特許第5717274号(P5717274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717274
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】抵抗溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   B23K11/11 530
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-130837(P2010-130837)
(22)【出願日】2010年6月8日
(65)【公開番号】特開2011-255396(P2011-255396A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2012年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000184366
【氏名又は名称】OBARA GROUP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100088074
【弁理士】
【氏名又は名称】中林 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】菅野 考司
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−180681(JP,A)
【文献】 特開2009−187678(JP,A)
【文献】 特表2007−532255(JP,A)
【文献】 特開2002−239748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電用のトランスを備える固定部分と、
前記固定部分に固定される給電ハウジングと、
前記給電ハウジング内に挿通され、前記給電ハウジングに対して軸方向に移動可能に形成され、前記固定部分に対して相対的に移動する加圧軸と、
前記加圧軸の先端に取り付けられた電極を有するとともに、
前記給電ハウジング内には前記加圧軸の一部を囲むリング状の溝が形成され、
前記溝によって形成されるリング状の空間に、コイルスプリングを変形させて収納した抵抗溶接装置であって、
前記溝の深さDが前記コイルスプリングの外径よりも小さく形成され、
前記コイルスプリングの外周部を前記給電ハウジングと多数の点で接触させるとともに、前記コイルスプリングの内周部を前記加圧軸と多数の点で接触させ、
前記給電ハウジングと前記加圧軸が、前記コイルスプリングを介して電気的に接続されていることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項2】
前記給電ハウジング、前記加圧軸、前記電極、及び前記コイルスプリングからなる給電構造を2組備えてなることを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接装置。
【請求項3】
前記2つの加圧軸が、同軸に配置されてなることを特徴とする請求項2に記載の抵抗溶
接装置。
【請求項4】
前記2つの加圧軸の何れか一方が、スプリングにより付勢されることを特徴とする請求
項2又は3に記載の抵抗溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接等の抵抗溶接を行う抵抗溶接装置に関し、特に、トランスを備える固定部分から電極を備える加圧軸に電流を供給する給電部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗溶接は、2つのワーク部材の接触部に圧力を加えた状態で電流を流し、発生する抵抗熱によってこれらを溶接する方法である。この溶接の中で、比較的薄い板材を重ね合わせて溶接する方法は重ね抵抗溶接と呼ばれている。その中でも、重ね合わせた板材をスポット的に溶接するスポット溶接は、自動車産業において非常に多く使用されている。
【0003】
スポット溶接は、ワーク部材に対する電極の位置によって、ダイレクト方式とインダイレクト方式の2つに分類される。ダイレクト方式は、ワーク部材の両側にそれぞれ電極が配置される方法であって、古くから行われてきた方法である。インダイレクト方式は、ワーク部材の片側に2つの電極が配置される方法であって、比較的新しい方式である。
【0004】
また、シリーズ方式と呼ばれる方法は、インダイレクト方式と同様に、ワーク部材の片側に2つの電極が配置されるが、2つの電極の近傍で夫々スポット溶接が行われる点で、インダイレクト方式とは異なる。さらに最近では、ワーク部材の片側に、2つの電極を同軸に配置する溶接方法が行われている。
【0005】
本明細書では、便宜上、ワーク部材の両側に電極を配置する抵抗溶接を「両側抵抗溶接」と称し、ワーク部材の片側に電極を配置する抵抗溶接を「片側抵抗溶接」と称することとする。特許文献1には、2つの電極を同軸に配置する片側抵抗溶接装置が示されている。
【0006】
その抵抗溶接装置110を図4に、その溶接機本体111を図5に示す。抵抗溶接装置110は、固定部分である基台170を備え、この基台170に、ワーク部材を載置するためのテーブル171と、電力を供給するトランス120が固定されている。また、抵抗溶接装置110は、外側電極板132に固定されて先端が筒状をなす外側電極130と、内側電極板142に固定されて筒状の外側電極130の内側に位置する棒状の内側電極140を備え、外側電極130及び内側電極140は、同軸に配置されている。
【0007】
外側電極板132は、エアシリンダ150により駆動される外側加圧軸131によって上下に移動可能であり、内側電極板142は、エアシリンダ160により駆動される内側加圧軸141によって上下に移動可能となっている。すなわち、外側電極板132及び内側電極板142は、基台170に対して相対的に移動可能であり、テーブル171の上に載置されるワーク部材に対して、外側電極130及び内側電極140を所定の力で押し付けることが可能である。
【0008】
この結果、基台170に固定されているトランス120から、基台170に対して移動する外側電極板132及び内側電極板142へ電力を供給するために、フレキシブルな給電部材を使用することが必要となる。この抵抗溶接装置110では、フレキシブルケーブル123、124を給電部材として使用している。その他、薄板を重ね合わせてフレキシブルに形成した「シャント」と呼ばれる給電部材も使用されている。
【0009】
しかしながら、このような給電構造は、長期の使用によって損傷し易く、外側加圧軸131及び内側加圧軸141へ安定した給電ができないという問題がある。また、抵抗溶接装置110全体の形状が大きくなり、コンパクトな構造に形成することが困難という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−239748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、スポット溶接等を行う抵抗溶接装置において、トランスから加圧軸へ電力を供給するための給電構造を改善することにより、長期間の使用においても損傷することなく、加圧軸へ安定して給電することができる抵抗溶接装置を提供することにある。また、抵抗溶接装置の全体形状をコンパクトに形成するとともに、軽量化や製作費の低減を図ることが可能な抵抗溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る抵抗溶接装置は、給電用のトランスを備える固定部分と、前記固定部分に固定される給電ハウジングと、前記給電ハウジング内に挿通され、前記給電ハウジングに対して軸方向に移動可能に形成され、前記固定部分に対して相対的に移動する加圧軸と、前記加圧軸の先端に取り付けられた電極を有するとともに、前記給電ハウジング内には前記加圧軸の一部を囲むリング状の溝が形成され、前記溝によって形成されるリング状の空間に、コイルスプリングを変形させて収納した抵抗溶接装置であって、前記溝の深さDが前記コイルスプリングの外径よりも小さく形成され、前記コイルスプリングの外周部を前記給電ハウジングと多数の点で接触させるとともに、前記コイルスプリングの内周部を前記加圧軸と多数の点で接触させ、前記給電ハウジングと前記加圧軸が、前記コイルスプリングを介して電気的に接続されている手段を採用している。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る抵抗溶接装置は、請求項1に記載の抵抗溶接装置において、前記給電ハウジング、前記加圧軸、前記電極、及び前記コイルスプリングからなる給電構造を2組備えてなる手段を採用している。また、本発明の請求項3に係る抵抗溶接装置は、請求項2に記載の抵抗溶接装置において、前記2つの加圧軸が、同軸に配置されてなる手段を採用している。さらに、本発明の請求項4に係る抵抗溶接装置は、請求項2又は3に記載の抵抗溶接装置において、前記2つの加圧軸の何れか一方が、スプリングにより付勢される手段を採用している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抵抗溶接装置は、上記の給電構造を採用したことにより、長期間の使用においても損傷することなく、加圧軸へ安定して給電することが可能である。また、抵抗溶接装置の全体形状が簡略化され、軽量化やコンパクトに形成することが可能である。また、製作する上でも、高精度の加工は必要とされず、製作費用の低減を図ることが可能である。そして、両側抵抗溶接においても、片側抵抗溶接においても広く応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の抵抗溶接装置の一例を示す概略全体側面図である。
図2図1の抵抗溶接装置の溶接機本体を示す概略断面図である。
図3イルスプリングの説明図であって、(a)は本発明におけるコイルスプリングの変形例を示し、(b)は変形前のコイルスプリングを示す。
図4】従来の抵抗溶接装置の一例を示す概略全体側面図である。
図5図4の抵抗溶接装置の溶接機本体を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の抵抗溶接装置の一例を図1に、その溶接機本体を図2に示す。この抵抗溶接装置10は、給電用のトランス20を備えるブラケット70を固定部分としている。ブラケット70には、外側給電ハウジング32及び内側給電ハウジング42が固定して取り付けられ、それぞれにトランス20から電力が供給される。
【0017】
トランス20は、2次側の端子21、22を備えている。そして、外側給電ハウジング32は、外側給電バー23を介して端子21に接続されている。内側給電ハウジング42は、内側給電バー24を介して端子22に接続されている。ここで、外側給電バー23及び内側給電バー24は、フレキシブルな給電部材を使用する必要はなく、銅棒等の剛体で形成することができる。
【0018】
外側給電ハウジング32には、外側加圧軸31が挿通され、外側加圧軸31の先端には外側電極30が取り付けられている。外側加圧軸31は、外側給電ハウジング32に対して軸方向に移動可能に形成され、スプリング50によって外側電極30の側に付勢されている。本発明は、外側給電ハウジング32から外側加圧軸31を経由して外側電極30に電力を供給するための給電構造を改善するものである。
【0019】
外側給電ハウジング32は、その内部に、挿入される外側加圧軸31の一部を囲むよう
に、リング状の溝35が形成され、この溝35の中に、変形されたコイルスプリング36が収納されている。溝35の幅Wと深さDの関係は、WがDよりも大きくなるように形成され、例えば、WがDの2倍程度になるように形成されている。また、コイルスプリング36の外径は、溝35の幅Wよりも少し大きく形成されている。このようにすることにより、コイルスプリング36は、溝35内において、外側給電ハウジング32と多数の点で接触することになる。
【0020】
変形されたコイルスプリング36の具体例を図3に示す。図3(b)は、通常のコイルスプリング37をドーナッツ状に形成したものである。この通常のコイルスプリング37の内周と外周に図3(b)に矢印で示すような反対向きの力を加えて、図3(a)に示すように変形させることができる。すなわち、コイルスプリング36は、内周と外周との間が狭くなるような力を加えて変形することができる。
【0021】
外側加圧軸31は、外側給電ハウジング32内に挿通されるとともに、コイルスプリング36と多数の点で接触するように形成されている。これにより、コイルスプリング36は、その外周部が外側給電ハウジング32と多数の点で接触し、その内周部が外側加圧軸31と多数の点で接触することになる。
【0022】
そして、外側給電ハウジング32及び外側加圧軸31は、変形されたコイルスプリング36により、各接触点でスプリングによる押圧力を受けることになる。したがって、外側給電ハウジング32と外側加圧軸31とが、コイルスプリング36を介して電気的に接続されることになる。
【0023】
このように、本発明の抵抗溶接装置10では、トランス20を備える固定部分から、これに対して相対的に移動する外側加圧軸31へ、簡単な構造によって電力供給を行うことが可能となる。この給電構造は、耐久性に優れ、長期間安定して使用することができる。また、外側給電ハウジング32及び外側加圧軸31を含む装置の形状をコンパクトに形成することができる。
【0024】
一方、内側給電ハウジング42には、内側加圧軸41が挿通され、内側加圧軸41の先端には内側電極40が取り付けられている。内側加圧軸41は、内側給電ハウジング42に対して軸方向に移動可能に形成され、エアシリンダ60によって内側電極40の側に付勢されている。そして、本発明は、内側給電ハウジング42から内側加圧軸41に電力を供給するための給電構造を改善することができる。
【0025】
内側給電ハウジング42は、シリンダヘッド43とカバー44で構成されている。そして、内側給電ハウジング42の内部には、挿入される内側加圧軸41の一部を囲むようにリング状の溝45が形成され、この溝45の中に、変形されたコイルスプリング46が収納されている。変形されたコイルスプリング46としては、図3(a)に示すものと同様のものを使用することができる。
【0026】
溝45の幅Wと深さDの関係は、WがDよりも大きくなるように形成され、例えば、WがDの2倍程度になるように形成されている。また、コイルスプリング46の外径は、溝45の幅Wよりも少し大きく形成される。このようにすることにより、コイルスプリング46は、溝45内において、内側給電ハウジング42と多数の点で接触することになる。
【0027】
内側加圧軸41は、内側給電ハウジング42内に挿通されるとともに、コイルスプリング46と多数の点で接触するように形成されている。これにより、コイルスプリング46は、その外周部が内側給電ハウジング42と多数の点で接触し、その内周部が内側加圧軸41と多数の点で接触することになる。
【0028】
そして、内側給電ハウジング42及び内側加圧軸41は、変形されたコイルスプリング46により、各接触点でスプリングによる押圧力を受けることになる。したがって、内側給電ハウジング42と内側加圧軸41とが、コイルスプリング46を介して電気的に接続されることになる。
【0029】
このように、本発明の抵抗溶接装置10では、トランス20を備える固定部分から、これに対して相対的に移動する内側加圧軸41へ、簡単な構造によって電力供給を行うことが可能となる。この給電構造は耐久性に優れ、長期間安定して使用することができる。また、内側給電ハウジング42及び内側加圧軸41を含む装置の形状をコンパクトに形成することができる。
【0030】
次に、外側加圧軸31及び内側加圧軸41の付勢について説明する。
外側加圧軸31は、スプリング50によって外側電極30の側に付勢されている。すなわち、固定部分である内側給電ハウジング42と外側加圧軸31との間に、スペーサー51を介してスプリング50が挿入され、内側給電ハウジング42と外側電極30とが相互に離間するように付勢している。このため、ブラケット70をワーク部材に近づけることにより、外側電極30とワーク部材との間に、適切な押圧力を加えることができる。
【0031】
内側加圧軸41は、エアシリンダ60によって内側電極40の側に付勢することができる。エアシリンダ60は、筒状のシリンダ61の一端を内側給電ハウジング42に固定して閉塞し、他端をエンドカバー62で閉塞して、内部にシリンダ室63を形成している。同時に、内側給電ハウジング42及びエンドカバー62を挿通して、内側加圧軸41が設けられている。
【0032】
内側加圧軸41にはピストン64が取り付けられている。また、シリンダ室63には、エア供給口65とエア排出口66が設けられている。したがって、エア供給口65から高圧の空気を供給することにより、内側加圧軸41を内側電極40の側に付勢することができる。なお、内側加圧軸41は、その内部を水で冷却する構造となっており、水供給口81及び水排出口82を備えている。
【0033】
溶接機本体11において、外側電極30及び内側電極40は電気的に絶縁されていることが必要である。図2において、絶縁カバー91、絶縁ブッシュ92、93等によって両電極は絶縁されている。
【0034】
以上、本発明の実施例として、2つの電極が同軸に配置され片側抵抗溶接を行う抵抗溶接装置10について説明した。そして、本発明が、抵抗溶接装置の給電構造に係ることを示した。したがって、本発明は、両側抵抗溶接(ダイレクト方式)を行う抵抗溶接装置や他の片側抵抗溶接(インダイレクト方式、シリーズ方式)を行う抵抗溶接装置においても広く応用可能である。
【0035】
そして、何れの場合においても、長期間に亘って安定して使用することが可能であり、抵抗溶接装置をコンパクトにして、軽量化することができる。したがって、ロボット用の抵抗溶接装置として最適であり、自動車産業等において広く使用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 抵抗溶接装置
20 トランス
30 外側電極
31 外側加圧軸
32 外側給電ハウジング
35 溝
36、46 イルスプリング
40 内側電極
41 内側加圧軸
42 内側給電ハウジング
45 溝
50 スプリン
図1
図2
図3
図4
図5