(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のセンサでは、いずれのタイプのものも流速を計測するために金属線や温度センサ線、或いは歪ゲージ等に電力を供給する必要があるので、消費電力の低減化を図ることが難しいものであった。また、低速域の流速をより精度良く計測したい等のニーズに応えるためにも、より一層の高感度化が望まれている。
なお、上記した点は、流速を計測する場合だけに限られるものではなく、加速度等の力学量を計測する場合も同様であり消費電力の低減化及び高感度化が望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、消費電力の低減化を図り易いうえ、高感度なセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係るセンサは、基端側から先端側に向けて一方向に延びる板状に形成され、基端側が固定端、先端側が自由端とされた圧電板と、前記圧電板の主面上に形成され、SAWを励振させて主面上を伝播させるIDTと、前記圧電板の主面上における前記先端側に突設され、外部から作用する影響を受けて傾倒する柱状部と、を備え、前記圧電板が、前記柱状部の傾倒に応じて前記主面に直交する方向に向けて撓み変形することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るセンサによれば、柱状部に加速度等の力学量が作用したり、流動気体が接触したりすると、これらの影響を受けて柱状部が押し倒されて傾倒する。するとこの押し倒された力は、自由端とされた圧電板の先端側に伝わり、圧電板の先端側を押し下げ又は押し上げさせる。
具体的には、柱状部が圧電板の基端側に向けて傾倒した場合には、先端側を押し上げさせるような力が柱状部から圧電板に伝わるので、該圧電板は柱状部の突設方向(主面に直交する方向)に向けて捲り上がるように反って撓み変形する。これに対して、柱状部が圧電板の先端側に向けて傾倒した場合には、先端側を押し下げるような力が柱状部から圧電板に伝わるので、該圧電板は上記方向とは逆方向に向けて垂れ下がるように反って撓み変形する。
【0010】
そのため、IDTによって励振され、圧電板の主面上を伝播するSAW(表面弾性波)の伝播長が変化し、SAWの伝播特性が変化する。従って、このSAWの伝播特性変化に基づいて加速度等の力学量や流動気体の流速を計測することができる。
特に、片持ち状とされた圧電板の先端側に柱状部が突設されているので、柱状部が僅かに傾倒した場合であっても、圧電板を確実に撓み変形させ易い。従って、微小な加速度や流速等であっても精度良く計測することができ、高感度なセンサとすることができる。
また、IDTに対して高周波信号を印加するだけでSAWを励振させることが可能であるので、SAWを発生させるために電力を費やす必要がない。そのため、従来の熱線式や圧電式に比べて消費電力の低減化を図ることができる。
【0011】
(2)上記本発明に係るセンサにおいて、前記柱状部が可撓性を有し、根元部を中心とし
て
前記圧電板の長手方向に撓み変形可能とされていても良い。
【0012】
この場合には、柱状部が根元部を中心としてしなやかに撓み変形するので、流動気体が接触した場合等に柱状部を大きく押し倒し易い。従って、圧電板を大きく反らせることができ、SAWの伝播特性変化を把握し易い。そのため、加速度や流速等をより感度良く計測することができる。
【0013】
(3)上記本発明に係るセンサにおいて、前記柱状部が、円柱状に形成されていると共に根元部よりも先端部の方が拡径していても良い。
【0014】
この場合には、柱状部が円柱状に形成されているので、例えば流速の計測時、流動気体がどの方向から流れてきても柱状部に対して同様に接触する。そのため、流速をより精度良く計測することができる。また、柱状部の先端部の方が根元部よりも拡径しているので、例えば流速の計測時、柱状部の先端部側に集中的に流動気体を接触させ易い。そのため、柱状部を大きく押し倒すことができる。また、例えば加速度が作用した場合には、拡径した先端部が錘部として機能するので、やはり柱状部を大きく押し倒すことができる。
従って、いずれの場合であっても、圧電板を大きく反らせるように撓み変形させることができ、これによりSAWの伝播特性変化を明確に把握して加速度や流速等をより感度良く計測することができる。
【0015】
(4)上記本発明に係るセンサにおいて、前記圧電板を内部に収納するパッケージを備えていても良い。
【0016】
この場合には、圧電板がパッケージの内部に収納されているので、圧電板の主面上に形成されたIDTがパッケージ外からの影響(例えば塵埃や水分等)を受け難い。よって、長期的な作動信頼性を確保することができるうえ、励振されたSAWのQ値の低下を抑制して計測結果の信頼性を高め易い。特にこの場合には、加速度等の力学量の計測に適している。
【0017】
(5)上記本発明に係るセンサにおいて、前記パッケージには、パッケージ外からパッケージ内に流動気体を導入させると共に、該流動気体を前記圧電板の長手方向に沿って流動させた後、パッケージ外に排出させる開口部が形成されていても良い。
【0018】
この場合には、圧電板の長手方向に沿う方向に流動気体を流すことができるので、柱状部を圧電板の基端側又は先端側に向けて確実に傾倒させて圧電板を撓み変形させることができる。特に、柱状部がパッケージで保護されているので、上記方向とは異なる方向から流動気体が流動して柱状部に接触してしまうことを抑制し易い。そのため、流速を正確に計測し易い。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るセンサによれば、消費電力の低減化を図り易いうえ、感度良く加速度等の力学量や流速を計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るセンサの実施形態について説明する。
なお、本実施形態ではセンサの一例として、流速を検出するセンサを例に挙げて説明する。より具体的には、室内の空調を行う空調機器に組み込まれ、吸気量及び排気量の測定に繋げるための流動空気(流動気体)の流速を検出するセンサを例に挙げて説明する。
【0022】
(センサの構成)
図1から
図3に示すように、本実施形態のセンサ1は、基端側から先端側に向けて一方向に延びる板状に形成された圧電板2と、該圧電板2の主面2a上に形成されたIDT3と、圧電板2の主面2a上における先端側に突設された柱状部4と、外部から送信された高周波数の電気信号である作動信号S1を受信すると共に、IDT3によって電気信号に変換された検出信号S2を送信する送受信アンテナ5と、を備えている。
【0023】
上記圧電板2は、基端側がホルダ部10によって片持ち状に支持されている。そのため、圧電板2の基端側は固定端、先端側は自由端とされている。なお、圧電板2とホルダ部10とは、一体的に形成されていても構わないし、別体に形成されていても構わない。
この圧電板2は、例えば水晶やニオブ酸リチウム(LiNbO
3)やタンタル酸リチウム(LiTaO
3)や酸化亜鉛(ZnO)等からなる圧電性基板とされている。なお、以下単に長手方向、短手方向という場合があるが、圧電板2の長手方向、短手方向を指す。
【0024】
圧電板2の主面2aには、上述したIDT3と反射器11とがそれぞれ導電性材料のパターニングによって形成されている。即ち、本実施形態のセンサ1は、反射器11を利用した遅延線型のパッシブセンサとされている。
なお、導電性材料としては、例えばクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、金(Au)やチタン(Ti)等の金属膜であり、単層膜でも積層膜でも構わない。
【0025】
IDT3は、圧電板2による圧電効果を利用してSAWを励振及び受信するための電極であって、圧電板2の基端側に形成されて、励振したSAWを先端側に向かって伝播させている。このIDT3は、SAWの伝播方向である長手方向に沿って配設された第1の櫛歯電極15及び第2の櫛歯電極16を備えている。
【0026】
第1の櫛歯電極15及び第2の櫛歯電極16は、短手方向に互いに向かい合い且つ長手方向に沿って延びたバスバー15a、16aと、バスバー15a、16aに接続され、短手方向に延びた複数の電極指15b、16bと、をそれぞれ備えている。バスバー15a、16aの一部はホルダ部10側に延在しており、その端部には接続マウント部15c、16cが形成されている。
【0027】
両櫛歯電極15、16のそれぞれの電極指15b、16bは、互いに間挿し合うように配置されている。具体的には、両電極指15b、16bは、圧電板2の長手方向に沿って一定の間隔を開けながら交互に並ぶように配置されている。その際、両電極指15b、16bは中心間距離が間隔d(
図2参照)となるように配置されている。これにより、IDT3によって励振されるSAWの励振周波数Fは、V(圧電板2によって決定される伝播速度)/P(IDT3の周期2d)で規定される。
また、両電極指15b、16bの上記接続マウント部15c、16cに送受信アンテナ5が接続されており、送受信アンテナ5で作動信号S1を受信すると接続マウント部15c、16cを介して両電極指15b、16bの間に印加がなされる。
【0028】
反射器11は、圧電板2の先端側であって上記柱状部4よりも圧電板2の基端側に位置した部分に配置されている。
【0029】
柱状部4は、外部から作用する影響、即ち流動空気の接触による影響を受けて長手方向に傾倒する部材であり、圧電板2の主面2aの先端側において、該主面2aに対して立設するように取り付けられている。具体的には、陽極接合、接着剤、プリント印刷等によって、柱状部4の根元部4aが圧電板2に固定されている。
この柱状部4としては、例えばシリコン等の半導体材料やガラス等を毛状に形成したものであり、図示の例では円柱状に形成されている。また、本実施形態の柱状部4は、根元部4aから先端部4bに亘って一定の剛性を有しており、非可撓性とされている。
【0030】
ところで圧電板2は、先端側が自由端とされた片持ち状とされ、その先端側に柱状部4が突設されているので、該柱状部4が傾倒した際、それに応じて主面2aに直交する方向に向けて撓み変形可能とされている。即ち、
図4に示すように先端側が上方に向けて捲り上がるように反った撓み変形、或いは
図5に示すように先端側が下方に向けて垂れ下がるように反った撓み変形が可能とされている。
【0031】
(センサの作動)
次に、上記のように構成されたセンサ1を利用して流動空気の流速を検出する場合について説明する。
まず、センサ1に向けて外部から作動信号S1を送信させる。すると、送受信アンテナ5がこの作動信号S1を受信すると共に、接続マウント部15c、16cを介してIDT3を構成する第1の櫛歯電極15の電極指15bと第2の櫛歯電極16の電極指16bとの間に作動信号S1を印加する。これにより、両電極指15b、16b間に電界が発生し、圧電効果によりSAWが励振される。
【0032】
IDT3によって励振されたこのSAWは、
図6(a)に示すように送信波W1として圧電板2の主面2a上を反射器11に向かって伝播する。するとこの伝播したSAWは、反射器11によって反射された後、再度IDT3に向かって伝播し、受信反射波W2としてIDT3にて受信される。IDT3は、SAWを受信すると、該SAWを検出信号S2S2に電気信号変換した後、送受信アンテナ5を介して外部に送信する。
この際、外部では、
図7に示すように励振によって発生したSAWが送信波W1として送信されてから、受信反射波W2として受信されるまでの遅延時間Tをモニタしている。
【0033】
ここで、例えば圧電板2の先端側から基端側に向かって流動空気が流れてきた場合には、
図4に示すように、この流動空気の接触によって柱状部4が圧電板2の基端側に向けて押し倒されて傾倒する。すると、この押し倒された力は、自由端とされた圧電板2の先端側に伝わり、該先端側を押し上げさせる。これにより、圧電板2は、柱状部4の突設方向である上方(主面2aに直交する方向)に向けて捲り上がるように反って撓み変形する。
そのため、
図6(b)に示すように、IDT3によって励振され、圧電板2の主面2a上を伝播するSAWの伝播長Lが変化(図示の場合は伝播長Lが短くなる)ので、SAWの伝播特性の1つである上記した遅延時間Tが変化(図示の例では伝播時間Tが短くなる)する。
【0034】
これにより、遅延時間Tの変化に基づいて流動空気の流速の変化量を算出し、例えば予め設定されている設定流速と上記変化量とから現在の流速を算出することができる。その結果、例えば室内への流動空気の吸気量を測定することが可能となる。
【0035】
一方、圧電板2の基端側から先端側に向かって流動空気が流れてきた場合には、
図5に示すように、この流動空気の接触によって柱状部4が圧電板2の先端側に向けて押し倒されて傾倒する。すると、この押し倒された力は、自由端とされた圧電板2の先端側に伝わり、該先端側を押し下げさせる。これにより、圧電板2は、上記方向とは逆方向である下方に向けて垂れ下がるように反って撓み変形する。
そのため、この場合であって上記場合と同様の原理により現在の流速を算出することができ、その結果例えば室内からの流動空気の排気量を測定することが可能となる。
【0036】
特に、片持ち状とされた圧電板2の先端側に柱状部4が突設されているので、柱状部4が僅かに傾倒した場合であっても、圧電板2を確実に大きく撓み変形させ易い。従って、微小な流速であっても精度良く計測することができ、高感度なセンサ1とすることができる。
しかも、本実施形態の柱状部4は円柱状に形成されているので、流動空気が圧電板2の先端側或いは基端側から流動してきたとしても、柱状部4に対して同様に接触する。そのため、流速をより精度良く計測することができる。加えて、本実施形態の柱状部4は非可撓性であるので、流動空気の接触に対してリニアに反応して傾倒する。従って、応答性に優れたセンサにし易い。
【0037】
更に、IDT3に高周波信号である作動信号S1を印加するだけでSAWを励振させることが可能であるので、SAWを発生させるために電力を費やす必要がない。つまり、本実施形態のセンサ1は、作動信号S1を受けることで作動し、SAWを励振させるパッシブ型(受動型)のセンサであるのでセンサを作動させるための電源部が不要である。従って、従来の熱線式や圧電式に比べて消費電力の低減化を図り易い。
【0038】
なお、上記実施形態では、SAWの伝播特性変化の1つである遅延時間Tの変化に基づいて流速を計測したが、SAWの送信波W1及び受信反射波W2の位相差の変化に基づいて流速を計測しても構わない。特に、受信反射波W2に関しては、ピーク位置が明瞭に現れ難いため受信反射波W2の受信時間を正確に把握できない場合も考えられる。このような場合には、遅延時間Tの変化ではなく位相差の変化をモニタすることで、流速をより高精度に計測することができるものと考えられる。
【0039】
また、上記実施形態では、1枚の圧電性基板を利用して圧電板2を構成した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限られず、非圧電性の材質からなる下地板と、この下地板上に積層された圧電膜と、で圧電板を構成しても構わない。
【0040】
例えば
図8及び
図9に示すように、下地板としてガラス基板21と、このガラス基板21上に積層された圧電膜22と、で圧電板20を構成しても構わない。圧電膜22は、圧電性材料を被膜させることで形成されたものであり、図示の例ではガラス基板21の先端側を除いてガラス基板21の残りの全面に亘って形成されていると共に、ホルダ部10上にも形成されている。
そして、圧電板20の主面20a(圧電膜22上)にIDT3及び反射器11が形成され、圧電膜22が形成されていない圧電板20の先端側の部分、即ち露出しているガラス基板21に柱状部4が突設されている。
【0041】
このように構成されたセンサ25であっても、同様の作用効果を奏効することができる。特に、この場合にはガラス基板21上に柱状部4を突設できるので、例えば単結晶シリコンのウイスカを成長させるといった結晶成長法等を利用することができ、より微細な柱状部4をガラス基板21に一体的に形成することが可能である。
【0042】
また、上記実施形態のセンサ1において、
図10に示すように、可撓性を有する柱状部4とし、根元部4aを中心として撓み変形(しなり変形)可能としても構わない。
この場合には、柱状部4が根元部4aを中心としてしなやかに撓み変形するので、流動空気が接触した場合に柱状部4を大きく押し倒し易い。従って、圧電板2を大きく反らせることができ、SAWの伝播特性変化をより明確に把握し易い。そのため、より感度良く流速を計測することが可能である。
【0043】
また、上記実施形態のセンサ1において、
図11に示すように、根元部4aよりも先端部4bの方が拡径した柱状部4としても構わない。
具体的には、柱状部4は先端部4bの直径が根元部4aの直径の略3倍程度拡径した段付きの円柱状に形成されている。この場合には、流速の計測時、柱状部4の先端部4b側に集中的に流動空気を接触させ易い。そのため、柱状部4を大きく押し倒して、圧電板2を大きく反らせることが可能である。これによりSAWの伝播特性変化をより明確に把握し易くなるので、流速をより感度良く計測することができる。
なお、この場合、根元部4aから先端部4bに向かうにしたがって漸次拡径するように、柱状部4を逆円錐状に形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏効することができる。
【0044】
ところで、上記実施形態では流速を計測する場合を例に挙げて説明したが、流速は一例であってこの場合に限定されるものではない。例えば、本実施形態のセンサ1を、加速度を検出するセンサとしても利用することが可能である。
即ち、圧電板2の先端側から基端側に向かう方向に加速度が作用した場合には、流速を計測する場合と同様、
図4に示すようにその影響により柱状部4が圧電板2の基端側に向けて押し倒されて傾倒する。これにより、圧電板2は上方に向けて捲り上がるように反って撓み変形する。また、圧電板2の基端側から先端側に向かう方向に加速度が作用した場合には、やはり流速を計測する場合と同様、
図5に示すように、その影響によって柱状部4が圧電板2の先端側に向けて押し倒されて傾倒する。これにより圧電板2は、上記方向とは逆方向である下方に向けて垂れ下がるように反って撓み変形する。
【0045】
従って、いずれの場合であっても、圧電板2の主面2a上を伝播するSAWの伝播長Lが変化するので、SAWの伝播特性変化が変化する。よって、この伝播特性変化に基づいて加速度の計測を行うことが可能である。
【0046】
なお、加速度の計測を行う場合には、
図11に示すように、柱状部4の先端部4bを根元部4aよりも拡径させることが好ましい。こうすることで、柱状部4の先端部4bを錘部として機能させることができるので、加速度が作用した際に柱状部4を傾倒させ易くすることができる。従って、微小な加速度であっても精度良く計測することができる。
【0047】
更に、加速度を計測する場合には、
図12及び
図13に示すように、圧電板2及びホルダ部10を内部に収納するパッケージ31を具備したセンサ30にするとより好ましい。
パッケージ31は、例えば陽極接合、図示しない接合膜、接着剤等を利用して互いに接合された第1基板32及び第2基板33で構成されている。図示の例では、第1基板32が平坦な基板とされ、第2基板33にはキャビティ用の凹部33aが形成されている。そして、両基板32、33の間にキャビティCが画成され、このキャビティC内に圧電板2及びホルダ部10が収納されている。
【0048】
なお、第1基板32にキャビティ用の凹部33aが形成され、第2基板33が平坦な基板とされていても構わないし、両基板32、33にそれぞれキャビティ用の凹部33aが形成されていても構わない。
【0049】
このようにセンサ30を構成した場合には、圧電板2がパッケージ31の内部に収納されているので、圧電板2の主面2a上に形成されたIDT3がパッケージ31外からの影響(例えば塵埃や水分等)を受け難い構造とされている。従って、長期的な作動信頼性を確保することができるうえ、励振されたSAWのQ値の低下を抑制して、加速度の計測結果の信頼性を高め易い。
特に、キャビティC内を真空にした状態で、圧電板2及びホルダ部10をパッケージ31の内部に気密封止することがさらに好ましい。こうすることで、励振されたSAWのQ値の低下をさらに抑制することができ、加速度をより精度良く計測することが可能となる。
【0050】
また、上記したようにパッケージ31を具備するセンサ30とした場合において、流速の計測を行う場合には、
図14及び
図15に示すようにパッケージ31外からパッケージ31内に流動空気を導入させると共に、この導入された流動空気をパッケージ31外に排出させる2つの開口部35を第2基板33に形成すれば良い。
開口部35は、長手方向に向かい合うように第2基板33に形成されており、流動空気をキャビティC内に導入させ、圧電板2の長手方向に沿わせながら流動させた後に、パッケージ31外に排出させることが可能とされている。
【0051】
従って、このセンサ30によれば、流動空気を柱状部4に接触させることで該柱状部4を圧電板2の基端側又は先端側に向けて確実に傾倒させることができ、圧電板2を撓み変形させることができる。特に、柱状部4がパッケージ31で保護されているので、上記方向とは異なる方向から流動空気が流動して柱状部4に接触することを抑制し易い。そのため、流速を正確に計測し易い。
【0052】
また、
図16に示すように、圧電板2を短手方向に間隔を開けて平行に2つ配設させると共に、両圧電板2の基端側を共通のホルダ部10でそれぞれ片持ち状に支持させ、これらをパッケージ31内に収納したセンサ40としても構わない。
この場合、パッケージ31の内部にキャビティCを区画する仕切り板41を設け、一方の圧電板2が収納される第1キャビティC1と、他方の圧電板2が収納される第2キャビティC2と、を各別に画成させる。また、他方の圧電板2が収納されている第2キャビティC2内にだけ流動空気が流動するように、パッケージ31を構成する第2基板33に開口部35が形成されている。
【0053】
このように構成されたセンサ40によれば、一方の圧電板2による計測結果に基づいて加速度を計測することができると共に、他方の圧電板2による計測結果と一方の圧電板2による計測結果との比較結果に基づいて流速を計測することができる。このように、圧電板2が複数配設されたマルチタイプにすることで、複数の異なる計測対象を同時に計測することが可能であり、利便性に優れたセンサとすることができる。
なお、2つの圧電板2を共通のホルダ部10で片持ち状に支持したが、別々のホルダ部10で圧電板2を支持しても構わない。こうすることで、仕切り板41の構成を簡略化することが可能である。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では柱状部4を円柱状に形成したがこの場合に限定されるものではなく、先端部4bが先鋭化した針状に形成しても構わないし、多角柱状に形成しても構わない。特に、流速を計測する場合には、円柱状とすることが好ましく、針状に形成することがより好ましい。また、低速領域の流速を計測する場合には、柱状部4の長さをより長くすると良い。
【0056】
また、上記実施形態では、反射器11を利用した遅延線型のパッシブセンサとしたが、反射器11に変えて、SAWを受信する出力用のIDTを形成しても構わない。この場合には、上記IDT3がSAWを励振させる出力用IDTとして機能する。
この場合であっても、同様の原理により流速、加速度を計測することができ、同様の作用効果を奏効することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、流動空気の流速を計測したが、空気に限定されるものではなく例えば特定のガス等の流動気体の流速を計測しても構わない。