特許第5717013号(P5717013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717013
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】交流電位治療器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/10 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   A61N1/10
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-144238(P2013-144238)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-16061(P2015-16061A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2013年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】513057706
【氏名又は名称】ヘルスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098198
【弁理士】
【氏名又は名称】旦 武尚
(72)【発明者】
【氏名】北島 広志
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−284535(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3006744(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3015674(JP,U)
【文献】 特開平4−190680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
H02M 7/44 ― 7/5395
H03F 3/217
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流高電圧を生体に印加して治療を実行する電位治療器において、周波数が60〜200Hz程度の正弦低周波電圧から、位相が互いに180°異なる2系統の正弦半波信号を得ると共に、これら各半波信号で各別にパルス幅変調した2系統の幅変調済高周波パルスにより、前記信号電圧よりも充分高い電圧の直流電源に接続した2個のスイッチング素子を各別にスイッチング制御することで、位相が互いに180°異なる2系統の幅変調済増幅パルス出力を得た後、これら各パルス出力の復調時にチョークコイルに生じる自己誘導電流をコイル出力側からコイル入力側に戻せるダイオードとコンデンサとを有する2系統の復調回路により、前記各パルス出力を各別に復調することで、位相が互いに180°異なる2系統の復調済正弦半波出力を得る一方、前記各コイルの出力側と接地間には、それぞれ直列2個の導通制御素子を1列ずつ接続して導通制御回路を構成し、この回路における1列目のコイル側導通制御素子と2列目の接地側導通制御素子、および2列目のコイル側導通制御素子と1列目の接地側導通制御素子を、それぞれ前記各半波出力に同期させて交互に導通制御することで、前記各列の導通制御素子の相互接続部間に接続した昇圧トランスの1次コイルの電流方向を半波毎に反転させ、前記トランス2次コイルに発生した高圧正弦波交流を正電圧ブリーダ回路により、正電圧と負電圧との波高値比率が1対3の生体印加交流となした交流電位治療器。
【請求項2】
交流高電圧を生体に印加して治療を実行する電位治療器において、周波数が60〜20
0Hz程度の正弦低周波電圧から、位相が互いに180°異なる2系統の正弦半波信号を
得ると共に、これら各半波信号で各別にパルス幅変調した2系統の幅変調済高周波パルス
により、前記信号電圧よりも充分高い電圧の直流電源に接続した2個のスイッチング素子
を各別にスイッチング制御することで、位相が互いに180°異なる2系統の幅変調済増
幅パルス出力を得た後、これら各パルス出力の復調回路として、前記各素子の出力側に接
続したチョークコイルと、これら各コイルの復調出力側に接続した1端接地のコンデンサ
と、前記各素子の出力側に接続したアノード接地のフリー・ホィーリング・ダイオードと
を有する2系統の復調回路により、前記各パルス出力を各別に復調することで、位相が互
いに180°異なる2系統の復調済正弦半波出力を得る一方、前記各コイルの出力側と接
地間には、それぞれ直列2個の導通制御素子を1列ずつ接続して導通制御回路を構成し、
この回路における1列目のコイル側導通制御素子と2列目の接地側導通制御素子、および
2列目のコイル側導通制御素子と1列目の接地側導通制御素子を、それぞれ前記各半波出
力に同期させて交互に導通制御することで、前記各列の導通制御素子の相互接続部間に接
続した昇圧トランスの1次コイルの電流方向を半波毎に反転させ、前記トランス2次コイ
ルに発生した高圧正弦波交流を正電圧ブリーダ回路により、正電圧と負電圧との波高値比
率が1対3の生体印加交流となした交流電位治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電位治療器に係り、特に昇圧トランスに入力する正弦波交流の発生手段の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の交流電位治療器としては、例えば特許第2609574号公報(特許文献1)に記載のような商用交流昇圧トランスの2次コイルに設けた正電圧ブリーダ回路により、生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率を1対3に設定した交流電位治療器が周知であるし、実開昭61−118346号公報(特許文献2)・特開2006−239032号公報(特許文献3)のような、矩形波発振回路の増幅出力を昇圧トランスの1次コイルに供給し、このトランスの高圧2次コイルにダイオードと抵抗を接続して矩形波高電圧を得る電位治療器が周知である。
【0003】
前記特許文献1(特許第2609574号公報)は、交流高電圧を生体に印加して治療を実行する際に、交流正電圧と負電圧との波高値比率を1対3に設定した交流電位治療器であり、健康な人体内におけるイオンの理想的な存在比率に等しい割合で生体に交流電位を印加できるが、この特許文献1は、その段落0009における唯一の実施例記載のように、商用電源による交流を昇圧トランスの入力としているので、生体印加交流としても、我が国では50Hzまたは60Hz限定となる。
【0004】
近年、国内において、上記特許文献1の交流電位治療器による電位治療を実行している多数患者の中には、富士川と糸魚川を境として西の60Hz地域における複数患者から、「東の50Hz地域での電位治療よりも、こちらの方が治療効果の有効性と速効性に優れているようだ」という声がチラホラ聞こえつつ有るし、50Hz地域の複数患者のなかには、「今一つ物足りない」という声も多少出始めている。
【0005】
一方、前記実開昭61−118346号公報および特開2006−239032号公報(特許文献2・3)は、共に発振回路を有する電位治療器だから、生体印加交流は商用電源周波数に限定されない反面、これら各文献は、それぞれ唯一の実施例記載のように、矩形波発振回路で得た矩形波信号をそのまま出力増幅して昇圧トランスの1次コイルに入力し、その2次コイルに生じた矩形波の高圧出力電圧からこれら各公報第2図のような矩形波に近い波形の生体印加交流電圧を得ている。
【0006】
したがって、これら各文献2・3における矩形波出力増幅回路にB級ブッシュプル増幅回路を用いたとしても、効率が最大で50%以下の低効率であるという本質的な問題点が有るし、各文献2・3の入・出力は、共に矩形波電圧だから、商用電源に対応した心材と捲線で作った現用一般安価な昇圧トランスを用いると、トランスに無用な唸り音が生じ易いし、トランスが過熱し易いという本質的な大きい問題点が有る。
【0007】
さらに、上記各特許文献2・3の高圧矩形波出力による生体印加交流には、有害無用なリンギングとか、オーバーシュートやプリシュートが生じ易いので、滑らかに変化する正弦波を用いた生体印加交流による電位治療に比して、これら各特許文献2・3は、電位治療後に湯当たりのような不快感が残り易いし、電位治療効果の有効性と速効性に乏しく、生体拒否反応も生じるという根源的で切実な問題点が有る。
【0008】
各特許文献1〜3による従来例の他に、特開2009−279024号公報(特許文献4)のように、スイッチングインバータにより高周波成分を含む交流波形を生成し、この交流出力をフィルタ回路を経て昇圧トランスの1次コイルに交互に供給するとした電位治療器とか、特開2011−24859号公報(特許文献5)のように、2系統の高周波パルスを2個の昇圧用パルストランスに各別入力し、各パルストランスの高圧2次コイルにそれぞれダイオードと平滑コンデンサと電極とを接続した電位治療器も周知である。
【0009】
前記特開2009−279024号公報(特許文献4)は、出願人が直接出願の公開特許公報であり、周知事項や願望事項を手書き漫画図面と共に、断片的に羅列しているだけで、この文献4の意図するところは、結局、その段落0011の記載から、昇圧トランスの1次コイルに加える交流出力回路として、パルス幅変調による現用一般のD級オーディオアンプを用いた電位治療器であると読み取れるが、肝心な具体回路に関する記載が一切無いから、これでは、当業者がこの特開2009−279024号公報を見ても、上記電位治療器を作れず、実施できないという本質的な大きい問題点が有る。
【0010】
D級オーディオアンプには、直列2個のパワーMOS・FETやバイポーラトランジスタ等の導通制御素子を2列用いたフルブリッジ回路構成のアンプと、直列2個の導通制御素子を1列だけ用いたハーフブリッジ回路構成のアンプが存在し、上記ハーフブリッジ構成のD級オーディオアンプは、部品点数少なく安価に使用できるが、復調用チョークコイルの自己誘導電流等による「バス・ポンピング」(Bass・Pumping)現象に起因する電源電圧変動が大きいという根源的で切実な問題点が有り、上記フルブリッジ回路構成のD級オーディオアンプは、上記問題点は軽減できるが、使用部品点数がハーフブリッジ構成の2倍要するという互いに相容れない根源的な問題点が有ることは、上記特許文献4には全く記載が無く、示唆すらも無いのである。
【0011】
すなわち、ハーフブリッジ構成のD級オーディオアンプは、負荷(昇圧トランス)ドライブ時に、復調用チョークコイル出力側から流出しようとする自己誘導電流をコイル出力側から入力側に戻すことで、前記「バス・ポンピング」現象に起因する電源電圧変動を抑制するための通常、フリー・ホィーリング・ダイオード(Free・Wheelling・Diode)と称する高周波特性に優れたダイオードを音声その他の音響による低周波信号電流が流れるアンプ回路内に、この低周波信号に歪みを与えること無く接続できる箇所が無く、上記現象による電源電圧の変動を払拭できないという根源的で切実な問題点が有ることも、上記特許文献4には全く記載が無いのである。
【0012】
現用一般的なハーフブリッジ構成のD級オーディオアンプは、負荷(昇圧トランス)を200Hz以下の低域周波数でバスドライブ(Bass・Drive)する時には、前記「バス・ポンピング」現象による電源電圧の変動も大きくなり、その程度は、上記周波数が低い程・負荷インピーダンスが小さい程・バスコンデンサの値が小さい程・デューティ比が25%の時と75%の時に、それぞれ前記有害無用な「バス・ポンピング」現象による電源電圧の変動が増大し、電位治療器の動作が著しく不安定になることも、上記特許文献4には全く記載が無く、示唆すらも無い。
【0013】
ただし、寄生ダイオードを有するパワーMOS・FET等の直列2個の導通制御素子を2列用いた一般的なフルブリッジ回路構成のD級オーディオアンプでは、前記「バス・ポンピング」現象を上記寄生ダイオードにより、ある程度抑制できるが、上記寄生ダイオードは、前記フリー・ホィーリング・ダイオードと大きく異なり、高周波特性が悪く、逆回復時間が長いので、復調用チョークコイルの自己誘導電流をその復調出力側から入力側に確実には戻せず、特に負荷(昇圧トランス)を60〜200Hz程度の低域周波数でバスドライブする時は、前記段落0012で述べたように、「バス・ポンピング」現象による電源電圧の変動を完全には払拭できないという根源的な問題点と、寄生ダイオード作用を有するパワーMOS・FETは、一般に発熱が大で、厳重な放熱が必要であるという問題点とは、上記特許文献4には全く記載が無いのである。
【0014】
一方、特開2011−24859号公報(特許文献5)は、その段落0020と0022に記載のように、2系統の高周波スイッチングパルスをそれぞれ2個の昇圧用高周波パルストランスに各別入力し、一方のパルストランスの高圧2次コイルに接続したダイオードおよび抵抗と平滑コンデンサとの並列回路で正の高圧パルス電圧を得ると共に、他方のパルストランスの高圧2次コイルに接続したダイオードおよび抵抗と平滑コンデンサとの並列回路で負の高圧パルス電圧を得た後、これら各高圧パルス電圧を二つの電極にそれぞれ保護抵抗を経て各別供給する電位治療器である。
【0015】
したがって、この特許文献5は、単一電極では生体に対して高圧交流を印加できないという根源的な大きい問題点が有るし、滑らかに変化する正弦波を用いた生体印加交流による電位治療に比して、この特許文献5は、電位治療後に湯当たりのような不快感が残り易いという根源的で切実な問題点が有る。
【0016】
また、上記特許文献5では、単一電極の電位治療器に比して、パルス昇圧トランスを初めとして、その高圧2次コイルに接続したダイオード・平滑コンデンサとか、生体保護用ハイメグ抵抗や電極などの高価な高圧用電気部品をそれぞれ2倍数ずつ必要とするので、特許文献5は、加工性悪く高価になるという本質的かつ大きい問題点が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第2609574号公報
【特許文献2】実開昭61−118346号公報
【特許文献3】特開2006−239032号公報
【特許文献4】特開2009−279024号公報
【特許文献5】特開2011−24859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、位相が互いに180°異なる2系統の幅変調済増幅パルス出力の各復調済半波出力を半波毎に電流方向を反転させて昇圧トランスの1次コイルに交互に供給することで、トランス2次側から高圧の生体印加交流を得ることに有る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、交流高電圧を生体に印加して治療を実行する電位治療器を構成するに当たり、周波数が60〜200Hz程度の正弦低周波電圧から、位相が互いに180°異なる2系統の正弦半波信号を得ると共に、これら各半波信号で各別にパルス幅変調した2系統の幅変調済増幅パルス出力により、前記信号電圧よりも充分高い電圧の直流電源に接続した2個のスイッチング素子を各別にスイッチング制御することで、位相が互いに180°異なる2系統の幅変調済増幅パルス出力を得た後、これら各パルス出力の復調時にチョークコイルに生じる自己誘導電流をコイル出力側からコイル入力側に戻せるダイオードとコンデンサとを有する2系統の復調回路により、前記各パルス出力を各別に復調することで、位相が互いに180°異なる2系統の復調済正弦半波出力を取り出せる。
【0020】
一方、前記各コイルの出力側と接地間には、それぞれ直列2個の導通制御素子を1列ずつ接続し、1列目のコイル側導通制御素子と2列目の接地側導通制御素子、および2列目のコイル側導通制御素子と1列目の接地側導通制御素子を、それぞれ前記各半波出力に同期させて交互に導通制御することで、前記各列の導通制御素子の相互接続部間に接続した昇圧トランスの1次コイルの電流方向を半波毎に反転させ、前記トランス2次コイルに発生した高圧正弦波交流を正電圧ブリーダ回路により、正電圧と負電圧との波高値比率が1対3の生体印加交流となしたことで達成できた。
【0021】
ただし、前記各幅変調済増幅パルス出力の復調回路として、前記スイッチング素子の出
力側に接続したチョークコイルと、これら各コイルの復調出力側に接続した1端接地のコ
ンデンサと、前記各素子の出力側に接続したアノード接地のフリー・ホィーリング・ダイ
オードとを有する2系統の復調回路を用いて前記幅変調済増幅パルス出力を各別に復調す
ることで、前記コイルの復調出力側から位相が互いに180°異なる2系統の復調済正弦
半波出力を得てもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、周波数が60〜200Hz程度の正弦低周波電圧から得た正弦半波信号で、100KHz程度の高周波パルスを幅変調して幅変調済高周波パルスを得る一方、前記電圧よりも充分高い電圧の直流電源に接続したスイッチング素子を前記幅変調済高周波パルスでスイッチング制御することで、効率約90%以上の高い効率で前記素子の出力側から幅変調済増幅パルス出力を取り出せる。
【0023】
上記各パルス出力の復調回路として本発明では、前記各素子のスイッチング動作時にお
ける素子のオフ期間に復調用チョークコイルに生じる自己誘導電流を、コイル出力側から
コイル入力側に戻せるダイオードとコンデンサとを有する2系統の復調回路、具体的には
、前記各スイッチング素子の出力側に接続したチョークコイルと、その復調出力側に接続
した1端接地のコンデンサと、前記素子の出力側に接続したアノード接地のダイオードと
を有する2系統の復調回路を用いたので、復調動作中コイルの復調出力側から交互に流出
しようとする各コイルの自己誘導電流を、このコイルに並列の上記コンデンサとフリー・
ホィーリング・ダイオードとの直列回路を経て、チョークコイルの入力側に効率よく戻せ
るので、負荷(昇圧トランス)を60〜120Hz程度の低域周波数でバスドライブする
時にも、有害無用な前記バス・ポンピング現象を阻止でき、この現象による電源電圧の変
動を抑制し払拭できたという優れた効果が有る。
【0024】
すなわち、上記スイッチング素子の動作時における素子のオン期間には、チョークコイル入力の一部をこのコイルに蓄積しつつ出力側への供給を抑え、上記素子のスイッチング動作時におけるオフ期間には、コンデンサとダイオードとを経て上記コイルの自己誘導電流をコイルの出力側から入力側に確実に戻せるし、本発明に用いた前記復調回路は、高周波パルスの方形波の変化分、つまり交流成分を小さくする本来のローパスフィルターとしても当然に動作するので、負荷(昇圧トランス)を60〜120Hz程度の低域周波数でバスドライブする時にも、バス・ポンピング現象による電源電圧変動を、より一層確実に抑制できるという優れた効果が有る。
【0025】
また本発明は、前記チョークコイルの復調出力側と接地間に直列2個の導通制御素子を1列ずつ接続し、1列目のコイル側導通制御素子と2列目の接地側導通制御素子、および2列目のコイル側導通制御素子と1列目の接地側導通制御素子を、それぞれ前記各半波出力に同期させて交互に導通制御することで、前記各列のスイッチング素子の相互接続部間に接続した昇圧トランスの1次コイルに、電流方向が半波毎に反転した正弦波交流を供給できるので、全体的な効率が約90%以上の高い効率でトランス2次コイルから高圧正弦波交流を得ることができ、ランニングコストを著減できたという効果も有る。
【0026】
具体的には、昇圧トランスの1次コイルの電流方向を前記半波出力の半波毎に反転させて繰り返し供給することで、昇圧トランスの1次コイルに滑らかに変化する正弦波交流を供給でき、トランス2次コイルに10〜15キロボルト程度の高圧正弦波交流を発生させ得るから、周波数が前記60〜200Hz程度で滑らかに変化する高圧正弦波電圧を無理なく発生でき、健康な人体内におけるイオンの理想的な存在比率に等しい割合の正電圧と負電圧との波高値比率が1対3の生体印加交流を得て、これを生体に印加できるので、商用電源周波数に関係なく、何処でも常に治療効果の有効性と速効性とを大幅に促進でき、生体拒否反応も著減できるという優れた効果も有る。
【0027】
さらに、前記60〜200Hz程度の正弦低周波信号や低周波電圧の周波数範囲では、商用電源に対応して量産した安価な珪素鋼板をコア材とした現用一般の昇圧トランスや、低周波トランスをそのまま採用でき、オーディオ用のコア材を用いた高価なトランスが不要だから、本発明は、製造コストを削減できるという経済効果も有る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による交流電位治療器の一例を示す系統回路図
図2図1の回路における動作波形図
図3図1の回路における動作波形図
図4図1の回路における動作波形図
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明を実施するための形態例を図面と共に説明すると、本発明の交流電位治療器は、交流高電圧を生体に印加して治療を実行する電位治療器を構成するに当たり、先ず、図1に示す系統回路図のように、直流電源DCで動作するC・R発振回路・正帰還発振回路などの現用一般的な正弦低周波発生回路1から得た周波数が60〜200Hz程度、例えば70〜120Hz程度で振幅が10ボルト程度の正弦低周波信号を初段低周波トランスT1の1次コイルに入力する。
【0030】
上記トランスT1における中点接地の2次コイルの中間タップA・Bに生じた位相が互いに180°異なる2系統の等レベル正弦波電圧を同方向に接続したダイオードdで半波整流して図2のC・Dのような振幅が7ボルト程度で位相が互いに180°異なる2系統の正弦半波信号を得た後、これら各信号をそれぞれ現用一般のパルス幅変調回路2の各入力端C・Dに図1のように各別入力する。
【0031】
一方、周波数が100KHz程度の三角波発振器等の現用一般的な前記直流電源DCで動作する高周波パルス発生回路3から得た波高値が5ボルト程度の高周波パルスを前記各パルス幅変調回路2で、前記各正弦半波信号により各別にパルス幅変調することで、上記各変調回路2の出力側からそれぞれ図2のE・Fのような波高値が5ボルト程度で、ほぼ櫛歯状波形の位相が互いに180°異なる2系統の幅変調済高周波パルスを得る。
【0032】
次いで、図1のように直流電源DCから得た前記各正弦半波信号の電圧よりも充分高い、例えば130ボルト程度の直流電源+Vにドレインやコレクタを接続したパワーMOS・FETやバイポーラトランジスタ等の2個のスイッチング素子Sのゲートやベース等の各制御電極E・Fとソースやエミッタとの間に、パルストランスPTまたは現用一般的なゲートドライブIC(米国フェアーチャイルド社製のIC・FAN7382N等が有る)を経て、前記2系統の幅変調済高周波パルスを各別に入力し、上記各スイッチング素子Sを上記2系統の高周波パルスで各別にスイッチング制御することで、前記各素子Sのソース(エミッタ)等の各出力側G・Hから図2のG・Hのような波高値が130ボルト程度の位相が互いに180°異なる2系統の幅変調済増幅パルス出力を取り出す。
【0033】
そして、上記2系統のパルス出力をそれぞれ各別に復調するには、前記スイッチング素
子Sの各出力側G・H(ソースやエミッタ)に各別に接続した180μH程度のチョーク
コイルLと、これら各コイルの出力側I・Jにそれぞれ1端を各別接続して他端を接地し
た0.1μF程度のセラミックコンデンサCと、前記素子Sの各出力側G・Hにカソード
を接続したアノード接地のフリー・ホィーリング・ダイオードDとを有する2系統の復調
回路4により、前記2系統の幅変調済増幅パルス出力をそれぞれ各別に復調することで、
上記各コイルLの復調出力側I・Jから図3のI・Jのような波高値が130ボルト程度
の復調済正弦半波出力を取り出せる。
【0034】
この復調動作は、上記各素子Sのスイッチング動作時のオフ期間に各チョークコイルLの出力側I・Jから交互に流出しようとするコイルの自己誘導電流を、それぞれコンデンサCとダイオードDとの直列回路を各別交互に経て、上記オフ期間内に各コイルLの入力側に効率よく戻せる復調動作だから、負荷(昇圧トランス)を60〜200Hz程度の低域周波数でバスドライブする時にも、有害無用な「バス・ポンピング現象」は生ぜず、電源電圧の変動を確実に抑制払拭できたので、前記チョークコイルLの復調出力側I・Jからは、それぞれ図3のI・Jのように滑らかに変化し、位相が互いに180°異なる2系統の復調済正弦半波出力を90%以上の変換効率で取り出せる。
【0035】
一方、図1に示す前記低周波トランスT1の2次コイルの1端A1に生じた振幅が20ボルト程度の図3のA1のような正弦低周波信号を図1のように次段の低周波トランスT2の1次コイルに入力すると共に、その2次コイルに生じた正弦波交流をダイオードdで半波整流して図3のA2のよう振幅が20ボルト程度の正弦半波信号を作った後、この半波信号を抵抗RとツェナーダイオードZDとで構成した現用一般のスライス回路5や、コンパレータ等を用いた現用一般の矩形波整形回路により、図3のA3のようなほぼ矩形波状で前記正弦半波信号に同期した振幅が5ボルト程度の第1のオン信号を作る。
【0036】
また、前記図3のA1の正弦低周波信号と同電圧で、位相が180°異なる図3のB1のような正弦低周波信号を前記トランスT1の2次コイルの他端B1から得て、この信号を前記のように半波整流して図3のB2のような正弦半波信号を作った後、この信号を前記と同様にほぼ矩形波状に整形し、前記第1のオン信号に対し位相が180°異なる図3のB3のような振幅が5ボルト程度で矩形波状の第2のオン信号を作る。
【0037】
また、図1における前記2個のチョークコイルLの各復調出力側I・Jと接地間には、それぞれ図1のように、パワーMOS・FETやバイポーラトランジスタ等を用いた直列2個の導通制御素子を1列ずつ接続して導通制御回路6を構成し、この回路における1列目のコイル側素子Q1のゲートやベース等の制御電極とソースやエミッタとの間に前記図3のA3のようなほぼ矩形波状の第1のオン信号を印加すると共に、2列目の接地側素子Q4の制御電極と接地間には、前記低周波トランスT1の2次コイルの1端B1に生じた図3のB1のような振幅が20ボルト程度の正弦半波信号自体を前記と同様に矩形波状に整形した図3のA3のような振幅が5ボルト程度の第1のオン信号を印加することで、上記コイル側素子Q1と接地側導素子Q4との導通をそれぞれ同期制御する。
【0038】
次いで、図1における2列目のコイル側素子Q3の制御電極とソースやエミッタとの間、および1列目の接地側素子Q2の制御電極と接地間に、それぞれ前記のように整形した矩形波状の図3のB3のような第2のオン信号を印加し、上記コイル側素子Q3と接地側導素子Q2との導通をそれぞれ同期制御することで、前記直列2個の導通制御素子の各相互接続部K・L間に接続した昇圧トランスTの1次コイルt1に、図4のK・Lのような波高値が130ボルト程度で、電流方向が半波毎に反転する2系統の正弦半波出力を交互に供給できる。
【0039】
その結果、昇圧トランスTの1次コイルt1に対し供給する上記2系統の正弦半波出力は、電流方向が半波毎に反転する正弦半波出力だから、この1次コイルt1には正弦波交流を供給できる結果となり、トランス2次コイルt2に図4のMのように滑らかに変化する10〜15キロボルト程度の高圧正弦波交流を発生させ得る。
【0040】
具体的には、前記1列目の導通制御素子Q1・Q2の相互接続部Kに生じた図4のKのような正弦半波出力は、トランス1次コイルt1・相互接続部Lおよびオン状態の2列目の接地側導通制御素子Q4のドレイン・ソースを順次に経て接地側に流れ,上記接続部Kから接続部Lに向けて図4のKのような正弦半波出力を供給できる。
【0041】
その直後、今度は、前記2列目の導通制御素子Q3・Q4の相互接続部Lに生じた図4のLのような正弦半波出力は、トランス1次コイルt1・相互接続部Kおよびオン状態の1列目の接地側導通制御素子Q2のドレイン・ソースを順次に経て接地側に流れる結果となり、トランス1次コイルt1には前記とは逆向きの半波出力を供給でき、これら各正弦半波出力の交互反転供給動作を順次に繰り返すことで、昇圧トランスTの1次コイルt1には正弦波交流を継続供給でき、トランス2次コイルt2に図4のMのように、滑らかに変化する10〜15キロボルト程度の高圧正弦波交流を発生させ得る。
【0042】
上記昇圧トランスTにおける2次コイルt2の1端は、アース取りハイメグ抵抗R0を経て前記直流電源DCにおける現用一般の接地ラインに接続すると共に、上記2次コイルt2の両端間には、5〜10MΩ・10W程度の大型ハイメグ抵抗R1とダイオードd1 との並列回路と、この並列回路と直列のハイメグ抵抗R2とダイオードd2 とを用いた正電圧ブリーダ回路7を接続すると共に、上記抵抗R1と抵抗R2との抵抗値比率を2対1に設定することで、両者の相互接続部Nに図4のNのように生じた正電圧と負電圧との波高値比率が1対3の生体印加交流を大地と生体に対して絶縁配置した導電マットmに電流制限ハイメグ抵抗R3を経て供給できる。
【0043】
したがって、本発明による上記生体印加交流は、周波数が60〜200Hz程度で滑らかに変化する正弦波を用いた生体印加交流だから、生体拒否反応の発生を防止できると共に、健康な人体内におけるイオンの理想的な存在比率に等しい割合の正電圧と負電圧とのに、健康な人体内におけるイオンの理想的な存在比率に等しい割合の正電圧と負電圧との波高値比率が1対3の生体印加交流を前記導電マットm等を経て生体に印加できるので、商用電源周波数に関係なく、何処でも常時、滑らかに変化する生体印加交流で、交流電位治療が可能となった結果、治療効果の有効性と速効性とが大幅に促進できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明による交流電位治療器は、前記導電マットmを用いる代わりに、生体患部に対して通電導子等により接触加電する交流電位治療器としても、当然に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1…正弦低周波発生回路 L…チョークコイル
2…パルス幅変調回路 C…コンデンサ
3…高周波パルス発生回路 D…フリー・ホィーリング・ダイオード
4…復調回路 ZD…ツェナーダイオード
5…スライス回路 d・d1 ・d2 …ダイオード
6…導通制御回路 S…スイッチング素子
7…正電圧ブリーダ回路 Q1〜Q4…導通制御素子
T1・T2…低周波トランス R1〜R3・R0…ハイメグ抵抗
PT…パルストランス R…直列抵抗
T…昇圧トランス m…導電マット
t1…昇圧トランスの1次コイル DC…直流電源
t2…昇圧トランスの2次コイル
図1
図2
図3
図4