特許第5716077号(P5716077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5716077
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/02 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   F04B21/00 T
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-245053(P2013-245053)
(22)【出願日】2013年11月27日
【審査請求日】2013年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250007
【氏名又は名称】有光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】横山 勝之
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−082902(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、該シリンダ内を軸方向に移動するプランジャと、該プランジャ及びシリンダの間に配され、前記シリンダの内面を保護する保護部材と、該保護部材及びプランジャの間の隙間を封止する第1シール部材とを備えるポンプにおいて、
前記シリンダの両端部それぞれに配してある第1部品及び第2部品と、
前記保護部材及びシリンダの間の隙間を封止する取り外し可能な第2シール部材と
を備え、
前記保護部材は筒状をなし、
単一の前記保護部材を前記シリンダに取り外し可能に設けてあり、
前記シリンダ、第1部品及び第2部品を取り外し可能な連結部材によって連結しており、
前記シリンダに前記第2シール部材を配置する溝が設けてあること
を特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記保護部材はステンレス鋼材によって構成されていること
を特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を送出するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧を発生させる必要があるポンプ、例えば油圧ポンプには往復動ポンプが使用されることが多い。往復動ポンプは、吸入口及び吐出口に接続されたシリンダと、該シリンダ内を往復動するプランジャとを備える。プランジャとシリンダとの間には弾性を有するシール部材が設けてある。
【0003】
プランジャの往復動が繰り返し行われることによって、シール部材には正又は負の高圧力が作用する。その結果、シール部材の弾性が徐々に失われ、シール部材とシリンダとの間に隙間が生じ、液体の漏れが発生することがある。
【0004】
隙間の発生によって、シール部材が軸方向に移動する。シリンダには黄銅部材が使用されることが多く、シール部材の移動によってシリンダは容易に摩耗する。また液体に砂等の異物が混入している場合、異物が隙間に侵入し、高圧によってシリンダの内周面上を移動し、シリンダを削り取る。そのためシール部材及びシリンダの間の隙間が更に大きくなり、シリンダ内の圧力が十分に上昇しなくなる。
【0005】
特許文献1には、シリンダの内周面に環状のカラー(保護部材)を接着剤によって固定し、該カラーの内側をプランジャが移動する往復動ポンプが開示してある。カラー及びプランジャの間にシール部材が設けてある。
【0006】
シール部材はカラーによって固定されているので、シール部材はシリンダ内を移動せず、シリンダは摩耗しない。またカラー及びシリンダの間は接着剤によって埋められ、封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4365853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カラー内に位置するシール部材の弾性が失われ、シール部材が動き、カラーが摩耗又は損傷した場合、シール部材及びカラーの間に隙間が生じ、シリンダ内の圧力が十分に上昇しないおそれがある。しかし接着剤によってカラーはシリンダに固定されているので、カラーのみ交換することができない。そのためカラーを交換するためには、シリンダを交換しなければならない。
【0009】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、シリンダの摩耗を防止し、シール部材に不具合が生じた場合でも、シリンダを交換する必要の無いポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るポンプは、シリンダと、該シリンダ内を軸方向に移動するプランジャと、該プランジャ及びシリンダの間に配され、前記シリンダの内面を保護する保護部材と、該保護部材及びプランジャの間の隙間を封止する第1シール部材とを備えるポンプにおいて、前記シリンダの両端部それぞれに配してある第1部品及び第2部品と、前記保護部材及びシリンダの間の隙間を封止する取り外し可能な第2シール部材とを備え、前記保護部材は筒状をなし、単一の前記保護部材を前記シリンダに取り外し可能に設けてあり、前記シリンダ、第1部品及び第2部品を取り外し可能な連結部材によって連結しており、前記シリンダに前記第2シール部材を配置する溝が設けてあることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、保護部材によってシリンダの摩耗を防止している。保護部材、第1シール部材又は第2シール部材に不具合が生じた場合、作業者は連結部材を取り外して、第1部品、第2部品及びシリンダの連結を解除する。作業者は、シリンダから保護部材、第1シール部材又は第2シール部材を取り出し、新たな保護部材、第1シール部材又は第2シール部材に交換する。
またシリンダに溝を設け、該溝に第2シール部材を配置することによって、保護部材及びシリンダの間の隙間をより小さくする。
【0014】
本発明に係るポンプは、前記保護部材はステンレス鋼材によって構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、ステンレス鋼材によって保護部材を構成してあるので、保護部材の耐摩耗性及び剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、保護部材によってシリンダの摩耗を防止することができる。また保護部材、第1シール部材又は第2シール部材に不具合が生じた場合、作業者は連結部材を取り外して、第1部品、第2部品及びシリンダの連結を解除する。作業者は、シリンダから保護部材、第1シール部材又は第2シール部材を取り出し、新たな保護部材、第1シール部材又は第2シール部材に交換する。作業者は、シリンダを交換すること無く、不具合の生じた部品だけを交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係るポンプの構成を略示する縦断面図である。
図2】シリンダ付近の構成を略示する部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を実施の形態に係るポンプを示す図面に基づいて説明する。図1はポンプの構成を略示する縦断面図である。
【0019】
ポンプは、有底円筒状をなすクランクケース10と、該クランクケース10に収容されたクランク機構1と、クランクケース10の開口10a側に同軸的に配してあるシリンダ20と、クランク機構1の駆動によってシリンダ20内を往復動するプランジャ6とを備える。シリンダ20は黄銅部材によって構成されている。
【0020】
クランク機構1は原動軸(図示略)に連結したクランクシャフト2と、該クランクシャフト2にコンロッド3を介して連結したガイド4と、該ガイド4に案内されるピストン5とを備える。ガイド4は中実の筒形をなす。
【0021】
クランクシャフト2はクランクケース10の底部側に位置している。クランクケース10内において、クランクシャフト2の反対側(クランクケース10の開口10a側)に、ガイド通路4aが設けてある。ガイド4及びピストン5はガイド通路4a内にて、クランクケース10の軸方向に並設してある。コンロッド3の一端部はクランクシャフト2に連結してあり、他端部はガイド4に連結している。ガイド4にはピストン5の一端部が連結しており、ピストン5の他端部はプランジャ6に連結している。原動軸の回転は、クランクシャフト2、コンロッド3、ガイド4及びピストン5によって、クランクケース10の軸方向における往復動作に変換され、プランジャ6は、ガイド通路4a及びシリンダ20内を軸方向に沿って往復動する。
【0022】
シリンダ20には液体を吸入する吸入口21が設けてある。シリンダ20には、液体を吐出する吐出口40aを有するケーシング40が設けてある。ケーシング40は、クランクケース10の反対側に位置する。
【0023】
図2はシリンダ20付近の構成を略示する部分拡大縦断面図である。シリンダ20は有底筒状のシリンダ室22を備える。シリンダ室22の開口22aはクランクケース10側に位置する。シリンダ室22の底面には、貫通孔20bが設けてある。
【0024】
ケーシング40の内部には、液体が貯留する筒状の液体室45が設けてある。液体室45とシリンダ室22とは貫通孔20bを介して連通している。
【0025】
液体室45の一端部はシリンダ室22に隣接し、他端部は、吐出口40aに連なる吐出路44に接続している。液体室45の他端部には、逆止弁を有する吐出バルブ40bが設けてある。吐出バルブ40bは、液体室45が正圧の場合に開き、負圧の場合に閉じる。またケーシング40には、吸入口21と液体室45とを連通する吸入路40cが設けてある。吸入路40cは液体室45の中途部に接続している。
【0026】
吸入口21と吸入路40cとは、逆止弁を有する吸入バルブ25を介して連通している。吸入バルブ25は、液体室45が正圧の場合に閉じ、負圧の場合に開く。シリンダ20には、シリンダ室22及び吸入口21を接続する通路23が設けてある。シリンダ室22内の液体は、通路23に入り、吸入口21に至る。吸入口21には、液体を供給するパイプ又はホースが接続される。吐出口40aには、液体を排出するパイプ又はホースが接続される。
【0027】
前記シリンダ室22には、シリンダ室22の内面を保護する有底筒状の保護部材30が設けてある。保護部材30はステンレス鋼材によって構成されている。保護部材30の開口30aはクランクケース10側に位置する。保護部材30の底部には、プランジャ6を挿入する挿入孔30bが設けてあり、挿入孔30bは貫通孔20bと同軸的に配されている。
【0028】
保護部材30の内側には、四つの環状のパッキン43、43、43、43及び三つの環状の第1シール部材41、41、41それぞれが交互に配置されており、軸方向に並んでいる。第1シール部材41はパッキン43の間に挟まれている。第1シール部材41は合成樹脂材からなり、プランジャ6と保護部材30との間を封止する。またパッキン43は合成樹脂材からなり、第1シール部材41よりも硬い。パッキン43は第1シール部材41を狭持して、保持している。なおパッキン43及び第1シール部材41の数は四つ及び三つに限定されるものではなく、シリンダ室22の軸方向の寸法に応じて、適宜変更すればよい。
【0029】
シリンダ室22の開口22a付近の直径は、他の部分よりも大きい。開口22aに、保護部材30を支持する支持リング31が同軸的に設けてあり、シリンダ室22にその一側面部が嵌入している。支持リング31の他側面部は支持リングの一側面部よりも大径であり、開口22a内に位置している。支持リング31は、保護部材30の開口30aの隣に位置する。支持リング31は金属部材によって構成されている。
【0030】
シリンダ室22の中途部における内周面に、環状の溝24が設けてある。該溝24には、環状の第2シール部材42が設けてある。第2シール部材42は、保護部材30とシリンダ室22との間の隙間を封止する。なお保護部材30の外周面に溝を設け、該溝に第2シール部材42を設けてもよい。
【0031】
開口22aには、環状の支持部34が嵌合している。支持部34の内側に、支持リング31の他側面部と、環状の封止部材33とが支持されている。支持部34の内周面には大径凹部34aと、該大径凹部34aよりも小さい小径凹部34bとが形成してある。大径凹部34aは、小径凹部34bよりもシリンダ20側に位置する。大径凹部34a及び小径凹部34bそれぞれに支持リング31の他側面部及び封止部材33が内嵌している。封止部材33は支持リング31の他側面部に隣接している。封止部材33は合成樹脂材からなり、プランジャ6と支持部34との間の隙間を封止する。封止部材33は、シリンダ室22からクランクケース10に液体が移動することを阻止する。
【0032】
クランクケース10、シリンダ20及びケーシング40は、複数のスタッドボルト50及びナット51によって取り外し可能に連結してある。スタッドボルト50及びナット51の連結を解除することによって、作業者はポンプを分解し、シリンダ20及び該シリンダ20内の部品を取り出すことができる。
【0033】
プランジャ6がクランクケース10側に移動した場合、液体室45は負圧になり、吐出バルブ40bは閉じ、吸入バルブ25は開き、吸入口21から液体が吸入され、吸入路40cを通って、液体室45に至る。そしてプランジャ6がケ−シング側に移動した場合、液体室45は正圧になり、吐出バルブ40bは開き、吸入バルブ25は閉じる。液体室45内の液体は、吐出路44を通って、吐出口40aから排出される。
【0034】
なお液体室45の液体がシリンダ室22に浸入した場合、侵入した液体は通路23を通り、吸入口21に至る。
【0035】
実施の形態に係るポンプにあっては、保護部材30によってプランジャ6がシリンダ室22に接触することを防止し、シリンダ20の摩耗を防止することができる。また第1シール部材41が移動し、保護部材30に摩耗が生じた場合や、第1シール部材41又は第2シール部材42の弾性が減少し、不具合が生じた場合には、作業者はスタッドボルト50及びナット51を取り外して、クランクケース10、シリンダ20及びケーシング40の連結を解除し、シリンダ20から保護部材30、第1シール部材41又は第2シール部材42を取り出し、新たな保護部材30、第1シール部材41又は第2シール部材42に交換することができる。すなわち作業者は、シリンダ20を交換すること無く、不具合の生じた部品だけを交換することができる。なおクランクケース10及びケーシング40は第1部品及び第2部品に相当する。
【0036】
また供給される液体に砂等の異物が混入し、異物がシリンダ20及び保護部材30の間の隙間に侵入し、高圧によってシリンダ20の内周面上を移動し、シリンダ20を削り取った場合又は供給される液体に化学薬品が使用され、シリンダ20の内周面が腐食した場合でも、第1シール部材41によって、保護部材30及びプランジャ6の間の隙間が封止されるので、シリンダ室22及び液体室45内の圧力は十分に上昇する。そのため、シリンダ室22の内周面が摩耗・腐食しても、保護部材30に摩耗・腐食等が発生していなければ、継続してポンプを使用することができる。換言すれば、保護部材30、第1シール部材41及び第2シール部材42等を交換しさえすれば、損傷を受けたシリンダ20であっても、継続して使用することができる。
【0037】
また保護部材30又はシリンダ20に溝24を設け、該溝24に第2シール部材42を配置することによって、保護部材30及びシリンダ20の間の隙間をより小さくし、且つ小さくした隙間を第2シール部材42が封止するので、シリンダ室22からクランクケース10側に液体が移動することを防止することができる。なお溝24をシリンダ20に設けた場合、保護部材30に溝が無いので、保護部材30の強度を向上させることができ、また保護部材30に溝を形成する作業が不要となるので、保護部材30の製造費用を削減することができる。シリンダ20に比べて交換する可能性の高い保護部材30については、できるだけ製造費用を削減することが好ましい。
【0038】
また保護部材30を有底筒状に形成することによって、複数の第1シール部材41を保護部材30内に設けることができる。プランジャ6と保護部材30との間に、第1シール部材41を軸方向に複数並設しているので、プランジャ6と保護部材30との間を確実に封止することができる。
【0039】
またステンレス鋼材によって保護部材30を構成してあるので、黄銅によって構成する場合に比べて、保護部材30の耐摩耗性及び剛性を向上させることができる。また第1シール部材41はステンレス鋼材に接触しているので、黄銅に接触している場合に比べて移動し難く、第1シール部材41の寿命を向上させることができる。
【0040】
なお保護部材30は、鋼鉄部材、黄銅等その他の金属部材によって構成することもできる。
【0041】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
6 プランジャ
10 クランクケース(第1部品)
20 シリンダ
24 溝
30 保護部材
30b 挿入孔
40 ケーシング(第2部品)
41 第1シール部材
42 第2シール部材
50 スタッドボルト(連結部材)
51 ナット(連結部材)
【要約】
【課題】シリンダの摩耗を防止し、シール部材に不具合が生じた場合でも、シリンダを交換する必要の無いポンプを提供することを目的とする。
【解決手段】シリンダ20と、該シリンダ20内を軸方向に移動するプランジャ6と、該プランジャ6及びシリンダ20の間に配され、前記シリンダ20の内面を保護する保護部材30と、該保護部材30及びプランジャ6の間の隙間を封止する第1シール部材41とを備えるポンプにおいて、前記シリンダ20の両端部それぞれに配してある第1部品10及び第2部品40と、前記保護部材30及びシリンダ20の間の隙間を封止する取り外し可能な第2シール部材42とを備え、前記保護部材30は前記シリンダ20に取り外し可能に設けてあり、前記シリンダ20、第1部品10及び第2部品40を取り外し可能な連結部材50、51によって連結していることを特徴とするポンプ。
【選択図】図2
図1
図2