【実施例1】
【0012】
実施例1のチェーン式無段変速機用プーリを、「チェーン式無段変速機の構成」、「シーブ表面粗さ形状管理構成」、「チェーン式無段変速機用プーリの加工処理工程」、「背景技術」、「管理パラメータの設定作用」、「シーブ表面粗さ形状管理作用」に分けて説明する。
【0013】
[チェーン式無段変速機の構成]
図1は、チェーン式無段変速機の一例を示し、
図2は、金属チェーンの一部斜視図を示し、
図3は、シーブ表面粗さ形状の概略図を示す。以下、
図1〜
図3に基づき、シーブ表面粗さ形状管理の適用対象となるチェーン式無段変速機の構成を説明する。
【0014】
実施例1のチェーン式無段変速機CVTは、
図1(a)に示すように、プライマリプーリ1(入力プーリ)のプーリシーブ面11,12と、セカンダリプーリ2(出力プーリ)のプーリシーブ面21,22に金属チェーン3を掛け渡して変速する。
このチェーン式無段変速機CVTに用いられる固定プーリと可動プーリによるプライマリプーリ1のプーリシーブ面11,12(
図1(b))と、固定プーリと可動プーリによるセカンダリプーリ2のプーリシーブ面21,22(
図1(c))と、が実施例1のシーブ表面粗さ形状管理の適用対象となる。
【0015】
前記金属チェーン3は、
図2に示すように、多数のリンクプレート31と、リンクプレート31を屈曲可能に連結する一対のピン32,32と、を有して構成される。一対のピン32,32は、楕円形状の2つのピンを組み合わせたもので、両端のピン端面32a,32bが、プーリシーブ面11,12,21,22と薄い油膜を介してトルク伝達可能に接触する。なお、
図2において、BLはベルト長さ方向であり、BWはベルト幅方向である。
【0016】
前記プライマリプーリ1のプーリシーブ面11,12と前記セカンダリプーリ2のプーリシーブ面21,22には、
図3に示すように、潤滑油をプーリ周方向に排出する油溝41と、金属チェーン3のピン端面32a,32bに対し薄い油膜を介して接触する凸部42と、が同心環状に交互に形成される。なお、
図3は、実際には極めて複雑なシーブ表面粗さ凹凸形状になるものを概略化して図示したものである。
【0017】
[シーブ表面粗さ形状管理構成]
図4〜
図13は、チェーン式無段変速機CVTのシーブ表面粗さ形状の管理範囲を導く手順を示す各関係特性図である。以下、
図4〜
図13に基づき、シーブ表面粗さ形状管理構成を説明する。
【0018】
チェーン式無段変速機用プーリは、油溝41と凸部42によるシーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして、油溝41からの潤滑油排出による油膜形成防止機能を評価する“油膜形成防止パラメータ”と、ピン端面32a,32bと接触する凸部42による摩耗抑制機能を評価する“摩耗抑制パラメータ”と、の2つのパラメータを用いることを基本概念とする。
そして、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状を、“油膜形成防止パラメータ”による評価値がすべり限界を超えないという条件と、“摩耗抑制パラメータ”による評価値が焼付き限界を下回らないという条件と、が共に成立する範囲に設定したものである。
以下、実施例1で用いた具体的な2つの管理パラメータ(油溝面積パラメータRvk、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDIN)の選定と、選定したパラメータによる成立範囲の設定について説明する。
【0019】
(油溝面積パラメータRvk)
前記“油膜形成防止パラメータ”としては、油溝41の油溝面積を評価する油溝面積パラメータを用い、この油溝面積パラメータを、突出谷部深さRvkとしている。
そして、シーブ表面粗さ形状を、
図4に示すように、“油溝面積パラメータRvk”の値がすべり限界値0.33以上であるという油膜形成防止条件が成立する範囲に設定している。ここで、すべり限界値0.33は、油膜の形成を抑えてトルク伝達機能を満足する摩擦係数μとして設定した基準値により決める。
【0020】
前記「突出谷部深さRvk」は、
図5に示すように、基準長さlrを整数倍(例えば、5倍)した評価長さlnでの平準化粗さ曲線のうちコア部の下にある突出谷部の平均深さをいう。すなわち、
図5は、線形負荷曲線による高さ特性(JIS B0671-2:'02/ISO 13565-2:'96)を示し、
Rk コア部のレベル差 :コア部の上側レベルと下側レベルの差
Rpk 突出山部高さ :コア部の上にある突出山部の平均高さ
Rvk 突出谷部深さ :コア部の下にある突出谷部の平均深さ
Mr1 コア部の負荷長さ率:突出山部とコア部の分離線と負荷曲線の交点の負荷長さ率
Mr2 コア部の負荷長さ率:突出谷部とコア部の分離線と負荷曲線の交点の負荷長さ率
である。なお、摩耗により粗さ曲線が変化すると、これに伴いプラトー曲線(等価直線)が変化する。このため、コア部のレベル差Rkが変化し、突出谷部深さRvkも変化することになる。
【0021】
前記「摩擦係数μの基準値」は、
図6に示すように、横軸にηv/F(η:粘度、v:すべり速度、F:荷重)をとり、縦軸に摩擦係数μをとったとき、ηv/Fが大きくなるにしたがって、境界潤滑領域→混合潤滑領域→流体潤滑領域へと移行する。このとき、トルク伝達機能を満足する摩擦係数μの値、つまり、摩擦係数μが高い境界潤滑領域から摩擦係数μが低下する混合潤滑領域に入った付近の値に設定される。
【0022】
前記「すべり限界値」の意味について説明する。チェーン式無段変速機CVTでは、エンジン等による駆動源からの入力トルクを、入力プーリから金属チェーンを介して出力プーリに伝達する。そのため、入出力プーリへのトルク伝達時、金属チェーン(ピン端面)−プーリ(シーブ面)の間の摩擦係数μの低下が生じると、金属チェーンまたは入力プーリが空回りを起こし、出力トルクの低下を招く機能不良が発生する。そのため、トルク伝達時の摩擦係数μを、伝達トルク機能不良の発生を抑える値として設定された基準値で管理しており、この基準値をすべり限界値としている。なお、実際上の管理においては、例えば、基準値±10%程度の許容範囲を持たせている。
【0023】
(接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDIN)
前記“摩耗抑制パラメータ”としては、凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータを用い、この接触面積パラメータを、粗さ曲線要素平均長さRsmを溝傾斜角Delqにより除算したものを、さらに最大高さ粗さRzDINにより除算した(Rsm/Delq)/RzDINとしている。
そして、“接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDIN”の初期値が、
図7に示すように、0.94未満であると焼き付きが発生するため、シーブ表面粗さ形状の焼付き限界値を0.94としている。ここで、油溝面積パラメータRvkの摩耗による変化量ΔRvkは、
図7に示すように、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの初期値が小さいほど(凸部面積小)大きくなり、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの初期値が大きいほど(凸部面積大)小さくなるという関係にある。
【0024】
前記「粗さ曲線要素平均長さRsm」は、
図8に示すように、基準長さlrにおける粗さ曲線に含まれる1周期分の凹凸が生じている長さを平均したものであり、
Rsm=(1/m)ΣXsi
の式にて計算される。
【0025】
前記「溝傾斜角Delq」は、
図9に示すように、基準長さlrでの粗さ曲線の二乗平均平方根傾斜をいい、
Delq=√(1/lr)∫[dZ(x)/dx]
2dx
の式にて計算される。
【0026】
前記「最大高さ粗さRzDIN」は、
図10に示すように、基準長さlrを整数倍(例えば、5倍)した評価長さlnにおいて、基準長さlr毎の最大高さZiを求めたときの平均値であり、
RzDIN=(1/n)ΣZi
の式にて計算される。なお、最大高さZiの最大値は、Rmax・DINである。
【0027】
前記「焼付き限界値」の意味について説明する。潤滑油量不足により油膜切れ(潤滑油無し)が発生して金属間結合が生じる現象を焼付き(凝着)と総称しており、軸受け等の摺動部品で発生する現象である。チェーン式無段変速機CVTでは、金属チェーン(ピン端面)−プーリ(シーブ面)の間で同様の現象が発生する。この焼付き痕が存在すると、摺動時に障害となり、金属チェーンの損傷を引き起こす機能不良の発生原因となる。そのため、初期摩耗が経過した耐久後に、この焼付き痕を確認し、焼付き痕の発生限界となる値を焼付き限界値としている。
【0028】
(パラメータによる成立範囲の設定)
上記のように、チェーン式無段変速機CVTの部品要求機能を満足するためには、
図11のハッチングに示すように、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状を、油溝面積パラメータRvkの値がすべり限界以上の値(0.33以上の値)であるという条件と、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの値が焼付き限界以上の値(0.94以上の値)であるという条件と、が共に成立する範囲に設定する必要がある。
【0029】
このとき、チェーン式無段変速機CVTの部品要求機能を満足させ、かつ、部品使用時のシーブ表面の摩耗を考慮すると、初期範囲としては、油溝面積パラメータRvkが、すべり限界値0.33≦Rvkという範囲と、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINが、焼付き限界値0.94≦(Rsm/Delq)/RzDINの範囲と、(Rsm/Delq)/RzDIN≧(-Rvk+1.2149)/0.676という両パラメータRvk,(Rsm/Delq)/RzDINの関係範囲と、が共に成立する共通範囲に設定する必要がある(
図12のハッチング領域)。ここで、両パラメータRvk,(Rsm/Delq)/RzDINを用いた(Rsm/Delq)/RzDIN≧(-Rvk+1.2149)/0.676という条件は、
図7の油溝面積パラメータRvkの摩耗による変化量ΔRvkの特性をあらわすy=-0.0676x+0.9199により導き出され、摩耗があっても基準値以上の摩擦係数(0.33≦Rvk)を確保する条件になる。
すなわち、摩耗を考慮した初期範囲は、
図12の矢印に示すように、部品使用により摩耗が進行したとしても部品機能成立範囲内から外れることがないように設定される。なお、シーブ面摩耗は、使用初期に初期摩耗として急速に進行するものの、初期摩耗を経過した耐久後は、摩耗進行が抑えられたままで推移する。
【0030】
次に、耐久後であってもすべり限界以上の表面粗さを確保するために必要な初期硬さについて説明する。
シーブ表面初期硬さは、
図13に示すように、815HV(HV:ビッカース硬さ)以上に設定した。これは、
図12に示すように、耐久後の油溝面積パラメータRvkとして、すべり限界値0.33以上が必要であることによる。そして、シーブ表面初期硬さを確保するため、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2は、金属チェーン3のピン端面32a,32bと接触するプーリシーブ面11,12,21,22に対し、浸炭焼き入れと焼き戻しによる熱処理とショットピーニング処理を施した。
【0031】
[チェーン式無段変速機用プーリの加工処理工程]
図14は、チェーン式無段変速機用プーリの工程ブロック図であり、
図15は、フィルムラッピング加工処理を示す基本説明図であり、
図16は、各工程でのフィルムグリッドサイズ・オシレーション・フィルム移送・主軸回転数を示す工程表図である。以下、
図14〜
図16に基づき、チェーン式無段変速機用プーリの加工処理工程を説明する。なお、以下の加工処理工程の説明において、4つのプーリシーブ面11,12,21,22のうち、プーリシーブ面12を代表例として説明する。
【0032】
チェーン式無段変速機用プーリは、
図14に示すように、熱処理工程4(CQT:carburizing quenching and temperingの略)→仕上げ旋盤加工処理工程5→研削加工処理工程6→マイクロショット加工処理工程7→フィルムラッピング加工処理工程8と進む流れにより製造される。
【0033】
前記熱処理工程4は、浸炭焼き入れ焼き戻しにより、プーリシーブ面12の表面を硬化する表面硬化処理を施す工程である。
【0034】
前記仕上げ旋盤加工処理工程5は、プーリシーブ面12の表面を荒仕上げする旋盤加工処理を施す工程である。
【0035】
前記研削加工処理工程6は、総形砥石によりプーリシーブ面12の表面を仕上げする研削加工処理を施す工程である。
【0036】
前記マイクロショット加工処理工程7は、プーリシーブ面12にマイクロ粒を噴射することで表面硬さを与える処理を施す工程である。ショットは、噴射する砥粒粒径・噴射圧力・噴射時間・噴射距離などで硬度と粗さが変わる。ここでは、表面硬さとして815HV以上の要求される硬さを得るために、通常のショットではなく、粒径が小さいマイクロ粒を噴射する。このマイクロショット加工処理は、粒径が小さい分、面圧が高くて硬度が入りやすいが、一方では、表面粗さがばらついてしまう。
【0037】
前記フィルムラッピング加工処理工程8は、
図15に示すように、砥粒を付着させたラッピングフィルム9の砥粒面9aを、プーリシーブ面12に押し付けるラッピング処理により無数の同心円溝を外観的にレコード溝の如く施工する工程である。このフィルムラッピング加工処理工程8は、
図16に示すように、「第一工程」と「第一工程-2」と「第二工程」と「第三工程」を有する。
【0038】
ここで、「第一工程」は、フィルムグリッドサイズが粗粒度で、オシレーション有り、フィルム移送有り、主軸回転数は定常回転数である。「第一工程-2」は、フィルムグリッドサイズが粗粒度で、オシレーション有り、フィルム移送無し、主軸回転数は定常回転数である。「第二工程」は、フィルムグリッドサイズが粗粒度で、オシレーション無し、フィルム移送有り、主軸回転数は定常回転数である。「第三工程」は、「第一工程」と「第二工程」の砥粒よりも細かいフィルムグリッドサイズが細密粒度で、オシレーション有り、フィルム移送有り、主軸回転数は高速回転数である。
【0039】
なお、「フィルムグリッドサイズ」とは、ラッピングフィルムに付着させた砥粒の大きさをいう。「オシレーション」とは、押し付けたラッピングフィルムをシーブ面の径方向に往復運動させる振動をいう。「フィルム移送」とは、押し付けたラッピングフィルムをローラ回転によりシーブ面の周方向に移送させることをいう。「主軸回転数」とは、加工対象であるプーリをチャック締めにより固定したプーリ回転支持主軸の回転数をいう。以下、各工程とフィルムラッピング加工処理作用について説明する。
【0040】
(第一工程)
前記第一工程は、プーリシーブ面12に表面硬さを施すマイクロショット加工処理工程7(前処理工程)の後、プライマリプーリ1のシーブ表面粗さのバラツキを平準化する工程である。
この第一工程は、グリッドサイズが粗粒度の砥粒を付着させた第1ラッピングフィルム91の砥粒面91aを、プーリシーブ面12に押し付け、第1ラッピングフィルム91をオシレーションしながらフィルム移送させて施工する。
すなわち、第一工程では、フィルムグリッドサイズが粗粒度というようにグリッドサイズを第三工程に比べて大きくしているため、グリッド単位の研削面積が大きくなり、表面の除去量を多くすることができる。そして、オシレーション有りとしているため、プーリシーブ面12の径方向に高速で砥粒が往復運動し、砥粒のシーブ表面への接触が分散され、均一な表面を得ることができる。さらに、フィルム移送有りとしているため、シーブ表面に対し常に新しい研削面を与えることができ、加工抵抗が増加し、研削性がアップし、安定した研削ができる。加えて、主軸回転数が定常回転数というように主軸回転数を第三工程に比べて遅くしているため、動摩擦係数が増加し、加工抵抗が増加することで、表面の除去量を多くすることができる。
【0041】
前記第一工程-2は、第1ラッピングフィルム91をオシレーションしながらフィルム移送させて施工する第一工程の最終段階で、第1ラッピングフィルム91のフィルム移送を停止するスパークアウトを入れる工程である。
すなわち、第一工程-2は、フィルム移送無しとしているため、第1ラッピングフィルム91に砥粒の目詰まりが発生し、加工抵抗の低下となり、研削性が悪化する。しかし、第一工程の最終段階で短時間だけスパークアウトを入れて研削量を下げていくと、バラツキの大きな部分だけを研削し、既にバラツキが小さくなっている部分の研削が抑えられることで、表面粗さのバラツキ低減に効果がある。
【0042】
(第二工程)
前記第二工程は、シーブ表面に形成された溝の深さ度合いを評価する表面粗さパラメータを、所定の目標値となるように施工する工程である。具体的には、シーブ表面粗さのパラメータの一つである油溝面積パラメータRvkが、すべり限界値0.33≦Rvkという範囲になるように施工する。
この第二工程は、第1ラッピングフィルム91のオシレーションを禁止し、第1ラッピングフィルム91の砥粒面を、プーリシーブ面12に押し付け、第1ラッピングフィルム91をフィルム移送させてシーブ面に溝を施工する。
すなわち、第二工程では、フィルムグリッドサイズが粗粒度というようにグリッドサイズを第三工程に比べて大きくしているため、グリッド単位の研削面積が大きくなり、表面に深い凹凸(溝)を作ることができる。そして、オシレーションを禁止しているため、砥粒のシーブ面への接触が固定され、加工抵抗が増加し、シーブ表面に深い凹凸(溝)を作ることができる。さらに、フィルム移送有りとしているため、シーブ表面に対し常に新しい研削面を与えることができ、加工抵抗が増加し、研削性がアップする。加えて、主軸回転数が定常回転数というように主軸回転数を第三工程に比べて遅くしているため、動摩擦係数が増加し、加工抵抗が増加することで、シーブ表面に深い凹凸(溝)を作ることができる。
【0043】
(第三工程)
前記第三工程は、シーブ表面に形成された凹凸による平坦度合いを評価する表面粗さパラメータを、所定の目標値となるように施工する工程である。具体的には、シーブ表面粗さのパラメータの他の一つである接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINが、焼付き限界値0.94≦(Rsm/Delq)/RzDINという範囲となるように施工する。
この第三工程は、第一工程と第二工程の砥粒(グリッドサイズが粗粒度)よりも細かい砥粒(グリッドサイズが細密粒度)を付着させた第2ラッピングフィルム92の砥粒面92aを、プーリシーブ面12に押し付け、第2ラッピングフィルム92をオシレーションしながらフィルム移送させてシーブ表面に平坦面を施工する。
すなわち、第三工程では、フィルムグリッドサイズが細密粒度というようにグリッドサイズを第一工程と第二工程に比べて小さくしているため、グリッド単位の研削面積が小さくなり、表面の除去量を少なくすることができると共に表面粗さを良くすることができる。そして、オシレーション有りとしているため、プーリシーブ面12の径方向に高速で砥粒が往復運動し、砥粒のシーブ表面への接触が分散され、均一な表面を得ることができる。さらに、フィルム移送有りとしているため、シーブ表面に対し常に新しい研削面を与えることができ、加工抵抗が増加し、研削性がアップし、安定した研削ができる。加えて、主軸回転数が高速回転数というように主軸回転数を第一工程や第二工程に比べて主軸回転数を高くしているため、動摩擦係数が低減し、加工抵抗が減少する。よって、細かい砥粒との相乗作用により、微細な加工が可能となり、シーブ表面の凸部先端に、均一で、且つ、平坦な面を作ることができる。
【0044】
(フィルムラッピング加工処理作用)
上記のように、フィルムラッピング加工処理工程8では、第一工程において、前処理工程によるプーリのシーブ表面粗さのバラツキが平準化(安定化)される。次の第二工程において、所望の摩擦係数μを確保するように油溜まりのための溝が形成される。次の第三工程において、耐摩耗性を確保するようにプーリのシーブ表面がならされる。
つまり、フィルムラッピング加工処理工程8を、バラツキ平準化機能を持つ第一工程と、溝加工による摩擦係数管理機能を持つ第二工程と、平坦加工による耐摩耗性管理機能を持つ第三工程と、に分ける構成を採用している。したがって、粗さバラツキを平準化する第一工程により、続いて施工される第二工程と第三工程での表面粗さ管理パラメータが成立範囲内に入る歩留まりが良くなる。そして、第二工程と第三工程により、摩擦係数と耐摩耗性がそれぞれ分けて精度良く管理される。
プーリシーブ面の表面粗さ管理は、大量に生産されるプーリ製品からサンプリングによりピックアップしたプーリ製品のシーブ面表面粗さのプロファイルを測定し、測定値が適正範囲にあれば、工程仕様を変更することなく、フィルムラッピング加工処理を継続する。一方、測定値が適正範囲からずれると、ずれ方向が油溝面積パラメータRvkである場合は第二工程を調整し、ずれ方向が接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINである場合には第三工程を調整し、ずれ方向が両方である場合には、第二工程と第三工程を調整する。この調整代としては、工程所要時間やフィルムグリッドサイズや主軸回転数等により行う。
この結果、プーリシーブ面の表面粗さのプロファイルが、摩擦係数と耐摩耗性を確保するプロファイルとなるように安定的に加工される。
【0045】
[背景技術]
まず、ベルト式無段変速機のベルトとプーリの組合せについて述べる。
ベルト側には、エレメントのプーリ接触面にフランク溝を設け、プーリ側には、潤滑皮膜を形成するための平坦部と油排出させるための溝部を形成している。これにより、トルク伝達性能を担保するための油排出凹部と油膜形成のための凸部を設定している(特許第4323357号公報参照)。
【0046】
一方、チェーン式無段変速機のチェーンとプーリの組合せについて述べる。
チェーン側のピン部は、構造的に排出用溝凹部が無い。プーリ側には、ベルト式無段変速機と同様に潤滑皮膜を形成するための平坦部と油排出させるための溝部を形成している。
【0047】
一般的にチェーン式無段変速機は、船外機用変速機、スクータ用変速機で市場実績がある。一方、車両用の変速機としては、原動機側からの入力トルク、トルク変動など条件が厳しいことなどから、チェーン複列化することでトルク伝達容量を増している。
このように、車両用の変速機として用いられるチェーン式無段変速機において、トルク伝達容量を増すということは、ピンとプーリ間の接触部が高面圧・高温となるということ、そして、トルク変動に応じた安定した動摩擦係数を得るということ、が重要なポイントとなる。
ここで、摩擦係数変動要因としては、接触面相互の粗さと潤滑油の表面皮膜形成による粘度により、トルク伝達膜を形成しつつ微細溝が余剰な潤滑油を適宜排出する作用が円滑に行われないときに生じるということは、従前公開済み先行技術(特許第4323357号公報)により知られている。
【0048】
しかしながら、上記に述べたようにチェーンとベルトの違いからベルト式無段変速機用プーリをチェーン式無段変速機用プーリとして適用できない。なぜなら、ベルト式無段変速機用プーリをチェーン式無段変速機用プーリとして適用すると、潤滑油排出機能に劣ることになる。よって、故障モードとして、余剰油によりシーブ面とピン端面との間の滑りでの発熱により軟化すると、摩耗のためにシーブ面に形成されていた溝が消滅し、焼き付き発生による走行不能に陥るおそれがあることによる。
【0049】
すなわち、チェーン式無段変速機の課題としては、
・金属チェーンのピン端面は、排出溝を設けられない。このため、設けられない排出溝に代替する排出能力をプーリ側に設ける必要がある。
この際、排出能力をプーリ側に設け過ぎると油膜形成を行う平坦部に油を形成しにくくなるので排出能力の上限を考慮しなければならない。
・使用経過によるプーリの摩擦係数の経時変化、表面摩耗による排出能力低下を考慮する必要がある。
・表面摩耗を促進する入力トルク増大を抑制する微細溝と耐摩耗性の硬度を考慮しなければならず、硬度保障する必要がある。
【0050】
上記のように、チェーン式無段変速機へ適用することに伴って新たに生じる課題を解決しつつ、ベルト式無段変速機のエレメントが分担していた潤滑油排出機能をプーリ側に移し、プーリ側のみで潤滑油排出機能と摩耗抑制機能の両方を担うときに要求される厳しいシーブ面粗さ管理技術を提案するものが本願である。
【0051】
[管理パラメータの設定作用]
上記のように、プーリ側で潤滑油排出機能と摩耗抑制機能の両方を担うとき、各機能に対応するシーブ表面粗さ形状の管理パラメータの設定が重要である。以下、これを反映する管理パラメータの設定作用を説明する。
【0052】
前記潤滑油排出機能を担う油膜形成防止パラメータとして、油溝41の油溝面積を評価する油溝面積パラメータRvk(=突出谷部深さ)を用いた。
すなわち、油溝面積は、
図3に示すように、油溝面積が大きくなると油溝断面積Sが大きくなるというように、
油溝面積∝S∝突出谷部面積A2 …(1)
という関係にある。そして、突出谷部面積A2は、
図5から明らかなように、
A2∝Rvk …(2)
という関係にある。
したがって、(1),(2)式により、油溝断面積Sは、
油溝面積∝Rvk …(3)
となる。
以上のように、油溝41の油溝面積を評価する油溝面積パラメータは、(3)式から油溝面積パラメータRvkと設定できる。
【0053】
前記摩耗抑制機能を担う摩耗抑制パラメータとして、粗さ曲線要素平均長さRsmを溝傾斜角Delqにより除算したものを、最大高さ粗さRzDINにより除算し、凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINを用いた。
すなわち、凸部面積は、
図3に示すように、凸部面積が大きくなると凸部長さlが大きくなるというように、
凸部面積∝l …(4)
という関係にある。
(a) 凸部面積大の理想形状は、凸部長さl=溝間長さLの長方形である。つまり、粗さ曲線要素平均長さRsmが一定の場合、
図3に示すように、溝角θ(≒溝傾斜角Delq)が小さいほど凸部長さlが大きくなるというように、
l∝Rsm/Delq …(5)
という関係にある。
(b) Rsm、Delqが同じである形状の場合、
図3に示すように、山高さt(∝RzDIN)が小さいものほど凸部長さlが大きくなるというように、
l∝1/RzDIN …(6)
という関係にある。
したがって、(4),(5),(6)式により、凸部面積は、
凸部面積∝(Rsm/Delq)/RzDIN …(7)
となる。
以上のように、凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータは、(7)式から接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINと設定できる。
【0054】
[シーブ表面粗さ形状管理作用]
プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2のシーブ表面粗さ形状を管理するとき、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に設定する必要がある。以下、これを反映するシーブ表面粗さ形状管理作用を説明する。
【0055】
チェーン式無段変速機CVTの部品要求機能を満足するためには、
図11のハッチングに示すように、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状が、油溝面積パラメータRvkの値がすべり限界以上の値(0.33以上の値)であるという条件と、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの値が焼付き限界以上の値(0.94以上の値)であるという条件と、が共に成立する範囲に設定される。
【0056】
ここで、シーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして用いられる油溝面積パラメータRvkは、油溝41からの潤滑油排出機能が高いほど潤滑油膜が薄く抑えられ、摩擦係数μを確保できるというように、部品要求機能としての油膜形成防止機能の評価尺度になる。
【0057】
一方、シーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして用いられる接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINは、凸部面積が大(平坦)であるほど摩耗が小さく抑えられ、金属間結合による焼付き(凝着)を防止できるというように、部品要求機能としての摩耗抑制機能の評価尺度になる。
【0058】
このように、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2のシーブ表面粗さ形状を管理するとき、部品要求機能に着目した油溝面積パラメータRvkと接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINという2つの管理パラメータを用いることで、管理負担の軽減を図りながら、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に設定することができる。
【0059】
そして、チェーン式無段変速機CVTの部品要求機能を満足させ、かつ、部品使用時のシーブ表面の摩耗を考慮すると、プーリシーブ表面の初期粗さ形状が、
図12のハッチング領域に示すように、すべり限界値0.33≦Rvkという範囲と、焼付き限界値0.94≦(Rsm/Delq)/RzDINの範囲と、(Rsm/Delq)/RzDIN≧(-Rvk+1.2149)/0.676という両パラメータRvk,(Rsm/Delq)/RzDINの関係範囲と、が共に成立する共通範囲に設定される。
この場合、
図6に示すように、初期油膜厚さが境界潤滑領域の狙いの範囲に存在するように管理される。その後、使用により摩耗が進行したとしても、
図6に示すように、部品性能(摩擦係数μの基準値)を確保することが可能な油膜厚さの範囲内に収まるように管理されることになる。
したがって、プーリシーブ表面の初期粗さ形状を、使用により摩耗が進行したとしても、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に設定することができる。
【0060】
次に、シーブ表面初期硬さは、
図13に示すように、815HV(HV:ビッカース硬さ)以上に設定される。このシーブ表面初期硬さを確保するにあたっては、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2は、金属チェーン3のピン端面32a,32bと接触するプーリシーブ面11,12,21,22に対し、浸炭焼き入れと焼き戻しによる熱処理とショットピーニング処理が施される。
したがって、シーブ表面初期硬さとして、耐久後の油溝面積パラメータRvkの条件を満足する初期硬さとしたことで、耐久後であってもすべり限界以上の表面粗さを確保することができる。
【0061】
次に、効果を説明する。
実施例1のチェーン式無段変速機用プーリにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0062】
(1) 入力プーリ(プライマリプーリ1)のプーリシーブ面11,12と出力プーリ(セカンダリプーリ2)のプーリシーブ面21,22に金属チェーン3を掛け渡して変速するチェーン式無段変速機CVTにおいて、
前記入力プーリ(プライマリプーリ1)のプーリシーブ面11,12と前記出力プーリ(セカンダリプーリ2)のプーリシーブ面21,22に、潤滑油をプーリ周方向に排出する油溝41と、前記金属チェーン3のリンクプレート31を連結するピン32,32のピン端面32a,32bと接触する凸部42と、を同心環状に交互に形成し、
前記油溝41と前記凸部42によるシーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして、前記油溝41からの潤滑油排出による油膜形成防止機能を評価する油膜形成防止パラメータと、前記ピン端面32a,32bと接触する前記凸部42の摩耗抑制機能を評価する摩耗抑制パラメータと、を用い、
前記入力プーリ(プライマリプーリ1)と前記出力プーリ(セカンダリプーリ2)の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状を、前記油膜形成防止パラメータによる評価値がすべり限界を超えないという条件と、前記摩耗抑制パラメータによる評価値が焼付き限界を下回らないという条件と、が共に成立する範囲に設定した。
このため、入力プーリ(プライマリプーリ1)と出力プーリ(セカンダリプーリ2)のシーブ表面粗さ形状を管理するとき、管理負担の軽減を図りながら、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に設定することができる。
【0063】
(2) 前記油膜形成防止パラメータとして、前記油溝41の油溝面積を評価する油溝面積パラメータを用い、
前記摩耗抑制パラメータとして、前記凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータを用い、
前記入力プーリ(プライマリプーリ1)と前記出力プーリ(セカンダリプーリ2)の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状を、前記油溝面積パラメータの値がすべり限界以上の値であるという条件と、前記接触面積パラメータの値が焼付き限界以上の値であるという条件と、が共に成立する範囲に設定した。
このため、(1)の効果に加え、油溝41の油溝面積を評価する油溝面積パラメータと、凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータを用いることで、シーブ表面粗さ形状を、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に管理することができる。
【0064】
(3) 基準長さlrを整数倍した評価長さlnでの粗さ曲線のうちコア部の下にある突出谷部の平均深さである突出谷部深さをRvkとし、基準長さlrにおける粗さ曲線に含まれる1周期分の凹凸が生じている長さを平均した粗さ曲線要素平均長さをRsmとし、基準長さlrでの粗さ曲線の二乗平均平方根傾斜による溝傾斜角をDelqとし、基準長さlrを整数倍した評価長さlnにおいて基準長さlr毎の最大高さの平均値を最大高さ粗さRzDINとしたとき、
前記油溝面積パラメータを、前記突出谷部深さRvkとし、
前記接触面積パラメータを、前記粗さ曲線要素平均長さRsmを前記溝傾斜角Delqにより除算したものを、前記最大高さ粗さRzDINにより除算した(Rsm/Delq)/RzDINとし、
前記シーブ表面粗さ形状を、前記油溝面積パラメータRvkの値がすべり限界値0.33以上であるという油膜形成防止条件と、前記接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの値が焼付き限界値0.94以上であるという摩耗抑制条件と、が共に成立する範囲に設定した。
このため、(2)の効果に加え、管理パラメータとして、潤滑油排出機能をあらわす油溝面積パラメータRvkと、摩耗抑制機能をあらわす接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINと、を用いることで、シーブ表面粗さ形状を、2つの部品要求機能を同時に満足する形状に管理することができる。
【0065】
(4) 前記シーブ表面の初期摩耗を考慮した前記シーブ表面初期粗さ形状を、前記溝深さパラメータRvkが、すべり限界値0.33≦Rvkという範囲と、前記接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINが、焼付き限界値0.94≦(Rsm/Delq)/RzDINという範囲と、(Rsm/Delq)/RzDIN≧(-Rvk+1.2149)/0.676という両パラメータRvk,(Rsm/Delq)/RzDINの関係範囲と、が共に成立する共通範囲に設定した。
このため、(3)の効果に加え、シーブ表面初期粗さ形状を、使用によるシーブ表面の摩耗にかかわらず、2つの部品要求機能を同時に満足する形状に管理することができる。
【0066】
(5) 前記入力プーリ(プライマリプーリ1)と前記出力プーリ(セカンダリプーリ2)は、前記金属チェーン3のピン端面32a,32bと接触するプーリシーブ面11,12,21,22に対し浸炭焼き入れと焼き戻しによる熱処理とショットピーニング処理を施すことで、シーブ表面初期硬さを、815HV(HV:ビッカース硬さ)以上に設定した。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、シーブ表面初期硬さの設定によりプーリ使用によるシーブ表面の摩耗促進を抑えることで、耐久後であってもすべり限界以上の表面粗さを確保することができる。
【0067】
(6) 前記入力プーリ(プライマリプーリ1)と前記出力プーリ(セカンダリプーリ2)は、砥粒を付着させたラッピングフィルム9の砥粒面9aを、前記金属チェーン3のピン端面32a,32bと接触するプーリシーブ面11,12,21,22に押し付けるラッピング処理により、前記油溝41と前記凸部42を形成するもので、
前記油溝41は、第1ラッピングフィルム91の砥粒面91aを前記プーリシーブ面11,12,21,22に押し付け、前記第1ラッピングフィルム91をフィルム移送のみさせて施工し、
前記凸部42は、前記第1ラッピングフィルム91の砥粒よりも細かい砥粒を付着させた第2ラッピングフィルム92の砥粒面92aを前記プーリシーブ面11,12,21,22に押し付け、前記第2ラッピングフィルム92をオシレーションしながらフィルム移送させて施工する。
このため、(1)〜(5)の効果に加え、摩擦係数と耐摩耗性を確保する表面粗さのプロファイルへ変貌させる加工を、シーブ表面粗さ形状のパラメータ管理とリンクする異なるフィルムラッピング処理により施工することで、確実かつ安定的に所望のシーブ表面粗さ形状を得ることができる。
【0068】
以上、本発明のチェーン式無段変速機用プーリを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0069】
実施例1では、油膜形成防止パラメータとして、油溝面積パラメータRvkを用いる例を示した。しかし、油膜形成防止パラメータとしては、油溝からの潤滑油排出による油膜形成防止機能を評価するパラメータであれば、油溝面積パラメータRvk以外のパラメータ(例えば、油溝断面積等)を用いる例であっても良い。
【0070】
実施例1では、摩耗抑制パラメータとして、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINを用いる例を示した。しかし、摩耗抑制パラメータとしては、ピン端面と接触する凸部の摩耗抑制機能を評価するパラメータであれば、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDIN以外のパラメータ(例えば、平坦面積率等)を用いる例であっても良い。