【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電算機室の空調システムは、床、天井および壁で囲まれるとともに並設される複数列の電算機ラックを収容する電算機室の内部温度を調整する電算機室の空調システムであって、前記複数列の電算機ラックのうち、所定列の電算機ラックの一方側に形成されて当該電算機ラックに給気する給気空間と、前記所定列の電算機ラックの他方側に形成されて当該電算機ラックから排気される排気空間と、前
記給気空間に空気を供給する給気ダクトと、前
記排気空間の空気を回収する排気ダクトと、前記排気ダクトで回収した空気を前記給気ダクトに送って前記排気空間から前記給気空間に空気を循環させる循環手段と、前記給気空間における前記電算機ラックの一方側面に対向するかまたは前記排気空間における前記電算機ラックの他方側面に対向して設けられる冷却手段とを備え
、前記給気ダクト、前記排気ダクトおよび前記循環手段は、前記給気空間の上部に位置する天井裏空間および下部に位置する床下空間のうちのいずれか一方にまとめて設けられ、前記給気ダクトと前記排気ダクトとは、前記複数列の電算機ラックの並設方向に交互に位置し、前記給気ダクトは、当該給気ダクトに隣り合う二つの前記排気ダクトから供給される空気を前記給気空間へ給気する共用の給気口を有し、前記排気ダクトは、当該排気ダクトに隣り合う二つの前記給気ダクトへ供給する空気を前記排気空間から回収する共用の回収口を有することを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、電算機ラックの一方側および他方側をそれぞれ給気空間および排気空間とし、給気空間の天井裏または床下に給気ダクトを設けるとともに、排気空間の天井裏または床下に排気ダクトを設けることで、従来のような二重床を構築する必要がなくなる。また、電算機ラックの一方側または他方側面に対向して冷却手段を設けることで、電算機ラックの近傍に設ける冷却手段を小型化することができ、従来のような大型の空気調和装置が不要にできるとともに、二重床を構築する必要がないことから、空調システム設置のイニシャルコストを低減させることができる。
また、電算機ラックの近傍に設けた冷却手段で空気を冷却するとともに、互いに近距離に設けられる給気ダクトと排気ダクトとを接続して排気空間から給気空間に循環手段で空気を循環させることで、冷却手段や循環手段に要する動力を小さくすることができ、空調システム設置のランニングコストを低減させることができる。
さらに、電算機ラックの近傍に設けた冷却手段で空気を冷却することで、複数列の電算機ラックごとの偏熱を防止して冷却効率を向上させることができ、冷却手段に要する動力をさらに低下させることができる。
【0008】
この際、本発明の電算機室の空調システムでは、前記複数列の電算機ラックは、隣り合う他の電算機ラックと互いの一方側の側面を対向させ、かつ互いの他方側の側面を対向させて並設されていることが好ましい。
このような構成によれば、隣り合う電算機ラックの一方側および他方側の側面同士を対向させることで、一方側の側面同士で挟まれた空間を給気空間とし、他方側の側面同士で挟まれた空間を排気気空間とすることができ、別途の仕切り壁などを設ける必要がなく、電算機室の構築にかかるイニシャルコストをさらに低減することができる
【0009】
さらに、本発明の電算機室の空調システムでは、前記電算機ラックと前記天井とが所定距離を隔てて離隔され、当該離隔部分には、前記給気空間と前記排気空間とを遮蔽する遮蔽手段が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、電算機ラックと天井とに隙間を設けて、この隙間(離隔部分)に設けた遮蔽手段で給気空間と排気空間とを遮蔽することで、電算機ラックへ供給する冷気とラックからの排気とが混合されず、ショートサーキットを防止して冷却効率を一層向上させることができる。また、電算機ラックの上面を直に天井と連結することも考えられるが、その場合には、ラック自体の熱が天井に伝達されることから、電算機室全体の温度が上がってしまうこととなるが、電算機ラックと天井とに隙間を設けることで、ラック自体の熱が天井に伝達されることがなく、電算機室全体の温度上昇を抑制して冷却効率の低下を防止することができる。
【0010】
また、本発明の電算機室の空調システムでは、前記冷却手段は、前記排気空間における前記電算機ラックの他方側面に対向して設けられ、前記給気空間は、当該電算機ラックのメンテナンス用の空間とされていることが好ましい。
このような構成によれば、排気空間における電算機ラックの他方側面に対向して冷却手段を設けることで、電算機ラックからの排気を直ぐに冷却手段で冷却し、この冷却した空気を排気ダクト、循環手段および給気ダクトを介して給気空間に供給することができる。従って、メンテナンス用の空間とした給気空間の温度を低く保つことができ、メンテナンス作業を快適に実施することができる。さらに、排気ダクト、循環手段および給気ダクトには冷却された空気が循環されることから、これらのダクトなどが加熱されることがなく、電算機室全体の温度上昇を抑制することができ、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0011】
また、本発明の電算機室の空調システムでは、前記給気ダクト、前記排気ダクトおよび前記循環手段は、前記天井裏
空間に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、天井裏
空間に給気ダクト、排気ダクトおよび循環手段を設けることで、これらの設置やメンテナンスを容易に実施することができるとともに、床下に設置する場合と比較してイニシャルコストをより一層低減させることができる。また、給気ダクトや排気ダクト、循環手段が加熱されたとしても、その熱が給気空間や排気空間に伝達されにくくでき、電算機室全体の温度上昇を抑制して高い冷却効率を確保ことができる。
【0012】
また、本発明の電算機室の空調システムでは、前記冷却手段は、前記床上を移動可能な移動手段と、当該冷却手段に冷媒またはエネルギーを供給する供給源との接続および分離を切り替え可能な接続手段とを有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、冷却手段が移動手段を備えるとともに供給源との接続および分離が接続手段で切り替え可能に構成されていることで、冷却手段を容易に搬入または搬出することができるとともに、冷却対象の電算機ラックに応じて冷却手段を容易に移動させることができる。さらに、冷却対象の電算機ラックの稼働状況や温度に応じて冷却手段を設置または増設することもできるし、冷却する必要がない電算機ラックに対しては冷却手段を設置しないようにもできるなど、冷却手段の柔軟な運用が可能になり、電算機ラックや収容される電算機の稼働状況に応じて効率よく冷却することができ、省力化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の電算機室の空調システムでは、前記電算機ラックと前記冷却手段とが接続ダクトで接続されていることが好ましい。
このような構成によれば、電算機ラックと冷却手段とを接続ダクトで接続する、すなわち冷却対象の電算機ラックごとに冷却手段を設置することで、その電算機ラックや収容される電算機の稼働状況に応じた個別冷却が可能になり、冷却効率を高めて一層の省力化を図ることができる。
【0014】
さらに、本発明の電算機室の空調システムでは、前記冷却手段は、前記電算機ラックに収容される複数の電算機に対応した複数のファンを有し、当該複数のファンが個別に風量制御可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、電算機ラックに収容される電算機ごとにファンを設置し、その風量を個別に制御することで、個々の電算機の稼働状況に応じた個別冷却が可能になり、冷却効率をさらに高めて省力化を促進させることができる。
【0015】
また、本発明の
参考として、電算機室の空調システムは、床、天井および壁で囲まれるとともに並設される複数列の電算機ラックを収容する電算機室の内部温度を調整する電算機室の空調システムであって、前記複数列の電算機ラックのうち、所定列の電算機ラックの一方側に形成されて当該電算機ラックに給気する給気空間と、前記所定列の電算機ラックの他方側に形成されて当該電算機ラックから排気される排気空間と、前記給気空間の上部に位置する天井裏空間または下部に位置する床下空間に設けられて当該給気空間に空気を供給する給気ダクトと、前記排気空間の上部に位置する天井裏空間または下部に位置する床下空間に設けられて当該排気空間の空気を回収する排気ダクトと、前記排気ダクトで回収した空気を前記給気ダクトに送って前記排気空間から前記給気空間に空気を循環させる循環手段と、前記循環手段の給気ダクト側および排気ダクト側の少なくとも一方に設けられて循環する空気を冷却する冷却手段とを備えることを特徴とするものであってもよい。
このような
電算機室の空調システムによっても、前述と同様に、従来のような大規模な二重床を構築する必要がなく、空調システム設置のイニシャルコストを低減させることができるとともに、冷却手段や循環手段に要する動力を小さくすることができ、空調システム設置のランニングコストを低減させることができる。
【0016】
以
上の電算機室の空調システムでは、前記冷却手段は、熱電素子を有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、熱電素子を有した冷却手段を用いることで、冷却水等の液状やガス状の冷媒を用いる必要がなくなることから、漏水やガス漏れ等による電算機への悪影響の可能性を排除することができる。さらに、熱電素子へ供給するエネルギーが電力であり、電源や電線等のエネルギー供給源を設置すればよいので、冷却水等を供給する場合と比較してエネルギー供給源の設置コストを抑制することができる。
【0017】
また、
前述した電算機室の空調システムは、前記電算機ラック内部の温度または湿度、あるいは前記電算機ラック周辺の温度または湿度に応じて前記冷却手段および循環手段の少なくとも一方を駆動制御する制御手段を備えていることが好ましい。
このような構成によれば、電算機ラックの内部や周辺の温度や湿度に応じて冷却手段や循環手段を駆動制御することで、電算機ラックや収容される電算機の稼働状況に応じた個別冷却が可能になり、冷却効率をより一層高めて省力化を図ることができる。
【0018】
さらに、
前述した電算機室の空調システムは、前記冷却手段および循環手段は、前記電算機ラックに収容された所定数の電算機ごとに設けられるとともに、各々の冷却手段および循環手段が前記制御手段によって個別に駆動制御されることが好ましい。
このような構成によれば、所定数の電算機ごとに冷却手段や循環手段を設けて個別に駆動制御することで、個々の電算機の稼働状況に応じて冷却することができ、冷却効率をさらに一層高めることができる。
【0019】
一方、本発明の建物は、前記いずれかの空調システムによって内部温度が調整される電算機室を備えることを特徴とする。
このような本発明によれば、前述した空調システムと同様に、大型の空気調和装置や二重床の設置が不要にできることから、空調システム設置のイニシャルコストを低減させることができるとともに、冷却手段や循環手段に要する動力を小さくしてランニングコストを低減させることができる。