特許第5715972号(P5715972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715972
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】固形石鹸
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20150423BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20150423BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20150423BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20150423BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20150423BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20150423BHJP
   C11D 9/18 20060101ALI20150423BHJP
   C11D 9/08 20060101ALI20150423BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20150423BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20150423BHJP
   C11D 9/26 20060101ALI20150423BHJP
   C11D 17/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   A61K8/36
   A61K8/29
   A61K8/86
   A61K8/44
   A61K8/39
   A61Q19/10
   C11D9/18
   C11D9/08
   C11D1/90
   C11D1/72
   C11D9/26
   C11D17/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-16771(P2012-16771)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-155132(P2013-155132A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2013年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】593170702
【氏名又は名称】株式会社ピーアンドピーエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 吉信
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌人
(72)【発明者】
【氏名】仁科 哲夫
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−181137(JP,A)
【文献】 特開平08−104897(JP,A)
【文献】 特開昭62−228006(JP,A)
【文献】 特表2007−538077(JP,A)
【文献】 特開2002−256296(JP,A)
【文献】 特開平07−062388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
C11D 1/00− 17/08
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸石鹸を20〜70質量%と、
疎水化処理粉体を0.1〜3質量%と、
PEG1540またはPEG1500と、
アルキルベタイン型両性界面活性剤を必須とする1または2種以上の両性界面活性剤と、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤を必須とする1または2種以上の非イオン性界面活性剤とを含むことを特徴とする固形石鹸。
【請求項2】
請求項1記載の固形石鹸において、疎水化処理粉体は脂肪酸処理粉体ないし脂肪酸石鹸処理粉体であることを特徴とする固形石鹸。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の固形石鹸において、ポリエチレングリコールは2〜15質量%配合されることを特徴とする固形石鹸。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の固形石鹸において両性界面活性剤は、1〜15質量%配合されることを特徴とする固形石鹸。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の固形石鹸において、非イオン性界面活性剤は、1〜15質量%配合されることを特徴とする固形石鹸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形石鹸、特に粉体を配合した脂肪酸石鹸を主成分とする固形石鹸の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な固形石鹸は、脂肪酸石鹸を基剤とし、必要に応じてショ糖、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールなどの糖類またはポリオール類を添加、枠ねり法あるいは機械ねり法により製造しているのが通例である。
【0003】
このような固形石鹸にも各種機能が要求されており、例えば二酸化チタンなどの粉体を紫外線防御、ないし肌上への残存に伴う化粧効果を期待して配合する場合もある。
しかしながら、石鹸は肌上の皮脂を除去するため、ともすると洗浄中、あるいは洗浄後に「きしみ感」を生じ、この傾向は二酸化チタン等の粉体の配合に伴い顕著になる。
このため、日常的に使われる石鹸に各種機能を付与する粉体の配合が要望されているにもかかわらず、必要量の粉体を配合することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−40818
【特許文献2】特表2007−538077
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は脂肪酸石鹸に粉体を配合した場合にも、きしみ感を生じることのない固形石鹸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明者らは、脂肪酸石鹸を主成分とする固形石鹸に対し、疎水化処理粉体、特定分子量のポリエチレングリコール、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を配合することにより、使用感の優れた改善効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る固形石鹸は、脂肪酸石鹸を20〜70質量%と、疎水化処理粉体を0.1〜3質量%と、PEG1540またはPEG1500と、アルキルベタイン型両性界面活性剤と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤とを含むことを特徴とする。
なお、疎水化処理粉体は、脂肪酸処理粉体ないし脂肪酸石鹸処理粉体が好適である。
また、前記固形石鹸において、ポリエチレングリコールは2〜15質量%配合されることが好適である。
【0008】
また、前記固形石鹸において、両性界面活性剤はアルキルベタイン型両性界面活性剤であり、1〜15量%配合されることが好適である。
また、前記非イオン性界面活性剤はポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤であり、1〜15質量%配合されることが好適である。

以下、本発明の構成について詳述する。
【0009】
[脂肪酸石鹸部]
本発明の石鹸で使用される、脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩における脂肪酸としては、炭素原子数が好ましくは8〜20、より好ましくは12〜18の、飽和または不飽和の脂肪酸であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等が挙げられる。
【0010】
脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム/カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム/カリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム/カリウム等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記の脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の中でも、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウムが好適に使用できる。
【0011】
本発明の石鹸における、脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の含有量は、透明石鹸の場合、20〜70質量%であることが好ましい。この含有量が20質量%未満であると、洗浄能が低下したり、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。逆に、70質量%を超えると、使用後につっぱり感が生じるおそれがある。
【0012】
また、脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩においては、その塩を構成するナトリウムとカリウムとのモル比(ナトリウム/カリウム比)が、100/0〜70/30、特に100/0〜80/20であることが好ましい。このナトリウム/カリウム比が70/30を超えてカリウムの割合が多くなると、十分な凝固点が得られず、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなったり、高温多湿の条件下で発汗が生じたり、使用途中に表面が白濁化するおそれがある。
【0013】
[疎水化処理粉体]
本発明において好適に配合される疎水化処理粉体は、特に限定はされないが、基粉体としては二酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ等が挙げられ、また疎水化処理としては脂肪酸処理、脂肪酸石鹸処理が特に有効である。これらの二酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカは未処理の状態ではむしろ「きしみ感」を増大する傾向にあるが、疎水化処理を行うことにより粉体配合によるきしみ感増大を抑制するのみならず、脂肪酸石鹸が本来的に有する「きしみ感」をむしろ改善することができる。
疎水化処理粉体の配合量は、0.1〜3質量%、特に0.5〜2質量%が好適である。疎水化処理粉体量が0.1質量%未満では「きしみ感」改善効果が少なく、また3質量%を超えても「きしみ感」改善効果が向上せず、また石鹸がもろくなるなどの製造上の問題を生じる場合もある。
【0014】
[ポリエチレングリコール]
本発明において、ポリエチレングリコールとしてはPEG1000〜PEG4000(数平均分子量3400)の比較的高分子の常温で固体ないしワックス状のものが好ましい。数平均分子量が1000未満となると、本発明の主目的である「きしみ感」の改善効果に乏しくなり、また数平均分子量が3400を超えると曳糸性が強くなり、石鹸としての使用に違和感を感じる場合がある。PEG1000〜PEG4000の配合量としては、2〜15質量%が好ましい。2質量%未満となると、きしみ改善効果が不十分となり、また15質量を超えると泡立ちが悪化する場合がある。
[両性界面活性剤]
本発明にかかる固形石鹸は、以下の両性界面活性剤を含むことが好適である。
【0015】
本発明の固形石鹸で使用され得る両性界面活性剤としては、下記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
[式中、R1は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、nおよびmは、同一または相異なって、1〜3の整数を表し、Zは、水素原子または(CH2pCOOY(ここで、pは1〜3の整数であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)を表す。]、
【0018】
【化2】
【0019】
[式中、R2は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、R3およびR4は、同一または相異なって、低級アルキル基を表し、Aは、低級アルキレン基を表す。]、および
【0020】
【化3】
【0021】
[式中、R5は、炭素原子数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を表し、R6およびR7は、同一または相異なって、低級アルキル基を表す。]。
【0022】
化学式(A)において、R1の「炭素原子数7〜21のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、R1の「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、Yの「アルカリ金属」としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、「アルカリ土類金属」としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、「有機アミン」としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0023】
化学式(A)で表される両性界面活性剤の具体例としては、イミダゾリニウムベタイン型、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ラウリン酸より合成されたもの、以下、便宜上「ラウロイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ステアリン酸より合成されたもの)、ヤシ油脂肪酸より合成された2−アルキルまたはアルケニル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(R1がC7〜C17の混合物、以下、便宜上、「ココイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)等が挙げられる。
【0024】
化学式(B)において、R2の「炭素原子数7〜21のアルキル基」および「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、化学式(A)のR1と同様である。また、R3、R4の「低級アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が1〜3のアルキル基である。さらに、Aの「低級アルキレン基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が3〜5のアルキレン基である。
【0025】
化学式(B)で表される両性界面活性剤(アミドアルキルベタイン型)の具体例としては、アミドプロピルベタイン型、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R2がC7〜C17の混合物)等が挙げられる。
【0026】
化学式(C)において、R5の「炭素原子数8〜22のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。また、R5の「炭素原子数8〜22のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。さらに、R6、R7の「低級アルキル基」は、化学式(B)のR3、R4と同様である。
【0027】
化学式(C)で表される両性界面活性剤(アルキルベタイン型)の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸より合成されたアルキルまたはアルケニルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R5がC8〜C18の混合物)等が挙げられる。
【0028】
本発明においては、上記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤からなる群より少なくとも1つが選択されて使用される。これら(A)〜(C)のうち、特に好適には化学式(C)で示されるアルキルベタイン型両性界面活性剤である。複数使用する場合、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(B)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(C)で表される両性界面活性剤を複数使用してもよいが、アルキルベタイン型両性界面活性剤を必須とすることが好ましい。
【0029】
本発明の固形石鹸においては、上記の両性界面活性剤を配合することにより、肪酸石鹸(脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩)と両性界面活性剤が複合塩を形成し、「きしみ感」改善等の使用性が向上し、また硬度が向上して溶け減り度合いが低くなる等の作用が発揮される。
【0030】
本発明の固形石鹸における上記の両性界面活性剤の含有量は、1〜15質量%、特に4〜8質量%が好ましい。この含有量が1質量%未満であると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなるおそれがある。さらに、透明性も低下するおそれがある。逆に、15質量%を超えると、使用後にベタツキ感を生じ、また、長期保存すると表面が褐色に変質して商品価値を損なうおそれがある。
【0031】
[ノニオン界面活性剤]
本発明の固形石鹸には、さらにノニオン界面活性剤を配合することが好適である。使用され得るノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン2−オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン変性シリコン(例えば、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコン)、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルグルコシド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記のノニオン界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマーが好適に使用できる。
【0032】
本発明の固形石鹸においては、ノニオン界面活性剤を配合することにより、使用性が一層向上する作用が発揮される。
本発明の固形石鹸におけるノニオン界面活性剤の含有量は、1〜15質量%、特に6〜12質量%が好ましい。この含有量が1質量%未満であると、むしろ使用後につっぱり感が生じるおそれがある。逆に、15質量%を超えると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなるおそれがある。さらに、使用後にベタツキ感が生じるおそれがある。
【0033】
[ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤]
本発明にかかる固形石鹸にはヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤を添加することが好適であり、泡立ちの改善が認められる。
本発明において好適なヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は下記構造(D)を有する。
【0034】
【化4】
【0035】
(式中、Rは炭素原子数4〜34の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し;X、Xのいずれか一方は−CHCOOMを表し、他方は水素原子を表し;Mは水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、低級アルカノールアミンカチオン、低級アルキルアミンカチオン、又は塩基性アミノ酸カチオンを表す。)
【0036】
式中、Rは芳香族炭化水素、直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素のいずれでもよいが、脂肪族炭化水素、特にアルキル基、アルケニル基が好ましい。例えば、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルウンデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルヘキサデシル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基等が好ましい例として挙げられ、中でもデシル基、ドデシル基が界面活性能力の面で優れている。
【0037】
また、式中、X、Xのいずれか一方は−CHCOOMで表されるが、Mとしては、水素原子、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0038】
具体的には、上記(A)ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤のうち、ドデカン−1,2−ジオールのいずれかのOH基のHが−CHCOONaで置換されたドデカン−1,2−ジオール・酢酸エーテルナトリウムが本発明で最も好ましい。
なお、本発明においてヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は、泡立ちを改善する観点から1〜15質量%、好ましくは5〜10質量%配合することができる。
【0039】
[糖・ポリオール部]
本発明に好適に用いられるポリエチレングリコール以外の糖・ポリオールとしては、マルチトール、ソルビトール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、砂糖、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ポリオキシエチレンアルキルグルコシドエーテル等が例示され、組成物中30〜70質量%配合することが好適である。
特に良好な使用性を得るため、糖・ポリオール部中、糖及び糖アルコールと、ポリオールの比は、40〜60:60〜40であることが好ましい。
【0040】
[その他]
本発明において、他に好適に配合し得る添加剤としては、上記した作用を損なわない範囲内で、次のような成分が挙げられる。この任意成分としては、トリクロロカルバニリド、ヒノキチオール等の殺菌剤;油分;香料;色素;エデト酸3ナトリウム2水和物等のキレート剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;グリチルリチン酸ジカリウム、オオバコエキス、レシチン、サポニン、アロエ、オオバク、カミツレ、ヨクイニン、マロニエ、ハマエリス、アボガドオイル、サボンソウエキス等の天然抽出物;非イオン性、カチオン性あるいはアニオン性の水溶性高分子;乳酸エステル等の使用性向上剤等である。
【0041】
また、本発明にかかる洗浄組成物にキレート剤を用いる場合には、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩が好適に例示され、さらに好ましくは、ヒドロキシエタンジホスホン酸である。配合量としては、0.001〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩の配合量が0.001質量%より少ない場合は、キレート効果が不十分となり、経時で黄変等の不都合を生じ、1.0質量%より多いと皮膚への刺激が強くなり、好ましくない。
【0042】
本発明の石鹸の製造方法については、上記した各成分の混合物に枠練り法、機械練り法等の一般的な方法を適用することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように本発明にかかる石鹸によれば、特定のポリオキシエチレングリコール、及び両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の添加により、疎水化処理粉体を配合した脂肪酸系固型石鹸の「きしみ感」を良好に改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明者らは脂肪酸石鹸系固型石鹸のきしみ感改善を検討するため、次のような基本処方を用いて検討を行った。なお、配合量は質量%で示す。
まず、本発明者らは、下記石鹸部、糖・糖・ポリオール部、およびその他からなる基本処方の石鹸を用いて透明固形石鹸の製造を試みた。
【0045】
【0046】
【0047】
なお、評価は、定法による。
【0048】
まず、本発明者らは、前記基本処方の脂肪酸石鹸部を50%として、他のポリエチレングリコール、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤は配合せず、且つ糖・ポリオール部及びその他の比率を固定し、二酸化チタンの配合量を変化させて使用感について検討した。なお、検討はモニターによる洗顔試験によった。
結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
二酸化チタンには、洗顔後に肌上に残存し、化粧効果が得られる利点がある。二酸化チタンを0.1%以上配合することにより、ある程度の化粧効果が発揮される。一方、脂肪酸石鹸部が多いこともあり、洗顔中及び洗顔後に特有のきしみ感が生じるが、特に二酸化チタンの配合割合が多くなるにつれて顕著となることが理解される。これに対し、疎水化処理二酸化チタン(脂肪酸カルシウム処理二酸化チタン)を1.0%配合した場合には、粉体無配合の場合と比較してもきしみ感が軽減する傾向にあることが見出され、しかも化粧効果も十分に発揮された。

そこで本発明者らは、各種成分の添加によりさらにきしみ感の改善を図った。なお、脂肪酸石鹸部は30質量%(基本処方値)とした。
【0051】
【表2】
【0052】
前記表2を参照すると、PEG1500には曳糸性があり、特有のぬめり感があるため、きしみ感の若干の改善効果が認められた。一方、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(両性界面活性剤)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(非イオン性界面活性剤)にはほとんどきしみ感改善効果が認められなかったが、PEG1500との組み合わせによりきしみ感の改善が認められ、特にPEG1500、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオキシエチレンステアリルエーテルとの組み合わせによりすぐれたきしみ改善効果が発揮された。

次に本発明者らはポリエチレングリコールの数平均分子量ときしみ改善効果の相関について検討を行った。
【0053】
【表3】
【0054】
ポリオキシエチレングリコールの数平均分子量が300ないし600であると、きしみ感の改善効果が十分ではなく、且つべたつきを生じる場合がある。これに対し数平均分子量が1000〜3400(PEG4000)の範囲ではきしみ感の改善効果が認められた。特に1500及び1540で優れた改善効果が認められ、しかもべたつき感も生じなかった。前記きしみ感の改善は、ポリエチレングリコールのぬめり感(曳糸性)に依存するものと考えられるが、PEG6000(数平均分子量8600)になるとむしろきしみ感の改善効果がやや低下する傾向が認められた。
【0055】
以上のことから、ポリエチレングリコールの数平均分子量は1000〜3400、特に規格品では1500ないし1540が好ましいことが理解される。なお、ポリエチレングリコール1500はポリエチレングリコール1540とポリエチレングリコール300との質量比等量混合品であるが、ポリエチレングリコール1540単独と同等の効果が得られたところから、300ないし6000が混入していたとしても特に問題はないと考えられる。
【0056】
【表4】
【0057】
表4に示す結果より、きしみ改善というポリエチレングリコールの添加効果は2%以上で認められ、特に10質量%で顕著である。しかしながら、25%の配合ではややべたつきを生じるようになること、また20%の配合ではやや製造適性に問題を生じることなどから、2〜15質量%が特に好ましいことが理解される。

次に本発明者らは両性界面活性剤の種類について検討を行った。
【0058】
【表5】
【0059】
両性界面活性剤の種類を変えてもきしみ感改善効果は得られるが、特にアルキルベタイン型両性界面活性剤(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)で優れた効果が得られることが理解できる。また、複数の両性界面活性剤を組み合わせた系においても、アルキルベタイン型両性界面活性剤が用いられている限り優れた効果が発揮され、また両性界面活性剤の配合量も石鹸への常識的な配合量である限り特に問題はなかった。
次に本発明者らは非イオン性界面活性剤の種類について検討を行った。
【0060】
【表6】
【0061】
非イオン性界面活性剤の種類を変えてもきしみ感改善効果は得られるが、特にポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤に優れた効果が認められ、両性界面活性剤と同様に石鹸への常識的な配合量である限り、特に問題は生じない。
以上のように、本発明によれば、固形石鹸、特に粉体を配合した固形石鹸において問題となる「きしみ感」を疎水化処理粉体、特定のポリエチレングリコール、及び両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の配合により好適に抑制することができる。