(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の段差部が、隣接する2つの前記羽根車の軸方向途中部にそれぞれ対向する2以上の前記第1段差部と、当該2つの羽根車同士の連結部分と対向する第2段差部とを含んでおり、
軸方向一端から他端に向かう方向において、前記第1段差部の周方向のずれ方向は、前記第2段差部の周方向のずれ方向と逆方向であって、
前記先端部のうち前記隣接する2つの羽根車と対向する範囲の形状および高さが互いに同じであることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
前記第1段差部の周方向のずれ角度が、前記所定角度を、当該第1段差部と対向する前記羽根車の軸方向範囲内の前記第1段差部の数に1を足した値で割った値と同じであって、
前記第2段差部の周方向のずれ角度が、前記軸方向範囲にある前記第1段差部の周方向のずれ角度の合計値と同じであることを特徴とする請求項5に記載の空気調和機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の空気調和機では、羽根が前舌部または後舌部の先端を通過するタイミングが羽根車ごとにずれるため、ある程度風切り音を低減できるものの、1つの羽根車の1枚の羽根が、前舌部または後舌部の先端を通過するタイミングは同じであるため、騒音低減効果が十分でなかった。
【0007】
そこで、本発明は、風切り音をより低減できる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る空気調和機は、周方向に
不等ピッチで配列された複数の羽根をそれぞれ有する複数の羽根車が、軸方向に並んで配置されたクロスフローファンと、前記クロスフローファンの外周部の両側に配置されて通風路を形成するスタビライザおよびリアガイダとを備えており、前記スタビライザおよび前記リアガイダの少なくとも一方の先端部は、前記クロスフローファンの周方向にずれた複数の段差部を有する多段形状であって、前記複数の段差部は、前記羽根車の軸方向途中部と対向する少なくとも1つの第1段差部を含んでおり、前記第1段差部に対向する前記羽根車とそれに隣接する羽根車の
対応する羽根同士を見たときに、軸方向一端側の羽根車の羽根に対して軸方向他端側の羽根車の羽根が前記クロスフローファンの回転方向に所定角度ずれるように配置されており、軸方向一端から他端に向かう方向において前記第1段差部の周方向のずれ方向は、前記第1段差部に対向する前記羽根車とそれに隣接する前記羽根車の前記羽根同士の周方向のずれ方向と逆方向であることを特徴とする。
【0009】
この空気調和機では、スタビライザおよびリアガイダの少なくとも一方の先端部は、羽根車の軸方向途中部と対向する位置に、周方向にずれた第1段差部を有するため、1枚の羽根がスタビライザまたはリアガイダの先端を通過するタイミングを、第1段差部を境にずらすことができる。したがって、1枚の羽根により風切り音を同時に発生させることがなく、風切り音をずらして発生させることができる。そのため、風切り音を低減できる。
【0010】
第2の発明に係る空気調和機は、第1の発明において、前記複数の段差部が、前記羽根車同士の連結部分と対向する第2段差部を含むことを特徴とする。
【0011】
この空気調和機では、スタビライザまたはリアガイダの先端部は、羽根車同士の連結部分と対向する位置に、周方向にずれた第2段差部を有するため、羽根車ごとに風切り音の発生するタイミングをずらすことができ、風切り音をより低減できる。
【0012】
第3の発明に係る空気調和機は、第1または第2の発明において、隣接する2つの前記段差部の間の部分の高さが、軸方向に関して一定であることを特徴とする。
【0013】
この空気調和機では、スタビライザまたはリアガイダの先端部は、隣接する2つの段差部の間の部分が軸方向に直線状に延びているため、スタビライザまたはリアガイダを作製しやすい。
【0014】
第4の発明に係る空気調和機は、第3の発明において、前記複数の段差部が、隣接する2つの前記羽根車の軸方向途中部にそれぞれ対向する2以上の前記第1段差部と、当該2つの羽根車同士の連結部分と対向する第2段差部とを含んでおり、軸方向一端から他端に向かう方向において、前記第1段差部の周方向のずれ方向は、前記第2段差部の周方向のずれ方向と逆方向であって、前記先端部のうち前記隣接する2つの羽根車と対向する範囲の形状および高さが互いに同じであることを特徴とする。
【0015】
この空気調和機では、スタビライザまたはリアガイダの先端部は、隣接する2つの羽根車と対向する範囲内にそれぞれ第1段差部を有し、当該2つの羽根車と対向する範囲の形状および高さが互いに同じである。そのため、スタビライザまたはリアガイダを作製しやすい。また、スタビライザまたはリアガイダの先端部の高さを全体的にほぼ同じにできる。
【0016】
第5の発明に係る空気調和機は、第3の発明において、前記複数の段差部が、前記第1段差部に対向する前記羽根車とその両側の前記羽根車との連結部分に対向する2つの第2段差部を含んでおり、軸方向一端から他端に向かう方向において、前記第1段差部の周方向のずれ方向は、前記第2段差部の周方向のずれ方向と逆方向であっ
て、前記第2段差部の周方向のずれ角度が、前記所定角度よりも小さ
いことを特徴とする。
【0017】
この空気調和機では、第1段差部と第2段差部のずれ方向が逆方向であり、所定角度ずらして配置された羽根同士のずれ方向が、第1段差部のずれ方向と逆方向であり、第2段差部のずれ角度が、前記所定角度よりも小さいため、第1段差部を境にずれて発生する2つの風切り音の時間のずれ方向と、第2段差部を境にずれて発生する2つの風切り音の時間のずれ方向とを同じにできる。したがって、クロスフローファンの軸方向一端から他端に向かって順に風切り音をずらして発生させることができる。それにより、各段差部間において発生する風切り音の干渉による指向性を抑制し、室内全域において効果的に静音化できる。
【0018】
第6の発明に係る空気調和機は、第5の発明において、前記第1段差部の周方向のずれ角度が、前記所定角度を、当該第1段差部と対向する前記羽根車の軸方向範囲内の前記第1段差部の数に1を足した値で割った値と同じであって、前記第2段差部の周方向のずれ角度が、前記軸方向範囲にある前記第1段差部の周方向のずれ角度の合計値と同じであることを特徴とする。
【0019】
この空気調和機では、第1段差部を境にずれて発生する2つの風切りは、第1段差部のずれ角度(羽根同士のずれ角度(前記所定角度)を、羽根車の軸方向範囲内の第1段差部の数に1を足した値で割った値)の分だけずれて発生し、第2段差部を境にずれて発生する2つの風切り音は、羽根同士のずれ角度(前記所定角度)から第2段差部のずれ角度を引いた角度の分だけずれて発生する。したがって、第1段差部を境にずれて発生する2つの風切り音のずれ時間と、第2段差部を境にずれて発生する2つの風切り音のずれ時間とを同じにできる。したがって、本発明は、第1段差部を設けずに本発明の第1段差部に相当する位置に羽根車の連結部分が対向するように羽根車の数を増やした場合と同様の静音効果を得ることができる。逆に言うと、本発明は、静音性能を維持しつつ、羽根車の羽根長さを長くして、羽根車数を減らすことができる。また、通風抵抗となる羽根車の連結部分の数を削減できるため、送風特性を改善できる。
また、第7の発明に係る空気調和機は、周方向に配列された複数の羽根をそれぞれ有する複数の羽根車が、軸方向に並んで配置されたクロスフローファンと、前記クロスフローファンの外周部の両側に配置されて通風路を形成するスタビライザおよびリアガイダとを備えており、前記スタビライザおよび前記リアガイダの少なくとも一方の先端部は、前記クロスフローファンの周方向にずれた複数の段差部を有する多段形状であって、前記複数の段差部は、前記羽根車の軸方向途中部と対向する少なくとも1つの第1段差部を含んでおり、隣接する2つの前記段差部の間の部分の高さが、軸方向に関して一定であり、前記複数の段差部が、前記第1段差部に対向する前記羽根車とその両側の前記羽根車との連結部分に対向する2つの第2段差部を含んでおり、軸方向一端から他端に向かう方向において、前記第1段差部の周方向のずれ方向は、前記第2段差部の周方向のずれ方向と逆方向であって、隣接する2つの前記羽根車の前記羽根同士は、周方向に所定角度ずらして配置されており、前記第2段差部の周方向のずれ角度が、前記所定角度よりも小さく、軸方向一端から他端に向かう方向において、前記第1段差部の周方向のずれ方向は、隣接する2つの前記羽根車の前記羽根同士の周方向のずれ方向と逆方向であることを特徴とする。
また、第8の発明に係る空気調和機は、第7の発明に係る空気調和機において、前記第1段差部の周方向のずれ角度が、前記所定角度を、当該第1段差部と対向する前記羽根車の軸方向範囲内の前記第1段差部の数に1を足した値で割った値と同じであって、前記第2段差部の周方向のずれ角度が、前記軸方向範囲にある前記第1段差部の周方向のずれ角度の合計値と同じであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
第1の発明では、スタビライザおよびリアガイダの少なくとも一方の先端部は、羽根車の軸方向途中部と対向する位置に、周方向にずれた第1段差部を有するため、1枚の羽根がスタビライザまたはリアガイダの先端を通過するタイミングを、第1段差部を境にずらすことができる。したがって、1枚の羽根により風切り音を同時に発生させることがなく、風切り音をずらして発生させることができる。そのため、風切り音を低減できる。
【0022】
第2の発明では、スタビライザまたはリアガイダの先端部は、羽根車同士の連結部分と対向する位置に、周方向にずれた第2段差部を有するため、羽根車ごとに風切り音の発生するタイミングをずらすことができ、風切り音をより低減できる。
【0023】
第3の発明では、スタビライザまたはリアガイダの先端部は、隣接する2つの段差部の間の部分が軸方向に直線状に延びているため、スタビライザまたはリアガイダを作製しやすい。
【0024】
第4の発明では、スタビライザまたはリアガイダの先端部は、隣接する2つの羽根車と対向する範囲内にそれぞれ第1段差部を有し、当該2つの羽根車と対向する範囲の形状および高さが互いに同じである。そのため、スタビライザまたはリアガイダを作製しやすい。また、スタビライザまたはリアガイダの先端部の高さを全体的にほぼ同じにできる。
【0025】
第5の発明では、第1段差部と第2段差部のずれ方向が逆方向であり、所定角度ずらして配置された羽根同士のずれ方向が、第1段差部のずれ方向と逆方向であり、第2段差部のずれ角度が、前記所定角度よりも小さいため、第1段差部を境にずれて発生する2つの風切り音の時間のずれ方向と、第2段差部を境にずれて発生する2つの風切り音の時間のずれ方向とを同じにできる。したがって、クロスフローファンの軸方向一端から他端に向かって順に風切り音をずらして発生させることができる。それにより、各段差部間において発生する風切り音の干渉による指向性を抑制し、室内全域において効果的に静音化できる。
【0026】
第6の発明では、第1段差部を境にずれて発生する2つの風切りは、第1段差部のずれ角度(羽根同士のずれ角度(前記所定角度)を、羽根車の軸方向範囲内の第1段差部の数に1を足した値で割った値)の分だけずれて発生し、第2段差部を境にずれて発生する2つの風切り音は、羽根同士のずれ角度(前記所定角度)から第2段差部のずれ角度を引いた角度の分だけずれて発生する。したがって、第1段差部を境にずれて発生する2つの風切り音のずれ時間と、第2段差部を境にずれて発生する2つの風切り音のずれ時間とを同じにできる。したがって、本発明は、第1段差部を設けずに本発明の第1段差部に相当する位置に羽根車の連結部分が対向するように羽根車の数を増やした場合と同様の静音効果を得ることができる。逆に言うと、本発明は、静音性能を維持しつつ、羽根車の羽根長さを長くして、羽根車数を減らすことができる。また、通風抵抗となる羽根車の連結部分の数を削減できるため、送風特性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の空気調和機の室内機1は、全体として一方向に細長い形状を有しており、その長手方向が水平となるように室内の壁面に据え付けられる。室内機1は、図示しない室外機と共に空気調和機を構成しており、室内の冷暖房を行う。
なお、以下の説明において、室内機1が取り付けられる壁から突出する方向を「前方」と称し、その反対の方向を「後方」と称する。また、
図1に示す左右方向を単に「左右方向」と称する。
【0029】
図2に示すように、室内機1は、ケーシング2と、ケーシング2内に収容された熱交換器3、クロスフローファン10、フィルタ4および電装品箱(図示省略)などの内部機器を備えている。ケーシング2の上面には吸込口2aが形成されており、ケーシング2の下面には吹出口2bが形成されている。吹出口2bの近傍には、上下方向の風向きの調整と、吹出口2bの開閉を行う水平フラップ5が配置されている。
【0030】
クロスフローファン10(以下、単にファン10という)は、その軸方向が左右方向に沿うように配置されており、
図2中矢印で示す方向に回転する。ファン10の前後両側には、通風路を形成するフロントガイダ30とリアガイダ(後舌部)20が配置されている。フロントガイダ30の上側略半分は、スタビライザ(前舌部)32で構成されている。ファン10の両側にスタビライザ32とリアガイダ20が配置されていることによって、ファン10は、上前方から空気を吸い込んで、下後方に吹き出すようになっている。また、熱交換器3は、ファン10の前方と上方とを取り囲むように配置されている。空調運転時には、ファン10の駆動により、室内空気が吸込口2aから吸い込まれて、吸い込まれた空気は、熱交換器3において加熱または冷却された後、吹出口2bから吹き出される。
【0031】
以下、ファン10、リアガイダ20、フロントガイダ30について詳細に説明する。
[ファン]
図3に示すように、ファン10は、軸方向(左右方向)に並んで配置された複数(本実施形態では6つ)の羽根車12と、エンドプレート11とで構成される。
【0032】
エンドプレート11は、ファン10の右端部を構成しており、エンドプレート11の右面の中央部には、ファン10を駆動するモータ(図示省略)の回転軸と連結されるボス部11aが突設されている。
【0033】
6つの羽根車12のうち右側の5つの羽根車12Aは、周方向に配列された複数の羽根15と、複数の羽根15の左端に連結された略円環状の支持プレート13とからなり、羽根15と支持プレート13とは一体成形されている。羽根車12Aの羽根15の右端は、隣接するエンドプレート11または羽根車12Aの支持プレート13に、溶着等によって接合されている。
【0034】
6つの羽根車12のうち最も左側に配置された羽根車12Bは、周方向に配列された複数の羽根15と、複数の羽根15の左端に連結された略円盤状のエンドプレート14とからなり、羽根15とエンドプレート14とは一体成形されている。羽根車12Bの羽根15の右端は、隣接する羽根車12Aの支持プレート13に、溶着等によって接合されている。エンドプレート14の左面の中央部には、ケーシング2に設けられた軸受(図示省略)に回転自在に支持される軸(図示省略)が突設されている。
【0035】
羽根車12の複数の羽根15は、軸方向(左右方向)に沿って延びており、所定の翼角をもって前進翼構造で配設されている。5つの羽根車12Aの羽根15の軸方向長さは全て同じであって、羽根車12Bの羽根15の軸方向長さのほぼ2倍である。本実施形態では、羽根車12の複数の羽根15は、周方向に不等ピッチで配置されている。6つの羽根車12の羽根15の配列ピッチは全て同じである。なお、複数の羽根15は、等ピッチで配列されていてもよい。
【0036】
図4に示すように、隣接する2つの羽根車12のそれぞれの複数の羽根15は、周方向にずれて配置されている。具体的には、羽根15は、この羽根15の左側に隣接する羽根車12の羽根15に対して、回転方向(
図4中の矢印方向)に角度θだけずれている。つまり、6つの羽根車12のそれぞれの複数の羽根15は、右に向かうにつれて、回転方向に角度θずつずれている。
【0037】
[リアガイダ]
リアガイダ20は、ファン10の後方に配置されており、リアガイダ20の下端は吹出口2bに連結されている(
図2参照)。
図5および
図6に示すように、リアガイダ20の左右方向長さは、ファン10の左右方向長さとほぼ同じであって、リアガイダ20は、ファン10の左右方向のほぼ全域にわたってファン10と対向している。リアガイダ20の上端は、ファン10の上端よりも若干高い位置にある(
図2及び
図6参照)。
【0038】
図2に示すように、リアガイダ20のファン10に対向する面のうち、上下両端部を除く部分は、略円弧状の湾曲面21で構成されている。湾曲面21とファン10の外周部との離間距離(最短距離)は、上方に向かうほど小さくなっている。
【0039】
また、リアガイダ20は、湾曲面21より上方(先端側)に、突起部22を有する。突起部22は、左右方向に直交する断面形状が、ファン10と反対側に膨らんだ略円弧状に形成されている。突起部22とファン10の外周部との離間距離(最短距離)は、上方に向かうほど大きくなっている。上述したように、湾曲面21とファン10の外周部との離間距離(最短距離)は、上方に向かうほど小さくなっているため、リアガイダ20は、突起部22の下端と湾曲面21の上端との境界20a(以下、最近接位置20aという)において、ファン10に最も近接する。
【0040】
図8に示すように、突起部22は、左右方向に交互に並んだ分割片23、24で構成されている。突起部22は、6つの分割片23と5つの分割片24で形成されている。
【0041】
分割片23、24は、それぞれ、左右方向に沿って直線状に延びており、分割片23と分割片24とは、ファン10の周方向に角度α1だけずれている(
図7参照)。分割片23の左右方向に直交する断面形状は、分割片24の左右方向に直交する断面形状とほぼ同じである。6つの分割片23の上端の高さは全て同じである。また、5つの分割片24の上端の高さは全て同じである。
【0042】
6つの分割片23のうち右側の5つの分割片23の左右方向長さは、全て同じであって、羽根車12Aの羽根15の左右方向長さの略半分である。また、最も左側の分割片23の左右方向長さは、羽根車12Bの羽根15の左右方向長さとほぼ同じである。5つの分割片24の左右方向長さは全て同じであって、羽根車12Aの羽根15の左右方向長さの略半分である。
【0043】
分割片24の先端(上端)とその左側の分割片23の先端との境界に形成される段差を、段差部(第2段差部)25とし、分割片24の先端とその右側の分割片23の先端との境界に形成される段差を、段差部(第1段差部)26とする。段差部25の周方向のずれ方向は、段差部26の周方向のずれ方向と反対方向である。段差部25は、羽根車12同士の連結部分(支持プレート13)と対向しており、段差部26は、羽根車12の左右方向略中央部と対向している。
【0044】
図11に示すように、分割片23は、その左側の分割片24に対して、ファン10の回転方向(
図11中の矢印方向)と逆方向に角度α1だけずれている。即ち、段差部26は、左から右に見たときに、ファン10の回転方向と逆方向に角度α1だけずれており、段差部25は、左から右に見たときに、ファン10の回転方向に角度α1だけずれている。したがって、隣接する2つの羽根車12の角度θだけずらした2枚の羽根15のずれ方向は、段差部25の周方向のずれ方向と同じであって、段差部26の周方向のずれ方向と逆方向である。また、本実施形態では、角度α1は、隣接する2つの羽根車12の羽根15同士のずれ角度θのほぼ半分の値である。
【0045】
[フロントガイダ]
フロントガイダ30は、ファン10の前方に配置されており、フロントガイダ30の下端は吹出口2bに連結されている(
図2参照)。フロントガイダ30は、ファン10に対向配置されるスタビライザ32と、スタビライザ32の下端から吹出口2bに至る前壁部31とで構成されている。
【0046】
図5および
図6に示すように、スタビライザ32の左右方向長さは、ファン10の左右方向長さとほぼ同じであって、スタビライザ32は、ファン10の左右方向のほぼ全域にわたってファン10と対向している。また、スタビライザ32の上端は、ファン10の中心よりも低い位置にある(
図2及び
図5参照)。
【0047】
図9に示すように、スタビライザ32のファン10に対向する面のうち、上下両端部を除く部分は、略円弧状の湾曲面33で構成されている。湾曲面33とファン10の外周部との離間距離(最短距離)は、上方に向かうほど小さくなっている。また、スタビライザ32は、湾曲面33の下端から略前方に向かって屈曲する屈曲面34を有する。屈曲面34の下端は、前壁部31に連結されている。
【0048】
また、スタビライザ32は、湾曲面33の上端から下前方に延びた平坦状の端面35と、端面35の前方に配置され、端面35より上方に突出する凸部36とを有する。凸部36および端面35が、リアガイダ20の上端部を構成している。スタビライザ32は、湾曲面33の上端32a(以下、最近接位置32aという)において、ファン10の外周部に最も近接する。
【0049】
図10に示すように、スタビライザ32(凸部36、端面35、湾曲面33、屈曲面34)は、左右方向に交互に並んだ分割片37、38で構成されている。スタビライザ32は、6つの分割片37と5つの分割片38で形成されている。
【0050】
分割片37、38は、それぞれ、左右方向に沿って直線状に延びており、分割片37と分割片38とは、ファン10の周方向に角度β1だけずれている(
図9参照)。分割片37の左右方向に直交する断面形状は、分割片38の左右方向に直交する断面形状とほぼ同じである。6つの分割片37の上端の高さは全て同じである。また、5つの分割片38の上端の高さは全て同じである。
【0051】
6つの分割片37のうち右側の5つの分割片37の左右方向長さは、全て同じであって、羽根車12Aの羽根15の左右方向長さの略半分である。また、最も左側の分割片37の左右方向長さは、羽根車12Bの羽根15の左右方向長さとほぼ同じである。5つの分割片38の左右方向長さは全て同じであって、羽根車12Aの羽根15の左右方向長さの略半分である。
【0052】
分割片38とその左側の分割片37との境界に形成される段差を、段差部(第2段差部)39とし、分割片38とその右側の分割片37との境界に形成される段差を、段差部(第1段差部)40とする。段差部39の周方向のずれ方向は、段差部40の周方向のずれ方向と反対方向である。段差部39は、羽根車12同士の連結部分(支持プレート13)と対向しており、段差部40は、羽根車12の左右方向略中央部と対向している。
【0053】
図5に示すように、分割片37は、その左側の分割片38に対して、ファン10の回転方向と逆方向に角度β1だけずれている。即ち、段差部40は、左から右に見たときに、ファン10の回転方向と逆方向に角度β1だけずれており、段差部39は、左から右に見たときに、ファン10の回転方向に角度β1だけずれている。したがって、隣接する2つの羽根車12の角度θだけずらした2枚の羽根15のずれ方向は、段差部39の周方向のずれ方向と同じであって、段差部40の周方向のずれ方向と逆方向である。また、本実施形態では、角度β1は、隣接する2つの羽根車12の羽根15同士のずれ角度θのほぼ半分の値である。
【0054】
次に、リアガイダ20とファン10との間で生じる風切り音について、
図11を用いて説明する。なお、
図11では、6つの羽根車12のうち右側の3つの羽根車12だけを表示している。また、この3つの羽根車12の羽根のうち、右に向かうにつれて回転方向に角度θずつずらして配置された3枚の羽根15だけを表示している。
【0055】
ファン10の回転時、角度θずつずらして配置された6枚の羽根15のうち最も右側の羽根15の右側略半分が、最初に分割片23を通過した後、この羽根15の左側略半分が、分割片24を通過する。リアガイダ20の先端部とファン10との間には渦気流(
図7中矢印で表示)が生じており、この渦気流と羽根が干渉することで風切り音が発生する。そのため、本実施形態では、1枚の羽根15がリアガイダ20を通過する際に発生する風切り音を、2回に分散させて生じさせることができる。
【0056】
また、最も右側の羽根15が分割片24を通過した後、右から2番目の羽根15の右側略半分が、分割片23を通過する。そのため、本実施形態では、角度θだけずらして配置された2枚の羽根15がリアガイダ20を通過する際に発生する風切り音を、タイミングをずらして生じさせることができる。その後は、右から2番目の羽根の左側略半分が、分割片24を通過し、続いて、残りの4枚の羽根15についても同様に、分割片23、24を順番に通過する。
【0057】
また、スタビライザ32の湾曲面33とファン10との間にも渦気流(
図9中矢印で表示)が生じており、スタビライザ32の湾曲面33を羽根15が通過する際に、渦気流と羽根15が干渉することで風切り音が発生する。スタビライザ32には段差部39、40が設けられているため、リアガイダ20と同様に、1枚の羽根15が、スタビライザ32を通過する際に発生する風切り音を、2回に分散させて生じさせることができると共に、角度θだけずらして配置された2枚の羽根15がスタビライザ32を通過する際に発生する風切り音を、タイミングをずらして生じさせることができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の空気調和機では、リアガイダ20およびスタビライザ32の先端部は、羽根車12Aの軸方向途中部と対向する位置に、周方向にずれた段差部(第1段差部)26、40を有するため、1枚の羽根15がスタビライザ32およびリアガイダ20の先端を通過するタイミングを、第1段差部26、40を境にずらすことができる。したがって、1枚の羽根15により風切り音を同時に発生させることがなく、風切り音をずらして発生させることができる。そのため、風切り音を低減できる。
【0059】
また、本実施形態では、リアガイダ20およびスタビライザ32の先端部は、羽根車12同士の連結部分と対向する位置に、周方向にずれた段差部(第2段差部)25、39を有するため、羽根車12ごとに風切り音の発生するタイミングをずらすことができ、風切り音をより低減できる。
【0060】
また、本実施形態では、リアガイダ20およびスタビライザ32の先端部は、隣接する2つの段差部の間の部分が軸方向に直線状に延びているため、スタビライザ32またはリアガイダ20を作製しやすい。
【0061】
また、本実施形態では、リアガイダ20およびスタビライザ32の先端部は、5つの羽根車12Aに対向する範囲の形状および高さが互いに同じである。そのため、リアガイダ20およびスタビライザ32を作製しやすい。また、リアガイダ20およびスタビライザ32の先端部の高さを全体的にほぼ同じにできる。
【0062】
また、本実施形態では、第1段差部26、40と第2段差部25、39のずれ方向が逆方向であり、角度θずらして配置された羽根15同士のずれ方向が、第1段差部26、40のずれ方向と逆方向であり、第2段差部25、39のずれ角度が、角度θよりも小さいため、第1段差部26、40を境にずれて発生する2つの風切り音の時間のずれ方向と、第2段差部25、39を境にずれて発生する2つの風切り音の時間のずれ方向とを同じにできる。したがって、ファン10の軸方向一端から他端に向かって順に風切り音をずらして発生させることができる。それにより、各分割片(各段差部間)において発生する風切り音の干渉による指向性を抑制し、室内全域において効果的に静音化できる。
【0063】
また、本実施形態では、第1段差部26、40を境にずれて発生する2つの風切りは、第1段差部26、40のずれ角度(α1、β1)の分だけずれて発生し、第2段差部25、39を境にずれて発生する2つの風切り音は、羽根15同士のずれ角度θから、第2段差部25、39のずれ角度(α1、β1)を引いた角度の分だけずれて発生する。したがって、第1段差部26、0を境にずれて発生する2つの風切り音のずれ時間と、第2段差部25、39を境にずれて発生する2つの風切り音のずれ時間とを同じにできる。したがって、本実施形態は、第1段差部を設けずに第1段差部に相当する位置に羽根車12の連結部分が対向するように羽根車12の数を増やした場合と同様の静音効果が得ることができる。逆に言うと、本実施形態は、静音性能を維持しつつ、羽根車12の羽根長さを長くして、羽根車数を減らすことができる。また、通風抵抗となる羽根車の連結部分の数を削減できるため、送風特性を改善できる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成は、上記実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。なお、以下の変更形態は、適宜組み合わせて実施することも可能である。
【0065】
上記実施形態では、段差部25、26のずれ角度α1および段差部39、40のずれ角度β1は、羽根15同士のずれ角度θのほぼ半分の値であるが、それより小さくても大きくてもよい。但し、θ/2より大きい場合は、角度θ未満とすることが好ましい。
【0066】
上記実施形態では、第1段差部26、40のずれ方向が、羽根15同士のずれ方向と逆方向であって、第2段差部25、39のずれ方向が、羽根15同士のずれ方向と同じであるが、反対に、第1段差部26、40のずれ方向が、羽根15同士のずれ方向と同じであって、第2段差部25、39のずれ方向が、羽根15同士のずれ方向と逆方向になっていてもよい。
【0067】
上記実施形態では、リアガイダ20は、1つの羽根車12Aの軸方向範囲内に、第1段差部26、40を1つだけ有するが、例えば
図12に示すリアガイダ120のように、1つの羽根車12Aの軸方向範囲内に2つ以上の第1段差部126、127が設けられていてもよい。
この変更例の場合、第2段差部125のずれ角度α2は、1つの羽根車12Aの軸方向範囲内の第1段差部126、127のずれ角度α3、α4の合計値と同じにすることが好ましい。また、第1段差部126、127のずれ角度α3、α4は、羽根15同士のずれ角度θを、羽根車12Aの軸方向範囲内の第1段差部の数に1を足した値で割った値と同じにすることが好ましい。この構成により、第1段差部126、127を境にずれて発生する風切り音のずれ時間と、第2段差部125を境にずれて発生する風切り音のずれ時間とを同じにできる。
また、1つの羽根車の軸方向範囲内に設ける2以上の第1段差部のずれ角度は、上述した値以外の値であってもよい。この場合、2以上の第1段差部のずれ角度は全て同じであってよく、互いに異なっていてもよい。
なお、スタビライザ32についても同様に、1つの羽根車12Aの軸方向範囲内に2つ以上の第1段差部が設けられていてもよい。
【0068】
上記実施形態では、リアガイダ20の先端部は、5つの羽根車12Aに対向する範囲の形状および高さが互いに同じであるが、異なっていてもよい。
例えば、羽根車12Aごとに、第1段差部の数、ずれ角度、またはずれ方向が異なっていてもよい。また、5つの羽根車12Aのうちの一部の羽根車12Aの軸方向途中部と対向する位置にのみ、第1段差部が設けられていてもよい。また、6つの羽根車12の連結部分のうちの一部の連結部分と対向する位置にのみ、第2段差部が設けられていてもよい。
なお、スタビライザ32についても同様に、5つの羽根車12Aに対向する範囲の形状および高さが互いに異なっていてもよい。
【0069】
上記実施形態では、リアガイダ20は、各分割片23、24の高さ(隣接する段差部の間の部分の高さ)が、軸方向に関して一定であるが、例えば
図13に示すリアガイダ220のように、各分割片228の高さを、軸方向に関して連続的に変化させてもよい。各分割片228の軸方向に直交する断面形状は、ほぼ一定である。この構成により、1つの分割片228を羽根15が通過する際に発生する風切り音を、連続的にずらして発生させることができる。
図13では、分割片228の両側の段差部229は、羽根車12Aの軸方向中央部(または羽根車12の端部)と、羽根車12同士の連結部分にそれぞれ対向している。
なお、スタビライザ32についても同様に、例えば
図14に示すフロントガイダ230のスタビライザ232のように、各分割片241の高さを、軸方向に関して連続的に変化させてもよい。
図14では、分割片241の両側の段差部242は、羽根車12Aの軸方向中央部(または羽根車12の端部)と、羽根車12同士の連結部分にそれぞれ対向している。
【0070】
上記実施形態では、リアガイダ20は、その先端から突起部22と湾曲面21との境界まで、周方向にずれた形状に形成されているが、先端から湾曲面21の途中まで周方向にずれた形状に形成されていてもよい。つまり、分割片23、24の下端は、突起部22と湾曲面21との境界より上側であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、スタビライザ32は、上下方向の全域が、周方向にずれた形状に形成されているが、先端側の一部分だけが、周方向にずれた形状に形成されていてもよい。つまり、分割片37、38の下端は、スタビライザ32の下端より上側であってもよい。例えば、端面35と凸部36だけが周方向にずれた形状に形成されていてもよく、スタビライザ32の先端から湾曲面33の途中までが周方向にずれた形状に形成されていてもよい。
【0072】
上記実施形態では、リアガイダ20とスタビライザ32の両方が、羽根車12Aの軸方向途中部と対向する第1段差部を有する多段形状に形成されているが、リアガイダ20とスタビライザ32の一方だけが、羽根車12Aの軸方向途中部と対向する第1段差部を有する多段形状であって、他方は、第1段差部を有しない形状(即ち、段差部を全く有しない形状、もしくは、羽根車12同士の連結部分と対向する第2段差部だけを有する多段形状)であってもよい。
【0073】
上記実施形態では、リアガイダ20は、左右方向に直交する断面形状が、円弧状の湾曲面21の上側に、断面略円弧状の突起部22を有する形状であるが、リアガイダ20の断面形状はこれに限定されるものではない。例えば、湾曲面21の上側に、ファン10側の面だけが略円弧状で、ファン10と反対側の面がほぼ平坦状の突起部を有する断面形状であってもよい。リアガイダ20の断面形状が上記実施形態の形状と異なる場合、少なくとも、リアガイダ20においてファン10に最も近接する最近接位置から先端までの部分を含む部分を、周方向にずれた形状(分割片)とする。
【0074】
上記実施形態では、スタビライザ32は、左右方向に直交する断面形状が、湾曲面33の上側に、平坦状の端面35と、断面が略三角形状の凸部36とを有する形状であるが、スタビライザ32の断面形状はこれに限定されるものではない。例えば、端面35を設けずに、凸部36が湾曲面33の上端に連結された断面形状であってもよい。スタビライザ32の断面形状が上記実施形態の形状と異なる場合、スタビライザ32においてファン10に最も近接する最近接位置から先端までの部分を含む部分を、周方向にずれた形状(分割片)とする。
【0075】
上記実施形態では、室内機の上部から室内空気を吸い込んで室内機の下部から空気を吹き出す構成の壁掛け式の室内機に本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば、室内機の下部から室内空気を吸い込んで室内機の上部から空気を吹き出す構成の床置き式の室内機に本発明を適用することも可能である。