(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717341
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】複雑な形状の構成部分を表層被膜焼入れするための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C21D 1/09 20060101AFI20150423BHJP
B23K 26/352 20140101ALI20150423BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20150423BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20150423BHJP
C21D 1/10 20060101ALI20150423BHJP
C21D 1/34 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
C21D1/09 M
C21D1/09 F
B23K26/00 E
B23K26/06 A
B23K26/08 B
B23K26/08 K
C21D1/10 H
C21D1/34 U
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-533686(P2009-533686)
(86)(22)【出願日】2007年10月10日
(65)【公表番号】特表2010-507726(P2010-507726A)
(43)【公表日】2010年3月11日
(86)【国際出願番号】EP2007008787
(87)【国際公開番号】WO2008049513
(87)【国際公開日】20080502
【審査請求日】2009年8月24日
【審判番号】不服2013-24909(P2013-24909/J1)
【審判請求日】2013年12月18日
(31)【優先権主張番号】102006050799.1
(32)【優先日】2006年10月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ブレナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ボンス
(72)【発明者】
【氏名】フランク ティーツ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ザイフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハンヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン キューン
(72)【発明者】
【氏名】ウード カースンケ
【合議体】
【審判長】
木村 孔一
【審判官】
鈴木 正紀
【審判官】
井上 猛
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−130295(JP,A)
【文献】
特開平3−1882112(JP,A)
【文献】
特開2004−35953(JP,A)
【文献】
特開2004−84931(JP,A)
【文献】
特開2002−371319(JP,A)
【文献】
特開平4−247822(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複雑な形状の構成部分を複数のエネルギー作用領域を用いて表層被膜焼入れするための方法において、
前記エネルギー作用領域(2)は、互いに協同作動する運動装置(6)によって、空間的及び時間的に互いに分離された異なる軌道経路(5)に沿って案内され、
個別温度場(3)の重畳によって、構成部分(1)の互いに隣接する第1および第2機能面(21.1,21.2)全体にわたって一様な温度場(4)を形成し、該温度場内で、前記構成部分(1)の後の焼入れ領域(8)の各表面素子は少なくとも一回、所定のオーステナイト化温度間隔(ΔTa)に達し、かつ前記個別温度場(3.1乃至3.n(3))の最大温度(Tmaxn)間の時間間隔(Δtn)が、前記焼入れ領域の冷却段階中にマルテンサイトスタート温度(MS)を下回るのに必要な時間(Δtms)よりも短くなるように、第1および第2機能面(21.1,21.2)の各々が、第1および第2機能面(21.1,21.2)の稜縁部(27)に沿って、前記稜縁部(27)の角度αに応じて個別に表層被膜焼入れされることを特徴とする、複雑な形状の構成部分を表層被膜焼入れするための方法。
【請求項2】
前記各エネルギー作用領域(2)の出力密度分布(16)を、それぞれ個別に局所的な熱導出条件、並びに所定の焼入れ幅(19)及び焼入れ深さ(20)に適合させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個別温度場(3)の形成のためにレーザービームを用いる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記局所的な熱導出条件、並びに前記所定の焼入れ幅(19)及び前記焼入れ深さ(20)への前記出力密度分布(16)の適合を、焦点の部分的に合わせられたレーザービーム(17)の振動によって行い、該レーザービームの振動のための振動数を局所的に運動装置(6)の制御に基づき制御する請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記個別温度場(3)の形成のために誘導エネルギーを用いる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記局所的な熱導出条件、並びに前記所定の焼入れ幅(19)及び前記焼入れ深さ(20)への前記出力密度分布(16)の適合を、個別の誘導子(15)間の間隔又は重畳の調節と、前記構成部分(1)に対する個別の誘導子(15)の接続間隔の調節とのうちのいずれか少なくとも1つによって行い、前記運動装置(6)の運動プログラムによって実施する請求項1、2、又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記一様な温度場(4)を、レーザービーム及び誘導的に生ぜしめられた複数の出力密度分布を同時に作用させることによって形成する請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
複数の出力密度分布(16)の各々が互いに分離してそれぞれ第1および第2機能面(21.1,21.2)の部分面を含み、かつ該部分面の異なる長さの場合に個別の運動装置(6)の送り速度(22)を調節して、第1および第2機能面(21.1,21.2)の各々の前記個別温度場(3)が一致点の到達時にΔtn<Δtmsの時間間隔を有しているように、複数の出力密度分布(16)を調節する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
複雑な形状の構成部分を複数のエネルギー形成ユニットを用いて表層被膜焼入れするための装置において、
前記エネルギー形成ユニット(9)は、光学的若しくは電磁的なビームのための単数若しくは複数のエネルギー源に接続されていて、かつそれぞれ個別に、互いに分離されているものの協同作動する第1及び第2の運動装置(6.1,6.2)に取り付けられており、
第1及び第2の運動装置(6.1,6.2)は、互いに隣接する第1および第2機能面(21.1,21.2)の各々が、第1および第2機能面(21.1,21.2)の稜縁部(27)に沿って前記稜縁部(27)の角度αに応じて個別に表層被膜焼入れされるように、それぞれが動くことにより、個別温度場(3)の重畳によって、第1および第2機能面(21.1,21.2)全体にわたって一様な温度場(4)を形成し、該温度場内で、前記構成部分(1)の後の焼入れ領域(8)の各表面素子は少なくとも一回、所定のオーステナイト化温度間隔(ΔTa)に達し、かつ前記個別温度場(3.1乃至3.n(3))の最大温度(Tmaxn)間の時間間隔(Δtn)が、前記焼入れ領域の冷却段階中にマルテンサイトスタート温度(MS)を下回るのに必要な時間(Δtms)よりも短くなることを特徴とする、複雑な形状の構成部分を表層被膜焼入れするための装置。
【請求項10】
前記光学的なビームのためのエネルギー源はレーザーである請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記レーザーは光導波路用ファイバー(13)を用いてそれぞれ前記単数若しくは複数のエネルギー形成ユニット(9)に接続されている請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記エネルギー源は、ファイバーによって接続された高出力ダイオードレーザーである請求項9から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記エネルギー形成ユニット(9)はレーザービームスキャナー(24)を含んでいて、前記運動装置の制御ユニットに接続されている請求項9から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記電磁的なビームのためのエネルギー源は誘導発電機によって形成されており、磁場形成ユニット(9)は誘導子(15)によって形成されている請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記エネルギー源は、レーザー並びに誘導発電機によって形成されている請求項9又は10又は14に記載の装置。
【請求項16】
協同作動する第1及び第2の運動装置(6.1,6.2)として第1及び第2のロボット(18.1,18.2)を設けてある請求項9に記載の装置。
【請求項17】
前記装置が、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法の実施のために用いられている請求項9から16のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部分、設備部分、装置部分若しくは器具又は工具の表層被膜焼入れに関する。このような対象物は、負荷又は荷重若しくは摩擦を強く受ける構成部分であり、該構成部分(構成部品)は、焼入れ可能な鋼から成っていて、三次元の複雑な形状を有しており、構成部分の表面の、所定の機能(若しくは作用)を有する機能面は焼入れされねばならない。特に本発明は次のような構成部分に用いられ、つまり、機能面の幾何学形状が構成部分に沿って三次元で変化するものに用いられる。このような構成部分は、例えば大型工具、自動車車体製造用の切断工具、トリミング工具及びプレス金型、若しくは蒸気タービンの低圧部のタービン翼、カムプレートや、工作機械の機械ベッド等である。さらなる使用例は、幾何学形状の複雑な構成部分の局所的な熱処理、例えば表層被膜焼入れ、表層被膜溶体化焼なまし、表層被膜焼戻しや表層被膜調質である。
【0002】
表層被膜焼入れは、鋼から成る構成部分の耐摩耗性及び耐振動性を高めるために用いられている公知技術である。エネルギー源として、出力密度の増大に伴ってかつに三次元性に応じて、火炎、誘導エネルギー、電子ビーム及びレーザービームを用いるようになっている。例えば切断工具若しくは変形加工工具又はプレス金型のように、焼入れすべき機能面は多くの場合に、互いに所定の角度で交わる、つまり突き当たる2つの面である。このような場合に、両方の面は有利には、いわゆる焼もどし領域の発生を避けるために同時に焼入れされる。焼もどし領域は、温度場によって前に形成された焼入れ部のオーステナイト変態の開始の高さまで再び加熱することにより生じて、痕跡として残ることになり、耐摩耗性及び耐疲労強度を著しく低下させることになる。
【0003】
焼もどし領域の発生を避けるために誘導焼入れの場合には、相応に成形された誘導子、いわゆる二面形・誘導子を用いるようになっており、該誘導子の輪郭は互いに交わる面の幾何学形状に相対して形成されている。二次元の平らな構成部分のために、セグメント化された複数構造形の誘導子を用いることも公知であり(M. Botts" Leichtere Automobile durch Laserstrahlschweissn", in: Informationsdienst Wissehschaft, 28.09.2006、参照)、該誘導子は二次元形状の構成部分上の湾曲軌道に沿って移動するようになっている。このような湾曲の焼入れも平らな構成部分でのみ可能である。この場合に誘導子は構成部分上のマトリックスを用いて機械的に案内されるようになっている。
【0004】
レーザー焼入れの場合に公知のビームユニットは、2つのレーザービームスキャニングシステムを備えて大きな柔軟性を有するように形成されている(M. Seifert, B. Brenner, F. Tietz, E. Beyer: "Pioneering laser scanning system for hardening of turbine blades" in: Conference proceedings "International Congress on Applications of Laser and Electro-Optics", San Diego, California, USA, 15.-18.11.1999. vol. 87f, p, 1-10、参照)。前記システムは、CO
2-レーザーのレーザービームのためのビーム分配レンズ、放物線状に湾曲された2つの焦点ミラー、及びビーム通路内に配置された2つのレーザービームスキャニングシステムから成っている。ビーム分配ミラーの位置の調節、ビーム分配ミラー間、焦点ミラー間、スキャニングミラー間の間隔の調節、並びにスキャニング角度の調節によって、ビーム放射角並びにビーム寸法(幅及び長さ)を予め調節するようになっている。これによって、構成部分が、互いに例えば約10°乃至80°の所定の角度αで交わる2つの機能面を同時に焼入れされうるようになっている。この場合には欠点として、焼入れすべき面の角度α若しくは形が両方の機能面間の稜線縁部(エッジ)に沿って変化するような構成部分を焼入れすることはできない。このような構成部分は、タービン翼や、三次元に湾曲する切刃若しくはエッジを有する切断工具等である。この場合には、前記欠点の原因はエネルギー形成ユニットの形状、ひいては出力密度分布を処理過程中に両方の機能面に適合させることができないことにある。
【0005】
本発明の目的は、機能面が複雑に形成された構成部分を、焼もどし領域の発生なしに所定の条件に適合して焼入れできる融通性のある新規な方法及び装置を提供することにある。特に前記方法及び装置は、隣接する2つの機能面間に画定された稜縁部が三次元に延びかつ又は隣接する2つの機能面間の角度αが稜縁部に沿って変化する構成部分の表層被膜焼入れのために適しているようにしたい。
【0006】
本発明の課題は、本発明に基づく方法及び装置が、所定の温度場若しくは加熱作用領域を任意に、つまり柔軟に調節できて、処理中に、機能面間の三次元に湾曲された稜縁部に沿って局所的な熱排出条件、局所的な摩擦条件及び荷重条件、並びに形状変化に適合できるようにすることである。
【0007】
請求項1及び9に記載の本発明の有利な実施態様を、従属請求項の請求項2乃至8若しくは請求項10乃至17に記載してあり、この場合に括弧内の符号は、指数を省略して記載してある。
【0008】
請求項1に記載の本願発明に基づく方法において、構成部分の機能面全体にわたって延びていてかつ焼もどし領域(焼もどし区域)を生ぜしめることなしに均質に焼入れされた表層被膜の形成のために、該表層被膜を、最適なエネルギー形成ユニットによって形成された複数のエネルギー作用領域で、互いに空間的及び時間的に互いに分離された異なる各軌道経路に沿って機能面にわたって案内するようになっており、このことは、互いに協同作動する複数の運動装置によって行われる。運動装置(運動システム若しくは移動案内装置)としてロボット、NC-制御可能若しくはCNC-制御可能、機械式若しくは液圧式に制御可能な装置を単独に若しくは組み合わせて用いることができる。各運動装置を案内する個別の軌道経路は、個別のエネルギー作用領域によって形成された温度場を重畳(オーバーラップ)するように形成されており、複数の各エネルギー作用領域は、互いに協同作動する各運動装置によって、空間的及び時間的に互いに分離された異なる各軌道経路に沿って案内され、複数の個別温度場の重畳によって、構成部分の機能面全体にわたって延びる一様な温度場を形成し、該温度場内で、構成部分の後の焼入れ領域の各表面素子若しくは表面要素は少なくとも一回、選ばれたオーステナイト化温度間隔(ΔT
a)を達成するようになっている。このことは個別のエネルギー作用領域にとって同時に行われる必要はなく、隣接のエネルギー作用領域の各最大温度(T
maxn)の達成のための時間差(Δt
ms)内で行われてよく、時間差は前もって形成された個別温度場の区域をマルテンサイトスタート温度まで冷却する時間よりも短くなっている。
【0009】
熱排出若しくは熱放出の条件及び全焼入れ領域の焼入れ深さ及び幅に対する要求は複雑な形状の構成部分若しくは機能区域において多くの箇所で変化しているので、請求項2の実施態様では、個別の各焼入れ領域の出力密度分布は一定ではなく、焼入れプロセス中に局所的な要求に基づき選ばれ、つまり、各エネルギー作用領域の出力密度分布を、それぞれ個別に局所的な熱導出条件、並びに所定の焼入れ幅及び焼入れ深さに適合させるようになっている。
【0010】
焼入れ領域の全幅にわたる所定の一様なオーステナイト化温度間隔(ΔT
a)の達成は、個別温度場の空間的及び時間的に最適な重畳のほかに、個別のエネルギー作用領域内で出力密度が十分に高く出力密度分布が調節可能である適切に制御可能であるエネルギー源を用いて行われる。したがって有利には、温度場の形成のためにエネルギー源としてレーザービーム、若しくは誘導場又は誘導エネルギーを用いるようになっている。
【0011】
局所的な熱導出条件、並びに所定の焼入れ幅及び前記焼入れ深さへの出力密度分布の適合は、焦点が部分的に合わせられたレーザービームの振動によって行われ、レーザービームの振動のための振動数は局所的な条件に依存して運動装置の制御に基づき制御される。非同期の振動数を用いることによって、エネルギー作用領域の送り方向に対して横方向に非対称の出力密度分布を調節することも可能である。このことは、機能面がエッジ若しくは切刃に沿って延びている場合に有利である。
【0012】
熱エネルギーを誘導エネルギーによって形成する場合には、局所的な熱導出条件、並びに前記所定の焼入れ幅及び前記焼入れ深さへの出力密度分布の適合は、個別の誘導子間の間隔又は重畳の調節、及び又は構成部分に対する個別の誘導子の接続間隔(構成部分と誘導子との間の間隔)の調節によって行われ、運動装置の運動プログラムによって実施される。
【0013】
大きな機能面を有する構成部分のためには、同一の焼入れ領域に一様な温度場を、レーザービームと誘導的に生ぜしめられた複数の出力密度分布若しくは誘導加熱場とを同時に作用させることによって形成するようになっている。互いに異なる複数のエネルギー源の使用は、レーザービームの使用が不経済である場合、若しくは誘導子が湾曲した機能面に接近しにくい場合にゆうりである。
【0014】
空間的に分離して配置され若しくは分岐する複数の機能面の場合に、複数の出力密度分布を調節し、該各出力密度分布は、互いに分離してそれぞれ機能面の、孔や凹設部若しくは溝等によって中断された部分面を加熱するようになっており、かつ該部分面の異なる長さの場合に個別の送り速度を調節して、各機能面の個別温度場が一致点の到達時にΔt
n<Δt
msの時間間隔を有している。
【0015】
複雑な形状の構成部分を複数のエネルギー形成ユニットを用いて表層被膜焼入れするための装置において、エネルギー形成ユニットは、光学的なビーム又は光ビーム若しくは電磁的なビーム又は電磁ビームのための単数若しくは複数のエネルギー源に接続されていて、かつそれぞれ個別に、互いに分離されているものの協同作動する各運動装置に取り付けられ、例えばフランジ結合されている。
【0016】
光学的なビームのためのエネルギー源はレーザーによって形成されている。レーザーは光導波路用ファイバーを用いてそれぞれ単数若しくは複数のエネルギー形成ユニットに接続されている。別の実施態様では、エネルギー源は、エネルギー形成ユニットにファイバーによって接続された高出力ダイオードレーザーによって結合されている。エネルギー形成ユニットはレーザービームスキャナーを含んでいて、運動装置の制御ユニットに接続されている。
【0017】
別の実施態様では、電磁的なビームのためのエネルギー源は誘導発電機によって形成されており、磁場形成ユニットは誘導子によって形成されている。エネルギー源は、有利な実施態様ではレーザー及び誘導発電機によって形成されている。協同作動する運動装置としてロボットを設けてある。本発明に基づく装置は、本発明に基づく前記の方法の実施のために有利に用いられるものである。
【0018】
本発明は表層被膜焼入れに限定されるものではなく、局所的な焼もどし若しくは溶体化焼なましを行うことも可能である。オーステナイト化温度間隔(ΔT
a)を短時間焼なまし若しくは表層被膜溶体化焼なましのための温度間隔によって代替することも可能である。短時間焼なましのために、時間差Δt
msはΔt
180によって代替される。
【0019】
次に本発明を図示の実施例に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】切断工具の三次元方向に延びる切刃エッジの表層被膜焼入れのための本発明に基づく構成を示す図である。
【
図2】協同作動式の2つのロボットを備えた焼入れ装置を示す斜視図である。
【
図3】ファイバー接続された2つの高出力ダイオードレーザーを用いて圧縮可動翼の先行縁部の焼入れのための焼入れ領域及び出力密度分布を示す図である。
【
図4】互いに交わる2つの機能面間の変化する角度αを有する工具縁部の焼入れのための焼入れ領域及び誘導子を示す図である。
【
図5】転がり支承部の球体用の加工成形された案内軌道を有するスピンドルの焼入れのための装置を示す図である。
【0021】
例1: 切断工具(
図1のa、参照)は、所定の条件に適合して、従来技術よりも少ない誤差で表層被膜焼入れするようになっている。同時に高い耐摩耗性を達成したい。切削工具は、鋼X155CrMoV12.1から成っていて、標準的に調質された状態で300HVの硬さを有している。両方の機能面間の角度αは約85°である。図面には、所定の条件に適合した焼入れのために、切刃エッジに隣接する両方の面を焼入れすることが示してある。しかしながら、切刃エッジの脆性破損を避けるために、エッジは無心焼き入れされてはならない。
【0022】
上記面の条件に適合した誘導加熱焼き入れ若しくはレーザー焼き入れは容易に達成されるものではない。1つの成形誘導子による誘導加熱焼入れによっては、一方若しくは両方の個別焼入れ領域24.1,24.2の曲率の大きい部分(範囲)での最適な焼入れは不可能である。従来の誘導加熱焼入れでは、機能面24.1,24.2は順次に焼入れされねばならない。この場合には
図1のaに示してあるように、個別焼入れ領域24.1の再焼もどしによって焼もどし領域28を生ぜしめてしまうことになり、焼もどし領域では表層被膜焼入れ硬さは、約800HVから約420HVに低下している。結果的に耐摩耗性の十分な改善を達成できない。変化例のレーザー焼入れでは、構成部分はレーザービームに対して次のように位置決めされ、つまりレーザービームは両方の機能面に対して対称的に当てられ、稜縁部27に沿って移動させられ、送り方向に対して垂直にスキャニングされるようになっている。このようなレーザー焼入れにおいても、稜縁部が1つの面若しくは複数の面で強く湾曲する領域をも最適に焼入れすることは不可能であり、かつ焼入れ領域の全表面にわたって一様なオーステナイト化温度を保証することは極めて困難である。
【0023】
前記課題を解決するための本発明の構成では、2つのレーザービーム17.1,17.2を用いており、レーザービームは、ファイバー接続された2つの高出力ダイオードレーザ
ーによって発生させられるようになっている。両方のレーザービームはそれぞれ1つの光導波路用ファイバー13.1,13.2を介して各ビーム成形ユニット9.1,9.2内に導入されるようになっている。運動機械のプログラムに基づき制御可能なレーザービームスキャナー14.1,14.2を用いて、構成部分の面は送り方向に対して垂直方向にスキャニングされる。レーザービームスキャナー14.1,14.2の鏡面対称の揺動運動は、焼入れ箇所に依存した振動数で制御される。これによって、両方の各個別焼入れ領域24.1,24.2にとって互いに分離して、つまり互いに個別に最適に適合された出力密度分布16.1,16.2を達成している。両方の運動装置6.1,6.2は、スキャニングされる両方のレーザービーム17.1,17.2の光軸29.1,29.2が、両方のエネルギー作用領域2.1,2.2の表面に対して垂直に、若しくはほぼ垂直に位置し、かつそれぞれ両方の機能面の稜縁部27に対して1/2b
1,1/2b
2の距離を有するようにプログラミングされる。互いに異なる運動過程の実施のために、両方の運動装置6.1,6.2はそれぞれ全く異なる軌道経路に沿って運動するようになっている。出力密度分布16.1,16.2は、稜縁部(エッジ)の近傍及び稜縁部27の湾曲部において小さい熱排出若しくは熱導出を補償して、焼入れすべき機能表面21
.1,21.2に対して横方向に一定の表面硬さを生ぜしめるように調節されている。必要な焼入れ深さ若しくは焼入れ深さt
1,t
2は、エネルギー作用時間によって規定され、送り方向でのレーザービーム部の長さによって最適に調節されるようになっている。表面温度は、両方のレーザ
ーの出力の温度調節によって一定に保たれるようになっている。温度場の算出、ワーク試料のテスト若しくはノモグラムから両方のレーザービームの必要な目標送り速度は求められる。両方のレーザービーム17.1,17.2のうちの一方を比較的に大きな距離にわたって進める箇所では、焦点距離は大きくされ、かつレーザー出力は高められる。その結果、温度場3.1の最大温度の達成時と温度場3.2の最大温度の達成時との間の時間差Δt
nは、最大温度の達成時とマルテンサイトスタート温度MSの開始時との間の時間差Δt
msよりも小さくなっている。これによって、明確な焼き戻し領域が避けられるようになっている。作用効果として、800HVの一定の硬さを有していて焼き戻し部分のない要求に適った、つまり所定の条件に適合して均一に焼入れされた焼入れ領域8を達成できるようになっている。
【0024】
例2: 例1で述べた手段を技術的に実施するために、請求項9及び16に記載してありかつ
図2に示してあるような装置が用いられる。両方の運動装置6.1,6.2は互いに同一の構造で形成されている。両方の運動装置(運動システム若しくは運動器具)は互いに協同して作動するようになっており、つまり、両方の運動装置は互いに接続されていて、互いに幾何学形状及び時間的に同調して移動するようになっている。両方の器具はいわば同期的に運動して、各ロボットの運動軌道経路に左右されることなしに次の終点に常に同時に達するようになっている。相互の位置関係は維持若しくは固定されるようになっており、空間における第1の運動装置の器具位置の変化は第2の運動装置によって自動的に補償されるようになっており、これによって調整過程は簡単になっている。
【0025】
両方の運動装置間に別個の回転軸30を配置してあり、回転軸はロボット18.1に対応配置されている。両方のロボット18.1,18.2のアームにそれぞれビーム形成ユニット9.1,9.1を取り付けてあり、各ビーム形成ユニットは、それぞれ導波体ファイバー13.1,132を有しており、各導波体ファイバーは可撓性のCFK-ロッドを介して不都合に折れ曲がることなしにロボット18.1,18.2の運動に追随するようになっている。両方のビーム形成ユニット9.1,9.1は、それぞれ視準モジュール及び焦点モジュールを含んでいる。焦点モジュールの後にレーザービームスキャナー14.1,14.2を配置してある。レーザービームスキャナーと焦点モジュールとの間に、斜めに形成された半透明のミラーを配置してあり、ミラーはレーザービームを透過させるようになっている。構成部分1によって発生された熱ビーム(熱放射)は、反射されて高温計に向けられ、高温計は温度調節のための入力信号を供給するようになっている。焼入れすべき構成部分1は、ワーク緊定装置に取り付けられており、ワーク緊定装置は回転軸30のチャックに配置されている。機能面21,21.2の表層被膜焼入れのために、構成部分は有利には稜縁部27を上に向けるように回動させられる。ロボット18.1は次のようにプログラミングされており、つまり該ロボットは、機能面21.1のための軌道経路に沿って運動するようになっている(構成部分用座標系内でx・軸及びy・軸内での運動)。ロボット18.2は、機能面21.2に沿った別の軌道経路を運動するようになっている構成部分用座標系内でx・軸、y・軸、及びz・軸内での運動、並びにC・軸を中心とした回転運動)。目標送り速度を有する両方のロボット軌道のプログラムにおいて、両方の軌道経路のどの箇所でも同一時間のずれΔt
1が最大温度T
max1,2とマルテンサイトスタート温度MSとの間の冷却時間Δt
msよりも大きくない場合に、プログラムはそのまま用いられる。これとは逆に、Δt
ms>Δt
max1,2との構成部分箇所では、両方の送り速度22.1,22.2は局所的にΔt
ms<Δt
max1,2の条件を達成するようにプログラムの変更によって調節される。このような制御を行うプログラム区分では、補償のためにレーザービームの焦点及びレーザー出力は変化されるようになっている。
【0026】
例3: 浸食作用による摩耗に対する耐摩耗性を強く要求されるタービン翼(
図3a参照)は、翼先行縁部の要求に適した保護層を有しているようにしたい。粒子は翼先行縁部にほぼ垂直に当たる。タービン翼は鋼X20Cr13 から成っていて、極めて強靭な組織状態を得るために230HVの硬さに調質されている。このように大きく焼き戻しされた状態は、液滴衝突に対する耐磨耗性を保証するためには適していない。知られているように、レーザー焼入れは、液滴衝突摩耗に対する耐磨耗性を著しく高めるために極めて適しているものである。翼尖端は、高い周期的な負荷及び応力亀裂のおそれに基づき無心焼入れされ得ないものである。焼入れ領域8を要求される所定の条件で成形するために、焼入れ領域は、翼ブレード成形面に適合されたキャップ形状を有していなければならない。
【0027】
焼入れすべき両方の機能面21.1,21.2の交わりの線分によって画定(画成)された稜縁部27に沿って、翼ブレードのねじれ、翼ブレード厚さ(
図3のb、c及びd)、翼先行縁部の幾何学形状並びにキャップ状(フード状)の焼入れすべき焼入れ領域8の目標輪郭は変化している。横断面A−A(Schnitt A - A)で、キャップ形状は対称的に形成され、稜縁部27の近傍で完全焼入れ部の比較的大きな幅を有しているようにしたい。横断面C−C(Schnitt C - C)で、目標焼入れ深さは比較的に小さく、焼入れ領域8は表面の推移若しくは経過により適合されている。このような構成及び焼入れ領域形状の推移を達成するために、レーザー焼入れ中に複数のパラメータを変化させなければならない:両方のレーザービーム17.1,17.2のスキャニング幅、出力密度分布16.1,16.2、両方のレーザービーム17.1,17.2の相互の傾き(角度β)及び翼表面に対する傾き、レーザービーム17.1,17.2の作用時間、レーザー出力、並びに送り速度22.1,22.2である。さらに運動装置6.2の軌道経路は、翼横断面の非対称に基づき運動装置6.1の軌道経路に対して鏡面対称には形成されない。このような理由から、1つの運動装置(運動システム)を用いた従来技術の焼入れは不都合である。
【0028】
最適な幾何学形状の焼入れ領域を達成するために、本発明に基づき互いに分離されて、つまり互いに独立して調節可能でしかも協同して作動する2つの運動装置6.1,6.2を用いるようになっている。有利な構成は例2で示してあり、構成を実施するための装置はタービン翼の先行縁部(先行エッジ)の焼入れのために極めて良好に用いられるものである。
【0029】
焼入れ部は極めて複雑であり、パラメータ調節のための多くの自由度があるので、十分な数の翼ブレード形状のための良好な出力密度分布は、FEM-温度場シミュレータを介して算出される。別個のプログラムを用いて、所望の出力密度分布に基づき、振動振幅とレーザービームのビーム直径との選ばれた比のためにレーザービームの必要な振動数を求めるようになっている。プログラムにおけるタッチにより、両方のレーザービーム17.1,17.2と翼ブレード中心線との間の傾き角度、ひいては両方のレーザービームの光軸間の角度βを与えるようになっている。次いで、両方のロボット18.1,18.2の運動プログラムが処理される。与えられたパラメータにおける必要なレーザー出力は、ワーク試験片における試験焼入れに基づき算出される。
【0030】
すべてのパラメータの入力及び温度調節装置の校正の後に焼入れプロセスが開始される。これによって、翼先行縁部に沿って焼入れ領域8が所定の特性でキャップ形に形成され、タービン翼の耐磨耗性と振動強度との間の最適な比を可能にしている。焼入れ領域8は機能面21.1,21.2内の全ビーム作用跡幅、つまり焼入れ幅にわたって一様な表面硬さを有している。さらに、最適に調節されたマルテンサイト形成温度及び大きな冷却速度によりかつ無心焼入れを避けることに基づき鋼の焼入れ特性を完全に利用できるようになっている。
【0031】
例4:稜縁部27を有していて、稜縁部の横断面の角度αが稜縁部に沿って変化する変形加工用工具(
図4のa乃至d)は、誘導加熱焼入れされる。該誘導加熱焼入れは1つの誘導体若しくは誘導子及び唯一の運動装置では不可能である。本発明に基づく手段では、第1の誘導子15.1は運動装置6.1に結合され、第2の誘導子15.2は運動装置6.2に結合されている。誘導子15.1,15.2は、互いに異なる焼入れ幅b
1,b
2並びに互いに異なる焼入れ深さt
1,t
2に対応して互いに異なって形成されている。
【0032】
稜縁部27に近づくに伴って、熱導出は低下し、直接に稜縁部27では過熱が生じてしまう。これに対処して、誘導子下面は、所定の機能、例えば変形加工の加工機能若しくは成形機能を有す機能面の表面に対して平行に配置されるのではなく、稜縁部27の側で機能面の表面に対して大きな間隔(接続間隔)を有するように傾けて配置されている。誘導子端部と稜縁部27との間の実験で規定された間隔を設定するようになっている。これらのことは両方の誘導子にとって同様に行われる。焼入れ軌道(
図4のb,c,dの横断面A−A、横断面B−B及び横断面C−C、参照)に沿って、両方の機能面間の角度αの増大に伴って、機能面の表面に対する誘導子下面の傾き並びに誘導子端部(誘導子下面)と稜縁部との間の間隔は減少される。このような両方の補正運動は、構成部分のCAD-データから生ぜしめられた運動プログラムに重畳される。必要な運動過程は、例2で示してある構成を用いて、互いに分離された運動装置によって生ぜしめられる。両方の誘導子間の時間的な間隔も重要なファクターである。一面において誘導子は互いに近づきすぎないようにしてあり、それというのは両方の誘導場が互いに影響を及ぼさないようにしてあり、他方において、焼き戻し領域の形成を避けるために間隔は過度に大きくされないようになっている。したがって最良の熱導出(最大の角度α)の箇所で冷却速度は測定され、これによって両方の誘導子間の間隔は規定される。別の条件として外部からの急冷であり、ウオーターシャワーはマルテンサイトスタート温度MSを下回る前に行われる。
【0033】
本発明の装置の利点は次の点にあり、つまり、
複雑な形状の多くの構成部品が極めて経済的な誘導加熱焼入れによって焼き戻しなしに処理され、
誘導加熱焼入れ装置の柔軟性が増大し、
複雑な形状の構成部品が所定の条件に適合して焼入れされ、
構成部品に柔軟に適合された焼入れ領域の幾何学形状、焼入れ幅及び焼入れ深さが誘導子間の相対間隔の調節によって達成される。
【0034】
例5: 円形の横断面、長手方向案内33及び、円筒外周面32に斜めに配置された球体転動軌道34を有する案内スピンドル31は、
図5に示してあるように複雑に表層被膜焼入れされる。案内スピンドルは玉軸受鋼100Cr6から製造されている。球体転動軌道34は、球体と球体転動軌道との間の接触角を増大するために円形の横断面を有している。耐亀裂性を高めかつ軟らかい焼き戻し領域を避けるために、円筒外周面32、長手方向案内33及び球体転動軌道34の順次に互いに分離して行われる焼入れは許されない。このような課題を解決するために、構成部分若しくは構成部品の焼入れすべき全表面が送りの際の一様な温度場4を用いて焼入れされる。一様な温度場4は、個別の2つの温度場3.1,3.2を本発明に基づき協同して時間的及び空間的に重畳することによって形成され、個別の温度場は請求項15に記載の実施態様ではエネルギー
源としてのレーザ
ー並びにエネルギー
源としての誘導発電
機によって生ぜしめられる。この場合に誘導子15.1は円筒外周面32及び長手方向案内33を焼入れするのに対して、レーザービーム17.1は球体転動軌道34を焼入れするようになっている。このために誘導子15.1は、円筒外周面32及び長手方向案内33の両方の側面を取り囲むように成形された成形誘導子として形成されている。これに対して、レーザービーム17.1は球体転動軌道34の焼入れのために用いられる。さらにレーザービームスキャナー14.1を用いてあり、レーザービームスキャナーはレーザービームをその送り方向に対して垂直にスキャニングするようになっている。
【0035】
運動装置6.1は簡単な液圧式の軸から成っており、該軸によって極めて長い案内スピンドル31が誘導子15.1を通して一定の送り速度で移動させられるようになっている。運動装置6.2はNC-軸若しくはCNC-軸であり、該軸によりビーム形成ユニット9.2が円形軌道状の軌道経路5.2に沿って移動させられるようになっている。手動の調節部材は、レーザービーム17.1と誘導子15.1との間の相対位置の調節に用いられる。
【0036】
運動装置6.2内でのビーム形成ユニット9.2の運動方向及び運動速度22.2は、誘導子15.1に対する運動装置6.1による構成部分1の運動速度22.1に合わせて調節され、構成部分1の送り方向での成分は互いに同じ大きさである。レーザービーム加熱の効果的な実施のために、レーザー焼入れは誘導加熱に追従して行われる。エネルギーの理由からここでは、誘導子15.1による最大のオーステナイト化温度T
max1の達成時とレーザービーム17.1による最大のオーステナイト化温度の達成時との間の時間的な間隔Δt
1,2は、マルテンサイト形成の前の時間Δt
msよりも著しく短く選ばれている。温度はここでは800℃よりも高くなっている。利点として従来のレーザービーム出力の数分の一だけしか必要としていない。レーザービームの作用する位置の後にウオーターシャワーを配置してある。
【0037】
両方の運動装置6.1,6.2の座標制御運動により、かつ構成部分1の全機能面21にわたる一様な温度場4に、互いに異なる2つのエネルギー
源の個別の温度場3.1,3.2を重畳することにより、構成部分の焼く戻し領域のない最適な焼入れを可能にしている。
【符号の説明】
【0038】
1 焼入れすべき構成部分、 2.1,2.2 エネルギー作用領域、 3.1,3.
2 温度場、 4 温度場、 5.1,5.2 軌道経路、 6.1,6.2 両方の運動装置
、 8 焼入れ領域、 9.1,9.
2 ビーム形成ユニット
、 11.1,11.2 構成部分緊定装置
、 13.1,13
.2 光導波路用ファイバー、 14.1,14.2 レーザービームスキャナー、 15.1,15.2 誘導子、 16.1,16.2 出力密度分布、 17.1,17.2 レーザービーム、 18.1,18.2 ロボット、 19.1,19.2 焼入れ幅、 20.1,20.2 焼入れ深さ、 21.1,21.2 機能表面、 22.1,22.2 送り速度、 23 焦点レンズ、 24.1,24.2 焼入れ領域
、 27 機能面間の稜縁部、 28 焼き戻し領域、 29.1,29.2 レーザービームの光軸、 30 回転軸、 31 案内スピンドル、 32 円筒外周面、 33 長手方向案内、 34 球体転動軌道、 ΔT
a オーステナイト化温度間隔、 MS マルテンサイトスタート温度、 Δt
maxn 個別の温度場3の最大温度、 Δt
n 温度場3.1の最大温度Δt
maxnと温度場3.2の最大温度との間の時間的間隔、 Δt
ms 最大温度Δt
maxnの達成時とマルテンサイトスタート温度MSの開始時との間の時間的間隔、 Δt
180 最大温度Δt
maxnの達成時と焼入れ可能な鋼の最初の焼き戻し段階の温度180℃の達成時との間の時間的間隔、 α 互いに突き当たる、つまり交わり2つの機能面の表面間の角度、 ΔT
an 焼き戻し温度間隔、 ΔT
L 溶体化焼きなまし温度間隔、 b
1,b
2 焼入れ幅、 t
1,t
2 焼入れ深さ、 b 全焼入れ領域の焼入れ幅、 t 全焼入れ領域の焼入れ深さ、 β 2つのレーザービームの光軸間の角度