(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記追尾手段として、X-Y-Z3次元直交座標系においてX軸方向と、Y軸方向と、Z軸回りに動く曳引車を用い、前記模型船の位置と方位の検出結果に応じて前記曳引車を制御したことを特徴とする請求項1に記載の荷重度変更自走試験方法。
前記追尾手段として、X-Y-Z3次元直交座標系においてX軸方向に動く主台車と、この主台車上に設置されたY軸方向に動く副台車と、この副台車に設けたZ軸回りに回転する回転盤とを有した曳引車を用い、前記模型船の位置と方位に応じて前記主台車と前記副台車と前記回転盤を制御したことを特徴とする請求項3に記載の荷重度変更自走試験装置。
前記回転盤固定のx−y−z3次元直交座標系において、前記模型船のx軸方向の揺れを検出するx方向揺れ検出手段と、y軸方向の揺れを検出するy方向揺れ検出手段と、z軸回りの揺れを検出する船首揺れ検出手段とをさらに備え、前記x方向揺れ検出手段と、前記y方向揺れ検出手段と、前記船首揺れ検出手段で検出される検出値がゼロになるように前記追尾手段を使用して前記曳引車の位置と方位を制御したことを特徴とする請求項4に記載の荷重度変更自走試験装置。
前記模型船に作用するx軸方向の力を検出するx方向力検出器と、y軸方向の力を検出するy方向力検出器をさらに備え、前記x方向力検出器と前記y方向力検出器で検出される力が、前記補助推力のx軸方向の成分とy軸方向の成分と一致するように、前記制御手段で前記補助推力付加手段を制御したことを特徴とする請求項5に記載の荷重度変更自走試験装置。
【背景技術】
【0002】
船の性能を調べる手段としての模型試験には大きく分けて拘束模型試験と自走試験の2つがある。前者は曳引車と一般に呼ばれる装置で模型船を曳航しておこなう試験であり、後者は曳引車を使わずに模型船自らが動力装置を備えてこれにより模型プロペラを回転させることで自走させておこなう試験である。
いずれの模型試験においても一般にフルード数を実船と一致させて模型船の速度を決めることで相似則を満足させて試験をおこなう。ここで、フルード数とは、船の長さ(m)に重力加速度(m/s
2)を乗じて得られた値を1/2乗して得られる値を用いて、船の速度U(m/s)を除して得られる無次元の数である。このフルード数は、船が走る際に水に波を起すことにより生じる造波抵抗の係数(造波抵抗係数)と一対一の関係になっている。フルード数を一致させることは重力と慣性力の比を一致させることを意味し、造波に関する現象を実船と相似にするという意味がある。
フルード数を実船と一致させると粘性力と慣性力の比であるレイノルズ数が一致しなくなるため粘性抵抗等の現象は実船と相似ではなくなる。粘性に起因する船の抵抗は船の全抵抗に対して大きな割合を占めるためフルード数を実船と一致させた模型試験では抵抗は模型船と実船では相似とならず、模型船は実船に較べて相対的に大きな抵抗を受けることになる。
フルード数を一致させたときにレイノルズ数が一致しないことによる模型試験上の問題を解決する手法には次のようなものがある。粘性に関する現象が重要となる船の抵抗を調べるための拘束模型試験においては、フルード数を実船と一致させた計測結果からレイノルズ数の違いによる摩擦抵抗に関する修正をしたうえで実船の抵抗を推定する手法が確立されている。プロペラ特性が係わる性能を調べるための拘束模型試験においては、相対的に大きな抵抗を受ける模型船に模型船の抵抗と実船相当の抵抗との差の分だけ曳引車によって推力を加えることでプロペラ荷重度を模型船と実船で相似にして試験をおこなう手法が確立されている。ここで、プロペラ荷重度とはプロペラ推力をプロペラ直径と同じ直径の円の面積で除した値のことである。なお、これらはいずれも直進時のみを対象とした拘束模型試験である。
【0003】
模型船の舵効きを実船と相似にするためには模型船のプロペラ荷重度を小さくする必要がある。このための方法として、これまでに空中プロペラによる方法及び圧縮窒素ガス噴射による方法(特許文献1)、空気タンク圧力調整による方法(特許文献2)並びに船外機による方法(特許文献3)が報告されている。
特許文献1には、摩擦抵抗修正推力を模型船体に対して真直ぐ後向きに発生でき、摩擦抵抗修正推力の発生源を模型船体上に搭載しない自由航走模型試験方法および装置を得ることを目的として、模型船上に取り付けた空中プロペラまたは模型プロペラ上方の空中における窒素ガス噴射により、摩擦抵抗増加分に相当する推力を発生させて、推進プロペラに実船相当のプロペラ推力を発生させるようにした摩擦抵抗修正の方法が記載されている。
特許文献2には、室外における自航試験を室内における場合における場合と同じような状態で行い得る自航試験方法を提供することを目的として、模型船遠方に設置された船外機により補助推力を出す方法が記載されている。
特許文献3には、模型が運動してもほぼ一定の大きさの外力を得ることができる装置を提供することを目的として、模型に一定の張力をかけるために、一端が模型に固定された引っ張り索の他端を、空気タンクに連通する圧力室と大気圧に開放された大気開放室とに区画するピストンに連結する方法が記載されている。
特許文献1に記載の方法はいずれも、補助推力一定の状態であってその補助推力の大きさも補助的な量であることが想定されていると考えられる。そして、特許文献2、3に記載の方法は、もっぱら直進状態で補助推力一定の状態を対象としたものと考えられる。
このように、特許文献1〜3に記載されているのは、いずれも模型船のプロペラの回転数を小さくしてプロペラ荷重度を下げたことによる推力の不足を別の方法による一定の補助推力で補おうとする方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実船と模型船の船速はフルードの相似則によって対応づけられるが、粘性に起因する摩擦抵抗はフルードの相似則には従わず、模型船は実船より相対的に大きな抵抗を受ける。直進状態の拘束試験では曳引車によって推力の一部を模型船に与えることでプロペラが出す推力を模型船と実船で相似にする方法が確立されているが、自走試験の場合には模型船のプロペラによってのみ必要な推力が生み出されるため、一般に模型船のプロペラ回転数は実船相当より大きな回転数になる。すなわち、フルード数を実船と一致させて模型船による自走試験をおこなおうとする場合、プロペラ回転数と船速の関係、あるいはプロペラ荷重度が一般に実船と模型船で相似ではなくなる。
プロペラ荷重度が実船と模型船で相似でなくなるとプロペラ後流中に置かれた舵の性能も相似ではなくなる。この場合、模型船の舵の方が実船のそれより強いプロペラ後流中に置かれることになり、模型船の方が実船より舵効きが良くなることになるからである。舵効きは船の操縦性能に強く関係するため、模型船の自走試験による操縦性能試験は一般には実船対応の性能を直接には示さない。
波浪中や風圧下における主機特性の変化・変動を調べる試験をおこなおうとする場合、基本となる平水中におけるプロペラ回転数と船速の関係、プロペラ荷重度が模型船と実船と相似でない場合は回転数と推力、トルク、主機特性の関係についても模型船と実船での相似則が確保されない。
本発明が解決しようとする課題は、上記のような問題を解決するため、直進状態に限らず操舵や外力によって斜航や旋回あるいは波を含む外力による船体動揺までもおこなうような自走試験、さらに途中でプロペラ回転数が変化するような自走試験において、模型船のプロペラ回転数と船速の関係を任意に設定できるようにすること、言い換えると、自走試験におけるプロペラ荷重度を自由に調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明の荷重度変更自走試験方法は、自走可能な模型
船と、前記模型
船を追尾する追尾手段
と、前記追尾手段に設けた前記模型
船に補助推力を付加する補助推力付加手段
とを
用いた自走試験方法であって、前記模型
船の運動状態
、及びフルード数を実船と一致させたときにレイノルズ数が一致しないことによる摩擦抵抗の差に基づいて補助推力を計算
し、さらに前記模型船の加速度と前記補助推力付加手段の移動部の質量とに基づいて計算値を補正する補助推力計算手段の計算結果に応じて
前記補助推力付加手段を制御し、前記模型
船に前記
計算結果に基づいた補助推力を付加したことを特徴とする。
この構成によれば、模型
船の運動状態に基づいて補助推力計算手段により補助推力を計算し、計算された補助推力を補助推力付加手段で模型
船に付加することができる。
また、計算結果に基づいた補助推力を運動状態の変化に対応させて付加することにより、フルード数、レイノルズ数について実船との間に生じる不一致を補正しながら自走試験を行うことができる。
また、模型船の加速度と補助推力付加手段の移動部の質量に基づいて、補助推力付加手段の移動部の慣性による模型船への影響を打ち消すことができる。
請求項
2の本発明は、請求項
1に記載の荷重度変更自走試験方法において、前記追尾手段として、X-Y-Z3次元直交座標系においてX軸方向と、Y軸方向と、Z軸回りに動く曳引車を用い、前記模型船の位置と方位の検出結果に応じて前記曳引車を制御したことを特徴とする。
この構成によれば、曳引車によりX軸方向、Y軸方向およびZ軸回りの模型船の動きを追尾することができる。
【0007】
請求項3に記載の本発明の荷重度変更自走試験装置は、自走可能な模型
船と、前記模型
船を追尾する追尾手段と、前記追尾手段に設けた前記模型
船に補助推力を付加する補助推力付加手段と、前記模型
船の運動状態
、及びフルード数を実船と一致させたときにレイノルズ数が一致しないことによる摩擦抵抗の差に基づいて補助推力を計算する補助推力計算手段と、前記補助推力計算手段の計算結果に応じて前記補助推力付加手段を制御する制御手段と
、前記模型船の加速度を検出する加速度検出手段とを備え、
前記補助推力計算手段は、前記加速度検出手段の検出値と前記補助推力付加手段の移動部の質量に基づいて計算値を補正して前記計算結果を導出し、前記制御手段が前記模型
船に
補正した前記
計算結果に基づいた補助推力を付加したことを特徴とする。
この構成によれば、自走可能な模型
船の運動状態に基づいて補助推力計算手段により計算された補助推力を模型
船に付加することができる。
また、計算結果に基づいた補助推力を運動状態の変化に対応させて付加することにより、運動状態の変化に対応した補助推力を付加して、フルード数、レイノルズ数について実船との間に生じる不一致を補正しながら自走試験を行うことができる。
また、模型船の加速度と補助推力付加手段の移動部の質量に基づいて、補助推力付加手段の移動部の慣性による模型船への影響を打ち消すことができる。
請求項
4の本発明は、請求項
3に記載の荷重度変更自走試験装置において、前記追尾手段として、X-Y-Z3次元直交座標系においてX軸方向に動く主台車と、この主台車上に設置されたY軸方向に動く副台車と、この副台車に設けたZ軸回りに回転する回転盤とを有した曳引車を用い、前記模型船の位置と方位に応じて前記主台車と前記副台車と前記回転盤を制御したことを特徴とする。
この構成によれば、前記主台車と前記副台車と前記回転盤を制御することにより、その位置と方位に応じて、模型船のX軸方向およびY軸方向の移動ならびにZ軸回りの回転を追うことができる。
請求項
5の本発明は、請求項
4に記載の荷重度変更自走試験装置において、前記回転盤固定のx−y−z3次元直交座標系において、前記模型船のx軸方向の揺れを検出するx方向揺れ検出手段と、y軸方向の揺れを検出するy方向揺れ検出手段と、z軸回りの揺れを検出する船首揺れ検出手段とをさらに備え、前記x方向揺れ検出手段と、前記y方向揺れ検出手段と、前記船首揺れ検出手段で検出される検出値がゼロになるように前記追尾手段を使用して前記曳引車の位置と方位を制御したことを特徴とする。
この構成によれば、前記主台車と前記副台車と前記回転盤を制御することにより、回転盤固定のx軸方向およびy軸方向の模型船の揺れならびにz軸回りの模型船揺れに追従させることができる。
請求項
6の本発明は、請求項
5に記載の荷重度変更自走試験装置において、前記模型船に作用するx軸方向の力を検出するx方向力検出器と、y軸方向の力を検出するy方向力検出器をさらに備え、前記x方向力検出器と前記y方向力検出器で検出される力が、前記補助推力のx軸方向の成分とy軸方向の成分と一致するように、前記制御手段で前記補助推力付加手段を制御したことを特徴とする。
この構成によれば、x方向力検出器とy方向力検出器により模型船に作用している力を検出できるから、補助推力付加手段を制御することにより、前記模型の運動状態に基づいて前記補助推力計算手段により計算された補助推進力を模型船に作用させることができる。
請求項
7の本発明は、請求項
3に記載の荷重度変更自走試験装置において、前記追尾手段として、前記模型船の進行方向に移動可能な曳引車と、この曳引車に搭載された前記模型を掴むロボットアームを用いたことを特徴とする。
この構成によれば、曳引車とロボットアームにより模型を追尾すると共にロボットアームにより模型に補助推力を付加することができる。
請求項
8の本発明は、請求項
3から請求項
7のうちの1項に記載の荷重度変更自走試験装置において、前記追尾手段が前記補助推力付加手段を兼ねたことを特徴とする。
この構成によれば、模型を追尾すると共に模型に対して補助推力を付加することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の荷重度変更自走試験方法および荷重度変更自走試験装置によれば、自走可能な模型を追尾手段により追尾し、追尾手段に設けた補助推力付加手段から模型に対して、その運動状態に基づいて補助推力計算手段により計算された所定の補助推力を与えることができる。例えば、操舵や外力によって斜航や旋回あるいは波を含む外力による船体動揺までもおこなうような自走試験、さらに途中でプロペラ回転数が変化するような自走試験において、運動状態に基づいて所定の補助推力を与えることができる。
模型として模型船を用い、補助推力計算手段がフルード数を実船と一致させたときにレイノルズ数が一致しないことによる摩擦抵抗の差を計算する構成とすれば、自走可能な模型船のプロペラの回転数・推力・荷重度を補助推力の大きさに応じて任意に設定することが可能となる。これにより、平水中のみならず波浪中や風圧下における船の性能を直進中に限らず、操舵中、斜航中、旋回中、加速中、減速中などの航行状態を問わず、かつ機関特性をも含めて明らかにすることが可能となる。
追尾手段として、X-Y-Z3次元直交座標系においてX軸方向と、Y軸方向と、Z軸回りに動く曳引車を用い、模型船の位置と方位の検出結果に応じて曳引車を制御する構成とすれば、曳引車により自走可能な模型船の位置と方位を常に検知しながら、自走可能な模型船を追尾することが可能となる。また、曳引車は、自走可能な模型船の方位に応じて、補助推力計算手段により計算された補助推力を模型船の前後方向に常に与え続けることが可能となる。
補助推力計算手段が模型船の加速度と補助推力付加手段の移動部の質量とに基づいて計算値を補正する構成とすれば、補助推力付加手段の移動部の慣性による模型船への影響を打ち消すことができるから、自走可能な模型船のプロペラの回転数・推力・荷重度の補助推力の大きさに応じた設定をより正確に行うことが可能となる。
本発明の荷重度変更自走試験装置を、x方向揺れ検出手段、y方向揺れ検出手段および船首揺れ検出手段を備えた構成とすれば、模型船の揺れに追従させることができるから、自走可能な模型船の上記設定をより正確に行うことが可能となる。
本発明の荷重度変更自走試験装置をx方向力検出器およびy方向力検出器を備えた構成とすれば、これらにより検出された模型船に実際に加えられている補助推力に基づいて補助推力付加手段を制御することができるから、模型船に付加する補助推力の精度を向上させることができる。
追尾手段として曳引車とこの曳引車に搭載されたロボットアームを用いた構成または、追尾手段が補助推力付加手段を兼ねた構成とすれば、模型を追尾し補助推力を加える手段を簡単な構成により実現することができる。例えば、模型へのロボットアームの取り付け作業を容易にし、また、慣性力を低くして動揺の計測範囲を広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1〜4を参酌して以下に説明する。
図1は、本実施形態による荷重度変更試験方法に用いる荷重度変更試験装置を示すブロック図である。同図に示すように本実施形態の荷重度変更試験装置10は、制御手段1、運動状態検出手段2、補助推力計算手段3、補助推力付加手段4、追尾手段5および模型船(模型)6を備えている。
【0011】
制御手段1は、運動状態検出手段2、補助推力計算手段3、補助推力付加手段4、追尾手段5および模型船6を制御するものであり、中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)などを用いて構成することができる。また、制御手段1は、必要に応じて制御のための情報を記録したり読み出したりするための情報記憶手段(図示せず)と接続されていても良い。
運動状態検出手段2は、模型船6の運動状態を検出するものである。運動状態検出手段2により検出される運動状態としては、速度、加速度等が挙げられる。補助推力計算手段3は、運動状態検出手段2により検出された模型船6の運動状態に基づいて補助推力を計算するものである。補助推力計算手段3により、模型船6の運動状態に対応した適切な補助推力を得ることができる。補助推力付加手段4は、補助推力計算手段3の計算結果に応じて模型船6に補助推力を付加するものである。この補助推力付加手段4により、運動状態に対応した適切な補助推力を模型船6に付加することができる。追尾手段5は、自走可能な模型船6を追尾するものである。
【0012】
図2は本実施形態による荷重度変更自走試験方法に用いる試験水槽と曳引車の構造を示す要部平面図である。同図に示すように、曳引車(追尾手段)Aは主台車51、主台車51上の副台車52、および副台車52上の回転盤53を備えている。
水槽Hは、模型船6(
図1参照)を自走させるためのものであり、X-Y-Z3次元直交座標系が設定されている。以下、水槽Hに設定されている座標系を用いて模型船6の位置・方向を特定する場合、大文字のX、Y、Z及びΨを用いる。本実施形態においては、X-Y-Z3次元直交座標系のX方向は、水槽Hに水が入った状態において水面の外郭により形成される長方形の長手方向をいう。そして、水面上でX軸に直交する方向をY方向、X方向およびY方向の何れとも直交する鉛直方向をZ方向とする。
【0013】
曳引車Aは主台車51によってレール54上をX方向に動くことができる。主台車51には副台車52が設置されており、副台車52は主台車51上をY方向に動くことができる。副台車52は回転盤53を備えており、回転盤53はZ方向(Z軸)を回転軸として回転することができる。回転盤53がZ軸回りに回転する回転方向をX軸を基準としてΨ方向と記す。曳引車Aの位置をX
c,Y
cと記し、X軸を基準とした回転方向をΨ
cと記す。曳引車Aの位置と方向X
c,Y
c,Ψ
cは外部からの信号によってそれぞれ制御することができる。
【0014】
図3は本実施形態の荷重度変更試験装置の構造を示す要部斜視図であり、変位検出・補助推力付加のための荷重度変更試験装置10の構造の概略を示している。この荷重度変更試験装置10は、
図2に示した曳引車Aの回転盤53上に設置される。そして、その下端の模型固定部11において、破線で示した模型船6の重心位置に固定される。模型船6を水平に保つためのジンバル部12を備えていることによって、
図2に示す曳引車Aが模型船6の横揺れ・縦揺れ・船首揺れを拘束することはない。すなわち、ジンバル部12により、模型船6のピッチ方向、ロール方向、ヨー方向に対する運動が許容されている。
【0015】
図3に示すように、水槽Hに設定されているX-Y-Z3次元直交座標系(
図2参照)とは別に、荷重度変更試験装置10にはx−y−z3次元直交座標系が設定されている。以下、荷重度変更試験装置10に設定されている座標系を用いて模型船6の位置・方向を特定する場合、小文字のx、y、z及びψを用いる。このx−y−z3次元直交座標系のx方向とは、回転盤53上に固定された水槽Hの水面に平行な所定方向をいう。そして、水面に平行でx軸に直交する方向をy方向、x方向およびy方向の何れとも直交する鉛直方向をz方向とする。
x−y−z3次元直交座標系は、回転盤53上に固定されたものであるから、回転盤53の回転に伴って、x方向、y方向が変化する。ただし、z軸回りの回転方向の基準位置をx方向としているから、z軸回りの回転方向ψが回転盤53の回転に伴って変化することはない。
荷重度変更試験装置10では、模型固定部11およびジンバル部12を備えている支柱部13が、鉛直方向に移動可能な状態でx移動部(補助推力付加手段)14に取付けられている。支柱部13は、x移動部14内のローラー(補助推力付加手段)15によって、鉛直となるように保たれると同時に模型船6の上下揺れを拘束することはない。
x移動部14は下方にローラー15を備えており、ローラー15がxレール16上に乗っている。ローラー15が回転してxレール16を移動することにより、x移動部14はx方向に動くことができる。xレール16の下方にはローラー(補助推力付加手段)17が設けられており、ローラー17がyレール(補助推力付加手段)18上に乗っている。ローラー17が回転してyレール18上を移動することにより、xレール16はy方向に動くことができる。
【0016】
模型船6のx方向の揺れはx揺れ検出用ポテンショメータ(運動状態検出手段)19によって検出される。模型船6のy方向の揺れはy揺れ検出用ポテンショメータ(運動状態検出手段)20によって検出される。模型船6の船首揺れは船首揺れ検出用ポテンショメータ(運動状態検出手段)21によって検出される。これらのポテンショメータによって検出されるx揺れとy揺れ、船首揺れの値をx,y,ψと記す。
【0017】
x移動部14にはx揺れ用ワイヤー22を介してx力用サーボモータ(補助推力付加手段)23が接続されており、これらを介してx移動部14にx方向の力をかけることができる。xレール16にはy揺れ用ワイヤー24を介してy力用サーボモータ(補助推力付加手段)25が接続されており、これらを介してxレール16にy方向の力をかけることができる。x力用サーボモータ23が生み出すx方向の力をF
x、y力用サーボモータ25が生み出すy方向の力をF
yと記す。模型固定部11、ジンバル部12および支柱部13の合計重量は模型船6の排水量に含まれる。
【0018】
検出されたx,y,ψを信号に変換して曳引車Aに入力し、これらx,y,ψが0になるように例えばPID制御のようなフィードバック制御によってX
c,Y
c,Ψ
cを制御する。その結果、曳引車Aは自走する模型船6の位置と方位を追尾して動くことになる。
【0019】
水槽HのX-Y-Z3次元直交座標系における模型船6の船首方向をΨ
sと記す。Ψ
sと、回転盤53の回転方向Ψ
cと、船首揺れ検出用ポテンショメータ21によって検出されたψとに関して次の関係が成り立つ。
【数1】
模型船6に補助推力T
aを与える場合は次式のようにF
xとF
yを与えればよい。Ψ
sとΨ
cとψとの関係および模型船に与える補助推力を説明するための模式図を
図4に示す。
【数2】
【0020】
模型船6がx方向に加速度を持つ場合はx移動部14の質量m
xが、y方向に加速度を持つ場合はx移動部14の質量m
xとxレール16の質量m
rの合計がそれぞれ慣性力として模型船6に作用することになる。これらの慣性力が無視できない場合は、これらの慣性力を打ち消すだけの力をx方向とy方向に与えればよい。この場合、x力用サーボモータ23が生み出すx方向の力F
xと、y力用サーボモータ25が生み出すy方向の力F
yは次式で与えられる。
【数3】
(3)式中のa
xおよびa
yは
図3中に示すxy方向加速度計26によって直接計測されるx方向およびy方向の加速度の値を表す。これらはそれぞれ上式のようにX
C,Y
C,Ψ
C,x,yの解析からも求めることができる。加速度a
xおよびa
yの計測値は必要に応じてフィルター等を介して雑音を除去して(3)式に従ってフィードバックさせることができる。
補助推力T
aは、一定値であっても、あるいは模型船6の船速とプロペラ回転数・船体運動等から計算され時々刻々変化する変動値でもかまわない。すなわち、模型船6を一定速度で直進させるような場合、補助推力T
aとして一定の値を用いることができるが、本実施形態の荷重度変更試験装置10によれば、模型船6の運動状態に基づいて補助推力計算手段3により計算された補助推力を模型船6に対して付加することができる。これにより、模型船6の自走試験においてプロペラの荷重度を自由に調整すること、すなわち、模型船6の変化する運動状態に対応して、適切な補助推力を加えることにより、模型船6のプロペラの荷重度を自由に調整することが可能となる。
【0021】
一般に自走試験の方法としては、プロペラ回転数一定のほか推力一定、トルク一定、馬力一定の方法が考えられる。いずれの方法で自走試験をおこなっても、波浪中や風圧下など外乱がある場合は一般に船体動揺や斜航などの操縦運動が伴う。あるいは外乱がなくても操舵による操縦運動が伴う場合がある。このような場合は船速が変化する。船速が変化すれば与えるべき補助推力T
aの値も変化する。これは補助推力T
aが一般に摩擦抵抗成分に対応するからである。補助推力T
aとして与えるべき摩擦抵抗成分は、あらかじめ実施されたまたは別途推定された船の抵抗特性から次式のように船速の前後方向成分u
mの関数として求めることができる。
【数4】
模型船6が前後方向に一定の運動をしている場合、補助推力T
aは一定となる。しかし、模型船6が旋回する場合、通常、模型船6は滑りながら旋回するから、船首方向と移動方向とが一致しない。このため、摩擦抵抗成分を検討するにあたっては、船首方向の速度の前後成分u
mが問題となってくる。
図5は船速の前後方向成分u
mを説明するための模式図である。同図に示すように、図中において二点鎖線を用いて示した軌跡を描くように旋回する場合、模型船6は一般にその船首を旋回軌道よりも内側に向ける。ここで、補助推力Taとして与えるべき摩擦抵抗成分は、旋回方向ではなく、船速の前後方向成分u
mの関数として求めることができる。船速の前後方向成分u
mは次式で計算される。
【数5】
ただし、(5)式右辺中の変数は次式で求められる。
【数6】
【0022】
(4)式の具体化はいくつか考えられるが、例えば次式のように表すことができる。
【数7】
(7)式中のLは船の長さ、uは船速の前後方向成分、ρは水の密度、Sは船の浸水表面積、νは水の動粘性係数を表し、添え字のmとsはそれぞれ模型船(m)と実船(s)に対応した値であることを表す。Kは形状影響係数を表す。
このように、本方法によれば船速の変動がある場合でもこれに応じて変動する補助推力を時々刻々与えることが可能となる。
【0023】
なお、本実施形態の荷重度変更試験装置は、運動状態検出手段としてポテンショメータを用いている。このようにポテンショメータを採用した構成では、追尾手段が補助推力付加手段としても機能するから、両者を厳密に分けることは困難である。このため、補助推力計算手段による計算値の補正に用いられる補助推力付加手段の移動部の質量には、追尾手段に相当する部分の質量も含まれることとなる。しかし、模型船を追尾するための手段として、例えばカメラで模型船の位置を認識するような別の構成を採用することも可能である。このような構成を採用した場合、追尾手段の移動部の質量が存在せず、ポテンショメータは必要なくなり、移動部すべてが補助推力付加手段であるとみなすことができる。このため、補助推力付加手段の移動部の質量として計算値の補正に用いられるものは、追尾手段に相当する部分を含まない移動部の質量となる。
【0024】
(第2の実施形態)
本実施の形態において用いる装置・手段としては、第1の実施形態とほぼ同じであるが、
図6に示すような若干異なる変位検出・補助推力付加装置を用いる。本実施形態の荷重度変更試験装置30が
図3の荷重度変更試験装置10と異なる点は、xy方向加速度計26を必要とせず、その代わりにジンバル部12上部にx方向の力を検出するx方向力検出器(運動状態検出手段)31とy方向の力を検出するy方向力検出器(運動状態検出手段)32を設けている点である。なお、第1の実施形態において説明した部材については、同じ番号を付して本実施形態では説明を省略する。
与えるべき補助推力がT
aである場合、x方向力検出器31で検出される力をF
xm,y方向力検出器32で検出される力をF
ymとする。このとき、次式が満足されるようにx力用サーボモータ23及びy力用サーボモータ25を制御すればよい。
【数8】
【0025】
x方向力検出器31およびy方向力検出器32の代わりに模型船6の前後力F
Lおよび左右力F
Tを検出する場合は以下を満足するようにx力用サーボモータ23及びy力用サーボモータ25を制御すればよい。
【数9】
前記第1の実施形態がx力用サーボモータ23及びy力用サーボモータ25が出す力をある値になるように制御するのに対し、本実施形態はx方向力検出器31およびy方向力検出器32により計測される力がある値になるように制御する点において異なる。本実施形態では、実際に模型船6に加えられている力を計測することから、x移動部14およびxレール16を含んで構成される移動部の質量は自動的に補正される。
【0026】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について、
図7及び
図8を参酌して以下に説明する。本実施形態では、補助推力付加手段として圧縮ガス(エア)ボンベを利用して補助推力を与える方法を用いた点において、上述した第1および第2の実施形態とは異なっている。なお、第1および第2の実施形態において説明した部材については、同じ番号を付して本実施形態では説明を省略する。
図7は本実施形態による荷重度変更自走試験装置の構造を示す要部斜視図である。同図に示すように、本実施形態の荷重度変更試験装置40は模型船6の船尾にエアノズル(補助推力付加手段)41を備えている。そして、曳引車Aは別途自動追尾手段としての主台車51、副台車52及び回転盤53(
図2参照)を持って模型船6を追尾すると同時に、模型船6の船尾に設けられているエアノズル41を制御して模型船6に与える補助推力の大きさを時々刻々状況に応じて変化させることになる。なお、曳引車Aによるエアノズル41の制御方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
【0027】
図8は荷重度変更自走試験装置においてエアノズル41を制御して模型船に与える補助推力を制御する構成を説明するための要部側面図である。同図に示すように、模型船6はその推進力をプロペラ61のみならず、エアノズル41からも得ることができる。このため、運動状態検出手段2により得られた情報に基づいて補助推力計算手段3により得られた計算結果に応じて、エアノズル41からのガス噴射による補助推進力を変化させることにより、プロペラ61の回転数と模型船6の船側とを独立して設定することができ、プロペラ61の荷重度を自由に調整することができる。
なお、本実施の形態においては、第2の実施の形態同様x方向力検出器31およびy方向力検出器32を用いた構成としたが、これ以外の実施形態として記載した構成と組み合わせて実施することも可能である。
【0028】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について、
図9〜
図13を参酌して以下に説明する。本実施形態では、ロボットアームを用いて荷重度変更試験装置を実施し、当該荷重度変更試験装置を備えた流体作用力測定装置として本発明を実施する場合について説明する。この場合、ロボットアームは、それが検出する模型船の変位と方位に応じて曳引車が模型船を自動追尾すると同時に、状況に応じて時々刻々変化する補助推力を模型船に加えるように動く。これにより、ロボットアームを用いることによっても、本発明の課題を解決することができる。
【0029】
図9は本実施形態による荷重度変更試験装置を備えた流体作用力測定装置を模型船に適用した波力測定装置の機能実現手段を示すブロック図である。
本実施形態による波力測定装置は、流体の作用力試験を行う模型(模型船)101と、模型101に作用する流体の力を検出する作用力検出手段(運動状態検出手段)102と、流体を変動させる流体変動手段103と、模型101を作動させる模型作動手段104と、作用力検出手段102を端部に設けるロボットアーム(補助推力付加手段、追尾手段)105とを備えている。ロボットアーム105は、従来のヒーブロッド・キャリッジ式波力計測装置のようなキャリッジを必要としないため、動揺計測範囲を広く取れる。
作用力検出手段102は、複数のロードセルで構成している。本実施形態では、サージ方向、スウェイ方向、ヒーブ方向、ヨー方向のそれぞれの作用力を検出するために、4軸ロードセルを用いている。作用力検出手段102は、流体変動手段103による流体の変動下で模型101に作用する力、及び模型101を模型作動手段104により作動させたときの模型101に作用する力を検出する。
【0030】
ロボットアーム105の端部は、機械的な機構又は制御機構によって水平を保つように構成されている。ロボットアーム105の先端部には、過大負荷防止機構106とワンタッチ機構107とを備えている。
図9では、過大負荷防止機構106は、ワンタッチ機構107を介してロボットアーム105に設けた構成を示しているが、ロボットアーム105に直接設けてもよい。
作用力検出手段102は過大負荷防止機構106を介しワンタッチ機構107によってロボットアーム105に連結され、一方でケーシング118を介してジンバル108に接続されている。また、過大負荷防止機構106は、模型101を作動、又は停止させるときに作用力検出手段102の周辺構造物であるケーシング118を掴み、作用力検出手段102に過大な負荷がかかることを防止することが可能なように構成されている。
なお、ワンタッチ機構107は、作用力検出手段102とジンバル108との間、又はジンバル108と模型101との間に設けてもよい。ジンバル108と模型101との間にワンタッチ機構107を設けた場合は、模型101をワンタッチ機構107で直接的に掴むことになるがロボットアーム105と過大負荷防止機構106との間や、作用力検出手段102とジンバル108との間に設けた場合は、間接的に掴むことになる。この掴み方が、直接的であるか間接的であるかは、関連部分の構成や着脱操作のし易さに応じて任意に選択される。
なお、ワンタッチ機構107は、手の1回の接触で着脱が可能な機構をはじめとした、工具を用いることなく簡便に物の着脱が可能な機構全体を含むものとする。
従来のヒーブロッド・キャリッジ式波力計測装置においては、ジンバルを模型船に固定する作業が、複数のボルト固定によるために極めて手間を要していた。しかし、ワンタッチ機構107を設けることで、模型101へのロボットアーム105の取り付けを多数のボルトを用いることなく行えるために、波力測定装置の設置作業に要する手間を軽減できる。また、従来のヒーブロッド・キャリッジ式波力計測装置で問題となっていたサージ方向とスウェイ方向のキャリッジの慣性力の問題を軽減できる。
また、過大負荷防止機構106はケーシング118を掴む構成以外に、模型101を掴む構成や、ジンバル108の上部を掴む構成があり得る。この、過大負荷防止機構106がどこを掴むかは、関連部分の構成や実験のし易さに応じて任意に選択される。
図9に示すように、過大負荷防止機構106は、モータやソレノイド等を利用した開閉手段106aによって開閉される。過大負荷防止機構106がクランプ開の状態、すなわちクランプしない状態では、ワンタッチ機構107によって作用力検出手段102が過大負荷防止機構106を介してロボットアーム105に連結される。過大負荷防止機構106は、クランプ閉の状態、すなわちクランプした状態では、作用力検出手段102のケーシング118を掴む。過大負荷防止機構106によってケーシング118を掴んだ状態では、ロボットアーム105から模型101に力を作用させても、ロボットアーム105の力は作用力検出手段102に働かない。模型101を作動/停止させるとき、すなわち所定の試験位置に模型101を設置するまでの移動時及び停止時や、所定の速度に加速する間等には、開閉手段106aによってクランプ閉とし、過大負荷防止機構106でケーシング118を掴むように制御する。また、模型101に力を作用させる場合にも、開閉手段106aによってクランプ閉とし、過大負荷防止機構106でケーシング118を掴んだ状態とする。
【0031】
作用力検出手段102は、ジンバル108を介して模型101に取り付けられる。ジンバル108は、ピッチ方向とロール方向に対する模型101の運動を許容する。
模型作動手段104には、模型101を曳引する曳引車A(
図2参照)を用いることができ、模型作動手段104は、ロボットアーム105を介して作動させることが好ましい。
検出値記憶手段109は、作用力検出手段102で検出し、付加物慣性力補正手段114で補正した検出値を記憶する。追随動作演算手段(補助推力計算手段)110では、検出値記憶手段109に記憶した検出値に基づいて、検出される力がゼロとなるようにロボットアーム105の動作方向と動作距離を演算する。ロボットアーム駆動手段(補助推力付加手段、追尾手段)111では、追随動作演算手段110で演算されたデータに基づいてロボットアーム105に対して駆動させる。
ロボットアーム105を模型101に追随させる時には、開閉手段106aによってクランプ開とし、上記のように作用力検出手段102で検出される力がゼロとなるようにロボットアーム105を動作させる。従って、ロボットアーム105からの力は、作用力検出手段102に作用させず、ロボットアーム105の端部を作用力検出手段102の動きに追随させて動作させることができる。また、追随動作演算手段110により計算された補助推力をロボットアーム105を介して、模型101に付加することができる。
付加される補助推力は、第1の実施形態において記載したとおり、一定値であっても、あるいは模型101の船速とプロペラ回転数・船体運動等から計算され時々刻々変化する変動値であってもかまわない。変化する模型101の運動状態に対応した適切な補助推力を加えることにより、模型101のプロペラの荷重度を自由に調整することが可能となる。
【0032】
模型101の船体運動を検出する船体運動検出手段として、加速度検出手段(運動状態検出手段)112とロボットアーム位置検出手段(運動状態検出手段)113とを備えている。加速度検出手段112は、作用力検出手段102とともにロボットアーム105の端部に設けている。加速度検出手段112は、サージ方向、スウェイ方向、ヒーブ方向、ヨー方向のそれぞれの加速度を検出することが好ましい。ロボットアーム位置検出手段113は、例えば、ロボットアーム機構が通常備えているサーボモータなどのエンコーダのデータを用いてロボットアーム105の端部の位置データを検出することができる。
付加物慣性力補正手段(加速度検出手段、補助推力付加手段)114は、本実施形態により模型101と一緒に加速運動する作用力検出手段102に加わる慣性力を演算し、検出された作用力を補正する。付加物とは、ロボットアーム105の端部に設けられた作用力検出手段102、加速度検出手段112、及びこれらを固定するための治具であり、付加物の質量はあらかじめ記憶されている。付加物慣性力補正手段114では、検出される加速度とあらかじめ記憶された付加物の質量とから演算される。
【0033】
波力演算手段115では、作用力検出手段102で検出し、付加物慣性力補正手段114で補正した検出値に基づいて波力を演算する。
測定値記憶手段116では、波力演算手段115で演算された、付加物による影響を除去した波力を記憶するとともに、ロボットアーム位置検出手段113で検出された模型101の位置データを記憶する。
ドリフト量演算手段17では、ロボットアーム位置検出手段113で検出した検出値に基づいて、模型101のドリフト量を演算する。ドリフト量演算手段17による演算結果として、ドリフトを復原する力をロボットアーム105に与える必要がある場合には、ドリフトを復原する力をロボットアーム駆動手段11に与えることで、一定の平均的な位置周りに模型101を維持する。また、ドリフトを復原する力が作用力検出手段102の容量を超えた場合は、過大負荷防止機構106がケーシング118を掴むように開閉手段106aによってクランプを閉動作させ、作用力検出手段102の損傷を防止する。
【0034】
図10は同波力測定装置の要部斜視図、
図11は同波力測定装置の要部断面図、
図12は同波力測定装置の要部分解斜視図、
図13は同波力測定装置の要部断面図である。
ジンバル108は、互いが直交する方向に第1の軸108aと第2の軸108bとを備えており、模型101の前後方向が第1の軸108a、模型101の左右方向が第2の軸108bとなるように模型101に固定される。第1の軸108aによって模型101のロール方向の運動を許容し、第2の軸108bによって模型101のピッチ方向の運動を許容する。
作用力検出手段102はケーシング118内に収納され、ケーシング118を介してジンバル108に取り付けられる。作用力検出手段102は、ジンバル108に取り付けられることで、模型101のロール方向とピッチ方向の運動の影響は受けない。
ロボットアーム105の先端部には、ワンタッチ機構107を介して過大負荷防止機構106が設けられている。
【0035】
図12に示すように、作用力検出手段102は、サージ方向の作用力を検出するロードセル102a、スウェイ方向の作用力を検出するロードセル102b、ヒーブ方向の作用力を検出するロードセル102c、ヨー方向の作用力を検出するロードセル102dとから構成される。これらのロードセル102a、102b、102c、102dは、ケーシング118内に収納されている。ケーシング118の外周面には溝が形成され、過大負荷防止機構106はこの溝に係止する突起を備えている。
【0036】
図10から
図12では、過大負荷防止機構106は、ケーシング118を掴むことで、間接的にジンバル108を掴む構成を示している。このように、過大負荷防止機構106は、ケーシング118、ジンバル108、又は模型101のいずれかを掴むことで、作用力検出手段102にロボットアーム105の力が加わらない。
【0037】
図12及び
図13にワンタッチ機構107を示している。
ワンタッチ機構107は、ロボットアーム105の先端部105aを挿入可能な凹部が形成された接合部107aと、ボール保持具107bと、ボール107cと、ボール107cを先端部105aに押圧するロック部材107dと、ロック部材107dによるボール107cへの押圧を解除する解除レバー107eとから構成されている。また、先端部105aの端部には、廻り止め用のローレット105bが形成されている。
【0038】
ロボットアーム105の先端部105aが凹部に挿入されると、ボール107cが先端部105aの外周にリング状に形成された溝にはまり込み、ロック部材107dの押圧によって、先端部105aが接合部107aに係合される。
解除レバー107eを凹部の底面に向かって押し下げることで、ロック部材107dのボール107cへの押圧が解除され、先端部105aの接合部107aに対する係合は解除される。
【0039】
以上のように本実施形態によれば、波の作用力試験を行う模型101と、模型101に作用する波の力を検出する作用力検出手段102と、作用力検出手段102を端部に設けるロボットアーム105と、波を発生させる流体変動手段103とを備え、ロボットアーム105の端部に作用力検出手段102を設けることで、模型101の6自由度運動を極力拘束することなく、波による模型101の運動にロボットアーム105を追随させやすく、模型101の着脱作業が簡単で、コンパクトな測定装置を実現でき、更には広範囲での模型101の動揺を計測することができる。
また本実施形態によれば、作用力検出手段102として、ロードセル102a、102b、102c、102dを用いたことで、模型101に作用する波の力を電気信号で取り出すため、ロボットアーム105へのフィードバック制御を行いやすい。
【0040】
また本実施形態によれば、ロボットアーム105の先端部105aには、模型101を掴むワンタッチ機構107を備え、ワンタッチ機構107によって模型101を掴むことで、模型101へのロボットアーム105の取り付けを、多数のボルトを用いることなく行えるために、波力測定装置の設置作業に要する手間を軽減できる。
また本実施形態によれば、模型101の運動を許容するジンバル108をさらに備え、ワンタッチ機構107がジンバル108を掴む場合には、復原力を持つローリングやピッチングによる回転運動に対する制御をジンバル108によって行う必要がなくなり、またジンバル108を掴むことでも、ロボットアーム105を模型101に取り付けることができる。
また本実施形態によれば、ロボットアーム105を介して模型101を曳引する模型作動手段104をさらに備え、模型101を模型作動手段104で曳引して作動させることで、模型101を作動させたときの模型101に作用する力を測定でき、また模型101の作動をロボットアーム105によって行うことができる。
【0041】
また本実施形態によれば、模型101を作動/停止させるときに、過大負荷防止機構106でケーシング118を掴むことで、模型101の作動/停止にともなう作用力検出手段102への負荷を無くし、作用力検出手段102の損傷を防止することができる。
また本実施形態によれば、作用力検出手段102で検出される力がゼロとなるようにロボットアーム105を制御することで、模型101の6自由度運動を極力拘束することなく、模型船の運動にロボットアームを追随させることができる。
また本実施形態によれば、模型101に作用する波によるドリフトを復原する力をロボットアーム105に与えて、一定の平均的な位置周りに模型101を維持した状態で、作用力検出手段102で検出される平均荷重を求めて波力を測定したことで、サージング、スウェイング、及びヨーイングのドリフトを防止しつつ、出会波周期の船体運動にロボットアームを追随させ、波から受けるサージ、スウェイ、ヨー方向の定常的(平均値)な力を精密に測定することができる。
【0042】
また本実施形態によれば、模型101の船体運動を検出する船体運動検出手段をさらに備え、模型101に作用する力を検出するときに模型101の船体運動を船体運動検出手段によって検出したことで、船体運動を同時計測することができる。
また本実施形態によれば、船体運動検出手段を、加速度検出手段112とロボットアーム位置検出手段113で構成したことで、加速度検出手段112の検出値を用いて作用力検出手段102などの計測物による慣性力の影響を補正することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、模型船に適用した波力測定装置で説明したが、船以外の浮体、水中航行体、航空機などに対する流体の作用力試験に用いる流体作用力測定装置としても適用できる。
また、本実施形態では、ロボットアーム105の端部が水平を保つように制御し、作用力検出手段102で検出される力がゼロとなるようにロボットアーム105を動作させることで、模型の運動に影響を与えることなく、ロボットアーム105の端部が模型101の運動を追跡、計測する場合を説明したが、ジャイロを備えることで、ロボットアーム105の端部を水平に保つことなく、水平からのずれを計測し、水平からのずれ量を用いて荷重の計測値を補正してもよい。
また、他の実施形態として、復原力の無いサージ方向、スウェイ方向、ヨー方向の運動に対して、定常力と変位に比例する復原力に相当する力を与え、これらの運動が平均的な位置の周りの周期運動となるように制御することもできる。