特許第5717146号(P5717146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5717146レーザラインビーム改善装置およびレーザ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717146
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】レーザラインビーム改善装置およびレーザ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20150423BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   H01L21/268 J
   H01L21/20
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-234158(P2012-234158)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-86554(P2014-86554A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】次田 純一
(72)【発明者】
【氏名】鄭 石煥
(72)【発明者】
【氏名】町田 政志
【審査官】 豊田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−218741(JP,A)
【文献】 特開2008−252064(JP,A)
【文献】 特開2005−217267(JP,A)
【文献】 特開2000−066133(JP,A)
【文献】 特開平08−327942(JP,A)
【文献】 特開2001−053021(JP,A)
【文献】 特開2009−283691(JP,A)
【文献】 特開2009−289871(JP,A)
【文献】 特開平10−223554(JP,A)
【文献】 特開平11−283933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に照射され、ビーム強度プロファイルにおいて、平坦部と短軸端部および長軸端部に位置するスティープネス部とを有するラインビームの光路上で、前記被処理物に対し相対的に遠い位置に配置され、前記ラインビームの長軸端部の透過を遮蔽する第1の遮蔽部と、前記被処理物に対し相対的に近い位置に配置され、前記第1の遮蔽部で長軸端部の透過が遮蔽された後の前記ラインビームの長軸端部の透過をさらに遮蔽する第2の遮蔽部とを備え
前記第1の遮蔽部が、前記ラインビームの長軸端部のスティープネス部と前記平坦部の長軸側端部の透過を遮蔽し、前記第2の遮蔽部が、前記ラインビームの長軸方向に対し前記第1の遮蔽部の外側で前記スティープネス部の遮蔽を行うものであることを特徴とするレーザラインビーム改善装置。
【請求項2】
前記平坦部は、前記ビーム強度プロファイルにおける最大強度の97%以上の領域であることを特徴とする請求項記載のレーザラインビーム改善装置。
【請求項3】
前記第2の遮蔽部が、前記被処理物に対する相対的な遠近位置が異なり、前段の遮蔽部で前記ラインビームの長軸端部の透過が遮蔽された後の前記ラインビームの長軸端部の透過をさらに遮蔽する複数の遮蔽部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザラインビーム改善装置。
【請求項4】
前記複数の遮蔽部は、後段の遮蔽部が前段の遮蔽部と同じ位置または外側で前記遮蔽を行うものであることを特徴とする請求項に記載のレーザラインビーム改善装置。
【請求項5】
レーザを出力するレーザ光源と、前記レーザのビーム形状を、ビーム強度プロファイルにおいて、平坦部と短軸端部および長軸端部に位置するスティープネス部とを有するラインビームに整形して導く光学系と、被処理物が設置され、前記光学系で導かれたレーザを導入窓を通して導入し、前記被処理物に照射する処理室と、請求項1〜のいずれかに記載のレーザラインビーム改善装置とを備え、
前記ラインビーム改善装置の第1の遮蔽部が、前記処理室外であって前記光学系の最終段の集光レンズと前記導入窓との間に配置され、前記ラインビーム改善装置の第2の遮蔽部が、前記導入窓の内側の前記処理室内に配置されていることを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項6】
被処理物にレーザを照射して前記被処理物の結晶化または活性化処理に用いられることを特徴とする請求項記載のレーザ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラインビームの強度分布を改善するレーザラインビーム改善装置および前記レーザラインビーム改善装置を備えるレーザ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非晶質半導体の結晶化や半導体不純物の活性化などでは、被処理物にレーザを照射してアニールする方法が実用化されている。このレーザアニール処理では、光学系を通してレーザのビーム形状を所定形状に整形し、また、ビーム強度がビーム断面において一様(トップフラット:平坦部)になるようにしており、さらには必要に応じてビームを集光して被処理物に照射している。
【0003】
ビーム形状の一種としてビーム断面視で短軸幅と長軸幅を有するラインビーム形状が知られており、これを走査しつつ被処理物に照射することで、被処理物の広い面積を一括して効率よく処理することが可能になる。ただし、トップフラットにしたラインビーム形状でも、各種の光学部材などを経ることで、短軸方向および長軸方向の縁部にはエネルギー強度が外側に向かって減少する部分(スティープネス部ともいう)を有している。短軸側は、集光などによってビーム幅が小さくなることでスティープネス部自体の幅も小さくなり、かつオーバーラップ照射で短軸方向に走査されるため、スティープネス部照射による影響は軽減される。一方、長軸側では、スティープネス部は大きな幅を有したままで照射され、短軸方向に対し、通常250倍程度の幅を有している。このような長軸側のスティープネス部が照射された被処理物の部分では、平坦部が照射された部分とは異なるエネルギー強度でレーザが照射され、処理状態が異なったものとなる。このため、長軸側のスティープネス部が照射された被処理物の部分は、製品としては使用しないのが通常である。
【0004】
また、スティープネス部に相当する減衰部分を除去または低減するスリットを配置するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
このスリットを透過したラインビームは、スティープネス部が除去または低減されており、このラインビームの照射を受ける被処理物では、スティープネスの照射領域を小さくすることができ、また、品質上許容されれば、スティープネス部の照射領域を含めて製品化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2002−252455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スリットを透過したラインビームは、透過後も回折などによってさらにスティープネス部が生じ、透過後の距離が長くなる程、スティープネス部が拡がって幅は大きくなる。したがって、スリットは被処理物に近いほどスティープネス部の幅を小さくすることができる。
しかし、ラインビームは、通常、短軸側を集光して被処理物に照射しており、被処理物に近い程エネルギー密度が高くなり、被処理物に近い位置にスリットを配置するとスリットにダメージが生じやすくなり、耐久性が著しく低下する。さらには、ダメージを受けたスリットから微細な破片が生じ、被処理物にコンタミネーションとして混入するおそれがある。特にパルスレーザは、連続発振レーザに比べて単位時間当たりのエネルギー密度が高く、上記問題が顕著になる。一方、スリットを被処理物から遠い位置に配置すれば、集光の程度が小さくて短軸幅も相対的に大きいので、エネルギー密度は相対的に小さく、スリットへのダメージを小さくできる。しかし、被処理物から遠い位置にスリットがあると、スリットを透過したラインビームに発生するスティープネス部がその後、大きく拡がってスティープネス部の幅が大きくなり、スティープネス部遮蔽による効果が小さくなってしまう。
【0007】
また、レーザ処理をして半導体基板に複数のパネル領域を確保する場合、パネル間の隙間に上記したスティープネス部が位置するように照射している。パネル間の隙間が小さいほど一枚の半導体基板から切り出せるパネル数を多くできるため、スティープネス部の幅を小さくしてパネル間の隙間を小さくしたいという要望がある。さらに最近では、効率よくトランジスタを形成するため、トランジスタ領域(予定領域も含む)の間隔を小さくした半導体へのラインビーム照射の要望が増している。このラインビーム照射では、スティープネス部の照射領域がトランジスタ領域の間隔内に収まることが必要であり、この場合にもスティープネス部の幅を小さくしたいという要望がある。
しかし、従来のスリットでは、スリットのダメージを抑えつつ、上記各要望に応えることは困難である。
【0008】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、遮蔽部のダメージを小さくし、かつラインビームで発生するスティープネス部を効果的に低減することができるレーザラインビーム改善装置およびレーザ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明のレーザラインビーム改善装置のうち第1の本発明は、被処理物に照射され、ビーム強度プロファイルにおいて、平坦部と短軸端部および長軸端部に位置するスティープネス部とを有するラインビームの光路上で、前記被処理物に対し相対的に遠い位置に配置され、前記ラインビームの長軸端部の透過を遮蔽する第1の遮蔽部と、前記被処理物に対し相対的に近い位置に配置され、前記第1の遮蔽部で長軸端部の透過が遮蔽された後の前記ラインビームの長軸端部の透過をさらに遮蔽する第2の遮蔽部とを備え
前記第1の遮蔽部が、前記ラインビームの長軸端部のスティープネス部と前記平坦部の長軸側端部の透過を遮蔽し、前記第2の遮蔽部が、前記ラインビームの長軸方向に対し前記第1の遮蔽部の外側で前記スティープネス部の遮蔽を行うものであることを特徴とする。
【0011】
の本発明のレーザラインビーム改善装置は、前記第の本発明において、前記平坦部は、前記ビーム強度プロファイルにおける最大強度の97%以上の領域であることを特徴とする。
【0014】
の本発明のレーザラインビーム改善装置は、前記第1または第2の本発明において、前記第2の遮蔽部が、前記被処理物に対する相対的な遠近位置が異なり、前段の遮蔽部で前記ラインビームの長軸端部の透過が遮蔽された後の前記ラインビームの長軸端部の透過をさらに遮蔽する複数の遮蔽部を有することを特徴とする。
【0015】
の本発明のレーザラインビーム改善装置は、前記第の本発明において、前記複数の遮蔽部は、後段の遮蔽部が前段の遮蔽部と同じ位置または外側で前記遮蔽を行うものであることを特徴とする
【0016】
の本発明のレーザ処理装置は、レーザを出力するレーザ光源と、前記レーザのビーム形状を、ビーム強度プロファイルにおいて、平坦部と短軸端部および長軸端部に位置するスティープネス部とを有するラインビームに整形して導く光学系と、被処理物が設置され、前記光学系で導かれたレーザを導入窓を通して導入し、前記被処理物に照射する処理室と、前記第1〜第のいずれかの本発明のレーザラインビーム改善装置とを備え、
前記ラインビーム改善装置の第1の遮蔽部が、前記処理室外であって前記光学系の最終段の集光レンズと前記導入窓との間に配置され、前記ラインビーム改善装置の第2の遮蔽部が、前記導入窓の内側の前記処理室内に配置されていることを特徴とする。
【0017】
の本発明のレーザ処理装置は、前記第の本発明において、被処理物にレーザを照射して前記被処理物の結晶化または活性化処理に用いられることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、短軸側の集光度合いが小さくてエネルギー密度が高くない段階で第1の遮蔽部によりラインビームの長軸端部の透過が遮蔽され、さらに、スティープネス部が低減されたラインビームが第2の遮蔽部により長軸端部の透過が遮蔽され、効果的にスティープネス部が低減される。
第1の遮蔽部では、短軸側の集光が緩やかな段階にあるため第1の遮蔽部に対するダメージを少なくしてスティープネス部の低減を図ることができる。第1の遮蔽部を透過した後に拡がるスティープネス部は、第1の遮蔽部に達した際のスティープネス部よりも拡がりは小さくなっており、これを第2の遮蔽部でラインビームの長軸側端部の透過を遮蔽することで、より拡がりの小さいスティープネス部にすることができる。
第2の遮蔽部で遮蔽するスティープネス部が第2の遮蔽部に照射される断面積は、そのまま第2の遮蔽部に照射される場合よりも小さくなっており、第2の遮蔽部に対するダメージを小さくすることができる。また、第2の遮蔽部における遮蔽はスティープネス部の全部または一部に限ることができ、第2の遮蔽部に対する照射断面積を最小限にすることができる。第2の遮蔽部を透過したラインビームは、被処理物に近い位置で第2の遮蔽部を透過するため、第2の遮蔽部を透過した後で回折などによって生じるスティープネス部は拡がりが小さくなり、スティープネス部の幅が小さいままで被処理部にラインビームが照射される。第2の遮蔽部による遮蔽をスティープネス部の長軸方向外側の一部にすれば、第2の遮蔽部に照射されるスティープネス部の照射エネルギーは一層小さくなり、第2の遮蔽部に対するダメージはより小さくなる。
【0019】
ラインビームは、平坦部と少なくとも長軸側にスティープネス部を有するものであり、平坦部は、ビーム断面の最大エネルギー強度に対し、97%以上の領域からなるものとすることができる。但し、本発明としてはこれに限定されるものではない。平坦部の両端部に平坦部よりもエネルギー強度が低く、外側に向けて次第に強度が小さくなるスティープネス部を有する。
なお、ラインビーム形状とは、短軸に対し、長軸が大きい比率を有するものであり、例えば、その比が10以上のものが挙げられる。長軸側の長さ、短軸側の長さは本発明としては特に限定されるものではないが、例えば、長軸側の長さが370〜1300mm、短軸側の長さが100μm〜500μmのものが挙げられる。
【0020】
第1の遮蔽部と第2の遮蔽部とは、それぞれラインビームの長軸側端部の透過を妨げるものであるが、完全に遮断するものの他、透過率を小さくして透過を低減するものであってもよい。その場合、透過率が50%以下であるものが望ましい。また、第1の遮蔽部と第2の遮蔽部とで、遮蔽の方法、程度を異にするものであってもよい。例えば一方の遮蔽部(例えば第1の遮蔽部)で遮断をし、他方の遮蔽部(例えば第2の遮蔽部)で透過抑制などをするようにしてもよい。
【0021】
第1の遮蔽部は、少なくともラインビームの長軸側両端部のスティープネス部を遮蔽するように配置すればよく、スティープネス部の外側の一部を遮蔽するようにしてもよい。さらには、スティープネス部の全部と平坦部の一部を遮蔽して確実にスティープネス部の低減を図ることができる。第1の遮蔽部では、短軸側の集光度が低いため、平坦部側を遮蔽しても遮蔽部に対するダメージは比較的小さい。
また、第2の遮蔽部は、第1の遮蔽部を透過したラインビームの少なくともスティープネス部を遮蔽するように配置すればよい。この場合、スティープネス部の外側の一部を遮蔽するものであってもよい。好適には、第1の遮蔽部を透過した後、形成されるスティープネス部を遮蔽すれば良く、第1の遮蔽部の遮蔽位置と第2の遮蔽部の遮蔽位置とをラインビームの長軸方向(例えば長軸方向中心基準)で同じ位置または第2の遮蔽部の遮蔽位置を第1の遮蔽部の遮蔽位置よりも外側にすることができる。
【0022】
第1の遮蔽部と第2の遮蔽部の光路上の遠近方向の配置位置は、第1の遮蔽部が被処理物に対し相対的に遠く、第2の遮蔽部が被処理物に対し相対的に近ければよく、相対的な遠近関係は、被処理物を基準とする第1の遮蔽部と第2の遮蔽部間の関係である。本発明としては、この相対的な関係を有していれば、両遮蔽部の配置位置が特に限定されるものではないが、処理室のレーザ光導入窓を基準として、第1の遮蔽部を導入窓の外側に置き、第2の遮蔽部を導入窓の内側に置くものが例示される。第1の遮蔽部を導入窓の外側におけば、その領域で適宜位置に配置することができ、第2の遮蔽部を導入窓の内側におけば、被処理物に対応するなどしてその領域で適宜位置に配置することができる。
なお、第2の遮蔽部は、相対的な遠近位置を異にして複数の遮蔽部からなるものであってもよい。その場合、前段の遮蔽部でラインビームのスティープネス部を遮蔽し、透過したラインビームで生じるスティープネス部を後段の遮蔽部で遮断することができる。
この場合、後段の遮蔽部が前段の遮蔽部と同じ位置または外側で前記遮蔽を行うものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上、説明したように、本発明によれば、ラインビームで発生するスティープネス部を効果的に低減することができ、これを用いた処理を良好に行うことができる。さらには、ラインビームの短軸方向を集光するものでは遮蔽部のダメージを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態のレーザラインビーム改善装置およびレーザ処理装置を示す概略図である。
図2】同じく、遮蔽部および遮蔽部を透過するラインビームを示す平面図である。
図3】同じく、遮蔽部を透過するラインビームの正面視の図である。
図4】本発明の他の実施形態における遮蔽部を透過するラインビームの正面視の図である。
図5】従来のスリットを透過するラインビームの正面視の図である。
図6】ラインビームの長軸ビームプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の一実施形態のレーザラインビーム改善装置およびレーザラインビーム改善装置を備えるレーザ処理装置を添付図面に基づいて説明する。
図1は、レーザ処理装置に相当するレーザアニール処理装置1を示すものである。レーザアニール処理装置1は、処理室2を備えており、処理室2内にX−Y方向に移動可能な走査装置3を備え、その上部に基台4を備えている。基台4上には、ステージとして基板配置台5が設けられている。走査装置3は、図示しないモータなどによって駆動される。
また、処理室2には、外部からパルスレーザを導入する導入窓6が設けられている。
【0026】
アニール処理時には、該基板配置台5上に半導体膜として、非晶質のシリコン膜100などが設置される。シリコン膜100は、図示しない基板上に、例えば40〜100nm厚(具体的には例えば50nm厚)で形成されている。該形成は常法により行うことができ、本発明としては半導体膜の形成方法が特に限定されるものではない。
なお、本実施形態では、非晶質膜をレーザ処理により結晶化するレーザ処理に関するものとして説明するが、本発明としてはレーザ処理の内容がこれに限定されるものではなく、例えば、非単結晶の半導体膜を単結晶化したり、結晶半導体膜の改質を行うものであってよい。また、その他の処理に関わるものであってもよく、被処理物が特定のものに限定されるものではない。
【0027】
処理室2の外部には、パルスレーザ光源10が設置されている。該パルスレーザ光源10は、エキシマレーザ発振器(商品名:LSX315C)で構成されており、波長308nm、繰り返し発振周波数300Hzのパルスレーザを出力可能になっており、該パルスレーザ光源10では、フィードバック制御によってパルスレーザの出力を所定範囲内に維持するように制御することができる。なお、パルスレーザ光源の種別が上記に限定されるものではない。
【0028】
該パルスレーザ光源10においてパルス発振されて出力されるパルスレーザ15は、必要に応じてアテニュエータ11でエネルギー密度が調整され、ホモジナイザー12a、反射ミラー12b、集光レンズ12cなどの光学部材によって構成される光学系12でラインビーム形状への整形や偏向などがなされ、処理室2に設けた導入窓6を通して処理室2内の非晶質のシリコン膜100に照射される。なお、光学系12を構成する光学部材は上記に限定されるものではなく、各種レンズ、ミラー、導波部などを備えることができる。
【0029】
また、集光レンズ12cと導入窓6との間には、第1の遮蔽部に相当する第1遮蔽板20が配置されており、処理室2内には第2の遮蔽部に相当する第2遮蔽板21が配置されている。図2に示すように、第1遮蔽板20は、対となる2つの遮蔽板が先端を向かい合わせにして、その間に第1透過間隙20aが確保されるように配置される。該第1透過間隙20aは、パルスレーザ150の長軸方向端部を遮蔽可能な長さの間隙を有している。また、第2遮蔽板21も同様に、第2遮蔽板21は、対となる2つの遮蔽板が先端を向かい合わせにして、その間に第2透過間隙21aが確保されるように配置される。該第2透過間隙21aは、第2遮蔽板21を透過したパルスレーザ150の長軸方向端部を遮蔽可能な長さの間隙を有している。上記第1遮蔽板20、第2遮蔽板21は、本発明のレーザラインビーム改善器装置を構成する。
なお、第1遮蔽板20、第2遮蔽板21では、対となる2つの遮蔽板を互いの間隙量を調整するように自動または手動で移動させることができる。
【0030】
次に、上記レーザアニール処理装置1の動作について説明する。
パルスレーザ光源10においてパルス発振されて出力されるパルスレーザ15は、例えばパルス半値幅が200ns以下のものとされる。ただし、本発明としてはこれらに限定されるものではない。
パルスレーザ15は、アテニュエータ11でパルスエネルギー密度が調整される。アテニュエータ11は所定の減衰率に設定されており、半導体膜への照射面上で所定の照射パルスエネルギー密度が得られるように、減衰率が調整される。例えば非晶質のシリコン膜100を結晶化するなどの場合、その照射面上において、エネルギー密度が100〜500mJ/cmとなるように調整することができる。
【0031】
アテニュエータ11を透過したパルスレーザ15は、光学系12でラインビーム形状に整形され、さらに光学系12のシリンドリカルレンズなどの集光レンズ12cを経て短軸幅を集光して、処理室2に設けた導入窓6に導入される。光学系12から出射されるラインビーム150の長軸方向でのビーム強度プロファイルを図6に示す。図6のプロファイルは簡略化して図示している。
ラインビーム150は、最大エネルギー強度に対し97%以上となる平坦部151と、長軸方向の両端部に位置し、前記平坦部151よりも小さいエネルギー強度を有し、外側に向けて次第にエネルギー強度が低下するスティープネス部152とを有している。スティープネス部の長軸方向幅152aは特に限定されるものではないが、最大強度の10%に至るまでの幅として、通常、1mm〜25mm程度の幅を有している。なお、平坦部を最大エネルギー強度に対し何%にするかは適宜決定することができる。
【0032】
第1遮蔽板20の第1透過間隙20aは、図2図3に示すように、ラインビーム150に対し、両端のスティープネス部152と平坦部151内に一部伸長した位置まで遮蔽するように配置されている。
スティープネス部152を低減したラインビーム150は、図2に示すように、第1遮蔽板20の第1透過間隙20aを通過することで、回折などによって長軸方向両端部にスティープネス部153が形成される。但し、スティープネス部153は、スティープネス部152を遮蔽して形成されるものであるため、スティープネス部152に比べて拡がり幅は相当に小さくなっている。
【0033】
スティープネス部153を有するラインビーム150は、導入窓6を透過して処理室2内に導入される。
ラインビーム150はさらに進行し、図2図3に示すように、第2遮蔽板21に至る。第2遮蔽板21では、第2透過間隙21aの長軸方向幅が第1透過間隙20aの長軸方向幅よりも長くなっており、第2透過間隙21aの長軸方向端にラインビーム150のスティープネス部153が位置する。このため、第2遮蔽板21では、長軸方向内側のスティープネス部153の一部を除いて残部のスティープネス部153が遮蔽される。第2透過間隙21aを通過したラインビーム150では、図2(c)、図3に示すように、回折などによってスティープネス部154が形成されるものの、スティープネス部153に比べて拡がり幅はさらに小さくなっており、スティープネス部が低減される。
なお、第2遮蔽板21でスティープネス部153をどの程度内側まで遮蔽するかは適宜設定することができる。この場合、第2遮蔽板21のダメージと低減したいスティープネス部153の拡がり幅とを勘案して遮蔽量を設定することができる。この例では、平坦部151の幅に合わせて第2透過間隙21aの長軸方向幅を設定している。
【0034】
また、第2遮蔽板21は、比較的シリコン膜100に近い位置に配置されており、第2遮蔽板21を透過したラインビーム150は、スティープネス部153が大きく拡がることなくシリコン膜100に照射される。
このラインビーム150を、走査装置3でシリコン膜100を移動させることで相対的に走査しつつ照射するアニール処理では、スティープネス部154が照射される領域の幅は相対的に小さくなり、無駄になる領域を小さくすることができる。また、トランジスタの配置間隔を小さくして処理をしたいという要望に対しても、該間隔にスティープネス部154を位置させてトランジスタの領域を平坦部151で良好に結晶化することが可能になる。
なお、本発明としては上記走査の速度が特定のものに限定されるものではないが、例えば1〜100mm/秒の範囲で選択することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、第1の遮蔽部に相当する第1遮蔽板20と第2の遮蔽部に相当する第2遮蔽板21とを有するものについて説明したが、第2の遮蔽部に相当する遮蔽板をラインビームの光路に沿って複数設け、各遮蔽板でスティープネス部の遮蔽を行うようにしても良い。図4は、第2の遮蔽部として第2遮蔽板21と第3遮蔽板22とを有する例を示すものであり、本発明としてはその数は特に限定されない。第3遮蔽板22は、他の遮蔽板と同様に、対となる2つの遮蔽板が先端を向かい合わせにてその間に間隙を有して配置され、その間に第3透過間隙22aが確保されている。なお、第3遮蔽板22でも、対となる2つの遮蔽板を互いの間隙量を調整するように自動または手動で移動させることができる。
ラインビーム150が第3遮蔽板22の第3透過間隙22aを透過することで、さらにスティープネス部を低減することができる。
なお、第2遮蔽板21の後段に位置する第3遮蔽板22では、遮蔽位置内側端を長軸方向において第2遮蔽板と同じ位置か外側にすることができる。
【0036】
一方、図5は、従来のスリット部25でラインビーム150を遮蔽した場合の例である。スリット部25に対するダメージが小さいように、比較的シリコン膜100から離れて配置すると、スリット部25でスティープネス部152を遮蔽した後、回折により形成されるスティープネス部153が次第に拡がってスティープネス部幅が大きくなり、スリット部による遮蔽効果が小さくなってしまい、十分なレーザラインビーム改善効果が得られない。
【0037】
なお、上記実施形態では、遮蔽部として遮蔽板を有するものとして説明したが、遮蔽部をスリットを有するスリット部により構成することもできる。
【0038】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 レーザアニール処理装置
2 処理室
3 走査装置
5 基板配置台
6 導入窓
10 パルスレーザ光源
11 アテニュエータ
12 光学系
12c 集光レンズ
20 第1遮蔽板
20a 第1透過間隙
21 第2遮蔽板
21a 第2透過間隙
22 第3遮蔽板
22a 第3透過間隙
100 シリコン膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6