(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5716097
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】車両シートの2つの構成要素を接続する方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/20 20060101AFI20150423BHJP
B60N 2/44 20060101ALI20150423BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
B60N2/20
B60N2/44
B60N2/68
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-542397(P2013-542397)
(86)(22)【出願日】2011年11月25日
(65)【公表番号】特表2013-544708(P2013-544708A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011005932
(87)【国際公開番号】WO2012084117
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年6月11日
(31)【優先権主張番号】102010056378.1
(32)【優先日】2010年12月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511007886
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ コンポーネンツ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ウォルザイファー、 ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】ルゥス、 ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ショーレンバーグ、 ライナー
【審査官】
佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−014999(JP,A)
【文献】
特表2008−534284(JP,A)
【文献】
特開2006−088172(JP,A)
【文献】
特表2009−501112(JP,A)
【文献】
特表2008−520356(JP,A)
【文献】
特開2008−067724(JP,A)
【文献】
特表2013−504475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/20
B60N 2/44
B60N 2/68
B23K 20/06
A47C 1/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線(A)を中心に旋回させることができる背もたれ(4)を有する車両シート(1)の少なくとも部分的に金属製の2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)を接続する方法であって、
前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)は互いに対して配置され、且つその後で接続され、
前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)は少なくとも一部の領域で互いに離間して配置され、且つ電流パルスによって前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)に誘導される電磁場によって、電磁パルス技術を用いて接続され、
前記電磁場の強い磁気吸引力によって、前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)は材料対材料接続の形成と共に互いに押し付けられ、
前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)の配置を互いに対して固定するために、前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)が局部的な直接接触によっていくつかの点で互いに当接し、ビードによって初めに互いに離間された前記構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)の一部の領域のみが互いに押し付けられる、方法。
【請求項2】
前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)の一方は鋼から製造され、前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)の他方はアルミニウム又はマグネシウムから製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)の一方は、主にプラスチックから製造され、金属製受入要素(4c、4d)が埋め込まれている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)は、前記軸線(A)に対する径方向又は軸方向の隙間(g)によって、互いに離隔して配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)は、背もたれ構造部品(4a)及びフィッティング(10)、及び/又は前記背もたれ(4)の構造体の2つの部品(4a、4h、4i、4l)、及び/又はフィッティング(10)の2つの部品(12,13)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記背もたれ構造部品(4a)は、円筒部を有する受入要素(4c、4d、4e)を有し、前記円筒部は、円盤状ユニットとして構成された前記フィッティング(10)から径方向の隙間(g)を有して配置され、前記フィッティング(10)上に収縮される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記背もたれ構造部品(4a)は平坦な接続リング(4f)を有し、前記接続リング(4f)は、前記フィッティング(10)上に軸方向の隙間(g)を有して配置され、追加のポジティブロッキング接続の形成と共に前記フィッティング(10)の輪郭付けられた一端側に接続される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記背もたれ(4)の構造体の前記2つの部品(4a、4h、4i、4l)は、互いに離間した複数の接続点(v)で互いに接続される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)の一方は本質的に支持され、前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)の他方への接続時に少なくとも実質的に変形させられない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって互いに接続された少なくとも2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)を有する車両シート(1)であって、前記2つの構成要素(4a、4h、4i、10、10g、11、12、13)は少なくとも接続点(v)において金属製である車両シート(1)。
【請求項11】
前記フィッティング(10)に接続された前記背もたれ構造部品(4a)は上部クロスメンバ(4h)に接続され、前記背もたれ構造部品(4a)と前記上部クロスメンバ(4h)はほぼU字断面として構成される、請求項10に記載の車両シート(1)。
【請求項12】
前記背もたれ構造部品(4a)は下部クロスメンバ(4i)に接続され、前記下部クロスメンバ(4i)はほぼJ字形に輪郭付けられ且つ平行なビードが設けられている、請求項11に記載の車両シート(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分の特徴を有する方法、及び前記方法により製造される車両シートに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの既知の方法は溶接であり、溶融では、接続される構成要素は局部的に溶融され、固化する溶融塊による材料対材料嵌合で互いに接続される。溶融される領域が、例えばレーザ溶接の場合のように最小であれば、歪みを回避することができる。しかしながら、2つの異なる材料、例えばアルミニウムと鋼が互いに接続される場合、特別な方法、例えば超音波溶接、接着、ブレイズ溶接(コールド・メタル・トランスファ溶接)、かしめ又は圧着が必要である。しかしながら、前記方法は、プロセスを準備するのに高額の費用を伴うか又は力の伝達の点で制限される。このことは、長いステーション時間と、場合により、生産コストを大きく増大させる追加の材料又は接続要素とを必要とする。熱の影響を受けて領域内の構成要素に強度損失が生じることがある。
【0003】
特許文献1には、2つの構造要素間にポジティブロッキング接続又はポジティブロッキング及び非ポジティブ接続を専ら生じさせるために、車両シートの分野で電磁パルス成形方法を使用することが開示されている。しかしながら、材料対材料接続部分がないこのタイプのポジティブロッキング接続は、特に長く延びた質の悪い道路を走行する車両の長時間の運転中に、望ましくないノイズを形成する傾向がある。
【0004】
車体部品の材料対材料接続を生じさせるのに電磁パルス成形方法を使用することは、特許文献2及び特許文献3から知られている。しかしながら、この方法は、異なる構成要素の幾何学形状及び材料厚のために、自明な方法で車両シート構成要素に転用することができない。また、車体部品は、ほぼ等しく大きな材料厚を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/032691号
【特許文献2】独国特許発明第69634343号明細書
【特許文献3】米国特許第6908024号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、冒頭で述べたタイプの方法を改善するという目的に基づく。本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。有利な改良は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って使用される方法は、複数の利点を有する。異なる材料から作られた構成要素を、互いに接続することができる。熱の影響を受ける領域がないため、強度の損失及び歪みが回避される。追加の接続要素又は追加の材料が必要ない。専ら材料対材料接続(溶接の場合のように)を、又は材料対材料接続に加え、ポジティブロッキング接続又は非ポジティブ接続又はそれらの任意の組み合わせをもたらすことができる。接続部分の強度は最も弱い材料の基本的な強度よりも高く、その結果、接続点を介して大きい力の伝達を行うことができ、同時に重量及びコストを低減する可能性がある。
【0008】
接続される2つの構成要素は、
初めに互いに離間して、より正確には例えば1〜2mmの隙間を有して配置される。パルス電磁場が、接続される2つの構成要素の一方を、隙間によって定められた距離にわたって、200m/sを超える速度に加速する。加速された構成要素が静止した他の構成要素と衝突すると、両方の表面に付着した酸化物層が、衝突領域において引き離され、且つ構成要素間にある空気により隙間から横方向に吹き飛ばされる。このようにして作られた面は、極めて反応性に富み、極度の接触圧下にある。これにより、金属結合、すなわち材料対材料接続がもたらされる。互いに離間した複数の接続点を作ることができる。
【0009】
方法の開始時に接続される構成要素を互いに固定するために、2つの構成要素は、局部的な直接接触によって互いに当接することができ、
初めに互いに離間された構成要素の部分領域のみが互いに押し付けられる。
【0010】
この方法は、特に、構成要素の、主にプラスチックから構成され且つその中に金属製の受入要素が埋め込まれた少なくとも1つの構成要素への接続にも好適である。この方法の熱の発生が少ないため、この方法は、このタイプの接続に特に適している。従来の溶接方法は、熱の発生により、プラスチックを溶融し又は破壊するであろう。
【0011】
接続される構成要素の一方は、背もたれの傾き設定用に知られているような、フィッティングであることができる。例えば、独国実用新案第202010015143号明細書に記載されるように、各車両シート側部に単一のフィッティング(互いに対して回転させることができる2つのフィッティング部品を有する)又は二重のフィッティングがあってもよいし、或いは、一方の車両シート側部にのみ存在し且つ他方の車両シート側部の旋回軸と組み合わされるフィッティングがあってもよい。この方法によって、個々のフィッティング構成要素の両方、特に、クラスプ留めリングを、2つのフィッティング部品の一方に接続することができ、フィッティング自体を、シート構造部品、特に背もたれ構造部品に接続することができる。
【0012】
2mmより大きい肉厚を有する中実フィッティングの、1mm未満の金属薄板厚さを有する背もたれ構造部品の薄板との接続は、本発明に係る方法により信頼性の高いプロセスで生じさせることができる。従来の溶接方法の場合には、異なる材料厚さ及び結果として生じる溶接作業時の熱の異なる放散のために、貫通燃焼の危険性がある。
【0013】
上部クロスメンバによって互いに接続された背もたれ側部(背もたれ支柱)の形態の2つの背もたれ構造部品を含む背もたれを有する車両シートは、本発明に係る方法に従って接続が行われ且つ上部クロスメンバがほぼU字断面として構成された場合に、特に高い強度を有する。特に高負荷の車両シートについては、本発明に係る方法に従って2つの背もたれ構造部品に好ましくは同様に固定されたJ字断面を有する下部クロスメンバによって、強度の更なる増大を達成することができる。
【0014】
この方法の使用は、クロスメンバと前者に接続され且つ鋼又はアルミニウムから構成することができるベースプレートとを有する後部座席の背もたれの場合に特に有利であることもわかった。クロスメンバは、好ましくは、中央リムと2つの外側リムとを有するほぼU字断面として構成され、U字断面は鋼又はアルミニウム又はマグネシウムから構成されることができ且つ後方に開いている。従来の接続技術と比較して、接続すべき部品の大きな多様性が、同時に高い強度と共に達成される。多様性は、特に複数のボディ変異形を有する車両プラットフォームでは、興味深いものである。ノッチバック車の場合に背もたれが車体のパーセルシェルフに固定される場合、構造部材に軽量材料を選択することができる。独立型背もたれを有するボディ変異形、特にエステート車の場合には、高い強度を有する材料が選択される。
【0015】
以下の文では、変更点と共に図面に示された複数の例示的な実施形態を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】接続前の第1の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図1B】接続後の第1の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図1C】第1の例示的実施形態に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図1D】第1の例示的実施形態に係る第1フィッティング部品と共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図1E】第1の例示的実施形態に係るフィッティングなしで背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図1F】第1の例示的実施形態に係るフィッティングと共にクラウンの斜視図を示す。
【
図3A】接続前の第1の例示的実施形態の変形例に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図3B】接続後の第1の例示的実施形態の変形例に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図3C】第1の例示的実施形態の変形例に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図3D】第1の例示的実施形態の変形例に係る第1フィッティング部品と共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図3E】第2の例示的実施形態の変形例に係るフィッティングなしで背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図3F】第1の例示的実施形態の変形例に係るカップの斜視背面図を示す。
【
図4A】接続前の第2の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図4B】接続後の第2の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図4C】第2の例示的実施形態に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図5A】接続前の第3の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図5B】接続後の第3の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図5C】第3の例示的実施形態に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図5D】
図5Cと反対の方向から第3の例示的実施形態に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図6A】接続前の第3の例示的実施形態の変形例に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図6B】接続後の第3の例示的実施形態の変形例に係る背もたれ構造部品及びフィッティングを通る断面図を示す。
【
図6C】第3の例示的実施形態の変形例に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図6D】
図5Cと反対の方向から第3の例示的実施形態の変形例に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図7A】第4の例示的実施形態に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品を通る断面図を示す。
【
図7B】第4の例示的実施形態に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の側面図を示す。
【
図7C】
図7Bと反対の方向から第4の例示的実施形態に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の側面図を示す。
【
図7D】第4の例示的実施形態に係るフィッティングと共に背もたれ構造部品の斜視部分図を示す。
【
図8A】接続前の第5の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及び上部クロスメンバの斜視部分図を示す。
【
図8B】接続後の第5の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及び上部クロスメンバの斜視部分図を示す。
【
図8C】接続後の第5の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及び上部クロスメンバの更なる斜視部分図を示す。
【
図9A】第6の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及び下部クロスメンバの斜視図を示す。
【
図9B】
図9Aと反対の方向から第6の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及び下部クロスメンバの斜視図を示す。
【
図9C】第6の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及び下部クロスメンバの側面図を示す。
【
図10A】接続前の第7の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及び下部クロスメンバを通る断面図を示す。
【
図10B】接続後の第7の例示的実施形態に係る背もたれ構造部品及び下部クロスメンバを通る断面図を示す。
【
図10C】第7の例示的実施形態における下部クロスメンバと共に背もたれ構造部品の斜視図を示す。
【
図11A】第8の例示的実施形態に係るフィッティングを通る断面図を示す。
【
図11B】第8の例示的実施形態に係るフィッティングを通る斜視断面図を示す。
【
図11C】第8の例示的実施形態に係るフィッティングの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
自動車用の車両シート1は、座部3と、座部3に対して軸線Aを中心に旋回させることができる背もたれ4とを有する。軸線Aは、使用される円筒座標系の方向指示を定める。フィッティング10は、背もたれ4を旋回させ且つ後者を座部3に取り付けるために両側に設けられている。
【0018】
各フィッティング10は、互いに対して軸線Aを中心に回転させることができる、第1フィッティング部11及び第2フィッティング部12を有する。2つのフィッティング部11,12は、いずれの場合にもほぼ円形ディスク形状に内接することができる。両方のフィッティング部11及び12は、好ましくは金属から、特に、少なくとも一部領域を硬化させることができる鋼から構成される。留めリング13が、軸方向に作用する力を吸収するために、すなわちフィッティング部11及び12を共に軸方向に保持するために設けられる。留めリング13は、好ましくは金属から、特に、好ましくは硬化されていない鋼から構成される。留めリング13は、好ましくは、実質的に平坦な環状の形状を有するが、代替実施形態では、円筒部と端部側にある平らな環状部分とを有するL字状に輪郭付けることができる。
【0019】
留めリング13は、2つのフィッティング部11,12の一方に、本事例では、外側環状部において第2フィッティング部12に、例えば、レーザ溶接を用いて又はそれ自体知られている他の締結技術を用いて固定的に接続される。軸方向に対して垂直な平面内に配置された内側環状部により、留めリング13は、2つのフィッティング部11,12の相対的な移動を妨げることなく、場合により間に摺動リングを配置して、第1フィッティング部11の上にその径方向外側エッジ領域で係合する。更に、それらの互いに対向する2つのフィッティング部11及び12の内面は、異物の侵入と汚染及び損傷から保護される。
【0020】
留めリング13及びそれに固定的に接続されたフィッティング部11又は12は、従ってそれらに対して移動可能な2つのフィッティング部11,12の他方を留める。構造の点では、2つのフィッティング部11及び12は、したがって、共に(留めリング13と)円盤状ユニットを形成する。フィッティング10の取り付け具によって、2つのフィッティング部の一方11又は12が、背もたれ4の構造体、より正確には背もたれ構造部品4aに固定的に、すなわち背もたれに対して固定されるように接続される。他方のフィッティング部11又は12は、座部3の構造体、より正確には座部アダプタ3aに固定的に、すなわち座部に対して固定されるように接続される。フィッティング10は、背もたれ4と座部3との間の力の流れ内にある。
【0021】
フィッティング10はラッチ型フィッティングとして構成され、この場合、第1フィッティング部11と第2フィッティング部は、例えば独国特許発明第10122006015560号明細書に記載されるように、互いにロックすることができ、この明細書の開示はこの点に関して明示的に組み込まれるものとする。軸(虚軸)Aは、その結果、座部3に対して静止している。代替案として、フィッティング10はギア付きフィッティングとして構成され、この場合、第1フィッティング部11と第2フィッティング部12は、例えば独国特許出願公開第4436101号明細書又は独国実用新案第202009017811号明細書に記載されるように、調整し且つ固定するためのギア機構によって、好ましくはセルフロック偏心遊星歯車によって互いに接続されており、これらの明細書の開示はこの点に関して明示的に組み込まれるものとする。
【0022】
車両シート1の組立時には、電磁パルス成形技術が、とりわけ、本発明の場合には、例えば独国特許発明第69634343号明細書又は独国特許出願公開第102009019320号明細書に記載されるように、金属製の構成要素を接合するために使用される。ここで、互いに接合される2つの構成要素は互いに離間して配置される。2つの構成要素にはコイルが取り付けられる。構成要素の幾何学的形状とそれらの配置とコイルの幾何学的形状は、接合作業の結果に大きな影響を与える。短い強力な電流パルスがコンデンサ放電によって生成され、電流パルスは2つの構成要素に非常に動的な電磁場を受けさせる。強力な磁気吸引力が、高圧下で接合されるように構成要素を互いに押し付け、その結果、微視的に材料対材料接続となる。金属製の構成要素上のいかなる酸化物層も吹き飛ばされる。電磁パルス成形技術は、したがって、溶接の場合と同様に、しかしながら金属を溶融させることなく、材料対材料接続を形成する。これは特に、鋼/アルミニウム、鋼/マグネシウム、又は鋼/プラスチックのような非同一材料の組み合わせ、或いは非同一材料厚の場合に利益がある。しかしながら、アルミニウム/アルミニウム又は鋼/鋼の材料組み合わせも可能である。
【0023】
電磁パルス成形技術の本発明に係る応用は、背もたれ4の領域に提供される。
【0024】
第1の例示的実施形態(
図1A〜
図1F)では、フィッティング10は背もたれ4に(直接)接続される。背もたれ構造部品4aは、例えば、主にプラスチックから構成される。(金属製の)受入要素(すなわち、フィッティング10の入れ物を有する要素)、例えばクラウン4cが、背もたれ構造部品4aに埋め込まれ、例えば射出成形、接着接合、ネジ留め、リベット留め、又は縫い込みされている。クラウン4cは円筒形リングであり、その一端側から径方向にスパイクが突出し、スパイクは、背もたれ構造部品4aのプラスチックへのポジティブロッキング接続と、ひいてはクラウン4cの必要な保持とを確実にする。クラウン4cは、金属、例えばアルミニウムから構成される。他端側では、クラウン4cはプラスチック材料から軸方向に突出し、クラウン4cの自由端を画定している。フィッティング10は、径方向の隙間gが生じるように、背もたれ構造部品4aのクラウン4c内に配置される。径方向内側に作用する力が電磁パルスによってクラウン4cに発生し、この力は、クラウン4cを自由端において変形させ且つ材料対材料接続の形成と共にフィッティング10上にそれを縮ませる。隙間gは、この過程で消失する。本質的に径方向に支持されているフィッティング10は変形させられない。
【0025】
これの変形例(
図3A〜
図3F)では、クラウン4cの代わりに受入要素としてカップ4dが設けられ、カップ4dは底部と中空円筒部とを有する。カップ4dはその穴あき底部が背もたれ構造部品4aのプラスチック材料内にある状態で成形され、底部の穴は、ポジティブロッキング接続、ひいてはカップ4dの必要な保持を確実にする。カップ4dの中空円筒部は、自由端が、プラスチック材料から部分的に軸方向に突出する。フィッティング10は、径方向の隙間gが生じるように、背もたれ構造部品4aのカップ4dの内部に配置される。径方向内側に作用する力が電磁パルスによってカップ4dに発生し、この力は、カップ4dを自由端において変形させ且つ材料対材料接続の形成と共にフィッティング10上にそれを縮ませる。隙間gは、この過程で接続点vにおいて消失する。本質的に径方向に支持されているフィッティング10は変形させられない。
【0026】
第2の例示的実施形態(
図4A〜
図4C)では、フィッティング10は同様に、背もたれ4に(直接)接続される。背もたれ構造部品4aは、例えば、アルミニウム又はマグネシウムから構成される。受入要素(すなわち、フィッティング10の入れ物を有する要素)、例えばカラー4eが、背もたれ構造部品4a上に成形され、すなわち、後者と一体的に構成されている。カラー4eは、背もたれ構造部品4aの円筒形部分であり、円筒形部分は、軸線Aに対して少なくともほぼ垂直に延びる背もたれ構造部品4aの面から軸方向に突出し、カラー4eの自由端を画定する。フィッティング10は、径方向の隙間gが生じるように、背もたれ構造部品4aのカラー4e内に配置される。径方向内側に作用する力が電磁パルスによってカラー4eに発生し、この力は、カラー4eを自由端において変形させ且つ材料対材料接続の形成と共にフィッティング10上にそれを縮ませる。隙間gは、この過程で接続点vにおいて消失する。本質的に径方向に支持されているフィッティング10は変形させられない。
【0027】
フィッティング10は、第3の例示的実施形態では背もたれ4に(直接)接続される。背もたれ構造部品4aは、例えば、アルミニウム又はマグネシウムから構成される。軸線Aに対して少なくともほぼ垂直に延びる平坦な接続リング4fが、背もたれ構造部品4a上に作られている。接続リング4fは、通路開口部を環状に囲み、通路開口部の直径は、フィッティング10の直径よりも小さい。フィッティング10は、例えば、締結用のショルダー、又は歯付きシステムの裏面のために、輪郭付けられた端面を有する。フィッティング10は、その輪郭付けられた端面の一方が背もたれ構造部品4aの接続リング4f上に、軸方向の隙間gが生じるように配置される。フィッティング10に向かって軸方向に作用する力が、電磁パルスによって接続リング4f上に発生し、この力は、接続リング4fを内側で径方向に変形させ且つ材料対材料接続及び追加のポジティブロッキング接続の形成と共にフィッティング10の輪郭付けられた端面上にそれを縮ませる。隙間gは、この過程で接続点vにおいて消失する。本質的に径方向に支持されているフィッティング10は変形させられない。フィッティング10から離れる方に面した接続リング4fの側面は、フィッティング10の輪郭を示す。図面は、第1にラッチ式フィッティング(
図5A〜
図5D)の第2フィッティング部12を用いて、第2にギア付きフィッティング(
図6A〜
図6D)の第1フィッティング部11を用いた変形例で、これを示す。
【0028】
最後に、フィッティング10は、第4の例示的実施形態(
図7A〜
図7D)でも背もたれ4に接続されているが、間接的である。背もたれ構造部品4aは、例えば、アルミニウム又はマグネシウムから構成される。軸線Aに対して少なくともほぼ垂直に延びる平坦な接続リング4fが、背もたれ構造部品4a上に作られる。接続リング4fは、通路開口部を環状に囲み、通路開口部の直径は、フィッティング10に固定されたアダプタ10gの直径よりも小さい。フィッティング10のアダプタ10gは、例えば、フィッティング部11,12の相対回転を制限するように機能し、例えば、フィッティング10に(レーザ)溶接される。アダプタ10gは、好ましくは環状の基本形状を有する。フィッティング10は、アダプタ10gと接続リング4fとの間に軸方向の隙間が生じるように、アダプタ10gによって背もたれ構造部品4aの接続リング4f上に固定される。フィッティング10に向かって軸方向に作用する力が電磁パルスによって接続リング4fに発生し、この力は、接続リング4fを内側に径方向に変形させ且つ材料対材料接続の形成と共にそれをアダプタ10gで押す。軸方向の隙間は、この過程で接続点vにおいて消失する。フィッティング10に支持されたアダプタ10gは、実質的に変形させられない。
【0029】
第5の例示的実施形態(
図8A〜8C)では、背もたれ4の構造の部品が互いに接続される。フィッティング10に接続される、好ましくは前述の例示的実施形態のものに対応する背もたれ構造部品4aは、背もたれ側部(背もたれ支柱)であり、鋼又はアルミニウムから構成することができる。アルミニウム又はマグネシウムから構成することができる上部クロスメンバ4hが、前記背もたれ構造部品4aに接続される。背もたれ構造部品4aと上部クロスメンバ4hは、中央リムと2つの外側リムを有するU字断面としてほぼ構成され、リムは、好ましくはいずれの場合にも追加のエッジ領域を有する。ここで、背もたれ構造部品4aは内側に開き、上部クロスメンバ4hは後方に開く。上部クロスメンバ4hの端部は、上部クロスメンバ4hの上部外側リムが背もたれ構造部品4aの中央リムのエッジ領域に、少なくとも間に隙間を有する部分領域に配置され、上部クロスメンバ4hの中央リムが背もたれ構造部品4aの前方外側リムに、少なくとも間に隙間を有する部分領域に配置され、且つ上部クロスメンバ4hの下部外側リムのエッジ領域が背もたれ構造部品4aの後方外側リムに、少なくとも間に隙間を有する部分領域に配置されるように、背もたれ側部4aに配置される。背もたれ構造部品4aと上部クロスメンバ4hとの間に局部的に作用する力が、いずれの場合にも1つの電磁パルスによって3つの述べられた重複領域に発生し、この力は、対応する領域をペアで変形させ且つ材料対材接続部を形成すると共にそれらを互いに押し付け、その結果、3つの接続点vが生じる。少なくとも部分領域に設けられている隙間は、この過程で接続ポイントvにおいて消失する。
【0030】
第6の例示的実施形態(
図9A〜
図9C)では、背もたれ4の構造の部品が同様に互いに接続される。フィッティング10に接続され且つ好ましくは先行する例示的実施形態のものに対応する背もたれ構造部品4aは、鋼又はアルミニウムから構成することができる背もたれ側部(背もたれ支柱)である。アルミニウム又はマグネシウムから構成することができる下部クロスメンバ4iが、前記背もたれ構造部品4aに接続される。背もたれ構造部品4aは、中央リムと2つの外側リムとを有するほぼU字断面として構成され、内側に開く。下部クロスメンバ4iは、ほぼJ字断面に輪郭付けされ、平行ビードが設けられる。下部クロスメンバ4iの各端部は、下部クロスメンバ4iが背もたれ構造部品4aの後方外側リムに間に隙間を有して配置されるように、背もたれ構造部品4aに配置される。背もたれ構造部品4aと下部クロスメンバ4iとの間に局部的に作用する力が、いずれの場合にも1つの電磁パルスによって、互いに離間する前記重複領域の3つの部分領域に発生し、この力は、対応する部分領域をペアで変形させ且つ(多かれ少なかれ同時に)材料対材料接続の形成と共にそれらを互いに押し付け、その結果、3つの接続点vが生じる。隙間は、この過程で接続点vにおいて消失する。
【0031】
第7の例示的実施形態(
図10A〜
図10C)では、後部座席の背もたれ4の場合、背もたれ構造部品4aは、例えば端部側で、フィッティング10を取り替えるピボットを受け入れる(下部)クロスメンバ4iに接続される。クロスメンバ4iに接続される背もたれ構造部品4aは、鋼又はアルミニウムから構成することができるベースプレートである。クロスメンバ4iは、中央リムと2つの外側リムとを有するU字断面としてほぼ構成され、U字断面は、鋼又はアルミニウム又はマグネシウムから構成され且つ後方に開くことができる。クロスメンバ4iは、その外側リムが背もたれ構造部品4a上に、間に隙間gを有して配置される。背もたれ構造部品4aとクロスメンバ4iとの間に局部的に作用する力が、いずれの場合にも1つの電磁パルスによって、外側リムの互いに離間した複数の領域で生じ、この力は、対応する領域をペアで変形させ且つ材料対材料接続の形成と共にそれらを互いに押し付け、その結果、複数の接続点vが生成される。隙間gは、この過程で接続点vにおいて消失する。
【0032】
第8の例示的実施形態(
図11A〜
図11C)では、フィッティング10の場合、留めリング13は、2つのフィッティング部11又は12の一方、本事例においては第2フィッティング部12に接続される。留めリング13は、円筒部及び環状部を有するL字状に輪郭付けされている。2つのフィッティング部11及び12とその間に配置された構成要素は1つのアセンブリを形成し、このアセンブリは中央ドライバと固定リングによって(「一時的に」)事前に組み立てることができる。アセンブリは、留めリング13の円筒部内に、径方向の隙間が生じるように配置される。径方向内側に作用する力が電磁パルスによって留めリング13に発生し、力は、留めリング13を円筒部において変形させ且つ材料対材料接続の形成と共に第2フィッティング部12上にそれを縮ませる。隙間は、この過程で接続ポイントVにおいて消失する。製造されたフィッティング10の、本質的に径方向に支持されている前記アセンブリは変形させられず、又は少なくとも実質的に変形させられない。
【0033】
すべての例示的実施形態の変形例において、2つの構成要素は一部の領域のみに互いに離間して配置される。しかしながら、2つの構成要素の配置の互いに対する固定は、構成要素間の局部的な直接接触によって複数の場所で行われる。従って、例えば、第1金属薄板は、その第2金属薄板との接触面にビードを設けることができ、ビードは、接触面から離れる方向に向けられるように構成される。好ましくは、第1及び第2の金属薄板は、方法の開始時に既に互いに対して平らに当接している。2つの金属薄板は、必然的に、第1金属薄板のビードの領域においてのみ互いに離間して配置される。本方法の更なる過程において、本発明によれば、第1金属薄板のビードは、次いで、材料対材料接続部の製造と共に変形され、第2金属薄板に押し付けられ、材料対材料接続部が製造される。
【符号の説明】
【0034】
1 車両シート
3 座部
3a 座部アダプタ
4 背もたれ
4a 背もたれ構造部品
4c クラウン
4d カップ
4e カラー
4f 接続リング
4h 上部クロスメンバ
4i 下部クロスメンバ
10 フィッティング
10g アダプタ
11 第1フィッティング部
12 第2フィッティング部
13 留めリング
A 軸
g 隙間
v 接続点