(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717105
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】手摺用自在連結具
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-210589(P2012-210589)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-66029(P2014-66029A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113779
【氏名又は名称】マツ六株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 勇信
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−120599(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0245513(US,A1)
【文献】
特開2007−192014(JP,A)
【文献】
特開平11−006267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に手摺部材が接合される一対の可動部材と、前記一対の可動部材を互いの相対角度を変更し得るように連結する連結部材とを組み合わせて構成される手摺用自在連結具において、
前記連結部材は、側方に開口する縦半円弧を鉛直方向に配された軸心の回りに回転させた形状をなす凹周面部を備え、
前記凹周面部は、前記縦半円弧の仮想中心点を通る水平面によって凹周面上半部と凹周面下半部とに二分割され、
前記凹周面上半部と前記凹周面下半部とは、前記鉛直方向の軸心位置に取り付けられた軸着部材を介して互いに水平方向に回動し得るように連結されるとともに、
前記凹周面上半部及び前記凹周面下半部には、前記可動部材を連結するための軸部材が、前記縦半円弧の仮想中心点に向けて各一ヶ所ずつ突設されてなり、
前記可動部材は、一端に手摺接合部を備えるとともに、他端には前記凹周面部に沿う半球殻状の凸面部を備え、
前記凸面部には、長孔状の案内孔が前記凸面部の中央を含むように形成され、
前記一対の可動部材のうち一方の可動部材は、前記凹周面上半部に突設された上側の軸部材を該一方の可動部材の案内孔に貫挿させた状態で前記凹周面上半部に連結され、
前記一対の可動部材のうち他方の可動部材は、前記凹周面下半部に突設された下側の軸部材を該他方の可動部材の案内孔に貫挿させた状態で前記凹周面下半部に連結され、
前記各可動部材が、前記各凸面部を前記凹周面部に沿わせた状態で、それぞれの向きを変え得るように構成されたことを特徴とする手摺用自在連結具。
【請求項2】
請求項1に記載の手摺用自在連結具において、
前記軸部材は、前記連結部材の凹周面部に形成された雌ネジ孔に、前記凸面部の内側から着脱自在に螺着される有頭ボルトであることを特徴とする手摺用自在連結具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の手摺用自在連結具において、
前記案内孔は、前記凸面部の中央から片側に長く、他側に短く延びるように形成されたことを特徴とする手摺用自在連結具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の手摺用自在連結具において、
前記凹周面上半部及び前記凹周面下半部にそれぞれ突設された前記軸部材の基端周縁箇所には、前記案内孔内に係合可能な回り止め突起が、前記案内孔を縦向きに拘束するように形成されていることを特徴とする手摺用自在連結具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の手摺用自在連結具において、
前記手摺接合部は、手摺部材の端部に嵌装可能な筒状に形成されて、該筒状部分の軸心を前記凸面部の軸心と合致させるように形成されるとともに、側面には止めネジ孔が形成されていることを特徴とする手摺用自在連結具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の手摺用自在連結具において、
前記連結部材における凹周面部の下側には、支柱の上端部に嵌装可能な筒状の支柱接合部が、前記凹周面部と一体に設けられたことを特徴とする手摺用自在連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状または管状の手摺部材を角度可変に連結する手摺用自在連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば階段など、壁面の屈曲箇所に沿って手摺を設置するにあたり、直線状の手摺部材同士を、該屈曲箇所で向きを変えながら連結する必要が生じる。そのような箇所に利用する手摺用自在連結部が、例えば特許文献1〜3等に開示されている。
【0003】
これらの文献に開示された手摺用自在連結具の基本的構造は、両側に半球面状の凹面部が設けられた連結部材と、一端に前記凹面部に嵌まり込む半球殻状の凸面部が設けられた一対の可動部材とを備え、各可動部材の凸面部には案内孔が形成されて、この案内孔に貫挿された軸部材が連結部材の凹面部の中央付近に結合されることにより、可動部材と連結部材とが、互いの凸面部と凹面部とを球面接触させながら、両者の連結角度を一定の範囲内で変化させることができるように構成されている。
【0004】
各可動部材の他端には円筒状の手摺接合部が設けられ、その手摺接合部に棒状または筒状の手摺部材が装着され、ネジ等によって止め付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−6267号公報
【特許文献2】特開2001−254496号公報
【特許文献3】実開平5−35940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の手摺用自在連結具の構造では、凸面部に形成される案内孔が長孔(特許文献1、2)または十字孔(特許文献3)として形成されているので、連結部材に対する可動部材の可動方向は、該長孔または十字孔内を軸部材が移動しうる2次元的な(平面的な)範囲に限定される。したがって、2本の手摺部材を3次元的に(鉛直方向及び水平方向の両方において材軸が屈曲するように)連結しようとする場合には、少なくとも一方の可動部材を凸面部の中心軸回りに捻じって案内孔の向きを変えながら、連結部材と可動部材との相対的な角度を調整する必要がある。
【0007】
この場合、可動部材に接合される手摺部材の断面形状が真円形であれば大きな不都合はないが、手摺部材の断面形状が、例えば長円形、楕円形、あるいは角丸の四角形や六角形などの非円形であると、可動部材を材軸回りに捻じりながら連結角度を調整することによって、その可動部材に接合される手摺部材の表面の連続性が損なわれてしまいかねない。具体的には、例えば同一の長円形断面を有する手摺部材が、連結部材の左側では長軸が水平になり、連結部材の右側では長軸が斜めになってしまう、といったような事象である。
【0008】
また、手摺部材の断面が真円形である場合でも、可動部材が材軸回りに捻じられることにより、その手摺接合部に手摺部材を止め付けるためのネジ位置が、連結部材を挟む両側で不揃いになってしまい、仕上がりの美観が損なわれる、といった不都合も生じかねない。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、2本の手摺部材を3次元的に任意の角度で連結する場合に、手摺部材を材軸の回りに捻じることなく、簡単にかつ精度良く連結することができる手摺用自在連結具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために本発明の手摺用自在連結具が採用する基本的構成は、一端に手摺部材が接合される一対の可動部材と、前記一対の可動部材を互いの相対角度を変更し得るように連結する連結部材とを組み合わせて構成される手摺用自在連結具において、前記連結部材は、側方に開口する縦半円弧を鉛直方向に配された軸心の回りに回転させた形状をなす凹周面部を備え、前記凹周面部は、前記縦半円弧の仮想中心点を通る水平面によって凹周面上半部と凹周面下半部とに二分割され、前記凹周面上半部と前記凹周面下半部とは、前記鉛直方向の軸心位置に取り付けられた軸着部材を介して互いに水平方向に回動し得るように連結されるとともに、前記凹周面上半部及び前記凹周面下半部には、前記可動部材を連結するための軸部材が、前記縦半円弧の仮想中心点に向けて各一ヶ所ずつ突設されてなり、前記可動部材は、一端に手摺接合部を備えるとともに、他端には前記凹周面部に沿う半球殻状の凸面部を備え、前記凸面部には、長孔状の案内孔が前記凸面部の中央を含むように形成され、前記一対の可動部材のうち一方の可動部材は、前記凹周面上半部に突設された上側の軸部材を該一方の可動部材の案内孔に貫挿させた状態で前記凹周面上半部に連結され、前記一対の可動部材のうち他方の可動部材は、前記凹周面下半部に突設された下側の軸部材を該他方の可動部材の案内孔に貫挿させた状態で前記凹周面下半部に連結され、前記各可動部材が、前記各凸面部を前記凹周面部に沿わせた状態で、それぞれの向きを変え得るように構成されたものとして特徴づけられる。
【0011】
すなわち、この発明は、各可動部材を、鉛直方向及び水平方向の2種類の回動軸に沿って、それぞれ独立して回動させ得るように構成したものである。連結部材を構成する凹周面上半部と凹周面下半部とを、鉛直方向の軸心位置に取り付けた軸着部材を介してそれぞれ回動させることにより、凹周面上半部及び凹周面下半部にそれぞれ連結された各可動部材を、両者が干渉しない範囲内で、水平方向における任意の向きに向けることができる。
【0012】
また、各可動部材の凸面部に形成した長孔状の案内孔を縦向きに配置して、その案内孔内に軸部材を貫挿し、各可動部材の凸面部を連結部材の凹周面部に沿わせて摺動させることにより、凹周面部及び凸面部の仮想中心点を通る水平軸を仮想回動軸として、各可動部材をそれぞれ鉛直方向における任意の向きに向けることができる。そして、これらを組み合わせた回動操作により、各可動部材を、それぞれの軸を捻じることなく任意の向きに合わせることができる。
【0013】
前記軸部材は、前記連結部材の凹周面部に形成された雌ネジ孔に、前記凸面部の内側から着脱自在に螺着される有頭ボルトとするのが好ましい。このようなネジ部材を利用すると、連結部材と可動部材との組み付けや、連結角度の調整及び固定が容易になり、また部品の製作加工も容易になる。
【0014】
前記案内孔は、前記凸面部の中央から片側に長く、他側に短く延びるように形成されるのが好ましい。このように、案内孔を凸面部の中央から非対称に形成することにより、可動部材の回動範囲を有効に確保することができる。
【0015】
さらに、前記凹周面上半部及び前記凹周面下半部にそれぞれ突設された前記軸部材の基端周縁箇所には、前記案内孔内に係合可能な回り止め突起が、前記案内孔を縦向きに拘束するように形成されていてもよい。この構成によれば、回り止め突起と案内孔との係合によって案内孔の向きが縦向きに拘束されるので、可動部材の向きを調整している最中に可動部材が不用意に捻じれたり、あるいは固定済みの手摺部材が手素を握った拍子に捻じれて利用者に危険を及ぼしたり、といった事態を回避することができる。
【0016】
前記可動部材の一端に設けられる前記手摺接合部は、手摺部材の端部に嵌装可能な筒状に形成されて、該筒状部分の軸心を前記凸面部の軸心と合致させるように形成されるとともに、側面には止めネジ孔が形成されているのが好ましい。この構成によれば、筒状部分の断面形状を手摺部材の断面形状に合わせることにより、様々な形状の手摺部材に対して容易に接合することができ、さらに接合された手摺部材を止めネジによって容易かつ確実に固定することができる。止めネジ孔は、外観上、目立たない位置に設けることができるが、本発明によれば可動部材がどの向きに回動しても軸回りに捻じれないようにすることができるので、可動部材の角度によって止めネジ孔が目立ってしまう、といった事態を回避し易い。
【0017】
さらに、前記連結部材における凹周面部の下側には、支柱の上端部に嵌装可能な筒状の支柱接合部が、前記凹周面部と一体に設けられていてもよい。この構成によれば、例えば床面上に立設した適宜の断面形状を有する支柱の頂部に、この連結部材を確実に接合することが可能になり、本発明の手摺用自在連結具の利用可能範囲が拡がる。また、前記支柱接合部には、例えば壁面に突設させたブラケット状の部材等を接合することも可能になる。
【発明の効果】
【0018】
前述のように構成される本発明の手摺用自在連結具は、凹周面部を有する連結部材が凹周面上半部と凹周面下半部とに分割され、それらが互いに水平方向に回動可能に連結されるとともに、連結部材の凹周面部に沿う半球殻状の凸面部を備えた可動部材が、凹周面上半部及び凹周面下半部にそれぞれ突設された軸部材を凸面部の案内孔にそれぞれ貫挿させた状態で連結部材に連結されているので、各可動部材をそれぞれ独立して水平方向に回動させるとともに、それぞれ独立して鉛直方向に回動させることができる。
【0019】
よって、複数本の手摺部材を、それぞれの向きを変えて連結する部位において、各手摺部材の向きを精度良く調整しながら、容易に位置決めすることができる。
【0020】
しかも、本発明の手摺用自在連結具は、可動部材の向きを変える際に可動部材が軸回りに捻じれないように構成されているので、手摺部材の断面形状が非円形であっても、手摺部材の表面の連続性を損なうことなく連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る手摺用自在連結具の全体構成を示す斜視図である。
【
図4】前記手摺用自在連結具における可動部材の水平方向の回動範囲を説明する上面図である。
【
図5】前記手摺用自在連結具における可動部材の鉛直方向の回動範囲を説明する側面図である。
【
図6】前記手摺用自在連結具における可動部材の軸方向縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1〜
図6は、本発明の実施の形態に係る手摺用自在連結具を示す。例示した手摺用自在連結具1は、適宜の支柱2に取り付けた状態で使用されるもので、一端に手摺部材3が接合される一対の可動部材4と、支柱2に取り付けられて一対の可動部材4を連結する連結部材5とを組み合わせて構成される。
【0023】
連結部材5は、鉛直方向に配された軸心91(
図3参照)を有する略回転体形状の部材で、上部には可動部材4を連結するための凹周面部51を備え、下部には支柱2の上端部に嵌装可能な略筒状の支柱接合部52を備えている。例示形態では、支柱2の断面形状が円形であり、これに合わせて支柱接合部52も略円筒状に形成されている。凹周面部51と支柱接合部52とは、互いの軸心を合致させて一体的に形成されている。支柱2と支柱接合部52とは、支柱接合部52の側面2〜3ヶ所に配した止めネジ53によって固定される。例示形態では、止めネジ53として、六角穴付きのイモネジが利用されている。
【0024】
凹周面部51は、
図3に示すように、側方に開口する縦半円弧を、軸心91の回りに全周にわたって回転させた形状をなしている。ただし厳密には、凹周面部51の上端近傍及び下端近傍の微少範囲は、中間部分よりも曲率をわずかに減じながら側方に開口している。凹周面部51の外表面は、十分滑らかに仕上げられている。また、凹周面部51の頂面は、凹周面部51よりも小さい曲率の球面状をなすように形成されている。
【0025】
凹周面部51は、その高さ方向における中心面、つまり縦半円弧の仮想中心点92を通る水平面93によって、凹周面上半部511と凹周面下半部512とに二分割されている。分割された凹周面上半部511と凹周面下半部512とは、軸心91に取り付けられた軸着部材6を介して、互いに水平方向に回動し得るように連結されている。例示形態では、軸着部材6として六角穴付きボタンボルトが用いられている。六角穴付きボタンボルトからなる軸着部材6は、凹周面上半部511の軸心91に貫通形成された挿通孔53内に上方から、バネ座金61及び潤滑樹脂座金62を介して挿通され、その脚先が凹周面下半部512の軸心91に形成された雌ネジ孔54に締結されている。
【0026】
凹周面上半部511及び凹周面下半部512には、可動部材4を連結するための軸部材7が、各一ヶ所ずつ突設されている。軸部材7は、凹周面上半部511にあっては分割面(水平面93)よりもやや上方の位置から、また凹周面下半部512にあっては分割面(同上)よりもやや下方の位置から、いずれも縦半円弧の仮想中心点92に向けて突出するように設けられている。
【0027】
例示形態では、軸部材7として六角穴付きの有頭ボルトが用いられている。該ボルトからなる軸部材7は、後述する可動部材4の内側から、凹周面上半部511及び凹周面下半部512の前記位置に形成された雌ネジ孔55、56にそれぞれ着脱自在に締結されている。
【0028】
可動部材4は、両方とも同一の部材であり、それぞれ一端には手摺部材3の端部に嵌装可能な略筒状の手摺接合部41を備え、他端には連結部材5の凹周面部51に連結される凸面部42を備えている。
【0029】
例示形態では、手摺部材3の断面形状が円形であり、これに合わせて手摺接合部41も略円筒状に形成されている。手摺接合部41と手摺部材3とは、手摺接合部41の側面2〜3ヶ所に配した止めネジ43によって固定される。例示形態では、止めネジ43として丸皿の木ネジが利用され、手摺接合部41の側面に対向して形成された2ヶ所の止めネジ孔44に止め付けられている。
【0030】
凸面部42は、略一定の肉厚を有する半球殻状の部位で、その外表面は、凹周面部51の周面形状を規定する縦半円弧と略同径の半球状凸面をなし、十分滑らかに仕上げられている。また、凸面部42の内表面は外表面と同心で、やや小径の半球状凹面をなしている。すなわち、凸面部42の仮想中心点は、前記縦半円弧の仮想中心点92に合致する。凸面部42と手摺接合部41とは、互いの軸心を合致させて一体的に形成されている。
【0031】
凸面部42には、長孔状の案内孔45が形成され、この案内孔45に前述の軸部材7が貫挿される。案内孔45は、凸面部42の中央(半球状凸面を正面から見た円の中心/可動部材4の軸方向における先端に突出した部分)を含んで非対称に、つまり該中央から片側に長く、他側に短く延びるように形成されている。
【0032】
そして、これら一対の可動部材4のうち一方の可動部材4が、連結部材5における凹周面上半部511に突設された上側の軸部材7を該一方の可動部材4の案内孔45に貫挿させた状態で、凹周面上半部511に連結される。また、他方の可動部材4が、凹周面下半部512に突設された下側の軸部材7を該他方の可動部材4の案内孔45に貫挿させた状態で、凹周面下半部512に連結される。
【0033】
すなわち例示形態では、六角穴付きボルトからなる軸部材7が、各可動部材4の内側から、バネ座金71及び平座金(または球面座金)72を介して各凸面部42の案内孔45に貫挿され、その脚先が凹周面上半部511及び凹周面下半部512にそれぞれ形成された雌ネジ孔55、56に締結される。六角穴付きボルトからなる軸部材7の着脱や締め付け加減の調整は、凸面部42の内面側、すなわち手摺接合部41側から六角レンチ等の工具を挿し入れて行う。したがって、手摺接合部41に手摺部材3が接合されるのは、前述のようにして可動部材4が所定の向きに位置決めされてからになる。
【0034】
図4及び
図5は、前述の構成によって可動部材4が回動しうる範囲を説明する図である。
【0035】
連結部材5の凹周面部51が上下に二分割されて鉛直方向の軸心91回りに回動可能に連結され、分割された上下各部(凹周面上半部511及び凹周面下半部512)にそれぞれ可動部材4が連結されているので、水平方向については
図4に示すように、各可動部材4は、両者が干渉しない範囲内で360度、任意の向きに回動することができる。
【0036】
また、各可動部材4の凸面部42に形成した長孔状の案内孔45を縦向きにして、その案内孔45に軸部材7を貫挿することにより、鉛直方向については
図5に示すように、各可動部材4が凸面部42を連結部材5の凹周面部51に沿わせながら、各案内孔45内を軸部材7が移動しうる範囲内において、その軸を任意の向きに向けることができる。各可動部材4の回動軸は、凹周面部51及び凸面部42の仮想中心点92を通る紙面直交方向の水平軸になるので、両可動部材4の軸心を水平にすると、それら両可動部材4の軸心は図示のように一直線状に連続する。
【0037】
例示形態では、
図6に示すように、案内孔45が、軸部材7の軸心を図中上側に約28度、図中下側に約17度、合わせて約45度、移動させ得る長さに設定されている。そして、
図3に示したように、凹周面上半部511に連結される可動部材4については、可動部材4を水平位置から下向きに回動させ得るように案内孔45が配置され、凹周面下半部512に連結される可動部材4については、可動部材4を水平位置から上向きに回動させ得るように案内孔45が配置されている。当然ながら、案内孔45の長さを大きくすれば可動部材4の回動範囲も拡大するが、一般的な手摺の施工部位にあっては、鉛直方向に45度くらいの回動範囲が確保されていれば、実用上、特に不都合は生じない。
【0038】
このように本発明によれば、鉛直方向の回動軸(連結部材5の軸心91)及び水平方向の回動軸(凹周面部51及び凸面部42の仮想中心点92を通る水平軸)に沿って、可動部材4をそれぞれ独立して任意の向きに回動させることができる。その際に、各可動部材4がどちらを向いても、可動部材(手摺部材)の軸心まわりには捻じれない、という点が、前述の構成から得られる本発明独自の特長である。したがって、可動部材4の手摺接合部41の側面2ヶ所に止め付けられた止めネジは、可動部材4の姿勢に関わらず常に、同じ高さで対向する位置に保持されることとなる。
【0039】
可動部材4が捻じれないことを確実に担保するためには、凹周面上半部511及び凹周面下半部512における軸部材7の基端周縁箇所に、案内孔45内に係合可能な回り止め突起57、58をそれぞれ形成するのも好ましい。例示形態では、凹周面上半部511及び凹周面下半部512にそれぞれ形成された雌ネジ孔55、56の周縁部を、正面視逆U字状またはU字状に膨出させ、その膨出部分の両側縁間の幅を、ちょうど案内孔45内に嵌まり込む寸法に形成している。このような回り止め突起57、58を設けて案内孔45に係合させることにより、案内孔45が常に縦向きになるように拘束される。
【0040】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、適宜細部を改変して実施することができる。例えば、可動部材4に設けられる手摺接合部41の断面形状は、手摺部材3の断面形状に応じて、長円形、楕円形、あるいは角丸の四角形や六角形などの非円形に形成されてもよい。その場合、当該非円形の筒状部分は、適当な形状の接続部を介して凸面部42と互いの軸心を合致させるように接続されればよい。
【0041】
同様に、連結部材5に設けられる支柱接合部52の断面形状も、円形に限らず、長円形、楕円形、あるいは角丸の四角形や六角形などの非円形に形成されてもよい。その場合、当該非円形の筒状部分は、適当な形状の接続部を介して凹周面部51と接続されればよい。ただし、支柱2と連結部材5とは、必ずしも互いの軸心を合致させる必要はない。連結部材5は、凹周面部51の回動操作を妨げない範囲において、例えば、壁面に突設させたブラケット状の部材等に連結されてもよい。
【0042】
また、連結部材5の凹周面上半部511と凹周面下半部512とを連結する軸着部材6、連結部材5と可動部材4とを連結する軸部材7、可動部材4と手摺部材3とを止め付けるネジ部材、連結部材5と支柱2とを止め付けるネジ部材等は、各部材の形状や材質等を考慮して、公知一般のネジ部材等の中から適宜、選択されればよい。連結部材5と可動部材4とを連結する軸部材7については、予め連結部材5の凹周面部51側に固定状態で植設しておき、その先端を可動部材4の案内孔45に外側から挿し込んで、凸面部42の内面側から適宜の抜け止め手段を講じるなどしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、各種の建物や施設等に設置される棒状または管状の手摺部材を連結する用途に利用されるほか、これに類する直線状の構造材や仮設材等を、向きを変えながら順次架け渡す用途に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 手摺用自在連結具
2 支柱
3 手摺部材
4 可動部材
41 手摺接合部
42 凸面部
44 止めネジ孔
45 案内孔
5 連結部材
51 凹周面部
511 凹周面上半部
512 凹周面下半部
52支柱接合部
55、56 雌ネジ孔
57、58回り止め突起
6 軸着部材
7 軸部材
91 軸心
92 仮想中心点
93 水平面