【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スリットを透過したラインビームは、透過後も回折などによってさらにスティープネス部が生じ、透過後の距離が長くなる程、スティープネス部が拡がって幅は大きくなる。したがって、スリットは被処理物に近いほどスティープネス部の幅を小さくすることができる。
しかし、ラインビームは、通常、短軸側を集光して被処理物に照射しており、被処理物に近い程エネルギー密度が高くなり、被処理物に近い位置にスリットを配置するとスリットにダメージが生じやすくなり、耐久性が著しく低下する。さらには、ダメージを受けたスリットから微細な破片が生じ、被処理物にコンタミネーションとして混入するおそれがある。特にパルスレーザは、連続発振レーザに比べて単位時間当たりのエネルギー密度が高く、上記問題が顕著になる。一方、スリットを被処理物から遠い位置に配置すれば、集光の程度が小さくて短軸幅も相対的に大きいので、エネルギー密度は相対的に小さく、スリットへのダメージを小さくできる。しかし、被処理物から遠い位置にスリットがあると、スリットを透過したラインビームに発生するスティープネス部がその後、大きく拡がってスティープネス部の幅が大きくなり、スティープネス部遮蔽による効果が小さくなってしまう。
【0007】
また、レーザ処理をして半導体基板に複数のパネル領域を確保する場合、パネル間の隙間に上記したスティープネス部が位置するように照射している。パネル間の隙間が小さいほど一枚の半導体基板から切り出せるパネル数を多くできるため、スティープネス部の幅を小さくしてパネル間の隙間を小さくしたいという要望がある。さらに最近では、効率よくトランジスタを形成するため、トランジスタ領域(予定領域も含む)の間隔を小さくした半導体へのラインビーム照射の要望が増している。このラインビーム照射では、スティープネス部の照射領域がトランジスタ領域の間隔内に収まることが必要であり、この場合にもスティープネス部の幅を小さくしたいという要望がある。
しかし、従来のスリットでは、スリットのダメージを抑えつつ、上記各要望に応えることは困難である。
【0008】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、遮蔽部のダメージを小さくし、かつラインビームで発生するスティープネス部を効果的に低減することができるレーザラインビーム改善装置およびレーザ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明のレーザラインビーム改善装置のうち第1の本発明は、被処理物に照射され
、ビーム強度プロファイルにおいて、平坦部と短軸端部および長軸端部に位置するスティープネス部とを有するラインビームの光路上で、前記被処理物に対し相対的に遠い位置に配置され、前記ラインビームの長軸端部の透過を遮蔽する第1の遮蔽部と、前記被処理物に対し相対的に近い位置に配置され、前記第1の遮蔽部で長軸端部の透過が遮蔽された後の前記ラインビームの長軸端部の透過をさらに遮蔽する第2の遮蔽部とを備え
、
前記第1の遮蔽部が、前記ラインビームの長軸端部のスティープネス部と前記平坦部の長軸側端部の透過を遮蔽し、前記第2の遮蔽部が、前記ラインビームの長軸方向に対し前記第1の遮蔽部の外側で前記スティープネス部の遮蔽を行うものであることを特徴とする。
【0011】
第
2の本発明のレーザラインビーム改善装置は、前記第
1の本発明において、前記平坦部は、前記ビーム強度プロファイルにおける最大強度の97%以上の領域であることを特徴とする。
【0014】
第
3の本発明のレーザラインビーム改善装置は、前記第1
または第2の本発明において、前記第2の遮蔽部が、前記被処理物に対する相対的な遠近位置が異なり、前段の遮蔽部で前記ラインビームの長軸端部の透過が遮蔽された後の前記ラインビームの長軸端部の透過をさらに遮蔽する複数の遮蔽部を有することを特徴とする。
【0015】
第
4の本発明のレーザラインビーム改善装置は、前記第
3の本発明において、前記複数の遮蔽部は、後段の遮蔽部が前段の遮蔽部と同じ位置または外側で前記遮蔽を行うものであることを特徴とする
【0016】
第
5の本発明のレーザ処理装置は、レーザを出力するレーザ光源と、前記レーザのビーム形状を
、ビーム強度プロファイルにおいて、平坦部と短軸端部および長軸端部に位置するスティープネス部とを有するラインビームに整形して導く光学系と、被処理物が設置され、前記光学系で導かれたレーザを導入窓を通して導入し、前記被処理物に照射する処理室と、前記第1〜第
4のいずれかの本発明のレーザラインビーム改善装置とを備え、
前記ラインビーム改善装置の第1の遮蔽部が、前記処理室外であって前記光学系の最終段の集光レンズと前記導入窓との間に配置され、前記ラインビーム改善装置の第2の遮蔽部が、前記導入窓の内側の前記処理室内に配置されていることを特徴とする。
【0017】
第
6の本発明のレーザ処理装置は、前記第
5の本発明において、被処理物にレーザを照射して前記被処理物の結晶化または活性化処理に用いられることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、短軸側の集光度合いが小さくてエネルギー密度が高くない段階で第1の遮蔽部によりラインビームの長軸端部の透過が遮蔽され、さらに、スティープネス部が低減されたラインビームが第2の遮蔽部により長軸端部の透過が遮蔽され、効果的にスティープネス部が低減される。
第1の遮蔽部では、短軸側の集光が緩やかな段階にあるため第1の遮蔽部に対するダメージを少なくしてスティープネス部の低減を図ることができる。第1の遮蔽部を透過した後に拡がるスティープネス部は、第1の遮蔽部に達した際のスティープネス部よりも拡がりは小さくなっており、これを第2の遮蔽部でラインビームの長軸側端部の透過を遮蔽することで、より拡がりの小さいスティープネス部にすることができる。
第2の遮蔽部で遮蔽するスティープネス部が第2の遮蔽部に照射される断面積は、そのまま第2の遮蔽部に照射される場合よりも小さくなっており、第2の遮蔽部に対するダメージを小さくすることができる。また、第2の遮蔽部における遮蔽はスティープネス部の全部または一部に限ることができ、第2の遮蔽部に対する照射断面積を最小限にすることができる。第2の遮蔽部を透過したラインビームは、被処理物に近い位置で第2の遮蔽部を透過するため、第2の遮蔽部を透過した後で回折などによって生じるスティープネス部は拡がりが小さくなり、スティープネス部の幅が小さいままで被処理部にラインビームが照射される。第2の遮蔽部による遮蔽をスティープネス部の長軸方向外側の一部にすれば、第2の遮蔽部に照射されるスティープネス部の照射エネルギーは一層小さくなり、第2の遮蔽部に対するダメージはより小さくなる。
【0019】
ラインビームは、平坦部と少なくとも長軸側にスティープネス部を有するものであり、平坦部は、ビーム断面の最大エネルギー強度に対し、97%以上の領域からなるものとすることができる。但し、本発明としてはこれに限定されるものではない。平坦部の両端部に平坦部よりもエネルギー強度が低く、外側に向けて次第に強度が小さくなるスティープネス部を有する。
なお、ラインビーム形状とは、短軸に対し、長軸が大きい比率を有するものであり、例えば、その比が10以上のものが挙げられる。長軸側の長さ、短軸側の長さは本発明としては特に限定されるものではないが、例えば、長軸側の長さが370〜1300mm、短軸側の長さが100μm〜500μmのものが挙げられる。
【0020】
第1の遮蔽部と第2の遮蔽部とは、それぞれラインビームの長軸側端部の透過を妨げるものであるが、完全に遮断するものの他、透過率を小さくして透過を低減するものであってもよい。その場合、透過率が50%以下であるものが望ましい。また、第1の遮蔽部と第2の遮蔽部とで、遮蔽の方法、程度を異にするものであってもよい。例えば一方の遮蔽部(例えば第1の遮蔽部)で遮断をし、他方の遮蔽部(例えば第2の遮蔽部)で透過抑制などをするようにしてもよい。
【0021】
第1の遮蔽部は、少なくともラインビームの長軸側両端部のスティープネス部を遮蔽するように配置すればよく、スティープネス部の外側の一部を遮蔽するようにしてもよい。さらには、スティープネス部の全部と平坦部の一部を遮蔽して確実にスティープネス部の低減を図ることができる。第1の遮蔽部では、短軸側の集光度が低いため、平坦部側を遮蔽しても遮蔽部に対するダメージは比較的小さい。
また、第2の遮蔽部は、第1の遮蔽部を透過したラインビームの少なくともスティープネス部を遮蔽するように配置すればよい。この場合、スティープネス部の外側の一部を遮蔽するものであってもよい。好適には、第1の遮蔽部を透過した後、形成されるスティープネス部を遮蔽すれば良く、第1の遮蔽部の遮蔽位置と第2の遮蔽部の遮蔽位置とをラインビームの長軸方向(例えば長軸方向中心基準)で同じ位置または第2の遮蔽部の遮蔽位置を第1の遮蔽部の遮蔽位置よりも外側にすることができる。
【0022】
第1の遮蔽部と第2の遮蔽部の光路上の遠近方向の配置位置は、第1の遮蔽部が被処理物に対し相対的に遠く、第2の遮蔽部が被処理物に対し相対的に近ければよく、相対的な遠近関係は、被処理物を基準とする第1の遮蔽部と第2の遮蔽部間の関係である。本発明としては、この相対的な関係を有していれば、両遮蔽部の配置位置が特に限定されるものではないが、処理室のレーザ光導入窓を基準として、第1の遮蔽部を導入窓の外側に置き、第2の遮蔽部を導入窓の内側に置くものが例示される。第1の遮蔽部を導入窓の外側におけば、その領域で適宜位置に配置することができ、第2の遮蔽部を導入窓の内側におけば、被処理物に対応するなどしてその領域で適宜位置に配置することができる。
なお、第2の遮蔽部は、相対的な遠近位置を異にして複数の遮蔽部からなるものであってもよい。その場合、前段の遮蔽部でラインビームのスティープネス部を遮蔽し、透過したラインビームで生じるスティープネス部を後段の遮蔽部で遮断することができる。
この場合、後段の遮蔽部が前段の遮蔽部と同じ位置または外側で前記遮蔽を行うものとすることができる。