【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係る多段圧復水器を表す正面図、
図2は、実施例1の多段圧復水器を表す平面図、
図3は、実施例1の多段圧復水器における多孔板とトレイを表す正面図、
図4は、実施例1の多段圧復水器における多孔板とトレイを表す平面図、
図5は、実施例1の多段圧復水器におけるトレイの最適深さを説明するためのグラフ、
図6は、実施例1の多段圧復水器が適用された原子力発電プラントの概略構成図である。
【0017】
実施例1の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0018】
実施例1の加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、
図6に示すように、原子炉格納容器11内には、加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは冷却水配管14,15を介して連結されており、冷却水配管14に加圧器16が設けられ、冷却水配管15に冷却水ポンプ15aが設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150〜160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉12にて、燃料(原子燃料)として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で冷却水配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は冷却水配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0019】
蒸気発生器13は、蒸気タービン17と冷却水配管18を介して連結されており、この蒸気タービン17は高圧タービン19及び低圧タービン20を有すると共に、発電機21が接続されている。また、高圧タービン19と低圧タービン20との間には、湿分分離加熱器22が設けられており、冷却水配管18から分岐した冷却水分岐配管23が湿分分離加熱器22に連結される一方、高圧タービン19と湿分分離加熱器22は低温再熱管24により連結され、湿分分離加熱器22と低圧タービン20は高温再熱管25により連結されている。
【0020】
更に、蒸気タービン17の低圧タービン20は、復水器26を有しており、この復水器26には冷却水(例えば、海水)を給排する取水管27及び排水管28が連結されている。この取水管27は、循環水ポンプ29を有し、排水管28と共に他端部が海中に配置されている。そして、この復水器26は、冷却水配管30を介して脱気器31に連結されており、この冷却水配管30に復水ポンプ32及び低圧給水加熱器33が設けられている。また、脱気器31は、冷却水配管34を介して蒸気発生器13に連結されており、この冷却水配管34には給水ポンプ35及び高圧給水加熱器36が設けられている。
【0021】
従って、蒸気発生器13にて、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管18を通して蒸気タービン17(高圧タービン19から低圧タービン20)に送られ、この蒸気により蒸気タービン17を駆動して発電機21により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン19を駆動した後、湿分分離加熱器22で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン20を駆動する。そして、蒸気タービン17を駆動した蒸気は、復水器26で海水を用いて冷却されて復水となり、低圧給水加熱器33で、例えば、低圧タービン20から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器31で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、高圧給水加熱器36で、例えば、高圧タービン19から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器13に戻される。
【0022】
このように構成された原子力発電プラントに適用された復水器26は、多段圧復水器であって、
図1及び
図2に示すように、高圧段復水器41、中圧段復水器51、低圧段復水器61から構成されている。高圧段復水器41、中圧段復水器51、低圧段復水器61は、上部から低圧タービン20(
図6参照)からの排気蒸気が導入される高圧胴42、中圧胴52、低圧胴62が設けられている。そして、この高圧胴42、中圧胴52、低圧胴62は、内部に高圧室43、中圧室53、低圧室63が形成されている。そして、高圧室43、中圧室53、低圧室63を貫通するように、多数の伝熱管からなる冷却水管群71が配置され、この冷却水管群71は、前述した取水管27及び排水管28(
図6参照)が連結されている。この場合、冷却水管群71内の海水は、低圧室63、中圧室53、高圧室43の順に流れることから、各室43,53,63の圧力は、高い順に、高圧室43、中圧室53、低圧室63に設定される。
【0023】
中圧胴52は、下部に水平をなす圧力隔壁54が固定されており、上方の中圧室53と下方の再熱室55とに区画されている。また、低圧胴62は、下部に水平をなす圧力隔壁64が固定されており、上方の低圧室63と下方の再熱室65とに区画されている。各圧力隔壁54,64は、多孔板であって、中央部の所定の領域に復水導入孔(中圧復水導入部、低圧復水導入部)54a,64aが形成されている。
【0024】
そして、高圧室43は、蒸気ダクト(高圧蒸気導入部)72により中圧胴52の再熱室55に連通され、高圧室43の高圧蒸気がこの蒸気ダクト72を通して再熱室55に送られる。また、中圧胴52は、蒸気ダクト(高圧蒸気導入部)73により低圧胴62の再熱室65に連通され、高圧室43の高圧蒸気が蒸気ダクト72、中圧胴52の再熱室55、蒸気ダクト73を通して再熱室65に送られる。
【0025】
中圧胴52は、再熱室55内に位置してトレイ(受け部材)56が水平をなして配置されている。このトレイ56は、圧力隔壁54における復水導入孔54aが形成された領域の下方にこの領域より広く設定され、この復水導入孔54aから滴下した中圧復水を受け止め可能となっている。そして、このトレイ56は、受け止めた中圧復水を外周部からオーバーフローさせて落下し、再熱室55に復水として溜められる。また、低圧胴62は、再熱室65内に位置してトレイ(受け部材)66が水平をなして配置されている。このトレイ66は、圧力隔壁64における復水導入孔64aが形成された領域の下方にこの領域より広く設定され、この復水導入孔64aから滴下した低圧復水を受け止め可能となっている。そして、このトレイ66は、受け止めた低圧復水を外周部からオーバーフローさせて落下し、再熱室65に復水として溜められる。
【0026】
この中圧胴52、低圧胴62にて、各トレイ56,66は、ほぼ同様の構成をなしている。即ち、中圧胴52、低圧胴62は、
図3及び
図4に詳細に示すように、複数の脚部57,67を介して再熱室55,65の床面に設置されている。そして、各トレイ56,66は、受け止めた中圧復水、低圧復水を水平方向に流動させる復水流動部として、このトレイ56,66内で各復水を螺旋状に流動させる螺旋ガイド(螺旋流動部)56a,66aが設けられている。この場合、螺旋ガイド56a,66aは、中央部の領域が圧力隔壁54,64の各復水導入孔54a,64aに対応しており、各復水導入孔54a,64aから滴下した復水がトレイ56,66の中央部に落下し、落下した復水が螺旋ガイド56a,66aにより、
図4にて反時計周り方向に流動し、外周端部からオーバーフローすることとなる。
【0027】
この場合、各トレイ56,66は、その深さを所定深さに設定することが望ましい。
図5に示すように、中圧室53、低圧室63に導入される排気蒸気の温度をTs、圧力隔壁54,64の各復水導入孔54a,64aからトレイ56,66に滴下する復水の温度をTdとする。このとき、各トレイ56,66の深さが矢印D方向に深くなると、その温度分布は一点鎖線で示すものとなる。このグラフから、各トレイ56,66の深さが浅くなるほど、再生熱効率が良いことがわかる。
【0028】
なお、トレイ56,66の深さHは、滴下する復水流量Q及びトレイ56,66の流路方向長さLとトレイ56,66の流路幅Bにより最適値が変化する。このうち、トレイ56,66の幅と復水流量の関係は開水路の流れで設計者が決定する値である。一方、トレイ56,66の深さHと流路長さLの関係は温度上昇効率に直接影響するため、適正範囲としてH<0.07を設定した。この関係を維持することにより、温度上昇効率θ=(T
b−T
d)/(T
s−T
d)>0.7とすることができる。
【0029】
高圧室43と中圧胴52の再熱室55とが連結管74により連結され、中圧胴52の再熱室55と低圧胴62の再熱室65とが連結管75により連結され、高圧室43の下部に設けられた排出部76に冷却水配管30(
図6参照)が連結されている。
【0030】
ここで、実施例1の多段圧復水器26の作用について詳細に説明する。
【0031】
蒸気タービン17における低圧タービン20からの排気蒸気は、
図1に示すように、多段圧復水器26における高圧室43、中圧室53、低圧室63に送られる。この高圧室43、中圧室53、低圧室63を下方に移動する排気蒸気は、冷却水管群71と接触することにより凝縮される。そして、高圧室43で凝縮した高圧復水は、この高圧室43の下部に溜められる。また、中圧室53で凝縮した中圧復水は、この中圧室53の下部に溜められ、低圧室63で凝縮した低圧復水は、この低圧室63に下部に溜められる。
【0032】
このとき、中圧室53で凝縮した中圧復水は、圧力隔壁54上に一時的に溜められ、復水導入孔54aから滴下して再熱室55のトレイ56上に落下して溜められる。そして、トレイ56上の中圧復水は、
図4に示すように、旋回流動した後にオーバーフローして再熱室55内を落下する。この再熱室55は、高圧室43の高圧蒸気が蒸気ダクト72を通して送られており、復水導入孔54aからトレイ56に滴下する中圧復水が、高圧蒸気中を滴下することで接触伝熱により加熱される。また、トレイ56に落下した中圧復水が、高圧蒸気中を螺旋状に流動することで高圧蒸気中との接触伝熱により加熱される。更に、トレイ56をオーバーフローする中圧復水が高圧蒸気中を滴下することで接触伝熱により加熱される。
【0033】
また、同様に、低圧室63で凝縮した低圧復水は、圧力隔壁64上に一時的に溜められ、復水導入孔64aから滴下して再熱室65のトレイ66上に落下して溜められる。そして、トレイ66上の低圧復水は、旋回流動した後にオーバーフローして再熱室65内を落下する。この再熱室65は、中圧室53の高圧蒸気が蒸気ダクト73を通して送られており、復水導入孔64aからトレイ66に滴下する低圧復水が、高圧蒸気中を滴下することで接触伝熱により加熱される。また、トレイ66に落下した低圧復水が、高圧蒸気中を螺旋状に流動することで高圧蒸気中との接触伝熱により加熱される。更に、トレイ66をオーバーフローする低圧復水が高圧蒸気中を滴下することで接触伝熱により加熱される。
【0034】
そして、低圧胴62の再熱室65に溜められた低圧復水は、連結管75を通って中圧胴52の再熱室55に流れ、この再熱室55で低圧復水と中圧復水が混合した復水は、連結管74を通って高圧室43に流れ、この高圧室43で低圧復水と中圧復水と高圧復水が混合した復水は、排出部76から冷却水配管30に排出される。
【0035】
このように実施例1の多段圧復水器にあっては、高圧室43と中圧室53と低圧室63と、中圧室53と低圧室63の下部に圧力隔壁54,64により仕切られる再熱室55,65と、圧力隔壁54,64に設けられて復水を再熱室55,65に導入する復水導入孔54a,64aと、高圧室43の高圧蒸気を再熱室55,65に導入する蒸気ダクト72,73と、復水導入孔54a,64aから滴下する復水を受け止め可能であると共に受け止めた低圧復水をオーバーフロー可能なトレイ56,66と、トレイ56,66により受け止めた復水を水平方向に流動させる復水流動部としての螺旋ガイド56a,66aとを設けている。
【0036】
従って、高圧室43、中圧室53、低圧室63に送られる排気蒸気は、冷却水管群71と接触することにより凝縮され、中圧室53と低圧室63で凝縮した復水は、圧力隔壁54,64上に一時的に溜められ、復水導入孔54a,64aから滴下して再熱室55,65のトレイ56,66上に落下して溜められ、トレイ56,66上の復水は、旋回流動した後にオーバーフローして再熱室54,65内を落下する。そして、復水導入孔54a,64aからトレイ56,66に滴下する復水、トレイ56,66を螺旋状に流動する復水、トレイ56,66をオーバーフローする復水は、高圧室43から再熱室55,65に導入される高圧蒸気により接触伝熱して加熱される。その結果、復水の温度上昇効率を向上させることができると共に、再熱効率を向上させることができ、また、装置のコンパクト化を可能とすることができる。
【0037】
また、実施例1の多段圧復水器では、各トレイ56,66に復水を螺旋状に流動させる螺旋ガイド56a,66aを設けている。従って、簡単な構成で容易に復水の流動距離や流動時間を長くすることができ、復水の温度上昇効率を向上させることができると共に、再熱効率を向上させることができる。
【実施例2】
【0038】
図7は、本発明の実施例2に係る多段圧復水器における多孔板とトレイを表す平面図である。
【0039】
実施例2は、実施例1に説明した多段圧復水器26における中圧胴52、低圧胴62にて、適用した各トレイ56,66の改良である。即ち、
図7に示すように、トレイ81は、受け止めた復水を水平方向に流動させる低圧復水流動部として、このトレイ81内で各復水を迂回させる複数の迂回ガイド(迂回流動部)81aが設けられている。この場合、迂回ガイド81aは、一端部の領域が圧力隔壁(図示略)の復水導入孔82に対応しており、復水導入孔82から滴下した復水がトレイ81の一端部に落下し、落下した復水が迂回ガイド81aにより、
図7にて上下方向に流動し、他端部からオーバーフローすることとなる。
【0040】
このように実施例2の多段圧復水器にあっては、各トレイ81に復水を迂回して流動させる迂回ガイド81aを設けている。従って、簡単な構成で容易に復水の流動距離や時間を長くすることができ、復水の温度上昇効率を向上させることができると共に、再熱効率を向上させることができる。
【0041】
なお、上述した各実施例では、復水流動部を螺旋式や迂回式としたが、この形式に限定されるものではなく、トレイ内における復水の流動距離を長くすることができるものであれば、いずれの形式であってもよい。また、上述した各実施例では、本発明の多段圧復水器を、高圧、中圧、低圧の3段としたが、2段でもよく、4段以上としてもよい。
【0042】
また、上述した各実施例では、本発明の多段圧復水器を、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に適用して説明したが、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)に適用することもできる。また、原子力プラントに拘らず、火力プラントなど別の発電プラントであってもよい。