して説明したフェルールは、接着剤注入用孔20bを有していない構成となっている。
図13〜
図15に例示したフェルール10Aは、
図1〜
図6を参照して説明したフェルールのフェルール本体20の本体板部24に接着剤注入用孔20bを形成した構成になっている。また、図示例のフェルール10Aは、フェルール本体20のファイバ配列部後面20dが角穴状の4面の内側面のひとつと面一になっている。平面視形状が多角形状の接着剤注入用孔20bとしては、フェルール本体20のファイバ配列部後面20dと面一の内側面をフェルール前後方向における前端とし、ファイバ配列部後面20dの後側のファイバ挿入口25前端部に連通する構成を好適に採用できる。
接着剤注入用孔20bの形成は、本発明に係る実施形態の全てのフェルールに適用可能であり、例えば
図7〜
図12を参照して説明したフェルールについても適用可能である。