(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(4)として、ボレート化合物、チタネート化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物、およびメルカプト有機酸から選ばれる1種以上をさらに含有する請求項2または3に記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
成分(5)が、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸との完全エステルの1種以上である請求項6記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
成分(5)が、エチレングリコール ビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、エチレングリコール ビス(3−メルカプトブチラート)、エチレングリコール ビス(4−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトブチラート)、およびジペンタエリスリトール ヘキサキス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである請求項6記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
成分(5)が、トリメチロールプロパン トリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチラート)、およびトリメチロールプロパン トリス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである請求項6記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
成分(1)および成分(5)の合計重量に対する成分(1)の重量の比(成分(1)の重量/成分(1)および成分(5)の合計重量)が、0.001〜0.8である請求項6〜10のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
成分(2)に含有されるエポキシ基の当量に対する成分(1)に含有されるチオール基の当量の比(成分(1)に含有されるチオール基の当量/成分(2)に含有されるエポキシ基の当量)が、0.2〜2.0である請求項2〜5のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
成分(2)に含有されるエポキシ基の当量に対する成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の合計当量の比(成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の合計当量/成分(2)に含有されるエポキシ基の当量)が、0.2〜2.0である請求項6〜12のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた低温速硬化性を有する樹脂硬化剤を提供し、さらには該硬化剤を含有する優れた低温速硬化性および保存安定性を兼ね備えた一液性エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の化合物を樹脂硬化剤として使用することによって、上記目的を達成した。即ち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物からなる樹脂硬化剤。
[2] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物(但し、末端に−CH
2CH(OH)CH
2−SHで表される構造単位を有する化合物を除く。)からなる樹脂硬化剤。
[3] 一液性エポキシ樹脂組成物用の硬化剤である上記[1]または[2]に記載の樹脂硬化剤。
[4] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールに炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸が2以上結合した部分エステルの1種以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂硬化剤。
[5] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトブチラート)、およびジペンタエリスリトール ペンタキス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂硬化剤。
[6] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、およびトリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂硬化剤。
[7] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル ビス(3−メルカプトプロピオナート)である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂硬化剤。
【0008】
[8] 成分(1)として分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物、
成分(2)として平均して1分子あたり2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、および
成分(3)として潜在性硬化促進剤
を含有する一液性エポキシ樹脂組成物。
[9] 成分(3)の含有量が、成分(2)100重量部に対して0.1〜100重量部である上記[8]に記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[10] 成分(1)が、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールに炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸が2以上結合した部分エステルの1種以上である上記[8]または[9]に記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[11] 成分(1)が、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトブチラート)、およびジペンタエリスリトール ペンタキス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[8]または[9]に記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[12] 成分(1)が、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、およびトリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[8]または[9]に記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[13] 成分(1)が、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル ビス(3−メルカプトプロピオナート)である上記[8]または[9]に記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[14] 成分(4)として、ボレート化合物、チタネート化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物、およびメルカプト有機酸から選ばれる1種以上をさらに含有する上記[8]〜[13]のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[15] 成分(4)の含有量が、成分(2)100重量部に対して0.001〜50重量部である上記[14]に記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[16] 成分(5)として分子内にチオール基を2以上有し、ヒドロキシ基を有さない化合物をさらに含有する上記[8]〜[15]のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[17] 成分(5)が、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸との完全エステルの1種以上である上記[16]記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[18] 成分(5)が、エチレングリコール ビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、エチレングリコール ビス(3−メルカプトブチラート)、エチレングリコール ビス(4−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトブチラート)、およびジペンタエリスリトール ヘキサキス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[16]記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[19] 成分(5)が、トリメチロールプロパン トリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチラート)、およびトリメチロールプロパン トリス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[16]記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[20] 成分(5)が、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)である上記[16]記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[21] 成分(1)および成分(5)の合計重量に対する成分(1)の重量の比(成分(1)の重量/成分(1)および成分(5)の合計重量)が、0.001〜0.8である上記[16]〜[20]のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[22] 成分(1)および成分(5)の合計重量に対する成分(1)の重量の比(成分(1)の重量/成分(1)および成分(5)の合計重量)が、0.03〜0.2である上記[16]〜[20]のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[23] 成分(1)および成分(5)の合計重量に対する成分(1)の重量の比(成分(1)の重量/成分(1)および成分(5)の合計重量)が、0.1〜0.2である上記[16]〜[20]のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[24] 成分(2)に含有されるエポキシ基の当量に対する成分(1)に含有されるチオール基の当量の比(成分(1)に含有されるチオール基の当量/成分(2)に含有されるエポキシ基の当量)が、0.2〜2.0である上記[8]〜[15]のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[25] 成分(2)に含有されるエポキシ基の当量に対する成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の合計当量の比(成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の合計当量/成分(2)に含有されるエポキシ基の当量)が、0.2〜2.0である上記[16]〜[23]のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物。
[26] 上記[8]〜[25]のいずれかに記載の一液性エポキシ樹脂組成物を加熱することによって得られるエポキシ樹脂硬化物。
[27] 上記[26]記載のエポキシ樹脂硬化物を含有する機能性製品。
【0009】
[28] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物(但し、末端に−CH
2CH(OH)CH
2−SHで表される構造単位を有する化合物を除く。)の樹脂硬化剤としての使用。
[29] 樹脂硬化剤が、一液性エポキシ樹脂組成物用の硬化剤である上記[28]記載の使用。
[30] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールに炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸が2以上結合した部分エステルの1種以上である上記[28]または[29]記載の使用。
[31] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトブチラート)、およびジペンタエリスリトール ペンタキス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[28]または[29]記載の使用。
[32] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、およびトリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[28]または[29]記載の使用。
[33] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル ビス(3−メルカプトプロピオナート)である上記[28]または[29]記載の使用。
【0010】
[34] 樹脂組成物を硬化させるために、分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物(但し、末端に−CH
2CH(OH)CH
2−SHで表される構造単位を有する化合物を除く。)を使用する方法。
[35] 樹脂組成物が、一液性エポキシ樹脂組成物である上記[34]記載の方法。
[36] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールに炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸が2以上結合した部分エステルの1種以上である上記[34]または[35]記載の方法。
[37] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトブチラート)、およびジペンタエリスリトール ペンタキス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[34]または[35]記載の方法。
[38] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、およびトリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つである上記[34]または[35]記載の方法。
[39] 分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物が、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル ビス(3−メルカプトプロピオナート)である上記[34]または[35]記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂硬化剤は、低温でも樹脂組成物を十分に硬化させることが可能であり、また、速硬化性に優れる。さらに、本発明の樹脂硬化剤(成分(1))を、成分(2)および成分(3)、並びに任意に成分(4)、成分(5)およびその他の成分と組み合わせることにより、低温速硬化性を発揮し、保存安定性にも優れた一液性エポキシ樹脂組成物が得られる。
なお本発明において速硬化性とは、加熱し始めてから硬化する時間が短いことを意味し、より詳細には加熱し始めてから硬化し始めるまでの時間が短いことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、樹脂硬化剤として、分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物(以下「成分(1)」と略称することがある。)を使用する。
【0014】
[樹脂硬化剤(成分(1))]
本発明の樹脂硬化剤は、分子内に1以上のヒドロキシ基を有し、2以上のチオール基を有する化合物からなる。該化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。該化合物の1以上のヒドロキシ基が速硬化性に寄与し、2以上のチオール基が低温硬化性に寄与すると考えられる。該化合物の分子量は、硬化速度の観点から100〜2000であることが必要であり、150〜1000であることが好ましい。ここで該化合物の分子量が1000以上である場合、その分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。分子量が1000未満である場合、その分子量は、質量分析装置(例えばESI−MS)で測定することができる。
【0015】
成分(1)は、例えば、以下のようにして製造することができる。
(a)分子内の一部のヒドロキシ基にアセタール保護やシリル保護等がなされたポリオールとメルカプト有機酸とをエステル化反応させ、得られた保護エステルを脱保護することによって、成分(1)を得ることができる。ここで、メルカプト有機酸とは、チオール基とカルボキシ基とを有する有機化合物を意味する。
(b)ポリオールのヒドロキシ基よりもメルカプト有機酸のカルボキシ基が少なくなるような量でポリオールとメルカプト有機酸とをエステル化反応させ、得られた反応混合物を公知の手段(例えば、シリカゲルクロマトグラフィー)を用いる精製によって、成分(1)を得ることができる。
【0016】
前記ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0017】
前記メルカプト有機酸としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸(例:3−メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酪酸(例:3−メルカプト酪酸、4−メルカプト酪酸)等のメルカプト脂肪族モノカルボン酸;ヒドロキシ酸とメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られるチオール基およびカルボキシ基を含有するエステル;メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸(例:2,3−ジメルカプトコハク酸)等のメルカプト脂肪族ジカルボン酸;メルカプト安息香酸(例:4−メルカプト安息香酸)等のメルカプト芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。前記メルカプト脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは3である。前記メルカプト有機酸の中で、炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸が好ましく、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸および4−メルカプト酪酸がより好ましく、3−メルカプトプロピオン酸がさらに好ましい。
【0018】
成分(1)は、好ましくは、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールに炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸が2以上結合した部分エステルの1種以上である。ここで部分エステルとは、ポリオールとカルボン酸とのエステルであって、ポリオールのヒドロキシ基が残っているものを意味する。
【0019】
成分(1)は、
より好ましくは、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ビス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ビス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール トリス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール トリス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ペンタキス(3−メルカプトブチラート)、およびジペンタエリスリトール ペンタキス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つであり;
さらに好ましくはトリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトブチラート)、およびトリメチロールプロパン ビス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つであり;
特に好ましくは2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル ビス(3−メルカプトプロピオナート)(別名:トリメチロールプロパン ビス(3−メルカプトプロピオナート))である。
なお、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル ビス(3−メルカプトプロピオナート)は以下の構造の化合物である。
【0021】
成分(1)は、エポキシ樹脂を硬化させることができるため、樹脂硬化剤として使用することができる。ここで樹脂硬化剤とは、樹脂を硬化させるために用いられる薬剤を意味する。本発明の樹脂硬化剤は、好ましくはエポキシ樹脂用の硬化剤であり、より好ましくは一液性エポキシ樹脂組成物用の硬化剤である。本発明の樹脂硬化剤(成分(1))を一液性エポキシ樹脂組成物中で使用する場合、平均して1分子あたり2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(成分(2))に含有されるエポキシ基の当量に対する成分(1)のチオール基の当量の比(成分(1)に含有されるチオール基の当量/成分(2)に含有されるエポキシ基の当量、即ち、成分(1)に含有されるチオール基の数/成分(2)に含有されるエポキシ基の数)を、0.2〜2.0となるように調整することが好ましく、0.6〜1.2がより好ましい。
【0022】
[一液性エポキシ樹脂組成物]
本発明は、分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物(成分(1))、平均して1分子あたり2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(成分(2))、および潜在性硬化促進剤(成分(3))を含有する一液性エポキシ樹脂組成物を提供する。本発明の一液性エポキシ樹脂組成物は、低温速硬化性および保存安定性を兼ね備える。本発明の一液性エポキシ樹脂組成物は、任意にボレート化合物、チタネート化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物、およびメルカプト有機酸から選ばれる1種以上(成分(4))および/または分子内にチオール基を2以上有し、分子内にヒドロキシ基を有さない化合物(成分(5))をさらに含有してもよい。本発明の一液性エポキシ樹脂組成物中において、成分(1)〜(5)および後述するその他の成分はいずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。一液性エポキシ樹脂組成物における成分(1)の説明は上述したものと同じである。以下、成分(2)から順に説明する。
【0023】
[成分(2)]
本発明に用いる成分(2)のエポキシ樹脂は、平均して1分子あたり2以上のエポキシ基を有するものであればよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノールやグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシ酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;さらにはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、環式脂肪族エポキシ樹脂、その他ウレタン変性エポキシ樹脂;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
成分(2)としては、高耐熱性および低透湿性を保つ等の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0025】
成分(2)のエポキシ樹脂は、液状であっても、固形状であってもよい。また成分(2)として、液状エポキシ樹脂と固形状エポキシ樹脂の混合物を用いてもよい。ここで、「液状」および「固形状」とは、常温(25℃)でのエポキシ樹脂の状態を指す。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の少なくとも10重量%以上が液状エポキシ樹脂であることが好ましい。かかる液状エポキシ樹脂の具体例として、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jERエポキシ樹脂828EL」、「jERエポキシ樹脂827」)、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jERエポキシ樹脂807」)、ナフタレン型2官能性エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032」、「HP4032D])、液状ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(東都化成社製「ZXl O59」)、水素添加された構造のエポキシ樹脂(三菱化学社製「jERエポキシ樹脂YX8000」)がある。中でも高耐熱であり低粘度である三菱化学社製の「jERエポキシ樹脂828EL」、「jERエポキシ樹脂827」、および「jERエポキシ樹脂807」が好ましく、「jERエポキシ樹脂828EL」がより好ましい。また、固形状エポキシ樹脂の具体例として、ナフタレン型4官能性エポキシ樹脂(DIC社製「HP4700」)、ジシクロペンタジエン型多官能性エポキシ樹脂(DIC社製「HP7200」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成社製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000H」、「NC3000L」、三菱化学社製「YX4000」)等が挙げられる。
【0026】
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物中の成分(2)の含有量は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、30重量%以上がさらにより好ましく、40重量%以上が殊更好ましく、50重量%以上が特に好ましい。また該含有量は、95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましく、85重量%以下がさらに好ましく、80重量%以下がさらにより好ましく、75重量%以下が殊更好ましく、70重量%以下が特に好ましい。
【0027】
[成分(3)]
本発明に用いる成分(3)の潜在性硬化促進剤とは、室温では成分(2)のエポキシ樹脂に不溶の固体化合物であるが、加熱することにより可溶化してエポキシ樹脂の硬化促進剤として機能する化合物を意味する。常温で固体のイミダゾール化合物、およびアミンアダクト系潜在性硬化促進剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、アミンアダクト系潜在性硬化促進剤が好ましい。アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の例としては、アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物(アミン−エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤)、アミン化合物とイソシアネート化合物との反応生成物(アミン−イソシアネート系潜在性硬化促進剤)等が挙げられる。
【0028】
前記常温で固体のイミダゾール化合物としては、例えば、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1)’)−エチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール−トリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール−トリメリテート、N−(2−メチルイミダゾリル−1−エチル)−尿素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
前記アミン−エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料の一つとして用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシ酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;4,4’−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;さらにはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン等の多官能性エポキシ化合物やブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等の単官能性エポキシ合物;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
前記アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるアミン化合物は、エポキシ基またはイソシアネート基(別名:イソシアナト基)と付加反応しうる活性水素を分子内に1以上有し、且つアミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基の少なくとも一つ)を分子内に1以上有するものであればよい。このようなアミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミン化合物;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−メチルアニリン等の芳香族アミン化合物;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン等の窒素原子が含有された複素環化合物;等が挙げられる。但し本発明はこれらに限定されない。
【0031】
また、上述の原料の中で特に分子内に3級アミノ基を有する化合物を用いれば、優れた硬化促進能を有する潜在性硬化促進剤を製造することができる。分子内に3級アミノ基を有する化合物としては、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等の分子内に3級アミノ基を有するアミン類;2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン、2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトピリジン、2−ベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メルカプトピリジン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、N,N−ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等の分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類およびヒドラジド類;等が挙げられる。
【0032】
前記のエポキシ化合物とアミン化合物を付加反応させて、アミンアダクト系潜在性硬化促進剤を製造する際に、さらに分子内に活性水素を2以上有する活性水素化合物を添加することもできる。このような活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フェノールノボラック樹脂等の多価フェノール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、アジピン酸、フタル酸等の多価カルボン酸類、1,2−ジメルカプトエタン、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−3−フェノキシ−2−プロパノール、メルカプト酢酸、アントラニル酸、乳酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート等の単官能性イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(例:2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の多官能性イソシアネート化合物;さらには、これら多官能性イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によって得られる、末端イソシアネート基含有化合物;等が挙げられる。このような末端イソシアネート基含有化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物、トリレンジイソシアネートとペンタエリスリトールとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
成分(3)の潜在性硬化促進剤は、例えば、上記の製造原料を適宜混合し、室温から200℃の温度において反応させた後、冷却固化してから粉砕するか、あるいはメチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で上記の製造原料を反応させ、脱溶媒後、固形分を粉砕することにより容易に得ることができる。
【0035】
成分(3)の潜在性硬化促進剤は、市販品を使用してもよい。アミン−エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤としては、例えば、「アミキュアPN−23」(味の素ファインテクノ社の商品名)、「アミキュアPN−H」(味の素ファインテクノ社の商品名)、「ハードナーX−3661S」(エー・シー・アール社の商品名)、「ハードナーX−3670S」(エー・シー・アール社の商品名)、「ノバキュアHX−3742」(旭化成社の商品名)、「ノバキュアHX−3721」(旭化成社の商品名)などが挙げられ、また、アミン−イソシアネート系潜在性硬化促進剤としては、例えば、「フジキュアFXE−1000」(富士化成社の商品名)、「フジキュアFXR−1030」(富士化成社の商品名)等が挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
一液性エポキシ樹脂組成物中の成分(3)の含有量は、成分(2)100重量部に対して、0.1〜100重量部であることが好ましく、1〜60重量部であることがより好ましく、5〜30重量部であることがさらに好ましい。
【0037】
[成分(4)]
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物は、優れた保存安定性を実現させるために、成分(4)として、ボレート化合物、チタネート化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物、およびメルカプト有機酸から選ばれる1種以上をさらに含有することが好ましい。
【0038】
前記ボレート化合物としては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリス(2−エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7−トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ−o−トリルボレート、トリ−m−トリルボレート、トリエタノールアミンボレート等が挙げられる。
【0039】
前記チタネート化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロプルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート等が挙げられる。
【0040】
前記アルミネート化合物としては、例えば、トリエチルアルミネート、トリプロピルアルミネート、トリイソプロピルアルミネート、トリブチルアルミネート、トリオクチルアルミネート等が挙げられる。
【0041】
前記ジルコネート化合物としては、例えば、テトラエチルジルコネート、テトラプロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート等が挙げられる。
【0042】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、2−クロロエチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−エチルフェニルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、トリレンジイソシアネート(例:2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
前記カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸等の飽和脂肪族一塩基酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和脂肪族一塩基酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸等のハロゲン化脂肪酸、グリコール酸、乳酸、ブドウ酸等の一塩基性ヒドロキシ酸、グリオキシル酸等の脂肪族アルデヒド酸およびケトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸等の脂肪族多塩基酸、安息香酸、ハロゲン化安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、けい皮酸、マンデル酸等の芳香族一塩基酸、フタル酸、トリメシン酸等の芳香族多塩基酸等が挙げられる。
【0044】
前記酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水ドデシニルコハク酸、無水マレイン酸、メチルシクロペンタジエンと無水マレイン酸の付加物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂肪族多塩基酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロリメリット酸等の芳香族多塩基酸無水物;が挙げられる。
【0045】
前記メルカプト有機酸としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸(例:3−メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酪酸(例:3−メルカプト酪酸、4−メルカプト酪酸)等のメルカプト脂肪族モノカルボン酸;ヒドロキシ酸とメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られるチオール基およびカルボキシ基を含有するエステル;メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸(例:2,3−ジメルカプトコハク酸)等のメルカプト脂肪族ジカルボン酸;メルカプト安息香酸(例:4−メルカプト安息香酸)等のメルカプト芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。
【0046】
成分(4)としては、汎用性・安全性が高く、保存安定性を向上させる観点より、ボレート化合物が好ましく、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリブチルボレートがより好ましく、トリエチルボレートがさらに好ましい。
【0047】
一液性エポキシ樹脂組成物中の成分(4)の含有量は、該組成物の保存安定性が高まりさえすれば特に制限は無いが、成分(2)100重量部に対して0.001〜50重量部が好ましく、0.05〜30重量部がより好ましく、0.1〜10重量部がさらに好ましい。
【0048】
成分(4)を、成分(1)〜(3)並びに必要に応じて成分(5)およびその他の成分と同時に混合して、本発明の一液性エポキシ樹脂組成物を製造してもよく、または予め成分(3)および(4)を混合して、これらの混合物を調製し、該混合物とこれら以外の成分を混合して、本発明の一液性エポキシ樹脂組成物を製造してもよい。成分(3)および(4)の混合は、メチルエチルケトン、トルエン等の溶媒中で行ってもよく、あるいは無溶媒の状態で行ってもよい。また、成分(2)として液状エポキシ樹脂を用いる場合には、液状エポキシ樹脂中で成分(3)および(4)を混合して、これらの混合物を調製し、該混合物とこれら以外の成分を混合して、本発明の一液性エポキシ樹脂組成物を製造してもよい。
【0049】
[成分(5)]
上記成分(1)〜(3)を含む一液性エポキシ樹脂組成物または上記成分(1)〜(4)を含む一液性エポキシ樹脂組成物に、低温硬化性の観点から、成分(5)として分子内にチオール基を2以上有し、ヒドロキシ基を有さない化合物を配合することが好ましい。
【0050】
成分(5)としては、例えば、ポリオールとメルカプト有機酸との完全エステルが挙げられる。ここで、完全エステルとは、ポリオールとカルボン酸とのエステルであって、ポリオールのヒドロキシ基が全てエステル結合を形成しているものを意味する。前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール等が挙げられる。前記メルカプト有機酸としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸(例:3−メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酪酸(例:3−メルカプト酪酸、4−メルカプト酪酸)等のメルカプト脂肪族モノカルボン酸;ヒドロキシ酸とメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られるチオール基およびカルボキシ基を含有するエステル;メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸(例:2,3−ジメルカプトコハク酸)等のメルカプト脂肪族ジカルボン酸;メルカプト安息香酸(例:4−メルカプト安息香酸)等のメルカプト芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。前記メルカプト脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは3である。前記メルカプト有機酸の中で、炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸が好ましく、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸および4−メルカプト酪酸がより好ましく、3−メルカプトプロピオン酸がさらに好ましい。
【0051】
ポリオールとメルカプト有機酸との完全エステルの具体例として、エチレングリコール ビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、エチレングリコール ビス(3−メルカプトブチラート)、エチレングリコール ビス(4−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(4−メルカプトブチラート)等が挙げられる。また、保存安定性の観点から、前記完全エステルは、塩基性不純物含量が極力少ないものが好ましく、製造上塩基性物質の使用を必要としないものがより好ましい。
【0052】
また、成分(5)としては、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール等のアルキルポリチオール化合物;末端チオール基含有ポリエーテル;末端チオール基含有ポリチオエーテル;エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるポリチオール化合物;ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するポリチオール化合物;等のように、その製造工程上の反応触媒として塩基性物質を使用して製造されたポリチオール化合物も使用することができる。塩基性物質を使用して製造されたポリチオール化合物は、脱アルカリ処理を行い、アルカリ金属イオン濃度を50重量ppm以下としてから用いることが好ましい。
【0053】
塩基性物質を使用して製造されたポリチオール化合物の脱アルカリ処理としては、例えばポリチオール化合物をアセトン、メタノール等の有機溶媒に溶解し、希塩酸、希硫酸等の酸を加えることにより中和した後、抽出・洗浄などにより脱塩する方法;イオン交換樹脂を用いて吸着する方法;蒸留により精製する方法;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
また、成分(5)としては、例えば、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等を使用することができる。
【0055】
成分(5)は、
好ましくは、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと炭素数が2〜8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸との完全エステルの1種以上であり;
より好ましくは、エチレングリコール ビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコール ビス(3−メルカプトプロピオナート)、エチレングリコール ビス(3−メルカプトブチラート)、エチレングリコール ビス(4−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(4−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(4−メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトブチラート)、およびジペンタエリスリトール ヘキサキス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つであり;
さらに好ましくは、トリメチロールプロパン トリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチラート)、およびトリメチロールプロパン トリス(4−メルカプトブチラート)から選ばれる少なくとも一つであり;
特に好ましくはトリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)である。
【0056】
一液性エポキシ樹脂組成物中で成分(5)を使用する場合、成分(1)と成分(5)の合計重量に対する成分(1)の重量の比(成分(1)の重量/成分(1)および成分(5)の合計重量)は、0.001〜0.8であることが好ましい。この比の下限は、0.01がより好ましく、0.03がさらに好ましく、0.1が特に好ましい。この比の上限は、特に制限はないが、0.6がより好ましく、0.4がさらに好ましく、0.2が特に好ましい。
【0057】
成分(2)に含有されるエポキシ基の当量に対する成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の合計当量の比(成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の合計当量/成分(2)に含有されるエポキシ基の当量、即ち、成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の総数/成分(2)に含有されるエポキシ基の数)は、0.2〜2.0が好ましく、0.6〜1.2がより好ましい。
【0058】
[その他の成分]
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物には、必要に応じてこの分野で常用されている充填剤、希釈剤、溶剤、顔料、可撓性付与剤、カップリング剤、酸化防止剤、チクソトロピー性付与剤、分散剤等の各種添加剤を加えることができる。これらの中で、チクソトロピー性付与剤が好ましい。
【0059】
チクソトロピー性付与剤としては、例えば、沈殿シリカ、焼成シリカ、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)等を挙げることができ、これらの中で煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)が好ましい。チクソトロピー性付与剤のBET法による比表面積(以下、BET比表面積という。)は、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは50〜600m
2/g、さらに好ましくは100〜400m
2/gである。チクソトロピー性付与剤を使用する場合、一液性エポキシ樹脂組成物中のその含有量は、100重量部に対して、好ましくは5〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部である。
【0060】
[一液性エポキシ樹脂組成物の製造]
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物を製造することには特別の困難はない。該組成物は、成分(1)、成分(2)および成分(3)、任意に成分(4)、成分(5)およびその他の成分を従来公知の方法で混合することによって、例えばヘンシェルミキサー等の混合機で混合することによって製造することができる。混合の際の一液性エポキシ樹脂組成物の温度は、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃であり、混合時間は、通常1秒〜5分、好ましくは5秒〜3分である。
【0061】
[エポキシ樹脂硬化物]
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物を硬化することにも特別の困難はない。硬化は従来公知の方法に準じて行うことができ、例えば加熱することで本発明の一液性エポキシ樹脂組成物を硬化することができる。本発明の一液性エポキシ樹脂組成物は、低温速硬化性を有するので、その硬化のための加熱温度は、通常50〜130℃、好ましくは60〜100℃であり、加熱時間は、1秒〜90分、好ましくは1分〜60分である。
【0062】
本発明には、上記の一液性エポキシ樹脂組成物を加熱することによって得られるエポキシ樹脂硬化物も包含され、該エポキシ樹脂硬化物を含有する機能性製品も包含される。機能性製品としては、例えば、接着剤、注型剤、シーリング剤、封止剤、繊維強化用樹脂、コーティング剤、塗料等が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「重量部」を意味する。
【0064】
<合成例1(成分(1)の合成)>
反応容器に、トルエン4L、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン 280g(2.08mol)、3−メルカプトプロピオン酸 443g(4.17mol)を仕込み、トルエンに反応物(1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンおよび3−メルカプトプロピオン酸)が溶解するまで50℃にて加熱攪拌した。加熱攪拌後、30分にて反応物が溶解したので、反応溶液にパラトルエンスルホン酸一水和物 2.8g(14.7mmol)を添加し、反応容器にディーンスターク分水器を取り付けて、反応溶液を昇温させた。反応温度110℃で還流が始まり、水が流出し始めた。12時間加熱攪拌後、水の流出が止まっていたので、薄層クロマトグラフィー(TLC)にて反応チェックを行った。3−メルカプトプロピオン酸が消失していたので、後処理を行った。反応溶液を放冷して、水を加えて分液し、5.0重量%重曹水およびブラインをこの順で使用して、有機層を洗浄した。有機層を分液して、硫酸ナトリウムを加えて脱水後、トルエンを減圧留去し、粗生成物620gを得た。続いて、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製して、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル ビス(3−メルカプトプロピオナート)230gを得た。
【0065】
実施例および比較例に用いた成分(1)以外の原料は以下の通りである。
<成分(2)>
「jERエポキシ樹脂828EL」(三菱化学社の商品名、なお以下では「jER−828」と記載する):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:184〜194(平均189)、1分子あたりのエポキシ基:2.0個(平均値))
【0066】
<成分(3)>
「アミキュアPN−23」(味の素ファインテクノ社の商品名、なお以下では「PN−23」と記載する):アミン−エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤
【0067】
<成分(4)>
トリエチルボレート(東京化成工業社製)
【0068】
<成分(5)>
「DPMP」(SC有機化学社の商品名):ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)(分子内のヒドロキシ基:0個、分子内のチオール基:6個)
「TEMPIC」(SC有機化学社の商品名):トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(分子内のヒドロキシ基:0個、分子内のチオール基:3個)
「PE−1」(昭和電工社の商品名):ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチラート)(分子内のヒドロキシ基:0個、分子内のチオール基:4個)
「NR1」(昭和電工社の商品名):1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(分子内のヒドロキシ基:0個、分子内のチオール基:3個)
「TMTP」(シグマアルドリッチ社の商品名):トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオナート)(分子内のヒドロキシ基:0個、分子内のチオール基:3個)
【0069】
<その他の成分(チクソトロピー性付与剤)>
「AEROSIL 200」(日本アエロジル社の商品名):表面未処理の煙霧質シリカ(BET比表面積:200m
2/g)
【0070】
(評価方法)
[ゲル化時間の測定]
エポキシ樹脂組成物をJIS C 6521に準じてホットプレート式ゲル化試験機(GT−D:日新科学社製)により80℃に加熱して、エポキシ樹脂組成物のゲル化時間を測定した。具体的には、約0.5gのエポキシ樹脂組成物をホットプレート式ゲル化試験機上に塗布した後、80℃となった時点でストップウォッチを始動し、ホットプレート式ゲル化試験機上に塗布したエポキシ樹脂組成物を、直径25mmの範囲内におさまるようにしながら、円を描くように先端幅5mmのへらでエポキシ樹脂組成物をなぞる回転操作を繰り返した。エポキシ樹脂組成物の粘度が低い間はへらを持ち上げないようにし、一秒間に一回転の速さで前記回転操作を繰り返した。エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇してきたら、時々へらをホットプレートゲル化試験機から約30mm垂直に持ち上げる上下操作を繰り返した。この上下操作の初期では、へらに糸状のエポキシ樹脂組成物がついてくる。へらをホットプレートから約30mm垂直に持ち上げた時に糸状のエポキシ樹脂組成物が切れて、該組成物がへらについてこなくなる状態をゲル化とみなして、80℃となった時点からゲル化までの時間をゲル化時間として測定した。
【0071】
[保存安定性の評価]
25℃および20rpmでE型粘度計を用いてエポキシ樹脂組成物の初期粘度(即ち、調製直後の保存前の粘度)を測定した。次いで、エポキシ樹脂組成物を25℃の恒温室に3日および1週間保存し、25℃および20rpmでE型粘度計を用いてエポキシ樹脂組成物の3日保存後の粘度および1週間保存後の粘度を測定した。初期粘度に対する3日保存後の粘度の比(3日保存後の粘度/初期粘度)および初期粘度に対する1週間保存後の粘度の比(1週間保存後の粘度/初期粘度)を算出し、これらの比でエポキシ樹脂組成物の保存安定性を評価した。
【0072】
[硬化性の測定]
示差走査熱量測定(DSC)にて、エポキシ樹脂組成物の発熱カーブを測定した。具体的には、メトラートレド社製の示差走査熱量測定機により、約5mgのサンプル(エポキシ樹脂組成物)を用いて25℃から250℃まで昇温速度5℃/分で昇温させて、示差走査熱量測定を行った。
【0073】
実施例1および比較例1〜4
ビスフェノールA型エポキシ樹脂jER−828に、トリエチルボレートを混合し、硬化剤として合成例1の化合物、DPMP、TEMPIC、PE−1、NR1を表1に示す量で添加し、25℃で均一混合した。最後にPN−23とチクソトロピー性付与剤の微粉末シリカAEROSIL 200を表1に示す量で添加し、25℃で良く撹拌して、均一なエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物の硬化性を上述のようにして測定した。結果を
図1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
図1に示されるように、実施例1のDSCの発熱カーブは比較例1〜4のものと比べて立ち上がりが早く、実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は速硬化性であることが分かった。これより、分子内に1以上のヒドロキシ基と2以上のチオール基を有し、分子量が100〜2000の化合物を樹脂硬化剤として用いると、十分な速硬化性を備えた一液性エポキシ樹脂組成物が得られることが分かった。
【0076】
実施例2〜18
ビスフェノールA型エポキシ樹脂jER−828に、トリエチルボレートを混合し、これに合成例1の化合物およびTMTPを表2〜4に示す量で添加し、25℃で均一混合した。最後にPN−23とチクソトロピー性付与剤の微粉末シリカAEROSIL 200を表2〜4に示す量で添加し、25℃で良く撹拌して、均一なエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物のゲル化時間および保存安定性を上述のようにして測定した。結果を表2〜4に示す。なお、表2〜4に記載のゲル化時間において「’」は「分」を、「”」は「秒」を示す。
【0077】
表2に示す実施例2〜7のエポキシ樹脂組成物では、成分(2)に含有されるエポキシ基の当量に対する成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の合計当量の比(成分(1)および成分(5)に含有されるチオール基の合計当量/成分(2)に含有されるエポキシ基の当量)が1.0であり、表3に示す実施例8〜12のエポキシ樹脂組成物では前記比は0.8であり、表4に示す実施例13〜18のエポキシ樹脂組成物では前記比は0.6であった。また、表2〜4には、成分(1)および成分(5)の合計重量に対する成分(1)の重量の比(成分(1)の重量/成分(1)および成分(5)の合計重量)を示す(なお、表2〜4では「成分(1)/(成分(1)+成分(5)」と記載する)。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
表2〜4に示されるように、成分(1)の重量/成分(1)および成分(5)の合計重量が0.03〜0.2である一液性エポキシ樹脂組成物は、1週間保存後の粘度/初期粘度が1.1以下であり、且つ80℃でのゲル化時間が12分以下であり、良好な保存安定性と速硬化性を兼ね備えていることが分かった。さらに、この重量比が0.1〜0.2である一液性エポキシ樹脂組成物は、初期粘度が低く、扱いやすいことが分かった。
【0082】
本発明の樹脂硬化剤を含有する一液性エポキシ樹脂組成物は、25℃で1週間保存しても粘度の上昇が少なく、保存安定性に優れている。また該一液性エポキシ樹脂組成物は、従来の一液性エポキシ樹脂組成物では成し得なかった低温速硬化性(80℃での速硬化性)を示す。