(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5716186
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置及び排ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20150423BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20150423BHJP
B01D 53/64 20060101ALI20150423BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
B01D53/36 101A
B01D53/36 ZZAB
B01D53/34 136A
B01D53/34 125Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-188854(P2013-188854)
(22)【出願日】2013年9月11日
(62)【分割の表示】特願2008-208213(P2008-208213)の分割
【原出願日】2008年8月12日
(65)【公開番号】特開2014-61514(P2014-61514A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2013年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】坂田 展康
(72)【発明者】
【氏名】四條 利久磨
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】村上 盛紀
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 展行
(72)【発明者】
【氏名】野地 勝己
(72)【発明者】
【氏名】清澤 正志
【審査官】
岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−230137(JP,A)
【文献】
特開2007−167743(JP,A)
【文献】
特開平09−173785(JP,A)
【文献】
特開平10−057764(JP,A)
【文献】
特開昭54−003962(JP,A)
【文献】
実開昭58−137425(JP,U)
【文献】
特開平09−024246(JP,A)
【文献】
特開2007−064073(JP,A)
【文献】
特開2001−252545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34
B01F 1/00− 5/26
B01J 10/00−12/02
B01J 14/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの排ガス中の窒素酸化物を除去すると共に、排ガス中に塩化水素を噴霧して水銀を酸化する脱硝触媒層を少なくとも一つ以上有し、
ガス拡散促進手段を用いて、ガス旋回流を発生しつつ塩化水素を煙道内に供給する排ガス処理装置であって、
前記ガス拡散促進手段は、前記ガス流れ方向と直交する面において前記煙道内に互いに平行に設けられる複数の噴霧用パイプヘッダと、前記複数の噴霧用パイプヘッダのそれぞれに複数設けられた噴霧ノズルとを有し、
前記複数設けられた噴霧ノズルは、一つの噴霧用パイプヘッダと当該噴霧用パイプヘッダと隣り合うもう一つの噴霧用パイプヘッダとの間で、前記ガス流れ方向と直交する面において、噴出方向が同一軸線上となるように設けられた一対の噴霧ノズルと、噴出方向が前記同一軸線上とならないように設けられたもう一対の噴霧ノズルとからなる4つ一組の噴霧ノズル群を複数構成するよう配置され、ガス流れ方向に縦渦流を形成してなることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記ボイラと、
前記ボイラの下流側の排ガス煙道に排出された排ガスに塩素化剤を注入する塩素化剤供給部と、
請求項1に記載の排ガス処理装置と、
脱硝後の排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、
脱硫後のガスを外部に排出する煙突とを有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項3】
前記ボイラの下流側の排ガス煙道に排出された排ガスにアンモニアを投入するアンモニア供給部が設けられてなることを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置から排出される排ガスの処理を行う排ガス処理装置及び排ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電所等の燃焼装置である石炭焚ボイラから排出される排ガスには毒性の高い水銀が含まれるため、従来から排ガス中の水銀を除去するためのシステムが種々検討されてきた。
【0003】
通常、石炭焚ボイラには排ガス中の硫黄分を除去するための湿式の脱硫装置が設けられている。このようなボイラに排ガス処理装置として脱硫装置が付設されてなる排煙処理設備においては、排ガス中の塩素(Cl)分が多くなると、水に可溶な2価の金属水銀(Hg)の割合が多くなり、前記脱硫装置で水銀が捕集しやすくなることが、広く知られている。
【0004】
そのため、近年、NOxを還元する脱硝装置、および、アルカリ吸収液を硫黄酸化物(SOx)吸収剤とする湿式脱硫装置と組み合わせて、この金属水銀を処理する方法や装置について様々な考案がなされてきた。
【0005】
排ガス中の金属水銀を処理する方法としては、活性炭やセレンフィルター等の吸着剤による除去方法が知られているが、特殊な吸着除去手段が必要であり、発電所排ガス等の大容量排ガスの処理には適していない。
【0006】
そこで、大容量排ガス中の金属水銀を処理する方法として、煙道中、高温の脱硝装置の前流工程で塩素化剤をガス噴霧し、脱硝触媒上で水銀を酸化(塩素化)させ、水溶性の塩化水銀にした後、後流の湿式脱硫装置で吸収させる方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2、参照)。また、排ガス煙道にガス噴霧する装置および技術は脱硝装置のNH
3噴霧、塩素化剤のガス噴霧で実用化されている。
【0007】
石炭焚きボイラの排ガス処理装置の概略図を
図5に示す。
図5に示すように、従来の排ガス処理システム100は、燃料Fとして石炭を供給する石炭焚ボイラ11からの排ガス12中の窒素酸化物(NOx)を除去すると共に、排ガス12中に塩酸(HCl)を噴霧して水銀(Hg)を酸化する脱硝触媒層13と、窒素酸化物(NOx)除去後の排ガス12中の熱を回収する空気予熱器14と、熱回収後の排ガス12中の煤塵を除去する電気集塵器15と、除塵後の排ガス12中の硫黄酸化物(SOx)、水銀(Hg)を除去する脱硫装置16と、脱硫後の排ガス12を浄化ガス17として外部に排出する煙突18とを具備するものである。
【0008】
また、脱硝触媒層13の前流の排ガス煙道19には、塩酸(HCl)の注入箇所が設けられており、塩酸(液体HCl)供給部20に貯蔵された塩酸(液体)は、塩化水素噴霧部21で気化して塩化水素(HCl)噴霧ノズル21aを介して塩化水素として排ガス12に噴霧されている。
【0009】
また、脱硝触媒層13の前流の排ガス煙道19には、アンモニア(NH
3)の注入箇所が設けられており、NH
3供給部29から供給されるアンモニアはアンモニア噴霧ノズル29aにより排ガス12に噴霧し、窒素酸化物(NOx)の還元を行うようにしている。
なお、
図5中、符号25は酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)、26は空気を各々図示する。
【0010】
ここで、石炭焚ボイラ11から排ガス12は、脱硝触媒層13に供給され、その後空気予熱器14で熱交換により空気27を加熱した後、電気集塵器15に供給され、更に、脱硫装置16に供給された後、浄化ガス17として大気に排出される。
【0011】
また、塩素化剤による装置への腐食破損等の影響を抑え信頼性を向上させるため、湿式脱硫後の排ガスについて水銀濃度を水銀モニターで測定し、脱硫後の水銀濃度に基づいて塩素化剤の供給量を調整するようにしている(例えば、特許文献2、参照)。
【0012】
このように、従来においては、排ガス12中に塩化水素とアンモニアとを供給することで、排ガス12中のNOx(窒素酸化物)を除去すると共に、排ガス12中の水銀(Hg)を酸化するようにしている。
【0013】
即ち、NH
3はNOxの還元脱硝用に用い、NH
3供給部29から供給されるNH
3をアンモニア(NH
3)噴霧ノズル29aを介して排ガス12中に噴霧し、脱硝触媒層13で、下記式のように還元反応によりNOxを窒素(N
2)に置換し、脱硝するようにしている。
4NO + 4NH
3 + O
2 → 4N
2 + 6H
2O・・・(1)
NO + NO
2 + 2NH
3 → 2N
2 + 3H
2O・・・(2)
【0014】
また、塩化水素は水銀酸化用に用いており、塩素化剤として用いられる塩化水素はHCl供給部20から塩化水素(HCl)噴霧部21に供給され、ここで塩酸は気化され、塩化水素(HCl)として塩化水素噴霧ノズル21aにより排ガス12中に噴霧することで、脱硝触媒層13において、下記式のように脱硝触媒上で溶解度の低いHgを酸化(塩素化)し、水溶性の高い塩化水銀(HgCl
2)に変換させ、後流側に設けられる脱硫装置16で排ガス12中に含有するHgを除去するようにしている。
Hg + 2HCl + 1/2O
2 → HgCl
2 + H
2O・・・(3)
【0015】
また、燃料として石炭又は重油を使用した場合、燃料中にはClが含まれるため燃焼ガスにはCl分が含まれるが、燃料の種類によりCl分の含有量は異なり、排ガス中のCl濃度を制御するのは困難であるため、排ガス処理装置の前流に必要量以上のHCl等を添加し、確実にHgを除去するようにするのが好ましい。
【0016】
また、脱硝触媒層13は、格子状に配列して四角形状の通路を有するハニカム形状のものに脱硝触媒を担持したものを用いており、その通路の断面形状は例えば三角形状や四角形状など多角形状からなる通路としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−230137号公報
【特許文献2】特開2001−198434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、従来の脱硝触媒層13に供給される排ガス12の気流は、煙道内において、入口気流条件にバラツキ(偏流)があることを考慮して、塩化水素の濃度を均一化するために、数多くの投入ノズルを設置する必要があり、この結果イニシャルコスト、及びメンテナンスコストが膨大となるという問題がある。
【0019】
このため、煙道内に塩化水素を効率的に噴霧すると共に、そのノズルの設置個数を低減することが切望されている。
【0020】
本発明は、前記問題に鑑み、脱硝装置内に供給される排ガスの流れに塩化水素を効率的に拡散することができる排ガス処理装置及び排ガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決するための本発明の排ガス処理装置は、ボイラからの排ガス中の窒素酸化物を除去すると共に、排ガス中に塩化水素を噴霧して水銀を酸化する脱硝触媒層を少なくとも一つ以上有し、ガス拡散促進手段を用いて、ガス旋回流を発生しつつ塩化水素を煙道内に供給する排ガス処理装置であって、前記ガス拡散促進手段は、前記ガス流れ方向と直交する面において前記煙道内に互いに平行に設けられる複数の噴霧用パイプヘッダと、前記複数の噴霧用パイプヘッダのそれぞれに複数設けられた噴霧ノズルとを有し、前記複数設けられた噴霧ノズルは、一つの噴霧用パイプヘッダと当該噴霧用パイプヘッダと隣り合うもう一つの噴霧用パイプヘッダとの間で、前記ガス流れ方向と直交する面において、噴出方向が同一軸線上となるよ
うに設けられた一対の噴霧ノズルと、噴出方向が前記同一軸線上とならないよ
うに設けられたもう一対の噴霧ノズルとからなる4つ一組の噴霧ノズル群を複数構成するよう配置され、ガス流れ方向に縦渦流を形成してなることを特徴とする。
【0022】
本発明の排ガス処理システムは、前記ボイラと、前記ボイラの下流側の排ガス煙道に排出された排ガスに塩素化剤を注入する塩素化剤供給部と、上記排ガス処理装置と、脱硝後の排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、脱硫後のガスを外部に排出する煙突とを有することを特徴とする。
【0023】
本発明の排ガス処理システムにおいては、前記ボイラの下流側の排ガス煙道に排出された排ガスにアンモニアを投入するアンモニア供給部が設けられてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガス拡散促進手段を用いて、ガス旋回流を発生しつつ塩化水素を煙道内に供給してなるので、塩化水素の拡散が急激に促進される。この結果、ノズルの個数を削減し、ノズル間隔を広げても触媒位置での濃度均一性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1-1】実施例1に係る排ガス処理装置の煙道内の噴霧ノズルを示す概略図である。
【
図2-1】実施例2に係る排ガス処理装置の煙道内の噴霧ノズルを示す概略図である。
【
図2-3】噴霧ノズルの対向状態を示す概略図である。
【
図3-1】実施例3に係る排ガス処理装置の煙道内の噴霧ノズルを示す概略図である。
【
図3-3】旋回拡散板の設置状態を示す概略図である。
【
図3-4】他の旋回拡散板の設置状態を示す斜視図である。
【
図4-1】参考例に係る排ガス処理装置の煙道内の噴霧ノズルを示す概略図である。
【
図4-3】旋回羽根の設置状態を示す斜視概略図である。
【
図4-4】旋回羽根の設置状態を示す側面概略図である。
【
図5】石炭焚きボイラの排ガス処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0027】
本発明による実施例に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
図1−1は、実施例に係る排ガス処理装置の煙道内の噴霧ノズルを示す概略図であり、
図1−2は、そのA−A矢示図である。なお、排ガス処理システムの構成は
図5と同様であるので、その説明は省略する。
図1−1及び
図1−2に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置は、ボイラからの排ガス12中の窒素酸化物を除去すると共に、排ガス12中に塩化水素を噴霧して水銀を酸化する脱硝触媒層を少なくとも一つ以上有する排ガス処理装置であって、ガス拡散促進手段を用いて、ガス旋回流を発生しつつ塩化水素を煙道内に供給してなるものである。
【0028】
本実施例では、前記ガス拡散促進手段としては、
図1−1に示すように、前記ガス拡散促進手段は、煙道19内に配設されると共に該煙道19のガス流れ方向と直交して挿入された噴霧用パイプヘッダ51と、前記噴霧用パイプヘッダ51に設けられ、少なくとも3ヶ以上(本実施例では4ヶ)の噴霧ノズル52−1〜52−4からガス流れ方向に縦渦流を形成してなるものである。すなわち、本実施例では4ヶのノズルの噴出方向を所定の角度に調整し、複数の噴霧ノズル52−1〜52−4で旋回流を発生できるようにしている。
【0029】
本実施例によれば、複数の噴霧ノズル52−1〜52−4を一つの単位として、これらの各噴霧ノズル52−1〜52−4からの噴流の運動量により縦渦流53を形成するようにしている。
前記縦渦は、
図1−2に示すように、排ガス12のガス流れ方向に回転軸を持つ縦渦流53であり、この縦渦の遠心力により、塩化水素は半径方向に拡げられることとなる。この結果、下流域では、縦渦が崩壊し、拡散が急激に促進されることとなる。
図1−2中、符号54は塩化水素拡散幅を図示する。
【0030】
本実施例により、塩化水素の拡散が大幅に促進されるため、従来よりもノズルの個数を削減し、ノズル間隔を広げても触媒位置での濃度均一性を確保できる。
【0031】
煙道19内に配置する噴霧ノズルは、適切な組み合わせで、それぞれ旋回流を発生できるようにすればよく、個数も3ヶ以上の組み合わせから縦渦流を形成するようにすればよい。
【実施例2】
【0032】
本発明による実施例に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
図2−1は、実施例に係る排ガス処理装置の煙道内の噴霧ノズルを示す概略図であり、
図2−2は、そのB−B矢示図である。
図2−3は噴霧ノズルの対向状態を示す概略図である。なお、排ガス処理システムの構成は
図5と同様であるので、その説明は省略する。
【0033】
図2−1、
図2−2及び
図2−3に示すように、本実施例では、前記ガス拡散促進手段は、煙道19内に配設されると共に、該煙道19のガス流れ方向と直交して挿入された噴霧用パイプヘッダ51と、前記噴霧用パイプヘッダ51に設けられた複数の噴霧ノズル52を相対向させつつ、噴流どうしを衝突させるものである。
【0034】
本実施例では、
図2−3に示すように、噴霧ノズル52−1,52−2は相対向することで、2つの噴流を衝突させるようにしている。
そして、噴流同士の衝突により、ガスの拡散が小さい噴流のコア部分が早期に解消させて、拡散を促進するようにしている。
【0035】
ここで、噴霧ノズル52−1,52−2との対向角度は、ノズル同士が直接対向(α=0度)とする以外に、ガス流れ方向に所定角度αをもって対向するようにしてもよい。但し、α=30度以上であると、塩化水素の噴出流が合体してしまうので、好ましくない。
【0036】
これにより、塩化水素の拡散が促進されるため、噴霧ノズルの個数を削減し、ノズル間隔を広げても触媒位置での濃度均一性を確保できることとなる。
【実施例3】
【0037】
本発明による実施例に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
図3−1は、実施例に係る排ガス処理装置の煙道内の噴霧ノズルを示す概略図であり、
図3−2は、そのC−C矢示図、
図3−3は旋回拡散板の斜視図である。なお、排ガス処理システムの構成は
図5と同様であるので、その説明は省略する。
【0038】
図3−1乃至
図3−3に示すように、本実施例では、前記ガス拡散促進手段は、煙道19内に配設されると共に、該煙道19のガス流れ方向と直交して挿入された噴霧用パイプヘッダ51と、前記噴霧用パイプヘッダ51に設けられた噴霧ノズル52の開口側に旋回拡散板55を設け、ガス流れ方向に縦渦流を形成してなるものである。
【0039】
本実施例では、
図3−3に示すように、噴霧ノズル52の開口側に波形の旋回拡散板55を付加し、塩化水素の噴流軸に縦渦を発生させるようにしている。
【0040】
また、
図3−4に示すように、旋回拡散板の形状は、波形のみでなく、矩形の互い違い形状の旋回拡散板56としてもよい。
【0041】
本実施例によれば、噴霧ノズル52からの噴流は旋回拡散板55によって発生する縦渦に巻き込まれることとなる。
この縦渦の遠心力により、塩化水素は半径方向に拡げられることとなる。この結果、下流域では、縦渦が崩壊し、拡散が急激に促進されることとなる。
【0042】
本実施例により、拡散促進されるため、噴霧ノズル52の個数を削減し、ノズル間隔を広げても触媒位置での濃度均一性を確保できることとなる。
【0043】
(参考例)
本発明による参考例に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
図4−1は、参考例に係る排ガス処理装置の煙道内の噴霧ノズルを示す概略図であり、
図4−2は、そのD−D矢示図、
図4−3は旋回羽根の設置状態を示す斜視概略図、
図4−4はその側面概略図である。なお、排ガス処理システムの構成は
図5と同様であるので、その説明は省略する。
【0044】
図4−1乃至
図4−4に示すように、本参考例では、前記ガス拡散促進手段は、煙道19内に配設されると共に、該煙道19のガス流れ方向と直交して挿入された噴霧用パイプヘッダ51と、前記噴霧用パイプヘッダ51に設けられた噴霧ノズル52の開口側に旋回羽根57を設け、ガス流れ方向に縦渦流を形成してなるものである。
【0045】
本参考例では、噴霧ノズル出口に旋回羽根57を設置し、そこに排ガスが流れてくるので、塩化水素の噴流を旋回させることとなる。
【0046】
本参考例によれば、ノズルからの噴流は旋回し縦渦が発生するので、縦渦の遠心力により、塩化水素は半径方向に拡げられることとなる。
そして、下流域では、縦渦が崩壊し、拡散が急激に促進されることとなる。
【0047】
本参考例により、拡散促進されるため、ノズルの個数を削減し、ノズル間隔を広げても触媒位置での濃度均一性を確保できることとなる。
【0048】
ここで、本実施例に係る排ガス処理装置においては、還元脱硝用に脱硝触媒層13で用いる脱硝触媒として、V、W、Mo、Ni、Co、Fe、Cr、Mn、Cu等の金属酸化物又は硫酸塩あるいは、Pt、Ru、Rh、Pd、Irなどの貴金属、又はこれらの混合物を担体であるチタニア、シリカ、ジルコニア及びこれらの複合酸化物、又はゼオライトに担持したものを用いることができる。
【0049】
また、本実施例において、用いるHClについて、特に濃度の制限はないが、例えば濃塩酸から5%程度の希塩酸を用いることができる。また、本実施例において、使用する塩素化剤として塩化水素(HCl)を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、塩素化剤としては、排ガス中のHgが脱硝触媒の存在下で反応してHgCl及び/又はHgCl
2の塩化水銀を生成するものであればよく、塩化アンモニウム、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸アンモニウム、亜塩素酸、亜塩素酸アンモニウム、塩素酸、塩素酸アンモニウム、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、その他上記酸のアミン塩類、その他の塩類などが例示される。
【0050】
また、排ガス12中に添加する塩素化剤の量は、水難溶性の水銀に対して化学量論量かそれよりも過剰であればよい。排ガス12中のHgを効率よく除去すると共に、後流側で排出される排水中の塩素濃度を考慮して、排ガス煙道19内における排ガス12の塩素化剤の濃度としては、排ガス12に対して1000ppm以下となるよう噴霧するようにすればよい。
【0051】
また、排ガス煙道19内における排ガス12へのHClの添加位置は、NH
3の添加位置よりも上流側としているが、NH
3の添加位置よりも下流側としてもよい。
【0052】
また、本実施例において、ボイラ11から排出される排ガス12にHClとNH
3の両方を添加しているが、排ガス煙道19内における排ガス12にNH
3を添加しなくてもよい。排ガス処理装置の脱硝触媒層13では、排ガス12中のNOx(窒素酸化物)を除去すると共に、排ガス12中のHgを酸化し、後流側に設けられる脱硫装置(図示しない)でHgを除去するものであるため、排ガス煙道19内で排ガス12にNH
3を添加しなくても、脱硝触媒層13の脱硝触媒の存在下でHClによりHgを塩化物に転換し、脱硫装置(図示しない)でHgを除去できる効果には変わりないからである。
このアンモニアの噴霧の際にも実施例に係るノズルを適用して旋回流を形成するようにしてもよい。
【0053】
このように、本実施例に係る排ガス処理装置によれば、ボイラ11からの排ガス12中のNOx(窒素酸化物)を除去すると共に、排ガス12中にHClを噴霧してHgを酸化する脱硝触媒層13を有する排ガス処理装置において、ガス拡散促進手段を用いて、ガス旋回流を発生しつつ塩化水素を煙道内に供給してなるので、塩化水素の拡散が急激に促進される。この結果、ノズルの個数を削減し、ノズル間隔を広げても触媒位置での濃度均一性を確保することができる。
【0054】
また、本実施例では、石炭や重油などの硫黄、水銀等を含む化石燃料を燃焼する火力発電所のボイラから排出される排ガスを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、NOx濃度が低く、二酸化炭素、酸素、SOx、煤塵、あるいは水分を含む排ガス、硫黄、水銀等を含む燃料を燃焼する工場などから排出されるボイラ排ガス、金属工場、石油精製工場、石油化学工場等から排出される加熱炉排ガス等にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明に係る排ガス処理装置は、ガス拡散促進手段を用いて、ガス旋回流を発生しつつ塩化水素を煙道内に供給してなるので、塩化水素の拡散が急激に促進され、ノズルの個数を削減し、ノズル間隔を広げても触媒位置での濃度均一性を確保することができるので、火力発電所等の水銀を含有する石炭や重油などの化石燃料を燃焼する装置から排出される排ガスの処理に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0056】
51 噴霧用パイプヘッダ
52(52−1〜52−4) 噴霧ノズル
53 縦渦流
54 塩化水素拡散幅