(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放射線硬化性アクリル系化合物(B)が、ビスフェノールAポリエチレングリコールジアクリレート、α−フェニル−ω−アクリロイルオキシポリオキシエチレンホルムアルデヒド重縮合物およびビスフェノールAポリプロピレングリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項2に記載の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物。
前記放射線硬化性アクリル系化合物(C)が、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンポリマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびジトリメチロールプロパンテトラアクリレートからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項2に記載の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物。
前記放射線硬化性アクリル系化合物(B)が、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートおよびポリエチレングリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項5に記載の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物。
前記光学部材が偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルムおよび光拡散フィルムからなる群から選択される光学フィルムであることを特徴とする請求項12記載の粘着型光学部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、様々な要求特性を満たす光学部材用粘着剤組成物が、特許文献1〜6に開示されている。
【0018】
しかしながら、特許文献1〜2の粘着剤組成物は、貼付け直後は良好な性能を示すものの、経過的に劣化するおそれがあった。また、特許文献3〜5の粘着剤組成物は、耐久性を改善しているものの、この耐久性および耐光漏れ性は、大画面化、高画質・高品質化した表示装置に要求されるような、高い基準を満たすものではなく、依然として改善の余地がある。さらに、特許文献6の粘着剤組成物は、耐光老化性を改善しているものの、十分な耐久性および耐光漏れ性を発揮できるものではない。また、放射線硬化型粘着剤においては添加された光安定剤が硬化反応を阻害してしまうことから、通常の放射線硬化型粘着剤組成物に光安定剤を添加することは困難であった。
【0019】
このように、特許文献1〜6に開示された粘着剤組成物は、透明性等の基本的な特性とともに、十分な耐久性、耐光漏れ性、耐光老化性を両立するものではない。
【0020】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するものである。すなわち、本発明は、高温条件下および高温多湿条件下でも優れた耐久性を示し、光漏れを抑制するとともに、バックライト装置等からの光暴露による経時的な接着力の低下(光老化)およびそれに起因する不具合を抑制できる光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物を提供することを目的としている。また、該光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物を用いた粘着型光学部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一般的に、架橋度が高い粘着剤組成物では、凝集力の上昇により、引張強度は上昇し、柔軟性は低下してしまう。それに対して、本発明者は、後述するような特定構造を有する放射線硬化性アクリル系化合物2種類を含む粘着剤組成物では、高い架橋度にも関らず、過度の凝集力および引張強度の上昇が抑制され、適度な凝集力および引張強度と適度な柔軟性とが両立されることを見出した。
【0022】
つまり、この粘着剤組成物は、架橋すると、光学部材の寸法変形に由来する応力を一時的に緩和できる適度な柔軟性とともに、応力を緩和した後、寸法変形を復元する強い引張強度を示す。そして、この特性のために、光学部材同士あるいは光学部材と画像表示装置とを架橋後の粘着剤組成物で貼着した場合において、優れた耐久性と耐光漏れ性とが両立される。
【0023】
さらに、粘着剤組成物に、特定の放射線硬化性アクリル系化合物2種類とともに、ピペリジル環を有する光安定剤を添加することで、光照射時に過度にラジカル分子が捕捉されず、光硬化(架橋)反応(つまりポリマー間の架橋反応やモノマー・オリゴマー同士の連鎖重合反応)の阻害が抑えられることが分かった。つまり、上記光安定剤を添加することにより、十分に架橋反応が進行して、高度な架橋構造が形成され得るとともに、露光による経時的な接着力の低下(光老化)とそれに起因する不具合(耐久性の悪化、光漏れ等)の発生が抑制される(耐光老化性)。
【0024】
本発明は、本発明者により見出された上述の知見に基づいて、完成されたものである。具体的な本発明に係る光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物および、それを使用した粘着型光学部材は、以下のとおりである。
【0025】
本発明の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物は、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)80〜99.8質量%、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)0.1〜10質量%および水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)0.1〜10質量%から構成される(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、(a1)〜(a3)の合計量が100質量%である。) 100重量部と、
分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有する放射線硬化性アクリル系化合物(B) 0.01〜20重量部と、
分子内に(メタ)アクリロイル基を3〜10個有する放射線硬化性アクリル系化合物(C) 1〜50重量部と、
水素引抜型光重合性開始剤(D) 0.1〜10重量部と、
分子内にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート系架橋剤(E) 0.01〜10重量部と、
下記一般式(1)に示されるピペリジル環を有する光安定剤(F)0.01〜5重量部とを含むことを特徴とする。
【0026】
【化1】
【0027】
(式(1)中、R
1、R
2は、それぞれ独立して、直接結合、2価の炭化水素基、2価の窒素含有官能基、2価の酸素含有官能基を示す。)
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、前記放射線硬化性アクリル系化合物(B)が下記一般式(2)で示され、前記放射線硬化性アクリル系化合物(C)が下記一般式(3)または一般式(4)で示され、
前記(A)成分100重量部に対して、(B)成分の配合量が0.01〜10重量部で、前記(C)成分の配合量が1〜30重量部であり、(B)成分と(C)成分との合計配合量が3〜40重量部であり、かつ(C)成分の配合量が(B)成分の配合量よりも大きいことが好ましい。
【0028】
【化2】
【0029】
(式(2)中、R
aは、水素または炭素数1〜5のアルキル基、R
bは、炭素数2〜4のアルキル基、R
cは、水素またはメチル基を示す。p、qは、それぞれ整数を示し、pとqとの合計が4〜12である。)
【0030】
【化3】
【0031】
(式(3)中、nは、1〜5の整数である。また、aおよびbは整数を示し、aが3〜10の整数を示すとともに、a+b=2n+2を満足する。R
1は、水素またはメチル基を示す。R
2は、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
【0032】
【化4】
【0033】
(式(4)中、nは、1〜5の整数である。aおよびbは整数を示し、aが3〜10の整数を示すとともに、a+b=2n+1を満足する。R
1は、水素またはメチル基を示す。R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、上記放射線硬化性アクリル系化合物(B)が、ビスフェノールAポリエチレングリコールジアクリレート、α−フェニル−ω−アクリロイルオキシポリオキシエチレンホルムアルデヒド重縮合物
およびビスフェノールAポリプロピレングリコールジアクリレー
トからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0034】
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、上記放射線硬化性アクリル系化合物(C)が、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンポリマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびジトリメチロールプロパンテトラアクリレートからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0035】
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、前記放射線硬化性アクリル系化合物(B)が下記一般式(5)で示され、前記放射線硬化性アクリル系化合物
(C)が下記一般式(6)または一般式(7)で示され、
前記(A)成分100重量部に対して、(B)成分の配合量が2〜20重量部で、前記(C)成分の配合量が3〜50重量部であり、かつ(B)成分と(C)成分との合計配合量が5〜60重量部であることが好ましい。
【0036】
【化5】
【0037】
(式(5)中、n1,n2はそれぞれ独立して0〜10の整数を示す。R
1、R
2はそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。Xは、炭素数1〜20の直鎖型または分岐型の2価のアルキル基、炭素数3〜20の直鎖型または分岐型の2価のシクロアルキル基、下記一般式(i)で示されるアルコキシル基または下記一般式(ii)で示されるジフェニルアルキル基を示す。
【0038】
【化6】
【0039】
(式(i)中、nは1〜20の整数、mは1〜10の整数を示す。)
【0040】
【化7】
【0041】
(式(ii)中、nは、1〜20の整数を示し、Arは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
【0042】
【化8】
【0043】
(式(6)中、mは1〜5の整数である。aは1以上、bは0以上、cは0以上の整数であって、aとbとの合計が3〜10であり、a+b+c=2m+2を満足する。nは、2〜6の整数である。R
1は、置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルキル基を示す。R
2は、水素またはメチル基を示す。R
3は、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
【0044】
【化9】
【0045】
(式(7)中、mは1〜5の整数である。aは1以上、bは0以上、cは0以上の整数であって、aとbとの合計が3〜10であり、a+b+c=2m+1の条件を満足する。nは、2〜6の整数である。R
1は、置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルキル基を示す。R
2は、水素またはメチル基を示す。R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、上記放射線硬化性アクリル系化合物(B)が、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート
およびポリエチレングリコールジアクリレー
トからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0046】
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、上記放射線硬化性アクリル系化合物(C)
が、ペンタエリスリトールエチレンオキサイドのアクリル酸エステルおよびトリメチロールプロパンエチレンオキサイドのアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0047】
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、光安定剤(F)が、下記一般式(8)または(9)で示されることが好ましい。
【0048】
【化10】
【0049】
(式(8)および(9)中、R
aは、H,OH基、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基を示す。R
b、R
cは、それぞれ独立して、直接結合、2価の炭化水素基、2価の窒素含有官能基、2価の酸素含有官能基を示す。R
dは、直接結合、2価の炭化水素基を示す。R
eは、H、置換または無置換のアルキル基、下記一般式(iii)または(iv)で示されるピペリジン環を示す。また、nは1〜7の整数を示す。)
【0050】
【化11】
【0051】
(式(iii)および(iv)中、R
fは、直接結合、2価の炭化水素基、2価の窒素含有官能基、2価の酸素含有官能基を、R
gは、H、OH、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基を示す。)
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、光安定剤(F)が、下記化学式10〜16で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0052】
【化12】
【0053】
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物において、上記光安定剤(F)の分子量が、200〜4000の範囲であることが好ましい。
【0054】
また、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物には、(メタ)アクリル系共重合体(A) 100重量部に対して、カルボキシル基と反応性を有する有機官能基を有するシラン化合物
(G) 0.01〜3重量部がさらに含まれることが好ましい。
【0055】
本発明の粘着型光学部材は、上記の粘着剤組成物からなる粘着剤層が、光学部材の片面あるいは両面に形成されてなることを特徴とする。
【0056】
また、上記粘着型光学部材において、上記光学部材が偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルムおよび光拡散フィルムからなる群から選択される光学フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0057】
本発明の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物は、光照射により架橋された後、光学部材同士あるいは光学部材と画像表示装置とを貼着した場合、高温条件下および高温多湿条件下においても優れた耐久性と耐光漏れ性とを両立して発揮できる。また、本発明の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物は、硬化(架橋反応)の際には過度にラジカルを捕捉することがないために、反応阻害を引き起こすことなく十分に架橋反応を進行させることができるとともに、光老化およびそれに起因する不具合(耐久性の悪化、光漏れ等)を抑制できる(耐光老化性)。
【0058】
また、本発明の粘着型光学部材は、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するために、優れた耐久性、耐光漏れ性および耐光老化性を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明に係る光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100重量部と、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有する放射線硬化性アクリル系化合物(B) 0.01〜20重量部と、分子内に(メタ)アクリロイル基を3〜10個有する放射線硬化性アクリル系化合物(C) 1〜50重量部と、水素引抜型光重合性開始剤(D) 0.1〜10重量部と、分子内にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート系架橋剤(E) 0.01〜10重量部と、所定のピペリジル環を有する光安定剤(F)0.01〜5重量部とを含む。
【0060】
また、本発明の粘着剤組成物の各種物性を改良するため、該粘着剤組成物には、必要に応じて、他の成分が含まれていてもよい。
【0061】
以下、本発明について具体的に説明するが、上記の、(メタ)アクリル系共重合体(A)、放射線硬化性アクリル系化合物(B)、放射線硬化性アクリル系化合物(C)、水素引抜型光重合性開始剤(D)、イソシアネート基を有する架橋剤(E)、所定のピペリジル環を有する光安定剤(F)については、便宜上、それぞれ、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分と称する場合がある。また、光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物は、単に粘着剤組成物と称する場合がある。
【0062】
本発明の粘着剤組成物で使用される(メタ)アクリル系共重合体A((A)成分)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)および水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)から構成される。
【0063】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)としては、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルであれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖または分岐アルキル)エステルなどが挙げられ、これらは単独で、または組み合わせて使用できる。
【0064】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)としては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーモノマーであれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸およびウンゲリカ酸などの付加重合性不飽和脂肪族モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸およびジヒドロムコン酸などの付加重合性不飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独で、または組み合わせて使用できる。
【0065】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマー(a3)としては、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーであれば特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のようなアルキレンジオールのモノ(メタ)アクリレート類;N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等のような(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらは単独で、または組み合わせて使用できる。この中でも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0066】
また、単量体成分(a1)〜(a3)の配合量は、(a1)成分 80〜99.8質量%、(a2)成分 0.1〜10質量%、(a3)成分 0.1〜10質量%であり、好ましくは、(a1)成分 84〜99.8質量%、(a2)成分 0.1〜8質量%、(a3)成分 0.1〜8質量%であり、より好ましくは、(a1)成分 90〜99.8質量%、(a2)成分 0.1〜5質量%、(a3)成分 0.1〜5質量%である。このような配合量の割合にすることで、再剥離性などのその他の物性を損なうことなく、優れた耐久性を付与することができる。
【0067】
なお、(A)は、単量体成分(a1)〜(a3)の他に、必要に応じて、その他の単量体(a4)が含まれていてもよい。その他の単量体(a4)としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、メチルスチレン及びビニルトルエン等の芳香族単量体;メタクリロキシプロピルメトキシシラン、酢酸ビニル、塩化ビニル並びに(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。その他の単量体の配合比率は、成分(a)アクリル酸アルキルエステル100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0068】
また、(メタ)アクリル系共重合体(A)のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50万〜200万であり、より好ましくは50万〜180万である。
【0069】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が上記の範囲である場合、高温条件下においても十分な凝集力が発揮でき、発泡やハガレの発生を抑制できる。また、十分な凝集力により光学部材の歪みを抑制できることから、例えばガラス基板と光学部材との貼り合わせに使用する場合には、貼付面周端部での光漏れ現象の発生を低減することができる。
【0070】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のTg(ガラス転移点)は、好ましくは−20℃以下であり、より好ましくは−80〜−30℃であり、さらに好ましくは−70〜−50℃である。成分(A)のTgをこのような範囲に規定すると、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着型光学部材を被着体に貼着した際に、被着体に対する密着性を一定にすることができる。なお、Tg(ガラス転移点)は、Foxの式により算出される。
【0071】
また、本発明に用いられる(メタ)アクリル系共重合体(A)の重合方法は特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、重合により得られた共重合体の混合物を用いて本発明の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物を製造するに当り、処理工程が比較的簡単で且つ短時間で行えることから溶液重合により重合することが好ましい。
【0072】
溶液重合とは、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行われる重合方法である。なお、この場合に有機溶媒、単量体および/または重合開始剤を逐次添加してもよい。
【0073】
上記の重合用有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;などを挙げることができる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0074】
これら重合用有機溶媒のうち、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重合に際しては、重合反応中に連鎖移動を生じにくい有機溶媒、例えば、エステル類、ケトン類を使用することが好ましく、特に、(メタ)アクリル系共重合体(A)の溶解性、重合反応の容易さなどの点から、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンなどの使用が好ましい。
【0075】
前記重合開始剤としては、通常の溶液重合で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。
【0076】
このような有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−i−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−i−ブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどを挙げることができる。
【0077】
これら有機過酸化物のうち、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重合に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤が好ましく、特にアゾ系が好ましい。その配合量は、通常、単量体合計100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0078】
また、本発明に用いられる(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造に際しては、連鎖移動剤は使用しないのが普通であるが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて使用することは可能である。
【0079】
このような連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;トリブチルボランなどのボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペンなどのハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒドなどのアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ビネン、ターピノレンなどのテルペン類;などを挙げることができる。
【0080】
重合温度としては、一般に約30〜180℃、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜90℃の範囲である。
【0081】
なお、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、該単量体を除くために、メタノールなどによる再沈澱法で精製することも可能である。
【0082】
本発明の粘着剤組成物には、(A)成分100重量部に対して、(B)成分が0.01〜20重量部、(C)成分が1〜50重量部が含まれる。ここで、放射線硬化性アクリル系化合物(B)は、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物であれば特に限定されない。また、放射線硬化性アクリル系化合物(C)は、分子内に(メタ)アクリロイル基を3〜10個有する化合物であれば特に限定されないが、分子内に(メタ)アクリロイル基を3〜6個有する化合物であることが好ましい。
【0083】
このように、本発明の粘着剤組成物には、上記(B)成分および(C)成分が含まれるために、粘着剤組成物に放射線が照射されると、ラジカル連鎖反応が発生する。その結果、(A)成分と(B)成分もしくは(C)成分との間、または(B)成分と(C)成分との間において、架橋構造が形成され、非常に高い架橋密度を有する3次元ポリマー構造が構築される。かかる3次元ポリマー構造は、高温あるいは高温多湿の条件においても良好な引張強度を有するので、優れた耐久性発現に寄与する。
【0084】
また、後述する光安定剤の添加によっても、放射線による硬化反応中にラジカルが捕捉されにくく、優れた耐久性と耐光漏れ性とをバランス良く両立することができることから、下記配合条件(1)または(2)を満たすことが好ましい。
【0085】
配合条件(1):(A)成分100重量部に対して、(B)成分の配合量が0.01〜10重量部であり、前記(C)成分の配合量が1〜30重量部であり、(B)成分と(C)成分との合計配合量が3〜40重量部であり、かつ(C)成分の配合量が(B)成分の配合量よりも大きい。
【0086】
配合条件(2):前記(A)成分100重量部に対して、(B)成分の配合量が2〜20重量部で、前記(C)成分の配合量が3〜50重量部であり、かつ(B)成分と(C)成分との合計配合量が5〜60重量部であり、かつ(C)成分の配合量が(B)成分の配合量よりも大きい。
【0087】
さらに、上記配合条件(1)を満たす場合、(B)成分が下記一般式(2)で示される化合物((B1)成分)であり、かつ(C)成分が下記一般式(3)または一般式(4)で示される化合物((C1)成分、(C2)成分)であることが好ましい。
【0088】
本発明の粘着剤組成物が、配合条件(1)を満たし、かつ(B1)成分と(C1)成分または(C2)成分とを含む場合、光照射により粘着剤組成物に硬化反応(架橋反応)が生じると、下記の特殊な架橋構造が構築される。まず、(C1)成分および(C2)成分により、架橋度が高い、3次元の架橋構造が形成される。また、該架橋構造中には、(B1)成分に由来するビスフェノール構造(ハードセグメント)も含まれる。この3次元の架橋構造およびハードセグメントでは、分子運動の自由度(回転、振動など)が低くなるために、凝集力が向上し、被着体間の粘着剤組成物の引張強度が上昇する。
【0089】
また、該架橋構造中には、(B1)成分に由来するアルキレンオキサイド構造(ソフトセグメント)も含まれる。このソフトセグメントは、ハードセグメントに比べて、分子運動(回転、振動など)の自由度が高い。つまり、該架橋構造中のソフトセグメントにおいては、凝集力が低くなるので、粘着剤組成物―被着体間の濡れ性および硬化後の粘着剤組成物の柔軟性が改善される。
【0090】
さらに、(B2)成分と(C1)成分または(C2)成分との配合比率が、上記の配合条件(2)を満たすことによって、上述したような、強い引張強度と、柔軟性とが両立される。
【0091】
つまり、本発明の粘着剤組成物が、配合条件(1)を満たし、かつ(B1)成分と(C1)成分または(C2)成分を含む場合、高温高湿や高温の条件下であっても、外観変化(ハガレ、ウキ、発泡の発生)や接着力の変化の少ない優れた耐久性と、漏光面積やコントラストが極小化された良好な耐光漏れ性とが両立されるとともに、粘着剤組成物―被着体間の濡れ性が改善される。
【0092】
また、上記配合条件(1)を満たす本発明の粘着剤組成物において、(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは、0.01〜8重量部であり、より好ましくは、0.01〜6重量部である。また、本発明の粘着剤組成物において、(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、1〜30重量部であり、好ましくは、1〜25重量部であり、より好ましくは、1〜20重量部である。
【0093】
また、上記配合条件(1)を満たす本発明の粘着剤組成物における(B)成分と(C)成分との合計量は、(A)成分100重量部に対して、3〜40重量部であり、好ましくは、3〜35重量部であり、より好ましくは、5〜30重量部である。
【0094】
また、上記配合条件(1)を満たす本発明の粘着剤組成物における(C)成分の配合量は、(B)成分の配合量よりも大きく、(C)成分の配合量と(B)成分の配合量との量比((C)成分の配合量/(B)成分の配合量)は、3.5〜200が好ましく、4〜150がより好ましい。
【0095】
このように、(B)成分および(C)成分の配合量、(B)成分と(C)成分との合計量、(B)成分と(C)成分との量比を上記の範囲に設定することで、架橋後の粘着剤組成物に、光学部材の寸法変形に由来する応力を一時的に緩和できる適度な柔軟性とともに、応力を緩和した後、寸法変形を復元する強い引張強度を付与することができる。
【0096】
上記(B1)成分は、下記一般式(2)で示される。
【0098】
(上記一般式(2)中において、R
aは、水素または炭素数1〜5のアルキル基を示す。R
bは、炭素数2〜4のアルキル基を示す。R
cは、水素またはメチル基を示す。また、p、qは、それぞれ整数を示し、pとqとの合計が4〜12である。)
上記一般式(2)で示される化合物((B1)成分)としては、下記化学式にて示されるような、ビスフェノールAポリエチレングリコールジアクリレート(化学式
(17))
、ビスフェノールAポリプロピレングリコールジアクリレート(化学式
(19))等が挙げられ、これらは単独で、または組み合わせて使用できる。
【0100】
(上記化学式(17)〜(19)において、m、nは整数であり、かつ、m+n=4を満たす。)
上記(C1)成分、(C2)成分は、それぞれ下記一般式(3)、(4)で示される。
【0102】
(上記式(3)中、nは、1〜5の整数であり、aおよびbは整数を示し、aが3〜10の整数を示すとともに、a+b=2n+2を満足し、R
1は、水素またはメチル基を示し、R
2は、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
【0104】
(上記式(4)中、nは、1〜5の整数であり、aおよびbは整数を示し、aが3〜10の整数を示すとともに、a+b=2n+1を満足し、R
1は、水素またはメチル基を示し、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
上記一般式(3)中のR
2および一般式(4)中のR
2、R
3において、炭化水素基は、炭素原子と水素原子からなる官能基であれば特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0105】
上記一般式(3)中のR
2および一般式(4)中のR
2、R
3において、酸素含有官能基は、酸素原子を含む官能基である限り特に限定されないが、具体的には、カルボキシル基、水酸基、アルコール基、カルボニル基、キノン基、ラクトン基、エポキシ基、ケトン基、アクリル酸、ニトロ基、スルフォン基、リン酸等が挙げられ、更にこれらの基を有する化合物が縮合した無水物やエステル結合物及びアルカリ塩等が挙げられる。
【0106】
上記一般式(3)中のR
2および一般式(4)中のR
2、R
3において、窒素含有官能基は、窒素原子を含む官能基である限り特に限定されないが、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基及びピリジル基などが挙げられる。
【0107】
上記一般式(3)または一般式(4)で化合物としては、下記化学式で示されるような、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(化学式(20))、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(化学式(21))、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(化学式(22))、ペンタエリスリトールトリアクリレート(化学式(23))、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(化学式(24))、トリメチロールプロパンアクリレート(化学式(25))、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(化学式(26))、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(化学式(27))、トリメチロオールプロパンプロピレンオキサイドのアクリル酸エステル(化学式(28)、(29))、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンアクリレート(化学式(30))等が挙げられる。
【0110】
(上記化学式(26)および(27)中、R
2は、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
さらに、上記配合条件(2)を満たす場合、(B)成分が下記一般式(5)で示される化合物((B2)成分)であり、かつ(C)成分が上記一般式(6)または(C7)で示される化合物((C3)成分、(C4)成分)であることが好ましい。さらに好ましくは、ペンタエリスリトールとアクリル酸との反応により得られる多官能アクリレートとイソシアネート化合物との反応により得られる化合物である。
【0111】
このように、本発明の粘着剤組成物が、配合条件(2)を満たし、かつ(B2)成分と(C3)成分または(C4)成分とを含む場合、光照射により粘着剤組成物に硬化反応(架橋反応)が生じると、(C3)成分および(C4)成分により、高度な3次元の架橋構造が形成される。この架橋構造では、分子運動の自由度が低くなるために、凝集力が向上し、被着体間の粘着剤組成物の引張強度が上昇する。
【0112】
一方、該架橋構造中には、(B2)成分に由来するアルキレンオキサイド構造(ソフトセグメント)も含まれる。このソフトセグメントは、比較的、分子運動(回転、振動など)の自由度が高い。つまり、該架橋構造中のソフトセグメントにおいては、凝集力が低くなるので、粘着剤組成物―被着体間の濡れ性および硬化後の粘着剤組成物の柔軟性が改善される。
【0113】
さらには、(B2)成分と(C3)成分または(C4)成分との配合比率が、上記の配合条件(2)を満たすことによって、上述したような、強い引張強度と、柔軟性とが両立され、粘着剤組成物―被着体間の濡れ性が向上する。
【0114】
つまり、本発明の粘着剤組成物が、配合条件(2)を満たし、かつ(B2)成分と(C3)成分または(C4)成分を含む場合、高温高湿や高温の条件下であっても、外観変化(ハガレ、ウキ、発泡の発生)や接着力の変化の少ないといった優れた耐久性と、漏光面積やコントラストが極小化された良好な耐光漏れ性とが両立されるとともに、粘着剤組成物―被着体間の濡れ性が改善される。
【0115】
また、上記配合条件(2)を満たす本発明の粘着剤組成物において、(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、2〜20重量部であり、好ましくは、2〜18重量部であり、より好ましくは、2〜16重量部である。また、本発明の粘着剤組成物において、(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、3〜50重量部であり、好ましくは、3〜40重量部であり、より好ましくは、3〜30重量部である。
【0116】
また、上記配合条件(2)を満たす本発明の粘着剤組成物における(B)成分と(C)成分との合計量は、(A)成分100重量部に対して、5〜60重量部であり、好ましくは、5〜50重量部であり、より好ましくは、5〜40重量部である。
【0117】
また、上記配合条件(2)を満たす本発明の粘着剤組成物における(C)成分の配合量は、(B)成分の配合量よりも大きく、(C)成分の配合量と(B)成分の配合量との量比((C)成分の配合量/(B)成分の配合量)が、3.5〜200であることが好ましく、4〜150であることがより好ましい。
【0118】
このように、(B)成分および(C)成分の配合量、(B)成分と(C)成分との合計量、(B)成分と(C)成分との量比を上記の範囲に設定することで、架橋後の粘着剤組成物に、光学部材の寸法変形に由来する応力を一時的に緩和できる適度な柔軟性とともに、応力を緩和した後、寸法変形を復元する強い引張強度を付与することができる。
【0119】
上記(B2)成分は、下記一般式(5)で示される。
【0121】
(式(5)中、n1,n2はそれぞれ独立して0〜10の整数を示す。R
1、R
2はそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。Xは、炭素数1〜20の直鎖型または分岐型の2価のアルキル基、炭素数3〜20の直鎖型または分岐型の2価のシクロアルキル基、下記一般式(i)で示されるアルコキシル基または下記一般式(ii)で示されるジフェニルアルキル基を示す。)
【0123】
(式(i)中、nは1〜20の整数、mは1〜10の整数を示す。)
【0125】
(式(ii)中、nは、1〜20の整数を示し、Arは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
上記式(5)中のXが、炭素数1〜20の直鎖型または分岐型の2価のアルキル基である場合、該アルキル基の炭素数は、1〜16が好ましく、1〜12がより好ましい。なお、該アルキル基は、直鎖型であっても、分岐型であってもよい。
【0126】
具体的には、下記化学式(31)で示されるようなネオペンチルグリコールジアクリレートや下記化学式(32)で示されるような1,9ノナンジオールジアクリレート等が挙げられる。
【0128】
上記式(5)中のXが、炭素数3〜20の直鎖型または分岐型の2価のシクロアルキル基である場合、該アルキル基の炭素数は、3〜18が好ましく、3〜14がより好ましい。なお、該シクロアルキル基は、直鎖型であっても、分岐型であってもよい。
【0129】
具体的には、下記化学式(33)で示されるようなジメチロールトリシクロデカンジアクリレート等が挙げられる。
【0131】
上記式(5)中のXが、上記式(i)で示されるアルコキシル基である場合、該アルキル基中のnは好ましくは1〜14、より好ましくは、1〜10の整数、mは好ましくは1〜8、より好ましくは、1〜6の整数を示す。
【0132】
具体的には、下記化学式(34)で示されるようなポリプロピレングリコールジアクリレート、下記化学式(35)で示されるようなポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0134】
上記式(5)中のXが、上記一般式(ii)で示されるジフェニルアルキル基である場合、ジフェニルアルキル基中のnは、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0135】
具体的には、下記化学式(36)で示されるようなビスフェノールAポリエチレングリコールジアクリレート、下記構造式(37)で示されるようなα−フェニル−ω−アクリロイルオキシポリオキシエチレンホルムアルデヒド重縮合物が挙げられ、これらは単独で、または組み合わせて使用できる。
【0137】
(上記式(36)および(37)において、m、nはそれぞれ整数であり、かつ、m+n=4を満足する。)
上記(C3)成分、(C4)成分は、それぞれ、下記一般式(6)、(7)で示される。
【0139】
(上記式(6)中、nは、1〜5の整数であり、aおよびbは整数を示し、aが3〜10の整数を示すとともに、a+b=2n+2を満足し、R
1は、水素またはメチル基を示し、R
2は、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
【0141】
(上記式(7)中、nは、1〜5の整数であり、aおよびbは整数を示し、aが3〜10の整数を示すとともに、a+b=2n+1を満足し、R
1は、水素またはメチル基を示し、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有しても良い炭化水素基、置換基を有しても良い酸素含有官能基、置換基を有しても良い窒素含有官能基を示す。)
上記一般式(6)中のR
2および一般式(7)中のR
2、R
3において、炭化水素基は、炭素原子と水素原子からなる官能基であれば特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0142】
上記一般式(6)中のR
2および一般式(7)中のR
2、R
3において、炭化水素基は、炭素原子と水素原子からなる官能基であれば特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0143】
上記一般式(6)中のR
2および一般式(7)中のR
2、R
3において、酸素含有官能基は、酸素原子を含む官能基である限り特に限定されないが、具体的には、カルボキシル基、水酸基、アルコール基、カルボニル基、キノン基、ラクトン基、エポキシ基、ケトン基、アクリル酸、ニトロ基、スルフォン基、リン酸等が挙げられ、更にこれらの基を有する化合物が縮合した無水物やエステル結合物及びアルカリ塩等が挙げられる。
【0144】
上記一般式(6)中のR
2および一般式(7)中のR
2、R
3において、窒素含有官能基は、窒素原子を含む官能基である限り特に限定されないが、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基及びピリジル基などが挙げられる。
【0145】
具体的な(C3)成分、(C4)成分としては、下記化学式(38)に示されるようなジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル、下記構造式(39)に示されるようなペンタエリスリトールエチレンオキサイドのアクリル酸エステル、下記構造式(40)に示されるようなトリメチロールプロパンエチレンオキサイドのアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0147】
(上記式(39)中、aは、1〜4の整数、a+b=4を満たす。)
【0149】
(上記式(40)中、aは、m=1、a=3、b=0またはm=3、a=1,b=2を満たす。)
本発明の粘着剤組成物には、紫外線等の放射線により該粘着剤組成物を硬化するために、(A)成分100重量部に対して、水素引抜型光重合性開始剤(D) 0.1〜10重量部が含まれる。
【0150】
(D)成分としては、例えば、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン−1等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン,N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等のケトン類、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン等のチオキサンソン類、ビスアシルホスフィンオキサイド、ベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン酸化物、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、カンファン−2,3−ジオン、フェナントレンキノン等のキノン類などが挙げられ、これらは単独で、または組み合わせて使用できる。
【0151】
また、本発明の粘着剤組成物における(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.1〜8重量部であり、より好ましくは、0.1〜6である。
【0152】
本発明の粘着剤組成物には、分子内にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート系架橋剤(E) 0.01〜10重量部が含まれる。
【0153】
また、イソシアネート系架橋剤(E)としては、常温又は加熱下で(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基と架橋し得るイソシアネート基を、分子内に2個以上有するイソシアネート系架橋剤であれば特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーや、それらをトリメチロールプロパンなどの2価以上のアルコール化合物等に付加反応させたイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物等が挙げられる。
【0154】
また、公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどにイソシアネート化合物を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等も挙げられる。
【0155】
また、本発明の粘着剤組成物における(E)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.1〜8重量部であり、より好ましくは、0.1〜6重量部である。このような範囲で含まれることにより、粘着剤組成物を架橋した後のゲル分率を調節しやすくなる。
【0156】
上記光安定剤(F)は、光学部材あるいは光学部材と被着体とを、本発明の粘着剤組成物で接着させた際に、バックライト装置等からの光により生じるラジカルを捕捉する機能を有する化合物であり、下記一般式(1)に示されるピペリジル環を有する化合物である。
【0158】
(上記式(1)中、R
1、R
2は、それぞれ独立して、直接結合、2価の炭化水素基、2価の窒素含有官能基、2価の酸素含有官能基を示す。)
ここで、2価の炭化水素基とは、2つの結合手を有する炭化水素であれば特に限定されず、不飽和炭化水素であっても飽和炭化水素であってもよい。2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、およびこれらが結合してなる基が挙げられ、この中でも、炭素数1〜20のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましい。
【0159】
2価の窒素含有官能基とは、2つの結合手を有し、かつ窒素を含む官能基であれば特に限定されず、例えば、―NH−、―N(R)−等で示される官能基が挙げられる(ここで、Rは、置換型または無置換型の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基を示す。)。
【0160】
2価の酸素含有官能基とは、2つの結合手を有する酸素を含む官能基であれば特に限定されず、例えば、―O−、―O(R)−、−OC(O)−等で示される官能基が挙げられる(ここで、Rは、置換型または無置換型の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基を示す。)
上記一般式(1)中で、R
2が2価の窒素含有官能基である光安定剤(F)は、例えば、日本チバ・ジャパン株式会社製のTINUVIN 111FDL(商品名)、TINUVIN 152(商品名)、CHIMASSORB 119FL(商品名)、CHIMASSORB 2020FL(商品名)、CHIMASSORB 944FL(商品名)として市販されている。
【0161】
また、光安定剤(F)として、放射線照射による硬化反応中ではラジカルを捕捉しにくく、貼着時では遅延ラジカル捕捉効果を発揮するという観点から、下記一般式(8)または(9)で示される化合物が好ましい。
【0163】
(上記式(8)および(9)中、R
aは、H,OH基、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基を示す。R
b、R
cは、それぞれ独立して、直接結合、2価の炭化水素基、2価の窒素含有官能基、2価の酸素含有官能基を示す。R
dは、直接結合、2価の炭化水素基を示す。R
eは、H、置換または無置換のアルキル基、下記一般式(iii)または(iv)で示されるピペリジン環を示す。また、nは1〜7の整数を示す。)
【0165】
(上記式(iii)および(iv)中、R
fは、直接結合、2価の炭化水素基、2価の窒素含有官能基、2価の酸素含有官能基を、R
gは、H、OH、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基を示す。)
また、上記一般式(8)および(9)における「2価の炭化水素基」、「2価の窒素含有官能基」、「2価の酸素含有官能基」は、それぞれ、上記一般式(7)および(9)における「2価の炭化水素基」、「2価の窒素含有官能基」、「2価の酸素含有官能基」と同一の定義内容を示す。
【0166】
また、入手しやすく、合成コストが安いとともに、放射線による硬化反応の阻害が極めて少なく、高い耐光老化性を付与できるという観点から、上記式(7)および(8)で示される光安定剤(F)は、下記化学式15〜20で示される化合物であることが好ましい。また、本発明の粘着剤組成物において、光安定剤(F)として、下記化学式10〜16で示される化合物(化合物10〜16)を単独で使用してもよく、2種類以上で併用してもよい。
【0167】
なお、下記化学式10〜16で示される化合物は市販されており、市販品としては、例えば、TINUVIN 292(化合物10と化合物11との混合体)、TINUVIN 765(化合物10と化合物11との混合体)、TINUVIN 770DF(化合物12)、TINUVIN 123(化合物13)、TINUVIN 144(化合物14)、TINUVIN 622LD(化合物20)、TINUVIN 111FDL(化合物21)、SANOL LS−2626が挙げられる。
【0169】
メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジスセバケート、Mw:370
【0171】
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量 509)
【0173】
デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル(分子量 737)
【0175】
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル―4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(分子量 685)
【0177】
コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(分子量 3100〜4000)
【0179】
コハク酸ジメチル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物
【0181】
1−[2−[3−(3,5−ジ―t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ―t−ブチル―4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(分子量722.1)
また、粘着剤組成物への分散性および相溶性が良好であるという観点から、光安定剤(F)の分子量が、5000未満であることが好ましく、200〜4000であることがより好ましく、200〜2000であることがさらに好ましい。
【0182】
また、(A)成分の分子中のカルボキシル基とカップリング反応して、本発明の粘着剤組成物の濡れ性を調整して高温高湿下での耐久性を改善できる点から、本発明の粘着剤組成物には、(A)成分100重量部に対して、カルボキシル基と反応性を有する有機官能基を有するシラン化合物(G) 0.01〜3重量部が含まれていることが好ましい。ここで、(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子中のカルボキシル基と反応(カップリング)し得る有機官能基としては、例えばエポキシ基、アミノ基、ビニル基、オキサゾリン基などが挙げられる。
【0183】
(G)成分の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0184】
また、本発明の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物における(G)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0.01〜3重量部であり、好ましくは、0.01〜2重量部であり、より好ましくは、0.01〜1.5重量部である。このような範囲で含まれることにより、粘着剤組成物を架橋した後のゲル分率を調節しやすくなる。
【0185】
また、本発明の光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物のゲル分率は、好ましくは80〜99%である。上記範囲のゲル分率であれば、耐久性改善に必要な高い引張強度を付与することができる。
【0186】
なお、上記ゲル分率は、粘着剤組成物0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量を測定し、次式[I]により求めることができる。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/粘着剤採取重量)×100・・・・[I]
本発明の粘着型光学部材は、上述した光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層が、光学部材の片面あるいは両面に形成されてなる。
【0187】
ここで、光学部材とは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種画像表示装置に用いられ、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、光学補償フィルム等の光学フィルムや、偏光板、位相差板、輝度向上板、楕円偏光板、反射防止板、光拡散板、防眩板、帯電防止板、光学補償板等の光学板が挙げられる。
【0188】
また、粘着型光学部材は、光学部材上の片面あるいは両面に、上記光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物を、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等により塗布し、光学部材上に塗布された粘着剤組成物を、放射線照射に曝し、常温または加熱により乾燥および架橋することで製造されてもよく、また粘着剤層を剥離フィルム上に設け、これを上記光学部材に転写した後に、放射線照射や、乾燥および架橋することで製造されてもよい。
【0189】
ここで、放射線としては、例えば、紫外線、可視光線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線などがあげられるが、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。なお、紫外線の光源としては、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプなどが挙げられる。
【0190】
また、紫外線の照射時間は、塗布された粘着剤組成物の厚さによっても異なるが、通常は10秒〜5分間、好ましくは10秒〜3分間である。
【0191】
また、粘着型光学部材の使用前に、粘着剤層を保護するために、粘着剤層の上面に剥離フィルムを積層しておいてもよい。
【0192】
なお、粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、通常は1〜500μm、好ましくは5〜300μm程度である。
【実施例】
【0193】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0194】
(1)光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物の原料
各実施例および各比較例の粘着型偏光フィルムに使用した光学部材用放射線硬化型粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」と称する。)を構成する各成分は下記の通りであり、成分比率は表1に示す。なお、表中、数値は固形分(不揮発分)換算の重量部を示す。
【0195】
(A)アクリル系ポリマーAの構成モノマー成分
(a1) n−ブチルアクリレート(BA)
(a2) アクリル酸(AA)
(a3) 2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
(B)放射線硬化性アクリル系化合物((メタ)アクリル基2個/1分子)
(B1) KAYARAD R−551(ビスフェノールAポリエチレングリコールジアクリレート;日本化薬株式会社製、化学式(41))
(B2) BP−4PA(ビスフェノールAポリプロピレングリコールジアクリレート、共栄社化学株式会社製、化学式(42))
(B3)KAYARAD R−712(α−フェニル−ω−アクリロイルオキシポリオキシエチレンホルムアルデヒド重縮合物、化学式(43))
(B4) KAYARAD NPGDA(ネオペンチルグリコールジアクリレート、日本化薬株式会社製、化学式(44))
【0196】
【化40】
【0197】
(上記式(41)中、m+n=4である。)
【0198】
【化41】
【0199】
(上記式(42)中、m+n=4である。)
【0200】
【化42】
【0201】
(上記式(43)中、m+n=4である。)
【0202】
【化43】
【0203】
(C)放射線硬化性アクリル系化合物((メタ)アクリル基3〜10個/1分子)
(C1) UA−306T(ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンポリマー;共栄社化学株式会社製、化学式(45))
(C2) KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;日本化薬株式会社製、化学式(46))
(C3) EBECRYL140(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート;ダイセル・ユーシービー株式会社製、化学式(47))
(C4) KAYARAD DPCA−60(ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル;日本化薬株式会社製、化学式(48))
(C5) KAYARAD THE−330(トリメチロールプロパンエチレンオキサイドのアクリル酸エステル;日本化薬株式会社製、化学式(49))
【0204】
【化44】
【0205】
【化45】
【0206】
【化46】
【0207】
【化47】
【0208】
【化48】
【0209】
(上記式(49)中、m=1、a=3およびb=0であるか、またはm=3、a=1およびb=2である。)
(D)水素引抜型光重合性開始剤
(D1) IRGACURE 500(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルーフェニルケトン:ベンゾフェノン=1:1(モル比)、チバ・ジャパン株式会社製)
(E)イソシアネート系架橋剤(イソシアネート基2個以上/1分子)
(E1) コロネートL(ポリイソシアネート化合物;日本ポリウレタン工業株式会社製)
(F)光安定剤
(F1)TINUVIN292(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート:メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート=70〜80%:20〜30%(重量%)、日本チバ・ジャパン株式会社製、化学式(50)、(51))
(F2)TINUVIN144(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、日本チバ・ジャパン株式会社製、化学式(52))
(F3)TINUVIN622LD(コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン重縮合物、日本チバ・ジャパン株式会社製、化学式(53))
(f1)MEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル、化学式(54))
(f2)IRGANOX1010(ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、日本チバ・ジャパン株式会社製、化学式(55))
【0210】
【化49】
【0211】
(上記式(52)中、nは10〜14の整数である。)
【0212】
【化50】
【0213】
(G)シラン化合物(カルボキシル基と反応性を有する有機官能基を有する。)
(G1)KBM−403(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業(株)製)。
【0214】
(2)アクリル系ポリマー溶液Aの製造
ブチルアクリレート(BA)281.4重量部、アクリル酸(AA)18重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)0.6重量部および酢酸エチル300重量部を、攪拌機、管流冷却器、温度系および窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、さらにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を該反応容器に加え、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
【0215】
次いで、窒素雰囲気中で攪拌しながら、この反応容器を60℃に昇温させ、4時間反応させて、アクリル系ポリマーAを合成した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、アクリル系ポリマーA溶液(アクリル系ポリマー濃度:40質量%)を得た。得られたアクリル系ポリマーAの重量平均分子量は150万で、ガラス転移点は−33℃あった。なお、アクリル系ポリマーAの重量平均分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められたものである。
【0216】
(3)実施例および比較例
[実施例1]
表1で示されるように、アクリル系ポリマー溶液Aに含まれるアクリル系ポリマーA 100重量部に対して、KAYARAD R−551 1重量部、UA−306T 10重量部、IRGACURE500 4重量部、TINUVIN292 1重量部、コロネートL 0.5重量部および、KBM−403 0.4重量部を添加し、これを混合して、粘着剤組成物1を得た。
【0217】
得られた粘着剤組成物1を、剥離処理したポリエステルフィルム(PET3811、リンテック社製)上に塗工して粘着剤層を形成し、さらに乾燥炉内で80℃、2分間乾燥させて、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmである粘着シート1を得た。
【0218】
得られた粘着シート1を偏光フィルム(ポリビニルアルコール製)の片面に張り付け、コンベア付UV照射器(光源:高圧水銀ランプ)にてランプ出力160W、照射距離10cmにて、積算光量が200mJ/cm
2になるように、コンベア速度の調整を行いながら、粘着シート1の粘着剤層側からUV照射を行った。UV照射の後に、この粘着シート1が貼着された偏光フィルムを、23℃/湿度50%RH(相対湿度)の暗所にて、7日間熟成させて、粘着型偏光フィルム1を得た。
【0219】
次いで、下記の「(4)各物性評価の評価条件および基準」に準拠して、粘着型偏光フィルム1の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0220】
[実施例2]
KAYARAD R−551の配合量を1重量部から5重量部に変更し、UA−306T 10重量部をKAYARAD DPHA 20重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様に調製して、粘着剤組成物2および粘着型偏光フィルム2を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム2の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0221】
[実施例3]
KAYARAD R−551をBP−4PAに、UA−306TをEBECRYL140にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に調製して、粘着剤組成物3および粘着型偏光フィルム3を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム3の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0222】
[実施例4]
IRGACURE500の配合量を4重量部から6重量部に変更したこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物4および粘着型偏光フィルム4を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム4の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0223】
[実施例5]
コロネートLの配合量を0.5重量部から6.0重量部に変更したこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物5および粘着型偏光フィルム5を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム5の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0224】
[実施例6]
KBM−403の配合量を0.4重量部から1.0重量部に変更したこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物6および粘着型偏光フィルム6を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム6の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0225】
[実施例7]
TINUVIN292をTINUVIN144に変更したこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物7および粘着型偏光フィルム7を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム7の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0226】
[実施例8]
TINUVIN292をTINUVIN622LDに変更したこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物8および粘着型偏光フィルム8を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム8の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0227】
[実施例9]
KBM−403を含まないこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物9および粘着型偏光フィルム9を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム9の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0228】
[実施例10]
KAYARAD R−551 1重量部をKAYARAD R−712 10重量部に、UA−306T 10重量部をDPCA−60 20重量部に、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に調製して、粘着剤組成物10および粘着型偏光フィルム10を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム10の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0229】
[実施例11]
KAYARAD R−712をNPGDAに変更したこと以外は、実施例10と同様に調製して、粘着剤組成物11および粘着型偏光フィルム11を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム11の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0230】
[実施例12]
DPCA−60をTHE−330に、変更したこと以外は、実施例10と同様に調製して、粘着剤組成物12および粘着型偏光フィルム12を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム12の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0231】
[実施例13]
KAYARAD R−712をNPGDAに、DPCA−60をTHE−330に、それぞれ変更したこと以外は、実施例10と同様に調製して、粘着剤組成物13および粘着型偏光フィルム13を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム13の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0232】
[実施例14]
KBM−403を含まないこと以外は、実施例10と同様に調製して、粘着剤組成物14および粘着型偏光フィルム14を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム14の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0233】
[比較例1]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例1と同様に調製して、粘着剤組成物15および粘着型偏光フィルム15を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム15の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0234】
[比較例2]
TINUVIN292およびKBM−403を含まないこと以外は、実施例1と同様に調製して、粘着剤組成物16および粘着型偏光フィルム16を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム16の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0235】
[比較例3]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例2と同様に調製して、粘着剤組成物17および粘着型偏光フィルム17を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム17の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0236】
[比較例4]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物18および粘着型偏光フィルム18を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム18の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0237】
[比較例5]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例4と同様に調製して、粘着剤組成物19および粘着型偏光フィルム19を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム19の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0238】
[比較例6]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例5と同様に調製して、粘着剤組成物20および粘着型偏光フィルム20を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム20の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0239】
[比較例7]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例6と同様に調製して、粘着剤組成物21および粘着型偏光フィルム21を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム21の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0240】
[比較例8]
TINUVIN292をMEHQに変更したこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物22および粘着型偏光フィルム22を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム22の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0241】
[比較例9]
TINUVIN292をIRGANOX1010に変更したこと以外は、実施例3と同様に調製して、粘着剤組成物22および粘着型偏光フィルム22を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム22の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0242】
[比較例10]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例10と同様に調製して、粘着剤組成物24および粘着型偏光フィルム24を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム24の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0243】
[比較例11]
TINUVIN292およびKBM−403を含まないこと以外は、実施例10と同様に調製して、粘着剤組成物25および粘着型偏光フィルム25を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム25の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0244】
[比較例12]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例11と同様に調製して、粘着剤組成物26および粘着型偏光フィルム26を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム26の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0245】
[比較例13]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例12と同様に調製して、粘着剤組成物27および粘着型偏光フィルム27を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム27の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0246】
[比較例14]
TINUVIN292を含まないこと以外は、実施例13と同様に調製して、粘着剤組成物28および粘着型偏光フィルム28を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム28の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0247】
[比較例15]
TINUVIN292をMEHQに変更したこと以外は、実施例10と同様に調製して、粘着剤組成物29および粘着型偏光フィルム29を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム29の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0248】
[比較例16]
TINUVIN292をIRGANOX1010に変更したこと以外は、実施例10と同様に調製して、粘着剤組成物30および粘着型偏光フィルム30を得た。また、実施例1と同様にして、得られた粘着型偏光フィルム30の各物性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0249】
【表1】
【0250】
(4)各物性評価の評価条件および基準
<耐光漏れ試験>
(評価方法)
19インチサイズの液晶パネルに、粘着型偏光フィルム(310×385mm)を、クロスニコルになるように貼り付け、60℃、95%RH(相対湿度)の雰囲気下で240時間、さらに、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で2時間放置した後、色温度5000Kのライトボックスに入れ、目視およびデジタルカメラにより液晶パネルに貼着された粘着型偏光フィルムの光漏れの状態を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:全く光漏れが見られない。
○:ほとんど光漏れがない。
△:若干の光漏れがあることが分かる。
×:明らかに光漏れがあることが分かる。
【0251】
<耐久性試験(85℃)>
(評価方法)
19インチサイズの無アルカリ処理ガラスに、粘着型偏光フィルム(310×385mm)を、貼り合わせて、85℃の雰囲気下で240時間、さらに、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で2時間放置した。その後、粘着型偏光フィルムが張り合わされた無アルカリ処理ガラスを室内に取り出し、目視により粘着型偏光フィルムの発泡等の外観変化を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:全く発泡などの外観変化がない。
○:ほとんど発泡などの外観変化がない。
△:若干、発泡などの外観変化があることが分かる。
×:明らかに、発泡などの外観変化があることが分かる。
【0252】
<耐久性試験(60℃/95%RH(相対湿度)>
(評価方法)
19インチサイズの無アルカリ処理ガラスに、粘着型偏光フィルム(310×385mm)を、貼り合わせて、60℃、95%RH(相対湿度)の雰囲気下で240時間、さらに、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で2時間放置した。その後、粘着型偏光フィルムが張り合わされた無アルカリ処理ガラスを室内に取り出し、目視により粘着型偏光フィルムの剥がれ、発泡等の外観変化を観察し、以下の4段階の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:全く剥がれ、発泡などの外観変化がない。
○:ほとんど剥がれ、発泡などの外観変化がない。
△:若干、剥がれ、発泡などの外観変化があることが分かる。
×:明らかに、剥がれ、発泡などの外観変化があることが分かる。
【0253】
<光老化性試験>
粘着型偏光フィルムの粘着剤面を、23℃/50%RH(相対湿度)の条件下で、室内用蛍光灯(色温度:6500K、照度:3000ルクス、波長:250nm〜530nm)に2週間露光させて、粘着型偏光フィルム(露光後)を得た。
上記条件で露光させる前の粘着型偏光フィルム(粘着型偏光フィルム(露光前))と、粘着型偏光フィルム(露光後)について以下の評価試験を実施した。
【0254】
(i)ゲル分率の変化
粘着型偏光フィルムから粘着剤組成物0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした。その後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量を測定し、次式[I]により求めた。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/粘着剤採取重量)×100・・・・[I]
(ii)対ガラス粘着力の変化
無アルカリ処理のガラス板(90×130mm)に、粘着型偏光フィルム(長さ:75mm×幅:25mm)を貼り合わせ、2kgのローラーで3往復圧着させた。その後、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で2時間放置し、90°剥離(剥離速度:300mm/min)にて対ガラス粘着力(単位;N/25mm)を測定した。同一の粘着型偏光フィルム2枚について本測定を実施し、得られた2つの測定値の平均値を、粘着型偏光フィルムの対ガラス粘着力とした。
【0255】
【表2】
【0256】
粘着型偏光フィルム1〜14は、特定の構造(上記一般式(1))を有する光安定剤を含む粘着剤組成物(粘着剤組成物1〜14)を使用して製造されたものである(表1)。そして、表2から明らかなように、粘着型偏光フィルム1〜15では、光漏れが少なく、高温条件(85℃)および高温多湿条件(60℃/95%RH)においての外観変化が小さい。また、これらの粘着型偏光フィルムでは、光老化性試験にて蛍光灯により露光させた後であっても、その前後でのゲル分率の変化がきわめて小さいことから、架橋反応があまり進行していないことが分かる。さらに、上記の露光前後で、粘着型偏光フィルム1〜14では、耐ガラス粘着力の変化がきわめて小さい。
【0257】
このように、粘着型偏光フィルム1〜14では、優れた耐光漏れ性や耐久性(高温条件、高温多湿条件)が示されるとともに、露光させた後でも、架橋反応の進行が低減され、露光前後での粘着力の変化が殆どないことから、優れた耐光老化性が発揮されることが確認された。
【0258】
一方、粘着型偏光フィルム15〜21、24〜28は、光安定剤を含まない粘着剤組成物(粘着剤組成物15〜21、24〜28)を使用して製造されたものである(表1)。表2から明らかなように、これらの粘着型偏光フィルムでは、光漏れが少ないことと、高温条件(85℃)および高温多湿条件(60℃/95%RH)においての外観変化が小さいことが分かる。すなわち、これらの粘着型偏光フィルムは、優れた耐光漏れ性や耐久性(高温条件、高温多湿条件)を発揮できることが確認された。
【0259】
しかしながら、粘着型偏光フィルム15〜21、24〜28では、粘着型偏光フィルム1〜14の場合と比べて、光老化性試験において、露光前後で、ゲル分率の変化がきわめて大きく、架橋反応が進行してしまっている。また、露光前後での耐ガラス粘着力の変化も大きく、経時的に粘着力が著しく低下してしまった。つまり、粘着型偏光フィルム15〜21、24〜28では、優れた耐光漏れ性や耐久性(高温条件、高温多湿条件)が示されるものの、粘着型偏光フィルム1〜14の場合と比べて、耐光老化性が劣っていることが確認された。この原因としては、粘着剤組成物に光安定剤が含まれていないために、残存する光重合開始剤からラジカルが生じ、粘着剤組成物中に架橋反応が進行したためと考えられる。
【0260】
さらに、粘着型偏光フィルム22〜23、29〜30は、特定の構造(上記一般式(1))を有しない光安定剤を含む粘着剤組成物(粘着剤組成物22〜23、29〜30)を使用して製造されたものである(表1)。
【0261】
表2から明らかなように、粘着型偏光フィルム22〜23、29〜30では、光老化性試験において、露光前後で、ゲル分率の変化は比較的小さいものの、耐光漏れ性および耐久性が発揮されなかった。
【0262】
また、これらの粘着型偏光フィルムでは、他の粘着型偏光フィルムと比較して、露光前のゲル分率が著しく低いことが確認された。このことは、粘着型偏光フィルムの製造工程において、UV照射の際に、粘着剤組成物22〜23、29〜30では、UV照射により生じたラジカルが、光安定化剤に過度に捕捉され、架橋反応が著しく阻害され、高度な架橋構造が構築されなかったと考えられる。そのために、これらの粘着剤組成物を使用した粘着型偏光フィルムでは、十分な耐光漏れ性および耐久性が発揮されなかったと考えられる。