(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717074
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ジヒドロキシ安息香酸誘導体を含む骨移植用または骨充填用の組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 27/00 20060101AFI20150423BHJP
A61K 6/00 20060101ALI20150423BHJP
A61K 6/02 20060101ALI20150423BHJP
A61C 8/00 20060101ALI20150423BHJP
A61C 13/08 20060101ALI20150423BHJP
A61F 2/28 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
A61L27/00 F
A61K6/00 Z
A61K6/02
A61C8/00 Z
A61C13/08
A61F2/28
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-507871(P2013-507871)
(86)(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公表番号】特表2013-524990(P2013-524990A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】KR2011002975
(87)【国際公開番号】WO2011136513
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年3月25日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0039829
(32)【優先日】2010年4月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512149592
【氏名又は名称】セルセイフ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジェジン
【審査官】
星 功介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/157177(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0287085(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/00
A61K 6/00− 6/10
A61C 5/08− 5/12,8/00−13/38
A61F 2/00− 2/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルまたは2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルを含む骨移植用または骨充填用の組成物。
【請求項2】
人工骨、人工関節、骨セメントまたは骨代用材の形態であることを特徴とする請求項1に記載の骨移植用または骨充填用の組成物。
【請求項3】
人工歯、歯周組織の再生材、歯再生材または歯科インプラントの形態であることを特徴とする請求項1に記載の骨移植用または骨充填用の組成物。
【請求項4】
歯科インプラント形態であることを特徴とする請求項3に記載の骨移植用または骨充填用の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨芽細胞の活性を高めて骨形成を誘導することが新たに明らかになったジヒドロキシ安息香酸誘導体を含む骨移植用または骨充填用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯及び骨組織は、生体内の唯一の硬組織である。歯及び骨組織の喪失または欠損は、自動車事故などによる骨折によって少なからず発生し、生体の形態学的変化及び機能的障害をもたらす。現在、骨欠損を修復する目的で、同種骨移植(allograft)、異種骨移植、金属材料、高分子材料、セラミックスなどを使用した多様な骨移植または骨充填の方法が使用されている。
【0003】
骨移植または骨充填の方法を遂行するために、骨の欠損部分を補う物質(一般的に、「骨充填材(bone-filler)」と称される)が使用されている。最近では、身長を高くするための足の矯正や小さなあごの矯正に、骨延長術(osteogenesis)が頻繁に施術されており、その結果、骨充填材の需要が増大している。
【0004】
骨充填材及び骨移植材として、人体内に挿入される生体材料(bio-material)は、生体不活性材料(bioinert material)、生体活性材料(bioactive material)及び生分解性材料(biodegradable material)に区分することができる。生体不活性材料は、人体に適用した際に炎症と毒性とを誘発せず、生体組織と結合しない材料をいう。また、生体活性材料は、高い生体適合性を有する材料であり、人体に適用した際に周囲の組織と生化学的に結合する材料をいう。生分解性材料は、移植後、体内で吸収または分解される材料をいう。また、生体材料は、原料によって、金属材料、セラミックス材料(すなわち、無機物)及び高分子材料に区分することができる。金属材料及びセラミックス材料は、主に歯や骨などの硬組織の代用材として使用される。最近では、各材料の長所を生かすために、セラミックスと高分子との複合体、または金属とセラミックスとの複合体が使われることもある。
【0005】
金属は、セラミックスや高分子に比べて、高い機械的強度を有する。ステンレス鋼、コバルト(Co)とクロム(Cr)との合金、チタン(Ti)、チタン合金(Ti−6Al−4V)、チタンとニッケルとの金属混合物(1:1、原子比)などが、骨充填材及び骨移植材として使用される。金属は、主に緻密な形態で使用されるが、必要に応じて、多孔性金属形態、または代用材の表面をコーティングする金属繊維の形態で使われることもある。多孔性形態の金属を生体に移植すると、骨がこの代用材の気孔(小孔)に入り込むように成長するため、骨と代用材との間により強力な結合が得られる。また、金属または金属繊維を代用材の表面にコーティングまたは吸着させて表面に凹凸を設けることにより、骨がその間隙に入り込むように成長するため、高い機械的固定効果が得られる。
【0006】
骨及び歯の無機成分であるアパタイトはセラミックス材料であるので、セラミックス材料(すなわち、無機物)は、骨との化学的結合性がすぐれている。すぐれた機械的特性を有するアルミナとジルコニアは、摩耗耐性が要求される骨端及び人工歯根として使用される。生体活性セラミックス材料には、酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO
2)とを主成分とする生体活性ガラス(bioactive glass)、及び骨の主要成分であるカルシウムとリンとを含むリン酸カルシウム系セラミックスが含まれる。酸化ナトリウム(Na
2O)−酸化カルシウム−二酸化ケイ素系結晶化ガラスは、生体活性を有しつつ、曲げ強さ、破壊靭性、疲労寿命などの機械的強度が向上した材料である。従って、それらは、人工脊柱、人工腸骨(尻骨)などとして使用される。アパタイトと同様にカルシウムとリンとからなるリン酸三カルシウム(TCP,Ca
3(PO
4)
2)は、体内への移植後、持続的に吸収される特性を有する。従って、これは、整形外科及び歯科矯正学の分野で、硬組織の代用材料として広く使用される。生体活性セラミックスは、損傷した歯や骨に塊状で充填する骨充填材としての使用に適している。このような骨充填材として、多孔性アパタイト、アパタイトとリン酸三カルシウムとの複合体、及び生体活性ガラス(bioactive glass)が主に使用される。これらは、一般的に、3〜5mmの顆粒状で製造され、骨欠損部位に充填される。生体活性セラミックスは、単独で使用してもよく、金属代用材の短所を克服するための金属表面のコーティングに使用してもよく、またはセメントの形態で注入して代用材を固定する注入型骨セメントとして使用してもよい。生体活性セラミックスで金属代用材をコーティングすることにより、金属イオンの溶出を防止することができ、また線維性被膜が形成されることなく、金属代用材と周囲の骨とが直接結合することができる。現在、アパタイトや、アパタイトとTCPとでコーティングされた人工股関節が商業的に使われている。また、生体活性セラミックスでコーティングされた金属ねじやピンも市場に導入されている。
【0007】
高分子材料は、ポリ乳酸(PLA)またはその共重合体、及びコラーゲンなどの生分解性高分子を含む。高分子材料は、弾性係数を小さくするために金属または非金属(例えば、アパタイト)と混合して使われることもある。
【0008】
骨移植及び骨充填の材料は、自家骨、同種骨、異種骨、及び多様な生体材料で製造された前記の合成骨を含む。中でも、感染の危険性及び経済的理由を考慮して、合成骨が主に使用されている。合成骨の主材料としては、ヒドロキシアパタイトが一般的に使われている。ヒドロキシアパタイトはすぐれた骨伝導性を有するが、骨誘導性は低い。従って、体内に適用した際に、ヒドロキシアパタイトは、患者の状態及び年齢によって骨形成期間が大きくばらつく。
【0009】
かような合成骨の短所を克服するために、骨形態形成蛋白質(BMPs)または他の骨移植代替物が骨再生を誘導するために使用される。例えば、BMP2は、骨折を誘発させた動物を用いた試験において、骨折治癒を促進すると報告されている(Welch,R.D.et al.,J Bone Miner Res.13(9):1483−1490,1998;Yasko,A.W.et al.,J Bone Joint Surg.74A:659−671,1992)。このような研究結果を基に、BMP2は、アメリカFDAによって承認され、コラーゲン・スポンジ及び多様なスカフォード(scaffolds)に適用され、骨折治療剤、骨移植材及び骨充填材として使用されている。しかし、骨形態形成蛋白質は非常に高価であり、また多量に使用する必要がある。従って、骨移植または骨充填のためにそれらを使用することは、高コストが理由で制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、骨移植用または骨充填用の組成物に有用に適用される物質として、骨芽細胞を活性化して骨形成を誘導する物質を多様な方法で探索した。特に、本発明者は、天産物(覆盆子(トックリイチゴ))由来の化合物から多様な誘導体を設計し、それらの骨形成誘導活性を評価した。その結果、驚くべきことに、本発明者は、ジヒドロキシ安息香酸誘導体、特に、安息香酸の2,4−位または2,5−位にヒドロキシ基を有するジヒドロキシ安息香酸誘導体が、アルカリホスファターゼ活性、カルシウム蓄積及び歯槽骨形成を著しく増大させることを発見した。
【0011】
従って、本発明は、ジヒドロキシ安息香酸誘導体を含む骨移植用または骨充填用の組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によって、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル、2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチル、2,6−ジヒドロキシ安息香酸エチル及び3,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルからなる群から選択される1種以上のジヒドロキシ安息香酸誘導体を含む骨移植用または骨充填用の組成物が提供される。
【0013】
前記骨移植用または骨充填用の組成物において、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体は、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルまたは2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルが望ましく、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルまたは2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルがさらに望ましい。前記骨移植用または骨充填用の組成物は、人工骨、人工関節、骨セメントまたは骨代用材の形態であってもよく、また人工歯、歯周組織の再生材、歯再生材または歯科インプラントの形態、さらに望ましくは、歯科インプラントの形態であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
ジヒドロキシ安息香酸誘導体は、骨形成、骨折治癒ならびに歯の成長及び発達に必要な骨芽細胞の活性を高めることから、骨移植用または骨充填用の組成物に有用に適用されうることが本発明により明らかになった。特に、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルは、アルカリホスファターゼ活性、カルシウム蓄積及び歯槽骨形成を顕著に増大させた。従って、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルを含むジヒドロキシ安息香酸誘導体は、人工骨、人工関節、骨セメント、骨代用材または骨再生材の形態で、整形外科用骨移植及び骨充填に有用に用いることができ、また人工歯、歯周組織の再生材、歯再生材または歯科インプラントの形態で、歯科矯正学用骨移植及び骨充填に有用に用いることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル、2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチル、2,6−ジヒドロキシ安息香酸エチル及び3,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルからなる群から選択される1種以上のジヒドロキシ安息香酸誘導体を含む骨移植用または骨充填用の組成物を提供する。
【0016】
本発明者は、覆盆子(トックリイチゴ)由来の化合物から多様な誘導体を設計し、それらの骨形成誘導活性を評価した。特に、本発明者は、エステル結合が除去された加水分解体、及びそれぞれ異なる置換位置にヒドロキシ置換基を有する多様な誘導体を設計し、それらの骨形成誘導活性を評価した。その結果、驚くべきことに、本発明者は、多様なジヒドロキシ安息香酸誘導体、特に、安息香酸の2,4−位または2,5−位にヒドロキシ基を有するジヒドロキシ安息香酸誘導体が、アルカリホスファターゼ活性、カルシウム蓄積及び歯槽骨形成を著しく増大させることを発見した。従って、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルを含む前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体は、整形外科及び歯科矯正学用の骨移植用及び骨充填用の組成物に経済的かつ有用に用いることができる。
【0017】
前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体において、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルまたは2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルが望ましい。特に、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル(下記化学式1の化合物)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチル(下記化学式2の化合物)、またはそれらの混合物がさらに望ましい。
【化1】
【化2】
【0018】
本発明の組成物は、整形外科的使用のために適切な形態、すなわち、骨折などの患者に一般的に適用される骨移植及び骨充填の形態であってもよい。例えば、本発明の組成物は、人工骨、人工関節、骨セメントまたは骨代用材の形態である。
【0019】
人工骨または人工関節は、チタンなどの金属、またはヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(TCP)セラミックス、バイオガラス、カーボンセラミックス、アルミナなどの非金属を、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体でコーティングするか該誘導体と混合した後、得られた生成物を人工骨または人工関節の形態に成形することによって製造することができる。また、人工骨または人工関節は、金属または非金属で成形された人工骨や人工関節に、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体をコーティングすることによって製造してもよい。前記コーティングは、前記金属または非金属を前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)に浸漬するか、前記金属または非金属に前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)を噴霧した後、得られた生成物を乾燥させることによって遂行してもよい。
【0020】
骨セメントは、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(TCP)セラミックス、バイオガラス、カーボンセラミックス、アルミナ、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ乳酸またはその共重合体などの非金属を、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体でコーティングするか該誘導体と混合した後、得られた生成物を骨セメントの形態に成形することによって製造することができる。前記コーティングは、前記非金属を前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)に浸漬するか、前記非金属に前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)を噴霧した後、得られた生成物を乾燥させることによって遂行してもよい。
【0021】
骨再生材(「骨代用材」とも称される)は、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(TCP)セラミックス、バイオガラス、カーボンセラミックス、アルミナ、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ乳酸またはその共重合体などの非金属を、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体でコーティングするか該誘導体と混合した後、得られた生成物を骨再生材の形態に成形することによって製造することができる。また、骨再生材は、非金属で成形された骨再生材に、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体をコーティングすることによって製造してもよい。前記コーティングは、前記非金属を前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)に浸漬するか、前記非金属に前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)を噴霧した後、得られた生成物を乾燥させることによって遂行してもよい。
【0022】
本発明による整形外科的使用のための骨移植用及び骨充填用の組成物において、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体、望ましくは、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルまたは2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチル、さらに望ましくは、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルまたは2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルの含量は、例えば成人に使用する場合、1mg/kg〜2,000mg/kgであってよく、前記含量は必要に応じて分割して(例えば、1ないし3回)使用してもよい。前記含量は、患者の年齢、疾患の程度などによって異なる。
【0023】
本発明の組成物は、歯科矯正学的使用のために適切な形態、すなわち、歯牙破折、歯周疾患(例えば、上下の歯槽骨欠損など)などの患者に一般的に適用される骨移植及び骨充填の形態であってもよい。例えば、本発明の組成物は、人工歯、歯周組織の再生材、歯再生材または歯科インプラントの形態である。
【0024】
人工歯または歯科インプラントは、チタンなどの金属または非金属を、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体でコーティングするか該誘導体と混合した後、得られた生成物を人工歯または歯科インプラントの形態に成形することによって製造することができる。また、人工歯または歯科インプラントは、金属または非金属で成形された人工歯または歯科インプラントに、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体をコーティングすることによって製造してもよい。前記コーティングは、前記
金属または非金属を前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)に浸漬するか、前記
金属または非金属に前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)を噴霧した後、得られた生成物を乾燥させることによって遂行してもよい。
【0025】
歯周組織の再生材または歯再生材は、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(TCP)セラミックス、バイオガラス、カーボンセラミックス、アルミナ、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ乳酸またはその共重合体などの非金属を、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体でコーティングするか該誘導体と混合した後、得られた生成物を歯周組織の再生材または歯再生材の形態に成形することによって製造することができる。前記コーティングは、前記非金属を前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)に浸漬するか、前記非金属に前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の溶液(例えば、水性溶液)を噴霧した後、得られた生成物を乾燥させることによって遂行してもよい。
【0026】
本発明による歯科矯正学的使用のための骨移植用または骨充填用の組成物は、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体、望ましくは、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルまたは2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチル、さらに望ましくは、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルまたは2,5−ジヒドロキシ安息香酸エチルを含む歯科インプラントの形態であることが望ましい。本発明による整形外科的使用のための骨移植用及び骨充填用の組成物において、前記ジヒドロキシ安息香酸誘導体の含量は、例えば成人に使用する場合、1mg/kg〜2,000mg/kgであってよく、前記含量は必要に応じて分割して(例えば、1ないし3回)使用してもよい。前記含量は、患者の年齢、疾患の程度などによって異なる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について実施例によりさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、説明のためだけに提供されるものであり、よって本発明はそれらによって限定されるものではない。
【0028】
実施例1.化合物設計
3,4−ジヒドロキシ安息香酸エステル化合物を含む多様な誘導体を設計し、それらの骨形成誘導活性を評価した。前記誘導体は、エステル結合が除去された加水分解体、及びそれぞれ異なる置換位置にヒドロキシ置換基を有する多様な誘導体を含む。前記化合物の化学名及び構造式は、次の表1の通りである。表1に示した化合物は、いずれも公知の化合物であり、シグマ−アルドリッチから入手した。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例2.アルカリホスファターゼ(ALP)活性の測定
骨芽細胞株の一つであるMC3T3−E1細胞(RIKEN Cell Bank、Japan)(ウェル当たり5×10
3個)を96−ウェルプレートの各ウェルに播種して、12時間培養した。培地を除去した後、骨芽細胞の分化誘導剤としてベータグリセロホスフェート(β−glycerophosphate)とアスコルビン酸とが添加されたα−MEM培地を添加した。実施例1のそれぞれの化合物を、最終濃度5μg/mlで培養液に添加した。細胞を含むプレートを、7日間培養した。細胞溶解バッファ(Sigma、カタログ番号:MCL1)100μlを細胞に添加した後、37℃で30分間インキュベーションした。得られた混合物(50μl)を、0.1Nグリシン−NaOH緩衝液(pH9.8)中、基質であるp−ニトロフェニルホスファートと37℃で30分間反応させた。基質から遊離したp−ニトロフェノールを、ELISAリーダ(Bio−Tek instrument)を利用し、405nmで吸光度を測定して定量した。陽性対照群は、100ng/mlの濃度のBMP2で処理した。陰性対照群(非処理)との比較により相対的な吸光度差を求め、アルカリホスファターゼ活性を計算した。その結果は、次の表2の通りである。
【0031】
【表2】
【0032】
前記表2の結果から、実施例1で設計されたジヒドロキシ安息香酸誘導体は、すぐれたALP活性を示すことが分かる。特に、安息香酸の2,4−位または2,5−位にヒドロキシ基を有するNP33及びNP35の化合物が、最もすぐれたALP活性を示した。
【0033】
実施例3.骨芽細胞の試験管内(in−vitro)骨様結節(bone nodule)の測定
骨芽細胞株の一つであるMC3T3−E1細胞(RIKEN Cell Bank、Japan)(ウェル当たり2×10
3個)を、24−ウェルプレートの各ウェルに播種して、24時間培養した。骨芽細胞分化誘導剤としてベータグリセロホスフェート(β−glycerophosphate)とアスコルビン酸とが添加されたα−MEM培地で培地を交換した。実施例1のそれぞれの化合物を、最終濃度5μg/mlで培養液に添加した。細胞を含むプレートを、3日または4日に1回ずつ培地を交換しつつ、27日間培養した。陽性対照群は、100ng/mlの濃度のBMP2で処理した。陰性対照群には、何の処理も施さなかった。細胞内に蓄積されたカルシウムを定量するために、細胞を生理食塩水で洗浄した後、0.5N HCl溶液で処理して、撹拌器上で6時間かけてカルシウム(Ca)を抽出した。抽出液(100μl)を、Calcium Reagent(Sigma、USA)と室温で5分間反応させた。ELISAリーダ(Bio−Tek instrument)を利用し、575nmで吸光度を測定した。陰性対照群(非処理)との比較により相対的な吸光度差を求め、細胞内に蓄積されたカルシウムの量を計算した。その結果は、次の表3の通りである。
【0034】
【表3】
【0035】
前記表3の結果から、実施例1で設計されたジヒドロキシ安息香酸誘導体は、すぐれた細胞内カルシウム蓄積を示すことが分かる。特に、安息香酸の2,4−位または2,5−位にヒドロキシ基を有するNP33及びNP35の化合物が、最もすぐれた細胞内カルシウム蓄積を示した。
【0036】
実施例4.歯槽骨(alveolar bone)形成能の測定
実施例1の化合物を、それぞれ滅菌生理食塩水に溶かして1mg/mlの濃度の溶液を調製した。骨移植材として使用されるコラーゲン・ビーズ(直径:1×2mm、Gibco)を、それぞれの溶液に、37℃で45分間浸漬した。それぞれの溶液に浸漬した各ビーズは、約1〜2μlの溶液を含み、従って、約1〜2μgの化合物を含む。歯根生成前のマウスの下顎骨の大臼歯(mandibular molars)を抜歯した。浸漬したビーズを抜歯した下顎骨の大臼歯の歯髄(dental pulp)の中央に、ピンセットを使って挿入した後、雌性マウス(C57BL/6)の腎臓(kidney)に移植した。3週間後、成長した大臼歯をホルマリン溶液で固定し、Morse’s溶液で染色した。染色された部位を顕微鏡(Olympus IX71)下で可視化し、面積をimageWarp software(ロンドン、イギリス)で測定した。各化合物が歯槽骨形成に及ぼす影響を陰性対照群(100%)と比較して評価した。その結果は、次の表4の通りである。
【0037】
【表4】
【0038】
前記表4の結果から、実施例1で設計されたジヒドロキシ安息香酸誘導体は、すぐれた歯槽骨形成能を示すことが分かる。特に、安息香酸の2,4−位または2,5−位にヒドロキシ基を有するNP33及びNP35の化合物が最もすぐれた歯槽骨形成能を示した。
【0039】
実施例5.細胞毒性試験
実施例1で設計した化合物の細胞毒性を評価するために、L929細胞(RIKEN Cell Bank、Japan)(ウェル当たり1×10
4個)を96−ウェルプレートの各ウェルに播種して、12時間培養した。所定の濃度になるよう調製されたそれぞれの化合物で細胞を処理し、48時間培養した。培地を除去し、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)溶液(ウェル当たり100μl)を細胞に加え、4時間培養した。上澄み液を除去し、各ウェルの細胞をDMSO溶液(ウェル当たり100μl)で処理し、室温で10分間インキュベーションして抽出を行った。ELISAリーダ(Bio−Tek instrument)を利用して、550nmで吸光度を測定した。陰性対照群(非処理)との比較により、CC
50(Cytotoxic Concentration 50%)を決定した。その結果は、次の表5の通りである。
【0040】
【表5】
【0041】
前記表
5の結果から、実施例1で設計されたジヒドロキシ安息香酸誘導体は、CC
50値が100μg/ml以上という比較的低い毒性を示すことが分かる。