特許第5717320号(P5717320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717320
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】再剥離型粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20150423BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20150423BHJP
   C09J 123/16 20060101ALI20150423BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20150423BHJP
   C09J 109/06 20060101ALI20150423BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20150423BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J4/00
   C09J123/16
   C09J109/00
   C09J109/06
   C09J11/08
   C09J11/06
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-59979(P2009-59979)
(22)【出願日】2009年3月12日
(65)【公開番号】特開2010-209295(P2010-209295A)
(43)【公開日】2010年9月24日
【審査請求日】2011年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100075351
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 充
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】坂部 映好
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−078635(JP,A)
【文献】 特開平04−061947(JP,A)
【文献】 特開昭60−026079(JP,A)
【文献】 特開昭57−209976(JP,A)
【文献】 特開2001−226442(JP,A)
【文献】 特公昭56−232479(JP,B1)
【文献】 国際公開第2005/108491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00〜C09J201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その上に形成されたゲル分率が60%以上の粘着剤層を有する再剥離型粘着シートであって、前記粘着剤層が、(A)分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムと、(B)電子吸引基含有多官能モノマーと、(C)数平均分子量が15,000〜35,000の高分子可塑剤を含む未架橋ゴム材料層を、活性エネルギー線の照射により、架橋させてなるものであり、
(A)分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムが、ポリマー鎖中に不飽和結合を誘導するモノマーを0.01〜15モル%重合してなるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムであり、
(B)電子吸引基含有多官能モノマーが、(メタ)アクリル酸系多官能モノマーであり、
(C)高分子可塑剤が、液状イソプレン、液状ブタジエン・イソプレン又は液状スチレン・イソプレンであり、
未架橋ゴム材料層が、(A)分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴム100質量部に対して、(B)電子吸引基含有多官能モノマーを2〜30質量部、(C)高分子可塑剤を50〜250質量部の割合で含むことを特徴とする再剥離型粘着シート。
【請求項2】
活性エネルギー線が紫外線であって、未架橋ゴム材料層が、さらに光重合開始剤を含む、請求項に記載の再剥離型粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再剥離型粘着シートに関し、さらに詳しくは、分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴム、特にエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムを、ある種の多官能モノマー及び高分子可塑剤の存在下に活性エネルギー線を照射して架橋させてなる、耐熱性及び再剥離性に優れたゴム系粘着剤層を基材上に有する再剥離型粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴム系粘着剤は耐熱性に劣ることが知られている。これは、主ポリマーであるゴムが架橋していないためである。
従来、ゴムの架橋方法としては硫黄架橋、キノイド架橋、フェノール樹脂架橋等が知られているが、これらの方法は、高温で長時間の加熱が必要であって、粘着シートの製造においては生産効率に欠けるなどの問題がある。また、薄膜を作製する場合、高温による架橋方法では均一・均質な薄膜を得ることが困難である。
従来技術として、例えば(1)少なくともキノイド、有機過酸化物、アクリルモノマーの三者を共存させて架橋反応を行わせることを特徴とするブチルゴムの架橋方法(特許文献1参照)や、(2)有機過酸化物と、電子吸引基を含有する多官能性モノマーとの存在下で、かつ、キノイド又は硫黄よりなる他の架橋剤の非存在下で、未架橋ブチルゴムの架橋反応を行わせることを特徴とするブチルゴムの架橋方法(特許文献2参照)が開示されている。
しかしながら、これらの方法はいずれも高温加熱が必要であり、ゴム架橋体の薄膜製造には適さない。特に、ブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム等のオレフィン系ゴムは、架橋効率が低く、また架橋工程に長時間を要する。
また、ゴム系粘着剤の耐熱性を向上させるために、スチレン−イソプレン共重合体を使用する方法などがあるが、架橋構造を有しているわけではないのでまだ十分な耐熱性が得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−74934号公報
【特許文献2】特許第3197068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下になされたものであり、基材上に、耐熱性及び再剥離性に優れるゴム系粘着剤層を有する再剥離型粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
基材上に設けられた、分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムと、電子吸引基含有多官能モノマーと、高分子可塑剤とを含む未架橋ゴム材料層を、活性エネルギー線の照射により架橋させることにより、耐熱性及び再剥離性に優れるゴム系粘着剤層を有する再剥離型粘着シートが得られることを見出した。
そして、前記分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムのようなオレフィン系ゴムである場合に、特に有効であることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材と、その上に形成されたゲル分率が60%以上の粘着剤層を有する再剥離型粘着シートであって、前記粘着剤層が、(A)分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムと、(B)電子吸引基含有多官能モノマーと、(C)数平均分子量が15,000〜35,000の高分子可塑剤を含む未架橋ゴム材料層を、活性エネルギー線の照射により、架橋させてなるものであり、(A)分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムが、ポリマー鎖中に不飽和結合を誘導するモノマーを0.01〜15モル%重合してなるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムであり、(B)電子吸引基含有多官能モノマーが、(メタ)アクリル酸系多官能モノマーであり、(C)高分子可塑剤が、液状イソプレン、液状ブタジエン・イソプレン又は液状スチレン・イソプレンであり、未架橋ゴム材料層が、(A)分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴム100質量部に対して、(B)電子吸引基含有多官能モノマーを2〜30質量部、(C)高分子可塑剤を50〜250質量部の割合で含むことを特徴とする再剥離型粘着シート、
)活性エネルギー線が紫外線であって、未架橋ゴム材料層が、さらに光重合開始剤を含む、上記(1)項に記載の再剥離型粘着シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基材上に設けられた、分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムと、電子吸引基含有多官能モノマーと、高分子可塑剤とを含む未架橋ゴム材料層を、活性エネルギー線の照射により架橋させることにより、耐熱性及び再剥離性に優れるゴム系粘着剤層を有する再剥離型粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の再剥離型粘着シートは、基材と、その上に形成されたゲル分率が50%以上の粘着剤層を有する再剥離型粘着シートであって、前記粘着剤層が、(A)分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムと、(B)電子吸引基含有多官能モノマーと、(C)数平均分子量が3,000以上の高分子可塑剤を含む未架橋ゴム材料層を、活性エネルギー線の照射により、架橋させてなるものであることを特徴とする。
【0008】
[基材]
本発明の再剥離型粘着シートに用いられる基材は特には限定されないが、当該再剥離型粘着シートの使用目的に応じて適宜選定される。例えば上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等や、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の各種紙類、各種合成紙、アルミニウム箔や銅箔や鉄箔などの金属箔、不織布などの多孔質材料、並びにポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチックのフィルム、シート及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるプラスチックフィルム、シート等が挙げられる。プラスチックフィルム・シート等の基材シートは、未延伸でもよいし、縦又は横などの一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
【0009】
基材は、着色されていてもよいし、無色透明のものでもよい。また、粘着シートを印刷・印字の用途に使用する場合は、印刷、印字などを施してもよい。そのために、基材には、感熱記録層、熱転写、インクジェット、レーザー印字などが可能な印字受像層、印刷性向上層等が設けられてもよい。
また基材が、プラスチックの場合は、その上に設けられる粘着剤層との密着性を向上させるために、所望により酸化法や凹凸化法などの表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、特には限定されないが例えばコロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、特には限定されないが、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選定されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0010】
また、基材の種類によっては、基材と粘着剤層との間に、所望により目止め層を設けてもよい。この目止め層は、粘着剤の基材への浸透防止のほかに、基材と粘着剤層との密着性をさらに向上させる目的で、また基材が紙類で柔軟すぎる場合には、剛性を付与する目的で設けられる。このような目止め層としては、特には限定されないが例えは、スチレンーブタジエン共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを主成分として、必要に応じ、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛などのフィラーを添加したものなどからなる層が挙げられる。この目止め層の厚さは、特には制限されないが、通常0.1〜30μmの範囲である。
基材の厚みは、特に制限はされないが、通常10〜250μm程度である。
【0011】
[(A)分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴム]
本発明の再剥離型粘着シートにおいて、未架橋ゴム材料層の(A)成分として用いる分子内に飽和結合を有する未架橋ゴムは、特に制限されず、例えば天然ゴムやイソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDMゴム)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、クロロプレンゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。さらには上記スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の不完全水素添加物や、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の不完全水素添加物などを使用することもできる。これらの未架橋ゴムは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、分子内に不飽和結合を有する天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDMゴム、ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体が好ましい。
本発明においては、前記の未架橋ゴムとして、ポリマー鎖中に不飽和結合を誘導するモノマーを0.01〜20モル%程度重合してなる共重合体が好ましく、0.01〜15モル%程度重合してなる共重合体がより好ましい。具体的には、分子内に0.01〜20モル%程度の不飽和結合を有するブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDMゴム)などのオレフィン系ゴムが好ましく、特にEPDMゴムが好適である。
不飽和結合を誘導するモノマーとしては、例えばイソプレン、1,3−ブタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンが挙げられ、特にエチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタンが好適である。
【0012】
[(B)電子吸引基含有多官能モノマー]
本発明の再剥離型粘着シートにおいては、未架橋ゴム材料層の(B)成分として、電子吸引基含有多官能モノマーが用いられる。前記多官能モノマーにおける電子吸引基としては、例えば−NO2、−CN、−COR(Rはアルキル基を表す。以下において同じ)、−CONR2、−CONHR、−COOR等の基を挙げることができる。
前記電子吸引基は、多官能モノマーにおける官能基の炭素−炭素二重結合(以下官能性二重結合という)の近傍にあることが好ましく、特に、官能性二重結合を構成する炭素原子に直接結合していることが好ましい。
本発明で用いる電子吸引基含有多官能モノマーに特に制限はないが、入手性及び反応性などの観点から、(メタ)アクリル酸系多官能性モノマーが好ましい。
【0013】
((メタ)アクリル酸系多官能性モノマー)
(メタ)アクリル酸系多官能性モノマーとしては、例えば、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、プロピレンオキシド/エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。
本発明においては、これらの(メタ)アクリル酸系多官能性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明においては、前述した(A)成分の未架橋ゴムと、(B)成分の電子吸引基含有多官能モノマーとの使用割合に特に制限はなく、必要とする再剥離型粘着シートの性能、ブチルゴムやEPDMゴムなどの(A)成分との相溶性などを考慮して適宜選定すればよいが、通常、(A)成分の未架橋ゴム100質量部に対して、(B)成分の電子吸引基含有多官能モノマーは、0.5〜50質量部程度、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは2〜30質量部の割合で用いられる。
【0015】
[(C)高分子可塑剤]
本発明の再剥離型粘着シートにおいては、未架橋ゴム材料層の(C)成分として、数平均分子量が3,000以上の高分子可塑剤が用いられる。数平均分子量が3,000未満のものは、被着体へ移行してしまうなどの不具合が生じる。このような高分子可塑剤として、液状イソプレン、液状ブタジエン、液状ブタジエン・イソプレン、液状スチレン・ブタジエン、液状スチレン・イソプレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、液状テルペン、液状ロジン、パラフィン系オイルなどが挙げられ、特にこれらを水素添加したものが好ましいが、特には限定されない。また、ヒドロシリル化、カルボキシル化、メタクリレート化等の反応性官能基を有していてもいなくてもよい。数平均分子量としては15,000〜35,000のものが好ましい。本発明においては、当該高分子可塑剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明においては、当該(C)成分の高分子可塑剤は、前述した(A)成分の未架橋ゴム100質量部に対して、通常30〜300質量部程度、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは100〜200質量部の割合で用いられる。(C)成分の量が30質量部未満であると、(A)成分の未架橋ゴムを十分に可塑化することができず、貼付性などに劣り、一方300質量部を超えると被着体を汚染するおそれが生じ、再剥離性が得られにくくなる。
なお、上記高分子可塑剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0017】
[光重合開始剤]
本発明の再剥離型粘着シートにおいては、未架橋ゴム材料層を、活性エネルギー線の照射により架橋させて、ゴム系粘着剤層を形成させるが、前記活性エネルギー線としては、装置や生産性、経済性などの観点から、紫外線が好ましく用いられる。
活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合には、必要に応じ、光重合開始剤を用いることができる。なお、電子線を用いる場合には、光重合開始剤を用いる必要はない。
本発明において、用いることのできる光重合開始剤としては特に制限はなく、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)−ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、3−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0018】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記光重合開始剤には、例えばトリイソプロパノールアミンや、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノンなどの光重合開始助剤などを併用してもよい。
前記光重合開始剤の使用量は、固形分として、前述した(A)成分の未架橋ゴム100質量部(固形分)に対して、通常0.001〜30質量部、好ましくは0.01〜20質量部の範囲で選定される。光重合開始剤の使用量が0.001質量部未満では、十分な架橋を行うことができず、一方30質量部を超えると、紫外線照射時に(A)成分の未架橋ゴムの主骨格の分解が促進されたりする。
【0019】
[その他成分]
本発明の再剥離型粘着シートにおいては、未架橋ゴム材料層に、より良好な粘着性能を付与する目的で、必要に応じ、粘着付与剤を含有させることができる。
この粘着付与剤の種類に特に制限はなく、例えばロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂及びその水素化物、テルペンフェノール樹脂、クマロン・インデン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂及びその水素化物、スチレン又は置換スチレンの低分子量重合体などが挙げられる。この粘着付与剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該粘着付与剤の含有量は、再剥離型粘着シートの所望性能に応じて適宜選定すればよい。
この外、性能を低下させない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機・有機フィラー、着色剤、防腐剤、防錆剤などの従来公知の添加剤を適宜含有させることができる。
【0020】
[未架橋ゴム材料層形成用コーティング剤]
本発明においては、前述した(A)成分の未架橋ゴムと、(B)成分の電子吸引基含有多官能モノマーと、(C)成分の高分子可塑剤と、必要により用いられる光重合開始剤やその他添加成分を、所定の割合で含む、未架橋ゴム材料層形成用コーティング剤を調製する。なお、このコーティング剤の調製においては、無溶媒で行ってもよいし、必要に応じて適当な溶媒を適宜含有させることができる。
【0021】
[粘着シートの製造方法]
本発明の再剥離型粘着シートの製造方法は特に限定されない。例えば、前記未架橋ゴム材料層形成用コーティング剤を、無溶媒の場合には加熱により低粘度化し、ホットメルトにて基材の一方の面に塗布し、冷却固化して未架橋ゴム材料層を形成させる。また、当該コーティング剤が、溶媒で希釈されて液状である場合には、基材の一方の面に、従来公知の塗布手段、例えばナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、グラビアコーターなどにより塗布し、乾燥させることにより、未架橋ゴム材料層を形成させる。
前記未架橋材料層の厚さは特に制限はなく、通常1〜200μm、好ましくは10〜100μmである。
【0022】
本発明においては、このようにして基材上に形成された未架橋ゴム材料層に活性エネルギー線を照射して、該材料を架橋させ、ゴム系粘着剤層を形成させる。活性エネルギー線としては、前述したように紫外線が好ましく用いられる。紫外線は、高圧水銀ランプ、フュージョン製Hランプ、キセノンランプなどで得られる。この活性エネルギー線の照射量としては、例えば紫外線の場合には、光量で100〜5000mJ/cm2程度である。必要に応じ、未架橋ゴム材料層を保護するために、未架橋ゴム材料層上に剥離シートを貼付しておいてもよい。また、未架橋ゴム材料層形成用コーティング剤を剥離シート上に適宜の厚さで塗布し乾燥してから、基材を未架橋ゴム材料層に積層してもよい。
この活性エネルギー線は、未架橋ゴム材料層面に直接照射してもよいし、基材を透過させて照射してもよい。また、該未架橋ゴム材料層が後述の剥離シートを貼付している場合には、この剥離シートを介して照射してもよい。この場合、該基材や剥離シートは、活性エネルギー線の波長に対して、透過性を有することが好ましい。すなわち、エネルギー線として電子線を用いる場合は、不透明であってもよいし、エネルギー線として紫外線を用いる場合は、紫外線透過性を有することが好ましい。また、基材が、活性エネルギー線の波長に対して透過性を有する場合には、基材側から、活性エネルギー線を照射してもよい。
本発明においては、このような活性エネルギー線の照射によって、未架橋ゴム材料層は、ゲル分率が50%以上のゴム系粘着剤層を形成する。このゲル分率が50%以上あると、得られる粘着シートを剥離した場合、糊残りが生じにくく、再剥離性に優れ、かつ耐熱性の良好な粘着シートが得られる。好ましいゲル分率は60%以上である。なお、ゲル分率の測定方法については、後で詳述する。
【0023】
[剥離シート]
本発明の再剥離型粘着シートにおいては、このように形成されたゴム系粘着剤層の上に、所望により剥離シートを設けることができる。この剥離シートとしては、例えばグラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙、上質紙などの紙にポリエチレン樹脂などをラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィンなどのプラスチックフィルムに、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などの剥離剤を乾燥質量で0.1〜3g/m2程度になるように塗布し、熱硬化や紫外線硬化などによって剥離層を設けたものなどが挙げられる。この剥離層の厚さについては特に制限はないが、通常25〜200μmの範囲である。
【0024】
[再剥離型粘着シートの用途]
再剥離型粘着シートの具体的な用途としては、例えば繰り返して貼付することができるラベル用として、オフィスユース、商品等の物流管理ラベルなどがある。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られたゴム系粘着剤層及び粘着シートのゲル分率、粘着力及び保持力並びに再剥離性は、以下に示す方法に従って測定した。
<ゲル分率の測定方法>
1)SUS金網の質量を測定する。
2)再剥離型粘着シートをSUS金網ではさみこみ、質量を測定する。
3)トルエン中に23℃で120時間浸漬する。
4)金網付きテストピースを取り出し、真空下120℃、2時間乾燥し、乾燥後の質量を測定する。
5)下式よりゲル分率(%)を算出する。
(乾燥後の質量−金網質量)×100/(乾燥前の質量−金網質量)
<粘着力の測定方法>
粘着シートの粘着剤層面を、23℃、50%RH環境下でステンレス板に貼付し、24時間後に同環境下で、JIS Z 0237に準拠して、180°ピール試験を行い、粘着力を測定した。
<保持力の測定方法>
粘着シートの粘着剤層側を、ステンレス板に貼り付け面積が25mm×25mmになるように貼付し、40℃環境下で9.8Nの荷重をかけて、JIS Z 0237の保持力の測定法に準拠して、落下するまでの時間を測定した(最大70,000秒)。
<再剥離性>
粘着シートを23℃、50%RH環境下でメラミン塗装板に貼付し、30分間放置した。次に70℃雰囲気下に168時間促進を行った。その後、23℃、50%RH環境下に24時間放置したのち、同環境下で試験片を剥離し、剥離後のメラミン塗装板を目視にて下記の判定基準に従って、再剥離性を評価した。
A:貼付面積の2%未満に糊残りが見られる。
B:貼付面積の2%以上10%未満に糊残りが見られる。
C:貼付面積の10%以上に糊残りが見られる。
【0026】
実施例1
(1)未架橋ゴム材料層形成用コーティング剤の調製
(A)成分としてエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム[JSR社製、製品名「JSR EP43」、不飽和結合を誘導するモノマーの重合割合0.01モル%]100質量部(固形分)と、光重合開始剤としてベンゾフェノン[東京化成工業社製]6質量部(固型分)と、電子吸引基含有多官能モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「NKエステル A−TMPT」]10質量部と、高分子可塑剤として液状イソプレン樹脂[クラレ社製、商品名「クラプレンLIR−200」、数平均分子量:25,000]100質量部(固形分)と、希釈溶剤としてトルエンを固形分20質量%となるように添加し、混合して未架橋ゴム材料層形成用コーティング剤を調製した。
(2)粘着シートの作製
上記(1)で調製したコーティング剤を剥離シート[リンテック社製、商品名「SP−8LK2」]上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、90℃で1分間乾燥させて未架橋ゴム材料層を形成したのち、該材料層側の面から紫外線を照射した(光量200mJ/cm2)。その後厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わせて粘着シートを作製した。この粘着シートについてゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
【0027】
実施例2
実施例1において、高分子可塑剤を液状イソプレン樹脂[クラレ社製、商品名「クラプレンLIR−290」、数平均分子量:25,000]とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、粘着シートを作製した。この粘着シートについて、ゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
【0028】
実施例3
実施例1において、高分子可塑剤の添加量を90質量部(固形分)とし、粘着付与剤として脂環族飽和炭化水素樹脂[荒川化学工業社製、商品名「アルコン P−100」]を10質量部添加した以外は、実施例1と同様な操作を行い、粘着シートを作製した。この粘着シートについて、ゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
【0029】
実施例4
実施例1において、高分子可塑剤の添加量を70質量部(固形分)とし、粘着付与剤として脂環族飽和炭化水素樹脂[荒川化学工業社製、商品名「アルコン P−100」]を30質量部添加した以外は、実施例1と同様な操作を行い、粘着シートを作製した。この粘着シートについて、ゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
【0030】
比較例1
実施例1において、紫外線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、粘着シートを作製した。この粘着シートについて、ゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
【0031】
比較例2
実施例2において、紫外線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、粘着シートを作製した。この粘着シートについて、ゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
【0032】
比較例3
実施例3において、紫外線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、粘着シートを作製した。この粘着シートについて、ゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
【0033】
比較例4
実施例4において、紫外線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、粘着シートを作製した。この粘着シートについて、ゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
【0034】
比較例5
実施例1において、可塑剤として液状ポリブテン系樹脂[新日本石油社製、商品名「日石ポリブテンLV−25」、数平均分子量:390]を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、粘着シートを作製した。この粘着シートについて、ゲル分率、粘着力、保持力及び再剥離性を測定した。その結果を第2表に示す。
なお、前記実施例1〜4及び比較例1〜5の配合組成を第1表に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
[注]
A−1:エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム[JSR社製、商品名「JSR EP43」]
B−1:ベンゾフェノン[東京化成工業社製]
C−1:トリメチロールプロパントリアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「NKエステル A−TMPT」]
D−1:液状イソプレン樹脂[クラレ社製、商品名「クラプレンLIR−200」]
D−2:液状イソプレン樹脂[クラレ社製、商品名「クラプレンLIR−290」]
D−3:液状ポリブテン系樹脂[新日本石油社製、商品名「日石ポリブテンLV−25」]
E−1:脂環族飽和炭化水素樹脂[荒川化学工業社製、商品名「アルコン P−100」]
【0037】
【表2】
【0038】
第2表から分かるように、実施例1〜4で得られた本発明の粘着シートは、いずれもゲル分率が60%を超えており、保持力に優れると共に、適度の粘着力を有し、再剥離性はAランクで、優れている。
これに対し、比較例1〜5の粘着シートは、いずれもゲル分率が50%未満であり、保持力の測定において凝集破壊が生じている。また、粘着力の測定において、凝集破壊又は転着が生じ、再剥離性はCランクで悪い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の再剥離型粘着シートは、基材上に設けられた、分子内に不飽和結合を有する未架橋ゴムと、電子吸引基含有多官能モノマーと、高分子可塑剤とを含む未架橋ゴム材料層に、活性エネルギー線を照射することにより、ゴム系粘着剤層が形成されてなる、耐熱性及び再剥離性に優れる粘着シートである。