特許第5715991号(P5715991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715991
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   H02M3/28 YZHV
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-153744(P2012-153744)
(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-17970(P2014-17970A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2013年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】林 裕二
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−254118(JP,A)
【文献】 特開2011−050126(JP,A)
【文献】 特開2011−050160(JP,A)
【文献】 特開平03−169259(JP,A)
【文献】 米国特許第05027263(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0232184(US,A1)
【文献】 特開2008−187780(JP,A)
【文献】 特開平09−182433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子(20)からなるスイッチング回路部(2)と、
一次コイル(31)および二次コイル(32)を有し、上記一次コイル(31)が上記スイッチング回路部(2)に接続したトランス(3)と、
該トランス(3)の上記二次コイル(32)に接続した整流素子(4)と、
該整流素子(4)のカソードに電気接続した、電流平滑用のLCフィルタ回路部と、
コンデンサからなり、ノイズ電流を通過させるノイズフィルタ素子(5)とを備え、
該ノイズフィルタ素子(5)は、上記整流素子(4)のカソードと上記LCフィルタ回路部との接続点(49)と、上記二次コイル(32)の端子であるコイル用端子(30)との間に接続しており、
上記二次コイル(32)と上記整流素子(4)と上記ノイズフィルタ素子(5)とによって、上記ノイズ電流が流れる閉回路が形成されており、
上記トランス(3)と上記ノイズフィルタ素子(5)とは、互いに隣り合う位置に配置され、
上記二次コイル(32)と上記ノイズフィルタ素子(5)とは、上記コイル用端子(30)と、上記ノイズフィルタ素子(5)の端子であるフィルタ用端子(50)とを介して、互いに電気的に接続しており、
上記コイル用端子(30)及び上記フィルタ用端子(50)は、上記トランス(3)と上記ノイズフィルタ素子(5)との間の位置に設けられていることを特徴とする電力変換装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置(1)において、上記コイル用端子(30)と上記フィルタ用端子(50)とが直接、接続されていることを特徴とする電力変換装置(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置(1)において、上記スイッチング回路部(2)と上記トランス(3)と上記整流素子(4)と上記ノイズフィルタ素子(5)とを搭載するための、金属製のプレート(6)を備え、該プレート(6)は接地されており、上記コイル用端子(30)と上記フィルタ用端子(50)とを重ね合わせて上記プレート(6)に共締めしてあることを特徴とする電力変換装置(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置(1)において、上記スイッチング回路部(2)と上記トランス(3)と上記整流素子(4)と上記ノイズフィルタ素子(5)とを搭載するための、金属製のプレート(6)を備え、上記コイル用端子(30)と上記フィルタ用端子(50)とを、それぞれ異なる位置において上記プレート(6)に接続してあることを特徴とする電力変換装置(1)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)において、上記整流素子(4)と上記ノイズフィルタ素子(5)とが、1個のモジュール(7)に内蔵されていることを特徴とする電力変換装置(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置(1)において、上記モジュール(7)は、上記整流素子(4)および上記ノイズフィルタ素子(5)を内蔵した素子本体(70)と、上記整流素子(4)を上記二次コイル(32)に接続するための整流用端子(40)と、上記フィルタ用端子(50)とを備え、上記整流用端子(40)と上記フィルタ用端子(50)とは、上記素子本体(70)から上記二次コイル(32)側にそれぞれ突出していることを特徴とする電力変換装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスと、整流素子と、ノイズフィルタ素子とを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータ等の電力変換装置として、トランスと、該トランスの二次コイルに接続した整流素子と、コンデンサ等のノイズフィルタ素子と、これらの部品を搭載するための金属製のプレートとを備えるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
トランスの一次コイルには、スイッチング回路が接続している。電力変換装置は、スイッチング回路によってパルス波を発生させ、このパルス波を、トランスを使って変圧する。そして、トランスの二次電圧を、整流素子を使って整流する。
【0004】
スイッチング回路を高周波スイッチング動作させると、二次コイルからノイズ電流が発生する。上記電力変換装置では、出力電流にノイズ電流が混入しないように、ノイズフィルタ素子を設けてある。すなわち、二次コイルから発生し整流素子を通過したノイズ電流を、ノイズフィルタ素子を通して上記プレートに流し、さらに他の電子部品等に流して、二次コイルに帰還させるよう構成してある。このように、ノイズ電流を発生源に帰還させることにより、電力変換装置の出力電流にノイズ電流が混入することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−182433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の電力変換装置は、ノイズ電流が流れる経路が長いため、ノイズ電流が流れたときに、この経路から放射ノイズが発生しやすい。そのため、放射ノイズが電力変換装置の外部に漏洩したり、放射ノイズが電力変換装置内の他の電子部品に作用して、新たにノイズ電流が発生したりする可能性がある。したがって、これらの放射ノイズやノイズ電流を遮蔽する性能(ノイズフィルタ特性)が、より優れた電力変換装置が望まれている。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、より優れたノイズフィルタ特性を有する電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、スイッチング素子(20)からなるスイッチング回路部(2)と、
一次コイル(31)および二次コイル(32)を有し、上記一次コイル(31)が上記スイッチング回路部(2)に接続したトランス(3)と、
該トランス(3)の上記二次コイル(32)に接続した整流素子(4)と、
該整流素子(4)のカソードに電気接続した、電流平滑用のLCフィルタ回路部と、
コンデンサからなり、ノイズ電流を通過させるノイズフィルタ素子(5)とを備え、
該ノイズフィルタ素子(5)は、上記整流素子(4)のカソードと上記LCフィルタ回路部との接続点(49)と、上記二次コイル(32)の端子であるコイル用端子(30)との間に接続しており、
上記二次コイル(32)と上記整流素子(4)と上記ノイズフィルタ素子(5)とによって、上記ノイズ電流が流れる閉回路が形成されており、
上記トランス(3)と上記ノイズフィルタ素子(5)とは、互いに隣り合う位置に配置され、
上記二次コイル(32)と上記ノイズフィルタ素子(5)とは、上記コイル用端子(30)と、上記ノイズフィルタ素子(5)の端子であるフィルタ用端子(50)とを介して、互いに電気的に接続しており、
上記コイル用端子(30)及び上記フィルタ用端子(50)は、上記トランス(3)と上記ノイズフィルタ素子(5)との間の位置に設けられていることを特徴とする電力変換装置(1)にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記電力変換装置においては、上記二次コイルと上記整流素子と上記ノイズフィルタ素子とによって、上記ノイズ電流が流れる閉回路が形成されている。すなわち、二次コイルから発生し整流素子を通過したノイズ電流を、ノイズフィルタ素子を通して、二次コイルに帰還させる電流経路が形成されている。そして、トランスとノイズフィルタ素子とを互いに隣り合う位置に配置すると共に、上記コイル用端子と上記フィルタ用端子とを、トランスとノイズフィルタ素子との間の位置に設けてある。
そのため、トランスに内蔵される二次コイルとノイズフィルタ素子との間の電流経路を短くすることができる。これにより、上記ノイズ電流が流れる閉回路の長さを短くすることが可能になる。そのため、放射ノイズの発生量を低減することができる。したがって、電力変換装置から外部に放射される放射ノイズの量を低減できると共に、放射ノイズが電力変換装置内の他の電子部品等に作用して新たにノイズ電流が発生し、出力にノイズ電流が混入することを抑制できる。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、より優れたノイズフィルタ特性を有する電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における、電力変換装置の要部拡大断面図。
図2】実施例1における、電力変換装置の回路図。
図3図1のIII矢視図。
図4】実施例1における、モジュールの一部透視平面図。
図5図4のV-V断面図。
図6図4のVI-VI断面図。
図7】実施例2における、電力変換装置の要部拡大断面図。
図8】実施例2における、電力変換装置の回路図。
図9】実施例3における、電力変換装置の要部拡大断面図。
図10】実施例3における、モジュールの一部透視平面図。
図11】実施例4における、電力変換装置の回路図。
図12】実施例5における、電力変換装置の回路図。
図13】比較例における、二次コイルの、整流後の電圧波形。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記電力変換装置において、上記コイル用端子と上記フィルタ用端子とが直接、接続されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、二次コイルとノイズフィルタ素子との間における、ノイズ電流が流れる経路の長さを、より短くすることができ、放射ノイズの発生を抑制できる。そのため、電力変換装置のノイズフィルタ特性をより向上させることが可能になる。
【0013】
また、上記電力変換装置は、上記スイッチング回路部と上記トランスと上記整流素子と上記ノイズフィルタ素子とを搭載するための、金属製のプレートを備え、該プレートは接地されており、上記コイル用端子と上記フィルタ用端子とを重ね合わせて上記プレートに共締めしてあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、コイル用端子を使って、二次コイルを接地させることができる。そのため、二次コイルを接地するための専用の端子を設ける必要がなくなる。
【0014】
また、上記電力変換装置は、上記スイッチング回路部と上記トランスと上記整流素子と上記ノイズフィルタ素子とを搭載するための、金属製のプレートを備え、上記コイル用端子と上記フィルタ用端子とを、それぞれ異なる位置において上記プレートに接続してもよい(請求項4)。
この場合には、コイル用端子およびフィルタ用端子の、形状や長さ等の設計自由度を高めることができる。
【0015】
また、上記整流素子と上記ノイズフィルタ素子とが、1個のモジュールに内蔵されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、部品点数を低減することができる。そのため、電力変換装置の製造工程において、整流素子とノイズフィルタ素子とを実装する作業や、他の部品に接続する作業を行いやすくなる。
【0016】
また、上記モジュールは、上記整流素子および上記ノイズフィルタ素子を内蔵した素子本体と、上記整流素子を上記二次コイルに接続するための整流用端子と、上記フィルタ用端子とを備え、上記整流用端子と上記フィルタ用端子とは、上記素子本体から上記二次コイル側にそれぞれ突出していることが好ましい(請求項6)。
この場合には、二次コイルとノイズフィルタ素子との間における、ノイズ電流が流れる経路の長さを短くすることができると共に、整流素子と二次コイルとの間における、ノイズ電流が流れる経路の長さをも短くすることができる。そのため、上記閉回路の長さをより短くすることができ、放射ノイズの発生量をより低減することが可能になる。したがって、電力変換装置のノイズフィルタ特性をより高めることができる。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
上記電力変換装置に係る実施例について、図1図6を用いて説明する。図2に示すごとく、本例の電力変換装置1は、スイッチング回路部2と、トランス3と、整流素子4と、ノイズフィルタ素子5とを備える。
スイッチング回路部2は、複数のスイッチング素子20からなる。トランス3は、一次コイル31および二次コイル32を有する。一次コイル31はスイッチング回路部2に接続している。整流素子4は、トランス3の二次コイル32に接続している。ノイズフィルタ素子5はコンデンサである。ノイズフィルタ素子5は、ノイズ電流Iを通過させる。
【0018】
二次コイル32と整流素子4とノイズフィルタ素子5とによって、ノイズ電流Iが流れる閉回路Cが形成されている。
図1図3に示すごとく、トランス3とノイズフィルタ素子5とは、互いに隣り合う位置に配置されている。二次コイル32とノイズフィルタ素子5とは、二次コイル32の端子であるコイル用端子30と、ノイズフィルタ素子5の端子であるフィルタ用端子50とを介して、互いに電気的に接続している。
コイル用端子30及びフィルタ用端子50は、トランス3とノイズフィルタ素子5との間の位置に設けられている。
【0019】
本例の電力変換装置1は、車載用のDC−DCコンバータである。図2に示すごとく、スイッチング回路部2は第1直流電源10に接続されている。電力変換装置1は、第1直流電源10の直流電圧を、スイッチング回路部2を用いてパルス電圧に変換し、トランス3を使って変圧する。そして、二次コイル32の二次電圧を、整流素子4を使って整流し、さらに、平滑フィルタ回路部11を使って平滑化する。この、平滑化した直流電圧を用いて、第2直流電源15を充電するよう構成されている。第1直流電源10は、例えば、ハイブリッド車用の高圧バッテリーであり、第2直流電源10は、例えば、鉛蓄電池等の低圧バッテリーである。
【0020】
また、電力変換装置1は、金属製のプレート6を備える。このプレート6に、スッチング回路部2と、トランス3と、整流回路4と、ノイズフィルタ素子5と、平滑回路部11とが搭載されている。プレート6は接地されている。
【0021】
図2に示すごとく、トランス3は、2個の二次コイル32(32a,32b)を備える。この2個の二次コイル32の接続点に、上記コイル用端子30が設けられている。コイル用端子30は、トランス3のセンタータップであり、プレート6を介して接地されている。また、二次コイル32はバスバーからなる。二次コイル32とコイル用端子30とは、1枚のバスバーによって構成されている。すなわち、二次コイル32とコイル用端子30は一体に形成されている。
【0022】
本例の電力変換装置1は、2個の整流素子4(4a,4b)を備える。2個の整流素子4のうち、一方の整流素子4aは、そのアノードが、一方の二次コイル32aに接続している。また、他方の整流素子4bのアノードは、他方の二次コイル32bに接続している。これら2個の整流素子4a,4bのカソードは、互いに接続されている。
【0023】
図2に示すごとく、整流素子4a,4bのカソードの接続点49と、コイル用端子30との間を、ノイズフィルタ素子5によって接続してある。一方の二次コイル32aと、一方の整流素子4aと、ノイズフィルタ素子5とにより、第1の閉回路C1が形成されている。また、他方の二次コイル32bと、他方の整流素子4bと、ノイズフィルタ素子5とにより、第2の閉回路C2が形成されている。
【0024】
また、上記接続点49には、平滑フィルタ回路部11が接続している。平滑フィルタ回路部11は、複数のコイル118と、複数のコンデンサ119とからなる。コンデンサ119は、プレート6に接続されている。また、平滑フィルタ回路部11の一端110と、プレート6の端部60とに、第2直流電源15が接続している。
【0025】
スイッチング回路部2を高周波スイッチング動作させると、二次コイル32にノイズ電圧が発生する。ここで仮に、ノイズフィルタ素子5を設けなかったとすると、図13に示すごとく、二次電圧V2の立ち上がり時にサージ電圧Vsが発生する。また、立ち上がり後、暫くリンギングが生じる。これらのサージ電圧Vsやリンギングが、ノイズ電圧の原因となる。また、ノイズ電圧の発生に伴って、ノイズ電流Iも生じる。
【0026】
本例では図2に示すごとく、二次コイル32から発生したノイズ電流Iは、整流素子4を流れる。そして、ノイズフィルタ素子5を通って、二次コイル32に帰還する。このように、ノイズ電流Iを発生源に帰還させることにより、ノイズ電流Iが平滑フィルタ回路部11側へ流れることを抑制している。
【0027】
図4に示すごとく、本例では、2個の整流素子4a,4bとノイズフィルタ素子5とを、1個のモジュール7内に内蔵してある。モジュール7は、上記フィルタ用端子50と、整流素子4を二次コイル32に接続するための2本の整流用端子40(40a,40b)とを備える。これらフィルタ用端子50と、整流用端子40a,40bは、それぞれトランス3側(図3参照)に突出している。
【0028】
図1に示すごとく、プレート6には、ボス61を形成してある。フィルタ用端子50は、モジュール7からトランス3側に突出し、2箇所折り曲げられている。そして、フィルタ用端子50の先端59を、ボス61に載置してある。また、コイル用端子30は、トランス3からモジュール7側へ突出している。そして、コイル用端子30の先端39を、フィルタ用端子50の先端59に重ね合わせ、螺子12を使って、これらの先端39,59をボス61に固定してある。
【0029】
図3に示すごとく、プレート6の厚さ方向(Z方向)から見ると、コイル用端子30とフィルタ用端子50とは、トランス3とノイズフィルタ素子5との間に位置している。
【0030】
また、トランス3は、2本の整流素子接続端子33(33a,33b)を備える。整流素子接続端子33は、二次コイル32を整流素子4に接続するために設けてある。一方の整流素子接続端子33aは、一方の整流用端子40aに接続し、他方の整流素子接続端子33bは、他方の整流用端子40bに接続している。これら2本の整流素子接続端子33a,33bは互いに平行であり、コイル用端子30の突出方向(X方向)にそれぞれ突出している。
【0031】
図1に示すごとく、整流素子接続端子33は2箇所、折り曲げられており、その先端330を、モジュール7の整流用端子40に重ね合わせてある。この先端330と整流用端子40とは、溶接やはんだ付け等により接続される。
【0032】
また、トランス3は、一次コイル31をスイッチング回路部2に接続するための回路接続端子34を備える。回路接続端子34は、X方向における、コイル用端子30の突出側とは反対側に突出している。回路接続端子34には、スイッチング回路部2の端子21が接続している。
【0033】
また、モジュール7は出力端子71を備える。出力端子71は、モジュール7の素子本体70から、X方向における、フィルタ用端子50の突出側とは反対側に突出している。出力端子71に、平滑フィルタ回路部11の端子111が接続している。
【0034】
図4に示すごとく、モジュール7は、2個の整流素子4a,4bと、ノイズフィルタ素子5と、主金属板73と、2枚の整流用金属板74,76と、フィルタ用金属板75とを備える。これらの部品が、素子本体70内に内蔵されている。また、素子本体70には、上述した整流用端子40と、フィルタ用端子50と、出力端子71とが、それぞれ部分的に封止されている。
【0035】
図4図5に示すごとく、主金属板73に、整流素子4が載置されている。整流素子4のカソードは主金属板73に電気的に接続している。また、整流素子4のアノードは、整流用金属板74に、ワイヤ72によって接続されている。整流用金属板74には、整流用端子40が接続している。
【0036】
図4図6に示すごとく、主金属板73とフィルタ用金属板75との間を跨ぐように、ノイズフィルタ素子5が載置されている。ノイズフィルタ素子5は、直方体形状を呈しており、X方向における両端部に、それぞれ電極55,56が形成されている。一方の電極55はフィルタ用金属板75に接続し、他方の電極56は主金属板73に接続している。フィルタ用金属板75には、フィルタ用端子50が接続している。
【0037】
図4に示すごとく、ノイズフィルタ素子5は、X方向とZ方向の双方に直交する方向(Y方向)において、一方の整流素子4a側のワイヤ72aと、他方の整流素子4b側のワイヤ72bとの間に位置している。
【0038】
また、主金属板73には、出力端子71が接続している。二次コイル32(図2参照)から発生した二次電流iは、整流用端子40およびワイヤ72を通り、整流素子4aを流れて主金属板73に移る。そして、二次電流iに含まれる直流成分は、出力端子71を通って平滑フィルタ部11へ流れる。二次電流iに含まれるノイズ電流I(交流成分)は、ノイズフィルタ素子5を通り、二次コイル32に帰還する。
【0039】
本例の作用効果について説明する。本例では図1図3に示すごとく、本例においては、二次コイル32と整流素子4とノイズフィルタ素子5とによって、ノイズ電流Iが流れる閉回路Cが形成されている。すなわち、二次コイル32から発生し整流素子4を通過したノイズ電流Iを、ノイズフィルタ素子5を通して、二次コイル32に帰還させる電流経路が形成されている。そして、トランス3とノイズフィルタ素子5とを互いに隣り合う位置に配置すると共に、コイル用端子30とフィルタ用端子50とを、トランス3とノイズフィルタ素子5との間の位置に設けてある。
そのため、トランス3に内蔵される二次コイル32とノイズフィルタ素子5との間の電流経路を短くすることができる。これにより、ノイズ電流Iが流れる閉回路Cの長さを短くすることが可能になる。そのため、放射ノイズの発生量を低減することができる。したがって、電力変換装置1から外部に放射される放射ノイズの量を低減できると共に、放射ノイズが電力変換装置1内の他の電子部品等(例えばコイル118、コンデンサ119:図2参照)に作用して新たにノイズ電流が発生し、出力にノイズ電流が混入することを抑制できる。
【0040】
また、閉回路Cの長さを短くすると、閉回路Cの浮遊インダクタンスを小さくすることができる。上述したように、ノイズは、二次コイル32のサージ電圧Vs(図13参照)に主に起因している。閉回路Cの浮遊インダクタンスを小さくすると、ノイズ(サージ電圧Vs)が閉回路Cを伝わりやすくなり、二次コイル32に戻りやすくなる。そのため、サージ電圧Vsを抑制しやすくなる。
【0041】
また、上述したように本例では、閉回路Cから発生する放射ノイズの量を低減できるため、この閉回路C付近に、放射ノイズの影響を受けやすいマイコン等の精密部品を配置することが可能になる。
【0042】
また、本例では図1図3に示すごとく、コイル用端子30とフィルタ用端子50とが直接、接続されている。
そのため、二次コイル32とノイズフィルタ素子5との間における、ノイズ電流Iが流れる経路の長さを、より短くすることができ、放射ノイズの発生を抑制できる。これにより、電力変換装置1のノイズフィルタ特性をより向上させることが可能になる。
【0043】
また、図2に示すごとく、本例では、プレート6は接地されている。そして図1に示すごとく、コイル用端子30とフィルタ用端子50とを重ね合わせてプレート6に共締めしてある。
そのため、コイル用端子30を使って、二次コイル32を接地させることができる。したがって、二次コイル32を接地するための専用の端子を設ける必要がなくなる。
【0044】
また、本例では図4に示すごとく、整流素子4とノイズフィルタ素子5とが、1個のモジュール7に内蔵されている。
そのため、部品点数を低減することができる。したがって、電力変換装置1の製造工程において、整流素子4とノイズフィルタ素子5とを実装する作業や、他の部品に接続する作業を行いやすくなる。
【0045】
また、本例では図3に示すごとく、整流用端子40とフィルタ用端子50とは、素子本体70から二次コイル32側それぞれ突出している。
そのため、二次コイル32とノイズフィルタ素子5との間における、ノイズ電流Iが流れる経路の長さを短くすることができると共に、整流素子4と二次コイル32との間における、ノイズ電流Iが流れる経路の長さをも短くすることができる。これにより、閉回路Cの長さをより短くすることができ、放射ノイズの発生量をより低減することが可能になる。そのため、電力変換装置1のノイズフィルタ特性をより高めることができる。
【0046】
以上のごとく、本例によれば、より優れたノイズフィルタ特性を有する電力変換装置を提供することができる。
【0047】
なお、本例では、整流素子4としてダイオードを用いたが、IGBT素子やMOSFET等のスイッチング素子を用いてもよい。すなわち、これらのスイッチング素子を用いて、同期整流回路を構成してもよい。
【0049】
(実施例2)
本例は、コイル用端子30とフィルタ用端子50の形状を変更した例である。図7図8に示すごとく、本例では、コイル用端子30とフィルタ用端子50とを、それぞれ異なる位置において、プレート6に接続してある。図7に示すごとく、コイル用端子30は、トランス3からモジュール7側に突出している。コイル用端子30は、2箇所折り曲げられており、その先端39がプレート6の表面に接触している。そして、第1螺子12を使って、先端39をプレート6に固定してある。また、フィルタ用端子50は、素子本体70からトランス3側に突出している。フィルタ用端子50は2箇所折り曲げられており、その先端59がプレート6の表面に接触している。そして、第2螺子13を使って、先端59をプレート6に固定してある。フィルタ用端子50の先端59は、コイル用端子30の先端39よりも素子本体70側に位置している。
【0050】
上記構成にすると、コイル用端子30およびフィルタ用端子50の、形状や長さ等の設計自由度を高めることができる。また、コイル用端子30やフィルタ用端子50の長さを短くすることができ、トランス3やモジュール7の製造コストを低減させることができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。また、本例に関する図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符合と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0051】
(実施例3)
本例は、ノイズフィルタ素子5の構成を変更した例である。図9図10に示すごとく、本例では、モジュール7にノイズフィルタ素子5が封止されておらず、モジュール7とノイズフィルタ素子5とが別部品になっている。プレート6には、実施例1と同様に、ボス61が形成されている。このボス61に、ノイズフィルタ素子5の一方の電極55を接続してある。本例では、この電極55が、フィルタ用端子50(図1参照)を兼ねている。
【0052】
また、ノイズフィルタ素子5の他方の電極56は、モジュール7の接続端子77に接続している。接続端子77とプレート6との間には、絶縁部材69が介在している。接続端子77は、図10に示すごとく、モジュール7内において、主金属板73に接続している。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。また、本例に関する図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符合と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0053】
(実施例4)
本例は、二次コイル32および整流素子4の数を変更した例である。図11に示すごとく、本例の電力変換装置1は、いわゆるフライバックコンバータである。本例の電力変換装置1は、1個の二次コイル32と、1個の整流素子4とを備える。二次コイル32は、整流素子接続端子33を介して、整流素子4のアノードに接続している。また、整流素子4のカソードと、二次コイル32のコイル用端子30との間を、ノイズフィルタ素子5によって接続してある。本例では、整流素子4によって、二次コイル32の二次電圧を半波整流するよう構成されている。また、本例では、1個の整流素子4と1個のノイズフィルタ素子5とを、1個のモジュール7に内蔵してある。二次コイル32のコイル用端子30は、プレート6を介して接地されている。
【0054】
本例では、実施例1と同様に、コイル用端子30とフィルタ用端子50とが、トランス3とノイズフィルタ素子5との間に設けられている(図1参照)。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。また、本例に関する図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符合と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0055】
(実施例5)
本例は、二次コイル32の数を変更した例である。図12に示すごとく、本例の電力変換装置1は、いわゆるフォワードコンバータである。本例の電力変換装置1は、1個の二次コイル32と、1個の整流素子4とを備える。二次コイル32は、整流素子接続端子33を介して、整流素子4のアノードに接続している。この整流素子4によって、二次コイル32の二次電圧を半波整流するよう構成されている。また、整流素子4のカソードと、二次コイル32のコイル用端子30との間を、ノイズフィルタ素子5によって接続してある。コイル用端子30は、プレート6を介して接地されている。
【0056】
また、プレート6と、整流素子4のカソードとの間には、コイル118の還流電流irを流すための還流ダイオード14が設けられている。
【0057】
本例では、実施例1と同様に、コイル用端子30とフィルタ用端子50とが、トランス3とノイズフィルタ素子5との間に設けられている(図1参照)。また、整流素子4と、還流ダイオード14と、ノイズフィルタ素子5とは、1個のモジュール7内に内蔵されている。
【0058】
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。また、本例に関する図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符合と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【符号の説明】
【0059】
1 電力変換装置
2 スイッチング回路部
20 スイッチング素子
3 トランス
30 コイル用端子
31 一次コイル
32 二次コイル
4 整流素子
5 ノイズフィルタ素子
50 フィルタ用端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13