(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5716940
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】グリップ取替ステッキ
(51)【国際特許分類】
A45B 9/02 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
A45B9/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-89425(P2014-89425)
(22)【出願日】2014年4月23日
【審査請求日】2014年7月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514103394
【氏名又は名称】有限会社ブレスレン・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】山根 祐二
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0041432(US,A1)
【文献】
特開平8−84613(JP,A)
【文献】
特開2001−275727(JP,A)
【文献】
特開2004−57392(JP,A)
【文献】
特開2009−136428(JP,A)
【文献】
特開2010−284186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップがシャフトの上部に対し着脱自在に取り付けられるグリップ取替ステッキであって、
前記グリップは、
前記シャフト側に向けて該シャフトの一端を挿入可能な内径を有し、外周に鍔部、下端に切欠部をそれぞれ有するパイプ部と、
前記パイプ部の外周に遊嵌されていて、上端に前記鍔部と係止可能な係止部と、内周に雌ネジ部を有するリングを備え、
前記シャフトは、
前記パイプ部に挿入可能な外径を有し、外周に前記切欠部と係合可能な凸部を有する挿入部と、
前記挿入部より下方の外周に前記雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部を有し、
前記パイプ部の前記切欠部を、該パイプ部に挿入された前記挿入部の前記凸部と係合させることで、前記シャフトに対する前記グリップの回転方向の動きが規制され、
前記リングの前記雌ネジ部を、前記パイプ部に挿入された前記シャフトの前記雄ネジ部と螺合させることで、前記シャフトに対する前記グリップの上下方向の動きが規制され、
前記挿入部は、一部が外周面から突出するように内側から外側へ付勢されたクリックボールを備え、
前記パイプ部は、前記クリックボールと係合可能な凹部を有し、
前記パイプ部の前記切欠部を、前記パイプ部に挿入された前記挿入部の前記凸部と係合させたときに、前記クリックボールが前記凹部と係合するようにしたことを特徴とするグリップ取替ステッキ。
【請求項2】
前記凸部が、棒状部材を前記挿入部に対し径方向に挿通させて、該棒状部材の両側を前記挿入部の外周面から突出させてなることを特徴とする請求項1に記載のグリップ取替ステッキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体的な障害を持つ者が歩行の補助として用いるステッキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者や身体的な障害を持つ者は歩行の補助としてステッキを使用している。通常、ステッキのシャフトとグリップは一体で形成されているか、あるいはシャフトとグリップを別素材としている場合であってもシャフトとグリップは固着されていて分離できない構造となっている。
【0003】
しかし、ステッキのグリップを握った感触がフィットしなかったり、あるいは長年使用している場合にはグリップが劣化してきたりして、シャフトはそのままでグリップのみを交換したい場合がある。あるいは、逆に使い慣れたグリップはそのまま残し、シャフトのみを新替したいという場合もある。そこで、このような要望に応えステッキのグリップを交換可能としたものとして、例えば特許文献1として示す実開平1−152517号公報や特許文献2として示す特開2008−48947号公報に記載されたステッキが提案されている。
【0004】
これら特許文献1と特許文献2に記載されたステッキはいずれも、グリップの下端面に雄ネジ部を突設し、シャフトの上端面に雌ネジ部を設け、グリップの雄ネジ部をシャフトの雌ネジ部にねじ込むことによりシャフトとグリップを一体化するようにしている。しかし、このように単にねじ込んだだけでは使用過程においてシャフトとグリップの螺合が緩んでしまったり、あるいはねじ込み時の力加減によりグリップのシャフトに対する向きが一定せず、路面に対する石突の向きが変わってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題点を解決しグリップが緩むことがないようにすることを目的として、特許文献3として示す特許第5261162号公報には、シャフトの上端部に雌ネジ部を、グリップの下端部に雄ネジ部をそれぞれ有しこれらを螺合させることによりシャフトとグリップを着脱自在とすることに加えてグリップ下端部の雄ネジ部の下端に周方向に係合溝を設け、シャフトの前面部に雌ネジ部を有する取付孔を径方向に形成し、該雌ネジ部に螺合される止ネジの先端部がグリップ下端の係合溝に係合するように構成された杖が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−152517号公報
【特許文献2】特開2008−48947号公報
【特許文献3】特許第5261162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に記載の杖は、グリップ下端部の雄ネジ部の下端に周方向に設けられた係合溝に、シャフト前面部の雌ネジ部から止ネジをねじ込んで止ネジの先端部を係合させるようにしたことにより、グリップが回転して抜けてしまうことを防止することに関しての効果はある。
【0008】
しかし、特許文献3に示されるような方式の場合次のような問題点があった。まず、止ネジを係合溝に丁度良い位置で係合させるためには、グリップのシャフトに対する締め込み量を調節する必要があり、常時完全に締め込めるとは限らない。すなわち、グリップをシャフトに対して完全に締め込んだ位置で止ネジが係合溝に最適位置となって係合できるとは限らないため、グリップがシャフトから抜けてしまうようなことはないが、グリップのシャフトに対する締め込み状態が緩くてシャフトがぐらついてしまうおそれがある。さらに、係合溝は周方向に設けられているため、係合溝に対し止ネジが係合している状態であってもグリップはシャフトに対して若干は回動可能であり、グリップがシャフトに対して回動することを完全に防止することはできていない。
【0009】
また、シャフトやグリップを交換してシャフトに対してグリップを締め込んだ場合に、係合溝を止ネジの位置と合わせるために締め込み量を調節する必要があり、シャフトに対するグリップの向きが一定とはならない。シャフト先端(石突)に取り付けられている脚ゴムは使用により一般的には斜めに摩耗するため、グリップのシャフトに対する向きが一定にならないと、グリップを交換した際にシャフト先端の脚ゴムの接地面の向きがそれまでと異なるため、使用者が違和感を覚えることとなる。
【0010】
さらに、近年例えば
図7に示すように、ステッキ不使用時の転倒を防止するためにステッキを机Dの縁などに掛止することを目的として、ステッキのシャフトAに回動可能なスタンドBを取り付け、スタンドBの使用時にはこれをシャフトAから開いて使用するようにしたスタンド付きステッキがある。この場合、ステッキを机の縁などに掛止した際のシャフトとグリップのバランスをとる必要性から、スタンドに対するグリップの向きが重要であり、グリップを交換したときにシャフトに対するグリップの向きが変わってしまうと不都合が生じる場合がある。
【0011】
また、
図8に示すように、シャフトが外パイプGとその外パイプG内を摺動する内パイプFとにより構成されていて長さ調整が可能なステッキの場合、外パイプGに所望間隔で形成され内パイプFに設けられた係合用のボタンHと係合する穴Eは、操作性とデザイン上の要請から杖使用時の背面側、すなわちグリップの柄が長い側と一致していることが好ましい。したがって、グリップを交換したときにシャフトに対するグリップの向きが変わってしまう事態は、グリップに対する穴Eの位置が一致しなくなってしまうため望ましくない。
【0012】
また、ねじ回しを用いて小さな止ネジを係合溝の位置に合わせて係合させる作業が必要となるが、このような道具を必要とする細かな作業は特に高齢者などにとっては手先の鈍さや視力の衰えから困難を伴う作業である。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、グリップをシャフトに対して常に一定の向きで取り付けることができ、また使用時にグリップやシャフトが勝手に回転してグリップとシャフトの螺合が緩んでしまうようなことがなく、さらにグリップとシャフトの着脱を簡単に行うことができるようにしたステッキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明のグリップ取替ステッキは、グリップがシャフトの上部に対し着脱自在に取り付けられるグリップ取替ステッキであって、前記グリップは、前記シャフト側に向けて該シャフトの一端を挿入可能な内径を有し、外周に鍔部、下端に切欠部をそれぞれ有するパイプ部と、前記パイプ部の外周に遊嵌されていて、上端に前記鍔部と係止可能な係止部と、内周に雌ネジ部を有するリングを備え、前記シャフトは、前記パイプ部に挿入可能な外径を有し、外周に前記切欠部と係合可能な凸部を有する挿入部と、前記挿入部より下方の外周に前記雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部を有し、前記パイプ部の前記切欠部を、該パイプ部に挿入された前記挿入部の前記凸部と係合させることで、前記シャフトに対する前記グリップの回転方向の動きが規制され、前記リングの前記雌ネジ部を、前記パイプ部に挿入された前記シャフトの前記雄ネジ部と螺合させることで、前記シャフトに対する前記グリップの上下方向の動きが規制され
、前記挿入部は、一部が外周面から突出するように内側から外側へ付勢されたクリックボールを備え、前記パイプ部は、前記クリックボールと係合可能な凹部を有し、前記パイプ部の前記切欠部を、前記パイプ部に挿入された前記挿入部の前記凸部と係合させたときに、前記クリックボールが前記凹部と係合するようにしたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明においては、前記凸部が、棒状部材を前記挿入部に対し径方向に挿通させて、該棒状部材の両側を前記挿入部の外周面から突出させてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、グリップをシャフトに対して常に一定の向きで取り付けることができ、また使用時にグリップやシャフトが勝手に回転してグリップとシャフトの螺合が緩んでしまうようなことがなく、さらにグリップとシャフトの着脱を簡単に行うことができるステッキを得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るグリップ取替ステッキのグリップとシャフトを分離した状態の一例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図2】
図1のグリップ取替ステッキのグリップとシャフトをリングにより締め付けて一体化した状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図3】
図1のグリップ取替ステッキの要部断面を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図4】
図1のグリップ取替ステッキの斜視図を示したものであり、(a)はグリップとリングとシャフトを分離した状態を示し、(b)はグリップとシャフトをリングにより締め付けて一体化した状態を示したものである。
【
図5】
図1のグリップ取替ステッキのグリップとシャフトを分離した状態の一部切断斜視図である。
【
図6】
図1のグリップ取替ステッキのグリップとシャフトをリングにより締め付けて一体化した状態の一部切断斜視図である。
【
図7】従来のスタンド付きステッキの一例を示す説明図である。
【
図8】従来の伸縮可能なステッキの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態を、
図1〜
図6を用いて詳細に説明する。
本発明のグリップ取替ステッキは
図1及び
図2に示すようにグリップ2がシャフ1の上部に対し着脱自在に取り付けられている。なお、シャフト1は必ずしも1本ものでなくてもよく、例えばシャフトは折り畳み式や伸縮式のものであってもよい。また、グリップ2は図示した形状に限定されるものではなく、従来ステッキのグリップとして使用されているものであればどのような形状であってもよい。
【0020】
そして、グリップ2は
図3に示すように、シャフト1側に向けてシャフト1の一端を挿入可能な内径を有し、外周に鍔部22、下端に切欠部23をそれぞれ有するパイプ部21と、パイプ部21の外周に遊嵌されていて、上端に鍔部22と係止可能な係止部31と、内周に雌ネジ部32を有するリング3を備えている。また、シャフト1は
図3に示すように、パイプ部21に挿入可能な外径を有し、外周にパイプ部21の切欠部23と係合可能な凸部12を有する挿入部11と、挿入部11より下方の外周にリング3の雌ネジ部32と螺合可能な雄ネジ部13を有している。
【0021】
そして、パイプ部21の切欠部23を、パイプ部21に挿入された挿入部11の凸部12と係合させることで、シャフト1に対するグリップ2の回転方向の動きが規制されるようになっている。また、リング3の雌ネジ部32を、パイプ部21に挿入されたシャフト1の雄ネジ部13と螺合させることで、シャフト1に対するグリップ2の上下方向の動きが規制されるようになっている。なお、グリップ2の下部に設けられるパイプ部21の長さは任意に選択可能であり、例えばパイプ部21の長さは
図1に示すものよりも短くてもあるいは長くてもよく、またパイプ部21はグリップ2と一体に形成されていてもあるいは別部材により構成されていてもどちらでもよい。また、シャフト1の上部の挿入部11はシャフト1と一体に形成されていてもあるいは別部材により構成されていてもどちらでもよい。
【0022】
次に、シャフト1とグリップ2とリング3のそれぞれについて、以下に詳述する。
まず、シャフト1は
図1と
図3に示すように挿入部11と凸部12と雄ネジ部13とを有している。挿入部11は図示するようにシャフト1の上端部にシャフト1より小径に形成され、グリップ2のパイプ部21に丁度挿入できるようになっている。凸部12はシャフト1の挿入部11の外周に突出するように設けられている。図示した例では、凸部12は一本の棒状部材121をシャフト1の挿入部11の直径部分を挿通させ棒状部材121の両側を挿入部11の外周から突出させて凸部12となるようにしてある。なお、棒状部材121は円柱であっても角柱であってもどちらでもよい。また、凸部12の挿入部11の外周に対する突出長さは、後述するグリップ2のパイプ部21下端に形成される切欠部23と係合できる長さがあればよく、不必要に長くする必要はない。
【0023】
なお、凸部12は図示した配置に限定されるものではなく、挿入部11の外周に対して一箇所以上設けられていればよく、複数箇所設ける場合はシャフト1の径方向に対し対称に設けてもあるいは非対称に設けてもどちらでもよい。対称にした場合は、シャフト1に前後方向を示すマークを付しておくとシャフト交換時に便利である。一方、非対称にすると、グリップ2とは一定の向きでしか結合できなくなるため結合時に注意は必要となるが、常に同じ向きで結合できるため例えば上記したスタンド付きステッキのような場合には便利である。
【0024】
また、挿入部11より下方のシャフト1の外周に雄ネジ部13が形成されている。雄ネジ部13の設ける位置はリング3との関係で決定されることとなり、図示した位置に限定されるものではないが、シャフト1の凸部12よりは下方の位置に形成する必要がある。なお、雄ネジ部13はシャフト1の外周に直接螺設するようにして形成してあっても、あるいは雄ネジ部13をシャフト1と別部材とし、例えばパイプ状のものの外周に雄ネジ部13を螺設したものに対しシャフト1の上端部を挿入固定したものであってもよい。
【0025】
また、シャフト1の挿入部11には、ばね14により挿入部11の中から外周面に向けて突出するように付勢されているクリックボール15が設けられている。図示した例ではばね14としてねじりコイルばねを用い、ねじりコイルばねを棒状部材121に巻きつけねじりコイルばねの両腕の先端でそれぞれクリックボール15を押圧するようにしているが、クリックボール15の付勢方法は図示した例に限定されるものではない。また、図示した例ではクリックボール15と凸部12は90度間隔で配置してそれぞれを2個ずつ設ける例を示したが、クリックボール15の数と配置は適宜選択可能である。なお、クリックボール15は必ずしも球体ではなく、例えば円柱状や角柱状であってもよい。
【0026】
一方、グリップ2のパイプ部21は
図1と
図3に示すように鍔部22と切欠部23とを有している。鍔部22はパイプ部21の外周に鍔状に設けられている。鍔部22はリング3を係止できればよく、その大きさや形状は適宜選択可能である。また、パイプ部21に対して鍔部22を設ける位置も、リング3の大きさや形状との兼ね合いから決定されればよい。
【0027】
また、グリップ2のパイプ部21の下端にはシャフト1の挿入部11の凸部12と係合するように切欠部23が形成されている。切欠部23の大きさ(幅と深さ)や形状はシャフト1の挿入部11の凸部12が丁度係合できるような大きさや形状とする。また、切欠部23の数や位置はシャフト1の挿入部11がパイプ部21に挿入されたとき、各切欠部23が各凸部12と丁度合致できるように設ける。
【0028】
また、グリップ2のパイプ部21にはクリックボール15と係合可能な凹部24が形成されている。図示した例では凹部24として透孔の例を示したが、貫通していない例えば半球状の穴であってもよく、いずれにしてもクリックボール15が凹部24と係合できればよい。
【0029】
一方、リング3は
図3と
図5に示すように円筒状で一端は小径に形成されていて、その内周にはパイプ部21の鍔部22に係止される係止部31が設けられている。また、内周の適宜位置にはシャフト1の雄ネジ部13と螺合する雌ネジ部32が形成されている。なお、リング3の外周は完全な円筒形状であってもよいが、手での締め込み作業を行い易くするために、多角形形状などにしてあってもよい。また、リング3の外径の太さは適宜選択可能であるが、手での締め込み作業に支障がない範囲でできるだけ細い方が、シャフト1からの出っ張りが小さくて済みステッキ使用時の邪魔とならない。
【0030】
そして、リング3はパイプ部21の鍔部22で係止され鍔部22より下方にリング3が移動せず且つ雌ネジ部32がシャフト1の雄ネジ部13に対し螺合可能な向きでパイプ部21に遊嵌されている。グリップ2のパイプ部21の切欠部23が、シャフト1の挿入部11の凸部12と係合した状態で、リング3を回転させることによりシャフト1の雄ネジ部13とリング3の雌ネジ部32が螺合し、シャフト1とグリップ2が一体化されることとなる。より具体的には、パイプ部21の切欠部23が、パイプ部21に挿入された挿入部11の凸部12と係合することにより、シャフト1に対するグリップ2の回転方向の動きが規制され、またリング3の雌ネジ部32が、パイプ部21に挿入されたシャフト1の雄ネジ部13と螺合することで、シャフト1に対するグリップ2の上下方向の動きが規制され、その結果シャフト1とグリップ2は一体化されるのである。
【0031】
次に、上記した本発明のグリップ取替ステッキに関し、グリップを交換する方法について説明する。以下の説明においてはグリップを交換する場合について述べるが、シャフトを交換する場合も同様である。
まず、グリップ2をシャフト1から取り外すために、グリップ2又はシャフト1のどちらか一方を回転しないようにおさえながらリング3をねじが緩む方向に回転させ、リング3の雌ネジ部32とシャフト1の雄ネジ部13の螺合を解く。この状態では、グリップ2のパイプ部21の凹部24の透孔に対しシャフト1の挿入部11のクリックボール15が係合しているため、リング3を緩めただけではグリップ2はシャフト1から外れない。そこで、グリップ2とシャフト1を引き離す方向に若干の力を加えると、グリップ2のパイプ部21が移動しようとすることによりクリックボール15はばね14による付勢力に抗して挿入部11の内側方向へ移動させられるため、パイプ部21の凹部24に対するクリックボール15の係合が解かれ、グリップ2をシャフト1から取り外すことができる。
【0032】
次に、新しいグリップ2を用意し、新しいグリップ2のパイプ部21に取り外したシャフト1の挿入部11を挿入する。このとき、グリップ2のパイプ部21の切欠部23が、シャフト1の凸部12と丁度係合するようにグリップ2の向きを調整しながらグリップ1にシャフト2を挿入する。正しい向きで挿入されるとグリップ2のパイプ部21の切欠部23とシャフト1の凸部12が係合するとともに、シャフト1の挿入部11のクリックボール15とグリップ2のパイプ部21の凹部24が係合し、グリップ2とシャフト1が仮固定される。
【0033】
次に、リング3をねじ込む方向に回転させ、リング3の雌ネジ部32とシャフト1の雄ネジ部13を螺合させる。そして、リング3を完全に締めつけると、シャフト1とグリップ2が一体化されることとなる。シャフト1の凸部12とグリップ2のパイプ部21の切欠部23が係合しているため、リング3を締め付けるに際してはグリップ2又はシャフト1のどちらか一方を回転しないようにおさえれば、リング3を簡単に締め込むことができる。
【0034】
グリップ2に対してシャフト1が取り付けられる向きは、グリップ2のパイプ部21の切欠部23とシャフト1の凸部12の位置に依存している。一方、リング3はこれを締め付けることによりシャフト1とグリップ2を一体化させることにのみ機能している。したがって、グリップ2はシャフト1に対してリング3の締め込み量とは無関係に常に同じ向きで取り付けられることとなる。すなわち、リング3の締め込み量はグリップ2やシャフト1の向きに影響しないため、リング3の締め込み時にグリップ2やシャフト1の向きを考慮してリング3の締め込み量を調節する必要がない。
【0035】
また、ステッキ使用時にはシャフト1先端の石突で地面を突く動作を繰り返すこととなるため、ステッキ全体に下向きの力が反復的に働くこととなる。そこで、本発明では、リング3をグリップ2側に設けてシャフト1に対して締め付けるようにし、ステッキ使用時においてリング3には常に下向きの力が働くようにしてある。したがって、リング3は下方へ移動して締め付けることとなる方向には回転しても、上方へ移動して緩むこととなる方向には回転しづらいため、使用時にリング3が緩むことがない。リングを本発明と逆にシャフト側に設け、グリップ側に対して締め込むようにすると、ステッキ使用時にリングには下向きに力が働くため、リングは緩むこととなる方向に簡単に回転してしまう。
【0036】
なお
、クリックボール15をグリップ2のパイプ部21の凹部24に対し係合させることにより、シャフト1の挿入部11とグリップ2のパイプ部21を結合した際のがたつきを減少でき、またグリップ2の交換作業時にリング3を締め付けていない状態でもシャフト1に対してグリップ2を仮固定できるため、交換作業が行い易くなる。
【符号の説明】
【0037】
1 シャフト
11 挿入部
12 凸部
121 棒状部材
13 雄ネジ部
14 ばね
15 クリックボール
2 グリップ
21 パイプ部
22 鍔部
23 切欠部
24 凹部
3 リング
31 係止部
32 雌ネジ部
【要約】 (修正有)
【課題】グリップをシャフトに対して常に一定の向きで取り付けることができ、グリップのシャフトに対する固定が緩むことがなく、グリップとシャフトの着脱を簡単に行うことができるステッキを提供する。
【解決手段】グリップ2がシャフト1に対し着脱自在なグリップ取替ステッキであって、グリップ2は、シャフト側に向けてシャフト1を挿入可能な内径を有し、外周に鍔部22、下端に切欠部23をそれぞれ有するパイプ部21と、パイプ部21の外周に遊嵌され、上端に鍔部22と係止可能な係止部31と、内周に雌ネジ部32を有するリング3を備え、シャフト1は切欠部23と係合可能な凸部12を有する挿入部11と雄ネジ部13を有し、パイプ部21の切欠部23を挿入部11の凸部12と係合させ、リング3の雌ネジ部32をパイプ部21に挿入された雄ネジ部13と螺合させることでシャフト1に対するグリップ2の上下方向の動きが規制されるようにした。
【選択図】
図1