特許第5716189号(P5716189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5716189
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】タービン動翼
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/18 20060101AFI20150423BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   F01D5/18
   F02C7/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-519345(P2013-519345)
(86)(22)【出願日】2011年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2011080056
(87)【国際公開番号】WO2012169092
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2013年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2011-128958(P2011-128958)
(32)【優先日】2011年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梅原 猛
(72)【発明者】
【氏名】上田 修
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 康司
【審査官】 寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−002101(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0058545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータに固定される基端部と、
前記ロータの径方向に延在し、前縁と後縁との間における翼形状を形成する腹側及び背側の翼面を有する翼形部と、
前記基端部と前記翼形部との間に設けられ、前記ロータの周方向に沿った凹部が前記後縁側の端面に形成され、該凹部の前記ロータの径方向外側に位置する前記端面の外側領域に開口する冷却流路が内部に形成されたプラットフォームとを備えるタービン動翼であって、
前記端面の前記外側領域に開口する前記冷却流路の開口位置の前記外側領域のロータ径方向における厚さは、前記プラットフォームに接続される前記翼形部のハブの後縁側端部に対応する前記外側領域の前記ロータの径方向における厚さより大きくなることを特徴とするタービン動翼。
【請求項2】
ロータに固定される基端部と、
前記ロータの径方向に延在し、前縁と後縁との間における翼形状を形成する腹側及び背側の翼面を有する翼形部と、
前記基端部と前記翼形部との間に設けられ、前記ロータの周方向に沿った凹部が前記後縁側の端面に形成され、該凹部の前記ロータの径方向外側に位置する前記端面の外側領域に開口する冷却流路が内部に形成されたプラットフォームとを備えるタービン動翼であって、
前記外側領域の前記ロータの径方向における厚さは、前記冷却流路の開口位置において、前記翼形部のハブの後縁側端部に対応する位置より大きくなることを特徴とするタービン動翼。
【請求項3】
前記プラットフォームの後縁側の前記端面において、前記外側領域の前記ロータの径方向における厚さは、前記翼形部の背側から前記ハブの前記後縁側端部に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項1又は2に記載のタービン動翼。
【請求項4】
前記冷却流路は、前記ロータの軸方向に沿って前記プラットフォーム内に複数形成され、
互いに隣接する前記冷却流路のうち前記翼形部の腹側に配置された前記冷却流路の径は、前記翼形部の背側に配置された前記冷却流路の径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載のタービン動翼。
【請求項5】
前記プラットフォームの後縁側の前記端面において、前記外側領域の前記ロータの径方向における厚さは、前記翼形部の背側から前記ハブの後縁側端部に向かって徐々に小さくなり、前記翼形部の腹側から前記ハブの後縁側端部に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項1又は2に記載のタービン動翼。
【請求項6】
前記冷却流路は、前記ロータの軸方向に沿って前記プラットフォーム内に複数形成され、
互いに隣接する前記冷却流路のうち前記ハブの後縁端部に近い方の前記冷却流路の径は、前記ハブの後縁端部から遠い方の前記冷却流路の径より小さいことを特徴とする請求項1、2又はに記載のタービン動翼。
【請求項7】
前記冷却流路は、前記背側の翼面の後縁側形状に沿って前記プラットフォームの後縁側端部に形成されることを特徴とする請求項1〜のうち何れか一項に記載のタービン動翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却流路が形成されたプラットフォームを備えるタービン動翼に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン内を流れる高温燃焼ガスによってタービン動翼の翼形部及びプラットフォームが高温になると、ロータ径方向外方に向かって熱伸びが発生する。このとき、翼形部及びプラットフォームはそれぞれ熱伸び量が異なるため、翼形部のハブと当該ハブが接続されているプラットフォームとの間に熱応力が発生する。熱応力が発生すると、特に、ハブの後縁側端部に集中して作用するため、この後縁側端部にクラックが生じ易い。そのため、翼形部及びプラットフォームの温度上昇を抑制するとともに、この熱応力を低減する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、図10に示すように、翼形部12内及びプラットフォーム60内にそれぞれ冷却流路61〜64を設けるとともに、ロータ周方向(図10の紙面を貫通する方向)に沿ってプラットフォーム60の後縁側の端面18に凹部20を設ける方法が開示されている。翼形部12内には、複数の冷却流路61〜63がロータ径方向に沿って基端部2から翼形部12まで形成されている。また、プラットフォーム60内には、冷却流路64がロータ軸方向に沿ってプラットフォーム60の後縁側の端面18から前縁側端部まで形成されている。そして、翼形部12内及びプラットフォーム60内に冷却空気を流すことにより冷却を行って、翼形部12及びプラットフォーム60の温度上昇を抑制している。
また、翼形部12がロータ径方向外方に熱伸びすると、その熱伸びに追随して、プラットフォーム60に形成された上記凹部20のロータ径方向外側に位置する後縁側の端面18の外側領域22が、ロータ径方向外方に変形することで、熱応力がハブ13の後縁側端部に集中することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−271603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の方法では、プラットフォーム60の冷却効果を高めるために、プラットフォーム60のロータ軸方向に大径の冷却流路を形成しようとすると、凹部20のロータ径方向外側に位置する後縁側の端面18の外側領域22を厚くしなければならない。しかしながら、当該外側領域22を厚くするとプラットフォーム60の後縁側端部が変形しにくくなるため、熱応力の低減効果が十分に得られなくなる。そこで、当該外側領域22を厚くすることなく、冷却流路の径を大きくすると、図11に示すように、後縁側端部には冷却流路65の上半部分66のみが形成されて、冷却流路65の下半分は解放された状態となる。後縁側端部付近に到達した冷却空気は、開口67から周囲に拡散するため、後縁側端部を冷却する機能が著しく低下してしまう。
【0006】
そこで本発明では、ハブとプラットフォームとの間に作用する熱応力を低減可能で、かつ、効率的に冷却可能なプラットフォームを備えたタービン動翼を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する本発明に係るタービン動翼は、
ロータに固定される基端部と、
前記ロータの径方向に延在し、前縁と後縁との間における翼形状を形成する腹側及び背側の翼面を有する翼形部と、
前記基端部と前記翼形部との間に設けられ、前記ロータの周方向に沿った凹部が前記後縁側の端面に形成され、該凹部の前記ロータの径方向外側に位置する前記端面の外側領域に開口する冷却流路が内部に形成されたプラットフォームとを備えるタービン動翼であって、
前記端面の前記外側領域に開口する前記冷却流路の前記外側領域のロータ径方向における厚さは、前記プラットフォームに接続される前記翼形部のハブの後縁側端部に対応する前記外側領域の前記ロータの径方向における厚さより大きくなることを特徴とする。
【0008】
上記タービン動翼によれば、翼形部のハブの後縁側端部に対応する外側領域のロータ径方向における厚さを、外側領域の他の部分より小さくできるので、ハブの後縁側端部が接続されているプラットフォームの後縁側端部付近が翼形部の熱伸びに応じて変形しやすくなり、後縁側端部付近に生ずる熱応力を抑制できる。
【0009】
さらに、口径の大きい冷却流路の形成が可能となり、プラットフォームの冷却能力が向上するため、高温で用いられるタービンに適用することが可能となる。
【0010】
また、前記プラットフォームの後縁側の前記端面において、前記外側領域のロータ径方向における厚さは、前記翼形部の背側から前記ハブの前記後縁側端部に向かって徐々に小さくしてもよい。
【0011】
このように、プラットフォームの後縁側の端面において、外側領域のロータ径方向における厚さは、翼形部の背側からハブの前記後縁側端部に向かって徐々に小さくして、プラットフォームの背側の厚さを最も大きくしたため、背側のロータ軸方向の端面に沿って冷却流路の配置が可能となり、背側のプラットフォームの冷却能力が向上する。
【0012】
また、前記冷却流路は、前記ロータの軸方向に沿って前記プラットフォーム内に複数形成され、
互いに隣接する前記冷却流路のうち前記翼形部の腹側に配置された前記冷却流路の径は、前記翼形部の背側に配置された前記冷却流路の径よりも小さいこととしてもよい。
【0013】
このように、互いに隣接する冷却流路のうち翼形部の腹側に配置された冷却流路の径を、翼形部の背側に配置された冷却流路の径よりも小さくすることで、複数の冷却流路をプラットフォーム内に形成することができる。
そして、複数の冷却流路がプラットフォーム内に形成されることで、プラットフォームの冷却効果を大幅に増大させることができる。
【0014】
また、前記プラットフォームの後縁側の前記端面において、前記外側領域の前記ロータの径方向における厚さは、前記翼形部の背側から前記ハブの後縁側端部に向かって徐々に小さくなり、前記翼形部の腹側から前記ハブの後縁側端部に向かって徐々に小さくなることとしてもよい。
【0015】
このように、外側領域のロータ径方向における厚さを、前記翼形部の背側から前記ハブの後縁側端部に向かって徐々に小さくして、前記翼形部の腹側から前記ハブの後縁側端部に向かって徐々に小さくするため、ハブの後縁側端部を挟んでロータの周方向両側にそれぞれ大径の冷却流路を形成することができる。これによって、プラットフォームの冷却機能が大幅に向上する。
【0016】
また、前記冷却流路は、前記ロータの軸方向に沿って前記プラットフォーム内に複数形成され、
互いに隣接する前記冷却流路のうち前記ハブの後縁端部に近い方の前記冷却流路の径は、前記ハブの後縁端部から遠い方の前記冷却流路の径より小さくなるとしてもよい。
【0017】
このように、互いに隣接する冷却流路のうちハブの後縁端部に近い方の冷却流路の径を、ハブの後縁端部から遠い方の冷却流路の径より小さくすることで、複数の冷却流路をプラットフォーム内に形成することができる。
そして、複数の冷却流路がプラットフォーム内に形成されることで、プラットフォームの冷却効果を大幅に増大させることができる。
【0018】
また、前記冷却流路は、前記背側の翼面の後縁側形状に沿って前記プラットフォームの後縁側端部に形成されてもよい。
【0019】
このように、冷却流路が、背側の翼面の後縁側形状に沿ってプラットフォームの後縁側端部に形成されることで、プラットフォームの後縁側端部を確実に冷却することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、プラットフォームを効率良く冷却することができ、かつ、ハブとプラットフォームとの間に作用する応力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係るタービン動翼を示す斜視図である。
図2図1のA矢視図であり、プラットフォームの後縁側端部付近を拡大した図である。
図3図1のB―B断面図である。
図4】タービン動翼付近の冷却空気の流れを示すガスタービンの断面図である。
図5】プラットフォーム内に形成される冷却流路の他の実施例を示す図である。
図6】プラットフォーム内に形成される冷却流路の他の実施例を示す図である。
図7】本発明の第二実施形態に係るタービン動翼を後縁側から矢視した図である。
図8】本発明の第三実施形態に係るプラットフォームを示す断面図である。
図9】本発明の第四実施形態に係るタービン動翼を後縁側から矢視した図である。
図10】従来のタービン動翼の鉛直断面図である。
図11】プラットフォームの後縁側端部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るタービン動翼の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明では、タービン動翼をガスタービンに適用した場合について説明するが、これに限定されるものではなく、蒸気タービンにも適用することができる。また、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1は、本発明の第一実施形態に係るタービン動翼を示す斜視図である。また、図2は、図1のA矢視図であり、プラットフォームの後縁側端部付近を拡大した図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明の第一実施形態は、翼形部12の背側のプラットフォーム16の熱応力を低減するため、背側のプラットフォーム16に冷却流路14を設けた例である。
ガスタービンのタービン動翼1は、ロータに固定される基端部2と、ロータの径方向に延在し、前縁4と後縁6との間における翼形状を形成する腹側及び背側の翼面8、10を有する翼形部12と、冷却空気を流すための冷却流路14が内部に形成されたプラットフォーム16とを備えている。
【0025】
プラットフォーム16の後縁側の端面18には、ロータ周方向に沿った凹部20、いわゆる、ぬすみ部が形成されている。このぬすみ部のロータ径方向外側に位置する後縁側の端面18の外側領域22に冷却流路14の開口15が形成されている。
【0026】
外側領域22のロータ径方向における厚さLは、翼形部12の背側からハブ13の後縁側端部に向かって徐々に小さくなっている。すなわち、外側領域22のロータ径方向における厚さLは、ロータ軸方向に沿って形成された冷却流路14の開口15近傍の外側領域22(L1)から、ハブ13の後縁側端部直下の外側領域22(L2)までの間は徐々に小さくなっている。
なお、本実施形態では、翼形部12の腹側のプラットフォーム16には、ロータ軸方向に沿った冷却流路を設けていない。従って、ハブ13の後縁側端部直下の外側領域22から翼形部12の腹側の端面までの間の外側領域22のロータ径方向の厚さLは、腹側の端面に向かって徐々に小さくしてもよいし、同一の厚さとしてもよい。
【0027】
ロータ周方向におけるハブ13の後縁側端部の接続位置直下の外側領域22の厚さL2は、翼形部12の熱伸びに追随して変形可能な厚さであり、背景技術の欄で説明した特許文献1に記載のプラットフォーム60の外側領域22の厚さL3(図10参照)とほぼ同じである。したがって、ロータ軸方向に沿った冷却流路14の開口15位置の外側領域22の厚さL1は、特許文献1に記載したプラットフォーム60の外側領域22の厚さL3よりも大きく形成されている。このことにより、従来のプラットフォーム60に形成される冷却流路64の径よりも大径の冷却流路14を形成することができる。
【0028】
図3は、図1のB―B断面図である。図3に示すように、冷却流路14の一端は、タービン動翼1の基端部2から翼形部12まで連通する前縁側の冷却流路24に連通している。また、冷却流路14は、冷却流路24からプラットフォーム16の前縁下側端部(図3の左下)に向かって延設されて、当該前方下側端部付近で後縁側に屈曲し、後縁側に向かってロータ軸方向に沿って形成されている。
そして、冷却流路14へは、冷却流路24内を流れる冷却空気の一部が流入する。冷却流路14に流入した冷却空気は、冷却流路14内を通って、後縁側の開口15から排出される。
【0029】
ハブ13と後縁側の端面18の外側領域22とが最も接近する位置は、剛性の高いプラットフォーム側からの拘束力が大きく、後縁に近い翼形部12やハブ13にかかる熱応力が大きくなりやすい。そのため、前述のように、かかる熱応力を抑制するため、後縁側の端面18に凹部20(いわゆる、ぬすみ部)を設けている。すなわち、ハブ13と後縁側の端面18が最も接近する位置は、ハブ13の後縁側端部の接続位置直下であり、この近傍でのプラットフォーム16からの拘束を解放する必要がある。具体的には、図3に示すように、後縁6からロータ軸方向に平行な線を引き、外側領域22との交点をA点とすれば、A点近傍の外側領域22がハブ側に最も接近する位置である。つまり、背側および腹側のプラットフォーム16の後縁側の端面18の外側領域22がロータ軸方向に沿った冷却流路14の開口15を備える場合、高いぬすみ効果を得るためには、A点近傍での外側領域22のロータ径方向の厚さLを最も薄くする必要がある。
【0030】
図4は、タービン動翼1付近の冷却空気の流れを示すガスタービンの断面図である。
図4に示すように、車室から送給された冷却空気はロータ30内のディスクキャビティ31に流入し、ロータディスク32に設けられたラジアルホール33を通って基端部2内の冷却流路24に導かれる。そして、翼形部12へ向かって流れる途中で、冷却空気の一部がプラットフォーム16の冷却流路14に流入する。
なお、冷却流路14への冷却空気の供給系統は、これに限定されるものではなく、他の系統を利用してもよい。
【0031】
上述したように、本実施形態におけるタービン動翼1によれば、プラットフォーム16の後縁側の端面18のうち外側領域22のロータ径方向における厚さLは、翼形部12のハブ13の後縁側端部直下に対応する位置(図3中のA点近傍参照)の外側領域22(L2)よりも冷却流路14の開口15位置の外側領域22(L1)の方が大きいため、プラットフォーム16の冷却能力が向上する。
一方、ハブ13の後縁側端部直下に対応する外側領域22の厚さL2は、冷却流路14の開口15位置の外側領域22の厚さL1よりも小さいため、ハブ13の後縁側端部が接続されている外側領域22の周囲が翼形部12の熱伸びに応じて変形しやすくなり、後縁側端部付近に生ずる熱応力を抑制できる。
【0032】
さらに、翼形部12の背側のプラットフォーム16内に口径の大きい冷却流路14の形成が可能となり、プラットフォーム16の冷却能力が向上するため、高温で用いられるタービンに適用することが可能となる。
【0033】
また、外側領域22のロータ径方向における厚さLは、翼形部12の背側からハブ13の後縁側端部に向かって徐々に小さくなっているため、熱負荷が高い翼形部12の背側のプラットフォーム16の冷却能力が向上する。そして、外側領域22のロータ径方向における厚さLを、翼形部12の背側からハブ13の後縁側端部に向かって徐々に小さくなるように形成する加工は容易であり、手間及びコストが増加することはない。
【0034】
なお、上述した実施形態では、翼形部12の背側に1つの冷却流路14を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではない。プラットフォーム面の熱負荷および発生する熱応力の大きさにより、冷却流路14の要否、流路口径は任意に選定し得る。例えば、図5及び図6に示すように、ハブ13の後縁側端部直下の外側領域22から翼形部12の腹側の端面までの間の外側領域22のロータ径方向の厚さLを同一の厚さとし、翼形部12の背側に複数の冷却流路14、26を設けるとともに、腹側にも冷却流路28を設けてもよい。係る場合には、各冷却流路14、26、28の流路口径の大きさは、翼形部12の背側から腹側に向かって徐々に小さくなっている。
【0035】
このように、冷却流路26、28の径を冷却流路14の径よりも小さくすることで、外側領域22のロータ径方向における厚さLが小さい個所にも冷却流路26、28を形成することができる。
そして、複数の冷却流路14、26、28がプラットフォーム16内に形成されることで、プラットフォーム16の冷却効果を大幅に増大させることができる。
【0036】
次に、タービン動翼1の他の実施形態について説明する。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0037】
図7は、本発明の第二実施形態に係るタービン動翼41を後縁側から矢視した図である。
図7に示すように、本発明の第二実施形態は、背側および腹側の両側のプラットフォームの熱応力を低減するため、背側および腹側の双方のプラットフォーム42に冷却流路14、26、44を設け、これら冷却流路14、26、44の配置に合わせて凹部(ぬすみ部)20の形状を変えた例である。
タービン動翼41のプラットフォーム42に、複数の冷却流路14、26、44が形成されている。そして、各冷却流路14、26、44に対応した開口15、27、45が、後縁側の端面18の外側領域22に形成されている。具体的には、冷却流路14、26に対応した開口15、27は、外側領域22の背側端部にそれぞれ形成されている。また、冷却流路44に対応した開口45は、外側領域22の腹側端部に形成されている。
【0038】
上述の冷却流路14、26、44の配置に対して形成される凹部(ぬすみ部)20の形状の一例を図7に示している。ハブ13の後縁側端部の接続位置直下の位置を点Aとし、その位置での後縁側端部の下端の位置を点Dすれば、凹部20の形状は、線BCDEFで示す形状となる。すなわち、点Dを中間にロータ径方向の長さL0が一定幅の直線部CDEを天井として、背側及び腹側の端面に向かってなだらかな傾斜面を形成し、全体としてD点を頂点とした山形状に形成されている。
【0039】
このような凹部20の形状とした場合、外側領域22のロータ径方向における厚さLは、ハブ13の後縁側端部の接続位置直下の外側領域22の厚さL0(点Aから点Dまで)が最も小さくなっている。すなわち、ロータ軸方向に沿って形成された冷却流路14、26、44の開口15、27、45の位置の外側領域22の厚さL4、L5、L6の方が、ロータ周方向におけるハブ13の後縁側端部の接続位置直下の外側領域22の厚さL0よりも大きくなっている。
【0040】
本実施形態では、ハブ13の後縁側端部の接続位置直下における外側領域22の厚さL0は、第一実施形態と同様に、背景技術の欄で説明した特許文献1に記載のプラットフォーム60の外側領域22の厚さL3とほぼ同じである。したがって、ロータ周方向における冷却流路14、26、44の開口15、27、45位置の外側領域22の厚さL4、L5、L6は、特許文献1に記載したプラットフォーム60の外側領域22の厚さL3よりも大きく形成されているため、従来のプラットフォーム60に形成される冷却流路の径よりも大径の冷却流路14、26、44を形成することができる。
【0041】
上述したように、本実施形態におけるタービン動翼41によれば、第一実施形態に係る効果に加えて、従来のプラットフォーム60に形成される冷却流路64よりも大径の冷却流路14、27、44を備えているので、プラットフォーム16の冷却能力を大幅に向上させることができる。
【0042】
次に、タービン動翼の第三実施形態について説明する。本発明の第三実施形態は、第一実施形態のプラットフォーム16内に、翼形部12の背側の翼面8形状に沿った冷却流路54を更に設けたものである。
【0043】
図8は、本発明の第三実施形態に係るプラットフォーム16を示す断面図である。
図8に示すように、冷却流路54は、翼面10の後縁側の形状に沿って、翼形部12の背側のプラットフォーム16内に形成されている。
【0044】
冷却流路54の一端側は、プラットフォーム16の後縁側の端面18における外側領域22に開口55している。冷却流路54の径は、冷却流路14の径よりも小さく形成されている。また、冷却流路54の他端側は、プラットフォーム16の基端部2側の表面に開口56している。
【0045】
次に、ロータ30内から冷却流路54までの冷却空気の流れについて説明する。
【0046】
図4に示すように、冷却空気は、ロータ30内のシールディスク34及びディスクキャビィティ35を通って、プラットフォームキャビィティ36に流入し、プラットフォーム16の基端部2側の表面に形成されている開口56から冷却流路54に流入する。冷却流路54に流入した冷却空気は、プラットフォーム16を冷却して、後縁側の開口55から排出される。
なお、冷却空気の供給系統は、これに限定されるものではなく、例えば、第一実施形態で説明した翼形部12に連通する冷却流路24に冷却流路54の他端を接続して、冷却流路24から分岐することとしてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、冷却流路54を第一実施形態のプラットフォーム16に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第二実施形態のプラットフォーム42にも適用可能である。
【0048】
上述したように、本実施形態におけるタービン動翼51によれば、第一及び第二実施形態に係る効果に加えて、冷却流路54を備えているので、プラットフォーム16の後縁側端部の冷却能力を大幅に向上させることができる。
【0049】
次に、タービン動翼の第四実施形態について、図9に基づいて説明する。本発明の第四実施形態は、プラットフォーム16の後縁側の端面18における外側領域22のロータ径方向における厚さを変えたことを除き、他の部分は第一実施形態と同じである。
【0050】
すなわち、図9に示すように、本実施形態では、プラットフォーム16の後縁側の端面18における外側領域22のロータ径方向における厚さが、プラットフォーム16の背側のロータ軸方向に配置された冷却流路14の開口15近傍では、開口15が配置できるような厚さL1とし、そこから後縁側端部直下を経て腹側端部までの間の外側領域は、厚さL1より薄い同一の厚さL2で形成してもよい。本実施形態の場合も、第一実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
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