(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性カーボンブラックがケッチェンブラックであり、その配合量が、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)との混合樹脂100重量部に対して5〜15重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子について詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂芯層(以下、単に「樹脂粒子芯層」ともいう。)と、該芯層を被覆する、導電性カーボンブラックを含むポリオレフィン系樹脂被覆層(以下、単に「樹脂粒子被覆層」ともいう。)とを有する複合樹脂粒子を特定の見掛け密度範囲に発泡させてなる発泡粒子であり、発泡状態のポリプロピレン系樹脂発泡芯層(以下、単に「発泡芯層」ともいう。)が、ポリオレフィン系樹脂被覆層(以下、単に「発泡粒子被覆層」ともいう。)で被覆されている複合構造を有するものである。
【0018】
さらに、本発明においては、該発泡粒子のポリオレフィン系樹脂被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)との混合樹脂であり、該ポリオレフィン系樹脂被覆層において、ポリプロピレン系樹脂(A)が連続相を形成し、ポリエチレン系樹脂(B)が分散相を形成していると共に、導電性カーボンブラックが分散相側に偏在している。更に、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)との重量比(A:B)が、特定範囲内に定められ、導電性カーボンブラックの配合量が特定範囲内に定められている。
【0019】
前記の通り、樹脂粒子芯層が発泡粒子芯層となり、樹脂粒子被覆層が発泡粒子被覆層となるので、発泡粒子被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂は、前記樹脂粒子被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂と同一であり、発泡粒子芯層を構成するポリプロピレン系樹脂は、前記樹脂粒子芯層を構成するポリプロピレン系樹脂と同一である。
【0020】
次に、本発明の発泡粒子を構成する発泡粒子被覆層について説明する。
該発泡粒子被覆層は、発泡状態であっても、無発泡状態であってもよいが、得られる発泡粒子成形体が安定的に静電気拡散性を発現し、機械的強度に優れたものとするためには、実質的に無発泡状態の樹脂層であることが好ましい。なお、ここでいう実質的に無発泡とは、気泡が全く存在しないもの(樹脂粒子を発泡させる際に一旦形成された気泡が溶融破壊されて気泡が消滅したものも包含する。)のみならず、得られる発泡粒子成形体の機械的強度に影響しない範囲で、極く微小な気泡が僅かに存在するものも包含される。
【0021】
また、本発明の発泡粒子においては、発泡粒子芯層が発泡粒子被覆層で完全に覆われていても、一部の発泡粒子芯層が露出していても構わない。発泡粒子芯層が露出した構造とは、例えば、円柱状の発泡粒子芯層の側面のみが発泡粒子被覆層で覆われており、円柱の上面や底面に発泡粒子芯層が露出している構造などが挙げられる。
【0022】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)とは、樹脂中のプロピレン成分単位が50重量%以上の樹脂をいい、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテンなどの炭素数4以上のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。また、これらのポリプロピレン系樹脂(A)は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
本発明におけるポリエチレン系樹脂(B)とは、樹脂中のエチレン成分単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは90重量%以上である樹脂をいい、エチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数4〜6のα−オレフィンとの共重合体が好ましく用いられる。該ポリエチレン系樹脂(B)としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、さらにこれらの2種以上の混合樹脂が挙げられる。
【0024】
本発明における導電性カーボンブラックとは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150〜700ml/100gのもの、より好ましくは200〜600ml/100g、さらに好ましくは300〜600ml/100g以上のものをいい、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどを挙げることができる。上記DBP吸油量は、ASTM D2414−79に準じて測定される値である。これらの導電性カーボンブラックは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも低添加量で高い導電性を示すことからファーネスブラックが好ましく、より好ましくはオイルファーネスブラックであり、さらに好ましくはケッチェンブラックである。
【0025】
一般に、ポリプロピレン系樹脂などの熱可塑性樹脂中に導電性カーボンブラックを分散させた場合、隣接するカーボンブラック同士が一定の距離以下で近接して存在することによって、カーボンブラックによる導電性ネットワーク構造が形成され、導電性が発現する。
【0026】
発泡粒子などの発泡体の場合には発泡時に樹脂が延伸されるため、導電性カーボンブラックを含む樹脂を発泡させると、発泡前よりも導電性カーボンブラック間の距離が広がっていく。従来の導電性カーボンブラックを含む導電性のポリプロピレン系樹脂発泡粒子においては、導電性カーボンブラックが十分量添加されている場合には、発泡延伸後もポリプロピレン系樹脂中に分散した導電性カーボンブラックが近距離に多数存在するため、その導電性ネットワーク構造が維持され、その発泡粒子成形体は表面抵抗率が1×10
4Ωよりも低い導電性を発現する。
【0027】
一方、静電気拡散性を示す中抵抗領域を狙って、導電性カーボンブラックの添加量を減量すると、導電性カーボンブラック同士の距離が広がり、上記一定の距離内に存在するカーボンブラックの数が少なくなり、発泡前の状態であっても、導電性ネットワークが形成されにくくなり、導電性カーボンブラック添加量の減量と共に、表面抵抗率が大きく上昇してしま
い、所謂パーコレーション現象が生じ
なくなる。
【0028】
さらに、発泡粒子成形体においては、発泡時や型内成形時における樹脂の延伸により導電性カーボンブラック同士の距離がさらに広がってしまうため、導電性ネットワーク構造を維持することがさらに難しくなり、その結果、表面抵抗率の変化がさらに大きくなってしまい、静電気拡散性を達成することが難しくなる。
【0029】
本発明の発泡粒子は、前記複合樹脂粒子を特定見掛け密度の範囲に発泡させたものであり、該複合樹脂粒子は、樹脂粒子芯層と樹脂粒子被覆層とを有するものである。該樹脂粒子芯層においては、ポリプロピレン系樹脂(A)の連続相とポリエチレン系樹脂(B)の分散相とからなる海島構造が形成され、更に該分散相側に導電性カーボンブラックが偏在している。かかる複合樹脂粒子を発泡させることにより得られた発泡粒子は、その発泡粒子被覆層中に、ポリプロピレン系樹脂(A)連続相とポリエチレン系樹脂(B)分散相とからなる海島構造が形成され、更に該分散相側に導電性カーボンブラックが偏在していることから、該発泡粒子を型内成形することにより、静電気拡散性を示す発泡粒子成形体を安定して得ることができる。
【0030】
樹脂粒子被覆層中の前記海島構造は、次のようにすれば形成することができる。
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び導電性カーボンブラックを混練すると、ポリプロピレン系樹脂よりもガラス転移温度の低いポリエチレン系樹脂側に導電性カーボンブラックが偏在化することが知られている。したがって、ポリプロピレン系樹脂中にポリエチレン系樹脂が分散する条件で、すなわちポリプロピレン系樹脂が海相をなし、ポリエチレン系樹脂が島相をなすような条件で三者を混練することにより、ポリプロピレン系樹脂連続相中に分散したポリエチレン系樹脂分散相側に導電性カーボンブラックを偏在させることができる。
【0031】
前記海島構造が形成されると、次のようにして静電気拡散性が発現すると考えられる。
発泡粒子の被覆層においては、ポリプロピレン系樹脂(A)の連続相中に分散したポリエチレン系樹脂(B)分散相側に導電性カーボンブラックが含まれ、分散相中で導電性カーボンブラックが導電性ネットワーク構造を形成する。このとき、導電性カーボンブラックがポリエチレン系樹脂(B)に拘束されているので、発泡時に被覆層が延伸される際に、導電性カーボンブラックの移動が制限されて導電性カーボンブラック粒子間の距離が大きく広がらないため、分散相中で導電性カーボンブラックの導電性ネットワーク構造が維持され、分散相の体積抵抗率は導電性を示すような低い値となると推察される。
【0032】
さらに、本発明におけるポリエチレン系樹脂(B)は、ポリプロピレン系樹脂と適度な親和性を有するが、完全な相溶性は示さないため、ポリエチレン系樹脂(B)がポリプロピレン系樹脂(A)連続相中に過度に細かく分散せず、さらに、発泡時のポリプロピレン系樹脂(A)連続相の変形に対しポリエチレン系樹脂(B)分散相が過度に変形することなく追従するために、分散相自体は導電性を示しつつ、静電気拡散性を発現するために必要な分散相間の距離を維持することができると考えられる。
【0033】
なお、本発明の発泡粒子は複合構造を有し、前記海島構造は発泡粒子被覆層の中だけに形成されているために、発泡粒子芯層の見掛け密度(発泡倍率)に大きく依存せずに、すなわち発泡倍率を変化させても静電気拡散性を安定して発現することができる。
【0034】
本発明におけるポリエチレン系樹脂(B)としては、エチレンの単独重合体、或いはエチレン炭素数が4〜6のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。このようなポリエチレン系樹脂(B)はポリプロピレン系樹脂(A)との上記親和性が特に適切なものとなり、静電気拡散性をより安定的に発現することができる。
【0035】
前記ポリエチレン系樹脂(B)の中でも、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが好ましく、より好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンである。
直鎖状低密度ポリエチレン(PE−LLD)は、一般に、エチレンと、ブテン、ヘキセンなどのα−オレフィンとの共重合体であり、その密度は通常0.88g/cm
3以上0.94g/cm
3未満であり、好ましくは0.91g/cm
3以上0.94g/cm
3未満である。一方、高密度ポリエチレン(PE−HD)は、一般に、エチレンの単独重合体、又はエチレンとブテンとの共重合体であり、その密度は通常0.94g/cm
3以上であり、好ましくは0.94〜0.97g/cm
3である。
【0036】
本発明において、前記ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)との配合割合は、重量比で99.5:0.5〜50:50である。ポリエチレン系樹脂(B)の配合割合が少なすぎると、ポリエチレン系樹脂(B)分散相中に偏在しない導電性カーボンブラックが多数存在することになり、さらにポリエチレン系樹脂(B)分散相間の距離も離れてしまい、所望される表面抵抗率が安定して得られなくなる。一方、ポリエチレン系樹脂(B)の配合割合が多すぎると、ポリエチレン系樹脂(B)が分散相を形成しにくくなり、さらに分散相間の距離が近づきやすくなるため、やはり所望される表面抵抗率が安定して得られなくなる。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂(A)の配合割合は、好ましくは重量比で99.5:0.5〜65:35であり、より好ましくは99.5:0.5〜70:30であり、更に好ましくは99:1〜75:25であり、特に好ましくは99:1〜80:20であり、最も好ましくは98:2〜85:15である。
【0037】
前記導電性カーボンブラックの配合割合は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)との混合樹脂100重量部に対して、5〜30重量部である。導電性カーボンブラックの配合量が前記範囲外であると、所望の表面抵抗率を安定して得られなくなる。1×10
5〜1×10
10Ωの中抵抗領域の表面抵抗率をより安定して得るためには、前記導電性カーボンブラックがケッチェンブラックの場合、その配合割合は、基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)の合計100重量部に対して、5〜15重量部であることが好ましく、より好ましくは6〜14重量部であることが好ましく、更に好ましくは7〜13重量部、特に好ましくは8〜12重量部である。また、前記導電性カーボンブラックがアセチレンブラックの場合、その配合割合は、基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)の合計100重量部に対して、23〜27重量部であることが好ましく、より好ましくは24〜26重量部である。
これらの中でも、低添加量で所望の表面抵抗率を示すケッチェンブラックがより好ましい。
【0038】
該導電性カーボンブラックの平均粒径は、通常0.01〜100μmである。さらにポリエチレン系樹脂(B)の分散相中への分散性の観点から、好ましくは10〜80nmであり、より好ましくは15〜60nmである。
【0039】
前記カーボンブラックの平均粒径は、電子顕微鏡を用いて測定される。
具体的には、視野内に数百個の粒子を含む電子顕微鏡写真をとり、定方向径(Green径)を代表径として無作為に1000個測定し、得られた値より個数基準の積算分布曲線を作成し、個数基準の積算分布の50%径を平均粒径として採用する。
【0040】
本発明において前記分散構造が安定的に形成されるためには、ポリエチレン系樹脂(B)の融点は30〜150℃であることが好ましく、かつポリプロピレン系樹脂(A)の融点よりも低いことが好ましい。ポリエチレン系樹脂(B)の融点が上記範囲であることにより、発泡時の被覆層の延伸にポリエチレン系樹脂(B)分散相が十分に追従できるため、ポリエチレン系樹脂(B)分散相間の導電ネットワーク構造が構築しやすくなる。
【0041】
本明細書における融点(Tm)は、JIS K7121(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用し(試験片の状態調節における加熱速度及び冷却速度はいずれも10℃/分とする。)、DSC装置により加熱速度10℃/分で昇温してDSC曲線を描かせた際に、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う吸熱ピークの頂点温度として求められる値である。なお、DSC曲線上に複数の吸熱ピークが存在する場合には、高温側のベースラインを基準に吸熱ピークの頂点高さが最も高い吸熱ピークの頂点を融点とする。測定装置としては、ティー・エイ・インスツルメント社製DSCQ1000などを使用することができる。
【0042】
また、ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレイト(MFR)は、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレートの0.001〜15倍であることが好ましい。上記分散構造をより安定的に形成するためには、ポリエチレン系樹脂(B)のMFRは、ポリプロピレン系樹脂(A)のMFRの0.001〜11倍であることがより好ましく、さらに好ましくは0.001〜10倍である。
【0043】
ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(MFR)は0.1〜30g/10分程度のものを使用でき、MFRが2〜20g/10分のものがより好ましく、3〜15g/分のものがさらに好ましい。一方、ポリエチレン系樹脂(B)のMFRは、通常、0.001〜100g/10分程度であり、好ましくは、0.01〜90g/10分である。
なお、上記ポリエチレン系樹脂(B)のMFR及びポリプロピレン系樹脂(A)のMFRは共にJIS K7210:1999の試験条件M(230℃/2.16kg荷重)で測定される値である。
【0044】
本発明における発泡粒子被覆層には、所期の目的を阻害しない範囲において、ポリプロピレン系樹脂(A)及びポリエチレン系樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーが配合されていてもよい。前記熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのポリスチレン系樹脂や、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂等が例示でき、前記熱可塑性エラストマーとしてはエチレン−ヘキセン共重合体や、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのオレフィン系エラストマーや、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、それらの水添物などのスチレン系エラストマー等が例示できる。
【0045】
更に、発泡粒子被覆層には、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤等の添加剤を含有させることができる。ただし、本発明の目的を阻害しない範囲内で、できるかぎり少量であることが望ましい。上記添加剤の添加量は、添加物の種類や使用目的にもよるが、前記基材樹脂100重量部に対して、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下であり、特に好ましくは1重量部以下である。
【0046】
発泡粒子被覆層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点は、発泡粒子芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも低いことが好ましい。このように構成されている発泡粒子は、発泡粒子芯層を融着可能な温度に加熱して型内成形すれば、発泡粒子被覆層は発泡粒子芯層より早く軟化しているので、発泡粒子間の熱融着性に優れたものとなる。また、発泡粒子芯層のセル構造がダメージを受けることなく熱成形されているので、機械的物性に優れ、成形後の収縮が小さいポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を得ることができる。
【0047】
また、発泡粒子被覆層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点が、発泡粒子芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも低いと、発泡粒子被覆層が発泡状態にはならない。発泡粒子被覆層が発泡状態にはならないのは、複合樹脂粒子が発泡する際、含有発泡剤による被覆層を構成する樹脂の発泡力と該樹脂の粘弾性との関係で発泡状態を維持、形成できないことが、その理由として考えられる。また、被覆層が発泡時に伸びやすくなるため、安定して静電気拡散性を発現するものとも考えられる。
【0048】
かかる観点から、発泡粒子被覆層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点は、発泡粒子芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも0〜80℃低いことが好ましく、より好ましくは1〜80℃、より好ましくは5〜60℃、更に好ましくは10〜50℃、特に好ましくは15〜45℃である。
【0049】
次に、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂発泡芯層について説明する。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂発泡芯層は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子である。該ポリプロピレン系樹脂としては、前記被覆層を構成するポリプロピレン系樹脂と同様なものを用いることができる。それらの中でも、発泡成形性と機械的物性とのバランスに優れることから、ポリプロピレン−エチレンランダム共重合体、ポリプロピレン−ブテンランダム共重合体、ポリプロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0050】
本発明における発泡粒子芯層には、所期の目的を阻害しない範囲において、ポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーが配合されていてもよい。前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのポリスチレン系樹脂や、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂等が例示でき、前記熱可塑性エラストマーとしてはエチレン−ヘキセン共重合体や、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのオレフィン系エラストマーや、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、それらの水添物などのスチレン系エラストマー等が例示できる。
【0051】
更に、発泡粒子芯層には、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲内で着色剤、滑剤、触媒中和剤、酸化防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。また、導電性カーボンブラックなどの導電性無機物を添加することもできる。前記添加剤はその種類にもよるがポリオレフィン樹脂100重量部に対して、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下であり、特に好ましくは1重量部以下である。
【0052】
本発明の発泡粒子は、特定の発泡粒子被覆層を有することにより、発泡粒子芯層が導電性カーボンブラックの導電性物質を含んでいなくても、得られる発泡粒子成形体は静電気拡散性を発現することができる。特に、発泡粒子芯層が導電性物質を含まない場合には、発泡成形性に優れるため、得られる発泡粒子は独立気泡率が高いものとなり、その結果、型内成形後の収縮率が小さく、寸法安定性に優れ、生産性に優れる発泡粒子成形体を得ることができる。また、発泡粒子の内圧を容易に高めることができるため、低見掛け密度(高発泡倍率)の発泡粒子を容易に得ることができる。
【0053】
前記発泡粒子芯層と発泡粒子被覆層との重量比は、99:1〜50:50が好ましく、より好ましくは99:1〜70:30であり、さらに好ましくは98:2〜75:25、特に好ましくは96:4〜80:20である。
発泡粒子被覆層の重量比が小さすぎると、表面抵抗率1×10
5〜1×10
10Ωという静電気拡散性の発現が不充分となる虞がある。該重量比率が大きすぎる場合には、発泡粒子被覆層の重量比が小さいものに比べ、同見掛け密度(同発泡倍率)の発泡粒子とするためには芯層の見掛け密度を低くしなければならないため、成形性の悪化や物性低下を招く虞がある。
該発泡粒子芯層と発泡粒子被覆層との重量比の調整は、例えば、後述する複合樹脂粒子の製造において、樹脂粒子芯層製造用原料の供給量と樹脂粒子被覆層製造用原料の供給量の比を調整することにより行なうことができる。
【0054】
前記発泡粒子の被覆層の平均厚みは、より安定して静電気拡散性を発現させるために、0.2μm以上であることが好ましく、より好ましくは1μm以上であり、更に好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上である。発泡粒子被覆層の平均厚みの上限は、厚すぎても静電気拡散性の安定性が向上するということはないことから、200μmが好ましく、100μmがより好ましく、50μmが更に好ましい。
【0055】
本発明において、発泡粒子の被覆層の平均厚みは、発泡粒子芯層と発泡粒子被覆層との境界面が不明確であること、さらに発泡粒子被覆層の厚みが薄い場合には実測することが困難であることから、発泡粒子の粒子重量、見掛け密度、L(長さ)/D(直径)、発泡前の複合樹脂粒子の芯層を構成する樹脂の重量比率、被覆層の密度などに基づき算出される値を採用する。なお、発泡粒子の被覆層の平均厚みを算出する場合、算出を簡単にする為、複合樹脂粒子は発泡により相似形の発泡粒子になるものとし算出するものとする。
【0056】
具体例として、円柱状の複合樹脂粒子から発泡粒子を得る場合の発泡粒子の被覆層の平均厚み(Tt)の算出は、下記の式(1)、式(2)及び式(3)を用いて行うことができる。
【0057】
Pd={(4×W)÷(π×Ld×Db)}
(1/3)・・・(1)
ただし、円柱状の発泡粒子の直径をPd(cm)、複合樹脂粒子重量をW(g)、発泡粒子の見掛け密度をDb(g/cm
3)、複合樹脂粒子が相似形に発泡した場合の発泡粒子のL/DをLdとする。
【0058】
Cd={Pd
2−(4×R×W)÷(π×Pd×Ld×ρ)}
(1/2)・・・(2)
ただし、円柱状の発泡粒子の芯層部分のみの直径をCd(cm)、複合樹脂粒子の被覆層の重量比率をR(無次元)、被覆層の密度をρ(g/cm
3)とする。
【0059】
Tt(μm)={(Pd−Cd)÷2}×10000・・・(3)
【0060】
他の具体例として、球状の複合樹脂粒子から発泡粒子を得る場合の発泡粒子の被覆層の平均厚み(Tt)の算出は、下記の式(4)を移項した式(5)を用いて行うことができる。
【0061】
S/ρ=π/6{X×d
3−X(d−2×Tt×10000)
3}・・・(4)
Tt(μm)=〔−{(6×S)/(ρ×π×X)+d
3}
(1/3)−d〕
/(−20000)・・・(5)
ただし、球状の複合樹脂粒子の直径をd(cm)、複合樹脂粒子の被覆層の重量をS(g)、発泡粒子の発泡倍率(複合樹脂粒子の密度(g/cm
3)/発泡粒子の見掛け密度Db(g/cm
3))をX(無次元)、被覆層の密度をρ(g/cm
3)とする。
【0062】
前記発泡粒子の被覆層の平均厚みは、所望の発泡粒子の見掛け密度(発泡倍率)に応じて、複合樹脂粒子の被覆層及び芯層の重量比、複合樹脂粒子のL/Dや直径などを調整することにより目的の値とすることができる。
【0063】
本発明の発泡粒子は、前記複合樹脂粒子が見掛け密度10〜120kg/m
3となるように発泡されたものであり、安定的に静電気拡散性を発現する。該見掛け密度が小さすぎると、最終的に得られる発泡粒子成形体の機械的強度が弱くなる上に、所望される静電気拡散性の安定性が損なわれる虞がある。一方、該見掛け密度が大きすぎると、得られる発泡粒子成形体の重量が重くなりすぎて、発泡体としての軽量性が損なわれる上に、やはり安定して静電気拡散性が発現しない虞がある。かかる観点から、発泡粒子の見掛け密度は、12〜90kg/m
3であることが好ましく、より好ましくは15〜60kg/m
3であり、さらに好ましくは20〜50kg/m
3である。
【0064】
発泡粒子の見掛け密度は、23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、このメスシリンダー内に、発泡粒子群(発泡粒子群の重量W[g])を、金網などを使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積V[cm
3]を求め、発泡粒子群の重量を発泡粒子群の体積で除し(W/V)、さらに[kg/m
3]に単位換算することにより求めることができる。
【0065】
発泡粒子の平均気泡径は、20〜400μmが好ましく、40〜200μmがより好ましい。該平均気泡径が前記範囲内であると、型内成形性に優れると共に、成形後の寸法回復性に優れ、圧縮物性などの機械的物性にも優れた発泡粒子成形体を得ることができる。
【0066】
発泡粒子の平均気泡径は、次のようにして測定される。
発泡粒子を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求めることができる。まず、発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、気泡切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、気泡切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで、前記4本の線分と交わる気泡の数の総数N(個)を求める。4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総和Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とする。この作業を10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0067】
また、前記発泡粒子の独立気泡率は、75%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは82%以上である。独立気泡率が小さすぎると、発泡粒子の二次発泡性が劣るとともに、得られる発泡粒子成形体の機械的物性も劣ったものとなりやすい。
【0068】
発泡粒子の独立気泡率は、次のようにして測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、嵩体積約20cm
3の養生後の発泡粒子を測定用サンプルとし下記の通り水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。そして、これらの体積Va及びVxを基に、下記の(6)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。
【0069】
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(6)
ただし、
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
3)
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm
3)
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
3)
【0070】
本発明の発泡粒子は、二次結晶を有し、該二次結晶の示差熱分析による融解熱量が1〜30J/gであることが好ましい。
即ち、前記発泡粒子2〜10mgを熱流束示差走査熱量測定法により、10℃/分の昇温速度で23℃から220℃まで加熱したときに得られるDSC曲線(第1回加熱のDSC曲線)が、ポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱ピークA(以下、単に「固有ピーク」ともいう)と、該固有ピークの高温側に、前記二次結晶に由来する1つ以上の吸熱ピークB(以下、単に「高温ピーク」ともいう)とを有し、該高温ピークの融解熱量(以下、単に高温ピーク熱量ともいう。)が1〜30J/gであることが好ましい。該高温ピーク熱量が上記範囲内であることにより、成形融着性に優れる発泡粒子となると共に、機械的強度に優れた発泡粒子成形体を得ることができる。
【0071】
該高温ピークの熱量の上限は、18J/gであることが好ましく、より好ましくは17J/g、更に好ましくは16J/gである。一方、該高温ピークの熱量の下限は、好ましくは4J/gである。尚、発泡粒子の高温ピークは周知の方法で調節可能であり、具体的には、その調節方法は、例えば特開2001−151928号等に開示されている。
【0072】
前記第1回加熱のDSC曲線と、固有ピーク熱量、高温ピーク熱量の測定は、JIS K7122:1987年に準拠する測定方法により次のように行なう。
発泡粒子2〜10mgを採取し、示差走査熱量測定装置によって23℃から220℃まで10℃/分で昇温測定を行なう。かかる測定により得られたDSC曲線の一例を
図4に示す。
【0073】
図4のDSC曲線には、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に由来する固有ピークAと、該固有ピークの高温側に高温ピークBが示され、高温ピークBの熱量はそのピーク面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。
まず、DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。尚、上記融解終了温度Tとは、高温ピークBの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。
次に上記の固有ピークAと高温ピークBとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α−β)と交わる点をδとする。高温ピークBの面積は、DSC曲線の高温ピークB部分の曲線と、線分(δ−β)と、線分(γ−δ)とによって囲まれる部分(
図4において斜線を付した部分)の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。
【0074】
尚、高温ピークBは、上記のようにして測定した第1回加熱時のDSC曲線には認められるが、第2回目に昇温して得られたDSC曲線には認められない。第2回加熱時のDSC曲線には、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱曲線ピークのみが認められる。
【0075】
次に、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法について説明する。
本発明の発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂粒子芯層に、導電性カーボンブラックを含むポリオレフィン系樹脂粒子被覆層が被覆されている複合樹脂粒子を発泡させることにより得ることができる。
【0076】
本発明における複合樹脂粒子は、例えば、次のようにすれば製造することができる。
樹脂粒子芯層用押出機と樹脂粒子被覆層用押出機の2台の押出機が共押出ダイに連結された装置を用い、樹脂粒子芯層用押出機に所要のポリプロピレン系樹脂と、必要に応じた気泡調節剤等の添加剤を供給して溶融混練して樹脂粒子芯層形成用の溶融樹脂とし、樹脂粒子被覆層用押出機に所要のポリプロピレン系樹脂(A)と、ポリエチレン系樹脂(B)と、導電性カーボンブラックとを供給して溶融混練して樹脂粒子被覆層形成用の溶融樹脂とし、前記樹脂粒子芯層形成用の溶融樹脂を共押出ダイ内に導入して線状の流れとし、同時に樹脂粒子被覆層形成用の溶融樹脂を共押出ダイ内に導入して、樹脂粒子被覆層形成用の溶融樹脂が、樹脂粒子芯層形成用の溶融樹脂の線状の流れを取り巻くように積層して鞘芯構造の溶融樹脂組成物を形成し、押出機出口に付設された口金の小孔から該溶融樹脂組成物を複数のストランド状に押出し、該ストランドを水中を通して冷却してから適宜長さに切断したり、ダイから溶融樹脂組成物を水中に押出すのと同時に切断・冷却する等の手段により、複合樹脂粒子を製造することができる。本明細書において、このようにして形成される複合構造を「鞘芯」構造ということがある。
【0077】
前記共押出ダイを用いて複合樹脂粒子を製造する方法については、例えば特公昭41−16125号公報、特公昭43−23858号公報、特公昭44−29522号公報、特開昭60−185816号公報等に詳細に記載されている。
【0078】
本発明の発泡粒子を構成する被覆層においては、ポリプロピレン系樹脂(A)が連続相を形成し、該連続相中にポリエチレン系樹脂(B)が分散した分散相を形成し、更に導電性カーボンブラックがポリエチレン系樹脂(B)に含有される構造を形成しなければならないことから、複合樹脂粒子を製造する際には、このような構造を形成可能な樹脂粒子被覆層を製造する必要がある。そのためには、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)と導電性カーボンブラックとを直接樹脂粒子被覆層用押出機に供給して混練することもできるが、予め導電性カーボンブラックをポリプロピレン系樹脂(A)に分散させたマスターバッチを作製し、該マスターバッチと、ポリエチレン系樹脂(B)と、必要に応じてさらに添加されるポリプロピレン系樹脂(A)とを押出機に供給して混練することが好ましい。
【0079】
前記マスターバッチ中の導電性カーボンブラックの濃度としては、5〜50重量%が好ましく、より好ましくは8〜30重量%、更に好ましくは9〜25重量%である。また、マスターバッチ中での導電性カーボンブラックの分散性を向上させるために、マスターバッチにはオレフィン系エラストマーを添加することが好ましく、オレフィン系エラストマーの配合量はマスターバッチ中に3〜10重量%とすることが好ましい。オレフィン系エラストマーとしては、エチレン−オクテン共重合エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合エラストマーなどが挙げられる。
【0080】
一方、樹脂粒子芯層には、発泡粒子芯層の気泡径を調節するために、気泡調節剤を添加することが好ましい。該気泡調節剤としては、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ミョウバン等の無機物が挙げられる。その添加量は、基材樹脂100重量部あたり、0.001〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましい。
尚、樹脂粒子芯層の基材樹脂に気泡調節剤を添加する場合、気泡調節剤をそのまま配合することもできるが、通常は分散性等を考慮して気泡調節剤のマスターバッチとして添加することが好ましい。
【0081】
本発明における複合樹脂粒子の重量は、型内への発泡粒子の均一な充填性を確保できることから、0.02〜20mgが好ましく、0.1〜6mgがより好ましい。
【0082】
本発明の発泡粒子は、前記複合樹脂粒子を用いて、例えば、所謂分散媒放出発泡方法等によって製造することができる。
分散媒放出発泡法においては、前記複合樹脂粒子を物理発泡剤等と共にオートクレーブ等の密閉容器内で水等の分散媒に分散させ、分散媒を樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し、樹脂粒子内に発泡剤を含浸させ、次に、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を水等の分散媒と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出して発泡させることによって、本発明の発泡粒子を得ることができる。また、物理発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を密閉容器から取り出し、スチーム等の加熱媒体で加熱して発泡させても良い。
さらに、前記押出装置で複合樹脂粒子を作製する際に、芯層用押出機中に発泡剤を圧入して発泡性溶融樹脂組成物とし、該発泡性溶融樹脂組成物を前記被覆層形成用の溶融樹脂で積層した鞘芯構造の溶融樹脂組成物とし、該鞘芯構造の溶融樹脂組成物をダイから押出して発泡させる方法によっても得ることができる。
【0083】
発泡が生じない高圧下から発泡の生じる低圧下へ放出する際の高圧下と低圧下の差圧は400kPa以上、好ましくは500〜15000kPaとすることが好ましい。
【0084】
分散媒放出発泡法で用いられる発泡剤としては、通常、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン等の有機系物理発泡剤や、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機系物理発泡剤が挙げられる。これらの中でもオゾン層の破壊がなく且つ安価な無機ガス系発泡剤が好ましく、特に窒素、空気、二酸化炭素が好ましい。又、これらの発泡剤の二種以上の混合系にて使用することもできる。
【0085】
発泡剤の使用量は、得ようとする発泡粒子の見掛け密度と発泡温度との関係に応じて適宜に選択される。具体的には、窒素、空気を除く上記発泡剤の場合、発泡剤の使用量は通常樹脂粒子100重量部当り2〜50重量部である。また窒素、空気の場合は、密閉容器内の圧力が1〜7MPa(G)の圧力範囲内となる量が使用される。
【0086】
密閉容器内において、樹脂粒子を分散させるための分散媒としては水が好ましいが、樹脂粒子を溶解しないものであれば使用することができ、このような分散媒としては例えば、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0087】
平均気泡径の大きさは、発泡剤の種類と量、発泡温度と気泡調節剤の添加量で調節される。また、見掛け密度(発泡倍率)は、発泡剤の添加量と発泡温度と、発泡時の上記差圧により調節される。適正な範囲内においては、一般的に、発泡剤の添加量が多いほど、発泡温度が高いほど、上記差圧が大きいほど、得られる発泡粒子の見掛け密度は小さくなる。
【0088】
密閉容器内において、基材樹脂粒子を分散媒に分散せしめて発泡温度に加熱するに際し、樹脂粒子相互の融着を防止するために融着防止剤を用いることもできる。融着防止剤としては水等に溶解せず、加熱によっても溶融しないものであれば、無機系、有機系を問わずいずれも使用可能であるが、一般的には無機系のものが好ましい。
【0089】
無機系の融着防止剤としては、カオリン、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の粉体が好適である。該融着防止剤としては平均粒径0.001〜100μm、特に0.001〜30μmのものが好ましい。また融着防止剤の添加量は樹脂粒子100重量部に対し、通常は0.01〜10重量部が好ましい。
【0090】
また分散助剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤や硫酸アルミニウムが好適に使用される。該分散助剤は樹脂粒子100重量部当たり、通常0.001〜5重量部添加することが好ましい。
【0091】
見掛け密度の小さい発泡粒子を製造する場合、前記分散媒放出発泡方法等により発泡粒子を製造し、得られた発泡粒子をさらに所謂二段発泡させることが好ましい。二段発泡によれば、発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの気体により加圧処理して発泡粒子の内圧を0.01〜0.6MPa(G)に高める操作を行った後、該発泡粒子を該容器内から取り出し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱することにより、見掛け密度の小さい発泡粒子を容易に得ることができる。
【0092】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、必要に応じて従来公知の方法により、前記発泡粒子を成形型内に充填し、スチームで加熱成形することにより得ることができる。具体的には、該発泡粒子を閉鎖し得るが密閉し得ない成形型内に充填した後、該成形型内にスチームを導入することにより、発泡粒子を加熱し発泡させ、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された成形体を得ることができる。また、必要に応じて上述した二段発泡における操作と同様の発泡粒子内の圧力を高める加圧処理操作を行なって発泡粒子内の内圧を0.01〜0.2MPa(G)に調整することもできる。
【0093】
尚、発泡粒子の加熱融着成形後、得られた成形体を成形型内において冷却するに当たっては、水冷方式を採用することもできるが、バキューム方式によりスチームの気化熱を利用して冷却することもできる。
【0094】
本発明においては、発泡粒子を、成形型内に圧縮率が4〜25体積%となるように、好ましくは5〜20体積%となるように充填した後、スチームにより型内成形する方法を採用することによっても目的とする成形体を得ることができる。
【0095】
圧縮率の調整は、発泡粒子を成形型内(キャビティー)に充填する際に、キャビティー体積を超える発泡粒子の量を充填することにより行なわれる。発泡粒子を成形型に充填する際に成形型内の空気を金型内から排気したり、発泡粒子の成形型内への充填を効率良く行うために、発泡粒子の充填時に成形型を完全に閉鎖させないクラッキング充填が行なわれる。なお、クラッキングとは成形型の開き部分をいい、クラッキングは成形型内に発泡粒子を充填後、スチームを導入する際には最終的に閉じられ、その結果充填された発泡粒子は圧縮される。
【0096】
本発明の発泡粒子成形体の独立気泡率は、75%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは82%以上、特に好ましくは85%以上である。独立気泡率が低すぎると、低見掛け密度の発泡粒子成形体となりにくく、機械的物性が劣ったものとなりやすい。
【0097】
なお、発泡粒子成形体の独立気泡率は、次のようにして測定される。
得られた発泡粒子成形体を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に、該発泡粒子成形体から25×25×20mmの試料を切出し、該試料を用いて前記発泡粒子の独立気泡率と同様に測定する。
【0098】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、表面抵抗率が1×10
5〜1×10
10Ω、好ましくは1×10
6〜1×10
9Ωであるという静電気拡散性を安定して発現することができる。従って、該発泡粒子成形体は、集積回路、ハードディスクなどの電子部品の包装材として好適に使用できるものである。なお、本発明における表面抵抗率とは、JIS C2170(2004年)の「8.(静電気電荷蓄積を防止するために使用される)静電気拡散性材料の抵抗測定」に基づき測定される値である。
【実施例1】
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0100】
実施例、比較例で用いたポリプロピレン系樹脂の種類、物性を表1に、ポリエチレン系樹脂の種類、物性を表2に、導電性カーボンブラックの種類、物性を表3に、オレフィン系エラストマーの種類、物性を表4に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
なお、表中のコモノマーとして1−ブテンを含むことは、エチレン−ブテン共重合体であること、コモノマーとして1−ヘキセンを含むことは、エチレン−ヘキセン共重合体であること、「−」はポリエチレン系樹脂がコモノマーを含まないこと、即ちエチレンの単独重合体であることを意味する。
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
なお、表中の「C8」はオレフィン系エラストマーがコモノマーとして1−オクテンを含むこと、即ちエチレン−オクテン共重合エラストマーであることを意味する。
【0105】
実施例1〜15、比較例1〜7
〔導電性カーボンブラックマスターバッチの調製〕
MB1: ポリプロピレン系樹脂として表1のPP1を80重量部、導電性カーボンブラックとして表3のCB1を15重量部、オレフィン系エラストマーとして表4のEO1を5重量部、内径30mmの二軸押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを冷却、切断して、導電性カーボンブラックマスターバッチ(MB1)を得た。
MB2: ポリプロピレン系樹脂として表1のPP1を85重量部、導電性カーボンブラックとして表3のCB1を15重量部、内径30mmの二軸押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを冷却、切断して、導電性カーボンブラックマスターバッチ(MB2)を得た。
MB3: ポリプロピレン系樹脂として表1のPP1を70重量部、導電性カーボンブラックとして表3のCB2を30重量部、内径30mmの二軸押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを切断して、導電性カーボンブラックマスターバッチ(MB3)を得た。
MB4: ポリプロピレン系樹脂として表1のPP2を55重量部、着色剤として着色用カーボンブラック(製品名#650B)を45重量部、内径30mmの二軸押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを切断して、着色用マスターバッチ(MB4)を得た。
【0106】
〔導電性樹脂ペレットの調製〕
実施例1〜15においては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、導電性カーボンブラック、オレフィン系エラストマーが表5に示した種類、配合となるように、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、導電性カーボンマスターバッチを内径30mmの2軸押出機に供給し、設定温度200〜220℃に加熱、溶融、混練した後、押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで切断して樹脂粒子被覆層製造用の導電性樹脂ペレットを得た。なお、導電性カーボンマスターバッチとして、実施例6、9以外の実施例ではMB1を、実施例6ではMB2を、実施例9ではMB3を用いた。
【0107】
比較例1〜3においては、ポリプロピレン系樹脂、導電性カーボンブラックが表6に示した種類、配合となるように、ポリプロピレン系樹脂、導電性カーボンマスターバッチを内径30mmの2軸押出機に供給し、設定温度200〜220℃に加熱、溶融、混練した後、押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで切断して樹脂粒子被覆層製造用の導電性樹脂ペレットを得た。なお、導電性カーボンブラックマスターバッチとして、比較例1及び2ではMB2を、比較例3ではMB3を用いた。
【0108】
比較例4〜7においては、ポリプロピレン系樹脂、導電性カーボンブラック、オレフィン系エラストマーが表6に示した種類、配合となるように、ポリプロピレン系樹脂、導電性カーボンマスターバッチMB1、オレフィン系エラストマーとしてEO1を内径30mmの2軸押出機に供給し、設定温度200〜220℃に加熱、溶融、混練した後、押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで切断して樹脂粒子被覆層製造用の導電性樹脂ペレットを得た。
【0109】
[樹脂粒子製造]
内径65mmの樹脂粒子芯層用押出機および内径30mmの樹脂粒子被覆層用押出機の出口側に多層ストランド形成用ダイを付設した押出機を用い、表5、6に示す種類のポリプロピレン系樹脂を内径65mmの樹脂粒子芯層用押出機に供給し、同時に上記導電性樹脂樹脂ペレットを内径30mmの樹脂粒子被覆層用押出機に供給し、それぞれを設定温度200〜220℃に加熱、溶融、混練した後、前記ダイに供給し、ダイ内で合流して押出機先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の側面に外層が被覆された多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで2mg、L/D=2.4になるように切断して2層(鞘芯構造)に形成された円柱状の複合樹脂粒子を得た。なお、複合樹脂粒子の重量、L/Dは、複合樹脂粒子群から無作為に抽出した100個の複合樹脂粒子から求めた算術平均値である。また、樹脂粒子芯層のポリプロピレン系樹脂には気泡調整剤としてホウ酸亜鉛の含有量が1000重量ppmとなるように供給し、黒色着色剤として上記MB4をポリプロピレン系樹脂100重量部に対して7重量部供給した。
【0110】
[発泡粒子の製造]
前記複合樹脂粒子1kgを、分散媒体の水3Lと共に5Lのオートクレーブ内に仕込み、分散媒中に、分散剤としてカオリン3g、分散助剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04g、及び硫酸アルミニウム0.1gをそれぞれ添加し、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を表5、表6に示した容器内圧力になるように圧入し、撹拌下に発泡温度まで加熱昇温して同温度に15分間保持して、高温ピーク熱量を調整した後、オートクレーブ内容物を大気圧下に水と共に放出して発泡粒子を得た。
【0111】
[二段発泡粒子の製造]
実施例4、5、比較例5〜7においては、二段発泡を行なって、低見掛け密度の発泡粒子とした。尚、二段発泡は発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填し、空気により加圧処理して発泡粒子の内圧を0.5MPaまで高める操作を行った後、発泡粒子を容器内から取り出し、スチームを用いて加熱することにより行なった。
【0112】
[発泡粒子成形体の製造]
前記で得られた発泡粒子を縦250mm(長辺)×横200mm×厚さ50mmの平板成形型のキャビティに充填し、スチーム加熱による型内成形を行って板状発泡成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行った後、本加熱圧力より0.04MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに本加熱圧力より0.02MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表5、表6に示す成形加熱蒸気圧力(成形圧)で加熱した。なお、成形圧は、成形体が大きく収縮せずに最大融着率を示す圧力とした。この成形圧よりも圧力を上げると、成形体が大きく収縮するか、もしくは融着率が低下するため良好な成形体が得られなかった。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷した後、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体を80℃のオーブン中で12時間養生して発泡粒子成形体を得た。得られた成形体の物性を表5、6に示した。
【0113】
【表5】
【0114】
【表6】
【0115】
発泡粒子および発泡粒子成形体の物性評価方法は下記により行った。
[表面抵抗率]
成形体の表面抵抗率は、雰囲気条件1の場合と雰囲気条件2の場合において測定した。雰囲気条件1の場合、成形体を23℃、10%RHの条件下で製造直後から1日間、雰囲気条件2の場合、成形体を23℃、50%RHの条件下で製造直後から1日間養生した後に、JIS C2170(2004年)に準拠した以下の方法により、雰囲気条件1で養生した成形体については23℃、10%RHの条件下で、雰囲気条件2で養生した成形体については、23℃、50%RHの条件下で測定した。
まず、発泡粒子成形体の中央部付近から縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚みのままの直方体状に切り出して測定試験片を作製した。測定装置として三菱化学社製「ハイレスタMCP−HT450」を使用し該試験片の成形スキン面の表面抵抗率を測定した。なお、該試験方法により測定された表面抵抗率が1×10
4Ω未満の場合には、測定装置として三菱化学社製社製「ロレスタMCP−T610」を使用し、あらためて該試験片の成形スキン面の表面抵抗率を測定した。
【0116】
[帯電圧減衰]
発泡粒子成形体の帯電圧減衰時間は、雰囲気条件1の場合と雰囲気条件2の場合において測定した。雰囲気条件1の場合、成形体を23℃、10%RHの条件下で製造直後から1日間、雰囲気条件2の場合、成形体を23℃、50%RHの条件下で製造直後から1日間養生した後に、以下の方法により、雰囲気条件1で養生した成形体については23℃、10%RHの条件下で、雰囲気条件2で養生した成形体については、23℃、50%RHの条件下で測定した。
発泡粒子成形体の中央部付近から縦150mm×横150mm×厚み10mmをスキン面を残した状態で切り出して測定試験片とした。測定装置としてトレック・ジャパン社製「Model 159HH」を使用し、測定プレート上に測定試験片を置き、1300Vの電圧を荷電させた後、測定試験片の中央部(測定プレートに対して対面)から銅線を用いてアースに繋ぎ、電圧が1000Vから100Vに減衰する時間を測定した。
100Vまで減衰する時間が2秒以下であれば合格(○)、2秒より大きかったものは不合格(×)と評価した。
【0117】
[発泡粒子の被覆層のモルフォロジー観察]
まず、発泡粒子被覆層におけるポリエチレン系樹脂のポリプロピレン系樹脂連続相中への分散状態を以下の方法により確認した。観察用のサンプルを該発泡粒子被覆層から切り出し、エポキシ樹脂に包埋し、四酸化ルテニウム染色後、ウルトラミクロトームにより超薄切片を作製した。この超薄切片をグリッドに載せ、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM1010)にて発泡粒子の被覆層断面のモルフォロジーを倍率20000倍で観察した。実施例1の発泡粒子についての電子顕微鏡写真を
図1に、比較例2の発泡粒子についての電子顕微鏡写真を
図3に示す。
図1から、ポリエチレン系樹脂は、顕微鏡写真中では染色による濃色を示し、ポリプロピエン系樹脂連続相中に分散していることがわかる。一方、
図3から、基材樹脂がポリプロピレン系樹脂のみからなる発泡粒子においては、導電性カーボンブラックがポリプロピレン系樹脂中に連なった状態で分散していることがわかる。
次に、導電性カーボンブラックの分散状態を確認するために、上記観察切片の四酸化ルテニウムを脱色した後、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM1010)を使用して倍率20000倍で観察した。実施例3の発泡粒子についての電子顕微鏡写真を
図2に示す。
図2から、基材樹脂がポリプロピレン系樹脂連続相とポリエチレン系樹脂分散相とからなる被覆層を有する発泡粒子においては、導電性カーボンブラックが該分散相と略同じ大きさの領域に局在していることがわかる。
上記モルフォロジー観察により、実施例の発泡粒子の被覆層において、ポリプロピレン系樹脂が連続相(マトリックス)を形成し、ポリエチレン系樹脂が分散相(ドメイン)を形成しており、かつ導電性カーボンブラックが分散相中に多く偏在していることを確認した。
【0118】
[融着性]
融着性は下記の方法により測定し評価した。発泡粒子成形体を折り曲げて破断し、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求め、上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて前記測定を5回行いそれぞれの材料破壊率を求め、それらの算術平均値を融着率とした。なお、破壊率80%以上を合格とし、表5、6に○と表記した。それ以下を不合格とし、表5、6に×と表記した。
【0119】
[発泡粒子の見掛け密度]
23℃、相対湿度50%、1atmの条件下に2日放置した約500cm
3の発泡粒子群の重量(g)を測定し、23℃の水を300cc入れた1Lのメスシリンダー内に該発泡粒子群を金網を使用して沈め、水位の上昇分の目盛りから発泡粒子群の体積V(cm
3)を求め、発泡粒子群の重量Wを体積Vで除した値(W/V)を[kg/m
3]に単位換算した。
【0120】
[発泡粒子の平均気泡径]
発泡粒子の平均気泡径は、前記方法により測定した。
【0121】
[発泡粒子の被覆層の平均厚み]
複合樹脂粒子の形状を円柱とし、前記関係式により求めた。
【0122】
[発泡粒子の高温ピーク熱量]
得られた発泡粒子群から無作為に10個の発泡粒子をサンプリングし、それぞれの発泡粒子の高温ピーク熱量を前記方法により測定し、それらの測定値を算術平均した値を発泡粒子の高温ピーク熱量とした。
【0123】
[発泡粒子成形体の見掛け密度]
発泡粒子成形体の重量を発泡粒子成形体の外形寸法から求めた体積により除した値を求め、[kg/m
3]に単位換算した。
【0124】
[圧縮物性]
JIS K7220:2006に準拠し、50%歪み時の圧縮応力を測定した。
【0125】
[独立気泡率]
発泡粒子成形体の独立気泡率は、得られた発泡粒子成形体から無作為に3点のサンプルを切り出し、前記方法により各々のサンプルの独立気泡率を測定し、それらの測定値を算術平均することにより求めた。
【0126】
[収縮率]
発泡粒子成形体の収縮率[‰]は、(250[mm]−成形体の長辺長さ[mm])/250[mm]×1000で求めた。なお、「250[mm]」とは成形用金型の長辺寸法であり、「成形体の長辺長さ[mm]」とは、実施例及び比較例1で得られた発泡粒子成形体を80℃の雰囲気下で12時間養生した後、徐冷し、さらに23℃の雰囲気下で6時間養生した後の発泡粒子成形体の長辺の長さを計測した値である。