(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシガレット巻紙は、40〜55g/m
2の坪量を有し、18g/m
2以上の量で炭酸カルシウムが含有されている。
【0014】
本発明のシガレット巻紙に用いられるパルプ繊維は、通常のシガレット巻紙に使用されている亜麻パルプ繊維、木材パルプ繊維(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等から構成することができる。
【0015】
本発明のシガレット巻紙は、上記パルプ繊維に炭酸カルシウムを18g/m
2以上の量で配合したものである。炭酸カルシウムは、粒子の形態で含有され、その粒径は、コスト、抄紙のしやすさの観点から適宜選ぶことができるが、0.02μm〜10μmであることが好ましい。炭酸カルシウムの含有量は、29g/m
2以下であることが好ましい。炭酸カルシウムの含有量は、20〜25g/m
2であることがより好ましい。本明細書において炭酸カルシウムの含有量は、製造後のシガレット巻紙に含有される炭酸カルシウム量を意味する。シガレット巻紙中の炭酸カルシウム量は、後述の実施例に記載されるとおり、抽出後、カルシウムイオンを定量することにより求めることができる。
【0016】
本発明で用いられる炭酸カルシウムは、化学反応により合成される合成炭酸カルシウムであり、合成炭酸カルシウムの一次粒子の形状およびサイズは、おおよそ揃っており均質である。本明細書において、「一次粒子」は、化学反応により合成された直後の粉体を構成する基本粒子を意味し、「二次粒子」は、多数の一次粒子が凝集して形成された集合体を意味する。
【0017】
用いる炭酸カルシウムの一次粒子の形状に特に制限はなく、紡錘体形状、立方体形状、柱状形状、針状形状のいずれのものも使用できる。しかしながら、一次粒子が柱状形状もしくは針状形状を有する炭酸カルシウムを用いると、その他の形状の炭酸カルシウムを用いた場合よりも主流煙中の一酸化炭素量が有意に低下する。
【0018】
炭酸カルシウムの一次粒子の代表的な形状を
図1に示す。
図1に示される一次粒子は、一方向に伸長した形状を有する。粒子の伸長方向を縦方向とし、縦方向の最大値を「長さ(L)」とする。縦方向に直交する向きを幅方向とし、幅方向の最大値を「幅(W)」とする。一次粒子の「幅(W)」に対する「長さ(L)」の比をアスペクト比という。柱状もしくは針状一次粒子の幅(W)に対する長さ(L)の比(アスペクト比)は、4以上10未満であることが好ましい。ここで、柱状粒子および針状粒子とは、いずれも、アスペクト比が4以上の粒子を指す(
図1参照)。柱状と針状は、電子顕微鏡で観察した一次粒子が、先がとがった形状を有するか否かにより区別することができる。すなわち、柱状は、先がとがった形状を有しておらず(
図1(d)および(f)参照)、針状は、先がとがった形状を有している(
図1(a)および(c)参照)。針状は、とがった形状を、粒子の伸長方向の両端に有していてもよいし、一端に有していてもよい。柱状は、円柱の形状に加えて円錐台の形状も含む。
【0019】
一次粒子の幅(W)および長さ(L)は、例えば走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0020】
さらに、好ましい態様において、本発明で用いる炭酸カルシウムは、一次粒子が柱状形状もしくは針状形状を有することに加えて、一般的な抄紙の工程において凝集して形成される二次粒子形状がイガ状にあることが好ましい。ここで、「イガ状」とは数十〜数千の柱状または針状の形状を持つ一次粒子が三次元に絡み合った凝集形状を表す。「イガ状」の具体例として、特開昭55−40849、特開昭59−94700に示される態様が挙げられる。「イガ状」の一例を模式的に
図2に示す。イガ状は、中心に中核体を有し、中核体から多数の一次粒子が突出していてもよいし、中心に中核体を有していなくてもよい。二次粒子がイガ状の形態を有する炭酸カルシウムは、たとえば、カルライトSA(白石工業株式会社)、イガグリ状炭酸カルシウム(ニューライム株式会社)として商業的に入手可能である。
【0021】
二次粒子がイガ状の形態を有する炭酸カルシウムを使用する場合、炭酸カルシウムは、一次粒子の形態(柱状または針状)でパルプ繊維に添加されてもよいし、二次粒子の形態(イガ状)でパルプ繊維に添加されてもよいし、一次粒子の形態と二次粒子の形態の混合物としてパルプ繊維に添加されてもよい。いずれの場合も、炭酸カルシウムは、シガレット巻紙中でイガ状となる。
【0022】
本発明において炭酸カルシウムは、好ましくは、その一次粒子が柱状または針状であり、更に好ましくは、一次粒子の平均アスペクト比が4以上10未満の範囲にあり、且つ一次粒子の平均長さ(L)が0.1〜1.5μmである。さらに、得られるシガレット巻紙の密度が0.4〜1.0g/cm
3となることが一層好ましい。
【0023】
平均アスペクト比は、代表的な複数(少なくとも50個、たとえば50〜200個)の粒子を選抜して、各粒子について一次粒子の幅(W)および長さ(L)を測定してアスペクト比を求め、これらアスペクト比の平均値を求めることにより得ることができる。平均長さ(L)も、代表的な複数(少なくとも50個、たとえば50〜200個)の粒子を選抜して、各粒子について長さ(L)を測定し、これら長さ(L)の平均値を求めることにより得ることができる。
【0024】
本発明のシガレット巻紙は、40〜55g/m
2の坪量を有する。シガレット巻紙の坪量は、42〜50g/m
2であることが一層好ましい。
【0025】
本発明のシガレット巻紙は、燃焼調節剤を含んでいてもよい。燃焼調節剤としては、クエン酸アルカリ金属塩が好ましく用いられ、特に好ましくは、クエン酸カリウムおよびクエン酸ナトリウムであり、これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。これら燃焼調節剤は、シガレット巻紙中に、1.0〜5.0重量%で含まれることが好ましく、1.5〜4.0重量%で含まれることがより好ましい。
【0026】
本発明のシガレット巻紙は、従来の巻紙と比較して、シガレットの可視副流煙量を低減させるとともに、主流煙中の一酸化炭素量を減少させることができる。
【0027】
本発明のシガレット巻紙は、フィルター付きシガレットの巻紙として使用することができる。すなわち、本発明の一つの態様によれば、本発明のシガレット巻紙によりロッド形状に巻かれたたばこ刻みを含むたばこロッドと、このたばこロッドの一端にチップペーパーにより同軸上に接続されたフィルターとを含むシガレットが提供される。
【0028】
主流煙中の一酸化炭素量は、シガレットの規定の喫煙条件(カナダの保健省検査方法:55ml/2s)におけるシガレット1本当たりの総量を総吸煙回数で割った1吸煙当たりの一酸化炭素量として測定することができる。
【0029】
可視副流煙量の測定は、官能検査によって行うことができるが、簡便には、特許第3683792号(あるいは上記特許文献3)に開示されている可視副流煙量測定装置を用いて行うことができる。この可視副流煙量測定装置について、念のため、
図3〜
図4(上記特許第3683792号の
図1〜
図2を再現したものである)を用いて以下説明する。
【0030】
図3は、特許第3683792号に開示された可視副流煙量測定装置を示す概略斜視図であり、
図4は、同可視副流煙量測定装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【0031】
図3および
図4に示すように、本可視副流煙量測定装置10は、喫煙物品の自然燃焼室11と、喫煙物品の自然燃焼により発生し自然燃焼室11内を自然に立ち昇る(上昇する)副流煙に対しその流れ方向に実質的に直交する方向に所定の可視光ビームを照射するための可視光照射ユニット12と、副流煙により可視光ビームの方向と実質的に直交する方向に散乱された散乱光の強度を可視副流煙量の指標として検出するための散乱光強度検出ユニット14を備える。
【0032】
自然燃焼室11は、遮光性材料で構成され、例えば4つの側壁11a〜11dにより規定される縦方向に長い直方体形状の筒体からなる。その1つの側壁11aの下部には着火したシガレット等の喫煙物品SAを自然燃焼室11内に装入するための喫煙物品挿入口111が設けられている。自然燃焼室11を規定する4つの側壁11a〜11dのそれぞれの最下端部には、喫煙物品SAの自然燃焼に要する空気を自然燃焼室11内に供給し得るように例えばメッシュ窓のような通気窓112〜115が設けられている。喫煙物品の挿入口111は、挿入口111を通して自然燃焼室11内に装入される喫煙物品SAからの副流煙SSSが通気窓112〜115を通って自然燃焼室11内に入る外部の空気の乱れに影響されず、また喫煙物品SAから自然燃焼室11の上端までの距離が副流煙SSSが実質的に揺らがないように十分なものとなる位置に、設定することが好ましい。
【0033】
通気窓112〜115により固まれた自然燃焼室11の底部空間には、喫煙物品の自然燃焼により自然燃焼室11内を立ち昇る副流煙SSSの流れを乱さないように、図示しないガラスビーズを充填して空気流整流層を形成することができる。自然燃焼室11の上端は開放されている。この開放端には、自然燃焼室11の排気を行うために排気フード15を設置することができる。この自然燃焼室11の排気は、喫煙物品SAの自然燃焼に実質的に影響を及ぼさない程度に行うことが必要である。排気を行う場合には、喫煙物品の自然燃焼により自然燃焼室11内を自然に立ち昇る副流煙SSSの流れを乱さないように、自然燃焼室11の上部開放端を横断して整流フィルタ16を取り付けることが好ましい。
【0034】
排気フード15の頂部には排気ダクト151が設けられ、この排気ダクト151は、図示しない排気系に接続される。
【0035】
可視光照射ユニット12は、自然燃焼室11の外側に、
図3に示す例では、喫煙物品SAが挿入される自然燃焼室11の側壁11aと対向する側壁11bの外側に設けられている。可視光照射ユニット12に対向する側壁11bの部分には、可視光透過窓116が設けられている。可視光照射ユニット12は、図示しない可視光源を有し、喫煙物品SAの自然燃焼により発生し自然燃焼室11内を自然に立ち昇る副流煙SSSに対しその流れ方向に実質的に直交する方向に可視光ビームVLBを照射する。可視光源としては、可視光を発するものであれば特に制限はなく、例えば、可視光レーザ、可視発光ダイオード、ハロゲンランプ等を使用することができるが、代表的には、国際照明委員会で規定されているA光源が用いられる。
【0036】
可視光照射ユニット12から照射される可視光ビーム(可視光束)VLBは、自然燃焼室11内を自然に立ち昇る副流煙SSSに対しそれが多少揺らいでも十分にカバーして可視光を照射し得るような実質的な断面を有する。例えば、可視光ビームVLBは、照射方向と直交する方向に幅w(
図4)を持ち、かつ人間の視野を考慮して官能評価の際の視野に合うように、可視光ビームVLBの照射方向に実質的に直交する方向に高さを有する矩形の断面を有することができる。幅wは、可視光ビームの照射方向と直交する方向における可視副流煙SSSの揺らぎ幅に少なくとも等しいことが好ましい。なお、可視光ビームの断面は、矩形に限らず、楕円形、円形等であってもよい。このような可視光ビームの形状付けは、可視光ビームの断面に対応する関口を有するマスクを用いたり、あるいは例えば凸レンズと凹レンズとの組合せからなるレンズ系を用いる等それ自体既知の手法により行うことができる。
【0037】
可視光照射ユニット12と対面して自然燃焼室11の外側に、
図3に示す例では、側壁11aの外側に、測定に影響を与えないように可視光照射ユニット12から発し副流煙SSSを透過した光をすべて吸収・除去するための光吸収ユニット13を設けることが好ましい。光吸収ユニット13に対向する側壁11aの部分には、可視光透過窓117が設けられている。
【0038】
散乱光強度検出ユニット14は、可視光照射ユニット12からの照射光線の方向と直交する方向の自然燃焼室11の外側に、
図3に示す例では、側壁11dの外側に設けられている。散乱光強度検出ユニット14に対向する側壁11dの部分には、可視光透過窓118が設けられている。散乱光強度検出ユニット14は、既述のように、副流煙SSSに照射され副流煙SSSにより散乱された光のうち、可視光ビームVLBの照射方向と実質的に直交する方向に散乱した散乱光(以下、90度散乱光という)SVLの強度を検出するものである。散乱光強度検出ユニット14は、90度散乱光SVLを集光するためのそれ自体既知の光学系(図示せず)を備え、その集光された90度散乱光SVLを電気信号に変換して出力する光/電気変換装置(図示せず)を有する。光/電気変換装置としては、好ましくは、光を電圧信号に変換するフォトマルチプライヤーを用いることができる。この変換された電圧信号は、例えば、A/D変換した後、パーソナルコンピュータによりデータサンプリングすることができる。データ取得間隔および取得時間は、任意に設定することができ、代表的には、0.2秒間隔で300点の測定を1分間で行うことができる。
【0039】
この検出された90度散乱光SVLの強度は、可視副流煙量と非常によく相関し、検出された90度散乱光強度が、強いほど、可視副流煙量が相対的に多いと判断することができる。なお、90度散乱光強度は、副流煙中の全粒状物質の量とは相関しないことがわかっている。
【0040】
可視光照射ユニット12と可視光透過窓116の問、光吸収ユニット13と可視光透過窓117の問、および散乱光強度検出ユニット14と可視光透過窓118の間には、それぞれ、各可視光透過窓から外部の迷走光が入射することを防止するために、外部迷走光遮蔽ボックス17〜19を設置することが好ましい。
【0041】
装置10の全体のサイズ等の代表例を示すと、自然燃焼室11は、11cm×11cmで高さが80cmの直方体であり、喫煙物品装入口111は、自然燃焼室11の下端から50cmの位置に設けられ、喫煙物品SAから可視光ビームの中央までの距離は10cmであり、可視光照射ユニットから照射される可視光ビームは、5cm×5cmの大きさの断面を有する。
【0042】
本可視副流煙量測定装置は、
図4に示すように、散乱光強度検出ユニット14で検出された90度散乱光強度を、90度散乱光強度と目視による可視副流煙量との相関関係に基づいて、可視副流煙量に変換して出力する変換テーブル手段20を有することが好ましい。変換テーブル手段には、予め求めておいた90度散乱光強度と目視による可視副流煙量との相関関係が変換式、検量線等として入力されており、散乱光強度検出ユニット14から出力された90度散乱光強度信号を可視副流煙量に変換して出力する。90度散乱光強度と目視による可視副流煙量との相関関係を求めるには、まず、多数のシガレット等の喫煙物品の可視副流煙量を2点比較法による官能検査で評価して可視副流煙量を数値化する。同じ喫煙物品について本装置により検出した90度散乱光強度を測定する。そして可視副流煙量を例えば縦軸に、90度散乱光強度を例えば横軸にとり、得られた測定値をプロットすることにより検量線を得ることができる。この検量線に基づいて、90度散乱光強度から可視副流煙量への変換式を求めることもできる。
【0043】
2点比較法による官能検査は、例えば、
図5に示す可視副流煙量評価装置を用いて行うことができる。すなわち、2つの左右対称の自然燃焼チャンバ31および32内で標準シガレットCIG1および対象シガレットCIG2を自然燃焼させ、5点という得点を与えた標準シガレットCIG1に対し、対象シガレットCIG2の副流煙量が0〜10点の聞の尺度でどの程度に観察されるかという質問形式を採るものである。各チャンバ31、32には、一定の縦方向幅を有する覗き窓311および321が設けられており、各チャンバの上部に可視光源33および34が設けられている。覗き窓311、321の縦方向幅は、本可視副流煙量測定装置の可視光照射ユニット12から照射される可視光ビームの前記高さに相当し、シガレットCIG1、CIG2から覗き窓311、321の下端までの距離は、本可視副流煙量測定装置の可視光照射ユニット12から照射される可視光ビーム下端の喫煙物品SAからの距離に相当することが好ましい。可視光源33および34から
の可視光は、上方から副流煙SS1およびSS2に照射され、副流煙SS1、SS2は、それぞれ、覗き窓311および321からのみ観察される。
【0044】
なお、本可視副流煙量測定装置により得られる90度散乱光強度は、官能検査による可視副流煙量と非常によく相関していることが特許第3897700号において立証されている。また、本発明においても、2点比較法による官能検査を
図5に示す可視副流煙量評価装置を用いて行った場合、本実施例において指標として示される可視副流煙量/SBR(以降、単に可視副流煙量ともいう)の値が5.0×10
-2(分/mm)以下となれば、官能検査による可視副流煙量が、標準とする一般的なシガレットに対して十分低減していると判断できることが確認されている。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により、本発明を説明する。以下の例において、炭酸カルシウム「PCX-850」および「カルライトSA」は、白石工業株式会社から購入したものであり、「針状炭酸カルシウム」および「イガグリ状炭酸カルシウム」は、ニューライム株式会社から購入したものである。
【0046】
「PCX-850」の一次粒子は、紡錘体の形状を有し、これは、二次粒子を形成するが、イガ状とはならない。「カルライトSA」の一次粒子は、柱状の形状を有し、これは、凝集してイガ状の二次粒子を形成する。「針状炭酸カルシウム」の一次粒子は、針状の形状を有し、これは、二次粒子を形成しない。「イガグリ状炭酸カルシウム」の一次粒子は、針状の形状を有し、これは、凝集してイガ状の二次粒子を形成する。
【0047】
比較例1〜3、実施例1〜4および参考例
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針案樹晒クラフトパルプ(NBKP)との重量比8:2のパルプ混合物を、カナダ法濾水度が約100mLとなるように叩解し、この叩解したパルプ混合物に、填料として下記表1に示す炭酸カルシウムを同表1に示す含有量となるように添加した。得られた紙料を用いて、TAPPI標準型手すき機により巻紙(坪量を表1に示す)を抄紙した。得られた巻紙の表面に、燃焼調節剤としてクエン酸カリウム水溶液を、乾燥基準で3〜4重量%のクエン酸カリウムが巻紙に含有されるように塗布した。この巻紙を、温度22℃、相対湿度60%の条件下で2日間以上調和し、所定の長さに切断した。巻紙中の炭酸カルシウム量は、0.3N塩酸水溶液にて30分間超音波抽出を行った後、Agilent社製キャピラリー電気泳動システム(7100)により、カルシウムイオンとして定量し、炭酸カルシウムに換算することで求めた。
【0048】
得られた巻紙とタバコ刻(アメリカンブレンド)を用いて、タバコ紙巻器(RIZLA社製)によりシガレットを作製した。シガレットのサイズは、円周22.6mm、長さ67mmであり、その一端にチップペーパーを用いて通常のフィルター(長さ31mm)を付設した。タバコ刻の充填量はシガレット1本当たり0.515gであった。
【0049】
得られたシガレットについて、可視副流煙量を
図3および4に示す装置を用いて測定し、また主流煙中の一酸化炭素量をAgi1ent社製Micro-GC(3000A)を用いて測定し、1吸煙(パフ)当たりの一酸化炭素量を算出した。
【0050】
上記可視副流煙量の測定においては、可視光レーザの感度の日間差補正を目的として、測定毎に、各シガレットについての可視副流煙量を標準シガレット(リファレンスシガレット3R4F)についての可視副流煙量測定値で規格化した(従って、単位は無次元)。そして、巻紙の坪量および炭酸カルシウムの種類と含有量の影響を排除するために、規格化した可視副流煙量をシガレットの自然燃焼速度(SBR)(単位:mm/分)で除した。ここで、SBRは、雰囲気線速度200mm/秒で測定した。結果を表1に併記する。
【0051】
なお、参考例は、特開昭59−94700号公報に記載されていた炭酸カルシウム(Unibur-70)(現在市販されていないが、本出願人が保存していた)を用いた例である。
【表1】
【0052】
表1に示す結果からわかるように、炭酸カルシウムの含有量が18g/m
2以上であると、自然燃焼速度(SBR)当たりの可視副流煙量の値は5.0×10
-2を下回ることが確認され、このことは、可視副流煙が十分に低減されたことを示す(実施例1〜4を参照)。一方、参考例を始め炭酸カルシウムの量が18g/m
2より少ない場合は、可視副流煙量が多いことは明らかである(比較例1および2を参照)。
【0053】
巻紙のパルプ量に対する炭酸カルシウムの歩留まりは、パルプの量に依存するが、最大で40〜60%であると考えられ、歩留まりを40〜50%とした場合、炭酸カルシウムを18g/m
2以上保持させるために必要な巻紙の坪量は、40g/m
2以上と想定される。そして、炭酸カルシウムの含有量をさらに増加させると、坪量を増加させる必要が生じ、それに伴い主流煙中の一酸化炭素量も増加する。具体的には、坪量が55g/m
2を超えると可視副流煙量は低減する傾向を示すものの、主流煙中の一酸化炭素量が増加していることが比較例3より確認できる。
【0054】
以上より、巻紙が、40〜55g/m
2の坪量を有し、18g/m
2以上の炭酸カルシウムを含有する場合、副流煙の発生量および主流煙中の一酸化炭素量を低減させることが可能となる。また、実施例2に示されるとおり、巻紙が、42〜50g/m
2の坪量を有し、20〜25g/m
2の炭酸カルシウムを含有する場合、さらに高い効果を発揮することが期待できる。
【0055】
実施例5および6
実施例5および6では、同程度の一次粒子の長さ(L)を持つが、一次粒子の形状が異なる炭酸カルシウムにおいて、一次粒子の形状が可視副流煙量および主流煙中の一酸化炭素量に及ぼす影響を調査した。異なる一次粒子の形状を有する炭酸カルシウムとして、「PCX-850」および「カルライトSA」を使用した。PCX-850およびカルライトSAの含有量は、それぞれ、22.5g/m
2および23.0g/m
2であった。
【0056】
巻紙の坪量と炭酸カルシウムの種類を下記表2に示すように変えた以外は、先に記載した実施例と同様にして巻紙を製造し、シガレットを作製した。得られたシガレットについて、可視副流煙量と主流煙中の一酸化炭素量を測定した。また、得られた巻紙について、主流煙中の一酸化炭素量が低減した機構を調べるために、巻紙の密度を測定した。結果を下記表2に示す。
【0057】
表中に記載の一次粒子の長さ(L)は、JEOL社製走査型電子顕微鏡JSM-5310を用いて、撮影したSEM画像から画像解析ソフトwinroof(三谷科学)により1次粒子100個の長さ(L)を計り、平均化したものである。また、用いた炭酸カルシウムのアスペクト比を表2に併記したが、これは一次粒子の長さ(L)と同様の方法にて一次粒子の幅(W)を測定し、一次粒子の長さ(L)と幅(W)の比(L/W)を算出したものである。
【表2】
【0058】
表2に示す結果からわかるように、一次粒子の形状が柱状の炭酸カルシウムと紡錘体の炭酸カルシウムを比較した場合、柱状の炭酸カルシウムを用いた巻紙の方が主流煙中の一酸化炭素量が低いことから、一次粒子の形状が重要であることが確認された。ここで、巻紙の密度に着目すると、一次粒子の形状が紡錘体の炭酸カルシウムを用いた巻紙に比べ、一次粒子の形状が柱状の炭酸カルシウムを用いた場合、巻紙密度の低下が確認できる。一次粒子の形状が柱状の炭酸カルシウム(カルライトSA)を用いた場合、巻紙の密度が低下することで主流煙中の一酸化炭素量が低減したものと想定される。また、好適な柱状または針状炭酸カルシウムのアスペクト比(L/W)は現状での製法上の限界を踏まえると、4以上10未満が好ましい。カルライトSAを用いた場合、可視副流煙が5.0×10
-2(分/mm)以下の範囲にあることから、十分に可視副流煙量が低減されたと言える。
【0059】
実施例7および8
次に、二次粒子が同様にイガ状となる炭酸カルシウムにおいて、一次粒子の長さ(L)が可視副流煙量および主流煙中の一酸化炭素量に及ぼす影響を調査した。柱状または針状の一次粒子形状を有するが、異なる一次粒子の長さ(L)を持つ炭酸カルシウムとして、「イガグリ状炭酸カルシウム」および「カルライトSA」を使用した。
【0060】
巻紙の坪量と炭酸カルシウムの種類を下記表3に示すように変えた以外は、先に記載した実施例と同様にして巻紙を製造し、シガレットを作製した。得られたシガレットについて、可視副流煙量と主流煙中の一酸化炭素量を測定した。結果を表3に併記する。表中に記載の一次粒子の長さ(L)は、上述の手法に従って1次粒子100個の長さ(L)を計り、平均化したものである。「イガグリ状炭酸カルシウム」の一次粒子は、6.7の平均アスペクト比を有し、「カルライトSA」の一次粒子は、9.5の平均アスペクト比を有する。
【表3】
【0061】
表3に示す結果からわかるように、二次粒子が同様にイガ状となる2種類の炭酸カルシウムを用いた巻紙において、一次粒子の長さ(L)が小さいカルライトSAを用いた巻紙の方が、主流煙中の一酸化炭素量が低減することが確認された。よって、一次粒子が小さい程、主流煙中の一酸化炭素量の低減効果が大きいことが分かり、一次粒子の長さ(L)のバラつきを考慮すると、一次粒子の平均長さ(L)は、1.5μm以下が好ましいと想定される。
【0062】
実施例9および10
炭酸カルシウムの二次粒子がイガ状の形態にあるか否かが、可視副流煙量および主流煙中の一酸化炭素量に及ぼす影響を調査した。
【0063】
巻紙の坪量と炭酸カルシウムの種類を下記表4に示すように変えた以外は先に記載した実施例と同様にして巻紙を製造し、シガレットを作製した。得られたシガレットについて、可視副流煙量と主流煙中の一酸化炭素量を測定した。結果を表4に併記する。ここで用いた「イガグリ状炭酸カルシウム」は一次粒子の形状が針状であり、一次粒子の平均長さ(L)が3.3μmであり、一次粒子の平均アスペクト比が8.0であり、二次粒子の形状がイガ状となる。一方で、「針状炭酸カルシウム」は一次粒子の形状が針状であり、一次粒子の平均長さ(L)が4.8μmであり、一次粒子の平均アスペクト比が6.7であるが、二次粒子の形状がイガ状とならない。このため、ほぼ近い値の一次粒子の長さ(L)を持つ「イガグリ状炭酸カルシウム」と「針状炭酸カルシウム」の比較により、二次粒子がイガ状の形態にあるか否かが可視副流煙量および主流煙中の一酸化炭素量に及ぼす効果を検証することが可能となる。
【表4】
【0064】
表4に示す結果からわかるように、二次粒子がイガ状となる「イガグリ状炭酸カルシウム」を用いた巻紙は、「針状炭酸カルシウム」を用いた巻紙と比較して、可視副流煙量はほぼ同等であるものの、主流煙中の一酸化炭素量が低減していた。このことから、二次粒子がイガ状である炭酸カルシウムを用いた場合の効果が確認された。しかしながら、一次粒子の長さ(L)が大きい炭酸カルシウムを含有する巻紙の場合、巻紙の密度が低下しないため、主流煙中の一酸化炭素量低減の効果は、さほど期待することができず、より小さい一次粒子の長さ(L)であるほど、高い一酸化炭素量低減効果が期待できる。つまり、一次粒子が柱状または針状の形状を有し、一次粒子のサイズが小さく、且つ二次粒子の形状がイガ状となる炭酸カルシウムを用いた巻紙は、巻紙の密度が最も低下し、主流煙中の一酸化炭素量が最も低減すると推察される。
【0065】
なお、本実施例においてはシガレット円周が22.6mmのシガレットを用いているが、異なる円周のシガレットにおいても同様の効果が期待でき、本発明は、シガレットのサイズを限定するものではない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
40〜55g/m2の坪量を有し、18g/m2以上の量で炭酸カルシウムが含有されていることを特徴とするシガレット巻紙。
[2]
前記炭酸カルシウムの一次粒子が、柱状もしくは針状形状を有することを特徴とする[1]に記載のシガレット巻紙。
[3]
前記炭酸カルシウムの一次粒子が、4以上10未満の平均アスペクト比を有し、且つ0.1〜1.5μm以下の平均長さ(L)を有することを特徴とする[2]に記載のシガレット巻紙。
[4]
前記炭酸カルシウムの二次粒子が、イガ状の形態にあることを特徴とする[2]または[3]に記載のシガレット巻紙。
[5]
0.4〜1.0g/cm3の密度を有することを特徴とする[4]に記載のシガレット巻紙。
[6]
クエン酸のアルカリ金属塩からなる燃焼調節剤を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のシガレット巻紙。
[7]
前記燃焼調節剤を、1.0〜5.0重量%で含有することを特徴とする[6]に記載のシガレット巻紙。
[8]
[1]〜[7]のいずれか一項に記載のシガレット巻紙によりロッド形状に巻かれたたばこ刻みを含むたばこロッドと、
前記たばこロッドの一端にチップペーパーにより同軸上に接続されたフィルターと
を含むことを特徴とするシガレット。