特許第5717076号(P5717076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5717076蛍光体および製造方法、蛍光体を用いる発光装置および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717076
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】蛍光体および製造方法、蛍光体を用いる発光装置および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20150423BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20150423BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150423BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20150423BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20150423BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20150423BHJP
【FI】
   C09K11/64CQD
   C09K11/08 B
   H05B33/14 A
   H05B33/12 E
   H05B33/10
   H01L33/00 410
【請求項の数】61
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2013-543009(P2013-543009)
(86)(22)【出願日】2012年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2012078870
(87)【国際公開番号】WO2013069696
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-243556(P2011-243556)
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】広崎 尚登
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 司朗
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−132916(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/105631(WO,A1)
【文献】 特開2011−037913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/64
C09K 11/08
H01L 33/50
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式M(ただし、式中d+e+f+g+h=1であり、M元素は、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、A元素は、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、D元素は、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、E元素は、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、X元素は、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)で示され、パラメータd、e、f、g、hが、
0.0007 ≦ d ≦ 0.0086
0.05 ≦ e ≦0.1
0.07 ≦ f ≦ 0.3
0.07 ≦ g ≦ 0.3
0.5634 ≦ h ≦ 0.5755
の条件を全て満たす範囲の組成で表される無機化合物を含む、蛍光体。
【請求項2】
前記組成式において
0.9/5 ≦(d+e)/(f+g)≦ 1.2/5
の関係を満たす無機化合物を含む、請求項に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記組成式において、前記パラメータd、e、f、g、hが、
0.0647≦d+e≦0.0845
0.3521≦f+g≦0.3597
の条件を全て満たす範囲の値である請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記組成式において、前記パラメータf、gが、
2/5 ≦ f/(f+g) ≦ 4/5
の条件を満たす無機化合物を含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項5】
前記組成式において、前記X元素がNとOとを含み、組成式Mh1h2(ただし、式中d+e+f+g+h1+h2=1、およびh1+h2=hである)で示され、
2/8 ≦ h1/(h1+h2)≦ 6/8
の条件を満たす無機化合物を含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記組成式において、
3.5/8 ≦ h1/(h1+h2)≦ 4.5/8
の条件を満たす無機化合物を含む、請求項に記載の蛍光体。
【請求項7】
前記M元素として少なくともEuを含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項8】
前記A元素として少なくともSrおよび/またはBaを含み、前記D元素として少なくともSiを含み、前記E元素として少なくともAlを含み、前記X元素として少なくともNとOとを含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項9】
前記A元素として少なくともSrおよびBaを含む、請求項に記載の蛍光体。
【請求項10】
前記E元素としてさらにホウ素を0.001質量%以上1質量%以下含む、請求項に記載の蛍光体。
【請求項11】
前記無機化合物が、平均粒径0.1μm以上20μm以下の単結晶粒子あるいは単結晶の集合体である、請求項1から10のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項12】
前記無機化合物に含まれる、Fe、Co、Ni不純物元素の合計が500ppm以下である、請求項1から11のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項13】
前記蛍光体は、前記無機化合物に加えて、前記無機化合物とは異なる結晶相またはアモルファス相をさらに含み、
前記無機化合物の含有量は、20質量%以上である、請求項1から12のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項14】
前記無機化合物とは異なる結晶相あるいはアモルファス相は、導電性を持つ無機物質である、請求項13に記載の蛍光体。
【請求項15】
前記導電性を持つ無機物質がZn、Al、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物である、請求項14に記載の蛍光体。
【請求項16】
前記無機化合物とは異なる結晶相あるいはアモルファス相は、蛍光体である、請求項13に記載の蛍光体。
【請求項17】
励起源を照射することにより440nmから520nmの範囲の波長にピークを持つ蛍光を発光する、請求項1から16のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項18】
前記励起源が100nm以上420nm以下の波長を持つ真空紫外線、紫外線または可視光、電子線またはX線である、請求項17に記載の蛍光体。
【請求項19】
励起源が照射されたときに発光する色がCIE1931色度座標上の(x,y)の値で、
0.05 ≦ x ≦ 0.3
0.02 ≦ y ≦ 0.4
の条件を満たす、請求項1から18のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項20】
前記組成式において、M元素はEu、D元素はSi、E元素はAl、X元素はOおよびNであり、前記無機化合物は、
Si3−xAl2+x4+x4−x
ただし、
−1 ≦ x ≦ 2
で示される結晶にEuが固溶した無機化合物を含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項21】
前記A元素は、SrおよびBaの組み合わせである、請求項20に記載の蛍光体。
【請求項22】
前記無機化合物が、
パラメータxとyを用いて
Eu(Sr,Ba)Si3−xAl2+x4+x4−x
(ただし、−1≦ x ≦2 0.0001≦ y ≦0.5)
で示される請求項21に記載の蛍光体。
【請求項23】
前記xは0である、請求項20に記載の蛍光体。
【請求項24】
前記A元素は、SrおよびBaの組み合わせであり、
前記xは0であり、
295nmから420nmの光を照射すると440nm以上520nm以下の青色の蛍光を発する、請求項20に記載の蛍光体。
【請求項25】
前記無機化合物は、SrSiAlで示される結晶からなる無機結晶、SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶、または、これらの固溶体結晶に、M元素(ただしMは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)が固溶した無機化合物を含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項26】
前記SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶は、ASiAlで示される結晶、または、A(D,E)で示される結晶のいずれかである、請求項25に記載の蛍光体。
【請求項27】
前記A元素は、SrとBaのいずれかまたは両方を含み、前記D元素はSiを含み、前記E元素はAlを含み、X元素はNを含み、必要に応じて前記X元素はOを含む、請求項26に記載の蛍光体。
【請求項28】
前記SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶は、SrSiAlで示される結晶、または、(Ba,Sr)SiAlで示される結晶である、請求項25に記載の蛍光体。
【請求項29】
金属化合物の混合物であって焼成することにより、請求項1に記載の蛍光体を構成しうる原料混合物を、窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成する、蛍光体の製造方法。
【請求項30】
前記金属化合物の混合物が、Mを含有する化合物と、Aを含有する化合物と、Dを含有する化合物と、Eを含有する化合物と、Xを含有する化合物(ただし、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、Dは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、Eは、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、Xは、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)とからなる、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項31】
前記Mを含有する化合物が、Mを含有する金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であり、前記Aを含有する化合物が、Aを含有する金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であり、前記Dを含有する化合物が、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物である、請求項30に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項32】
前記金属化合物の混合物が、少なくとも、ユーロピウムの窒化物または酸化物と、ストロンチウムの窒化物または酸化物または炭酸塩、および/または、バリウムの窒化物または酸化物または炭酸塩と、酸化ケイ素または窒化ケイ素と、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムとを含有する、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項33】
前記窒素を含有する不活性雰囲気が0.1MPa以上100MPa以下の圧力範囲の窒素ガス雰囲気である、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項34】
焼成炉の発熱体、断熱体、または試料容器に黒鉛を使用する、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項35】
粉体または凝集体形状の金属化合物を、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で容器に充填した後に焼成する、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項36】
焼成に使う容器が窒化ホウ素製である、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項37】
金属化合物の粉体粒子または凝集体の平均粒径が500μm以下である、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項38】
スプレイドライヤ、ふるい分け、または風力分級により、金属化合物の凝集体の平均粒径を500μm以下に制御する、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項39】
焼結手段がホットプレスによることなく、専ら常圧焼結法もしくはガス圧焼結法による手段である、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項40】
粉砕、分級、酸処理から選ばれる1種ないし複数の手法により、焼成により合成した蛍光体粉末の平均粒径を50nm以上200μm以下に粒度調整する、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項41】
焼成後の蛍光体粉末、あるいは粉砕処理後の蛍光体粉末、もしくは粒度調整後の蛍光体粉末を、1000℃以上で焼成温度以下の温度で熱処理する、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項42】
前記金属化合物の混合物に、焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物を添加して焼成する、請求項29に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項43】
前記焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物が、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素のフッ化物、塩化物、ヨウ化物、臭化物、あるいはリン酸塩の1種または2種以上の混合物である、請求項42に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項44】
焼成後に溶剤で洗浄することにより、焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物の含有量を低減させる、請求項42に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項45】
発光体および第1蛍光体を含む発光装置において、前記第1蛍光体は請求項1から28のいずれかに記載の蛍光体である、発光装置。
【請求項46】
前記発光体が330〜500nmの波長の光を発する発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、半導体レーザ、または有機EL発光体(OLED)である、請求項45に記載の発光装置。
【請求項47】
前記発光装置が、白色発光ダイオード、または白色発光ダイオードを複数含む照明器具、液晶パネル用バックライトである、請求項45に記載の発光装置。
【請求項48】
更に、第2蛍光体を含み、
前記発光体がピーク波長300〜420nmの紫外または可視光を発し、前記第1蛍光体が発する青色光と前記第2蛍光体が発する470nm以上の波長の光を混合することにより白色光または白色光以外の光を発する、請求項45に記載の発光装置。
【請求項49】
前記発光体によりピーク波長420nm〜500nm以下の光を発する青色蛍光体をさらに含む、請求項45に記載の発光装置。
【請求項50】
前記青色蛍光体が、AlN:(Eu,Si)、BaMgAl1017:Eu、SrSiAl19ON31:Eu、LaSiAl1932:Eu、α−サイアロン:Ce、JEM:Ceから選ばれる、請求項49に記載の発光装置。
【請求項51】
前記発光体によりピーク波長500nm以上550nm以下の光を発する緑色蛍光体をさらに含む、請求項45に記載の発光装置。
【請求項52】
前記緑色蛍光体が、β−サイアロン:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si:Euから選ばれる、請求項51に記載の発光装置。
【請求項53】
前記発光体によりピーク波長550nm以上600nm以下の光を発する黄色蛍光体をさらに含む、請求項45に記載の発光装置。
【請求項54】
前記黄色蛍光体が、YAG:Ce、α−サイアロン:Eu、CaAlSiN:Ce、LaSi11:Ceから選ばれる、請求項53に記載の発光装置。
【請求項55】
前記発光体によりピーク波長600nm以上700nm以下の光を発する赤色蛍光体をさらに含む、請求項45に記載の発光装置。
【請求項56】
前記赤色蛍光体が、CaAlSiN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、CaSi:Eu、SrSi:Euから選ばれる、請求項55に記載の発光装置。
【請求項57】
前記発光体が320〜420nmの波長の光を発するLEDである、請求項45に記載の発光装置。
【請求項58】
励起源と蛍光体から構成される画像表示装置において、少なくとも請求項1から28のいずれかに記載の蛍光体を用いる、画像表示装置。
【請求項59】
前記画像表示装置が、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)のいずれかである、請求項58に記載の画像表示装置。
【請求項60】
請求項1から28のいずれかに記載の蛍光体を含む顔料。
【請求項61】
請求項1から28のいずれかに記載の蛍光体を含む紫外線吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成式M(ただし、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、Dは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、Eは、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、Xは、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)で示される蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光表示管(VFD(Vacuum−Fluorescent Display))、フィールドエミッションディスプレイ(FED(Field Emission Display)またはSED(Surface−Conduction Electron−Emitter Display))、プラズマディスプレイパネル(PDP(Plasma Display Panel))、陰極線管(CRT(Cathode−Ray Tube))、液晶ディスプレイバックライト(Liquid−Crystal Display Backlight)、白色発光ダイオード(LED(Light−Emitting Diode))などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により励起されて、青色光、緑色光、黄色光、橙色光、赤色光等の可視光線を発する。しかしながら、蛍光体は前記のような励起源に曝される結果、蛍光体の輝度が低下し易く、輝度低下のない蛍光体が求められている。そのため、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、高エネルギーの励起においても輝度低下の少ない蛍光体として、サイアロン蛍光体、酸窒化物蛍光体、窒化物蛍光体などの、結晶構造に窒素を含有する無機結晶を母体とする蛍光体が提案されている。
【0003】
このサイアロン蛍光体の一例は、概略以下に述べるような製造プロセスによって製造される。まず、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ユーロピウム(Eu)を所定のモル比に混合し、1気圧(0.1MPa)の窒素中において1700℃の温度で1時間保持してホットプレス法により焼成して製造される(例えば、特許文献1参照)。このプロセスで得られるEu2+イオンを付活したαサイアロン(α−sialon)は、450から500nmの青色光で励起されて550から600nmの黄色の光を発する蛍光体となることが報告されている。また、αサイアロンの結晶構造を保ったまま、SiとAlの割合や酸素と窒素の割合を変えることにより、発光波長が変化することが知られている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【0004】
サイアロン蛍光体の別の例として、β型サイアロン(β−sialon)にEu2+を付活した緑色の蛍光体が知られている(特許文献4参照)。この蛍光体では、結晶構造を保ったまま酸素含有量を変化させることにより発光波長が短波長に変化することが知られている(例えば、特許文献5参照)。また、Ce3+を付活すると青色の蛍光体となることが知られている(例えば、特許文献6参照)。
【0005】
酸窒化物蛍光体の一例は、JEM相(LaAl(Si6−zAl)N10−z)を母体結晶としてCeを付活させた青色蛍光体(特許文献7参照)が知られている。この蛍光体では、結晶構造を保ったままLaの一部をCaで置換することにより、励起波長が長波長化するとともに発光波長が長波長化することが知られている。
【0006】
酸窒化物蛍光体の別の例として、La−N結晶LaSi11を母体結晶としてCeを付活させた青色蛍光体(特許文献8参照)が知られている。
【0007】
窒化物蛍光体の一例は、CaAlSiNを母体結晶としてEu2+を付活させた赤色蛍光体(特許文献9参照)が知られている。この蛍光体を用いることにより、白色LEDの演色性を向上させる効果がある。光学活性元素としてCeを添加した蛍光体は橙色の蛍光体と報告されている。
【0008】
このように、蛍光体は、母体となる結晶と、それに固溶させる金属イオン(付活イオン)の組み合わせで、発光色が決まる。さらに、母体結晶と付活イオンの組み合わせは、発光スペクトル、励起スペクトルなどの発光特性や、化学的安定性、熱的安定性を決めるため、母体結晶が異なる場合や付活イオンが異なる場合は、異なる蛍光体と見なされる。また、化学組成が同じであっても結晶構造が異なる材料は、母体結晶が異なることにより発光特性や安定性が異なるため、異なる蛍光体と見なされる。
【0009】
さらに、多くの蛍光体においては母体結晶の結晶構造を保ったまま、構成する元素の種類を置換することが可能であり、これにより発光色を変化させることが行われている。例えば、YAGにCeを添加した蛍光体は緑色発光をするが、YAG結晶中のYの一部をGdで、Alの一部をGaで置換した蛍光体は黄色発光を呈する。さらに、CaAlSiNにEuを添加した蛍光体においては、Caの一部をSrで置換することにより結晶構造を保ったまま組成が変化し、発光波長が短波長化することが知られている。このように、結晶構造を保ったまま元素置換を行った蛍光体は、同じグループの材料と見なされる。
【0010】
これらのことから、新規蛍光体の開発においては、新規の結晶構造を持つ母体結晶を見つけることが重要であることが分かる。しかしながら、結晶構造は積み木を組み立てるように人工的に構築することは極めて困難である。つまり、ふさわしい組成条件、温度や雰囲気等の環境条件を揃えることにより、自由エネルギーが最小化若しくは極小化されて、結晶構造が構成される。いうなれば、これらの諸条件を新たに見出すことが、新規の結晶構造を持つ母体結晶を見つけることに通じるのである。そして、このように見出された母体結晶に発光を担う金属イオンを付活して蛍光特性を発現させることにより、新規の蛍光体を提案することができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3668770号明細書
【特許文献2】特許第3837551号明細書
【特許文献3】特許第4524368号明細書
【特許文献4】特許第3921545号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/066733号公報
【特許文献6】国際公開第2006/101096号公報
【特許文献7】国際公開第2005/019376号公報
【特許文献8】特開2005−112922号公報
【特許文献9】特許第3837588号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような要望に応えようとするものであり、目的のひとつは、従来の蛍光体とは異なる発光特性(発光色や励起特性、発光スペクトル)を有し、かつ、470nm以下のLEDと組み合わせた場合でも発光強度が高く、化学的および熱的に安定な無機蛍光体を提供することにある。本発明のもうひとつの目的として、係る蛍光体を用いた耐久性に優れた発光装置および耐久性に優れる画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らにおいては、組成式M(ただし、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、Dは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、Eは、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、Xは、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)で示される蛍光体について詳細な研究を行った。その結果、特定の組成となる原料混合物を所定の条件で焼成することによって得られる所定の組成を有する無機物質が、高輝度の蛍光を発する蛍光体となることを見出した。
【0014】
さらに、この蛍光体を用いることにより、高い発光効率を有し温度変動が小さい白色発光ダイオード(発光装置)や、それを用いた照明器具や、鮮やかな発色の画像表示装置が得られることを見いだした。
【0015】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、以下に記載する構成を講ずることによって特定波長領域で高い輝度の発光現象を示す蛍光体を提供することに成功した。また、後述する方法を用いて優れた発光特性を持つ蛍光体を製造することに成功した。さらに、この蛍光体を使用し、以下に記載する構成を講ずることによって優れた特性を有する発光装置、照明器具、画像表示装置、顔料、紫外線吸収材を提供することにも成功したものである。具体的には、以下のものを含んでよい。
【0016】
組成式M(ただし、式中d+e+f+g+h=1であり、M元素は、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、A元素は、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、D元素は、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、E元素は、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、X元素は、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)で示され、パラメータd、e、f、g、hが、
0.00001 ≦ d ≦0.05
0.05 ≦ e ≦0.1
0.07 ≦ f ≦ 0.3
0.07 ≦ g ≦ 0.3
0.45 ≦ h ≦ 0.6
の条件を全て満たす範囲の組成で表される無機化合物を含む、蛍光体。
【0017】
金属化合物の混合物であって焼成することにより、前段落に記載の蛍光体を構成しうる原料混合物を、窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成する、蛍光体の製造方法。
【0018】
発光体および第1蛍光体を含む発光装置において、前記第1蛍光体は、段落[0016]に記載される蛍光体または段落[0016]以外の本明細書若しくは図面において開示される新規な蛍光体である、発光装置。
【0019】
前記発光体が330〜500nmの波長の光を発する発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、半導体レーザ、または有機EL発光体(OLED)である、段落[0018]に記載の発光装置。
【0020】
前記発光装置が、白色発光ダイオード、または白色発光ダイオードを複数含む照明器具、液晶パネル用バックライトである、段落[0018]または[0019]に記載の発光装置。
【0021】
更に、第2蛍光体を含み、前記発光体がピーク波長300〜420nmの紫外または可視光を発し、前記第1蛍光体が発する青色光と前記第2蛍光体が発する470nm以上の波長の光を混合することにより白色光または白色光以外の光を発する、段落[0018]−[0020]のいずれかに記載の発光装置。
【0022】
前記発光体によりピーク波長420nm〜500nm以下の光を発する青色蛍光体をさらに含む、段落[0018]−[0021]のいずれかに記載の発光装置。
【0023】
前記青色蛍光体が、AlN:(Eu,Si)、BaMgAl1017:Eu、SrSiAl19ON31:Eu、LaSiAl1932:Eu、α−サイアロン:Ce、JEM:Ceから選ばれる、段落[0022]に記載の発光装置。
【0024】
前記発光体によりピーク波長500nm以上550nm以下の光を発する緑色蛍光体をさらに含む、段落[0018]−[0023]のいずれかに記載の発光装置。
【0025】
前記緑色蛍光体が、β−サイアロン:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si:Euから選ばれる、段落[0024]に記載の発光装置。
【0026】
前記発光体によりピーク波長550nm以上600nm以下の光を発する黄色蛍光体をさらに含む、段落[0018]−[0025]のいずれかに記載の発光装置。
【0027】
前記黄色蛍光体が、YAG:Ce、α−サイアロン:Eu、CaAlSiN:Ce、LaSi11:Ceから選ばれる、段落[0026]に記載の発光装置。
【0028】
前記発光体によりピーク波長600nm以上700nm以下の光を発する赤色蛍光体をさらに含む、段落[0018]−[0027]のいずれかに記載の発光装置。
【0029】
前記赤色蛍光体が、CaAlSiN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、CaSi:Eu、SrSi:Euから選ばれる、段落[0028]に記載の発光装置。
【0030】
前記発光体が320〜420nmの波長の光を発するLEDである、段落[0018]−[0029]のいずれかに記載の発光装置。
【0031】
励起源と蛍光体から構成される画像表示装置において、段落[0016]に記載される蛍光体または段落[0016]以外の本明細書若しくは図面において開示される新規な蛍光体を少なくとも用いる、画像表示装置。
【0032】
前記画像表示装置が、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)のいずれかである、段落[0031]に記載の画像表示装置。
【0033】
段落[0016]に記載される蛍光体または段落[0016]以外の本明細書若しくは図面において開示される新規な蛍光体を含む顔料。
【0034】
段落[0016]に記載される蛍光体または段落[0016]以外の本明細書若しくは図面において開示される新規な蛍光体を含む紫外線吸収剤。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、特定の組成となる原料混合物を所定の条件で焼成することによって得られる、上述の組成を満たす無機化合物を蛍光体として利用できる。また、組成を制御することにより高輝度の青色蛍光体となり得る。さらに、この蛍光体を用いることにより、高い発光効率を有し温度変動が小さい白色発光ダイオード(発光装置)や、それを用いた照明器具や、鮮やかな発色の画像表示装置が得られる。励起源に曝された場合でも、この蛍光体は、輝度が低下しないため、白色発光ダイオード等の発光装置、照明器具、液晶用バックライト光源、VFD、FED、PDP、CRTなどに好適に使用される有用な蛍光体を提供するものである。また、この蛍光体は、紫外線を吸収することから顔料および紫外線吸収剤に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】SrSiAl結晶の結晶構造を示す図。
図2】SrSiAl結晶の結晶構造から計算したCuKα線を用いた粉末X線回折を示す図。
図3】実施例21で合成した蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
図4】実施例21で合成した蛍光体の粉末X線回折結果を示す図。
図5】本発明による照明器具(砲弾型LED照明器具)を示す概略図。
図6】本発明による照明器具(基板実装型LED照明器具)を示す概略図。
図7】本発明による画像表示装置(プラズマディスプレイパネル)を示す概略図。
図8】本発明による画像表示装置(フィールドエミッションディスプレイパネル)を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の蛍光体を、図面を参照して詳しく説明する。
本発明の蛍光体は、特定の組成となる原料混合物を所定の条件で焼成することによって得られる後述の組成を満たす無機化合物を含有する。さらに、この蛍光体を用いることにより、高い発光効率を有し温度変動が小さい白色発光ダイオード(発光装置)や、それを用いた照明器具や、鮮やかな発色の画像表示装置が得られる。さらに、この蛍光体を使用し、後述する構成を講ずることによって優れた特性を有する発光装置、照明器具、画像表示装置、顔料、紫外線吸収材を提供できる。
【0038】
本発明者は、組成式M(ただし、式中d+e+f+g+h=1であり、M元素は、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、A元素は、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、D元素は、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、E元素は、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、X元素は、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)で示され、パラメータd、e、f、g、hが、
0.00001 ≦ d ≦ 0.05
0.05 ≦ e ≦ 0.1
0.07 ≦ f ≦ 0.3
0.07 ≦ g ≦ 0.3
0.45 ≦ h ≦ 0.6
の条件を全て満たす範囲の組成で表される無機化合物を得るべく、原料となる所定の原料混合物を所定の条件で焼成したところ、蛍光体となることを見出した。言い換えれば、上述の組成式において、それぞれのパラメータが上述の式で規定される範囲を満足する無機化合物を含む蛍光体である。
【0039】
パラメータdは、付活元素の添加量であり、0.00001より少ないと発光イオンの量が不十分で輝度が低下する。0.05より多いと発光イオン間の相互作用による濃度消光のため発光強度が低下する恐れがある。パラメータeは、Ba等のアルカリ土類元素の組成を表すパラメータであり、0.05より少ないか0.1より高いと結晶構造が不安定になり発光強度が低下する。パラメータfは、Si等のD元素の組成を表すパラメータであり、0.07より少ないか0.3より高いと結晶構造が不安定になり発光強度が低下する。パラメータgは、Al等のE元素の組成を表すパラメータであり、0.07より少ないか0.3より高いと結晶構造が不安定になり発光強度が低下する。パラメータhは、O、N、F等のX元素の組成を表すパラメータであり、0.45より少ないか0.6より高いと結晶構造が不安定になり発光強度が低下する。X元素はアニオンであり、A、M、D、E元素のカチオンと中性の電荷が保たれるようにO、N、F比の組成が決まる。
【0040】
また、段落[0038]に記載した組成式において、
0.5/5 ≦(d+e)/(f+g)≦ 2/5
の関係をさらに満たす無機化合物を含む蛍光体は、蛍光特性に優れる。
【0041】
段落[0038]に記載した組成において、
0.9/5 ≦(d+e)/(f+g)≦ 1.2/5
の関係を満たす無機化合物を含む段落[0038]または[0040]に記載の蛍光体は、高輝度発光するため、好ましい。
【0042】
段落[0038]に記載した組成において、
1.0/5 ≦(d+e)/(f+g)≦ 1.2/5
の関係をさらに満たす無機化合物を含む段落[0038]、[0040]−[0041]のいずれかに記載の蛍光体は、さらに高輝度発光するため、さらに好ましい。
【0043】
段落[0038]に記載した組成式において、前記パラメータd、e、f、g、hが、
0.06 ≦d+e≦ (1/14)+0.05
(5/14)−0.05 ≦f+g≦ (5/14)+0.05
(8/14)−0.05 ≦ h ≦ 0.6
の条件を全て満たす範囲の値である無機化合物を含む段落[0038]、[0040]−[0042]のいずれかに記載の蛍光体は、好ましい蛍光特性を備える。
【0044】
前段落において、特に、
d+e=1/14
f+g=5/14
h=8/14
の条件を全て満たす無機化合物を含む段落[0038]、[0040]−[0043]のいずれかに記載の蛍光体は、後述する結晶構造((M,A)(Si,Al)(O,N)の組成を持つ結晶)が特に安定であり特に発光強度が高い。
【0045】
さらに、段落[0038]に記載した組成式において、前記パラメータf、gが、
2/5 ≦ f/(f+g) ≦ 4/5
の条件を満たす無機化合物を含む段落[0038]、[0040]−[0044]のいずれかに記載の蛍光体は好ましい。後述するように結晶構造が安定であり発光強度が高いからである。
【0046】
また、段落[0038]に記載した組成式において、前記X元素がNとOとを含み、組成式Mh1h2(ただし、式中d+e+f+g+h1+h2=1、およびh1+h2=hである)で示され、
2/8 ≦ h1/(h1+h2)≦ 6/8
の条件を満たす無機化合物を含む段落[0038]、[0040]−[0045]のいずれかに記載の蛍光体は好ましい。蛍光特性に優れるからである。
【0047】
さらに、段落[0038]に記載した前記組成式において、好ましくは、
3.5/8 ≦ h1/(h1+h2)≦ 4.5/8
の条件を満たす無機化合物を含む段落[0038]、[0040]−[0046]のいずれかに記載の蛍光体は好ましい。蛍光特性に優れるからである。無機化合物中に含まれるNとOの原子数の比が、このようになると、後述する結晶構造が安定であり発光強度が高い。
【0048】
前記組成式において、さらに好ましくは、
3.6/8 ≦ h1/(h1+h2)≦ 4.1/8
の条件を満たす無機化合物を含むと、さらに発光強度が高くなる。
【0049】
付活元素であるM元素として少なくともEuを含む段落[0038]、[0040]−[0048]のいずれかに記載の蛍光体は、本発明の中でも発光強度が高い蛍光体であり、励起源を照射することにより、波長400nm〜590nmの範囲の波長にピークを持つ蛍光を発する。
【0050】
A元素として少なくともSrおよび/またはBaを含み、D元素として少なくともSiを含み、E元素として少なくともAlを含み、X元素として少なくともNとOを含む、段落[0038]、[0040]−[0049]のいずれかに記載の蛍光体は好ましい。発光強度が高く、励起源を照射することにより、波長440nm〜520nmの範囲の波長にピークを持つ青色の蛍光を発する。より好ましくは、A元素としてSrおよびBaの両方を含む段落[0038]、[0040]−[0049]、および本段落のいずれかに記載の蛍光体である。これにより、後述する結晶構造が安定するので、発光強度が高くなる。さらに、E元素としてホウ素を含んでもよく、この場合、ホウ素の含有量は、0.001質量%以上1質量%以下である。これにより、発光強度が高くなり得る。
【0051】
上述のような組成式を満たす蛍光体を詳細に調べたところ、SrSiAlで示される結晶が含まれていることがわかった。この結晶は、本発明者が新たに合成し、結晶構造解析により新規結晶であると確認した、本発明より以前において報告されていない結晶である。
【0052】
図1は、SrSiAl結晶の結晶構造を示す図である。
【0053】
例示的なSrSiAlで示される結晶からなる無機結晶として、本発明者が合成したSrSiAl結晶について行った単結晶構造解析によれば、SrSiAl結晶は単斜晶系に属し、P2空間群(International Tables for Crystallographyの4番の空間群)に属し、表1に示す結晶パラメータおよび原子座標位置を占める。
【0054】
表1において、格子定数a、b、cは単位格子の軸の長さを示し、α、β、γは単位格子の軸間の角度を示す。原子座標は単位格子中の各原子の位置を、単位格子を単位とした0から1の間の値で示す。この結晶中には、Sr、Si、Al、O、Nの各原子が存在し、Srは4種類の場所(Sr(1A),Sr(1B),Sr(2A),Sr(2B))が有り、Sr(1)はSr(1A)に61.3%、Sr(1B)に38.7%の割合で、Sr(2)はSr(2A)に66.9%、Sr(2B)に33.1%の割合で、存在する解析結果を得た。また、SiとAlは席を区別することなくSiAl(1)からSiAl(10)の10種類の席に存在する解析結果を得た。さらに、OとNは席を区別することなくNO(1)からNO(16)の16種類の席に存在する解析結果を得た。
【0055】
表1.SrSiAl結晶の結晶構造データ
【表1】
【0056】
表1のデータを使った解析の結果、SrSiAl結晶は図1に示す構造であり、SiまたはAlと、OまたはNとの結合で構成される4面体が連なった骨格中にSr元素が含有された構造を持つことが分かった。この結晶中にはEu等の付活イオンとなるM元素はSr元素の一部を置換する形で結晶中に取り込まれる。
【0057】
合成および構造解析したSrSiAl結晶と同一の結晶構造をとる結晶として、ASiAl結晶とA(D,E)で示される結晶がある。代表的なA元素はBa、または、SrとBaの混合である。代表的なX元素は、OとNとの混合である。A(Si,Al)(O,N)結晶においては、SiとAlが入る席に相互に区別することなくSiとAlが入り、OとNが入る席には相互に区別することなくOとNが入ることができる。これにより、結晶構造を保ったまま、A元素が1に対して、SiとAlが合計で5、OとNが合計で8の原子数の比とすることができる。ただし、Si/Al比とO/N比は結晶中の電気的中性が保たれる条件を満たすことが望ましい。
【0058】
本発明のSrSiAl系結晶は、X線回折や中性子線回折により同定することができる。本発明で示すSrSiAl系結晶のX線回折結果と同一の回折を示す物質として、A(D,E)で示される結晶がある。さらに、SrSiAl結晶において構成元素が他の元素と置き換わることにより格子定数や原子位置が変化した結晶がある。ここで、構成元素が他の元素で置き換わるものとは、例えば、SrSiAl結晶中のSrの一部または全てが、Sr以外のA元素(ただし、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素)あるいはM元素(ただし、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)で置換したものがある。さらに、結晶中のSiの一部または全てが、Si以外のD元素(ただし、Dは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素)で置換したものがある。さらに、結晶中のAlの一部または全てが、Al以外のE元素(ただし、Eは、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素)で置換したものがある。さらに、結晶中のOまたはNの一部または全てがフッ素で置換したものがある。これらの置換は結晶中の全体の電荷が中性となるように置換される。これらの、元素置換の結果、結晶構造が変わらないものは、SrSiAl系結晶である。元素の置換により、蛍光体の発光特性、化学的安定性、熱的安定性が変化するので、結晶構造が保たれる範囲に置いて、用途に応じて適時選択してもよい。
【0059】
SrSiAl系結晶は、その構成成分が他の元素で置き換わったり、Euなどの付活元素が固溶することによって格子定数は変化するが、結晶構造と原子が占めるサイトとその座標によって与えられる原子位置は骨格原子間の化学結合が切れるほどには大きく変わることはない。本発明では、X線回折や中性子線回折の結果をP2の空間群でリートベルト解析して求めた格子定数および原子座標から計算されたAl−NおよびSi−Nの化学結合の長さ(近接原子間距離)が、表1に示すSrSiAl結晶の格子定数と原子座標から計算された化学結合の長さと比べて±5%以内の場合は同一の結晶構造と定義してSrSiAl系結晶かどうかの判定を行う。この判定基準は、実験によれば、SrSiAl系結晶において化学結合の長さが±5%を越えて変化すると化学結合が切れて別の結晶となったことがあり、これを基準にすることが可能であると分かったためである。従って、化学結合が切れて別の結晶にならない範囲とすることができるが、このような数値による基準を設けることも可能である。
【0060】
さらに、固溶量が小さい場合は、SrSiAl系結晶の簡便な判定方法として次の方法がある。新たな物質について測定したX線回折結果から計算した格子定数と表1の結晶構造データを用いて計算した回折のピーク位置(2θ)が主要ピークについて一致したときに当該結晶構造が同じものと特定することができる。
【0061】
図2は、SrSiAl結晶の結晶構造から計算したCuKα線を用いた粉末X線回折を示す図である。
【0062】
図2と比較対象となる物質のX線回折パターンを比べることにより、SrSiAl系結晶かどうかの簡易的な判定ができる。SrSiAl系結晶の主要ピークとしては、回折強度の強い10本程度で判定すると良い。表1は、その意味でSrSiAl系結晶を特定する上において基準となるもので重要である。また、SrSiAl系結晶の結晶構造を単斜晶の他の晶系を用いても近似的な構造を定義することができ、その場合異なった空間群と格子定数および面指数を用いた表現となるが、X線回折結果(例えば図2)および結晶構造(例えば図1)に変わりはなく、それを用いた同定方法や同定結果も同一の物となる。このため、本発明では、単斜晶系としてX線回折の解析を行うものとする。この表1に基づく物質の同定方法については、後述実施例において具体的に述べることとし、ここでは概略的な説明に留める。
【0063】
上述するように、SrSiAl系結晶には、BaSiAl結晶または結晶系が含まれてよい。BaSiAl結晶は基本的に、図1と同じ構造をしており、図2で示されるようなX線回折パターンを持つことができる。そして、SrSiAl結晶と同様に、単斜晶系に属し、P2空間群(International Tables for Crystallographyの4番の空間群)に属する。
【0064】
SrSiAl系結晶に、M元素として、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素を付活した無機化合物は蛍光体となる。すなわち、段落[0038]および[0040]−[0050]のいずれかに記載した蛍光体において、所定の組成の無機化合物は、このようなSrSiAlで示される結晶からなる無機結晶、SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶、または、これらの固溶体結晶に、M元素が固溶した無機化合物を含み得る。さらに、上記したSrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶は、ASiAlで示される結晶、または、A(D,E)で示される結晶のいずれかであることを特徴とする、上述する蛍光体とすることができる。SrSiAl系結晶の組成、付活元素の種類および量により、励起波長、発光波長、発光強度等の発光特性が変化するので、用途に応じて選択するとよい。なお、M元素としてEuを含む場合、発光強度が高い蛍光体が得られる。
【0065】
前段落に記載される上記無機結晶が、ASiAlで示される結晶、または、A(D,E)で示される結晶のいずれかである、蛍光体において、前記A元素は、SrとBaのいずれかまたは両方を含み、前記D元素はSiを含み、前記E元素はAlを含み、X元素はNを含み、必要に応じて前記X元素はOを含む、ことを特徴とすることができる。前段落に記載される上記無機結晶が、A(D,E)で示される結晶であるとき、少なくともA元素にSrとBaのいずれかまたは両方を含み、D元素にSiを含み、E元素にAlを含み、X元素にNを含み、必要に応じてX元素にOを含むと、その蛍光体の発光強度が高い。なかでも特に輝度が高いのは、AがSrとBaの混合であり、DがSi、EがAl、XがOおよびNの組み合わせであるSrSiAl系結晶を母体とする蛍光体である。また、前段落に記載される上記無機結晶が、SrSiAlで示される結晶、または、(Ba,Sr)SiAlで示される結晶であることを特徴とする蛍光体であってもよい。
【0066】
SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶が、BaSiAl、または、(Sr,Ba)SiAl、である蛍光体は結晶が安定であり、発光強度が高い。(Sr,Ba)1は、全体のモル比率では、1対13(5+8=13)であるが、この1をSrおよびBaにより構成する。例えば、「Sr0.5Ba0.5SiAl」、「SrBaSiAl」、「SrBaSiAl」等を含んでもよい。
【0067】
SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶が、(Sr,Ba)Si3−xAl2+x4+x4−x(ただし、−1 ≦ x ≦ 2)の組成式で示される結晶をホストとする蛍光体は、発光強度が高く組成を変えることにより色調の変化が制御できる蛍光体である。
【0068】
ここで、同一の結晶構造は、実質的に同じとされる構造を含んでよく、いわゆる相似形も含まれてよい。従って、格子定数が長いもの或いは短いものであっても、同一の構造を備えるといえる。一般に、固溶体とは、固体に他の固体が溶けて均一な一つの固体となっているものを意味し、固溶とは、そのような状態になること或いはそのような状態であることをいう。例えば、無機化合物の結晶構造の中に他の原子が入り込んでも、元の結晶構造の形を保って固体状態で混じり合っている状態を固溶と言ってよく、そのものを固溶体と呼ぶことができる。より具体的な例として、固溶体には、置換型固溶体および侵入型固溶体が含まれる。
【0069】
置換型固溶体は、溶媒原子の代わりに溶質原子が置き換わるもので、それぞれの原子の大きさが同じぐらいであると、置換がおこなわれやすい。原子半径の違いが10%ぐらいまでは、成分比の全体にわたって完全に固溶すると考えられているが、それ以上では固溶度は急激に減少し、15%以上ではほとんど固溶しなくなるといわれる。この経験則がヒューム‐ロザリーの法則の1つとなっている。侵入型固溶体は、原子半径の比較的小さい元素が、結晶格子の原子間のすきまに侵入するものとされている。ここで述べる固溶体は何れか一方或いは両方であってもよい。尚、固溶の際は、全体として電荷の中性を保つことが好ましい。しかしながら、電子および/または正孔が結晶構造内に少なくとも部分的に生じることもあり得るので、電荷の中性が構成する元素においてのみ成立しなければならないわけではない。
【0070】
ここで、M元素はEu、D元素はSi、E元素はAl、X元素はOおよびNであり、前記無機化合物は、組成式がパラメータxを用いて
Si3−xAl2+x4+x4−x
ただし、
−1 ≦ x ≦ 2
で示される結晶にEuが固溶した無機化合物を含むことができる。これにより、高輝度発光する蛍光体を提供できる。より好ましくは、A元素は、SrおよびBaの組み合わせであり、これにより、上述の結晶構造を有する結晶が安定し、発光特性を向上させることができる。さらに好ましくは、xが0であり、これにより、上述の結晶構造を有する結晶が特に安定となり、発光強度をさらに向上させることができる。上述するような無機化合物を含む、段落[0038]、[0040]−[0050]、および[0064]−[0067]のいずれかに記載した蛍光体は好ましい。
【0071】
なお、この無機化合物は、パラメータxとyを用いて
Eu(Sr,Ba)Si3−xAl2+x4+x4−x
ただし、
−1 ≦ x ≦ 2
0.0001 < y ≦ 0.5
で示されてもよい。このような範囲では、安定な結晶構造を保ったままxおよびyのパラメータを変えることによる組成範囲で、Eu/(Sr,Ba)比、Si/Al比、N/O比を変化させることができる。これにより、励起波長や発光波長を連続的に変化させることができるため、材料設計がやりやすい蛍光体である。上述する無機化合物を含む、段落[0038]、[0040]−[0050]、[0064]−[0067]、および[0070]のいずれかに記載した蛍光体は好ましい。また、上述の式において、x=0となる無機化合物を含むこれらの蛍光体は好ましい。
【0072】
段落[0038]、[0040]−[0050]、[0064]−[0067]、および[0070]−[0071]のいずれかに記載した蛍光体において、A元素は、SrおよびBaの組み合わせであり、前段落に記載したxは0(x=0)であり、295nmから420nmの光を照射すると440nm以上520nm以下の青色の蛍光を発する、前段落に記載した蛍光体は好ましい。
【0073】
SrSiAlで示される結晶あるいはSrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶において、無機結晶が単斜晶系である結晶は特に安定であり、これらをホスト結晶とする蛍光体は発光強度が高い。
【0074】
A元素として少なくともSrとBaを含み、D元素として少なくともSiを含み、E元素として少なくともAlを含み、X元素として少なくともNとOを含む組成は、結晶構造が安定であり、発光強度が高い。
【0075】
さらに、SrSiAlで示される結晶あるいはSrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶が、単斜晶系の結晶であり、空間群P2の対称性を持ち、格子定数a、b、cが、
a = 0.72516±0.05 nm
b = 0.93431±0.05 nm
c = 1.08761±0.05 nm
の範囲のものは結晶が特に安定であり、これらをホスト結晶とする蛍光体は発光強度が高い。尚、上述の式において「±0.05」は公差を示すものである。この範囲を外れると結晶が不安定となり発光強度が低下することがある。
【0076】
無機化合物が、平均粒径0.1μm以上20μm以下の単結晶粒子あるいは単結晶の集合体である、段落[0038]、[0040]−[0050]、[0064]−[0067]、および[0070]−[0072]のいずれかに記載した蛍光体は好ましい。発光効率が高く、LEDに実装する場合の操作性がよいからである。この範囲の粒径に制御してもよい。
【0077】
段落[0038]、[0040]−[0050]、[0064]−[0067]、[0070]−[0072]、および[0076]のいずれかに記載した蛍光体において、その無機化合物に含まれる、Fe、Co、Ni不純物元素の合計が500ppm以下である蛍光体は好ましい。Fe、Co、Ni不純物元素は発光強度低下の要因となる恐れがある。蛍光体中のこれらの元素の合計が500ppm以下とすることにより、発光強度低下の影響が少なくなる。
【0078】
本発明の実施形態の1つとして、段落[0038]、[0040]−[0050]、[0064]−[0067]、[0070]−[0072]、および[0076]−[0077]のいずれかに記載した蛍光体において、上述の無機化合物と、これとは異なる他の結晶相あるいはアモルファス相をさらに含み、前記無機化合物の含有量が20質量%以上である、蛍光体は好ましい。即ち、混合物から構成される蛍光体が、上述の無機化合物の含有量を20質量%以上とすることがあり得る。実質的に、上述の無機化合物のみからなる蛍光体単体では目的の特性が得られない場合や導電性等の機能を付加する場合に本実施形態を用いると良い。上述の無機化合物の含有量は目的とする特性により調整するとよいが、20質量%以下では発光強度が低くなる恐れがある。なお、上述の無機化合物の一例としてSrSiAl系結晶がある。
【0079】
電子線励起の用途など蛍光体に導電性が好ましいとされる場合がある。前段落に記載した蛍光体において、上記無機化合物とは異なる他の結晶相あるいはアモルファス相が、導電性を持つ無機物質であることを特徴とする蛍光体であってもよい。また、このような無機物質を添加してもよい。
【0080】
前段落に記載した蛍光体において、上記導電性を持つ無機物質としては、Zn、Al、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物であってもよい。例えば、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化インジウム、酸化スズなどを挙げることができる。
【0081】
上述の無機化合物の蛍光体単体では目的とする発光スペクトルが得られない場合は、第2の他の蛍光体を添加するとよい。他の蛍光体としては、BAM蛍光体、β−サイアロン蛍光体、α−サイアロン蛍光体、(Sr,Ba)Si蛍光体、CaAlSiN蛍光体、(Ca,Sr)AlSiN蛍光体等を挙げることができる。あるいは、他の蛍光体として、上述の他の結晶相あるいはアモルファス相を用いてもよい。すなわち、段落[0078]に記載した無機化合物とは異なる結晶相あるいはアモルファス相は、蛍光体として機能してもよい。上記無機化合物とは異なる結晶相あるいはアモルファス相は、蛍光体であることを特徴とする、前段落に記載の蛍光体であってもよい。
【0082】
本発明の実施形態の1つとして、励起源を照射することにより400nmから590nmの範囲の波長にピークを持つ蛍光体がある。例えば、M元素がEuである上述の無機化合物の蛍光体は組成の調整によりこの範囲に発光ピークを持つ。
【0083】
本発明の実施形態の1つとして、励起源を照射することにより440nmから520nmの範囲の波長にピークを持つ蛍光体がある。この蛍光体は、段落[0038]、[0040]−[0050]、[0064]−[0067]、[0070]−[0072]、および[0076]−[0078]のいずれかに記載したものであってよい。例えば、M元素がEuであり、A元素がSrおよびBaであり、D元素がSiであり、E元素がAlであり、X元素がNとOとである上述の無機化合物が、(Sr,Ba)SiAl結晶にEuが固溶した無機化合物を含む場合がある。これにより、295nmから420nmの光を照射すると440nm以上520nm以下の青色の蛍光を発するので、白色LED等の青色発光の用途に用いると良い。
【0084】
本発明の実施形態の1つとして、前段落に記載した励起源が100nm以上420nm以下の波長を持つ真空紫外線、紫外線または可視光、電子線またはX線である前段落に記載した蛍光体は好ましい。これらの励起源を用いることにより効率よく発光させることができる。
【0085】
本発明の実施形態の1つとして、励起源が照射されたときに発光する色がCIE1931色度座標上の(x,y)の値で、
0.05 ≦ x ≦ 0.3
0.02 ≦ y ≦ 0.4
の条件を満たす、段落[0038]、[0040]−[0050]、[0064]−[0067]、[0070]−[0072]、[0076]−[0078]、および[0083]−[0084]のいずれかに記載した蛍光体は好ましい。例えば、上述の無機化合物が、Eu(Sr,Ba)Si3−xAl2+x4+x4−x
ただし、
−1 ≦ x ≦ 2
0.0001 ≦ y ≦ 0.5
で示される組成に調整された無機化合物を含むことにより、この範囲の色度座標の色を発色する蛍光体が得られる。白色LED等の青色発光の用途に用いてもよい。
【0086】
このように本発明の蛍光体は、通常の酸化物蛍光体や既存のサイアロン蛍光体と比べて、電子線やX線、および紫外線から可視光の幅広い励起範囲を持つこと、青色の発光をすること、特に特定の組成では440nm〜520nmの青色を呈し、かつ、発光波長や発光ピーク幅が調節可能であることが特徴である。しかして、このような発光特性により、本発明の蛍光体は、照明器具、画像表示装置、顔料、紫外線吸収剤に好適である。本発明の蛍光体はまた、高温にさらしても劣化しないことから耐熱性に優れており、酸化雰囲気および水分環境下での長期間の安定性にも優れているという利点をも有し、耐久性に優れた製品を提供し得る。
【0087】
このような本発明の蛍光体の製造方法は特に規定されないが、次のような方法が例示される。金属化合物の混合物であって焼成することにより、段落[0038]、[0040]−[0050]、[0064]−[0067]、[0070]−[0072]、[0076]−[0078]、および[0083]−[0085]のいずれかに記載した蛍光体を構成しうる原料混合物を、窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成する、蛍光体の製造方法である。ここで、前記金属化合物の混合物が、Mを含有する化合物と、Aを含有する化合物と、Dを含有する化合物と、Eを含有する化合物と、Xを含有する化合物(ただし、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、Dは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、Eは、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、Xは、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)とからなる、上述の蛍光体の製造方法を例示できる。
【0088】
前段落に記載される蛍光体の製造方法において、前記Mを含有する化合物が、Mを含有する金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であり、前記Aを含有する化合物が、Aを含有する金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であり、前記Dを含有する化合物が、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物である、蛍光体の製造方法も例示できる。
【0089】
出発原料としては、例えば、金属化合物の混合物が、Mを含有する化合物と、Aを含有する化合物と、Dを含有する化合物と、Eを含有する化合物と、Xを含有する化合物(ただし、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、Dは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、Eは、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、Xは、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)を用いると良い。
【0090】
出発原料として、Mを含有する化合物が、Mを含有する金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であり、Aを含有する化合物が、Aを含有する金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であり、Dを含有する化合物が、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、または酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であるものは、原料が入手しやすく安定性に優れるため好ましい。Xを含有する化合物が、酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ化物、酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であるものは、原料が入手しやすく安定性に優れるため好ましい。
【0091】
上述の無機化合物がEuを付活した(Sr,Ba)SiAl結晶系の蛍光体を含有する場合は、段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0090]でさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、少なくともユーロピウムの窒化物または酸化物と、ストロンチウムの窒化物または酸化物または炭酸塩、および/または、バリウムの窒化物または酸化物または炭酸塩と、酸化ケイ素または窒化ケイ素と、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムと、を含有する出発原料を用いるのが、焼成時に反応が進行しやすいため好ましい。
【0092】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0091]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、焼成に用いる炉は、焼成温度が高温であり、また焼成雰囲気が窒素を含有する不活性雰囲気であることから、金属抵抗加熱方式または黒鉛抵抗加熱方式で、炉の高温部の材料として炭素を用いた電気炉が好適である。段落[0038]等に記載した蛍光体を製造するこのような製造方法では、窒素を含有する不活性雰囲気中で原料混合物を焼成するが、この窒素を含有する不活性雰囲気は0.1MPa以上の窒素ガス雰囲気であり、また、100MPa以下の窒素ガス雰囲気であることが好ましい。窒素を含有する不活性雰囲気が0.1MPa以上100MPa以下の圧力範囲では、出発原料や生成物である窒化物や酸窒化物の熱分解が抑えられるからである。焼成雰囲気中の酸素分圧は0.0001%以下が出発原料や生成物である窒化物や酸窒化物の酸化反応を抑制するために好ましい。焼成炉の発熱体、断熱体または試料容器に黒鉛を使用してもよい。
【0093】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0092]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、原料である粉体または凝集体形状の金属化合物等を、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で容器に充填した後に焼成することを特徴とすることができる。嵩密度を40%以下の充填率にすることにより、粒子同士の強固な接着をさけることができる。ここで、相対嵩密度とは、容器に充填された粉体の質量を容器の容積で割った値(嵩密度)と粉体の物質の真密度との比である。
【0094】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0093]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、焼成に使う容器が窒化ホウ素製とすることができる。原料混合物の焼成に当って、原料化合物を保持する容器としては種々の耐熱性材料が使用しうるが、本発明に使用する金属窒化物に対する材質劣化の悪影響が低いことから、学術雑誌Journal of the American Ceramic Society 2002年85巻5号1229ページないし1234ページ(この文献は参照することにより本書に組み込まれる。)に記載の、α−サイアロンの合成に使用された窒化ホウ素をコートしたグラファイトるつぼに示されるように窒化ホウ素をコートした容器や、あるいは窒化ホウ素焼結体が適している。このような条件で焼成を行うと、容器から製品にホウ素あるいは窒化ホウ素成分が混入するが、少量であれば発光特性は低下しないので影響は少ない。さらに少量の窒化ホウ素の添加により、製品の耐久性が向上することがあるので、場合によっては好ましい。
【0095】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0094]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、金属化合物の粉体粒子または凝集体の平均粒径が500μm以下であることを特徴とすることができる。原料の粉体粒子または凝集体の平均粒径を500μm以下とすると、反応性と操作性に優れるので好ましい。
【0096】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0095]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、スプレイドライヤ、ふるい分け、または風力分級により、金属化合物の凝集体の平均粒径を500μm以下に制御することを特徴とすることができる。スプレイドライヤ、ふるい分け、または風力分級を用いると、作業効率と操作性にすぐれるので好ましい。
【0097】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0096]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、焼結手段がホットプレスによることなく、専ら常圧焼結法もしくはガス圧焼結法による手段であることを特徴とすることができる。ホットプレスによることなく、常圧焼結法やガス圧焼結法などの外部から機械的な加圧を施さない焼結手法が、粉体または凝集体の製品を得る手法として好ましい。
【0098】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0097]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、上述してきたような金属化合物の混合物であって、焼成することにより、上述の無機化合物を構成しうる原料混合物を、窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成する。原料混合物が反応可能なように1000℃以上の温度で焼成することにより得ることができる。この焼成温度は、より十分反応させるために、好ましくは、1200℃以上であり、さらに反応を促進させるためにはより好ましくは、1600℃以上である。しかしながら、雰囲気の種類および圧力にもよるが、窒素を主成分とする或いは窒素100%の1MPaの雰囲気では、2200℃を超えるとSrSiAl系結晶の分解が進みやすくなり好ましくない。SrSiAl系結晶の分解を避ける目的においては、より好ましくは、2000℃以下であり、さらに好ましくは、1800℃以下である。雰囲気圧力が高くなると、より高温であっても分解は抑えられ、一方、雰囲気圧力が低くなると低温でも分解が生じるおそれがある。従って、分解を抑えるためには、より高圧で、より低い温度で焼成することが好ましい。また、焼成時間は、より高温ではより短時間で十分であり、より低温ではより長時間が好ましい。例えば、1600℃で焼成する場合は、0.1時間以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上である。一方、省エネルギーや化合物の分解防止を考慮すれば、100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以下、さらに好ましくは、8時間以下、である。
【0099】
上述したように、本発明の無機化合物は、単斜晶系で空間群P2に属する、SrSiAlで示される結晶からなる無機結晶、SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶、または、これらの固溶体結晶に、M元素が固溶した無機化合物を含み得るが、焼成温度等の合成条件により、これと異なる結晶系や空間群を持つ結晶が混入する場合がある。この場合においても、発光特性の変化は僅かであるため高輝度蛍光体として使用することができる。
【0100】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0098]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、粉砕、分級、酸処理から選ばれる1種ないし複数の手法により、焼成により合成した蛍光体粉末の平均粒径を50nm以上200μm以下に粒度調整することを特徴とすることができる。蛍光体粉末の平均粒径は、体積基準のメディアン径(d50)で50nm以上200μm以下のものが、発光強度が高いので好ましい。体積基準の平均粒径の測定は、例えば、マイクロトラックやレーザ散乱法によって測定できる。粉砕、分級、酸処理から選ばれる1種ないし複数の手法を用いることにより、粒度調整してよい。
【0101】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0098]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、焼成後の蛍光体粉末、あるいは粉砕処理後の蛍光体粉末、もしくは粒度調整後の蛍光体粉末を、1000℃以上で焼成温度以下の温度で熱処理することを特徴とすることができる。このような熱処理により、粉末に含まれる欠陥や粉砕による損傷が回復することがある。欠陥や損傷は発光強度の低下の要因となることがあり、この場合熱処理により発光強度が回復する。
【0102】
段落[0087]に記載され、段落[0088]−[0098]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、前記金属化合物の混合物に、焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物を添加して焼成することを特徴とすることができる。蛍光体の合成のための焼成時に、このような無機化合物を添加して焼成するとフラックスとして働き、反応や粒成長が促進されて安定な結晶が得られることがあり、これによって発光強度が向上することがある。
【0103】
前段落に記載の製造方法において、前記焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物が、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素のフッ化物、塩化物、ヨウ化物、臭化物、あるいはリン酸塩の1種または2種以上の混合物であることを特徴とすることができる。焼成温度以下の温度で液相を生成するこれらの無機化合物はそれぞれ融点が異なるため、合成温度によって使い分けることができる。
【0104】
段落[0087]に記載され、段落[0102]−[0103]のいずれかでさらに条件が詳述される蛍光体の製造方法のいずれかにおいて、焼成後に溶剤で洗浄することにより、焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物の含有量を低減させることを特徴とすることができる。焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物の含有量を低減させることにより、蛍光体の発光強度が高くなることがある。
【0105】
本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。また、本発明の蛍光体を含有する蛍光体混合物として用いることもできる。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、蛍光体含有組成物と呼ぶものとする。
【0106】
本発明の蛍光体含有組成物に使用可能な液体媒体としては、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させると共に、好ましくない反応等を生じないものであれば、任意のものを目的等に応じて選択することが可能である。液体媒体の例としては、硬化前の付加反応型シリコーン樹脂、縮合反応型シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの液体媒体は一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0107】
液状媒体の使用量は、用途等に応じて適宜調整すればよいが、一般的には、本発明の蛍光体に対する液状媒体の重量比で、通常3重量%以上、好ましくは5重量%以上、また、通常30重量%以下、好ましくは15重量%以下の範囲である。
【0108】
また、本発明の蛍光体含有組成物は、本発明の蛍光体および液状媒体に加え、その用途等に応じて、その他の任意の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、拡散剤、増粘剤、増量剤、干渉剤等が挙げられる。具体的には、アエロジル等のシリカ系微粉、アルミナ等が挙げられる。
【0109】
本発明の発光装置は、少なくとも発光体または発光光源と本発明の蛍光体(以降では第1蛍光体とも呼ぶ)とを用いて構成される。
【0110】
発光体または発光光源としては、LED発光器具、レーザダイオード発光器具、EL発光器具、蛍光ランプなどがある。LED発光装置では、本発明の蛍光体を用いて、特開平5−152609、特開平7−99345、特許公報第2927279号などに記載されているような公知の方法により製造することができる。この場合、発光体または発光光源は330〜500nmの波長の光を発するものが望ましく、中でも330〜420nmの紫外(または紫)LED発光素子または420〜480nmの青色LED発光素子が好ましい。これらのLED発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより、所定の波長の光を発する発光光源となり得る。
【0111】
本発明の発光装置としては、本発明の蛍光体を含む、白色発光ダイオード、または白色発光ダイオードを複数含む照明器具、液晶パネル用バックライト等がある。
【0112】
このような発光装置において、第1蛍光体に加えて、Euを付活したβサイアロン蛍光体、Euを付活したαサイアロン黄色蛍光体、Euを付活したSrSi橙色蛍光体、Euを付活した(Ca,Sr)AlSiN橙色蛍光体、および、Euを付活したCaAlSiN赤色蛍光体から選ばれる1種または2種以上の蛍光体をさらに含んでもよい。上記以外の黄色蛍光体としては、例えば、YAG:Ce、(Ca,Sr,Ba)Si:Euなどを用いてもよい。
【0113】
本発明の発光装置の一形態として、発光体または発光光源がピーク波長300〜420nmの紫外または可視光を発し、本発明の蛍光体が発する青色光と、本発明の他の蛍光体(第2蛍光体とも呼ぶ)が発する470nm以上の波長の光を混合することにより白色光または白色光以外の光を発する発光装置がある。
【0114】
本発明の発光装置の一形態として、第1蛍光体に加えて、さらに、発光体または発光光源によりピーク波長420nm〜500nm以下の光を発する青色蛍光体を含むことができる。このような、青色蛍光体としては、AlN:(Eu,Si)、BaMgAl1017:Eu、SrSiAl19ON31:Eu、LaSiAl1932:Eu、α−サイアロン:Ce、JEM:Ceなどがある。
【0115】
本発明の発光装置の一形態として、第1蛍光体に加えて、さらに、発光体または発光光源によりピーク波長500nm以上550nm以下の光を発する緑色蛍光体を含むことができる。このような、緑色蛍光体としては、例えば、β−サイアロン:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si:Euなどがある。
【0116】
本発明の発光装置の一形態として、第1蛍光体に加えて、さらに、発光体または発光光源によりピーク波長550nm以上600nm以下の光を発する黄色蛍光体を含むことができる。このような黄色蛍光体としては、YAG:Ce、α−サイアロン(α−sialon):Eu、CaAlSiN:Ce、LaSi11:Ceなどがある。
【0117】
本発明の発光装置の一形態として、第1蛍光体に加えて、さらに、発光体または発光光源によりピーク波長600nm以上700nm以下の光を発する赤色蛍光体を含むことができる。このような赤色蛍光体としては、CaAlSiN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、CaSi:Eu、SrSi:Euなどがある。
【0118】
本発明の発光装置の一形態として、発光体または発光光源が320〜420nmの波長の光を発するLEDを用いると発光効率が高いため、高効率の発光装置を構成することができる。
【0119】
本発明の画像表示装置は少なくも励起源と本発明の蛍光体とから構成され、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)などがある。本発明の蛍光体は、100〜190nmの真空紫外線、190〜380nmの紫外線、電子線などの励起で発光することが確認されており、これらの励起源と本発明の蛍光体との組み合わせで、上記のような画像表示装置を構成することができる。
【0120】
特定の化学組成を有する無機化合物よりなる本発明の蛍光体は、白色の物体色を持つことから顔料または蛍光顔料として使用することができる。すなわち、本発明の蛍光体に太陽光や蛍光灯などの照明を照射すると白色の物体色が観察されるが、その発色がよいこと、そして長期間に渡り劣化しないことから、本発明の蛍光体は無機顔料に好適である。このため、塗料、インキ、絵の具、釉薬、プラスチック製品に添加する着色剤などに用いると長期間に亘って良好な発色を高く維持することができる。
【0121】
本発明の窒化物蛍光体は、紫外線を吸収するため紫外線吸収剤としても好適である。このため、塗料として用いたり、プラスチック製品の表面に塗布したり内部に練り込んだりすると、紫外線の遮断効果が高く、製品を紫外線劣化から効果的に保護することができる。
【実施例】
【0122】
本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0123】
[合成に使用した原料]
合成に使用した原料粉末は、比表面積11.2m/gの粒度の、酸素含有量1.29重量%、α型含有量95%の窒化ケイ素粉末(宇部興産(株)製のSN−E10グレード)と、二酸化ケイ素粉末(SiO;高純度化学研究所製)と、比表面積3.3m/gの粒度の、酸素含有量0.82重量%の窒化アルミニウム粉末((株)トクヤマ製のEグレード)と、比表面積13.2m/gの粒度の酸化アルミニウム粉末(大明化学工業製タイミクロン)と、酸化カルシウム(高純度化学製)と、酸化ストロンチウム(高純度化学製)と、酸化バリウム(BaO;高純度化学製)と、酸化セリウム(CeO;純度99.9%、信越化学工業(株)製)と、酸化ユーロピウム(Eu;純度99.9%、信越化学工業(株)製)と、希土類酸化物(純度99.9%、信越化学工業(株)製)であった。
【0124】
[結晶SrSiAlの合成と構造解析]
窒化ケイ素40.56質量%、酸化アルミニウム29.48質量%、酸化ストロンチウム29.96質量%の割合の混合組成を設計した。これらの原料粉末を、上記混合組成となるように秤量し、窒化ケイ素焼結体製乳棒と乳鉢を用いて5分間混合を行なった。次いで、得られた混合粉末を、窒化ホウ素焼結体製のるつぼに投入した。混合粉末(粉体)の嵩密度は約30%であった。
【0125】
混合粉末が入ったるつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を1×10−1Pa以下圧力の真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して炉内の圧力を1MPaとし、毎時500℃で1900℃でまで昇温し、その温度で2時間保持した。
【0126】
合成物を光学顕微鏡で観察し、合成物中から17μm×10μm×10μmの大きさの結晶粒子を採取した。この粒子をエネルギー分散型元素分析器(EDS;ブルカー・エイエックスエス社製QUANTAX)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM;日立ハイテクノロジーズ社製のSU1510)を用いて、結晶粒子に含まれる元素の分析を行った。その結果、Sr、Si、Al、N元素の存在が確認され、Sr、Si、Alの含有原子数の比は、1:3:2であることが測定された。
【0127】
次にこの結晶をガラスファイバーの先端に有機系接着剤で固定した。これをMoKα線の回転対陰極付きの単結晶X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス社製のSMART APEXII Ultra)を用いて、X線源の出力が50kV50mAの条件でX線回折測定を行った。その結果、この結晶粒子が単結晶であることを確認した。
【0128】
次に、X線回折測定結果から単結晶構造解析ソフトウエア(ブルカー・エイエックスエス社製のAPEX2)を用いて結晶構造を求めた。得られた結晶構造データを表1に、結晶構造の図を図1に示す。表1には、結晶系、空間群、格子定数、原子の種類と原子位置が記述してあり、このデータを用いて、単位格子の形および大きさとその中の原子の並びを決めることができる。なお、SiとAlは同じ原子位置にある割合で入り、酸素と窒素は同じ原子位置にある割合で入り、全体として平均化したときにその結晶の組成割合となる。解析結果の信頼性を示す値であるR値(R)は0.0659であり、信頼性が高い解析結果が得られた。
【0129】
この結晶は、単斜晶系(monoclinic)に属し、空間群P2、(International Tables for Crystallographyの4番の空間群)に属し、格子定数a,b,cが、a=0.72516nm、b=0.93431nm、c=1.08761nm、角度α=90°、β=104.489°、γ=90°であった。また原子位置は表1に示す通りであった。なお、表中、SiとAlは同じ原子位置に組成によって決まるある割合で存在し、OとNは同じ原子位置に組成によって決まるある割合で存在する。また、Srは+2価、Alは+3価、Siは+4価であるので、原子位置とSrとAlとSiの比がわかれば、(O、N)位置を占めるOとNの比は結晶の電気的中性の条件から求められる。EDSの測定値のSr:Si:Al比と結晶構造データから求めたこの結晶の組成は、SrSiAlであった。なお、出発原料組成と結晶組成が異なるのは、少量の第二相としてSrSiAl以外の組成物が生成したことによるが、本測定は単結晶を用いているので解析結果は純粋なSrSiAlの構造を示している。
【0130】
類似組成の検討を行ったところ、SrSiAl結晶は、結晶構造を保ったままSrの一部または全てをBaで置換できることがわかった。すなわち、ASiAl(AはSr、Baから選ばれる1種または2種または混合)の結晶はSrSiAl結晶と同一の結晶構造を持つ。さらにSiの一部をAlで置換、Alの一部をSiで置換、Nの一部を酸素で置換することができ、この結晶はSrSiAlと同一の結晶構造を持つ結晶グループの1つの組成であることが確認された。また、電気的中性の条件から、
Si3−xAl2+x4+x4−x(ただし、−1 ≦ x ≦ 2)
で示される組成としても記述できる。
【0131】
結晶構造データからこの結晶は今まで報告されていない新規の物質であることが確認された。結晶構造データから計算した粉末X線回折パターンを図2に示す。今後は、合成物の粉末X回折測定を行い、測定された粉末パターンが図2と同じであれば図1の結晶SrSiAlが生成していると判定できる。さらに、SrSiAl系結晶として結晶構造を保ったまま格子定数等が変化したものは、粉末X線回折測定により得られた格子定数の値と表1の結晶構造データから計算により粉末X線パターンを計算できるので、計算パターンと比較することによりSrSiAl系結晶が生成していると判定できる。
【0132】
[蛍光体実施例および比較例;例1から例66]
表2に示す設計組成に従って、原料を表4の混合組成(モル比)となるように秤量した。尚、表3には表2のパラメータを適宜変換したものをまとめている。使用する原料の種類によっては表2の設計組成と表4の混合組成で組成が異なる場合が生じるが、この場合は金属イオンの量が合致するように混合組成を決定した。秤量した原料粉末を窒化ケイ素焼結体製乳棒と乳鉢を用いて5分間混合を行なった。その後、混合粉末を窒化ホウ素焼結体製のるつぼに投入した。粉体の嵩密度は約20%から30%であった。
【0133】
混合粉末が入ったるつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を1×10−1Pa以下圧力の真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して炉内の圧力を1MPaとし、毎時500℃で表5に示す設定温度まで昇温し、その温度で表5に示す時間だけ保持した。
【0134】
表2.蛍光体合成の実施例および比較例における設計組成
【表2】
【0135】
表3.蛍光体合成の実施例および比較例における設計組成パラメータ変換
【表3】
【0136】
表4.蛍光体合成の実施例および比較例における原料混合組成
【表4】
【0137】
表5.蛍光体合成の実施例および比較例における焼成条件
【表5】
【0138】
次に、合成した化合物をメノウの乳鉢を用いて粉砕した。粉砕した合成物についてEDS測定を行い、いずれも合成物は、希土類元素、アルカリ土類金属、Si、Al、O、Nを含むこと、すなわち、得られた無機化合物が、上述の所定の組成を有することが確認した。
【0139】
なお、混合原料組成と合成物の化学組成が異なっている部分は、不純物第二相として合成物中に微量混在していると考えられる。
【0140】
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製のるつぼと乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを通した。粒度分布を測定したところ、平均粒径は3〜8μmであった。
【0141】
これらの粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、合成物は、青色〜赤色に発光することを確認した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。励起発光スペクトルを図3に、励起スペクトルのピーク波長と発光スペクトルのピーク波長を表6に示す。
【0142】
図3は、実施例21で合成した蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0143】
実施例21では、343nmで最も効率よく励起できることがわかり、343nmで励起したときの発光スペクトルは472nmにピークを持つ発光を呈することがわかった。また、実施例21の蛍光体の発光色が、CIE1931色度座標において、0.05≦x≦0.3および0.02≦y≦0.4の範囲内であることを確認した。同様に他の実施例についても、全て同様な発光スペクトルが確認された。
【0144】
表6.蛍光体合成の実施例および比較例における励起発光特性
【表6】
【0145】
表6によれば、本発明の蛍光体は、波長295nm〜540nmの光で励起されて、青色〜赤色に発光することが分かった。例えば、M元素としてEuを含み、A元素がSrまたはSrおよびBaの組み合わせである実施例によれば、本発明の蛍光体は、主として、波長295nm〜380nmの紫外線あるいは380nm〜420nmの紫色光で励起され、青色〜青緑色に高輝度発光することが分かった。
【0146】
表2および表6によれば、実施例は、いずれも、組成式M(ただし、式中d+e+f+g+h=1であり、M元素は、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素、A元素は、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上の元素、D元素は、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから選ばれる1種または2種以上の元素、E元素は、B、Al、Ga、In、Sc、Y、Laから選ばれる1種または2種以上の元素、X元素は、O、N、Fから選ばれる1種または2種以上の元素)で示され、パラメータd、e、f、g、hが、
0.00001 ≦ d ≦0.05
0.05 ≦ e ≦0.1
0.07 ≦ f ≦ 0.3
0.07 ≦ g ≦ 0.3
0.45 ≦ h ≦ 0.6
の条件を全て満たす範囲の組成で表される無機化合物であり、これらが蛍光体であることが示された。
【0147】
例えば、実施例2〜10、19〜66によれば、M元素がEuである無機化合物は、紫外線または可視光で励起されて、波長400nm〜590nmの範囲の波長にピークを持つ蛍光を発することが確認された。実施例7、21〜25、27〜31、35〜45、47〜51、55〜60によれば、M元素がEuであり、A元素がSrおよびBaであり、D元素がSiであり、E元素がAlであり、X元素がNとOとを含む無機化合物は、波長440nm〜520nmの範囲の波長にピークを持つ青色の蛍光を発することが確認された。
【0148】
表2のパラメータを適宜変換したものをまとめた表3によれば、いずれの実施例も、上記組成式において、
0.5/5 ≦(d+e)/(f+g)≦ 2/5
の関係を満たした。例えば、実施例61〜66によれば、上記組成式において、
0.9/5 ≦(d+e)/(f+g)≦ 1.2/5
の関係を満たせば、高輝度発光することが確認された。また、実施例62〜66によれば、上記組成式において、
1.0/5 ≦(d+e)/(f+g)≦ 1.2/5
の関係を満たせば、さらなる高輝度発光することが確認された。
【0149】
例えば、実施例35〜39、55〜59によれば、上記組成式において、
2/5 ≦ f/(f+g) ≦ 4/5
の関係を満たせば、高輝度発光することが確認された。
【0150】
例えば、実施例56〜58、61〜66によれば、上記組成式において、
3.5/8 ≦ h1/(h1+h2)≦ 4.5/8
の関係を満たせば、高輝度発光することが確認された。
【0151】
次に、合成物についてCuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った。結果を図4に示す。主な生成相を表7に示す。その結果、SrSiAlの結晶と同じ結晶構造を持つ相が主な生成相であることが確認された。この生成相については、より詳しく後述する。
【0152】
表7. 蛍光体合成の実施例および比較例における主な生成相
【表7】
【0153】
図4は、実施例21で合成した蛍光体の粉末X線回折結果を示す図である。
【0154】
図4のX線回折パターンは、図2で示すSrSiAl結晶による粉末X線回折パターンを含んでおり、SrSiAlの結晶と同じ結晶構造を持つ相が主な生成相であることが確認できる。図示しないが、他の実施例も同様であった。このように、得られた蛍光体の粉末X線回折パターンが、図2で示す粉末X線回折パターンを含んでいれば、本発明のSrSiAlで示される結晶からなる無機結晶が存在すると確認することができる。粉末X線回折パターンは、同一の結晶構造であっても面間隔dが異なれば、nλ=2d・sinθによりシフトするので、シフトした(θのシフト)粉末X線回折パターンであっても、図2に示すSrSiAl結晶による粉末X線回折パターンに含まれる。さらに、結晶子の大きさの違いにより、回折線の幅が広がる(狭まる)ことも知られているので、幅の大小があっても、図2に示すSrSiAl結晶による粉末X線回折パターンに含まれるとしてよい。特に、後述する蛍光を生じさせる元素の固溶は、面間隔を変化させる要因となり得、また、結晶子の大きさを変え得るので、回折線の幅が変化し得る。具体的には、図4のX線回折パターンから、得られた無機化合物は、SrSiAlで示される結晶からなる無機結晶、あるいは、SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶を含むといえる。さらに、その無機結晶の量は、市販されるプログラムによって、測定することも可能である。
【0155】
SrSiAl結晶自体は、蛍光成分を含まないので、蛍光体ではない(表2から5および表6の比較例参照)。従って、図3の発光スペクトルは得られない。即ち、SrSiAl結晶またはそれと同一の結晶構造を備える無機化合物の検出、蛍光成分となる元素の検出、さらに、図3および表6を参照して説明した特有の発光スペクトルの存在から、SrSiAlで示される結晶からなる無機結晶、あるいは、SrSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶に、M元素(ただしMは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)が固溶した無機化合物を含む蛍光体の生成を確認することが可能である。
【0156】
合成した蛍光体の粉末X線回折結果(図4)は構造解析の結果(図2)と良い一致を示し、特に実施例21ではSrSiAl結晶とX線回折パターンが同じであり、SrSiAl結晶と同一の結晶構造を持つ結晶が主成分であることが確認された。さらに、実施例21では、EDSの測定より、合成物はEu、Sr、Ba、Si、Al、O、Nを含むことが確認された。また、Sr:Ba:Si:Alの比は、0.5:0.5:3:2であることが確認された。即ち、合成物は、Sr0.5Ba0.5SiAl結晶にEuが固溶した無機化合物を含む蛍光体であることが確認された。
【0157】
[発光装置および画像表示装置の実施例;実施例67から70]
次ぎに、本発明の蛍光体を用いた発光装置について説明する。
【0158】
[実施例67]
図5は、本発明による照明器具(砲弾型LED照明器具)を示す概略図である。
【0159】
図5に示すいわゆる砲弾型白色発光ダイオードランプ(1)を製作した。2本のリードワイヤ(2、3)があり、そのうち1本(2)には、凹部があり、365nmに発光ピークを持つ紫外発光ダイオード素子(4)が載置されている。紫外発光ダイオード素子(4)の下部電極と凹部の底面とが導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本のリードワイヤ(3)とが金細線(5)によって電気的に接続されている。蛍光体(7)が樹脂に分散され、発光ダイオード素子(4)近傍に実装されている。この蛍光体を分散した第一の樹脂(6)は、透明であり、紫外発光ダイオード素子(4)の全体を被覆している。凹部を含むリードワイヤの先端部、青色発光ダイオード素子、蛍光体を分散した第一の樹脂は、透明な第二の樹脂(8)によって封止されている。透明な第二の樹脂(8)は全体が略円柱形状であり、その先端部がレンズ形状の曲面となっていて、砲弾型と通称されている。
【0160】
本実施例では、実施例21で作製した蛍光体とα−サイアロン:Eu黄色蛍光体を質量比で7:3に混合した蛍光体粉末を37重量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサを用いて適量滴下して、蛍光体を混合したもの(7)を分散した第一の樹脂(6)を形成した。得られた発光装置の発色は、x=0.33、y=0.33であり、白色であった。
【0161】
[実施例68]
図6は、本発明による照明器具(基板実装型LED照明器具)を示す概略図である。
【0162】
図6に示す基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(11)を製作した。可視光線反射率の高い白色のアルミナセラミックス基板(19)に2本のリードワイヤ(12、13)が固定されており、それらワイヤの片端は基板のほぼ中央部に位置し、他端はそれぞれ外部に出ていて電気基板への実装時ははんだづけされる電極となっている。リードワイヤのうち1本(12)は、その片端に、基板中央部となるように発光ピーク波長365nmの紫外発光ダイオード素子(14)が載置され固定されている。紫外発光ダイオード素子(14)の下部電極と下方のリードワイヤとは導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本のリードワイヤ(13)とが金細線(15)によって電気的に接続されている。
【0163】
第一の樹脂(16)と実施例21で作製した蛍光体とα−サイアロン:Eu黄色蛍光体を質量比で7:3に混合した蛍光体(17)を混合したものが、発光ダイオード素子近傍に実装されている。この蛍光体を分散した第一の樹脂は、透明であり、紫外発光ダイオード素子(14)の全体を被覆している。また、セラミック基板上には中央部に穴の開いた形状である壁面部材(20)が固定されている。壁面部材(20)は、その中央部が紫外発光ダイオード素子(14)および蛍光体(17)を分散させた樹脂(16)がおさまるための穴となっていて、中央に面した部分は斜面となっている。この斜面は光を前方に取り出すための反射面であって、その斜面の曲面形は光の反射方向を考慮して決定される。また、少なくとも反射面を構成する面は白色または金属光沢を持った可視光線反射率の高い面となっている。本実施例では、該壁面部材(20)を白色のシリコーン樹脂によって構成した。壁面部材の中央部の穴は、チップ型発光ダイオードランプの最終形状としては凹部を形成するが、ここには紫外発光ダイオード素子(14)および蛍光体(17)を分散させた第一の樹脂(16)のすべてを封止するようにして透明な第二の樹脂(18)を充填している。本実施例では、第一の樹脂(16)と第二の樹脂(18)とには同一のエポキシ樹脂を用いた。蛍光体の添加割合、達成された色度等は、実施例67と略同一である。
【0164】
次ぎに、本発明の蛍光体を用いた画像表示装置の設計例について説明する。
【0165】
[実施例69]
図7は、本発明による画像表示装置(プラズマディスプレイパネル)を示す概略図である。
【0166】
赤色蛍光体(CaAlSiN:Eu2+)(31)と緑色蛍光体(β−サイアロン:Eu2+)(32)および本発明の実施例21の青色蛍光体(33)が、ガラス基板(44)上に電極(37、38、39)および誘電体層(41)を介して配置されたそれぞれのセル(34、35、36)の内面に塗布されている。電極(37、38、39、40)に通電するとセル中でXe放電により真空紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて、赤、緑、青の可視光を発し、この光が保護層(43)、誘電体層(42)、ガラス基板(45)を介して外側から観察され、画像表示装置として機能する。
【0167】
[実施例70]
図8は、本発明による画像表示装置(フィールドエミッションディスプレイパネル)を示す概略図である。
【0168】
本発明の実施例30の青色蛍光体(56)が陽極(53)の内面に塗布されている。陰極(52)とゲート(54)の間に電圧をかけることにより、エミッタ(55)から電子(57)が放出される。電子は陽極(53)と陰極の電圧により加速されて、青色蛍光体(56)に衝突して蛍光体が発光する。全体はガラス(51)で保護されている。図は、1つのエミッタと1つの蛍光体からなる1つの発光セルを示したが、実際には青色の他に、緑色、赤色のセルが多数配置されて多彩な色を発色するディスプレイが構成される。緑色や赤色のセルに用いられる蛍光体に関しては特に指定しないが、低速の電子線で高い輝度を発するものを用いると良い。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の窒化物蛍光体は、従来の蛍光体とは異なる発光特性(発光色や励起特性、発光スペクトル)を有し、かつ、470nm以下のLEDと組み合わせた場合でも発光強度が高く、化学的および熱的に安定であり、さらに励起源に曝された場合の蛍光体の輝度の低下が少ないので、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に使用される窒化物蛍光体である。今後、各種表示装置における材料設計において、大いに活用され、産業の発展に寄与することが期待できる。
【符号の説明】
【0170】
1 砲弾型発光ダイオードランプ 2、3 リードワイヤ
4 発光ダイオード素子 5 ボンディングワイヤ
6、8 樹脂 7 蛍光体
11 基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ
12、13 リードワイヤ 14 発光ダイオード素子
15 ボンディングワイヤ 16、18 樹脂 17 蛍光体
19 アルミナセラミックス基板 20 側面部材
31 赤色蛍光体 32 緑色蛍光体 33 青色蛍光体
34、35、36 紫外線発光セル
37、38、39、40電極 41、42 誘電体層
43 保護層 44、45 ガラス基板 51 ガラス
52 陰極 53 陽極 54 ゲート
55 エミッタ 56 蛍光体 57 電子
図5
図8
図1
図2
図3
図4
図6
図7