(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の電極対は、前記経路を挟んで相互に対向するように設けられ、前記フィラメントから前記アノードへの向きをZ方向としたときのX方向に配列され、前記第2の電極対は前記経路を挟んで相互に対向するように設けられ、X方向及びZ方向の双方に対して直交するY方向に配列されていること、
を特徴とする請求項6記載のX線CT装置。
第2の電極対の厚さは、第1の電極対の厚さよりも薄く、第2の電極対における経路に面した端面は、前記フィラメントから前記アノードへの方向に対して平行であること、
を特徴とする請求項6−9のいずれか一つに記載のX線CT装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るX線CT装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
X線CT装置は、被検体のスキャンで得られた投影データから画像を再構成する装置である。X線CT装置によるスキャンとは、X線の曝射と透過したX線の検出である。X線CT装置は、X線管1を搭載し、このX線管1によりX線を曝射する。
【0026】
まず、このX線管1について
図1乃至
図3に基づき説明する。
図1は、X線管1をX線の曝射軸に沿って切断した断面図である。
図2は、X線管1内に配される電子銃を電子の出射方向に沿って切断した断面斜視図である。
図3は、X線管1の電子の出射方向に沿って切断した断面図であり、電子銃から出射する電子の各種態様を示す。
【0027】
X線管1は、フィラメント加熱電流の供給及び高電圧の印加を受けてX線を発生させる。このX線管1は、
図1に示すように、通電により熱電子を放出するコイルフィラメント15を有する電子銃11と、コイルフィラメント15から放出された電子が照射されることによりX線を出射するアノード22とが設けられている。電子銃11及びアノード22は、真空シールドチャンバ21内に密閉されている。
【0028】
電子銃11は、一方の端部が開口された円筒形状を有し、その開口から軸に沿って底部に降ろした垂線(−Z軸方向とする)上にコイルフィラメント15を配している。電子銃11は、このコイルフィラメント15に対するフィラメント加熱電流の供給及び高電圧の印加を受け、電子を開口から+Z軸方向へ経路L上に出射する。
【0029】
アノード22は、Z軸方向に延びる回転軸23と一体化されており、コイルフィラメント15と開口とを結ぶ経路L上に介在している。このアノード22は、電子銃11から出射した電子が経路L上の表面に照射されることにより、回転軸23と直交する方向にX線を出射する。
【0030】
従って、アノード22の形状は、その頂面が−Z軸方向に向いた円錐台形状であり、その円錐表面に相当する側面22aの法線は、例えば6〜8度程度傾斜している。また、回転軸23は、真空シールドチャンバ21の外部に引き出されており、外部駆動機構(図示せず)によって回転する。その中心軸は、コイルフィラメント15と開口とを結ぶ電子の経路Lから所定方向(−X軸方向とする)にシフトしている。従って、電子は、アノード22の傾斜面である側面22aに照射される。アノード22の少なくとも電子が照射される当該側面22a部分は、例えばタングステンにより形成されている。尚、このシフトの方向は、後述するコイルフィラメント15及び溝14aが延びる方向とする。
【0031】
真空シールドチャンバ21のアノード22から出射したX線が通過する位置には、ベリリウム膜からなる窓25が設けられている。X線は、この窓25を介して、X線管1の外部に取り出される。
【0032】
このようなX線管1において、電子銃11は、
図2に示すように、筐体であるシールド12の底面側から開口部側に向かって、絶縁ブロック13a、ウエネルト14、コイルフィラメント15、絶縁ブロック13b、一対のXエレクトロード(第1電極部材)16a及び16b(以下、総称して「Xエレクトロード16」ともいう)、絶縁ブロック13c、一対のYエレクトロード(第2電極部材)17a及び17b(以下、総称して「Yエレクトロード17」ともいう)が、この順に配列されて収納している。
【0033】
シールド12は、金属又は合金等の導電性材料により形成されている。絶縁ブロック13aは、絶縁材料からなる円板状の部材であり、その中心軸はシールド12の中心軸と一致している。絶縁ブロック13aは、ウエネルト14を保持すると共に、ウエネルト14をシールド12から絶縁している。
【0034】
ウエネルト14は、ステンレス等の非磁性金属からなる円板状の部材であり、ウエネルト14におけるシールド12の開口部側の面には、シールド12の軸方向に対して直交する方向に延びる溝14aが形成されている。ウエネルト14の中心軸は、シールド12の中心軸と一致している。
【0035】
コイルフィラメント15は、螺旋状に巻回しつつ溝14aと同じ方向に延びるフィラメントである。コイルフィラメント15は、例えばタングステンによって形成されており、通電されることによって熱電子を放出する。コイルフィラメント15は、溝14a内に半ば収納されているが、ウエネルト14に接触はしていない。
【0036】
絶縁ブロック13b及び13cは、絶縁材料からなる円環状の部材であり、その中心軸はシールド12の中心軸と一致している。絶縁ブロック13b及び13cの厚さは、例えばそれぞれ1ミリメートル以下である。絶縁ブロック13bは、Xエレクトロード16を保持すると共に、Xエレクトロード16をウエネルト14から絶縁する。絶縁ブロック13cは、Yエレクトロード17を保持すると共に、Yエレクトロード17をXエレクトロード16から絶縁する。
【0037】
一対のXエレクトロード16a及び16bは、経路Lを挟んで相互に対向するように設けられており、X方向に配列されている。Xエレクトロード16aと16bとの間の距離は、コイルフィラメント15の長手方向の長さよりも長い。また、一対のYエレクトロード17a及び17bも、経路Lを挟んで相互に対向するように設けられており、X方向及びZ方向の双方に対して直交するY方向に配列されている。
【0038】
Xエレクトロード16は、所謂電極対からなるジェネレータであり、電圧が印加されて、Xエレクトロード16a及び16b間に電界を発生させる。このXエレクトロード16は、ステンレス等の非磁性金属により形成されている。また、一対のXエレクトロード16の形状は相互に同一である。各Xエレクトロード16の形状は、経路L上の1点を中心とする円板の一部であり、その弦はY方向に延びている。また、Xエレクトロード16における経路Lに面した端面16cは、+Z方向側が開くように、Z方向に対して傾斜している。すなわち、一対のXエレクトロード16におけるアノード22側の部分間の距離が、コイルフィラメント15側の部分間の距離よりも大きくなるように、経路Lが延びる方向に対して傾斜している。端面16cのX方向に対する傾斜角θ(
図1参照)は、例えば50〜80度であり、例えば70度である。
【0039】
Yエレクトロード17は、所謂電極対からなるジェネレータであり、電圧が印加されて、Yエレクトロード17a及び17b間に電界を発生させる。このYエレクトロード17は、ステンレス等の非磁性金属により形成されている。一対のYエレクトロード17の形状は相互に同一であり、経路L上の1点を中心とする円板の一部であり、その弦はX方向に延びている。Yエレクトロード17の厚さは、Xエレクトロード16の厚さよりも薄く、Yエレクトロード17における経路Lに面した端面17cは、Z方向に対して平行である。また、一対のYエレクトロード17a及び17b間の距離は、例えば、コイルフィラメント15の直径の10倍程度である。
【0040】
ウエネルト14、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bには、X線管1の外部から電位が印加される。また、コイルフィラメント15には、X線管1の外部から電力が供給される。このXエレクトロード16a及び16b並びにYエレクトロード17a及び17bは相互に絶縁されており、これらの電位は相互に独立して制御可能となっている。
【0041】
次に、上述の如く構成されたX線管1の動作について
図3に基づき説明する。まず、真空シールドチャンバ21内を真空とする。次に、アノード22とウエネルト14との間に、ウエネルト14を負極としアノード22を正極とする電圧を印加する。例えば、アノード22に接地電位を印加し、ウエネルト14に−150kVの電位を印加する。また、シールド12に接地電位を印加する。これにより、真空シールドチャンバ21内に、ウエネルト14からアノード22に向かう電界が形成される。
【0042】
また、コイルフィラメント15の電位は、ウエネルト14の電位よりもやや正極側の電位、例えば、−140kVとする。一方、X線管1の外部から回転軸23を回転させ、アノード22を回転させる。
【0043】
この状態で、コイルフィラメント15に、X線管1の外部から電力を供給して通電させる。これにより、コイルフィラメント15が加熱され、熱電子を放出する。放出された電子は、ウエネルト14によるレンズ効果によって収縮し、経路Lに沿って電子ビームEBを形成し、アノード22の側面22aに対して照射される。
【0044】
アノード22の側面22aにおける電子ビームEBが照射される領域を実焦点F
EBとする。実焦点F
EBの形状は、コイルフィラメント15の形状が縮小された形状である。なお、このとき、アノード22を回転させることにより、アノード22の焦点焼けを防止している。
【0045】
これにより、アノード22の実焦点F
EBに相当する部分がX線を出射する。X線は窓25に到達し、窓25を透過してX線管1の外部に出射する。このようにして、X線管1は、X線CT装置のX線源として使用される。
【0046】
このX線管1は、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bにそれぞれ電位を印加することにより、静電場を形成し、電子ビームEBの軌道を制御し、実焦点F
EBの大きさを制御することができる。
【0047】
具体的には、Xエレクトロード16、及びYエレクトロード17の基準電位をウエネルト14の電位とした上で、これに数kV程度以内の電位を重畳する。
【0048】
Xエレクトロード16a及び16bの電位をいずれもウエネルト14の電位と等しくした場合を示す
図3(b)を基準にし、例えば、Xエレクトロード16a及び16bの双方に対して、いずれもウエネルト14の電位に対して+2kVとするように、同じ正の電位を重畳する。そうすると、
図3(a)に示すように、電子ビームEBのビーム径をX方向において拡大することができ、実焦点F
EBのX方向におけるサイズを大きくすることができる。
【0049】
逆に、Xエレクトロード16a及び16bの双方に対して、いずれもウエネルト14の電位に対して−2kVとするように、同じ負の電位を重畳する。そうすると、
図3(c)に示すように、電子ビームEBのビーム径をX方向に縮小することができ、実焦点F
EBのX方向における大きさを小さくすることができる。
【0050】
同様に、Y方向についても、Yエレクトロード17の電位を制御することにより、実焦点F
EBのY方向における大きさを制御することができる。即ち、同様に、Yエレクトロード17a及び17bに対する同じの正の電位の重畳においては、実焦点F
EBのY方向におけるサイズを大きくすることができる。同様に、Yエレクトロード17a及び17bに対する同じの負の電位の重畳においては、実焦点F
EBのY方向におけるサイズを小さくすることができる。
【0051】
図4は、このようなX線管1を搭載したX線CT装置100の構成を示すブロック図である。
【0052】
X線CT装置は、架台装置110、寝台装置120、及び処理ユニット130を備えて構成されている。架台装置110と寝台装置120は、処理ユニット130により制御可能に信号線で接続されている。
【0053】
架台装置110は、X線を主とする放射線を曝射し、被検体を透過した放射線を検出する装置であり、開口を有する。この架台装置110の内部には、ガントリと呼ばれる回転架台111が収容されている。X線管1は、この回転架台111に検出器112と対になって設置される。X線管1と検出器112とは、回転架台111の開口を挟んで対向して設置される。また、架台装置110の内部には、X線管1と対になって高電圧発生装置113と絞り駆動装置114が配置され、回転架台111と対になって回転駆動装置115が配置され、検出器112と対になってデータ収集装置116が配置される。
【0054】
回転架台111は、回転駆動装置115の駆動に従動して開口を中心に回転する。高電圧発生装置113は、X線管1のコイルフィラメント15に対する加熱電流の供給及び高電圧の印加、Xエレクトロード16、Yエレクトロード17、及びウエネルト14に対する電圧の印加をそれぞれ独立して行う。この高電圧発生装置113は、高周波数インバータ方式、すなわち50/60Hzの交流電源を整流して直流とし、それを数kHz以上の高周波数の交流に変換して昇圧するとともにそれを再度整流して印加する方式のものが適用される。
【0055】
絞り駆動装置114は、X線管1と検出器112との間に介在するコリメータ117の照視野形状を可変させることで、発生した放射線をファンビーム形状やコーンビーム形状に絞る。
【0056】
検出器112は、多列多チャンネルの放射線検出素子を配し、被検体Pを透過した放射線を検出して、その検出データ(純生データ)を電流信号として出力する。放射線検出素子は、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形や、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形が主流である。
【0057】
データ収集装置116は、放射線検出素子毎にI−V変換器と積分器とプリアンプとA/D変換器を備え、各放射線検出素子からの電流信号を電圧信号に変換し、電圧信号を放射線の曝射周期に同期して周期的に積分して増幅し、ディジタル信号に変換している。データ収集装置116は、ディジタル信号に変換した検出データを信号線を介して処理ユニット130に出力する。
【0058】
寝台装置120は、基台の上面に寝台天板121を載置する。寝台天板121には、被検体Pが載置される。寝台天板121は、寝台駆動装置122の駆動に従動して所定の速度で開口軸方向に移動可能となっている。
【0059】
回転架台111の回転と寝台天板121の移動が同時に行われることで、X線管1及び検出器112と寝台天板121との相対移動がヘリカル形状となり、ヘリカルスキャンが実施される。また寝台天板121の停止中に回転架台111の回転が行われることで、コンベンショナルスキャン又はダイナミックスキャンが実施される。
【0060】
処理ユニット130は、スキャン制御部131と、前処理部132と、投影データ記憶部133と、再構成処理部134と、画像記憶部135と、画像処理部136と、表示装置137と、入力装置138とを備える。
【0061】
表示装置137は、CRTや液晶ディスプレイ等のモニタであり、再構成された被検体P内の画像を表示する。入力装置138は、キーボード、マウス、トラックボール等の入力インターフェースであり、操作者により撮影条件が入力され、また配置されている開始ボタンの押下等が入力される。
【0062】
スキャン制御部131は、入力装置138を用いて入力された撮影条件に従って、スキャンを制御する。撮影条件には、被検体の総撮影範囲、総撮影範囲内で区分けされた各区域の範囲、ヘリカルピッチ(HP)、回転速度、管電圧(kV)、管電流(mA)、及び実焦点F
EBのサイズ等が含まれる。
【0063】
スキャンの制御としては、高電圧発生装置113、回転駆動装置115、データ収集装置116、絞り駆動装置114、及び寝台駆動装置122、前処理部132、再構成処理部134に対して、所定のタイミングで各種の制御信号を出力することで、回転架台の回転、寝台の移動、X線管1が曝射するX線の線量、X線管1内で出射される実焦点F
EBのサイズ、投影データの前処理、及び画像の再構成を制御する。
【0064】
特に、X線管1のアノード22に照射される電子の実焦点F
EBのサイズにおける制御では、スキャン制御部131は、実焦点F
EBを大サイズにするときにXエレクトロード16a及び16bの双方に対して同じ正の電位を重畳する。例えば、いずれにもウエネルト14の電位に対して+2kVとするように、正の電位を重畳する。Yエレクトロード17に対しても同様である。
【0065】
一方、実焦点F
EBを小サイズにするときは、スキャン制御部131は、Xエレクトロード16a及び16bの双方に対して同じ負の電位を重畳する。例えば、いずれにもウエネルト14の電位に対して−2kVとするように、負の電位を重畳する。Yエレクトロード17に対しても同様である。
【0066】
Xエレクトロード16及びYエレクトロード17に対する電位の制御では、スキャン制御部131は、高電圧発生装置113に対して電位を制御する制御信号を出力し、高電圧発生装置113が制御信号に従った電位を付与する。
【0067】
前処理部132は、純生データに対してX線の強度を補正する感度補正を施し、投影データPDを投影データ記憶部133に出力する。投影データ記憶部133には、前処理部132から出力された投影データが記憶される。各投影データには、ビュー番号が付される。ビュー番号は、X線を曝射した角度を示す。例えば、X線CT装置では、回転架台が1周する間にX線管1がX線を900回曝射すると、360/900にX線の曝射角度が区分けされ、その区分けに対応してビュー番号が付される。
【0068】
再構成処理部134は、投影データを逆投影することで被検体P内の画像を再構成する。この再構成処理部134は、Feldkamp法に代表される画像再構成アルゴリズムによる再構成処理により、投影データ記憶部133から読み出した投影データを逆投影し、被検体P内を画像データとして再構成する。再構成された画像データは、画像記憶部135に入力されて格納される。
【0069】
画像処理部136は、画像記憶部135に記憶されている画像データに対して、直交座標系のビデオフォーマットに変換するスキャンコンバージョン処理等の各種の画像処理を施して表示画像を生成する。表示装置137は、この画像処理部136で生成された表示画像を表示する。
【0070】
このようなX線CT装置100の動作例を実焦点F
EBのサイズ変更を主体として説明する。まず、リアルプレップスキャンを例に採り説明する。
【0071】
リアルプレップスキャンは、被検体Pに投与した造影剤が関心スライスに流入するタイミングを低線量によるスキャンで得られた画像のCT値に基づいて計り、CT値がある程度高くなった時点で本スキャンに移る技術である。
【0072】
スキャン制御部131は、X線CT装置の各ユニットをプレップスキャンとなる撮影条件で駆動させ、再構成された画像のCT値と閾値とを比較し、CT値が閾値を超えると、X線CT装置の各ユニットを本スキャンとなる撮影条件で駆動させる。
【0073】
X線管1に対するプレップスキャンとなる撮影条件として、スキャン制御部131は、X線管1のコイルフィラメントから出射される電子が小サイズの実焦点F
EBでアノード22に照射されるように、Xエレクトロード16a及び16bの双方に対して、及びYエレクトロード17a及び17bの双方に対して同じ正の電位を重畳する。
【0074】
また、X線管1に対する本スキャンとなる撮影条件として、スキャン制御部131は、X線管1のコイルフィラメント15から出射される電子が大サイズの実焦点F
EBでアノード22に照射されるように、Xエレクトロード16a及び16bの双方に対して、及びYエレクトロード17a及び17bの双方に対して同じ負の電位を重畳する。
【0075】
プレップスキャンとなる撮影条件、及び本スキャンとなる撮影条件における被検体Pの総撮影範囲、総撮影範囲内で区分けされた各区域の範囲、ヘリカルピッチ(HP)、回転速度、管電圧(kV)、管電流(mA)等は、表示装置137に設定画面を表示させ、この設定画面を参照しつつ入力装置138を用いた入力によって作成され、制御信号として各ユニットに出力される。
【0076】
プレップスキャンでは、スキャン制御部131は、入力されたプレップスキャンの撮影条件に従うが、一般的に、関心スライスの周囲に低線量、及び大サイズの実焦点F
EBでX線を曝射させつつ、低解像度で画像を再構成させる。そして、スキャン制御部131は、その再構成された画像のCT値と閾値とを比較し、CT値が閾値を超えると、本スキャンに移行させる。本スキャンでは、スキャン制御部131は、入力された本スキャンの撮影条件に従うが、一般的に、関心スライスの周囲に予定していた線量、及び小サイズの実焦点F
EBでX線を曝射させつつ、予定していた解像度で画像を再構成させる。
【0077】
図5は、リアルプレップスキャンに係る実焦点F
EBのサイズの変更制御の動作を示すフローチャートである。
【0078】
具体的には、まず、スキャン制御部131には、プレップスキャン及び本スキャンの撮影条件が入力された後、開始ボタンの押下信号が入力される(S01)。
【0079】
スキャン制御部131は、開始ボタンが押下されると、高電圧発生装置113に対して制御信号を出力し、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bの電位に同じ正の電位を重畳した上で(S02)、コイルフィラメント15に対してプレップスキャンの撮影条件に従った管電流の供給と管電圧の印加する(S03)。
【0080】
このS02及びS03におけるX線管1の制御と並行して、スキャン制御部131は、入力された関心スライス上に回転架台を位置させるように寝台天板121を移動させておき、回転架台111を回転させる。即ち、スキャン制御部131は、まずX線CT装置100にプレップスキャンを行わせている。また、スキャン制御部131は、このプレップスキャンの段階では、電子ビームEBのビーム径が拡大させ、アノード22上の実焦点F
EBのサイズを大きくしている。
【0081】
そして、スキャン制御部131は、プレップスキャンと並行して、再構成処理部134を制御して、プレップスキャンにより得られた投影データから画像を再構成させる(S04)。画像が再構成されると、スキャン制御部131は、再構成された画像を画像記憶部135から読み出して、事前に設定した関心領域ROI内の複数画素のCT値を抽出し、その平均値CTave.を計算する(S05)。そして、スキャン制御部131は、予め記憶している閾値THとCT平均値CTave.とを比較する(S06)。
【0082】
比較の結果、CT平均値CTave.が閾値THに達していないときには(S06,No)、スキャン制御部131は、S02及びS03における大サイズの実焦点F
EBにおけるプレップスキャンと、S04乃至S06のCT値CTave.と閾値THとの比較を継続させる。
【0083】
一方、比較の結果、CT平均値CTave.が閾値THに達していると(S06,Yes)、スキャン制御部131は、本スキャンの制御に移行する。
【0084】
即ち、スキャン制御部131は、高電圧発生装置113に対して制御信号を出力することで、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bに対して同じ負の電位を重畳させた上で(S07)、本スキャン条件の管電圧及び管電流をコイルフィラメント15に印加させる(S08)。
【0085】
このS07及びS08では、スキャン制御部131は、この段階でX線CT装置100に本スキャンに移行させている。また、スキャン制御部131は、この本スキャンへの移行に伴って、電子ビームEBのビーム径を縮小させ、アノード22上の実焦点F
EBのサイズを小さくしている。
【0086】
本スキャンは、予定した継続時間、予定した回転数、又はヘリカルスキャンであれば予定したヘリカルスキャン範囲のデータ収集が完了するといった終了条件を満たすまで、継続され、その条件を満たしたときに、本スキャンが終了する。
【0087】
このようなX線CT装置のリアルプレップスキャンにおけるスキャン態様の変更と実焦点F
EBのサイズの変更との関係について
図6及び
図7に基づき説明する。
図6は、CT値に基づくスキャン態様の変更とこのスキャン中での実焦点F
EBのサイズを示す模式図である。
図7は、本実施形態及び従来のリアルプレップスキャンを示す図である。
【0088】
まず、
図6に示すように、CT値CTave.が閾値THよりも低いときには、スキャン制御部131は、プレップスキャンを行わせ、且つコイルフィラメント15から出射される電子ビームEBのビーム径が拡大させ、アノード22上の実焦点F
EBのサイズを大きくする。このプレップスキャン中は、アノード22上に集束する電子の実焦点F
EBのサイズが大きいため、アノード22が焦点焼けを起こしにくい。
【0089】
造影剤が関心スライスに流入してくると、徐々にCT値CTave.が上昇していく。CT値CTave.が閾値THを超えると、スキャン制御部131は、スキャン条件を本スキャンのものに変更し、且つコイルフィラメント15から出射される電子ビームEBのビーム径を縮小させ、アノード22上の実焦点F
EBのサイズを小さくする。
【0090】
従来は、
図7(b)及び(c)に示すように、リアルプレップスキャンを行う場合、スキャン中に実焦点F
EBのサイズを迅速に切り替えることができなかったため、リアルプレップスキャンの開始から本スキャンの終了まで、統一した実焦点F
EBのサイズで電子をアノード22に照射してX線を発生させていた。実焦点F
EBのサイズを小サイズに統一すると、アノード22が焦点焼けにより不具合が生じるまでの制限時間をリアルプレップスキャンの開始当初からカウントしなくてはならず、本スキャンにおいて満足な撮影時間を得られなかった。一方、実焦点F
EBのサイズを大サイズに統一すると、アノード22の焦点焼けを気にする必要はなくなるが、再構成される画像は低解像度になっていた。
【0091】
しかし、
図7(a)に示すように、本実施形態に係るX線CT装置100によれば、本スキャンに移行すると、アノード22上に集束する電子の実焦点F
EBのサイズが小さくなりアノード22の焦点焼けが生じやすくなるが、プレップスキャン中は大サイズであったため、アノード22が焦点焼けにより不具合が生じるまでの制限時間の全てを使って本スキャンが可能となる。即ち、本スキャンの撮影時間を延ばすことができるとともに、再構成される画像も高解像度となる。
【0092】
次に、複数部位を一括スキャンする場合を例に採り説明する。
【0093】
複数部位を一括してスキャンする場合は、連続する複数の部位を一の曝射範囲としてその始端から末端まで連続して撮影位置を動かしていき、各部位にそれぞれスキャン条件が設定されていて、各部位に撮影位置が到達するとその部位のスキャン条件にリアルタイムで変更する。
【0094】
曝射範囲及び各部位を表わす区域は、予め、表示装置137に表示されるスキャノグラムを参照して入力装置138を用いて入力される。スキャノグラムは、本スキャンに先立って撮影された被検体の平面透過像であり、スキャノグラムの各画素がどの撮影位置に相当するかの対応付けがされている。
【0095】
例えば、曝射範囲は、スキャノグラム上に矩形の図形を表示させることにより決定される。スキャン制御部131は、矩形の両短辺が描画された画素の座標を撮影位置に換算して、それら撮影位置を曝射の開始位置及び終了位置として制御情報に含める。
【0096】
また、複数の部位の区域分けは、例えば、矩形図形を区切るラインを表示させることによって決定される。スキャン制御部131は、曝射範囲を示す矩形の図形とラインとで区分けされた区域の両辺が描かれた画素の座標を撮影位置に換算して、それら撮影位置を各区域の開始位置及び終了位置として制御情報に含める。尚、この矩形の図形及びラインは、例えば入力装置138のマウスによって変更可能となっている。
【0097】
各部位を表わす区域に対する撮影条件は、予め表示装置137に表示される設定画面を参照して入力装置138を用いて入力され、スキャン制御部131により制御情報に含められる。
【0098】
スキャン制御部131は、このようにして設定されたスキャン条件に従って複数部位を一括スキャンさせる。具体的には、スキャン制御部131は、寝台天板を曝射範囲の開始位置から終了位置まで移動させつつ、その間、回転架台111を回転させ、且つX線管1にX線を曝射させる。また、スキャン制御部131は、寝台天板121の位置を監視し、撮影位置が次の区域に到達すると、その区域に対して入力された撮影条件でX線を曝射及び検出して画像を再構成するようにX線CT装置100の各ユニットを制御する。
【0099】
ここで、スキャン制御部131は、撮影部位が次の区域に変わるとき、その区域に応じて実焦点F
EBのサイズを変更させる。例えば、撮影条件の入力の際に、部位毎に実焦点F
EBのサイズが入力されていれば、その入力に合わせて実焦点F
EBのサイズを変更する。また、撮影条件の入力の際に、区域毎に管電流が入力されていれば、その管電流に合わせて実焦点F
EBのサイズを変更する。
【0100】
管電流と実焦点F
EBのサイズとの関係は、管電流が所定範囲の大電流であると実焦点F
EBは大サイズ、管電流が所定範囲の小電流であると実焦点F
EBは小サイズのように、予めステップ関数等により記憶しておく。大電流の範囲及び小電流の範囲は、電子の実焦点F
EBのサイズによって可能な管電流の範囲で定まる。
【0101】
図8は、複数部位を一括スキャンする場合の実焦点F
EBのサイズの変更制御の動作を示すフローチャートである。具体的には、まず、スキャン制御部131には、曝射範囲の区域分けとその区域毎の撮影条件が入力された後、開始ボタンの押下信号が入力される(S11)。
【0102】
スキャン制御部131は、開始ボタンが押下されると、X線を曝射する区域に対する管電流が大電流であれば(S12,Yes)、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bに同じ正の電位を重畳させておく(S13)。一方、X線を曝射する区域に対する管電流が小電流であれば(S12,No)、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bに同じ負の電位を重畳させておく(S14)。
【0103】
その上で、スキャン制御部131は、高電圧発生装置113に対して制御信号を出力することで、最末端の区域に対する撮影条件の管電圧及び管電流をコイルフィラメント15に印加させる(S15)。尚、スキャン制御部131は、このS15のX線管1に対する制御に先立って、1番目の区域の始端に回転架台111を位置させ、このX線管1に対する制御と並行して、回転架台111を回転させるとともに、寝台天板121を移動させる。
【0104】
撮影位置が次の区域に到達すると(S16,Yes)、スキャン制御部131は、次の区域に対する管電流が大電流であれば(S17,Yes)、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bに同じ正の電位を重畳させておく(S18)。一方、次の区域に対する管電流が小電流であれば(S17,No)、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bに同じ負の電位を重畳させておく(S19)。
【0105】
その上で、スキャン制御部131は、高電圧発生装置113に対して制御信号を出力することで、次の区域に対する撮影条件の管電圧及び管電流をコイルフィラメント15に印加させる(S20)。
【0106】
この本スキャンは、予定した区域の全てに対するスキャンが終了するまで継続され、全ての区域のスキャンが終了したときに終了する。
【0107】
このようなX線CT装置100の複数部位の一括スキャンにおけるスキャン態様の変更と実焦点F
EBのサイズの変更との関係について
図9に基づき説明する。
図9は、撮影部位の変更に伴う実焦点F
EBのサイズの変更を示す模式図である。
【0108】
撮影部位が次の部位に移行し、その部位に対して設定された管電流が小電流のときには、スキャン制御部131は、コイルフィラメント15から出射される電子ビームEBのビーム径を縮小させ、アノード22上の実焦点F
EBのサイズを小さくする。一方、撮影部位が次の部位に移行し、その部位に対して設定された管電流が大電流のときには、スキャン制御部131は、コイルフィラメント15から出射される電子ビームEBのビーム径が拡大させ、アノード22上の実焦点F
EBのサイズを大きくする。
【0109】
従来より、複数部位を一括スキャンする場合、管電流を部位毎に可変する技術が提示されているが、小サイズのコイルフィラメントを用いてX線を曝射させる場合、どうしても管電流に上限がある。そのため、設定された管電流が小サイズのフィラメントの上限を超える場合には、大サイズのフィラメントに切り替えることが考えられる。または、始めから大サイズのコイルフィラメントを用いてX線を曝射させることが考えられる。
【0110】
前者の場合、小フィラメントの上限を超える管電流が設定された区域に撮影位置が及ぶとき、設定を精度よく反映した管電流を供給できず画質の低下を招くか、大フィラメントに切り替えねばならず、そのために数秒程度の時間を要し、寝台天板121の移動を止めなくてはならないおそれがある。
【0111】
また、後者の場合、寝台天板121の移動を止めることなく迅速にスキャンを終了させることができるが、低解像度の画像となり所望する画質を得られないおそれがある。
【0112】
しかし、本実施形態に係るX線CT装置100によると、設定された管電流を精度よくコイルフィラメント15に導通させることができ、所望の管電流に即した低ノイズ又は高解像度の画像を部位毎に再構成することが期待できるとともに、複数部位の一括スキャンを寝台天板の移動を止めることなく迅速化に行うことができる。
【0113】
次に、ECG同期スキャンを例に採り説明する。
【0114】
図10は、ECG同期スキャンに係るX線CT装置100を示すブロック図である。
図10に示すように、X線CT装置100は、心電計140を含む。心電計140は、被検体の心拍動を示す心電図波形を検出して心電図波形データを処理ユニット130に出力する。この心電計140は、電極群を有し、電極群は、寝台天板121に載置される被検体Pの胸部や四肢に取り付けられる。電極間に生じた電流値の変化、電圧値の変化、インピダンスの変化等に基づいて心電図波形信号を連続的に検出し、AD変換することで心電図波形が時系列に並ぶ心電図波形データを生成する。
【0115】
スキャン制御部131は、例えばP波等の所定の同心時相の心電図波形が表れた時とその他の時とでコイルフィラメント15が出射した電子の実焦点F
EBのサイズを変更する。例えば、同心時相の心電図波形が表れた時には、電子の実焦点F
EBを小サイズにして解像度を上げ、その他の時には、電子の実焦点F
EBを大サイズにする。
【0116】
また、再構成処理部134は、所定の同心時相が表れた時のX線曝射ときに得られた投影データを抽出して画像を再構成する。
【0117】
図11は、ECG同期スキャンに係る実焦点F
EBのサイズの制御動作を示すフローチャートである。具体的には、まず、スキャン制御部131には、スキャン条件が入力された後、開始ボタンの押下信号が入力される(S21)。
【0118】
スキャン制御部131は、開始ボタンが押下されると、高電圧発生装置113に対して制御信号を出力することで、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bに同じ正の電位を重畳させた上で(S22)、コイルフィラメント15に対してプレップスキャンの撮影条件の管電流の供給と管電圧の印加をする(S23)。
【0119】
スキャン制御部131は、心電計140から出力された心電図波形データを所定間隔毎に読み出し(S24)、所定の心時相を表わす波形であるか判断する(S25)。心電図波形データが所定の心時相でなければ(S25,No)、スキャンを継続しつつこのS24の判断を繰り返す。当該判断では、例えばR波を検出するとき、心電図波形が示す電位が所定の閾値を超えるか否かを比較により判断している。
【0120】
一方、心電図波形データが所定の心時相を表わす波形である場合(S25,Yes)、スキャン制御部131は、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bの電位をウエネルト14の電位に対して同じ負の電位を重畳する(S26)。
【0121】
スキャンは、予定した継続時間、予定した回転数、又はヘリカルスキャンであれば予定したヘリカルスキャン範囲のデータ収集が完了するといった終了条件を満たすまで、継続され、その条件を満たしたときに、スキャンが終了する。
【0122】
このようなX線CT装置100のECG同期と実焦点F
EBのサイズの変更との関係について
図12に基づき説明する。
図12は、ECG同期に係る実焦点F
EBのサイズの変更を示す模式図である。
【0123】
心電計140から出力された心電図波形が例えばR波以外のときには、スキャン制御部131は、コイルフィラメント15から出射される電子ビームEBのビーム径を拡大させておき、アノード22上の実焦点F
EBのサイズを大きくしておく。一方、心電計140から出力された心電図波形がR波を示すときには、スキャン制御部131は、このR波の心電図波形が入力している間、コイルフィラメント15から出射される電子ビームEBのビーム径を縮小させ、アノード22上の実焦点F
EBのサイズを小さくする。
【0124】
従来、心電図波形に同期して同一心時相の投影データを抽出して画像を再構成する技術が提示されていたが、再構成に十分な同一心時相の投影データを取得するべく、ある程度長い時間スキャンを継続させなければならなかった。そうすると、アノード22が焦点焼けすることによる不具合を回避するべく、実焦点F
EBを大サイズとする必要があり、高解像度の画像との両立を図りづらかった。
【0125】
しかし、本実施形態によると、所望の心時相についての再構成画像を高解像とすることができる一方、アノード22の焦点焼けによる不具合を気にすることなくスキャンを継続することができる。
【0126】
次に、ビュー毎に実焦点F
EBを変更して一度に高解像度の画像と低ノイズの画像とその中間の画像を再構成する例を説明する。
【0127】
このX線CT装置100では、ビュー毎に電子の実焦点F
EBのサイズを可変する。そして、同一サイズの実焦点F
EBでアノード22が照射されることにより発生したX線の曝射で得られた投影データを纏めて個々に画像を再構成することで、大サイズの実焦点F
EBに対応した画像、小サイズの実焦点F
EBに対応した画像を生成し、また、全ての投影データを基にした画像を再構成する。即ち、ビュー毎に電子の実焦点F
EBのサイズを可変することにより、一度のスキャンで同一関心スライスにおける高解像度の画像と低ノイズの画像とその中間の画像を取得する。
【0128】
即ち、従来のX線CT装置では、各種の画像を撮影しようと思えば、その種類だけスキャンを行わなければならなかったが、このX線CT装置100によると、一度のスキャンで高解像度、低ノイズ、及びその中間の画像を再構成できる。
【0129】
この実施形態において、スキャン制御部131は、回転架台111の回転中にX線管1のX線曝射毎にXエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bの電位を変更していく。
【0130】
図13は、このようなX線CT装置100のビュー毎の実焦点F
EBのサイズの変更と画像の生成を示す模式図である。
【0131】
例えば、スキャン制御部131は、偶数回目のX線の曝射においては、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bに同じ正の電位を重畳することにより、電子の実焦点F
EBを大サイズにし、奇数回目のX線曝射においては、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bに同じ負の電位を重畳することにより、電子の実焦点F
EBを小サイズにする。即ち、ビューが切り替わる毎に実焦点F
EBを大サイズと小サイズとに交互に切り替えていく。尚、ビュー毎に実焦点F
EBのサイズを対応付けておき、そのビューでX線を曝射するときに、対応付けたサイズに切り替えるようにしてもよい。
【0132】
また、再構成処理部134は、小サイズの実焦点F
EBで電子が照射されることにより発生した投影データと、大サイズの実焦点F
EBで電子が照射されることにより発生した投影データとを抽出して、各々を逆投影することで画像の再構成を行う。また、全ての投影データから画像の再構成を行う。再構成処理部134に入力される投影データには、ビュー番号が付帯する。再構成処理部134は、このビュー番号を参照して実焦点F
EBのサイズを判断する。
【0133】
例えば、ビューが切り替わる毎に実焦点F
EBを大サイズと小サイズとに交互に切り替えていく場合には、再構成処理部134は、ビュー番号が偶数番目の投影データと奇数番目の投影データとをそれぞれ抽出して、各々画像を生成する。
【0134】
図14は、ビュー毎に電子の実焦点F
EBのサイズを切り替える制御動作を示すフローチャートである。この動作では、ビューが切り替わる毎に実焦点F
EBを大サイズと小サイズとに交互に切り替えていく場合を例に説明する。
【0135】
具体的には、高電圧発生装置113は、高電圧のパルス電流をコイルフィラメント15に供給すると(S31)、スキャン制御部131は、X線曝射の回数をカウントする(S32)。
【0136】
スキャン制御部131は、X線曝射の回数が偶数であると(S33,Yes)、次のパルス電流の供給に備えて、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bの電位をウエネルト14の電位に対して同じ負の電位を重畳させる(S34)。
【0137】
一方、X線曝射の回数が奇数であると(S33,No)、次のパルス電流の供給に備えて、Xエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bの電位をウエネルト14の電位に対して同じ正の電位を重畳させる(S35)。
【0138】
この本スキャンは、予定したスキャンが終了していなければ(S36,No)、S32に戻り全てのスキャンが終了したときに終了する。
【0139】
図15は、画像の再構成処理を示すフローチャートである。再構成処理部134は、投影データ記憶部133から偶数のビュー番号が付された1スライス分の投影データを読み出し(S41)、読み出した投影データを逆投影して画像を再構成する(S42)。次に、再構成処理部134は、投影データ記憶部133から奇数のビュー番号が付された1スライス分の投影データを読み出し(S43)、読み出した投影データを逆投影して画像を再構成する(S44)。更に、再構成処理部134は、投影データ記憶部133から1スライス分の全ての投影データを読み出し(S45)、読み出した投影データを逆投影して画像を再構成する(S46)。
【0140】
以上のように、X線CT装置100は、電子の照射経路L上に電界を発生させることで電子をその出力に応じて集束させるジェネレータたるXエレクトロード16a及び16b、Yエレクトロード17a及び17bを有するX線管1を搭載し、スキャン制御部131は、このジェネレータの出力を制御し、当該制御によりスキャン中に電子の実焦点F
EBのサイズを変更させるようにした。
【0141】
一例として、スキャン制御部131は、画像のCT値を計測し、CT値に基づいてプレップスキャンから本スキャンに切り替えるとともに、実焦点F
EBのサイズを変更させる。サイズの変更は、例えば、実焦点F
EBのサイズを大サイズから小サイズへ変更させる。
【0142】
これにより、アノード22が焦点焼けにより不具合が生じるまでの制限時間の全てを使って本スキャンが可能となるため、画質が向上する。
【0143】
なお、ジェネレータとして本実施形態では、電界を発生させる電極対を用いたが、そのほか、
図16に示すように真空シールドチャンバ21の外部に電磁偏向器18を設けるようにしてもよい。この電磁偏向器18は、経路Lを囲むように設けられたトロイダルコイル18aをその中心軸が経路Lと一致するように設けている。この電磁偏向器18により大きな電磁場を発生させ、電子ビームEBを磁界を介して制御可能となる。
【0144】
また、一例として、撮影位置制御手段としてスキャン制御部131は、入力された曝射範囲内でX線の曝射位置を連続的に変更させ、且つスキャン制御部131は、曝射位置が到達する区域毎に実焦点F
EBのサイズを変更させる。例えば、区域毎に管電流の設定が入力されれば、スキャン制御部131は、X線の曝射位置が到達する区域の管電流に応じて実焦点F
EBのサイズを変更させた上でその管電流に変更させる。
【0145】
これにより、設定された管電流を精度よくコイルフィラメント15に導通させることができ、複数部位の一括スキャンを寝台天板121の移動を止めることなく迅速化に行うことができるとともに、所望の管電流に即した低ノイズ又は高解像度の画像を部位毎に再構成することが期待できる。
【0146】
また、一例として、X線CT装置100は、被検体の心電図波形を取得する心電計140とデータ通信可能に接続され、スキャン制御部131は、心電計から出力される所定の波形の出現に同期して実焦点F
EBのサイズを変更させる。例えば、R波等の所定の波形以外の出現に同期して実焦点F
EBのサイズを大サイズに変更させ、R波等の所定の波形の出現に同期して実焦点F
EBのサイズを小サイズに変更させる。
【0147】
これにより、所望の心時相についての再構成画像を高解像とすることができる一方、アノード22の焦点焼けによる不具合を気にすることなくスキャンを継続することができる。
【0148】
また、一例として、スキャン制御部131は、X線管1がX線を曝射するビュー毎に実焦点F
EBのサイズを変更させる。例えば、ビューが変わる毎に大サイズの実焦点F
EBと小サイズの実焦点F
EBとに交互に変更させる。そして、再構成処理部134は、大サイズの実焦点F
EBに対するビューで曝射したX線を検出して得られた投影データに基づき第1の画像を生成し、小サイズの実焦点F
EBに対するビューで曝射したX線を検出して得られた投影データに基づき第2の画像を生成し、大サイズ及び前記小サイズの焦点サイズに対するビューで曝射したX線を検出して得られた投影データに基づき第3の画像を生成する。尚、入力装置138を用いて第1の画像乃至第3の画像の何れかの選択を入力されると、再構成処理部134は、その選択された画像のみを選択的に生成するようにしてもよい。
【0149】
これにより、一度のスキャンで同一関心スライスにおける高解像度の画像と低ノイズの画像とその中間の画像を取得することができる。