【実施例1】
【0011】
〔血流計測装置及び脳活動計測装置の構成〕
図1は本発明による血流計測装置及び脳活動計測装置の一実施例の概略構成を模式的に示す図である。
図1に示されるように、脳活動計測システム10は、脳活動計測装置20と、コントロールユニット30とを有する。
【0012】
脳活動計測装置20は、被験者の頭部に装着される装着具22と、当該装着具22の外側のベース23にマトリックス状に配された複数の表示ユニット(表示手段)24(24
1〜24
n)とを有する。さらに、装着具22は、帽子のような半球形状に形成されており、ベース23の内側には血流計測装置を構成する複数のセンサユニット(
図1では隠れて見えない)が表示ユニット24(24
1〜24
n)と同様にマトリックス状に設けられている。
【0013】
コントロールユニット30は、制御装置40と、メモリ42と、無線通信装置50と、充電式のバッテリ60とを有する。制御装置40は、被験者の脳の活動に伴う脳の各領域における血流及び脳波を計測し、この計測データ(計測値)をメモリ42に格納すると共に、計測データに基づいて各領域の計測ポイントにおける活動レベルを判定し、判定結果から各計測ポイントに対応する各表示ユニット24(24
1〜24
n)の表示色及び点滅速度を制御する。
【0014】
また、制御装置40は、脳活動計測装置20により計測された各計測ポイントの血流計測データを無線通信装置50より外部ユニット70に送信する。外部ユニット70は、データベース80と、無線通信装置90とを有する。コントロールユニット30から送信された計測データは、外部ユニット70の無線通信装置90に受信され、データベース80に格納される。また、データベース80においては、計測データに添付された各計測ポイントを識別するためのアドレスコード及び計測日時を示すタイムデータに基づいて各血流計測データを時系列の順に格納する。
【0015】
図2はセンサユニット及び表示ユニットの取付構造を部分的示す縦断面図である。
図2に示されるように、装着具22のベース23は、絶縁材により半球形状に形成されており、その外周面には複数の表示ユニット24(24
1〜24
n)が所定間隔ごとに決められた表示ポイントP1〜Pnに配されている。
【0016】
また、装着具22のベース23の内側には、複数のセンサユニット100(100
1〜100
n)が所定間隔ごとに決められた計測ポイントP1'〜Pn'に配されている。各センサユニット100(100
1〜100
n)は、夫々外側に配された各表示ユニット24(24
1〜24
n)の位置と同じ位置となるように設けられており、各表示ユニット24(24
1〜24
n)の下方に配置されている。すなわち、各センサユニット100(100
1〜100
n)の計測ポイントP1'〜Pn'は、各表示ユニット24(24
1〜24
n)の表示ポイントP1〜Pnの位置と対応している。
【0017】
また、各センサユニット100(100
1〜100
n)は、下側端部に形成されたセンサ面が被験者の頭部表面110に接触するようにベース23に保持されている。ベース23は、樹脂等の絶縁材により形成されており、その内側及び外側の各表面には、各センサユニット100(100
1〜100
n)、各表示ユニット24(24
1〜24
n)に接続された回路パターンを有するフレキシブル配線板120、130が形成される。
【0018】
図3は複数のセンサユニット及び複数の表示ユニットと制御装置との接続関係を示すブロック図である。
図3に示されるように、制御装置40は、複数のセンサユニット100(100
1〜100
n)及び複数の表示ユニット24(24
1〜24
n)とベース23の内側、外側に形成されたフレキシブル配線板120、130の回路パターン122、132及びケーブル26、27を介して接続されている。
【0019】
各センサユニット100(100
1〜100
n)は、発光部220と、受光部230と、脳波計測用電極250と、センサ制御部170とを有する。センサ制御部170は、制御装置40からの制御信号を受信することにより各計測ポイントでの血流及び脳波を計測すると共に、計測値を制御装置40に送信する。
【0020】
各表示ユニット24(24
1〜24
n)は、半球形状の透明ケース25内に赤色発光部180と、緑色発光部190と、青色発光部200と、発光制御部210とを有する。赤色発光部180は、例えば、赤色発光ダイオードからなる。また、緑色発光部190は、例えば、緑色発光ダイオードからなる。青色発光部200は、例えば、青色発光ダイオードからなる。発光制御部210は、制御装置40から送信された発光指示データ(アドレスコード、表示色データ、点滅速度など)に基づいて赤色発光部180、緑色発光部190、青色発光部200を適宜発光させると共に、赤色発光部180、緑色発光部190、青色発光部200を指示された点滅速度で点滅させる。
【0021】
制御装置40は、各センサユニット100(100
1〜100
n)のセンサ制御部170と、各表示ユニット24(24
1〜24
n)の発光制御部210と通信可能に接続されており、各計測ポイントのアドレス順に計測指示コード(アドレスコード、血流計測コード、脳波計測コードなど)を送信すると共に、各計測ポイントP1'〜Pn'からの計測データ(血流値、脳波の計測値)を受信すると、計測データに基づいて脳活性度を判定して当該計測ポイントP1'〜Pn'に対応する表示ポイントP1〜Pnに対して表示指示コード(アドレスコード、表示色、点滅速度を指示する表示コード)を送信する。
【0022】
尚、制御装置40とセンサ制御部170、発光制御部210との間に上記コードを用いた通信システムを構築しても良いし、あるいは制御装置40と各センサユニット100(100
1〜100
n)及び各表示ユニット24(24
1〜24
n)との間を微細な配線によって個別に並列接続する方式を用いることも可能である。
〔センサユニット100及び表示ユニット24の取付構造〕
図4はセンサユニット100及び表示ユニット24の取付構造を拡大して示す図である。尚、
図4においては、多数配置されたセンサユニット100
1〜100
nのうちセンサユニット100
1、100
2、100
3が取り付けられた状態を示している。
図4に示されるように、各センサユニット100
1、100
2、100
3は、可撓性を有する半球形状のベース23の取付孔28に挿入され、接着剤などにより固定される。従って、各センサユニット100
1、100
2、100
3は、ベース23の取付孔28に固定されることで先端のセンサ面が被験者の頭部表面110に接触するように保持される。各センサユニット100
1、100
2、100
3は、夫々が同一構成であり、同一箇所に同一符号を付す。
【0023】
各センサユニット100(100
1〜100
n)は、頭部表面110にレーザ光(出射光)Aを照射するレーザダイオードからなる発光部220と、受光した透過光量に応じた電気信号を出力する受光素子からなる受光部230と、発光部220から被計測領域に向けて照射されたレーザ光Aに対する屈折率と、被計測領域を通過して入射され受光部230に進む入射光B、Cの屈折率とが異なるように構成されたホログラムからなる光路分離部材240とを有する。
【0024】
また、光路分離部材240の外周には、脳波を計測するための脳波計測用電極250が嵌合しており、脳波計測用電極250は円筒形状に形成され、光路分離部材240の先端面から側面に形成されている。脳波計測用電極250の上端は、フレキシブル配線板130の配線パターンに電気的に接続されている。
【0025】
発光部220及び受光部230は、上面側がフレキシブル配線板130の下面側に実装されている。フレキシブル配線板130には、制御装置40に接続される配線パターンが形成されており、配線パターンには各センサユニット100(100
1〜100
n)に対応する位置に発光部220及び受光部230の接続端子が半田付けなどによって電気的に接続されている。尚、フレキシブル配線板130は、各センサユニット100(100
1〜100
n)の先端が被計測領域に接触した際の頭部の形状に応じて撓むことができるので、装着または脱着操作を行なう際に断線が起きないように構成されている。
【0026】
脳波計測用電極250は、先端で内側に折り曲げられた接触子252が光路分離部材240の端面よりも突出している。そのため、光路分離部材240の端面が被計測領域に当接したとき、接触子252も当該被計測領域に接触して脳波計測が可能になる。また、脳波計測用電極250は、光路分離部材240の外周及び先端縁部に蒸着やめっき等の薄膜形成法により導電性膜を被覆する方法で形成することも可能である。さらに、脳波計測用電極250の材質として、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)と呼ばれる酸化インジウム錫による透明な導電性膜を光路分離部材240の外周及び先端縁部に形成することも可能である。この透明導電性膜で脳波計測用電極250を形成した場合には、脳波計測用電極250が透光性を有することになるため、光路分離部材240の外周及び先端面全体を脳波計測用電極250で覆うことが可能になる。
【0027】
また、通常では、脳の断層写真を撮影する等して血流の状態を計測しながら脳波を計測することはできないが、各センサユニット100(100
1〜100
n)に電極250を設けることにより、血流と脳波を同時に計測することが可能になり、脳内の血流と脳波との相関関係を詳しく分析することが可能になる。
【0028】
血流計測を行なう際、制御装置40は、多数配列されたセンサユニット100(100
1〜100
n)の中からアドレス順に任意のセンサユニット100を選択し、当該センサユニット100の発光部220からレーザ光Aを発光させる。このとき、発光部220から出射されるレーザ光は、酸素飽和度の影響を受けない波長λ1(λ1≒805nm)と、酸素飽和度の影響を受ける波長λ2(λ2≒680nm)が出力される。
【0029】
また、各センサユニット100(100
1〜100
n)は、先端(光路分離部材240の端面)が頭部の被計測領域に当接した状態に保持されている。センサユニット100
1の発光部220から出射されるレーザ光Aは、光路分離部材240を透過して頭部の頭皮に対して垂直方向から脳内部に向けて入射される。脳内部においては、レーザ光Aが脳中心部に向けて進行すると共に、レーザ光Aが入射位置を基点として周辺に向けて伝搬する。このレーザ光Aの脳内の光伝搬経路270は、側方からみると円弧状に形成され、頭部の血管280を通過して頭皮表面110に戻る。
【0030】
このように光伝搬経路270を通過した光は、血管280を流れる血液に含まれる赤血球の量または密度に応じた透過光量に変化しながら受光側のセンサユニット100
2、100
3に到達する。また、レーザ光Aは、脳内部を伝搬する過程で透過光量が徐々に低下するため、レーザ光Aが入射位置の基点から離れる程、距離に応じて受光部230の受光レベルが低下する。従って、レーザ光Aの入射位置からの離間距離よっても受光される透過光量が変化する。
【0031】
図4において、左端に位置するセンサユニット100
1を発光側基点とすると、そのセンサユニット100
1自身と、その右隣りのセンサユニット100
2と、さらに右隣りのセンサユニット100
3とは、受光側基点(計測ポイント)となる。
【0032】
光路分離部材240は、例えば、透明なアクリル樹脂の密度分布を変化させることで、レーザ光Aを直進させ、入射光B、Cを受光部230に導くように形成されている。また、光路分離部材240は、発光部220から出射されたレーザ光Aを基端側(
図4では上面側)から先端側(
図4では下面側)に透過させる出射側透過領域242と、脳内を伝搬した光を先端側(
図4では下面側)から基端側(
図4では上面側)に透過させる入射側透過領域244と、出射側透過領域242と入射側透過領域244との間に形成された屈折領域246とを有する。この屈折領域246は、レーザ光Aを透過させるが、血流を通過した光(入射光B、C)を反射させる性質を有する。屈折領域246は、例えば、アクリル樹脂の密度を変化させたり、この領域に金属薄膜を設けたり、金属の微粒子を分散させることにより形成される。これにより、光路分離部材240の先端から入射された光は全て受光部230に集光される。
〔血流計測方法〕
ここで、血流計測方法の原理について説明する。
図5は血流計測方法の原理を説明するための図である。
【0033】
図5に示されるように、外部から血液に対しレーザ光Aを照射すると、血液層290に入射したレーザ光Aは、通常の赤血球292による反射散乱光成分、及び付着血栓による反射散乱光成分の両成分の光として、血液中を透過して進行する。
【0034】
光が血液層を透過する過程において受ける影響は、血液の状態によって刻々と変化するため、透過光量(反射光量としてもよい)を連続的に計測し、その光量変化を観測することによりさまざまな血液の性質の変化を観察することが可能となる。
【0035】
脳の活動が活発になると、脳内での酸素消費量が増加するため、酸素を運搬する赤血球のヘマトクリット及び血液の酸素飽和度に起因する血流の状態が光量の変化となって現れる。
【0036】
ここで、ヘマトクリット(Hct:単位体積当たりの赤血球の体積比、即ち、単位体積当たりの赤血球の体積濃度を示す。Htとも表記する。)等の変化も同様にヘモグロビン密度の変化に関係する要因であり、光量変化に影響を及ぼす。本実施例における基本的な原理は、このようにレーザ光Aを用いた、血流による光路・透過光量の変化で血流の状態を計測し、さらには脳内の血流状態から脳活動状態を計測する点である。
【0037】
血液の光学的特性は、血球成分(特に赤血球の細胞内部のヘモグロビン)によって決定される。また、赤血球は、ヘモグロビンが酸素と結合しやすい性質を有しているので、脳細胞に酸素を運搬する役目も果たしている。そして、血液の酸素飽和度は、血液中のヘモグロビンの何%が酸素と結合しているかを表す数値である。また、酸素飽和度は動脈血液中の酸素分圧(PaO2)と相関があり、呼吸機能(ガス交換)の重要な指標である。
【0038】
酸素分圧が高ければ酸素飽和度も高くなることが分かっており、酸素飽和度が変動すると、血液を透過した光の透過光量も変動する。そのため、血流の計測を行なう際は、酸素飽和度の影響を除くことでより正確な計測が可能になる。
【0039】
また、酸素分圧(PaO2)に影響を与えている因子としては、肺胞換気量があり、さらには大気圧や吸入酸素濃度(FiO2)などの環境、換気/血流比やガス拡散能、短絡率などの肺胞でのガス交換がある。
【0040】
制御装置40は、上記センサユニット100の受光部230によって生成された透過光量(光強度)に応じた信号の処理を行なう演算手段を有する。この演算手段では、後述するようにセンサユニット100
2,100
3の受光部230から出力された計測値に基づいて血流状態を検出するための演算処理を行なう。
【0041】
発光部220のレーザ光Aは、所定時間間隔(例えば、10Hz〜1MHz)で間欠的に照射されるパルス光又は連続光として照射する。この場合、パルス光を用いる場合には、パルス光の点滅する周波数である点滅周波数を、血液流速に応じて決定し、連続的に又は該点滅周波数の2倍以上の計測サンプリング周波数で計測する。また、連続光を用いる場合には、計測サンプリング周波数を、血液流速に応じて決定して計測する。
【0042】
血液中のヘモグロビン(Hb)は、呼吸をすることにより肺で酸素と化学反応を生じてHbO2となり血液中に酸素を取り込むこととなるが、呼吸の状態等により、血液に酸素を取り込んだ度合(酸素飽和度)が微妙に異なる。すなわち、血液に光を照射すると、この酸素飽和度によって光の吸収率が変化するという現象を発見し、この現象は上記レーザ光Aによる血流の計測において外乱要素となるため、酸素飽和度による影響を除去することにした。
【0043】
図6はレーザ光の波長と、血液の酸素飽和度を変えた場合の光の吸収状態の関係を示すグラフである。体内では赤血球に含まれるヘモグロビンは、酸素と結合した酸化ヘモグロビン(HbO2:グラフI)と酸化されていないヘモグロビン(Hb:グラフII)に分けられる。この2つの状態では、光に対する光吸収率が大きく異なる。例えば、酸素をたっぷりと含んだ血液は鮮血として色鮮やかである。一方、静脈血は酸素を手放しているのでどんよりと黒ずんでいる。これらの光吸収率の状態は、
図4のグラフI,IIに示すように広い光の波長領域で変化している。
【0044】
この
図6のグラフI,IIから特定の波長を選択することにより、生体内の酸素代謝などにより赤血球中のヘモグロビンの酸素飽和度が大きく変動しても、光吸収率が影響を受けないで血液に光を照射して血流を計測できることが分かる。
【0045】
赤血球中のヘモグロビンの酸素飽和度によらず、ある波長領域では光吸収率が小さくなっている。これにより、光が波長λによって血液層を通過しやすいか否かが決まることになる。従って、所定の波長領域(例えば、λ=800nm近辺から1300nm近辺)の光を用いれば、酸素飽和度の影響を小さく抑制して血流を計測することが可能となる。
【0046】
よって、レーザ光Aの波長領域は、ほぼ600nm近辺から1500nmを利用し、これにより、ヘモグロビン(Hb)の光吸収率が実用上十分低くかつ、この領域に等吸収点Xを含むため、2波長以上の計測点を活用し、計算上、等吸収点とみなせる。つまり、酸素飽和度の影響を受けない仕様とすることが可能となる。尚、それ以外の波長領域、例えば、λ=600nm未満では、光吸収率が高くなりS/Nが低下し、λ=1500nmをこえた波長では、受光部230の受光感度が十分でなく血液中の他の成分等の外乱が影響し精度のよい計測ができなくなる。
【0047】
このため、本実施例では、発光部220に波長可変半導体レーザからなる発光素子を用い、発光部220から発光されるレーザ光Aの波長を、グラフI,IIで等吸収点Xとなるλ1=805nm(第1の光)と、グラフIにおいて光吸収率が最も低い波長λ2=680nm(第2の光)の2種類に設定する。
【0048】
ここで、レーザ光Aが光伝搬経路270(
図4参照)を介して伝搬した光を受光する場合の透過光量に基づく赤血球濃度R,Rp,Rpwの検出方法について説明する。
【0049】
従来の計測方法で行なわれた1点1波長方式を用いた場合の赤血球濃度Rの演算式(式1)は、次式のように表せる。
R=log10(Iin/Iout)=f(Iin,L,Ht)…(式1)
(式1)の方法では、赤血球濃度が発光部120から出射されたレーザ光Aの入射透過光量Iinと、発光部220と受光部230との距離(光路長)Lと、前述したヘマトクリット(Ht)との関数になる。そのため、(式1)の方法で赤血球濃度を求める際は、3つの因子によって赤血球濃度が変動するため、赤血球濃度を正確に計測することが難しい。
【0050】
本実施例による2点1波長方式を用いた場合の赤血球濃度Rpの演算式は、次式のように表せる。
Rp=log10{Iout/(Iout−ΔIout)}=Φ(ΔL,Ht)…(式2)
(式2)の方法では、
図4に示すようにレーザ光Aから距離の異なる2点(センサユニット100
2,100
3の各受光部230)で受光するため、赤血球濃度は2つの受光部230間距離ΔLと、前述したヘマトクリット(Ht)との関数になる。そのため、(式2)の方法で赤血球濃度を求める際は、2つの因子のうち受光部230間距離ΔLが予め分かっているので、赤血球濃度がヘマトクリット(Ht)を係数とした値として計測される。よって、この演算方法では、赤血球濃度をヘマトクリット(Ht)に応じた計測値として正確に計測することが可能になる。
【0051】
さらに、本実施例の変形例による2点2波長方式を用いた場合の赤血球濃度Rpwの演算式は、次式のように表せる。
Rpw
=[log10{Iout/(Iout−ΔIout)}λ1]/[log10{Iout/(Iout−ΔIout)}λ2]
=ξ(Ht)・・・(式3)
(3式)の方法では、発光部120から出射されるレーザ光Aの波長を異なるλ1,λ2(本実施例では、λ1=805nm、λ2=680nmに設定する)とすることで赤血球濃度をヘマトクリット(Ht)のみの関数として計測される。よって、この演算方法によれば、赤血球濃度をヘマトクリット(Ht)に応じた計測値として正確に計測することが可能になる。
〔脳の構造〕
ここで、被計測領域となる脳について説明する。
図7は脳を左側面から見た図である。
図7に示されるように、人間の脳300は、大脳301と、小脳302と、脳幹303とからなる。大脳301は、人体の運動機能をコントロールする中枢であり、大脳皮質が人体の各部(手、肘、肩、腰、膝、足首の各関節など)に対応して各運動野に分かれる。例えば、大脳300には、前頭前野330、前運動野340、運動野350、体性感覚野360、側頭葉370、後頭葉380、頭頂葉390等を有する。さらに、大脳300には、前頭葉眼球運動野332、ブローカ領域334、嗅覚領域336があり、前運動野340には、運動連合野342がある。
【0052】
また、小脳302は、左右の手足のバランスを取る領域である。
【0053】
前頭前野330は、知能、理性、人格、手足、言語をコントロールする領域である。前運動野340は、思考、行動の抑制、対話、意思決定、感情、記憶をコントロールする領域である。
【0054】
さらに、運動野350は、人体の手足の運動を行なうための領域であり、例えば、肩運動野352、肘運動野354を有する。そのため、肩運動野352、肘運動野354の血流を計測し、各領域の血流の変化をマッピング処理することにより肩や肘をどのように動かそうとしているかを検知することが可能になる。
【0055】
また、体性感覚野360は、皮膚からの感覚が伝達され、舌、顔、上肢、下肢をコントロールする領域である。側頭葉370は、言語、聴覚、味覚の中枢領域である。後頭葉380は、視覚情報を処理する領域である。頭頂葉390は、体の様々な部位からの感覚情報や数字による計算を処理する領域である。
【0056】
図8は脳の血流から脳活動を計測する場合の原理を説明するための図である。
図8に示されるように、脳300は、髄液400、頭蓋骨410、頭皮420によって覆われている。各センサユニット100は、光路分離部材240の先端面(センサ面)を頭皮420に接触させて血流の計測を行なう。センサユニット100
1の発光部220から出射されたレーザ光Aは、頭皮420、頭蓋骨410、髄液400を透過して脳300内部に進行する。そして、頭部に照射された光は、
図8中破線で示すような円弧状パターン440で放射方向(深さ方向及び半径方向)に伝搬する。
【0057】
この光の伝搬は、レーザ光が照射された基点450から半径方向に離間するほど光伝搬経路が長くなって光透過率が低下するため、発光側のセンサユニット100
1に所定距離離間して隣接されたセンサユニット100
2の受光レベル(透過光量)は強く、その次はその隣りに所定距離離間して設けられたセンサユニット100
3の受光レベル(透過光量)がセンサユニット100
2の受光レベルより弱く検出される。また、発光側のセンサユニット100
1の受光部230でも、脳300からの光を受光する。これらの複数のセンサユニット100
1〜100
nで受光された光強度に応じた検出信号をマッピング処理することで血流の変化に応じた光強度分布が縞模様の図形(等高線)として得られる。
【0058】
また、各センサユニット100から出力された検出信号(受光した透過光量に応じた信号)を前述した(式2)または(式3)のIoutとすることで赤血球濃度をヘマトクリット(Ht)に応じた計測値(酸素飽和度に影響されない値)として正確に計測することが可能になる。
【0059】
ここで、
図9を参照して脳活動計測装置10の制御装置40が実行する脳の血流計測処理について説明する。
図9に示されるように、制御装置40は、大脳皮質を各運動野毎のブロックに分けて血流計測処理を行なっており、例えば、前頭前野330、前運動野340、運動野350、体性感覚野360の各計測ブロックの血流計測処理を並列処理している。ここでは、例えば、運動野350の血流計測を行なって運動野350の活動状態をマッピング処理する場合について、以下説明する。
【0060】
先ず、制御装置40は、
図9のS11で多数配置されたセンサユニット100
1〜100
nから任意のセンサユニット100
1のアドレスコード(n=1)に発光コードを添付した計測指示コードを送信する。これにより、各センサユニット100
1のセンサ制御部170は、予め登録されたアドレスコードが添付された計測指示データのみを読み込み、計測指示された当該センサユニット100
1の発光部220からレーザ光を被計測領域(運動野350が収納された頭部領域)に照射させる。
【0061】
続いて、S12では、アドレスコードn=1に隣接するn=n+1のセンサユニット100
2の受光部230から出力された計測データ(受光した透過光量に対応する電気信号)をメモリ42に格納すると共に、無線通信装置50から外部ユニット70に送信する。外部ユニット70では、無線通信装置90から得られたn=n+1の計測データをデータベース80に格納する。
【0062】
次のS13では、アドレス番号n=n+1に隣接するn=n+2のセンサユニット100
3の受光部230から出力された計測データ(受光した透過光量に対応する電気信号)をメモリ42に格納すると共に、無線通信装置50から外部ユニット70に送信する。外部ユニット70では、無線通信装置90から得られたn=n+2の計測データをデータベース80に格納する。
【0063】
このように、レーザ光Aを発光したセンサユニット100
1を基点としてその周囲に配置された全てのセンサユニット100による計測データをメモリ42に格納すると共に、外部ユニット70のデータベース80に格納する。
【0064】
そして、S14では、次の発光点となるセンサユニット100のアドレスコードをn+1に変更する。次のS15では、全てのセンサユニット100
1〜100
nが発光したか否かをチェックする。S15において、全ての表示ユニット24が発光完了していないときは、上記n+1のセンサユニット100
2の発光部220からレーザ光Aを照射させてS11〜S15の処理を繰り返す。
【0065】
また、S15において、全てのセンサユニット100
1〜100
nが発光完了したときは、当該計測ブロックの血流計測処理を終了するか、あるいは当該計測ブロックに対する上記血流計測処理を最初から再度行なっても良い。
【0066】
ここで、制御装置40が実行する計測データ画像表示処理について
図10を参照して説明する。制御装置40は、
図10のS21で計測データ(血流に応じた透過光量によるデータ)をメモリ42から読み込む。続いて、S22に進み、計測データと前述した(式2)または(式3)を用いて赤血球濃度RpまたはRpwを演算する。
【0067】
次のS23では、各計測ポイント毎の赤血球濃度の分布図(等高線で示す線図)を作成し、この分布図の画像データをメモリ42に格納する。そして、S24に進み、全計測ポイントP1'〜Pn'についての赤血球濃度RpまたはRpwの演算が完了したか否かをチェックする。S24において、全計測ポイントP1'〜Pn'についての赤血球濃度RpまたはRpwの演算が完了していないときは、上記S21に戻り、S21以降の処理を繰り返す。
【0068】
また、S24において、全計測ポイントP1'〜Pn'についての赤血球濃度RpまたはRpwの演算が完了したときは、S25に進み、赤血球濃度の分布に応じて色表示マップを作成する。例えば、赤血球濃度に応じた閾値を4段階に設定し、各段階の濃度レベルに対応する色(例えば、赤血球濃度レベル1は青色表示、赤血球濃度レベル2は緑色表示、赤血球濃度レベル3は橙色表示、赤血球濃度レベル4は赤色表示)に表示するための色表示マップデータを作成する。尚、赤血球濃度の分布に応じて色表示マップでは、上記以外の任意の色の表示を行うように設定することが可能であり、また4段階以外(例えば、2段階、3段階、5段階、又はそれ以上)の濃度レベルを判別することも可能である。
【0069】
次のS26では、上記色表示マップデータに基づいて各表示ユニット24
1〜24
nに対応する各アドレスコードに表示色データを添付した表示色指示データを送信する。各表示ユニット24
1〜24
nの発光制御部210では、予め登録されたアドレスコードが添付された表示色指示データのみを取り込み、当該表示色指示データによる色表示を行うように赤色発光部180、緑色発光部190、青色発光部200の発光を制御する。
【0070】
これにより、脳活動計測装置20は、装着具22の外周面に設けられた各表示ユニット24
1〜24
nが表示色指示データにより指示された色で発光して血流による脳の活動状態を表示することができる。そのため、観察者は、被験者の動きに応じた脳の活動状態をリアルタイムで観察することが可能になり、脳の活動状態を被験者の動きに関連させて正確な判断が可能になる。
〔変形例1〕
図11は装着具22の左側に配された各表示ユニット24
1〜24
nの配置例を示す側断面図である。
図11に示されるように、装着具22の内側に配された複数の表示ユニット24
1〜24
nは、例えば、脳300の左脳の夫々を8箇所の領域L1〜L8、R1〜R8に区切られる。また、脳300の右脳も同様に8箇所の領域R1〜R8に区切られる。尚、
図11では、装着具22の左側の内周面を領域L1〜L8に区切る場合を一例として示しており、8箇所以外に区切っても良いし、8箇所以下に区切っても良い。
【0071】
この変形例では、各領域L1〜L8、R1〜R8に配された複数の表示ユニット24により検出された計測データの平均値を求め、当該平均値が予め設定された閾値との比較で赤血球濃度レベルがどのレベルかを判定する。
【0072】
図12は装着具22の左側に配された各表示ユニット24
1〜24
nの配置例を示す側面図である。
図12に示されるように、装着具22の外側に配された複数の表示ユニット24
1〜100
nは、例えば、脳300の左脳に対応する8個の領域L1〜L8に区切られる。また、脳300の右脳も同様に8箇所の領域R1〜R8に区切られる。尚、
図11では、装着具22の左側の内周面を領域L1〜L8に区切る場合を一例として示す。
【0073】
この変形例では、各領域に配された複数のセンサユニット100により検出された計測データの平均値が予め設定された閾値との比較で赤血球濃度レベルがどのレベルかが判定されると、各領域L1〜L8、R1〜R8に配された表示ユニット24の表示色、点滅速度が制御される。
【0074】
図11、
図12に示されるように、各領域L1〜L8、R1〜R8は、脳300の各領域に対応する。
図7において、
(a)領域L1、R1は、前頭前野330の血流を計測、表示する領域である。
(b)領域L2、R2は、嗅覚領域336の血流を計測、表示する領域である。
(c)領域L3、R3は、前運動野340の血流を計測、表示する領域である。
(d)領域L4、R4は、側頭葉370の血流を計測、表示する領域である。
(e)領域L5、R5は、体性感覚野360の血流を計測、表示する領域である。
(f)領域L6、R6は、側頭葉370の血流を計測、表示する領域である。
(g)領域L7、R7は、後頭葉380、頭頂葉390の血流を計測、表示する領域である。
(h)領域L8、R8は、小脳302の血流を計測、表示する領域である。
〔変形例2〕
図13は装着具22の外側に配された表示ユニット24の変形例を示す側面図である。
図13に示されるように、変形例2の装着具22Aは、外周面の各領域L1〜L8、R1〜R8に例えば、有機EL(Organic Electro-Luminescence)等の薄型表示デバイス460
1〜460
8を設ける構成である。
【0075】
この装着具22Aでは、各薄型表示デバイス460
1〜460
8に各領域L1〜L8、R1〜R8の血流及び脳波活性度を表す画像を表示するため、脳300の思考状態を色によって表示すると共に、脳300のどの部分がどの程度活動しているのかを輝度によって表示することも可能である。
【0076】
また、各薄型表示デバイス460
1〜460
8により3次元画像を表示して観察者が被験者の脳300の活動状態を立体的に認識することも可能である。
〔変形例による血流の計測方法〕
被験者が異なる動きをした場合の右脳、左脳の計測データについて説明する。尚、以下では、説明の便宜上領域L1、R1、L3、R3、L4、R4、L8、R8の血流計測データ及び脳波活性度について説明する。また、以下の
図14A〜
図14D及び
図16A〜
図16Dにおいて、例えば、時間帯Taは安静、時間帯Tbは音読、時間帯Tcは計算、時間帯Tdは音楽鑑賞、時間帯Teは歩行といった具合に各時間帯によって被験者の動きを変更した場合の左脳、右脳の血流を計測する。
【0077】
図14Aは左脳、右脳の領域L1、R1の血流の計測データと被験者の動作との関連を示すグラフである。
図14Aに示されるように、左脳、右脳の領域L1、R1に配された各センサユニット100により計測された計測値の平均値を求める。そして、安静の時間帯Taに計測された血流の計測値を基準値Baとして、各時間帯Tb、Tcに計測された各血流の計測値(平均値)と基準値Baとの差ΔB1L、ΔB1Rを求め、当該差ΔB1L、ΔB1Rと後述する閾値との対比によって各血流レベルを判定する。
【0078】
例えば、時間帯Tb、Tcでは、被験者が音読、計算を行っており、左脳の領域L1(前頭前野330)における血流がレベル4と高く、右脳の領域R1(前頭前野330)における血流がレベル1と低いことが分る。
【0079】
また、時間帯Td、Teでは、被験者が音楽鑑賞、歩行を行っており、右脳の領域R1(前頭前野330)における血流がレベル4、3に上昇し、左脳の領域L1(前頭前野330)における血流がレベル1、2と低くなることが分かる。
【0080】
図14Bは左脳、右脳の領域R3、L3の血流の計測データと被験者の動作との関連を示すグラフである。
図14Bに示されるように、左脳、右脳の領域L3、R3に配された各センサユニット100により計測された計測値の平均値を求める。そして、安静の時間帯Taに計測された血流の計測値を基準値Baとして、時間帯Teに計測された各血流の計測値と基準値Baとの差ΔB3L、ΔB3Rを求め、当該差ΔB3L、ΔB3Rと後述する閾値との対比によって各血流レベルを判定する。
【0081】
例えば、時間帯Tb、Tc、Tdでは、被験者が音読、計算、音楽鑑賞を行っており、左脳、右脳の領域L3、R3(前運動野340)における血流がレベル1と低いことが分かる。
【0082】
また、時間帯Teでは、被験者が歩行を行っており、左脳、右脳の領域L3、R3(前運動野340)における血流がレベル4に上昇することが分かる。
【0083】
図14Cは左脳、右脳の領域R4、L4の血流の計測データと被験者の動作との関連を示すグラフである。
図14Cに示されるように、左脳、右脳の領域L4、R4に配された各センサユニット100により計測された計測値の平均値を求める。そして、安静の時間帯Taに計測された血流の計測値を基準値Baとして、時間帯Tdに計測された各血流の計測値と基準値Baとの差ΔB4L、ΔB4Rを求め、当該差ΔB4L、ΔB4Rと後述する閾値との対比によって各血流レベルを判定する。
【0084】
例えば、時間帯Tbでは、被験者が音読を行っており、左脳の領域L4(側頭葉370)における血流がレベル2と低く、右脳の領域R4(側頭葉370)における血流がレベル1と低いことが分かる。
【0085】
また、時間帯Tdでは、被験者が音楽を鑑賞しており、左脳の領域L4(側頭葉370)における血流がレベル2と低く、右脳の領域R4(側頭葉370)における血流がレベル4に上昇することが分かる。
【0086】
図14Dは左脳、右脳の領域R8、L8の血流の計測データと被験者の動作との関連を示すグラフである。
図14Dに示されるように、左脳、右脳の領域L8、R8に配された各センサユニット100により計測された計測値の平均値を求める。そして、安静の時間帯Taに計測された血流の計測値を基準値Baとして、時間帯Tdに計測された各血流の計測値と基準値Baとの差ΔB8L、ΔB8Rを求め、当該差ΔB8L、ΔB8Rと後述する閾値との対比によって各血流レベルを判定する。
【0087】
例えば、時間帯Tb、Tcでは、被験者が音読、計算をおこなっており、左脳、右脳の領域L8、R8(小脳302)における血流がレベル1と低いことが分かる。
【0088】
また、時間帯Tdでは、被験者が音楽を鑑賞しており、左脳の領域L8(小脳302)における血流がレベル1と低く、右脳の領域R8(小脳302)における血流がレベル2に上昇することが分かる。
【0089】
また、時間帯Teでは、被験者が歩行を行っており、左脳の領域L8及び右脳の領域R8(小脳302)における血流がレベル1と低いことが分かる。
【0090】
上記
図14A〜
図14Dの各血流レベルの計測データを被験者の各動作毎に分類してみると、以下のように整理することができる。
【0091】
例えば、被験者が音読を行っている場合は、
図14Aに示すように、左脳の領域L1(前頭前野330)における血流がレベル4と高く、右脳の領域R1(前頭前野330)における血流がレベル1と低く、
図14Bに示されるように、左脳、右脳の領域L3、R3(前運動野340)における血流がレベル1と低い。また、
図14Cに示されるように、左脳の領域L4(側頭葉370)における血流がレベル2と低く、右脳の領域R4(側頭葉370)における血流がレベル1と低く、
図14Dに示されるように、左脳、右脳の領域L8、R8(小脳302)における血流がレベル1と低いことが分かる。
【0092】
また、被験者が計算を行っている場合は、
図14Aに示すように、左脳の領域L1(前頭前野330)における血流がレベル4と高く、右脳の領域R1(前頭前野330)における血流がレベル1と低く、
図14Bに示されるように、左脳、右脳の領域L3、R3(前運動野340)における血流がレベル1と低い。また、
図14Cに示されるように、左脳の領域L4(側頭葉370)及び右脳の領域R4(側頭葉370)における血流がレベル1と低く、
図14Dに示されるように、左脳、右脳の領域L8、R8(小脳302)における血流がレベル1と低いことが分かる。
【0093】
また、被験者は音楽鑑賞を行っている場合は、
図14Aに示すように、左脳の領域L1(前頭前野330)における血流がレベル1と低く、右脳の領域R1(前頭前野330)における血流がレベル4と高く、
図14Bに示されるように、左脳、右脳の領域L3、R3(前運動野340)における血流がレベル1と低い。また、
図14Cに示されるように、左脳の領域L4(側頭葉370)における血流がレベル1と低く、右脳の領域R4(側頭葉370)における血流がレベル3と高く、
図14Dに示されるように、左脳の領域L8(小脳302)における血流がレベル0と低く、右脳の領域R8(小脳302)における血流がレベル2と低いことが分かる。
【0094】
また、被験者は歩行を行っている場合は、
図14Aに示すように、左脳の領域L1(前頭前野330)における血流がレベル4と高く、右脳の領域R1(前頭前野330)における血流がレベル1と低く、
図14Bに示されるように、左脳、右脳の領域L3、R3(前運動野340)における血流がレベル4と高い。また、
図14Cに示されるように、左脳の領域L4(側頭葉370)及び右脳の領域R4(側頭葉370)における血流がレベル1と低く、
図14Dに示されるように、左脳の領域L8(小脳302)及び右脳の領域R8(小脳302)における血流がレベル1と低いことが分かる。
〔脳波活性度の計測方法〕
図15は脳波活性度と血流計測データとの相関関係を示すグラフである。
図15に示されるように、センサユニット100により検出された脳波の周波数f1〜f4を有する各グラフと振幅dとの関係に基づいて、脳波活性度Eを求める。例えば、脳波が周波数f3で振幅d3であれば、脳波活性度E3が求まる。また、血流計測データが周波数f4で振幅d4であれば、脳波活性度E4が求まる。
【0095】
ここで、被験者の動きと脳波活性度との関係について説明する。
【0096】
図16Aは左脳、右脳の領域R1、L1の脳波活性度と被験者の動作との関連を示すグラフである。
図16Aに示されるように、左脳、右脳の領域L1、R1における脳波活性度の平均値を求める。そして、安静の時間帯Taに計測された脳波活性度の計測値を基準値Eaとして、各時間帯Tb、Tcに計測された脳波活性度(平均値)と基準値Eaとの差ΔE1L、ΔE1Rを求め、当該差ΔE1L、ΔE1Rと後述する閾値との対比によって各レベルを判定する。
【0097】
例えば、時間帯Tb、Tcでは、被験者が音読、計算を行っており、左脳の領域L1(前頭前野330)における脳波活性度がレベル3に上昇し、右脳の領域R1(前頭前野330)における脳波活性度がレベル1と低い。
【0098】
また、時間帯Td、Teでは、被験者が音楽鑑賞、歩行を行っており、左脳の領域L1(前頭前野330)における脳波活性度がレベル1〜2に上昇し、右脳の領域R1(前頭前野330)における脳波活性度がレベル3〜2に低下することが分かる。
【0099】
図16Bは左脳、右脳の領域R3、L3の脳波活性度と被験者の動作との関連を示すグラフである。
図16Bに示されるように、左脳、右脳の領域L1、R1における脳波活性度の平均値を求める。そして、安静の時間帯Taに計測された脳波活性度の計測値を基準値Eaとして、各時間帯Teに計測された脳波活性度(平均値)と基準値Eaとの差ΔE3L、ΔE3Rを求め、当該差ΔE3L、ΔE3Rと後述する閾値との対比によって各レベルを判定する。
【0100】
例えば、時間帯Tb、Tc、Tdでは、左脳の領域L3(前運動野340)及び右脳の領域R3(前運動野340)における脳波活性度がレベル1以下と低いことが分かる。
【0101】
また、時間帯Teでは、被験者が歩行を行っており、左脳の領域L3(前運動野340)及び右脳の領域R3(前運動野340)における脳波活性度がレベル2に上昇することが分かる。
【0102】
図16Cは左脳、右脳の領域R4、L4の脳波活性度と被験者の動作との関連を示すグラフである。
図16Cに示されるように、左脳、右脳の領域L1、R1における脳波活性度の平均値を求める。そして、安静の時間帯Taに計測された脳波活性度の計測値を基準値Eaとして、各時間帯Tb、Tdに計測された脳波活性度(平均値)と基準値Eaとの差ΔE4L、ΔE4Rを求め、当該差ΔE4L、ΔE4Rと後述する閾値との対比によって各レベルを判定する。
【0103】
例えば、時間帯Tbでは、被験者が音読を行っており、左脳の領域L4(側頭葉370)における脳波活性度がレベル1であり、右脳の領域L4(側頭葉370)における脳波活性度がレベル0に低下していることが分かる。
【0104】
また、時間帯Tdでは、被験者が音読を行っており、左脳の領域L4(側頭葉370)における脳波活性度がレベル0で低く、右脳の領域R4(側頭葉370)における脳波活性度がレベル2に上昇することが分かる。
【0105】
図16Dは左脳、右脳の領域R8、L8の脳波活性度と被験者の動作との関連を示すグラフである。
図16Dに示されるように、左脳、右脳の領域L1、R1における脳波活性度の平均値を求める。そして、安静の時間帯Taに計測された脳波活性度の計測値を基準値Eaとして、各時間帯Tb〜Teに計測された脳波活性度(平均値)と基準値Eaとの差ΔE8L、ΔE8Rを求め、当該差ΔE8L、ΔE8Rと後述する閾値との対比によって各レベルを判定する。
【0106】
例えば、時間帯Tb、Tcでは、被験者が音読、計算を行っており、左脳の領域L8(小脳302)における脳波活性度がレベル1〜2で、右脳の領域R8(小脳302)における脳波活性度がレベル1と低いことが分かる。
【0107】
また、時間帯Tdでは、被験者が音楽鑑賞を行っており、左脳の領域L8(小脳302)における脳波活性度がレベル0と低く、右脳の領域R8(小脳302)における脳波活性度がレベル1〜2であることが分かる。
【0108】
また、時間帯Teでは、被験者が歩行を行っており、左脳の領域L8(小脳302)における脳波活性度がレベル2に上昇し、右脳の領域R8(小脳302)における脳波活性度がレベル1〜2であることが分かる。
〔各表示ユニット24の表示色及び点滅速度の判定方法〕
図17は各表示ユニット24の表示色及び点滅速度を判定するしきい値の例を示す図である。
図17に示されるように、例えば、レベル1では、血流の閾値=aが設定されており、血流の差ΔBが閾値a以下の場合、表示ユニット24の表示色は青色に制御される。また、レベル1において、脳波活性度の閾値=dが設定されており、脳波活性度の差ΔEが閾値d以下の場合、表示ユニット24の点滅速度がV1(遅)に制御される。
【0109】
また、レベル2では、血流の閾値=a、bが設定されており、血流の差ΔBが閾値a以上で閾値b以下の場合、表示ユニット24の表示色は緑色に制御される。また、レベル2において、脳波活性度の閾値=d、eが設定されており、脳波活性度の差ΔEが閾値d以上で閾値e以下の場合、表示ユニット24の点滅速度がV2(中遅)に制御される。
【0110】
また、レベル3では、血流の閾値=b、cが設定されており、血流の差ΔBが閾値b〜cの場合、表示ユニット24の表示色は橙色に制御される。また、レベル3において、脳波活性度の閾値=e、fが設定されており、脳波活性度の差ΔEが閾値e以上で閾値f以下の場合、表示ユニット24の点滅速度がV3(中速)に制御される。
【0111】
また、レベル4では、血流の閾値=fが設定されており、血流の差ΔBが閾値f以上の場合、表示ユニット24の表示色は赤色に制御される。また、レベル4において、脳波活性度の閾値=fが設定されており、脳波活性度の差ΔEが閾値f以上の場合、表示ユニット24の点滅速度がV4(高速)に制御される。
〔被験者の動作と表示ユニットによる表示パターン〕
図18は被験者の動作と表示ユニットによる表示パターンとの関連を示す図である。
(被験者が安静の場合)
被験者Nが安静状態(M1)のときは、血流の差ΔBがa以下でレベル0のため、装着具22の各表示ユニット24は全て発光せず、消灯状態である。
(被験者が音読中の場合)
また、被験者Nが本や新聞などの文章を音読する音読状態(M2)の場合、左脳の領域L1(前頭前野330)における血流がレベル4と高いので、装着具22の領域L1に対応する各表示ユニット24が赤色を表示し、領域R1(前頭前野330)及び領域L3、R3(前運動野340)、領域R4(側頭葉370)、領域L8、R8(小脳302)における血流がレベル1と低いので、装着具22の領域R1、L3、R3、R4、L8、R8に対応する各表示ユニット24が青色を表示する。また、左脳の領域L4(側頭葉370)における血流がレベル2であるので、装着具22の領域L4に対応する各表示ユニット24が緑色を表示する。
【0112】
さらに、左脳の領域L1(前頭前野330)における脳波活性度がレベル3であるので、領域L1に対応する表示ユニット24の点滅速度がV3(中速)に制御され、右脳の領域R1(前頭前野330)における脳波活性度がレベル1であるので、領域R1に対応する表示ユニット24の点滅速度がV1(遅)に制御される。また、他の領域L3、R3、R4、L8、R8の各表示ユニット24も脳波活性度の各レベル1に応じた点滅速度V1(遅)で点滅する。
(被験者Nが音読中の場合)
また、被験者Nが音読を行っている場合、左脳の領域L1の血流がレベル4なので、装着具22の領域L1に対応する各表示ユニット24が赤色で表示され、右脳の領域R1の血流レベル1なので、領域R1に対応する各表示ユニット24が青色を表示する。
【0113】
また、左脳、右脳の領域L3、R3、L8、R8は、血流がレベル1なので、装着具22の領域L3、R3、L8、R8に対応する各表示ユニット24が青色を表示する。
【0114】
また、領域L1の脳波活性度がレベル3であるので、領域L1に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV3(中速)に制御される。
【0115】
また、左脳、右脳の領域R1,L4、L8、R8の脳波活性度がレベル1であるので、領域R1、L4、L8、R8に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV1(遅)に制御される。
(被験者が計算中の場合)
被験者が計算を行っている場合、左脳の領域L1の血流がレベル4なので、装着具22の領域L1に対応する各表示ユニット24が赤色で表示され、右脳の領域R1の血流レベル1なので、装着具22の領域R1に対応する各表示ユニット24が青色を表示する。
【0116】
また、左脳、右脳の領域L3、R3、L8、R8は、血流がレベル1なので、装着具22の領域L3、R3、L8、R8に対応する各表示ユニット24が青色を表示する。
【0117】
また、領域L1の脳波活性度がレベル3であるので、領域L1に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV3(中速)に制御される。
【0118】
また、左脳、右脳の領域R1、L4、R4、L8、R8の脳波活性度がレベル1であるので、領域R1、L4、R4、L8、R8に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV1(遅)に制御される。
(被験者が音楽鑑賞中の場合)
被験者が音楽鑑賞を行っている場合、左脳の領域L1の血流がレベル1なので、装着具22の領域L1に対応する各表示ユニット24を青色で表示させ、右脳の領域R1の血流レベル4なので、領域R1に対応する各表示ユニット24が赤色を表示する。
【0119】
また、左脳、右脳の領域L3、R3、L4は、血流がレベル1なので、装着具22の領域L3、R3、L4に対応する各表示ユニット24が青色で表示される。
【0120】
また、右脳の領域R4は、血流がレベル3であるので、領域R4に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV3(中速)に制御される。
【0121】
また、領域R8の脳波活性度がレベル2であるので、領域R8に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV2(中遅)に制御される。
【0122】
また、領域R4の脳波活性度がレベル2であるので、領域R4に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV2(中遅)に制御される。
【0123】
また、左脳、右脳の領域L1、L3、R3、R8の脳波活性度がレベル1であるので、領域L1、L3、R3、R8、に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV1(遅)に制御される。
(被験者が歩行中)
被験者が歩行を行っている場合、左脳の領域L1の血流がレベル2なので、装着具22の領域L1に対応する各表示ユニット24を緑色で表示させ、右脳の領域R1の血流レベル3なので、領域R1に対応する各表示ユニット24が橙色を表示する。
【0124】
また、左脳、右脳の領域L3、R3は、血流がレベル4なので、装着具22の領域L3、R3に対応する各表示ユニット24が赤色を表示する。
【0125】
また、左脳、右脳の領域L4、R4は、血流がレベル1であるので、領域L4、R4に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV1(遅)に制御される。
【0126】
また、左脳、右脳の領域L8、R8は、血流がレベル2であるので、領域L8、R8に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV2(中遅)に制御される。
【0127】
また、左脳、右脳の領域L1、R1、L3、R3、R8の脳波活性度がレベル2であるので、領域L1、R1、L3、R3、R8、に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV2(中遅)に制御される。
【0128】
また、領域L8、R8の脳波活性度がレベル2であるので、領域L8、R8に対応する各表示ユニット24の点滅速度はV2(中遅)に制御される。
【0129】
また、領域L4、R4の脳波活性度がレベル0であるので、領域L4、R4に対応する各表示ユニット24の点滅速度は0に制御される。
【0130】
このように被験者Nの動作状態に応じて装着具22の各領域L1〜L8、R1〜R8に配された各表示ユニット24が表示色を変更すると共に、点滅速度を切り替えるため、観察者は被験者Nの動きと脳の血流状態及び脳波活性度を同時に観察することができる。
(変形例の制御処理)
図19は変形例の制御装置40が実行する表示パターン制御の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【0131】
図19のS31において、制御装置40は、各領域L1〜L8、R1〜R8に配された表示ユニット24により計測された計測データ(血流、脳波のデータ)をメモリ42に格納する。
【0132】
次のS32では、各領域L1〜L8、R1〜R8における血流データの平均値を演算する。
【0133】
続いて、S33において、各領域L1〜L8、R1〜R8の各血流の計測値(平均値)と基準値Baとの差ΔBを求め、当該差ΔBと閾値(
図17を参照)との対比によって各領域L1〜L8、R1〜R8の血流レベルを判別する(判別手段)。
【0134】
次のS34では、各領域L1〜L8、R1〜R8における脳波活性度を判定する(判定手段)。すなわち、
図15に示す表示ユニット24により検出された脳波の周波数f1〜f4を有する各グラフと振幅dとの関係に基づいて、各領域L1〜L8、R1〜R8の脳波活性度Eを求める。
【0135】
S35では、
図17に示す各閾値に基づいて各領域L1〜L8、R1〜R8の表示色、点滅速度を演算する。
【0136】
S36において、上記演算処理で求められた各領域L1〜L8、R1〜R8の表示色、点滅速度で装着具22の外周面に配された各表示ユニット24を制御する。これにより、被験者の動きと共に、当該被験者の頭部に装着された装着具22の外周面に配された表示ユニット24の表示色及び点滅速度により血流及び脳波活性度を視覚的に認識することが可能になる。
(判定方法の変形例)
図20は血流と脳波活性度との相対関係を示す別の表示例を示す図である。
図20に示されるように、血流のパラメータΔB(以下「ΔB」という)と脳波活性度のパラメータΔE(以下「ΔE」という)との相対関係は、双曲線関数K1〜K4が閾値を表すものとして、横軸、縦軸及び双曲線関数K1〜K4を境界にして各領域Q0〜Q12に判別することができる。
【0137】
例えば、どの双曲線関数K1〜K4も関係しない領域Q0は、各表示ユニット24を消灯する場合の条件となる。
【0138】
また、領域Q1は、ΔE、ΔBが双曲線関数K1より大きい場合で、各表示ユニット24が赤色で点滅速度がV4(高速)で表示される。
【0139】
領域Q2は、ΔBが双曲線関数K1以下ゼロ以上の場合で、各表示ユニット24が橙色で点滅速度がV4(高速)で表示される。
【0140】
領域Q3は、ΔBが双曲線関数K2以上ゼロ以下の場合で、各表示ユニット24が緑色で点滅速度がV4(高速)で表示される。
【0141】
領域Q4は、ΔEが双曲線関数K2以上、ΔBが双曲線関数K2以下の場合で、各表示ユニット24が青色で点滅速度がV4(高速)で表示される。
【0142】
領域Q5は、ΔEが双曲線関数K1以下ゼロ以上の場合で、各表示ユニット24が赤色で点滅速度がV3(中速)で表示される。
【0143】
領域Q6は、ΔEが双曲線関数K2以下ゼロ以上の場合で、各表示ユニット24が青色で点滅速度がV3(中速)で表示される。
【0144】
領域Q7は、ΔEが双曲線関数K3以上ゼロ以下の場合で、各表示ユニット24が赤色で点滅速度がV2(中遅)で表示される。
【0145】
領域Q8は、ΔEが双曲線関数K4以上ゼロ以下の場合で、各表示ユニット24が青色で点滅速度がV2(中遅)で表示される。
【0146】
領域Q9は、ΔE、ΔBが双曲線関数K3以下の場合で、各表示ユニット24が赤色で点滅速度がV1(低速)で表示される。
【0147】
領域Q10は、ΔBが双曲線関数K3以下ゼロ以上の場合で、各表示ユニット24が橙色で点滅速度がV1(低速)で表示される。
【0148】
領域Q11は、ΔBが双曲線関数K4以上ゼロ以下の場合で、各表示ユニット24が緑色で点滅速度がV1(低速)で表示される。
【0149】
領域Q12は、ΔE、ΔBが双曲線関数K4以下の場合で、各表示ユニット24が青色で点滅速度がV1(低速)で表示される。
【0150】
このように各領域Q0〜Q12が横軸、縦軸及び双曲線関数K1〜K4を閾値として区切られており、血流と脳波活性度の計測データに基づいて各表示ユニット24の表示色及び点滅速度を切り替えることが可能になる。
【0151】
尚、
図20において、被験者が安静状態で計測されたΔE、ΔBを基準値(ゼロ)としており、安静状態のときよりも計測値が小さい場合に−側の値が計測される。そのため、被験者が何らかの動きをしている場合は、領域Q1、Q2、Q5が主に使用される領域である。
【0152】
また、
図20において、双曲線関数K1〜K4は、任意の式に置き換えることができるので、各領域の境界線は、
図20に図示された線形に限らない。
【0153】
また、
図20において、双曲線関数K1〜K4の閾値を外して、各計測データがΔE、ΔB軸上の座標として識別することで、座標位置から表示色及び点滅速度を判定することも可能である。
〔血流計測システムの変形例〕
図21は本発明による血流計測装置と刺激付与ユニットとを組み合わせた場合の変形例を示す図である。
図21に示されるように、変形例の血流計測システム10Aは、血流計測装置20と、刺激付与ユニット(刺激付与手段)500とを組み合わせた構成である。
【0154】
刺激付与ユニット500は、被験者が装着するシャツ510、手袋530、スパッツ560、靴下580の夫々に複数の刺激付与部520を設けた構成である。シャツ510、手袋530、スパッツ560、靴下580は、それぞれ被験者の体形に応じて伸縮する繊維素材によって形成されており、被験者の体表面(皮膚面)に隙間なくフィット(密着)するように形成されている。また、複数の刺激付与部520は、シャツ510、手袋530、スパッツ560、靴下580の各内側に設けられ、被験者の体表面に対してマトリックス状に配置されている。
【0155】
また、刺激付与部520としては、例えば、低周波治療器等に用いられる低周波発振器による低周波振動を付与する電気的付与手段、あるいは、被験者の各部位に熱パルスを付与する発熱付与手段、あるいは、被験者の体表面を圧電素子により一定圧で押圧する押圧手段などがある。
【0156】
また、刺激付与ユニット500では、複数の刺激付与部520を各領域511a〜515a、511b〜515b、561a〜563a、561b〜563bに分類しており、各領域においても各刺激付与部520にアドレス番号を付して管理する制御部540と、通信ユニット570とを有する。そして、制御部540は、各刺激付与手段520とフレキシブル配線板等により接続されており、被験者に対して部分的な刺激を順次付与することができる。また、手袋530及び靴下580の各刺激付与部520は、コネクタ550を介して制御部540と接続されている。
【0157】
通信ユニット570は、血流計測装置20のコントロールユニット30又は外部ユニット70との送受信を行うと共に、各刺激付与部520の作動状況を示すデータを送信する。
【0158】
各制御部540は、予め入力された制御プログラムに基づいて各領域の刺激付与部520を順次作動させて被験者の体表面に刺激を付与する。
【0159】
一方、被験者の頭部に装着された血流計測装置20は、刺激付与部520により付与された刺激に対する反応を血流の変化として検出し、表示ユニット24に表示する。さらに血流計測装置20は、この表示結果を、刺激付与ユニット500の制御部40と同期させて記録する。例えば、腕の感覚の麻痺した被験者の場合に、刺激付与部520が指先から腕の付け根に向かって順次刺激を付与して行くときに、指先に配置された刺激付与部520が刺激を付与しているときには、脳における血流の変化が認められず、表示ユニット24の表示状態に変化がなかったとすると、この被験者はその部分には感覚がないことが分かる。続いて、手首に配置された刺激付与部520が刺激を付与しているときに、脳における血流の変化が認められ、表示ユニット24の表示状態に変化があると、この被験者はその部分からは感覚があることが分かる。
【0160】
このようにして、被験者の感覚のある部位とない部位との境目を計測して行くことで、リハビリテーションを行う前の血流データによる各表示ユニット24の表示と、リハビリテーションを行った後の血流データによる各表示ユニット24の表示との差違により、リハビリテーションの効果を検証することが可能になる。
【0161】
すなわち、血流計測システム10Aは、複数の刺激付与部520が被験者の体表面全体を部分的に順次刺激することで、その時の脳内の反応(血流量や脳波の変化)を表示ユニット24により表示する。
【0162】
また、各刺激付与部520の外側露出部分には、刺激を付与すると共に点光又は点滅する表示手段が設けられている。これにより、被験者のどの部位に刺激を付与しているのかが観察者からも容易に確認することが可能になる。また、表示手段の点灯色を刺激の種類に応じて別の色に切り替えても良い。例えば、電気的付与手段による刺激の場合には黄色の点灯、発熱付与手段による刺激の場合には赤色の点灯、押圧手段による刺激の場合には青色等である。
【0163】
また、各刺激付与部520により刺激が付与された際には、血流計測装置20の各表示ユニット24により脳の例えば体性感覚野360などの部位の血流、脳波等に変化が表示される。
【0164】
例えば、体に麻痺のある患者の場合には、体のどの部分に感覚があって、どの部分に感覚がないのか、客観的に計測及び観察することが可能になり、血流計測装置20の各表示ユニット24によりそれを一目で分かる形で表示できる。また、被験者の全体の多数の部位に定量的な刺激を与え、網羅して計測する事が可能になる。
【0165】
尚、上記表示ユニット24の代わりに装着具22Aの各薄型表示デバイス460
1〜460
8に複数の刺激付与部520が被験者の体表面全体を部分的に順次刺激することで、その時の脳内の反応(血流量や脳波の変化)をリアルタイムで表示しても良い。
【0166】
尚、刺激付与ユニット500としては、被験者が装着するシャツ510、手袋530、スパッツ560、靴下580等の各装着具の夫々に複数の刺激付与部520を設けた構成でも良いし、あるいは、シャツ510、手袋530、スパッツ560、靴下580等の各装着具の何れかに複数の刺激付与部520を設ける構成、あるいは各装着具が一体化されたスーツの各部位に複数の刺激付与部520を設ける構成のものでも良い。