特許第5717078号(P5717078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717078
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/06 20060101AFI20150423BHJP
   B05B 3/02 20060101ALI20150423BHJP
   C02F 1/46 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   B05B7/06
   B05B3/02 G
   C02F1/46 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-546895(P2014-546895)
(86)(22)【出願日】2013年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2013073896
(87)【国際公開番号】WO2014077020
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-249840(P2012-249840)
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595159264
【氏名又は名称】菅野 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 稔
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−097486(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/017511(WO,A1)
【文献】 特開2011−230075(JP,A)
【文献】 特開2010−201081(JP,A)
【文献】 特開2004−141800(JP,A)
【文献】 特開2003−320278(JP,A)
【文献】 特開平01−284359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/06
B05B 3/02
C02F 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体を吐出する吐出口と、
前記吐出口の周囲を囲むよう配置され、前記吐出口を中心として回転しながら、前記吐出口から吐出される前記第1液体の周囲を包囲するよう第2液体を噴射可能な複数の噴射口とを、
有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
各噴射口は前記吐出口の周囲を回転しながら第2液体を噴射可能な構成を有することを、特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
各噴射口は第2液体をカーテン状またはミスト状に噴射可能な構成を有することを、特徴とする請求項1または2記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記第1液体は酸性水から成り、前記第2液体はアルカリ性水から成ることを、特徴とする請求項1,2または3記載の液体噴射装置。
【請求項5】
基部と回転部とを有し、
前記基部は前記吐出口と第1供給路と第2供給路とを有し、前記第1供給路は前記吐出口に第1液体を供給可能に連通し、前記第2供給路は各噴射口に第2液体を供給可能に連通し、
前記回転部は各噴射口を有し、各噴射口が前記第2供給路に連通した状態で前記吐出口の周囲を回転するよう前記基部に回転可能に設けられていることを、
特徴とする請求項1,2,3または4記載の液体噴射装置。
【請求項6】
電解質水溶液を電気分解して酸性水とアルカリ性水とを生成し、生成した酸性水を前記第1供給路に供給し、生成したアルカリ性水を前記第2供給路に供給可能な電解水生成手段を有することを、
特徴とする請求項5記載の液体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌や消毒などを行うための洗浄水として、酸性水やオゾン水等が使用されている。酸性水の生成に塩化物塩水溶液の電気分解を用いる場合、酸性水に含まれる塩素により塩素臭が発生し、有毒な塩素ガスとともに臭気が周囲に拡散するという問題があった。また、オゾン水を使用する場合にも、有毒なオゾンガスが発生し、同様に、臭気が周囲に拡散するという問題があった。そこで、このような洗浄水から発生する有毒ガスの拡散や臭気を防止するために、洗浄水の周囲を囲むよう消臭ミストを噴霧したり、水を噴射したりする液体噴射装置が開発されている(例えば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4348405号公報
【特許文献2】特開2003−320278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の液体噴射装置では、酸性水を包囲するようアルカリ性水の消臭用ミストを噴霧することにより消臭できるが、ミストの噴霧量と酸性水の吐出量によっては塩素臭が周囲に漏れる可能性が考えられる。また、特許文献2に記載の液体噴射装置では、洗浄水の周囲を囲むよう複数の補助噴射口が設けられているので、隣り合う補助噴射口から噴射される水と水との間に隙間ができ、その隙間から洗浄水に含まれるオゾンガスが周囲に飛散するという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、噴射する液体に含まれる有毒ガスや臭気の周囲への拡散を防止する効果が高い液体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体噴射装置は、第1液体を吐出する吐出口と、前記吐出口の周囲を囲むよう配置され、前記吐出口を中心として回転しながら、前記吐出口から吐出される前記第1液体の周囲を包囲するよう第2液体を噴射可能な複数の噴射口とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る液体噴射装置は、吐出口から第1液体を吐出するとき、吐出口の周囲を囲むよう配置された複数の噴射口が吐出口を中心として回転しながら第2液体を噴射し、第1液体の周囲を第2液体で包囲することができる。複数の噴射口が回転しながら第2液体を噴射するため、回転しない場合に比べて第1液体の周囲をより均等かつ密に包囲することができる。このため、第1液体が臭気を有する有毒ガスの場合、その有毒ガスや臭気が周囲に拡散するのを第2液体で効果的に防止することができる。第1液体と第2液体としては、例えば、酸性水とアルカリ性水、オゾン水と水道水、消毒水と水道水、熱水と冷水などが挙げられる。
【0008】
本発明に係る液体噴射装置は、吐出口が各噴射口と共に回転するよう構成されていてもよく、吐出口は回転せず、各噴射口のみが回転するよう構成されていてもよい。しかし、各噴射口は、前記吐出口の周囲を回転しながら第2液体を噴射可能な構成を有することが好ましい。各噴射口は、噴射する第2液体の水圧で回転する構成を有していても、モーターその他の動力により回転する構成を有していてもよい。各噴射口は、第2液体をカーテン状またはミスト状に噴射可能な構成を有することが好ましい。特に、各噴射口が第2液体をカーテン状に噴射する場合、第1液体が臭気を有する有毒ガスの場合、その有毒ガスや臭気が周囲に拡散するのをより効果的に防止することができる。
【0009】
各噴射口は、吐出口と同一方向を向いていることが好ましいが、向きを変更可能となっていてもよい。各噴射口は、吐出口を中心としてその周囲を同心円上で囲むよう配置されていることが好ましい。また、各噴射口は、吐出口を中心として2つまたは3つ以上の同心円上に配置されていてもよい。複数の噴射口は、2つ以上いくつであってもよい。噴射口が2つの場合、吐出口を挟むよう配置されることが、吐出口の周囲を囲むよう配置されることを意味する。
【0010】
本発明に係る液体噴射装置において、前記第1液体は酸性水から成り、前記第2液体はアルカリ性水から成ることが好ましく、特に第1液体が強酸性水から成り、第2液体が強アルカリ性水から成ることが好ましい。第1液体は洗浄水から成り、第2液体は消臭剤から成ってもよい。本発明に係る液体噴射装置は、第1液体を加熱する加熱器を有していてもよい。この場合、第1液体が水のとき、加熱することにより洗浄効果を高めることができる。また、第2液体を冷却する冷却器を有していてもよい。この場合、第2液体が水のとき、冷却することにより消臭効果を高めることができる。
【0011】
本発明に係る液体噴射装置は、基部と回転部とを有し、前記基部は前記吐出口と第1供給路と第2供給路とを有し、前記第1供給路は前記吐出口に第1液体を供給可能に連通し、前記第2供給路は各噴射口に第2液体を供給可能に連通し、前記回転部は各噴射口を有し、各噴射口が前記第2供給路に連通した状態で前記吐出口の周囲を回転するよう前記基部に回転可能に設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る液体噴射装置で、吐出口は、第1液体をストレート状に吐出してもよく、シャワー状に吐出してもよく、ストレート状とシャワー状とを切り替えて吐出可能になっていてもよい。各噴射口は、吐出口の周囲を回転しながら第2液体を噴射するとき、第2液体が広くカーテン状に拡がるよう、第2液体を扇状に噴射する形状であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る液体噴射装置は、電解質水溶液を電気分解して酸性水とアルカリ性水とを生成し、生成した酸性水を前記第1供給路に供給し、生成したアルカリ性水を前記第2供給路に供給可能な電解水生成手段を有することが好ましい。
この場合、酸性水の周囲をアルカリ性水で包囲することにより、酸性水の臭気の拡散を防止することができる。例えば、塩化物塩水溶液を電気分解して生成された酸性水を使用するとき、酸性水から塩素臭が発生するが、その塩素臭をアルカリ性水で防止することかできる。また、毒性の塩素ガスを中和し、無害化することができる。
本発明に係る液体噴射装置は、洗浄装置のほか、殺菌装置、排水装置、塗装装置などに用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、噴射する液体に含まれる有毒ガスや臭気の周囲への拡散を防止する効果が高い液体噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態の液体噴射装置を示す(a)平面図、(b)正面図、(c)右側面図である。
図2図1に示す液体噴射装置の吐出ノズルの(a)平面図、(b)底面図、(c)一部を切り欠いた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態の液体噴射装置を示している。
図1に示すように、液体噴射装置10は、支持台11と電解水生成手段12とポンプ13と吐出ノズル14とモーター15とコントロールボックス16とを有している。
【0017】
支持台11は、設置板21と、設置板21を所定の高さに保持するための枠状の脚部22と、脚部22の枠の間を覆うカバー23と、設置板21の下方を覆い、後方に向かって傾斜するよう脚部22に取り付けられた排水板24と、排水板24の傾斜の下端に連続するよう設けられた排水孔25とを有している。
【0018】
電解水生成手段12は、支持台11の脇に配置され、塩化ナトリウム水溶液などの電解質溶液を電気分解して酸性水(第1液体)とアルカリ性水(第2液体)とを生成するよう構成されている。ポンプ13a,13bは、2台から成り、設置板21の下面後方に固定され、それぞれ電解水生成手段12で生成された酸性水を、酸性水用送水管(図示せず)を通して吐出ノズル14の酸性水用の継手31に供給し、電解水生成手段12で生成されたアルカリ性水を、アルカリ性水用送水管(図示せず)を通して吐出ノズル14のアルカリ性水用の継手32に供給するよう構成されている。
【0019】
図2に示すように、吐出ノズル14は、細長く、断面の外径が円形の基部26と、基部26の長さよりも薄い円環状の回転部27とを有している。基部26は、第1供給路28と第2供給路29とを有している。第1供給路28は、基部26の中心に、その長さ方向に沿って先端から後端まで貫通するよう設けられている。第2供給路29は、第1供給路28の周囲に円環状に、基部26の長さ方向に沿って伸びるよう設けられている。第2供給路29は、先端側の端部が基部26の側面を一周して連続するよう基部26の側面に開口している。また、第2供給路29は、基部26の後端に2箇所の開口を有している。基部26は、先端に吐出口30を有している。吐出口30は、第1供給路28の先端開口に連通している。第1供給路28の後端には、酸性水用の継手31が取り付けられている。また、基部26は、第2供給路29の後端の2つの開口部分に、それぞれアルカリ性水用の継手32が取り付けられている。
【0020】
回転部27は、内周面から先端側の端面まで、クランク状に伸びて貫通した複数の連通路33を有している。各連通路33は、回転部27の中心軸に対して等角度間隔で設けられている。回転部27は、複数の噴射口34を有している。各噴射口34は、各連通路33の端面側の開口に連通している。噴射口34は、吐出口30と同一方向を向いている。回転部27は、内側に基部26の先端部が挿入され、基部26の側面に沿って回転可能に取り付けられている。回転部27は、滑らかに回転するよう、スライドベアリング35を介して基部26に取り付けられている。回転部27は、後端の外周に沿って平歯車36が固定されており、この平歯車36を回転させることにより、回転するよう構成されている。
【0021】
また、回転部27は、各連通路33の内周面側の開口が、基部26の側面の第2供給路29の開口の位置になるよう取り付けられている。回転部27は、各連通路33の内周面側の開口が、回転時でも基部26の第2供給路29に連通するようになっている。こうして、各噴射口34は、吐出口30を中心としてその周囲を同心円上で囲むよう配置され、吐出口30を中心として吐出口30の周囲を回転可能になっている。なお、図2に示す具体的な一例では、噴射口34および連通路33は6つから成るが、2つ以上いくつから成ってもよい。
【0022】
吐出ノズル14は、酸性水用の継手31に酸性水用送水管が接続され、アルカリ性水用の継手32にアルカリ性水用送水管が接続されている。吐出ノズル14は、ポンプ13aから送られてきた酸性水を、酸性水用の継手31から第1供給路28を通して吐出口30から吐出するようになっている。また、吐出ノズル14は、ポンプ13bから送られてきたアルカリ性水を、アルカリ性水用の継手32から第2供給路29、各連通路33を通して各噴射口34から噴射するようになっている。なお、吐出ノズル14は、基部26と回転部27との境界など、部材の隙間からアルカリ性水が漏れないよう、境界部にOリング37を挟んで各部材が取り付けられている。
【0023】
図1に示すように、吐出ノズル14は、設置板21の中央部の前方に、酸性水を下方に向かって吐出するよう固定されている。吐出口30は、酸性水をストレート状またはシャワー状に吐出可能になっている。各噴射口34は、回転部27の回転方向に沿ってアルカリ性水が拡がるよう、アルカリ性水を扇状に噴射可能になっている。吐出ノズル14は、回転部27を回転させて、各噴射口34が吐出口30の周囲を回転しながらアルカリ性水を噴射するよう構成されている。これにより、吐出ノズル14は、吐出口30から吐出される酸性水の周囲をアルカリ性水でカーテン状に覆うよう構成されている。
【0024】
モーター15は、設置板21の中央部の後方に、吐出ノズル14と並んで固定されている。モーター15は、平歯車38を有し、この平歯車38を回転するよう構成されている。モーター15の平歯車38は、回転部27の平歯車36と噛み合っている。これにより、モーター15は、平歯車38を介して回転部27を回転可能になっている。コントロールボックス16は、設置板21の中央部の側方に、吐出ノズル14の横に並んで固定されている。コントロールボックス16は、モーター15のON/OFF、回転速度など、モーター15の動きを制御可能になっている。モーター15は、電解水生成手段12のスイッチのON/OFFに合わせて、自動的にON/OFFに切り替わる。
【0025】
次に、作用について説明する。
液体噴射装置10は、以下のように洗浄装置として使用される。まず、スイッチをONにし、電解水生成手段12で生成された酸性水とアルカリ性水とを、ポンプ13a,13bでそれぞれ吐出ノズル14に供給し、吐出口30から酸性水を吐出させるとともに、吐出口30の周囲を囲むよう配置された各噴射口34から、アルカリ性水を扇状に噴射させる。吐出口30から吐出する酸性水で殺菌・洗浄することができる。このとき、コントロールボックス16によりモーター15が自動的に駆動し、回転部27を回転させる。これにより、吐出口30から酸性水を吐出しつつ、各噴射口34が吐出口30を中心としてその周囲を回転しながらアルカリ性水を噴射し、酸性水の周囲をアルカリ性水でカーテン状に包囲することができる。
【0026】
液体噴射装置10は、複数の噴射口34が回転しながらアルカリ性水を噴射するため、回転しない場合に比べて、より均等かつ密にほぼ隙間なくカーテン状のアルカリ性水で酸性水の周囲を包囲することができる。また、アルカリ性水を扇状に噴射するため、アルカリ性水がより広くカーテン状に拡がり、より効果的に隙間をなくすことができる。このため、酸性水に含まれる塩素ガスやその臭気が周囲に拡散するのをアルカリ性水で効果的に防止することができる。また、毒性の塩素ガスを中和し、無害化することができる。
【0027】
液体噴射装置10は、吐出した酸性水および噴射したアルカリ性水を、吐出ノズル14の下方の排水板24で受けて、排水孔25から排水することができる。電解水生成手段12のスイッチをOFFにすれば、吐出口30からの酸性水の吐出と、各噴射口34からのアルカリ性水の噴射が停止し、回転部27は自動的に停止する。
【符号の説明】
【0028】
10 液体噴射装置
11 支持台
21 設置板
22 脚部
23 カバー
24 排水板
25 排水孔
12 電解水生成手段
13a,13b ポンプ
14 吐出ノズル
26 基部
28 第1供給路
29 第2供給路
30 吐出口
31 酸性水用の継手
32 アルカリ性水用の継手
27 回転部
33 連通路
34 噴射口
35 スライドベアリング
36 平歯車
37 Oリング
15 モーター
38 平歯車
16 コントロールボックス
図1
図2