(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光ファイバ裸線の周囲に塗布した紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し、前記紫外線硬化樹脂中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線を検出する光検出器が出力した光検出信号に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の偏肉揺れの有無を判定する光ファイバの偏肉測定方法であって、
前記光検出器から出力された光検出信号を記録し、その変動幅及び周波数の変化から、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする光ファイバの偏肉測定方法。
前記光検出器から出力された光検出信号をフーリエ変換して、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの偏肉測定方法。
前記紫外線硬化樹脂中を伝搬した紫外線の検出は、光ファイバ裸線の周囲に紫外線硬化樹脂を塗布するコーティング装置と、該紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する紫外線照射装置との間のファイバ移動経路で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバの偏肉測定方法。
光ファイバ裸線の周囲に紫外線硬化樹脂を塗布した後、該紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することにより該紫外線硬化樹脂を硬化させて光ファイバを製造する光ファイバ製造方法であって、
前記紫外線硬化樹脂に照射した前記紫外線のうち前記紫外線硬化樹脂中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線を検出する光検出器が出力した光検出信号に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の偏肉揺れの有無を判定する光ファイバ製造方法であって、
前記光検出器から出力された光検出信号を記録し、その変動幅及び周波数の変化から、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする光ファイバ製造方法。
前記光検出器から出力された光検出信号をフーリエ変換して、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ製造方法。
前記紫外線硬化樹脂中を伝搬した紫外線の検出は、光ファイバ裸線の周囲に紫外線硬化樹脂を塗布するコーティング装置と、該紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する紫外線照射装置との間のファイバ移動経路で行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の光ファイバ製造方法。
【背景技術】
【0002】
石英系光ファイバは、光ファイバ裸線の保護を目的として、光ファイバ裸線の周囲に樹脂が被覆される。この樹脂は、未硬化状態で光ファイバ裸線の周囲に塗布された後、硬化されて、光ファイバ裸線に被着される。光ファイバ裸線に塗布される樹脂は、光ファイバ裸線に対して、同心円上にコーティングされることが望ましい。
しかし、同心円上から著しくずれている場合、光ファイバの側圧特性や、耐外傷性などの観点から問題が生じるため、製品製造前に偏肉調整が実施される。
【0003】
ここで言う偏肉とは、
図6に示すように、光ファイバ裸線1に、保護材となる紫外線硬化樹脂2からなる被覆材が被覆された光ファイバ素線F(以下、光ファイバFと言う)の切断面を見たときに、Lmax/Lmin(最小被覆厚さ;Lmin、最大被覆厚さ;Lmax)として算出される値で、光ファイバFの被覆の偏り具合の程度を表す指標である。なお、光ファイバFの中央に位置する符号1Aは、光ファイバ裸線1の中心点である。
そして、光ファイバが偏肉していると言えるのは、Lmax/Lminが1.5以上(IEC60793−2−50(JIS6835)で規定される光ファイバ裸線1と紫外線硬化樹脂2からなる被覆材との偏心量12.5以上に相当する偏肉1.5以上)を示しているときである。
【0004】
また、紡糸線速が100m/min以下の低速の場合には、紡糸中の光ファイバのサンプルを取得し、そのサンプルの端面を観察することにより、偏肉を直接確認することが可能であった。しかし、近年、紡糸線速が高速化し、線速を維持したままサンプルを取得することが困難となっている。そこで、以下の特許文献1及び2に示されるように、光ファイバサンプルを取得することなく、光ファイバ紡糸工程において直接的に偏肉測定する方法が開発されてきた。
【0005】
特許文献1では、紡糸工程中に光ファイバ裸線がコーティング装置を通過する際、前後2箇所の光ファイバ裸線の中心位置が、どの程度変位しているかを検出することにより、被覆の肉厚を測定して偏肉を算出する方法が開示されている。そして、この方法により、光ファイバサンプルを取得することなく、光ファイバ製造工程中にて偏肉測定することが可能となる。
【0006】
特許文献2では、光ファイバの半径方向から光ビームを照射して散乱光に現れる左右の特徴的なピーク位置の比から偏肉を算出する方法が開示されている。当該技術ではさらに、光ファイバに照射する光ビームと散乱光を検出する検出部を、光ファイバに対して相対的に回転させて、散乱光位置及び散乱光強度を検出することにより、高精度で偏肉測定を行うことができる旨、記載されている。
【0007】
また、上記特許文献1及び2に示される光ファイバ被覆の偏肉を検出する技術以外に、特許文献3が知られている。この特許文献3の光ファイバ紡糸装置では、コーティング装置と架橋器との間において光ファイバに光を入射させ、そのときに反射した反射光を光検出装置で検出することにより、内部に欠陥、異物があるか否かを判別している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1では、コーティング装置前後のファイバの位置を常時に測定し、その差分から偏肉を測定する必要があるため、コーティング装置毎に偏肉検出部が二つ必要となり、偏肉測定装置全体が複雑になるという問題があった。
また、上記特許文献1では、光ファイバに線ブレなどの外乱が発生し、コーティング装置の前後でファイバ位置が変わってしまう場合に、実際には偏肉が発生していないにも関わらず、偏肉しているように測定されてしまうという誤検出が発生する恐れもあった。
【0010】
また、上記特許文献2では、偏肉検出部を光ファイバに対して相対的に回転させる必要があるため、一回の偏肉測定に一定の時間が必要となり、紡糸線速が高速化する現状においては適用することが困難である。仮に、紡糸線速に対応して、偏肉検出部を光ファイバに対して相対的に高速回転させた場合には、偏肉測定の分解能が十分でなくなり、偏肉測定を高精度で行うことができないという問題も発生していた。
また、特許文献2では、偏肉検出部を光ファイバに対して相対的に回転させるための回転機構を組み込む必要があるため、偏肉測定装置全体が複雑になるという問題もあった。
【0011】
また、上記特許文献1は、コーティング装置前後で検出されたファイバ位置の差分から偏肉を測定する技術であり、上記特許文献2は、一検出点において光ファイバ被覆における偏肉を測定する技術であり、光ファイバ被覆における長手方向の偏肉揺れまでを詳細に知ることができず、この点で新たな技術の提供が求められていた。一方、上記特許文献3は、光ファイバに光を入射させ、そのときに反射した反射光を検出することにより、内部に欠陥、異物があるか否かを判別するだけの技術であり、光ファイバ被覆の偏肉測定を行う機能まで有していない。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成により光ファイバ被覆における長手方向の偏肉揺れを正確に測定することが可能な、光ファイバの偏肉測定方法、光ファイバの偏肉測定装置、光ファイバの製造方法、光ファイバの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
第1の発明は、光ファイバ裸線の周囲に塗布した紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し、前記紫外線硬化樹脂中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線を検出する光検出器が出力した光検出信号に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする光ファイバの偏肉測定方法を提供する。
第2の発明は、前記光検出器から出力された光検出信号を記録し、その変動幅及び周波数の変化から、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする第1の発明の光ファイバの偏肉測定方法を提供する。
第3の発明は、前記光検出器から出力された光検出信号をフーリエ変換して、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする第2の発明の光ファイバの偏肉測定方法を提供する。
第4の発明は、記紫外線硬化樹脂中を伝搬した紫外線の光検出信号を記録する手段として、チャートレコーダを使用することを特徴とする第2又は3の発明の光ファイバの偏肉測定方法を提供する。
第5の発明は、記紫外線硬化樹脂中を伝搬した紫外線の検出は、光ファイバ裸線の周囲に紫外線硬化樹脂を塗布するコーティング装置と、該紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する紫外線照射装置との間のファイバ移動経路で行うことを特徴とする第1〜4のいずれか1つの発明の光ファイバの偏肉測定方法を提供する。
第6の発明は、光ファイバ裸線の周囲に塗布された紫外線硬化樹脂に入射されて前記紫外線硬化樹脂中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線を検出する光検出器と、光検出器が出力した光検出信号に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の偏肉揺れの有無を判定する偏肉判定手段と、を具備することを特徴とする光ファイバの偏肉測定装置を提供する。
第7の発明は、前記偏肉判定手段は、前記光検出器から出力された光検出信号を記録し、前記光検出信号の変動幅及び周波数の変化から、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする第6の発明の光ファイバの偏肉測定装置を提供する。
第8の発明は、前記偏肉判定手段は、前記光検出器から出力された光検出信号をフーリエ変換するフーリエ変換器を有し、前記フーリエ変換器からの出力に基づき、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする第7の発明の光ファイバの偏肉測定装置を提供する。
第9の発明は、前記紫外線硬化樹脂中を伝搬した紫外線の光検出信号を記録する手段として、チャートレコーダを使用することを特徴とする第7又は8の発明の光ファイバの偏肉測定装置を提供する。
第10の発明は、前記光検出器は、光ファイバ裸線の周囲に紫外線硬化樹脂を塗布するコーティング装置と、該紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する紫外線照射装置との間のファイバ移動経路に設けられて、前記紫外線硬化樹脂中を伝搬する光を検出することを特徴とする第6〜9のいずれか1つの発明の光ファイバの偏肉測定装置を提供する。
第11の発明は、光ファイバ裸線の周囲に紫外線硬化樹脂を塗布した後、該紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することにより該紫外線硬化樹脂を硬化させて光ファイバを製造する光ファイバ製造方法であって、前記紫外線硬化樹脂に照射した前記紫外線のうち前記紫外線硬化樹脂中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線を検出する光検出器が出力した光検出信号に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする光ファイバ製造方法を提供する。
第12の発明は、前記光検出器から出力された光検出信号を記録し、その変動幅及び周波数の変化から、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする第11の発明の光ファイバ製造方法を提供する。
第13の発明は、前記光検出器から出力された光検出信号をフーリエ変換して、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力を求め、該特定周波数における光検出出力の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することを特徴とする第12の発明の光ファイバ製造方法を提供する。
第14の発明は、前記紫外線硬化樹脂中を伝搬した紫外線の光検出信号を記録する手段として、チャートレコーダを使用することを特徴とする第12又は13の発明の光ファイバ製造方法を提供する。
第15の発明は、前記紫外線硬化樹脂中を伝搬した紫外線の検出は、光ファイバ裸線の周囲に紫外線硬化樹脂を塗布するコーティング装置と、該紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する紫外線照射装置との間のファイバ移動経路で行うことを特徴とする第11〜14のいずれか1つの発明の光ファイバ製造方法を提供する。
第16の発明は、光ファイバ裸線の周囲に紫外線硬化樹脂を塗布するコーティング装置と、該コーティング装置の下流側に設けられて、前記光ファイバ裸線に塗布された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する紫外線照射装置と、第6〜10のいずれか1つの発明の光ファイバの偏肉測定装置と、を有することを特徴とする光ファイバ製造装置を提供する。
本発明は、光ファイバ裸線の周囲に塗布した紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し、前記光ファイバ裸線の周囲で硬化する前記紫外線硬化樹脂の偏肉揺れを測定する偏肉測定方法であって、前記紫外線硬化樹脂中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線を検出することで得た光検出信号をフーリエ変換することにより、該紫外線硬化樹脂における偏肉揺れの有無を判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ファイバ裸線の周囲に塗布した紫外線硬化樹脂を硬化させるべく紫外線硬化樹脂に照射した紫外線のうち、紫外線硬化樹脂中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線を光検出信号として検出する。そして、この光検出信号に基づいて偏肉揺れの有無を判定する。その結果、従来のように複数の偏肉検出部、検出部を回転させる機構等を用いることなく、簡易な構成により光ファイバ被覆における長手方向の偏肉揺れを正確に測定することが可能となる。
また、偏肉揺れを判定するための光源として、紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線を利用しており、別途、新たな光源を設置する必要がないので、この点においても、偏肉測定のための構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について
図1〜
図5を参照して説明する。
まず、
図1は本発明に係る光ファイバ製造装置10を示す概略構成図である。
図1に例示した光ファイバ製造装置10は、光ファイバ裸線1の周囲に同心円状に紫外線硬化樹脂2を塗布するコーティング装置11と、コーティング装置11の下側及び下流側に設けられて、光ファイバ裸線1に塗布された紫外線硬化樹脂2に紫外線Uを照射する紫外線照射装置12と、を有する。
【0017】
この光ファイバ製造装置10では、光ファイバ製造工程の中の光ファイバ紡糸工程が行なわれる。コーティング装置11は、紡糸工程にて紡糸された光ファイバ裸線1に紫外線硬化樹脂2を塗布するコーティング工程を行う。紫外線照射装置12は、紫外線硬化樹脂2に紫外線を照射して硬化する紫外線照射工程を行う。そして、光ファイバ製造装置10では、コーティング工程及び紫外線照射工程を経て、光ファイバ裸線1の周囲が、紫外線硬化樹脂2が硬化した樹脂被覆によって覆われた構成の光ファイバF(被覆付き光ファイバ)が形成される。
【0018】
次に、
図1及び
図2を参照して、紫外線硬化樹脂2に紫外線Uを照射し、これにより硬化する紫外線硬化樹脂2の偏肉揺れを測定する光ファイバFの偏肉測定装置20(以下、偏肉測定装置20という)について説明する。
なお、光ファイバ装置10は、上述したコーティング装置11、紫外線照射装置12及び偏肉測定装置20から構成されるものであり、該偏肉測定装置20は、光ファイバ製造装置10の一部を構成している。
【0019】
なお、この偏肉測定装置20では、紫外線照射装置12から照射された紫外線Uを利用して、紫外線硬化樹脂2の偏肉揺れを測定するものであるが、これは以下のような理由による。
紫外線硬化樹脂2中を伝搬する光の散乱光の強度は、紫外線硬化樹脂2の透過率や色味などの光学特性、ファイバ径、コート径、偏肉などのファイバの寸法及びファイバと検出器との距離に依存する。紫外線硬化樹脂2の透過率や色味などの光学特性は、使用する樹脂の種類や製造ロットの違いなどによって変わり、光強度に影響を与える。しかし、この影響はあらかじめ把握できるものである。
【0020】
このため、紫外線硬化樹脂2の光学特性の違いは、従来例となる特許文献3のように光強度の絶対値により不良部を検知しようとする場合には問題となるが、本発明のように光強度の時間変動を検出する上では問題とならない。さらに、通常ファイバ径及びコート径は、仕様によって決められた値となるように製造される。実際には、製造ばらつきによって若干のファイバ径及びコート径の変動は発生するが、その影響は小さく実質的に無視することができる。しかし、ファイバ径及びコート径が一定であっても偏肉が変化すると、紫外線硬化樹脂2によって形成された導波路形状が変化し光強度が変化する。
【0021】
今、
図2(A)に示すように、光ファイバFの偏肉が長手方向に変動している場合を考える。光源となる紫外線照射装置12から紫外線硬化樹脂2中を伝搬した光は、偏肉が長手方向に変動することにより、紫外線硬化樹脂2から散乱される光強度が変化することになる(
図2(B)参照)。このため、長手方向で検出された光強度信号から光強度の変動成分(振幅及び周波数)を常時監視することで、偏肉の長手方向の変動を検出することが可能となる。
【0022】
以下、
図1及び
図2を参照して、偏肉測定装置20の構成を具体的に説明する。
この偏肉測定装置20は、光検出器21と、該光検出器21で検出された光検出信号S1を処理する偏肉判定手段22とから構成される。光検出器21は、コーティング装置11と紫外線照射装置12の間に位置し、光ファイバFの移動経路13(ファイバの移動方向を矢印(イ)で示す)の途中に設けられている。
【0023】
光検出器21は、
図2(A)に示されるように、紫外線照射装置12から照射されて紫外線硬化樹脂2中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線U(散乱光を符号U1で示す)を検出するものである。光検出器21から出力された光検出信号は、偏肉判定手段22に入力される。
【0024】
なお、
図2(A)では、偏肉の揺れが光ファイバFの長手方向に発生した際、肉厚が薄い箇所である場合には、紫外線Uの散乱光U1が大きくなり光検出器21(具体的には符号21Aの位置の光検出器)にて高いレベルの光検出信号S1が検出される。このときの光検出器21の光検出信号に
図2(B)中、符号S1Aを付記する。
また、肉厚が厚い箇所である場合には、紫外線Uの散乱光U1が小さくなり光検出器21(具体的には符号21Bの位置の光検出器)にて低いレベルの光検出信号S1が検出される。このときの光検出器21の光検出信号に
図2(B)中、符号S1Bを付記する。
ここでは、説明の都合、2台の光検出器21が示されているが、実際には1台の光検出器21にて紫外線Uを検出する。
また、光検出器21では、紫外線照射装置12から照射される紫外線Uの波長に対応した受光素子が使用される他、広い範囲の波長の紫外線を受光した後、フィルタ又は信号処理などにより、紫外線照射装置12から照射される特定波長の紫外線を選択しても良い。
【0025】
偏肉判定手段22は、光検出器21から出力された光検出信号をフーリエ変換(FFT)するフーリエ変換器23を有し、該フーリエ変換器23からの出力に基づき、紫外線硬化樹脂2における偏肉揺れの有無を判定する。
具体的には、
図2(B)(C)に示すように、偏肉判定手段22では、フーリエ変換器23では、光検出器21から出力された光検出信号S1(
図2(B)参照)をフーリエ変換(FFT)することにより、「各周波数における光検出出力S2の強度」(
図2(C)参照)を得る。
【0026】
そして、偏肉判定手段22では、
図2(C)のグラフを参照して分かるように、偏肉揺れに該当する特定周波数H1の光検出出力S2を求め、特定周波数H1における光検出出力S2の大きさに基づいて紫外線硬化樹脂2の偏肉揺れの有無を判定する。
なお、紫外線硬化樹脂2の偏肉揺れの判定は、偏肉揺れに該当する特定周波数H1の光検出出力S2を、偏肉判定しきい値A(本例では、偏肉変動がなく線ブレが発生しているときの変動幅(偏肉がない正常な値)を予め確認しておき、該変動幅を考慮した偏肉判定しきい値Aを「5」に設定している)で区切り、該偏肉判定しきい値Aを越えたか否かで行う。すなわち、
図2(C)に示されるように、偏肉揺れに該当する特定周波数H1の光検出出力S2が、偏肉判定しきい値Aを越えた場合に、光ファイバ裸線1の周囲に塗布された紫外線硬化樹脂2に偏肉揺れが生じたと判定する。
【0027】
また、偏肉判定手段22では、
図2(C)のグラフにより、光ファイバFの偏肉揺れを検知したが、これに加えて、
図3(A)(B)に示すように、該光ファイバFの線ブレを検知することもできる。
図3(A)(B)は、光検出器21から出力された光検出信号S1をフーリエ変換(FFT)することにより求めた「各周波数における光検出出力S2の強度」であって、
図3(A)は、光ファイバFの「線ブレあり、偏肉揺れなし」を示し、
図3(B)は光ファイバFの「線ブレあり、偏肉揺れあり」を示している。
そして、これらの測定結果を参照して分かるように、
図3(A)及び
図3(B)のいずれも、特定周波数H2において線ブレピークが出現しており、特定周波数H2のピークの有無を検出することで、光ファイバFの線ブレの有無も同様に判定することが可能となる。
偏肉判定手段22は、光検出器21から出力された光検出信号の変動成分(振幅及び周波数)の常時監視、及びその変化を記録することが可能である。
【0028】
以上は、本発明の実施形態に係る偏肉測定装置20、及び偏肉測定装置20を含む光ファイバ製造装置10の構成であるが、換言すれば、これら偏肉測定装置20及び光ファイバ製造装置10は以下の方法を実現するものと言える。
すなわち、偏肉測定装置20は、紫外線硬化樹脂2中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線Uを検出することで得た光検出信号S1をフーリエ変換することにより、該紫外線硬化樹脂2における偏肉揺れの有無を判定する「光ファイバFの偏肉測定方法」(以下、偏肉測定方法という)を実現する。
また、光ファイバ製造装置10では、光ファイバ裸線1の周囲に紫外線硬化樹脂2を塗布した後、該紫外線硬化樹脂2に紫外線Uを照射することにより該紫外線硬化樹脂2を硬化させて光ファイバFを製造する工程において、紫外線硬化樹脂2中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線U1を検出することで得た光検出信号S1をフーリエ変換することにより、該紫外線硬化樹脂2における偏肉揺れの有無を判定する「光ファイバ製造方法」を実現する。
【0029】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る偏肉測定方法が適用された偏肉測定装置20による、光ファイバ紡糸工程における光ファイバFの偏肉揺れのオンライン測定結果と、光ファイバ紡糸工程を実行した後で光ファイバFの部分を取り出して偏心量を測定したオフライン測定結果とについて説明する。
【0030】
図4には、偏肉測定装置20を用いた光ファイバFの偏肉揺れのオンライン測定結果が、実線(実施例)で示されている。また、この
図4では、符号Bで示す位置にて、光ファイバFに偏肉が生じているとの測定結果が示されている。
一方、
図4中の「○」は、オンライン測定がなされた光ファイバFの部分を取り出して偏心量を測定したオフライン測定結果を示している。このオフライン測定結果「○」を見て分かるように、偏肉揺れが発生している基準値となる「1.5」の偏肉量の出現とともに、オンライン測定では「偏肉揺れ検知」の判定がなされており、高いレスポンスを有する判定処理がなされていることが分かる。
【0031】
次に、
図4と比較される
図5の測定結果について説明する。
図5での偏肉揺れの測定も、
図4での測定と同様であるが、ここでは、比較例「△」として、特許文献2(特開平9−119885号公報)に記載の装置を使用した偏肉揺れ測定の結果を示している。
しかし、比較例では、「△」では、本実施形態に係る実線(実施例)のような、偏肉揺れ検出時における明確な分解能を有さず、分解能及びレスポンスの点で、本実施例に係る測定の方が優れていることが明らかになった。
【0032】
以上詳細に説明したように本実施形態に係る偏肉測定方法によれば、光ファイバ裸線1の周囲に塗布した紫外線硬化樹脂2に紫外線Uを照射し、このとき、紫外線硬化樹脂2中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線散乱光U1を光検出信号S1として検出する。そして、検出した光検出信号S1をフーリエ変換して、偏肉揺れに該当する特定周波数H1における光検出出力S2の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定すれば、従来のように複数の偏肉検出部、検出部を回転させる機構等を用いることなく、簡易な構成により光ファイバ被覆における長手方向の偏肉揺れを正確に測定することが可能となる。また、偏肉揺れを判定するための光源として、紫外線硬化樹脂2を硬化させるための紫外線Uを利用しており、別途、新たな光源を設置する必要がないので、この点においても、全体構成を簡素化することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る偏肉測定装置20によれば、光ファイバ裸線1の周囲に塗布した紫外線硬化樹脂2に紫外線Uを照射し、このとき、光検出器21にて、紫外線硬化樹脂2中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線散乱光U1を光検出信号S1として検出する。そして、偏肉判定手段22にて、光検出信号S1をフーリエ変換して、偏肉揺れに該当する特定周波数H1における光検出出力S2の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定すれば、従来のように複数の偏肉検出部、検出部を回転させる機構等を用いることなく、簡易な構成により光ファイバ被覆における長手方向の偏肉揺れを正確に測定することが可能となる。また、偏肉揺れを判定するための光源として、紫外線硬化樹脂2を硬化させるための紫外線Uを利用しており、別途、新たな光源を設置する必要がないので、この点においても、全体構成を簡素化することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る光ファイバFの製造方法によれば、光ファイバ裸線1の周囲に塗布した紫外線硬化樹脂2に紫外線Uを照射し、このとき、紫外線硬化樹脂2中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線散乱光U1を光検出信号S1として検出する。
そして、検出した光検出信号S1をフーリエ変換して、偏肉揺れに該当する特定周波数H1における光検出出力S2の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定すれば、従来のように複数の偏肉検出部、検出部を回転させる機構等を用いることなく、簡易な構成により光ファイバ被覆における長手方向の偏肉揺れを正確に測定することが可能となる。また、偏肉揺れを判定するための光源として、紫外線硬化樹脂2を硬化させるための紫外線Uを利用しており、別途、新たな光源を設置する必要がないので、この点においても、全体構成を簡素化することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る光ファイバ製造装置10によれば、光ファイバ裸線1の周囲に塗布した紫外線硬化樹脂2に紫外線Uを照射し、このとき、偏肉測定装置20の光検出器21にて、紫外線硬化樹脂2中を伝搬しかつ外部に散乱した紫外線散乱光U1を光検出信号S1として検出する。そして、光ファイバ製造装置10は、偏肉測定装置20の偏肉判定手段22にて、光検出信号S1をフーリエ変換して、偏肉揺れに該当する特定周波数H1における光検出出力S2の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することができる。その結果、光ファイバ製造装置10は、従来のように複数の偏肉検出部、検出部を回転させる機構等を用いることなく、簡易な構成により光ファイバ被覆(樹脂被覆)における長手方向の偏肉揺れを正確に測定することが可能である。また、光ファイバ製造装置10は、偏肉揺れを判定するための光源として、紫外線硬化樹脂2を硬化させるための紫外線Uを利用しており、別途、新たな光源を設置する必要がないので、この点においても、全体構成を簡素化することができる。
【0036】
また、本実施形態に示される偏肉測定装置20の光検出器21が、コーティング装置11と紫外線照射装置12との間のファイバ移動経路13に設けられている構成は、紫外線硬化樹脂2中を伝搬する紫外線Uの散乱光U1を効率良く受光することに有利である。
またこの構成は、光ファイバ裸線1に塗布された紫外線硬化樹脂2が紫外線照射装置12を通る前に、偏肉の発生を検出できる。
【0037】
光ファイバ製造装置としては、例えば、偏肉判定手段22が、偏肉揺れに該当する特定周波数の光検出出力が偏肉判定しきい値Aを越えて紫外線硬化樹脂2に偏肉揺れが生じたと判定したときに、アラーム音の出力、ランプ点灯等によって偏肉揺れの発生を報知する構成を採用できる。つまり、光ファイバ製造装置としては、アラーム音出力部、ランプといった報知手段を具備する構成も採用可能である。報知手段を具備することにより、偏肉揺れが発生してもすぐに偏肉調整を実施することができるようになり、歩留まりの低下を抑制することが可能となる。
アラーム音出力部、ランプといった報知手段を具備する上述の光ファイバ製造装置は、光検出器21がコーティング装置11と紫外線照射装置12との間のファイバ移動経路13に設けられた構成であれば、偏肉判定手段22が偏肉揺れが生じたと判定したときに、偏肉による不良部分を最小限に抑えることができる。
【0038】
また、本実施形態に示される偏肉測定装置20の偏肉判定手段22は、フーリエ変換器23からの出力に基づき、偏肉揺れに該当する特定周波数H1の光検出出力S2を求め、該特定周波数H1における光検出出力S2の大きさに基づいて偏肉揺れの有無を判定することから、光ファイバFの偏肉揺れを確実に判別することができる。
また、偏肉揺れに加えて、線ブレ揺れに該当する特定周波数H2の光検出出力S2を求めれば、同時に光ファイバFの線ブレの有無を判定することも可能となる。
【0039】
また、本実施形態に示される偏肉測定装置20の偏肉判定手段22は、偏肉揺れに該当する特定周波数H1の光検出出力S2を、適宜定めた偏肉判定しきい値Aで区切ることにより、異常とみなされる偏肉揺れを確実に選別することができる。
【0040】
また、本実施形態では、偏肉測定装置20の光検出器21によって検出された光検出信号S1を記録する手段として、チャートレコーダを使用することで、該チャートレコーダのデータを参照すれば、光ファイバF製造段階での偏肉揺れの経緯を確実に知ることが可能となる。
また、チャートレコーダ以外に、パソコンとモニタの組み合わせにより、光ファイバF製造段階での偏肉揺れを監視しても良い。そして、このようなパソコンとモニタによる偏肉揺れの監視により、作業者が実際の現場で、リアルタイムの偏肉揺れのモニタリングを行えるとともに、その記録をパソコンで取ることで、生産作業後に偏肉揺れの経緯を知ることができる。
偏肉判定手段としては、チャートレコーダ、パソコン等の記録手段に記録された光検出信号のデータに基づいて偏肉揺れの有無を判定する構成も採用可能である。
【0041】
なお、上記実施形態では、1台の光検出器21だけで光ファイバFの偏肉揺れ、線ブレの判定が可能となるが、
図1に示されるように2台の光検出器21を用いて、二重検知を行えばより判定精度を向上させることができる。このとき、2台の光検出器21は、光ファイバFの中心に対して、位相を90°又は90°に近い角度でずらして配置することが好ましい。
【0042】
また、上記実施形態では、コーティング装置11と紫外線照射装置12との間のファイバ移動経路13に光検出器21を配置したが、これに限定されず、該光検出器21を紫外線照射装置12近傍でかつ下流側に配置しても良い。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。