【実施例】
【0022】
本発明による実施例に係る固体酸化物形燃料電池の熱交換用上部中子又は下部中子、及びそれを備えた固体酸化物形燃料電池について、図面を参照して説明する。
図1は、固体酸化物形燃料電池モジュールを表す概略構成図である。
【0023】
本実施例の固体酸化物形燃料電池モジュール(以下「燃料電池モジュール」ともいう)100は、
図1に示すように、断熱材であるケーシング101と、略円筒状に形成された複数のセルチューブ102と、セルチューブ102の両端を支持する上下の管板(第1仕切り部材)103a、103bと、これら上下の管板103a、103bの間に配置された上下の断熱体104a、104bとから構成されている。
【0024】
上下の断熱体104a、104bに挟まれた空間には、発電室105が形成されている。ケーシング101と上管板103aとの間には、燃料供給室106が形成されている。ケーシング101と下管板103bとの間には、燃料排出室107が形成されている。下管板103bと下断熱体104bとの間には、空気供給室108が形成されている。上管板103aと上断熱体104aとの間には、空気排出室109が形成されている。
【0025】
上管板103aは、ケーシング101の長手方向(
図1の上下方向)の一方(上側)に配置された板状の部材であり、下管板103bは、ケーシング101の長手方向の他方(下側)に配置された板状の部材である。セルチューブ102は、多孔質セラミックスから形成された略円筒状の管であり、長手方向(
図1の上下方向)における中央部に発電を行なう複数の燃料電池セル110が設けられている。セルチューブ102は、一方の開口端が燃料供給室106に開口し、他方の開口端が燃料排出室107に開口するように、上下の管板103a、103bに支持されている。また、セルチューブ102は、燃料電池セル(発電素子)110が発電室105内にのみ位置するように配置されている。
【0026】
上断熱体104aは、ケーシング101の長手方向の一方(上側)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。下断熱材104bは、ケーシング101の長手方向の他方(下側)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。各断熱体104a、104bには、セルチューブ102が挿通される孔111a,111bが形成され、孔111a,111bの直径はセルチューブ102の直径よりも大きく形成されている。
【0027】
なお、孔111a,111bの内周面は、略円筒状に形成されていてもよいし、螺旋状または直線状の凹部(溝)または凸部(畝状突起)が形成されていてもよく、特に限定するものではない。このような構成にすることで、セルチューブ102と孔111bとの間を通って発電室105に流入する空気に、排出燃焼ガス121a及び下断熱体104bの熱が伝達されやすくなり、発電室105の温度を高温に保ちやすくすることができる。同様に、セルチューブ102と孔111aとの間を通って発電室105から排出される排出空気122aの熱を伝達することでセルチューブ102に導入される燃料ガス121を高温とすることができる。
【0028】
また、セルチューブ102の上端開口部及び下端開口部には熱交換用上部中子10、下部中子20が挿入されており、これら上部又は下部中子10、20の外周壁とセルチューブ102内壁との隘路間に燃料ガス121を供給させて、セルチューブ102の外周を流れる酸化剤ガスである空気122との熱交換を良好としている。
すなわち、上断熱体104a領域が上部熱交換部123aを形成し、下断熱体104b領域が下部熱交換部123bを形成している。そして、上部熱交換部123aでは導入される燃料ガス121と排出される排出空気122aとの熱交換がなされ、下部熱交換部123bでは、導入される空気122と排出燃料ガス121aとの熱交換がなされる。
【0029】
ここで、上記構成からなる燃料電池モジュール100の動作の概要を説明する。
【0030】
燃料電池モジュール100の空気供給室108には空気122が流入する。該空気122は下断熱材104bの孔111bとセルチューブ102との隙間を通って、発電室105内に供給される。
一方、燃料供給室106には燃料ガス121が流入する。該燃料ガス121はセルチューブ102の基体管の内部を通って発電室105内に供給される。空気122と燃料ガス121とは、燃料電池セル110において発電に利用される。その後排出空気122aは空気排出室109に流入し、排出燃料ガス121aは燃料排出室107に流入し、それぞれ燃料電池モジュール100の外部に排出口101a、101bからそれぞれ排出される。
【0031】
この時、空気122と燃料ガス121とは、セルチューブ102の内面または外面を互いに逆向きに流れている。このことにより、発電に利用され高温となった燃料ガスおよび空気が、発電に利用される前の空気および燃料ガスとそれぞれ熱交換される。すなわち、セルチューブ102の軸方向両端部であって燃料電池セル110が形成されていない上部熱交換部123a、下部熱交換部123bの熱交換領域において、燃料ガス121と空気122とが熱交換される。
【0032】
上述したように燃料電池モジュール100では、反応に利用されて高温となった排出燃料ガス121aおよび排出空気122aが熱交換により冷却された後、燃料排出室107および空気排出室109に供給される。このことにより、金属部材を有する上管板103aと下管板103bとが高温雰囲気に晒されることを抑制することができる。その結果、燃料電池モジュール100では、燃料電池セル110における運転温度を高温化、例えば800℃から950℃にすることを可能にしている。
【0033】
次に、上述した燃料電池システムの燃料電池モジュール100に使用されるセルチューブ(燃料電池)102の熱交換部に用いる熱交換用上部中子10又は下部中子20について詳細に説明する。
【0034】
図2は、固体酸化物形燃料電池の熱交換用上部中子の斜視図である。
図3は、セルチューブ内に熱交換用上部中子を設置した状態図である。なお、
図3中、(A)〜(C)図示はセルチューブの軸方向から中子の設置状況をみた概略図である。
図2及び
図3に示すように、本実施例のセルチューブ(燃料電池)102の上部熱交換部123aに用いる熱交換用上部中子10は、セルチューブ102の上端開口に支持される鍔11aを有する支持部材11と、上部支持部材11から垂下される支持棒12と、支持棒12の下端部に設けた芯出し部材である三角プレート13と、三角プレート13から垂下される第1の中子本体14とからなるものである。
第1の中子本体14は、両端が閉塞された中空円筒体である。
【0035】
本実施例では第1の中子本体14の両端に芯出し部材である三角プレート13を設けているが、芯出しが良好に行われる場合には、いずれか一方のみで足りる。
この三角プレート13を設けることにより、中子本体14の中心軸とセルチューブ102の中心軸とが重なるように上部中子10をセンタリングし、セルチューブ102の内周面と中子本体14との間に等間隔の隙間が形成され、均一な熱交換が実現できる。
【0036】
芯出し部材であるプレートの形状は、三角形に限定されるものではなく、セルチューブ内の芯出しが可能であればいずれの形状であってもよく、複数の箇所で支持される形状、例えば多角形(5角形、6角形等)の星型としてもよい。
【0037】
また、プレート以外に、中実や中空の棒を三角形や多角形の星型として、芯出し部材を構成するようにしてもよい。さらに、芯出し部材とセルチューブ102内周面との接触は点に限定されず、線又は面(曲面)で支持する構造としてもよい。
【0038】
ここで、従来のセンタリング部は、中子本体の外周壁に少なくとも3方向から複数のセンタリング部材を溶接して設けるので、その溶接作業に手間がかかっていたが、本実施例の熱交換用上部中子10とすることで、簡易な構成となり、作業効率が向上する。また、芯出し部材であるプレートは溶接の場合に比べ取り付け・取り外しが容易なため、運転条件に応じた中子径の選択も容易になり、中子の汎用性が向上する。
【0039】
また、セルチューブの上端開口から支持棒12を介して垂下し、この支持棒の下端部に第1の中子本体14を設けることで、熱交換部123aの必要領域のみに中子を設置でき、中子の部材をコンパクト化させることができる。
【0040】
図4は、固体酸化物形燃料電池の熱交換用下部中子の斜視図である。
図5は、セルチューブ内に熱交換用下部中子を設置した状態図である。
図5中、(A)図示はセルチューブの軸方向から中子の設置状況をみた概略図である。
図4及び
図5に示すように、本実施例のセルチューブ(燃料電池)102の下部熱交換部123bに用いる熱交換用下部中子20は、上端部が閉塞すると共に下端が開放の第2の中子本体21と、第2の中子本体21の上端部に設けられた芯出し部材である三角プレート13とからなるものである。
【0041】
第2の中子本体21の下端はケーシング101に設けた底絶縁板30に対して自重で当接されている。
芯出し部材は上述したものと同様である。
また、第2の中子本体21の下端に位置決めを確実にするために、位置決め部材32を設けるようにしてもよい。
図6−1及び
図6−2は、底絶縁板に設けた位置決め部材の概略図である。
図6−1においては、底絶縁板30の上に位置決め部材32を三箇所設け、第2の中子本体21の端部の位置決めを確実としている。
【0042】
図6−2は、底絶縁板30の上にリング状の位置決め部材33を設け、第2の中子本体21の端部の位置決めを確実としている。
【0043】
従来のセンタリング部は中子本体の外周壁に溶接をして設けるので、その手間がかかっていたが、本実施例の中子とすることで、簡易な構成となり、作業効率が向上する。
【0044】
また、下部中子はセルチューブ102の下端部から挿入して設置するだけで良いので、その作業が簡易となる。また、中子を再利用する場合においても、抜出すだけでよいので、例えば接着剤や溶接等により中子を設置した場合と比べて、その取り外し作業が簡易となり、再利用におけるコスト低減、工程短縮に寄与することができる。
【0045】
なお、本実施例では、燃料ガス121をセルチューブ102内部に供給すると共に、酸化剤ガスである空気122をセルチューブ102の外面に供給することとしたが、逆に、セルチューブ102内部に酸化剤ガスを供給し、セルチューブ102の外面に燃料ガスを供給してもよく、この場合には燃料電池セル110を構成する燃料極(図示せず)及び空気極(図示せず)の配置を逆にすればよい。
【0046】
更に、燃料ガス121及び酸化剤ガスである空気122の流動方向を逆とし、燃料ガス121をセルチューブ102の下端部から供給し、酸化剤ガスである空気122を上部側から下部側へ流動させるようにしてもよい。この場合、セルチューブ102に設けられた上部中子10、下部中子20は、前述した熱交換とは逆の熱伝導に基づく熱交換を行うようにすればよい。
【0047】
このように、本発明によれば、簡易な構成の固体酸化物形燃料電池の熱交換用上部中子10及び下部中子20を用いて、セルチューブ102の熱交換部123a、123bでの熱交換を良好とすると共に、固体酸化物形燃料電池への当該上下中子の設置が簡易となり、作業効率が向上する。