特許第5716954号(P5716954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5716954
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】回転角検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20150423BHJP
   H02P 6/16 20060101ALI20150423BHJP
   H02P 6/12 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   G01D5/244 J
   G01D5/244 K
   H02P6/02 351N
   H02P6/02 351P
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-6917(P2011-6917)
(22)【出願日】2011年1月17日
(65)【公開番号】特開2012-149909(P2012-149909A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【弁理士】
【氏名又は名称】香山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】上田 武史
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−45881(JP,A)
【文献】 特開平4−204162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00〜5/252
G01B 7/00〜7/34
G01R 33/00〜33/18
H02P 6/00〜6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転に応じて回転しかつ複数の磁極が設けられた検出用ロータと、前記検出用ロータの回転に応じて、互いに所定の位相差を有する3つの正弦波信号を出力するセンサとを含み、これらの正弦波信号に基づいて前記回転体の回転角を検出する回転角検出装置であって、
所定の演算周期毎に前記各正弦波信号を読み取る信号読取手段と、
前記信号読取手段によって読み取られた前記各正弦波信号に基づいて、少なくとも1つの正弦波信号の磁極の移り変わりを検出する検出手段とを含み、
前記検出手段は、
前記各正弦波信号のうち、磁極の移り変わりが検出される正弦波信号を第1の正弦波信号とし、他の2つの正弦波信号のうちの一方を第2の正弦波信号とし、他方を第3の正弦波信号とすると、
前記第2の正弦波信号および前記第3の正弦波信号のうち、その前回値と今回値との差の絶対値が大きい方の正弦波信号の今回値と、前記第1の正弦波信号の前回値と、前記第1の正弦波信号の今回値とに基づいて、前記第1の正弦波信号の磁極の移り変わりを検出するものである、回転角検出装置。
【請求項2】
前記所定の位相差が、電気角で120°である、請求項1に記載の回転角検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラシレスモータのロータ等の回転体の回転角を検出する回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置などに使用されるブラシレスモータを制御するためには、ロータの回転角度に合わせてステータ巻線に電流を通電する必要がある。そこで、ブラシレスモータの回転に応じて回転する検出用ロータを用いて、ブラシレスモータのロータの回転角を検出する回転角検出装置が知られている。具体的には、図8に示すように、検出用ロータ101(以下、「ロータ101」という)は、ブラシレスモータのロータに設けられている磁極対に相当する複数の磁極対を有する円筒状の磁石102を備えている。ロータ101の周囲には、2つの磁気センサ121,122が、ロータ101の回転中心軸を中心として所定の角度間隔をおいて配置されている。各磁気センサ121,122からは、所定の位相差を有する正弦波信号が出力される。これらの2つの正弦波信号に基づいて、ロータ101の回転角(ブラシレスモータのロータの回転角)が検出される。
【0003】
この例では、磁石102は、5組の磁極対(M0,M1)(M2,M3)(M4,M5)(M6,M7)(M8,M9)を有している。つまり、磁石102は、等角度間隔で配置された10個の磁極M0〜M9を有している。各磁極M0〜M9は、ロータ101の回転中心軸を中心として、36°(電気角では180°)の角度間隔で配置されている。また、2つの磁気センサ121,122は、ロータ101の回転中心軸を中心として18°(電気角では90°)の角度間隔をおいて配置されている。
【0004】
図8に矢印で示す方向を検出用ロータ101の正方向の回転方向とする。そして、ロータ101が正方向に回転されるとロータ101の回転角が大きくなり、ロータ101が逆方向に回転されると、ロータ101の回転角が小さくなるものとする。各磁気センサ121,122からは、図9に示すように、ロータ101が1磁極対分に相当する角度(72°(電気角では360°))を回転する期間を一周期とする正弦波信号V1,V2が出力される。
【0005】
ロータ101の1回転分の角度範囲を、5つの磁極対に対応して5つの区間に分け、各区間の開始位置を0°とし終了位置を360°として表したロータ101の角度を、ロータ101の電気角θeということにする。この場合には、10個の磁極の角度幅は等しいので、ロータ101の電気角θeは、ブラシレスモータのロータの電気角と一致する。
ここでは、第1の磁気センサ121からは、V1=A1・sinθeの出力信号が出力され、第2の磁気センサ122からは、V2=A2・cosθeの出力信号が出力されるものとする。A1,A2は、振幅である。両出力信号V1,V2の振幅A1,A2が互いに等しいとみなすと、ロータ101の電気角θeは、両出力信号V1,V2を用いて、次式(1)に基づいて求めることができる。
【0006】
θe=tan−1(sinθe/cosθe)
=tan−1(V1/V2) …(1)
このようにして、求められた電気角θeを使って、ブラシレスモータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-241411号公報
【特許文献2】特開2002-213944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電動パワーステアリング装置などに使用されるブラシレスモータを制御する場合、操舵角や操舵角の角速度がブラシレスモータの制御に用いられることがある。操舵角や操舵角の角速度は、ブラシレスモータのロータの機械角に基づいて演算することができる。また、操舵角の角速度は、回転角演算処理開始時のロータの初期位置を基準としたロータの機械角(以下、「相対的機械角」という)に基づいて演算することができる。
【0009】
ロータの機械角や相対的機械角を検出する場合には、磁気センサの出力信号の磁極の移り変わりを検出する必要がある。ここで、磁気センサの出力信号の磁極の移り変わりを検出するとは、当該磁気センサが感知している磁極が移り変わったことおよびその移動方向を検出することをいう。磁気センサの出力信号の磁極の移り変わりを、たとえば、図8に示される2つの磁気センサ121,122の出力信号V1,V2に基づいて、検出することが考えられる。
【0010】
2つの磁気センサ121,122の出力信号V1,V2の振幅A1,A2が互いに等しい値Aであるとみなすか、あるいは両振幅が所定の規定値Aとなるように両信号V1,V2を正規化したとすると、一方の出力信号V1は、V1=A・sinθeと表され、他方の出力信号V2は、V2=A・cosθeと表される。さらに、A=1とすると、一方の出力信号V1は、V1=sinθeで表され、他方の出力信号V2は、V2=cosθeで表される。そこで、説明を簡単にするために、磁気センサ121,122の出力信号V1,V2を、V1=sinθe、V2=sin(θ+90°)=cosθeで表すことにする。
【0011】
図9は、ロータ101の磁極M9と磁極M0との境界が第1の磁気センサ121に対向している場合のロータ101の回転角を0°にとった場合のロータ角度(機械角)に対する、各磁気センサ121,122の出力信号V1,V2を示している。ただし、ロータ角度は実際の機械角にロータ101の磁極対数(この例では”5”)を乗算した角度で表されている。また、図9おいて、磁極M0〜M9は、第1の磁気センサ121が感知している磁極を表している。
【0012】
第1の磁気センサ121が感知している磁極の移り変わりには、次の4種類がある。
(a)ロータ101が正方向に回転している場合に、第1の磁気センサ121が感知している磁極がN極からS極に移り変わる場合。たとえば、図9に符号Qaで示す楕円内の矢印で示すように、第1の磁気センサ121が感知している磁極が磁極M2からM3に移り変わる場合。
(b)ロータ101が正方向に回転している場合に、第1の磁気センサ121が感知している磁極がS極からN極の磁極に移り変わる場合。たとえば、図9に符号Qbで示す楕円内の矢印で示すように、第1の磁気センサ121が感知している磁極がM1からM2に移り変わる場合。
(c)ロータ101が逆方向に回転している場合に、第1の磁気センサ121が感知している磁極がN極からS極に移り変わる場合。たとえば、図9に符号Qcで示す楕円内の矢印で示すように、第1の磁気センサ121が感知している磁極がM6からM5に移り変わる場合。
(d)ロータ101が逆方向に回転している場合に、第1の磁気センサ121が感知している磁極がS極からN極の磁極に移り変わる場合。たとえば、図9に符号Qdで示す楕円内の矢印で示すように、第1の磁気センサ121が感知している磁極がM7からM6に移り変わる場合。
【0013】
前記(a)の磁極の移り変わり(図9のQa参照)は、次の第1の判定条件を満たすか否かを判定することによって検出することができる。
第1の判定条件:「V2<0」かつ「V1の前回値>0」かつ「V1の今回値≦0」
前記(b)の磁極の移り変わり(図9のQb参照)は、次の第2の判定条件を満たすか否かを判定することによって検出することができる。
【0014】
第2の判定条件:「V2>0」かつ「V1の前回値<0」かつ「V1の今回値≧0」
前記(c)の磁極の移り変わり(図9のQc参照)は、次の第3の判定条件を満たすか否かを判定することによって検出することができる。
第3の判定条件:「V2>0」かつ「V1の前回値≧0」かつ「V1の今回値<0」
前記(d)の磁極の移り変わり(図9のQd参照)は、次の第4の判定条件を満たすか否かを判定することによって検出することができる。
【0015】
第4の判定条件:「V2<0」かつ「V1の前回値≦0」かつ「V1の今回値>0」
つまり、前記第1の判定条件を満たしていると判定されると、前記(a)の磁極の移り変わりが発生したと判別される。前記第2の判定条件を満たしていると判定されると、前記(b)の磁極の移り変わりが発生したと判別される。前記第3の判定条件を満たしていると判定されると、前記(c)の磁極の移り変わりが発生したと判別される。前記第4の判定条件を満たしていると判定されると、前記(d)の磁極の移り変わりが発生したと判別される。
【0016】
ところで、磁気センサが故障すると、その出力信号がある値に固定されてしまうことがある。このような出力信号の異常を固着異常ということにする。第1の出力信号V1または第2の出力信号V2に固着異常が発生すると、磁極の移り変わりを正確に検出できなくなる。たとえば、第2の出力信号V2が”0”に固定されると、前記第1〜第4の判定条件のいずれの判定条件も満たされなくなる。このため、前記(a)〜(d)の磁極の移り変わりを検出できなくなる。
【0017】
また、第2の出力信号V2が”0”以外の値、たとえば0.5に固定された場合にも、磁極の移り変わりを誤検出してしまう。図10は、第2の出力信号V2が0.5に固定された場合の、各磁気センサ121,122の出力信号V1,V2を示している。
図10において、楕円Qa内の矢印で示す磁極の移り変わりでは、本来V2<0となるべきところがV2>0となるため、前記第1の判定条件を満たさなくなくなり、前記第3の判定条件を満たしてしまうことになる。このため、前記(a)の磁極の移り変わりを、前記(c)の磁極の移り変わりと誤検出してしまう。同様に、図10において、楕円Qd内の矢印で示す磁極の移り変わりでは、本来V2<0となるべきところがV2>0となるため、前記第4の判定条件を満たさなくなくなり、前記第2の判定条件を満たしてしまうことになる。このため、前記(d)の磁極の移り変わりを、前記(b)の磁極の移り変わりと誤検出してしまう。
【0018】
この発明の目的は、複数の正弦波信号のうちの1つの正弦波信号に固着異常が発生した場合でも、磁極の移り変わりを正確に検出できるようになる回転角検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、回転体(10)の回転に応じて回転しかつ複数の磁極(M0〜M9)が設けられた検出用ロータ(1)と、前記検出用ロータの回転に応じて、互いに所定の位相差を有する3つの正弦波信号(V1,V2,V3)を出力するセンサ(21,22,23)とを含み、これらの正弦波信号に基づいて前記回転体の回転角を検出する回転角検出装置であって、所定の演算周期毎に前記各正弦波信号を読み取る信号読取手段(20,S1)と、前記信号読取手段によって読み取られた前記各正弦波信号に基づいて、少なくとも1つの正弦波信号の磁極の移り変わりを検出する検出手段(20,S4)とを含み、前記検出手段は、前記各正弦波信号のうち、磁極の移り変わりが検出される正弦波信号を第1の正弦波信号(V1)とし、他の2つの正弦波信号のうちの一方を第2の正弦波信号(V2)とし、他方を第3の正弦波信号(V3)とすると、前記第2の正弦波信号および前記第3の正弦波信号のうち、その前回値と今回値との差の絶対値が大きい方の正弦波信号の今回値と、前記第1の正弦波信号の前回値と、前記第1の正弦波信号の今回値とに基づいて、前記第1の正弦波信号の磁極の移り変わりを検出するものである、回転角検出装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0020】
上記構成では、検出用ロータの回転に応じて、互いに所定の位相差を有する3つの正弦波信号を出力するセンサを含んでいる。所定の演算周期毎に各正弦波信号が読み取られる。そして、読み取られた各正弦波信号に基づいて、少なくとも1つの正弦波信号の磁極の移り変わりが検出される。具体的には、各正弦波信号のうち、磁極の移り変わりが検出される正弦波信号を第1の正弦波信号とし、他の2つの正弦波信号のうちの一方を第2の正弦波信号とし、他方を第3の正弦波信号とすると、第2の正弦波信号および第3の正弦波信号のうち、その前回値と今回値との差の絶対値が大きい方の正弦波信号の今回値と、第1の正弦波信号の前回値と、第1の正弦波信号の今回値とに基づいて、第1の正弦波信号の磁極の移り変わりが検出される。
【0021】
つまり、この構成では、第2の正弦波信号および第3の正弦波信号のうち、その前回値と今回値との差の絶対値が大きい方の正弦波信号の今回値が、第1の正弦波信号の磁極の移り変わりを検出するために用いられる。第2の正弦波信号および第3の正弦波信号のうちの1つに固着異常が発生した場合には、固着異常が発生した正弦波信号の前回値と今回値との差の絶対値は小さくなる。このため、固着異常が発生した正弦波信号は、第1の正弦波信号の磁極の移り変わりの検出に用いられなくなる。したがって、この構成によれば、磁極の移り変わりが検出される第1の正弦波信号以外の2つの正弦波信号のうちの1つに固着異常が発生した場合でも、第1の正弦波信号の磁極の移り変わりを正確に検出できる。
【0022】
これにより、3つの正弦波信号のうちの1つの正弦波信号に固着異常が発生した場合でも、少なくとも1つの正弦波信号の磁極の移り変わりを正確に検出することが可能となる。これにより、3つの正弦波信号のうちの1つの正弦波信号に固着異常が発生した場合でも、相対的機械角等の機械角を演算することが可能となる。
前記所定の位相差は、電気角で20°〜35°の範囲内、55°〜70°の範囲内、110°〜125°の範囲内または145°〜160°の範囲内の角度であることが望ましい。
【0023】
請求項2に記載の発明は、前記所定の位相差が、電気角で120°である、請求項1に記載の回転角検出装置である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の一実施形態に係る回転角検出装置を、ブラシレスモータのロータの回転角を検出するための回転角検出装置に適用した場合の構成を示す模式図である。
図2】検出用ロータの構成を示す模式図である。
図3】第1、第2および第3の磁気センサの出力信号波形および第1の磁気センサが感知している磁極を示す模式図である。
図4】回転角演算装置による回転角演算処理の手順を示すフローチャートである。
図5図4のステップS3の相対的極番号の設定処理の手順を示すフローチャートである。
図6】相対的極番号の設定処理を説明するための模式図である。
図7】第2の出力信号が0.5に固定された場合の各出力信号波形および第1の磁気センサが感知している磁極を示す模式図である。
図8】従来の回転角検出装置による回転角検出方法を説明するための模式図である。
図9】第1の磁気センサの出力信号波形および第2の磁気センサの出力信号波形を示す模式図である。
図10】2つの磁気センサの出力信号のうちの一方の出力信号に固着異常が発生した場合に、磁極の移り変わりを誤検知してしまうことを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明を、ブラシレスモータのロータの回転角を検出するための回転角検出装置に適用した場合の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る回転角検出装置を、ブラシレスモータのロータの回転角を検出するための回転角検出装置に適用した場合の構成を示す模式図である。
この回転角検出装置は、ブラシレスモータ10の回転に応じて回転する検出用ロータ(以下、単に「ロータ1」という)を有している。図2に示すように、ロータ1は、ブラシレスモータ10のロータに設けられている磁極対に相当する複数の磁極対を有する円筒状の磁石2を含んでいる。
【0026】
磁石2は、5組の磁極対(M0,M1)(M2,M3)(M4,M5)(M6,M7)(M8,M9)を有している。つまり、磁石2は、等角度間隔で配置された10個の磁極M0〜M9を有している。各磁極M0〜M9は、ロータ1の回転中心軸を中心として、36°(電気角では180°)の角度間隔で配置されている。
ロータ1の周囲には、3つの磁気センサ21,22,23が、ロータ1の回転中心軸を中心として、所定角度(24°(前記電気角では120°))の角度間隔をおいて配置されている。これら3つの磁気センサ21,22,23を、それぞれ第1の磁気センサ21、第2の磁気センサ22および第3の磁気センサ23という場合がある。磁気センサとしては、たとえば、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁界の作用により電気的特性が変化する特性を有する素子を備えたものを用いることができる。
【0027】
図2に矢印で示す方向をロータ1の正方向の回転方向とする。そして、ロータ1が正方向に回転されるとロータ1の回転角が大きくなり、ロータ1が逆方向に回転されると、ロータ1の回転角が小さくなるものとする。各磁気センサ21,22,23からは、図3に示すように、ロータ1が1磁極対分に相当する角度(72°(電気角では360°))を回転する期間を一周期とする正弦波信号V1,V2,V3が出力される。
【0028】
図3は、ロータ1の磁極M9と磁極M0との境界が第1の磁気センサ21に対向している場合のロータ1の回転角を0°にとった場合のロータ角度(機械角)に対する、各磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3を示している。図3における横軸のロータ角度[deg]は、機械角に磁極対数(この実施形態では”5”)を乗算することにより得られた角度を表している。また、図3には、ロータ角度に対応して、第1の磁気センサ21が感知している磁極M0〜M9が示されている。
【0029】
回転角演算処理の開始時におけるロータ1の初期位置を基準としたロータ1の機械角を相対的機械角θmということにする。ただし、この実施形態では、相対的機械角θmを、回転角演算処理開始時におけるロータ1の初期位置を基準としたロータ1の機械角にロータ1の磁極対数(この例では”5”)を乗算した値で表すことにする。ロータ1の1回転分の角度範囲を、5つの磁極対に対応して5つの区間に分け、各区間の開始位置を0°とし終了位置を360°として表したロータ1の角度を、ロータ1の電気角θeということにする。この場合には、10個の磁極の角度幅は等しいので、ロータ1の電気角θeは、ブラシレスモータのロータの電気角と一致する。
【0030】
ここでは、第1の磁気センサ21からは、5つの磁極対に対応する区間毎に、V1=A1・sinθeの出力信号が出力されるものとする。この場合、第2の磁気センサ22からは、5つの磁極対に対応する区間毎に、V2=A2・sin(θe+120°)の出力信号が出力される。また、第3の磁気センサ23からは、5つの磁極対に対応する区間毎に、V3=A3・sin(θe+240°)の出力信号が出力される。A1,A2,A3は、それぞれ振幅を表している。つまり、各磁気センサ21,22,23からは、所定の位相差120°(電気角)を有する正弦波信号が出力される。各磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3を、それぞれ第1の出力信号V1,第2の出力信号V2および第3の出力信号V3という場合がある。
【0031】
3つの磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3の振幅A1,A2,A3が互いに等しい値Aであるとみなすか、あるいは各振幅が所定の規定値Aとなるように各信号V1,V2,V3を正規化したとすると、第1、第2および第3の出力信号V1,V2,V3は、V1=A・sinθe,V2=A・sin(θe+120°)およびV3=A・sin(θe+240°)と表される。さらに、A=1とすると、第1、第2および第3の出力信号V1,V2,V3は、V1=sinθe、V2=sin(θe+120°)およびV3=sin(θe+240°)で表される。そこで、説明を簡単にするために、各磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3を、V1=sinθe、V2=sin(θe+120°)およびV3=sin(θe+240°)で表すことにする。
【0032】
図1に戻り、各磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3は、回転角演算装置20に入力される。回転角演算装置20は、各磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3に基づいて、ロータ1の電気角θeを演算する。また、回転角演算装置20は、得られた電気角θe等に基づいて、ロータ1の相対的機械角θmを演算する。回転角演算装置20は、たとえば、マイクロコンピュータから構成され、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ(ROM,RAM,書き換え可能な不揮発性メモリ等)を含んでいる。
【0033】
回転角演算装置20によって演算された電気角θeおよび相対的機械角θmは、モータコントローラ30に与えられる。モータコントローラ30は、回転角演算装置20から与えられる電気角θeおよび相対的機械角θmを用いて、ブラシレスモータ10を制御する。
相対的機械角θmを演算するためには、出力信号V1,V2,V3のうちの少なくとも1つの出力信号の磁極の移り変わり(磁気センサ21,22,23のうち少なくとも1つの磁気センサが感知している磁極の移り変わり)を検出する必要がある。この回転角演算装置20の特徴は、任意の磁気センサの出力信号の磁極の移り変わりを検出する場合に、当該磁気センサ以外の2つの磁気センサの出力信号のうちの一方に固着異常が発生したとしても、当該磁気センサの移り変わりを正確に検出できる機能を備えていることにある。また、回転角演算装置20の特徴は、3つの磁気センサ21,22,23の出力信号のうちの1つの出力信号に固着異常が発生したとしても、相対的機械角θmを正確に演算できる機能を備えていることにある。
【0034】
図4は、回転角演算装置20による回転角演算処理の手順を示すフローチャートである。
図4に示される回転角演算処理は、所定の演算周期毎に繰り返し行なわれる。
回転角演算処理開始時において第1の磁気センサ21が感知している磁極を基準磁極として、各磁極に相対的な番号を割り当てた場合の各磁極の番号を相対的極番号と定義する。第1の磁気センサ21が感知している相対的極番号(以下、「第1の相対的極番号」という)を変数p1で表し、第2の磁気センサ22が感知している相対的極番号(以下、「第2の相対的極番号」という)を変数p2で表すことにする。この実施形態では、回転角演算処理開始時において第1の磁気センサ21が感知している磁極(基準磁極)がN極の磁極である場合には、当該磁極に”0”の相対的極番号が割り当てられる。一方、回転角演算処理の開始時において第1の磁気センサ21が感知している磁極(基準磁極)がS極の磁極である場合には、当該磁極に”1”の相対的極番号が割り当てられる。
【0035】
回転角演算処理が開始されると、回転角演算装置20は、各磁気センサ21,22,23の出力信号(センサ値)V1,V2,V3を読み込む(ステップS1)。なお、回転角演算装置20のメモリ(たとえば、RAM)には、所定回数前に読み込まれたセンサ値から最新に読み込まれたセンサ値までの、複数回数分のセンサ値が記憶されるようになっている。
【0036】
前記ステップS1で各センサ値V1,V2,V3が読み込まれると、回転角演算装置20は、今回の処理が回転角演算処理開始後の初回の処理であるか否かを判別する(ステップS2)。今回の処理が回転角演算処理開始後の初回の処理である場合には(ステップS2:YES)、回転角演算装置20は、相対的極番号の設定処理を行う(ステップS3)。
【0037】
図5は、相対的極番号の設定処理の詳細な手順を示している。
回転角演算装置20は、まず、第1の出力信号V1が0より大きいか否かを判別する(ステップS21)。第1の出力信号V1が0より大きい場合には(ステップS21:YES)、回転角演算装置20は、第1の磁気センサ21が感知している磁極(基準磁極)がN極の磁極であると判別し、第1の相対的極番号p1を0に設定する(ステップS24)。そして、ステップS26に進む。
【0038】
一方、第1の出力信号V1が0以下である場合には(ステップS21:NO)、回転角演算装置20は、第1の出力信号V1が0より小さいか否かを判別する(ステップS22)。第1の出力信号V1が0より小さい場合には(ステップS22:YES)、第1の磁気センサ21が感知している磁極(基準磁極)がS極の磁極であると判別し、第1の相対的極番号p1を1に設定する(ステップS25)。そして、ステップS26に進む。
【0039】
前記ステップS22において、第1の出力信号V1が0以上であると判別された場合には(ステップS22:NO)、つまり、第1の出力信号V1が0である場合には、回転角演算装置20は、ロータ回転角(電気角)が0°であるか180°であるかを判別するために、第2の出力信号V2が0より大きいか否かを判別する(ステップS23)。第2の出力信号V3が0より大きい場合には(ステップS23:YES)、回転角演算装置20は、ロータ回転角(電気角)が0°であると判別し、第1の相対的極番号p1を0に設定する(ステップS24)。そして、ステップS26に進む。
【0040】
一方、第2の出力信号V2が0以下である場合には(ステップS23:NO)、回転角演算装置20は、ロータ回転角(電気角)が180°であると判別し、第1の相対的極番号p1を1に設定する(ステップS25)。そして、ステップS26に進む。
なお、前記ステップS23において、回転角演算装置20は、第3の出力信号V3が0より小さいか否かを判別するようにしてもよい。この場合には、第3の出力信号V3が0より小さいときには、回転角演算装置20は、ステップS24に進んで第1の相対的極番号p1を0に設定する。一方、3の出力信号V3が0以上である場合には、回転角演算装置20は、ステップS25に進んで第1の相対的極番号p1を1に設定する。
【0041】
ステップS26では、回転角演算装置20は、「V1≧0かつV2≦0」または「V1<0かつV2≧0」の条件を満たしているか否かを判別する。この条件を満たしている場合には(ステップS26:YES)、回転角演算装置20は、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが異なると判別し、第2の相対的極番号p2に、第1の相対的極番号p1より1だけ多い番号を設定する(ステップS28)。そして、図4のステップS5に戻る。
【0042】
一方、前記ステップS26の条件を満たしていない場合には(ステップS24:NO)、回転角演算装置20は、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが同じであると判別し、第2の相対的極番号p2に第1の相対的極番号p1と同じ番号を設定する(ステップS27)。そして、図4のステップS5に戻る。
【0043】
前記ステップS26の条件を満たしている場合に、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが異なると判別し、前記ステップS26の条件を満たしていない場合に、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが同じであると判別している理由について説明する。
【0044】
たとえば、ロータ1の磁極M0と磁極M1とからなる磁極対が第1の磁気センサ21を通過する際の、第1、第2および第3の磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3の信号波形を模式的に表すと、図6(a)(b)(c)に示すようになる。
図6(a)(b)において、S1で示す領域は、第1の磁気センサ21および第2の磁気センサ22が共に磁極M0を感知している領域である。S2で示す領域は、第1の磁気センサ21が磁極M0を感知し、第2の磁気センサ22が磁極M1を感知している領域である。S3で示す領域は、第1の磁気センサ21および第2の磁気センサ22が共に磁極M1を感知している領域である。S4で示す領域は、第1の磁気センサ21が磁極M1を感知し、第2の磁気センサ22が磁極M2を感知している領域である。
【0045】
つまり、領域S1およびS3では、第2の磁気センサ22が感知している磁極の極番号は、第1の磁気センサ21が感知している磁極の極番号と等しくなる。一方、領域S2およびS4では、第2の磁気センサ22が感知している磁極の極番号は、第1の磁気センサ21が感知している磁極の極番号より1だけ大きくなる。
領域S1においては、両センサ値V1,V2は、V1≧0かつV2>0の第1条件を満たす。領域S2においては、両センサ値V1,V2は、V1≧0かつV2≦0の第2条件を満たす。領域S3においては、両センサ値V1,V2は、V1<0かつV2<0の第3条件を満たす。領域S4においては、両センサ値V1,V2は、V1<0かつV2≧0の第4条件を満たす。
【0046】
そこで、回転角演算装置20は、前記第2条件(V1≧0かつV2≦0)または前記第4条件(V1<0かつV2≧0)を満たしている場合には、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが異なると判別し、前記第2条件または前記第4条件を満たしていない場合に、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが同じであると判別している。
【0047】
図4に戻り、前記ステップS2において、今回の処理が回転角演算処理開始後の初回の処理ではないと判別された場合には(ステップS2:NO)、ステップS4に移行する。ステップS4では、回転角演算装置20は、磁極の移り変わりの検出および相対的極番号の更新処理を行なう。この実施形態では、回転角演算装置20は、第1の磁気センサ21が感知している磁極の移り変わりおよび第2の磁気センサ22が感知している磁極の移り変わりを検出するための処理を行なう。そして、回転角演算装置20は、第1の磁気センサ21が感知している磁極の移り変わりを検出したときには、第1の相対的極番号p1を更新する。また、回転角演算装置20は、第2の磁気センサ22が感知している磁極の移り変わりを検出したときには、第2の相対的極番号p2を更新する。
【0048】
図3を参照して、第1の磁気センサ21が感知している磁極の移り変わりの検出処理および第1の相対的極番号p1の更新処理について説明する。
第1の磁気センサ21が感知している磁極の移り変わりには、次の4種類がある。
(a)ロータ1が正方向に回転している場合に、第1の磁気センサ21が感知している磁極がN極からS極に移り変わる場合。たとえば、図3に符号Qaで示す楕円内の矢印で示すように、第1の磁気センサ21が感知している磁極がM2からM3に移り変わる場合。
(b)ロータ1が正方向に回転している場合に、第1の磁気センサ21が感知している磁極がS極からN極の磁極に移り変わる場合。たとえば、図3に符号Qbで示す楕円内の矢印で示すように、第1の磁気センサ21が感知している磁極がM1からM2に移り変わる場合。
(c)ロータ1が逆方向に回転している場合に、第1の磁気センサ21が感知している磁極がN極からS極に移り変わる場合。たとえば、図3に符号Qcで示す楕円内の矢印で示すように、第1の磁気センサ21が感知している磁極がM6からM5に移り変わる場合。
(d)ロータ1が逆方向に回転している場合に、第1の磁気センサ21が感知している磁極がS極からN極の磁極に移り変わる場合。たとえば、図3に符号Qdで示す楕円内の矢印で示すように、第1の磁気センサ21が感知している磁極がM7からM6に移り変わる場合。
【0049】
回転角演算装置20は、前記(a)〜(d)の磁極の移り変わりが発生しているか否かを判別し、磁極の移り変わりが発生していると判別した場合には、第1の相対的極番号p1を更新する。
回転角演算装置20は、前記(a)の磁極の移り変わり(図3のQa参照)の有無を判定するために、次の第1の判定条件を満たしているか否かを判定する。ただし、ΔV2は第2の出力信号V2の前回値と今回値の差の絶対値を表し、ΔV3は第3の出力信号V3の前回値と今回値の差の絶対値を表している。
【0050】
第1の判定条件:「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2<0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3>0」かつ「V1の前回値>0」かつ「V1の今回値≦0」
回転角演算装置20は、前記第1の判定条件を満たしていると判定した場合には、第1の相対的極番号p1を1だけ大きい値に更新する。
また、回転角演算装置20は、前記(b)の磁極の移り変わり(図3のQb参照)の有無を判定するために、次の第2の判定条件を満たしているか否かを判定する。
【0051】
第2の判定条件:「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2>0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3<0」かつ「V1の前回値<0」かつ「V1の今回値≧0」
回転角演算装置20は、前記第2の判定条件を満たしていると判定した場合には、第1の相対的極番号p1を1だけ大きい値に更新する。ただし、第1の相対的極番号p1が”9”である場合には、それより1だけ大きい値は”0”となる。
【0052】
また、回転角演算装置20は、前記(c)の磁極の移り変わり(図3のQc参照)の有無を判定するために、次の第3の判定条件を満たしているか否かを判定する。
第3の判定条件:「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2>0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3<0」かつ「V1の前回値≧0」かつ「V1の今回値<0」
回転角演算装置20は、前記第3の判定条件を満たしていると判定した場合には、第1の相対的極番号p1を1だけ小さい値に更新する。ただし、第1の相対的極番号p1が”0”である場合には、それより1だけ小さい値は”9”となる。
【0053】
また、回転角演算装置20は、前記(d)の磁極の移り変わり(図3のQd参照)の有無を判定するために、次の第4の判定条件を満たしているか否かを判定する。
第4の判定条件:「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2<0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3>0」かつ「V1の前回値≦0」かつ「V1の今回値>0」
回転角演算装置20は、前記第4の判定条件を満たしていると判定した場合には、第1の相対的極番号p1を1だけ小さい値に更新する。
【0054】
また、回転角演算装置20は、第2の磁気センサ22が感知している磁極の移り変わりが発生したか否かを判別するために、次の4つの条件(第5条件〜第8条件)を満たしているか否かを判別する。ただし、ΔV1は、第1の出力信号V1の前回値と今回値の差の絶対値を表す。
第5の判定条件(回転方向が正方向である場合のN極からS極への移り変わり):「ΔV1≧ΔV3の場合にはV1>0、ΔV1<ΔV3の場合にはV3<0」かつ「V2の前回値>0」かつ「V2の今回値≦0」
第6の判定条件(回転方向が正方向である場合のS極からN極への移り変わり):「ΔV1≧ΔV3の場合にはV1<0、ΔV1<ΔV3の場合にはV3>0」かつ「V2の前回値<0」かつ「V2の今回値≧0」
第7の判定条件(回転方向が逆方向である場合のN極からS極への移り変わり):「ΔV1≧ΔV3の場合にはV1<0、ΔV1<ΔV3の場合にはV3>0」かつ「V2の前回値≧0」かつ「V2の今回値<0」
第8の判定条件(回転方向が逆方向である場合のS極からN極への移り変わり):「ΔV1≧ΔV3の場合にはV1>0、ΔV1<ΔV3の場合にはV3<0」かつ「V2の前回値≦0」かつ「V2の今回値>0」
第5の判定条件または第6の判定条件を満たしている場合には、回転角演算装置20は、第2の相対的極番号p2を1だけ大きい値に更新する。ただし、第2の相対的極番号p2が”9”である場合には、それより1だけ大きい値は”0”となる。一方、第7の判定条件または第8の判定条件を満たしている場合には、回転角演算装置20は、第2の相対的極番号p2を1だけ小さい値に更新する。ただし、第2の相対的極番号p2が”0”である場合には、それより1だけ小さい値は”9”となる。
【0055】
この実施形態では、第3の磁気センサ23が感知している磁極の移り変わりが発生したか否かは判別されていないが、第3の磁気センサ23が感知している磁極の移り変わりが発生したか否かを判別することも可能である。具体的には、次の4つの条件(第9条件〜第12条件)を満たしているか否かを判別することにより、第3の磁気センサ23が感知している磁極の移り変わりを判別できる。
【0056】
第9の判定条件(回転方向が正方向である場合のN極からS極への移り変わり):「ΔV1≧ΔV2の場合にはV1<0、ΔV1<ΔV2の場合にはV2>0」かつ「V3の前回値>0」かつ「V3の今回値≦0」
第10の判定条件(回転方向が正方向である場合のS極からN極への移り変わり):「ΔV1≧ΔV2の場合にはV1>0、ΔV1<ΔV2の場合にはV2<0」かつ「V3の前回値<0」かつ「V3の今回値≧0」
第11の判定条件(回転方向が逆方向である場合のN極からS極への移り変わり):「ΔV1≧ΔV2の場合にはV1>0、ΔV1<ΔV2の場合にはV2<0」かつ「V3の前回値≧0」かつ「V3の今回値<0」
第12の判定条件(回転方向が逆方向である場合のS極からN極への移り変わり):「ΔV1≧ΔV2の場合にはV1<0、ΔV1<ΔV2の場合にはV2>0」かつ「V3の前回値≦0」かつ「V3の今回値>0」
任意の磁気センサが感知している磁極の移り変わりを、前記のような判定条件を用いて検出しているので、当該磁気センサ以外の2つの磁気センサの出力信号のうちの1つの出力信号に固着異常が発生していたとしても、当該磁気センサが感知している磁極の移り変わりを正確に検出することができる。このことについて、第1の磁気センサ21が感知している磁極の移り変わりを検出する場合を例にとって検証する。図7は、第2の出力信号V2が固着異常により、0.5の値に固定された場合の各出力信号を示している。
【0057】
図7に楕円Qa内の矢印で示す磁極の移り変わり(回転方向が正方向である場合のN極からS極への移り変わり)が、前記第1の判定条件によって検出されるか否かを検証する。第1の判定条件は、「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2<0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3>0」かつ「V1の前回値>0」かつ「V1の今回値≦0」である。固着異常が発生した第2の出力信号V2はほとんど変化しないため、ΔV2は小さな値となる。したがって、図7に楕円Qa内の矢印で示す磁極の移り変わり時点では、ΔV2<ΔV3となる。
【0058】
この結果、第1の判定条件中の「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2<0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3>0」という要件は、固着異常が発生した第2の出力信号V2ではなく第3の出力信号V3を用いて判定されることになる。図7に楕円Qa内の矢印で示す磁極の移り変わり時点では、V3>0となるので、第1の判定条件が満たされることになる。つまり、第2の出力信号V2に固着異常が発生した場合でも、第1の判定条件に基づいて、回転方向が正方向である場合のN極からS極への移り変わりを正確に検出することができる。
【0059】
図7に楕円Qb内の矢印で示す磁極の移り変わり(回転方向が正方向である場合のS極からN極への移り変わり)が、前記第2の判定条件によって検出されるか否かを検証する。第2の判定条件は、「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2>0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3<0」かつ「V1の前回値<0」かつ「V1の今回値≧0」である。ΔV2は小さな値となるため、図7に楕円Qb内の矢印で示す磁極の移り変わり時点では、ΔV2<ΔV3となる。
【0060】
この結果、第2の判定条件中の「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2>0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3<0」という要件は、固着異常が発生した第2の出力信号V2ではなく第3の出力信号V3を用いて判定されることになる。図7に楕円Qb内の矢印で示す磁極の移り変わり時点では、V3<0となるので、第2の判定条件が満たされることになる。つまり、第2の出力信号V2に固着異常が発生した場合でも、第2の判定条件に基づいて、回転方向が正方向である場合のS極からN極への移り変わりを正確に検出することができる。
【0061】
図7に楕円Qc内の矢印で示す磁極の移り変わり(回転方向が逆方向である場合のN極からS極への移り変わり)が、前記第3の判定条件によって検出されるか否かを検証する。第3の判定条件は、「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2>0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3<0」かつ「V1の前回値≧0」かつ「V1の今回値<0」である。ΔV2は小さな値となるため、図7に楕円Qc内の矢印で示す磁極の移り変わり時点では、ΔV2<ΔV3となる。
【0062】
この結果、第3の判定条件中の「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2>0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3<0」という要件は、固着異常が発生した第2の出力信号V2ではなく第3の出力信号V3を用いて判定されることになる。図7に楕円Qc内の矢印で示す磁極の移り変わり時点では、V3<0となるので、第3の判定条件が満たされることになる。つまり、第2の出力信号V2に固着異常が発生した場合でも、第3の判定条件に基づいて、回転方向が逆方向である場合のN極からS極への移り変わりを正確に検出することができる。
【0063】
図7に楕円Qd内の矢印で示す磁極の移り変わり(回転方向が逆方向である場合のS極からN極への移り変わり)が、前記第4の判定条件によって検出されるか否かを検証する。第4の判定条件は、「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2<0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3>0」かつ「V1の前回値≦0」かつ「V1の今回値>0」である。ΔV2は小さな値となるため、図7に楕円Qd内の矢印で示す磁極の移り変わり時点では、ΔV2<ΔV3となる。
【0064】
この結果、第4の判定条件中の「ΔV2≧ΔV3の場合にはV2<0、ΔV2<ΔV3の場合にはV3>0」という要件は、固着異常が発生した第2の出力信号V2ではなく第3の出力信号V3を用いて判定されることになる。図7に楕円Qb内の矢印で示す磁極の移り変わり時点では、V3>0となるので、第4の判定条件が満たされることになる。つまり、第2の出力信号V2に固着異常が発生した場合でも、第4の判定条件に基づいて、回転方向が逆方向である場合のS極からN極への移り変わりを正確に検出することができる。
【0065】
第2の出力信号V2に代わりに、第3の出力信号V3に固着異常が発生した場合には、第1の磁気センサ21が感知している磁極の移り変わり時点では、ΔV2≧ΔV3となり、第2の出力信号V2の符号が判定されることになる。つまり、固着異常が発生した第3の出力信号V3は、磁極の移り変わり判定に用いられない。したがって、第3の出力信号V3に固着異常が発生した場合にも、前記第1〜第4の判定条件を用いて、第1の磁気センサ21が感知している磁極の移り変わりを正確に検出できる。
【0066】
なお、第2の磁気センサ22の出力信号V2の磁極の移り変わりを判定する場合も、同様に、他の磁気センサ21,23の出力信号V1,V3のいずれか一方に固着異常が発生したとしても、第2の磁気センサ22の出力信号V2の磁極の移り変わりを正確に検出できる。また、第3の磁気センサ23の出力信号V3の磁極の移り変わりを判定する場合も、同様に、他の磁気センサ21,22の出力信号V1,V2のいずれか一方に固着異常が発生したとしても、第3の磁気センサ23の出力信号V3の磁極の移り変わりを正確に検出できる。
【0067】
前記ステップS4の処理が終了すると、ステップS5に移行する。ステップS5では、回転角演算装置20は、前記ステップS1で読み込まれたセンサ値V1,V2,V3に基づいて、電気角θeを演算する。なお、この際、回転角演算装置20は、各出力信号V1,V2,V3に固着異常が発生しているか否かの判定を行う。各出力信号V1,V2,V3に固着異常が発生しているか否かの判定は、たとえば、出力信号V1,V2,V3毎に所定回数にわたってセンサ値がほとんど変化しないか否かを調べることによって行うことができる。つまり、回転角演算装置20は、所定回数にわたってセンサ値がほとんど変化しない場合には、そのセンサ値に対応する出力信号に固着異常が発生していると判定する。
【0068】
回転角演算装置20は、第1の出力信号V1と第2の出力信号V2とに基づいて、ロータ1の回転角に相当する第1の電気角θe1を演算する。また、回転角演算装置20は、第1の出力信号V1と第3の出力信号V3とに基づいて、ロータ1の回転角に相当する第2の電気角θe2を演算する。また、回転角演算装置20は、第2の出力信号V2と第3の出力信号V3とに基づいて、ロータ1の回転角に相当する第3の電気角θe3を演算する。第1、第2および第3の電気角θe1,θe2,θe3の演算方法については、後述する。
【0069】
そして、回転角演算装置20は、全ての出力信号V1,V2,V3が正常であると判定した場合には、たとえば、次式(2)に基づいて、最終的な電気角θeを演算する。つまり、回転角演算装置20は、第1、第2および第3の電気角θe1,θe2,θe3の平均値を、最終的な電気角θeとして演算する。
θe=(θe1+θe2+θe3)/3 …(2)
なお、全ての出力信号V1,V2,V3が正常であると判定された場合には、回転角演算装置20は、第1、第2および第3の電気角θe1,θe2,θe3の中央値を、最終的な電気角θeとして演算することができる。また、この場合、第1、第2および第3の電気角θe1,θe2,θe3のうち、最も外れているものを除外し、他の2つの平均値を、最終的な電気角θeとして演算することもできる。さらに、この場合、回転角演算装置20は、第1,第2および第3の電気角θe1,θe2,θe3のいずれか1つの電気角を、最終的な電気角θeとして決定してもよい。
【0070】
また、回転角演算装置20は、第1の出力信号V1が異常であり、第2および第3の出力信号V2,V3が正常であると判定した場合には、第2および第3の出力信号V2,V3に基づいて演算された第3の電気角θe3を、最終的な電気角θeとして決定する。
また、回転角演算装置20は、第2の出力信号V2が異常であり、第1および第3の出力信号V1,V3が正常であると判定した場合には、第1および第3の出力信号V1,V3に基づいて演算された第2の電気角θe2を、最終的な回転角θeとして決定する。
【0071】
また、回転角演算装置20は、第3の出力信号V3が異常であり、第1および第2の出力信号V1,V2が正常であると判定した場合には、第1および第2の出力信号V1,V2に基づいて演算された第1の電気角θe1を、最終的な電気角θeとして決定する。
なお、3つの出力信号V1,V2,V3のうちの2以上の出力信号が異常であると判定した場合には、電気角θeを演算できないので、回転角演算装置20は、モータコントローラ30にモータ停止指令を出力するとともに、回転角演算処理を停止する。
【0072】
第1の電気角θe1の演算方法について説明する。回転角演算装置20は、まず、第1の出力信号V1(=sinθe)と第2の出力信号V2(=sin(θe+120°))とから、第1の出力信号V1に対する位相差が90°となる信号V12(=sin(θe+90°)=cosθe)を演算する。より具体的には、回転角演算装置20は、次式(3)に基づいて、信号V12を演算する。
【0073】
【数1】
【0074】
前記式(3)は、sin(θe+120°)を三角関数の加法定理により展開した式に基づいて、導出することができる。そして、回転角演算装置20は、前記信号V12(=cosθe)と第1の出力信号V1(=sinθe)とを用い、次式(4)に基づいて、第1の電気角θe1を演算する。
【0075】
【数2】
【0076】
第2の電気角θe2の演算方法について説明する。回転角演算装置20は、まず、第1の出力信号V1(=sinθe)と第3の出力信号V3(=sin(θe+240°))とから、第1の出力信号V1に対する位相差が90°となる信号V13(=sin(θe+90°)=cosθe)を生成する。より具体的には、回転角演算装置20は、次式(5)に基づいて、信号V13を生成する。
【0077】
【数3】
【0078】
前記式(5)は、前記式(3)と同様に、sin(θe+240°)を三角関数の加法定理により展開した式に基づいて、導出することができる。そして、回転角演算装置20は、前記信号V13(=cosθe)と第1の出力信号V1(=sinθe)とを用い、次式(6)に基づいて、第2の電気角θe2を演算する。
【0079】
【数4】
【0080】
第3の電気角θe3の演算方法について説明する。回転角演算装置20は、まず、第2の出力信号V2と第3の出力信号V3とに基づいて、ロータ1の回転角(電気角)θeに対して120°だけ進んだ電気角θe3’(=θe+120°)を演算する。そして、得られた回転角θe3’から120°を減算することにより、第3の電気角θe3を演算する。
【0081】
回転角演算装置20は、第2の出力信号V2(=sin(θe+120°))と第3の出力信号V3(=sin(θe+240°))とから、第2の出力信号V2に対する位相差が90°となる信号V23(=sin(θe+120°+90°))を生成する。
θe’=θe+120°として、出力信号V2を正弦波信号sinθe’で表し、出力信号V3を、この正弦波信号sinθe’に対して位相差が120°進んだ正弦波信号sin(θ’+120°)で表すと、前記第1の電気角θe1の演算方法と同様に、正弦波信号sinθe’に対して位相差が90°となる信号V23(=sin(θe’+90°)=cosθe’)を求めることができる。
【0082】
具体的には、回転角演算装置20は、次式(7)に基づいて、信号V23を生成する。
【0083】
【数5】
【0084】
次に、回転角演算装置20は、前記信号V23(=cosθe’)と第2の出力信号V2(=sinθe’=sin(θe+120°))とを用い、次式(8)に基づいて、回転角θe3’を演算する。
【0085】
【数6】
【0086】
そして、回転角演算装置20は、次式(9)に基づいて、第3の電気角θe3を演算する。
θe3=θe3’−120° …(9)
前記ステップS5で電気角θeが演算されると、回転角演算装置20は、第1の出力信号V1が異常(固着異常)であると判定されたか否かを判別する(ステップS6)。第1の出力信号V1が異常であると判定されていない場合には(ステップS6:NO)、回転角演算装置20は、第1の相対的極番号p1の値を、相対的機械角θmの演算に用いられる機械角演算用極番号pとして設定する(ステップS7)。機械角演算用極番号pは、第1の磁気センサ21が感知している磁極の相対的極番号を表すものである。第1の出力信号V1が正常である場合には、第1の相対的極番号p1は第1の磁気センサ1が感知している磁極の相対的極番号を正しく表していると考えられるので、第1の相対的極番号pの値が機械角演算用極番号pとして設定される。そして、ステップS11に移行する。
【0087】
一方、第1の出力信号V1が異常であると判定されている場合には(ステップS6:YES)、第1の相対的極番号p1は信頼できないので、回転角演算装置20は、機械角演算用極番号pを第2の相対的極番号p2に基づいて演算する。具体的には、回転角演算装置20は、第1の磁気センサ21が感知している磁極と、第2の磁気センサ22が感知している磁極とが同じであるか異なるかを判定する(ステップS8)。より具体的には、前記ステップS5で演算された電気角θeが、60°<θe≦180°または240°≦θe<360°の範囲内であるか否かを判定する。図6(a)(b)において、領域S1および領域S3では、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが同じである。一方、領域S2および領域S4では、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが異なる。
【0088】
領域S2は、電気角θeが60°<θe≦180°の範囲にある領域であり、領域S4は、電気角θeが240°≦θe<360°の範囲にある領域である。したがって、電気角θeが、60°<θe≦180°または240°≦θe<360°の範囲内である場合には(ステップS8:YES)、回転角演算装置20は、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが異なると判定する。そこで、この場合には、回転角演算装置20は、第2の相対的番号p2より1だけ小さい値を機械角演算用極番号pとして設定する(ステップS9)。そして、ステップS11に移行する。
【0089】
一方、前記ステップS8において、電気角θeが、60°<θe≦180°の範囲内でなく、かつ240°≦θe<360°の範囲内でもないと判別された場合には(ステップS8:NO)、回転角演算装置20は、第1の磁気センサ21が感知している磁極と第2の磁気センサ22が感知している磁極とが同じであると判定する。したがって、この場合には、回転角演算装置20は、第2の相対的番号p2の値を機械角演算用極番号pとして設定する(ステップS10)。そして、ステップS11に移行する。
【0090】
ステップS11では、回転角演算装置20は、前記ステップS5で演算された電気角θeと機械角演算用極番号pとを用い、次式(10)に基づいて、相対的機械角θmを演算する。そして、前記ステップS5で演算された電気角θeと、ステップS11で演算された、相対的機械角θmとをモータコントローラ30に与える。
θm=θe+n×360° …(10)
ただし、p=0または1の場合、n=0、
p=2または3の場合、n=1、
p=4または5の場合、n=2、
p=6または7の場合、n=3、
p=8または9の場合、n=4である。
【0091】
ステップS11の処理が終了すると、今演算周期での処理を終了する。
前記実施形態によれば、回転角演算装置20は、所定の演算周期毎に、電気角θeと相対的機械角θmとを演算して、モータコントローラ30に与えることができる。3つの磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3のうちの1つに固着異常が発生したとしても、回転角演算装置20は、正確な電気角θeを演算することができる。また、3つの磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3の1つに固着異常が発生したとしても、回転角演算装置20は、3つの磁気センサ21,22,23のうちの少なくとも1つの磁気センサが感知している磁極の移り変わりを正確に検出することができる。これにより、正確な相対的機械角θmを演算することができる。
【0092】
以上、この発明の第1〜第3の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、各磁気センサ21,22,23の出力信号V1,V2,V3の位相差は電気角で120°であるが、各出力信号のゼロクロス付近での他の2つの出力信号の変化率が比較的大きくなるような位相差であれば、120°以外の角度であってもよい。具体的には、出力信号V1,V2,V3の位相差は、電気角で20°〜35°の範囲内、55°〜70°の範囲内、110°〜125°の範囲内または145°〜160°の範囲内の角度であってもよい。
【0093】
また、前記実施形態では、ロータ1には、5組の磁極対が設けられているが、5組より少ない数または多い数の磁極対が設けられていてもよい。
また、前記実施形態では、第1の磁気センサ21が感知している相対的極番号p1と、第2の磁気センサ22が感知している相対的極番号p2とが設定されるとともに、更新されているが、第1の磁気センサ21が感知している相対的極番号p1と、第3の磁気センサ23が感知している相対的極番号p3とを設定するとともに、更新するようにしてもよい。さらに、第1の磁気センサ21が感知している相対的極番号p1と、第2の磁気センサ22が感知している相対的極番号p2と、第3の磁気センサ23が感知している相対的極番号p3とを設定するとともに更新するようにしてもよい。
【0094】
また、磁極の移り変わりの判別対象であるセンサ信号が故障した瞬間、たとえば、センサ信号が0より小さいときに、+1に固着するような故障が発生したときには、そのセンサ信号の前回値と今回値との差の絶対値は異常に大きくなる。この異常状態を考慮せずに、互いの差の絶対値が異常に大きい前回値および今回値を使用して、前記磁極の移り変わり判定を行うと、誤判定を生じるおそれがある。そこで、磁極の移り変わりの判定対象であるセンサ信号の前回値と今回値との差の絶対値を所定のしきい値と比較し、前記差の絶対値が前記所定のしきい値より大きい場合には、当該信号に異常が発生していると判別し、その信号を磁極の移り変わり判定に使用しないようにしてもよい。
【0095】
また、この発明は、ブラシレスモータのロータ以外の回転体の回転角を検出する場合にも、適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…検出用ロータ、21,22,23…磁気センサ、10…ブラシレスモータ、20…回転角演算装置、M0〜M9…磁極
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