(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5716510
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】静電気除去機能付き洗濯物立体包装機
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20150423BHJP
H05F 3/02 20060101ALI20150423BHJP
B65B 25/20 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
H05F3/04 B
H05F3/02 H
B65B25/20 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-90943(P2011-90943)
(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公開番号】特開2012-226858(P2012-226858A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】504435818
【氏名又は名称】株式会社三幸社
(74)【代理人】
【識別番号】100084571
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 玄陽
(72)【発明者】
【氏名】打越 満幸
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−112495(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3047592(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/04
B65B 25/20
H05F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガーに吊るされた状態の洗濯物としての衣類に、筒状の樹脂フィルムを引き下ろして被せ、衣類とハンガーとを一緒に樹脂フィルムで包装する洗濯物立体包装機であって、上記のハンガーのフックを引っ掛けるための鉤部材を上部に備えた衣類吊り下げ収納部に、衣類や樹脂フィルムに帯電する静電気を除去するための静電気除去部材が設けられていることを特徴とする静電気除去機能付き洗濯物立体包装機。
【請求項2】
請求項1記載の静電気除去機能付き洗濯物立体包装機であって、上記衣類吊り下げ収納部の奥に、上記静電気除去部材が設けられていることを特徴とする静電気除去機能付き洗濯物立体包装機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の静電気除去機能付き洗濯物立体包装機であって、上記衣類吊り下げ収納部の奥に背板が設けられ、この背板の前面に、ロープ状の上記静電気除去部材が設けられていることを特徴とする静電気除去機能付き洗濯物立体包装機。
【請求項4】
請求項3記載の静電気除去機能付き洗濯物立体包装機であって、上記静電気除去部材が、背板の前後に縦方向に延びて交互に通され前面側が長い状態の縫い目状に設けられていることを特徴とする静電気除去機能付き洗濯物立体包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯したワイシャツ等の衣類を吊るした状態で、筒状の樹脂フィルムで包装する洗濯物立体包装機に関し、更に詳しくは包装工程等で樹脂フィルムや衣類に帯電する静電気を除去できるよう形成した静電気除去機能付き洗濯物立体包装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の包装機としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
この従来機は、ハンガーに吊るされた状態の洗濯物としての衣類に、筒状の樹脂フィルムを引き下ろして被せ、衣類とハンガーとを一緒に樹脂フィルムで包装可能に形成されている。
【0003】
ところで、この種の包装機は、ロール状に巻かれている樹脂フィルムの引き出しや、引き下ろし時の摩擦により、樹脂フィルムが、静電気を帯電し易い。また衣類自体も、クリーニング仕上げの工程で生じる摩擦により、静電気を帯電しているのが通例である。
【0004】
而して、この種の静電気は、包装工程で、樹脂フィルムのまとわり付きなどを引き起こし、衣類を綺麗に包装できない原因となる。
従って、この種の包装機は、樹脂フルムや衣類に帯電している静電気を除去できるよう形成されているのが望ましい。
【0005】
しかるに、従来機は、この種の静電気に対する対策が何ら施されていなかった。そのため、従来機を使用すると、包装工程において樹脂フィルムが衣類にまとわり付いたり、張り付くトラブルが生じ、また作業者が電撃を受けたり、更には包装の完了した衣類(包装品)にごみが付着する、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−112495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来品の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、洗濯物の包装工程における樹脂フィルムのまとわり付き、張り付きを防止できると共に、作業者への電撃や、包装品へのごみの付着を防止できるよう形成した静電気除去機能付き洗濯物立体包装機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、
図1等に示されるように、ハンガー1に吊るされた状態の洗濯物としての衣類2に、筒状の樹脂フィルム3を引き下ろして被せ、衣類2とハンガー1とを一緒に樹脂フィルム3で包装する洗濯物立体包装機であって、上記のハンガー1のフック1aを引っ掛けるための鉤部材5を上部に備えた衣類吊り下げ収納部6に、衣類2や樹脂フィルム3に帯電する静電気を除去するための静電気除去部材9が設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
ここで、静電気除去部材9としては、例えばステンレス繊維や炭素繊維等の導電性繊維で編まれたロープ、紐、面状材、或いはこの種の繊維でブラシ状に形成された部材がある。
【0010】
本発明の場合、静電気除去部材9は、衣類吊り下げ収納部6の上部や側部に設けられるのでも良いが、
図1等に示されるように、衣類吊り下げ収納部6の奥に設けられているのが好ましい(請求項2)。
なぜならこれによると、衣類2の吊るし操作や樹脂フィルム3の引き下ろし操作に支障なく除電でき、また広い面積にわたって静電気除去部材9を配設でき、その分、除電効果を高めることができるからである。
【0011】
またこの場合、本発明は、衣類吊り下げ収納部6の奥に背板8が設けられ、この背板8の前面に、ロープ状の静電気除去部材9が設けられているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、衣類吊り下げ収納部6のスペースを狭めることなく、簡単、低コストで除電できるからである。なお、静電気除去部材9は、衣類吊り下げ収納部6の奥に垂れ下げたり、ブラシ状の場合は毛先を前方に向けて横向きに設けられるので良い。
【0012】
またこの場合、本発明は、静電気除去部材9が、背板8の前後に縦方向に延びて交互に通され前面側が長い状態の縫い目状に設けられているのが好ましい(請求項4)。
なぜならこれによると、静電気除去部材9を専用の取付部品を必要とすることなく、低コストで設けることができるからである。またこの場合は、静電気除去部材9が樹脂フィルム3の引き下ろし方向に沿って設けられているため、引き下ろし操作に悪影響を及ぼすことなく、除電できるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、このようにハンガーのフックを引っ掛けるための鉤部材を上部に備えた衣類吊り下げ収納部に、衣類や樹脂フィルムに帯電する静電気を除去するための静電気除去部材を設けているものである。
【0014】
従って本発明は、衣類の包装工程で樹脂フィルムに帯電する静電気や、またクリーニング仕上げの際に衣類に帯電している静電気を、静電気除去部材で除去できる。
【0015】
その結果、本発明によれば、衣類を包装する際に、樹脂フィルムが静電気でまとわり付いたり、張り付くトラブルを防止でき、円滑に、且つ綺麗に包装できる。
また本発明によれば、作業者への電撃を除去でき、包装品に静電気でごみが付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の包装機の好適な一実施形態を示す正面図である。
【
図8】同上包装機の作用を説明するための要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施形態を、添付図面に従って説明する。
【0018】
本発明は、
図1等に示されるように、ハンガー1に吊るされた状態の洗濯物としての衣類2に、筒状の樹脂フィルム3を引き下ろして被せ、衣類2とハンガー1とを一緒に樹脂フィルム3で包装する洗濯物立体包装機である。
衣類2としては、例えばワイシャツやブラウス等の上着がある。また樹脂フィルム3は、ロール状に巻かれ、
図2に示されるように、包装機本体4の背部に横置きされている。
【0019】
5は、ハンガー1のフック1aを引っ掛けるための鉤部材である。この鉤部材5は、衣類吊り下げ収納部6の上部に設けられている。衣類吊り下げ収納部6は、前面が開口され、縦長のスペースに形成されている。
なお、包装機本体4の前側の上部には、
図2に示されるように、ハンガー1に掛けられた衣類2の受け渡しに使用するための引っ掛け部7が設けられている。
【0020】
また衣類吊り下げ収納部6は、この実施形態では奥に背板8が左右一対状に設けられている。そして本発明は、この背板8の前面に、衣類2や樹脂フィルム3に帯電する静電気を除去するための静電気除去部材9が設けられている。
【0021】
静電気除去部材9は、この実施形態ではロープ状に形成され、
図8に示されるように、一端がアースされている。またこの静電気除去部材9は、この実施形態では背板8の前後に縦方向に延びて交互に通され前面側が長い状態の縫い目状に設けられている。背板8は、強度が高くなるよう、凸段差部8aと凹段差部8bを隣り合わせて折り板状に形成されている。
【0022】
また静電気除去部材9は、除電効果が高くなるよう、背板8の各凸段差部8aの前面に、三列状に張られている。また静電気除去部材9は、背板8の上下を除いて、衣類2の背面に対応する位置に、効率良く、且つバランス良く除電できるよう設けられている。
【0023】
次に、この実施形態に係る本発明の作用を説明する。
衣類2や樹脂フィルム3は、摩擦帯電により、高い電位が発生している。
図8は、樹脂フィルム3にプラスのイオンが過剰印加され、静電気が溜まっている状態をあらわしている。
【0024】
この状態で樹脂フィルム3が、引き下ろされて静電気除去部材9に接近すると、静電気除去部材9の表面から満遍なく出ている産毛のような導電性の極細繊維の突起9aから、コロナ放電によりマイナスのイオンが放出され、これにより樹脂フィルム3の静電気が瞬時に除去される。
なお、樹脂フィルム3にマイナスのイオンが帯電している場合は、プラスのイオンが放出され、電位が瞬時にゼロ付近まで低下する。
また樹脂フィルム3が、静電気除去部材9に接触したときは、静電気が静電気除去部材9を介してアースされる。
【0025】
本発明は、このように衣類2や樹脂フィルム3に帯電している静電気の電位が、静電気除去部材9により、速やかに低下し、除電される。従って本発明の場合は、樹脂フィルム3が包装工程でまとわり付いたり、位置ずれを起こすことがないから、これによれば綺麗に包装でき、包装品にごみが付着することがない。
【符号の説明】
【0026】
1 ハンガー
1a フック
2 衣類
3 樹脂フィルム
4 包装機本体
5 鉤部材
6 衣類吊り下げ収納部
7 引っ掛け部
8 背板
9 静電気除去部材