【実施例1】
【0048】
カウルトップカバー1は、図示せぬエンジンルームの上部開口を覆うボンネットフード(不図示)と、フロントウィンドシールド2(
図2参照)との間を塞ぐように配設されており、車幅方向に延設された構成になっている。
図1には、カウルトップカバー1を構成するカウルトップカバー本体部材5とガター部材11の斜視図を示している。そして、
図1では、ガター部材11を配した側が車両の後方側であり、カウルトップカバー本体部材5を配した側が車両の前方側とした配置構成を示している。
【0049】
図1及び
図12において、カウルトップカバー本体部材5とガター部材11(11')の斜視図を示しているが、カウルトップカバー本体部材5の寸法とガター部材11(11')の寸法とを同じ寸法として図示すると、ガター部材11(11')の構成が見難くなってしまう。そのため、車幅方向の長さ寸法は同じ長さ寸法にした上で、カウルトップカバー本体部材5の寸法に比べてガター部材11(11')の寸法を拡大して示している。
【0050】
ガター部材11に設けた複数のクリップ部材20とカウルトップカバー本体部材5に設けた複数のクリップ取付部材25とをそれぞれ係合させることにより、ガター部材11をカウルトップカバー本体部材5に装着することができる。そして、ガター部材11をカウルトップカバー本体部材5に装着することで、カウルトップカバー1を構成することができる。
【0051】
カウルトップカバー本体部材5及びガター部材11は、合成樹脂材を射出成型等の成型手段を用いて構成されており、合成樹脂材としては、比較的剛性の高い樹脂材料(例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、変性PPO樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド系合成樹脂等)が用いられている。
【0052】
図2に示すように、カウルトップカバー1は、車室内に空気を取入れるためのエアボックス3の上部を覆っている。
図2に示したエアボックス3内に外気を取入れるための吸気口8(
図1参照)は、メッシュ状の開口としてカウルトップカバー本体部材5の上面に複数設けられている。また、カウルトップカバー本体部材5における
図1で向かって右側及び中央の二カ所の部位には、図示せぬワイパーを駆動する駆動モータ用の開口孔35が形成されている。そして、ウィンドウォッシャー液用の開口孔37が、カウルトップカバー本体部材5の上面に2カ所設けられている。
【0053】
図1、
図2に示すように、カウルトップカバー本体部材5の後端縁側、即ち、車両の後方側には上側部5aが形成されており、上側部5aは、フロントウィンドシールド2の下端部2aの上面を覆い車幅方向に沿って延設されている。そして、ガター部材11に設けた複数のクリップ部材20をそれぞれ係合させる複数のクリップ取付部材25は、フロントウィンドシ
ールド2の下端部2aの下方に配設された下側部5bに構成されている。
【0054】
図2に示すように、下側部5bは、上側部5aの下面から下方に向かって延設された縦壁5cと、縦壁5cの下端部から車両の後方側に屈折して延設されたクリップ取付部材25と、を備えた構成になっている。
図1に示すように、クリップ取付部材25は、車幅方向に沿って複数離間して設けられており、各縦壁5cと上側部5aとの連結状態は、連結部材9によって補強されている。
【0055】
図1に示すように、カウルトップカバー本体部材5の前端縁側、即ち、車両の前方側のフード当接部7には、図示せぬボンネットフードとの間を液密状態に支持するシール用ラバー(不図示)を取付けるための取付孔36が、車幅方向に沿って複数形成されている。車幅方向におけるカウルトップカバー本体部材5の左右両端部側には、カウルトップカバー1を図示せぬ車体パネルに取付けるための取付孔38が設けられている。
【0056】
図1、
図2に示すように、カウルトップカバー本体部材5の下側部5bに装着されるガター部材11は、車幅方向に延設した水路部16を有し、カウルトップカバー本体部材5の車幅方向に沿って複数設けたクリップ取付部材25に対して、それぞれ係合することのできる複数のクリップ部材20を有する構成になっている。
【0057】
水路部16は、車幅方向に延設した底壁部12と、底壁部12の車両前方側の側縁及び車両後方側の側縁からそれぞれ立設した第1壁部13及び第2壁部14とによって、三方が囲まれた断面形状が矩形のU字形状として構成されている。水路部16の途中及び両端部には、水路部16内を流れる水を排水するための排出部17が形成されている。
【0058】
水路部16における底壁部12の排出部17間は、水路部16内を流れる水を排出部17から排水し易くするため、排出部17に向かって下り傾斜の傾斜面として構成されている。また、排出部17は、カウルトップカバー1の下に設置した電装部品等に排出部17から排出した排水が被らない領域に形成されている。
【0059】
水路部16を構成する内面には、車幅方向に連続する長尺状の薄板部材30が、第1壁部13の内面から底壁部12の内面を通り第2壁部14の内面に連接した状態で配設されている。薄板部材30を水路部16の内面に設けておくことによって、ガター部材11の剛性を高めておくことができる。薄板部材30としては、金属材の板状部材、剛性の高い合成樹脂材等を用いて構成しておくことができる。
【0060】
図2に示すように、カウルトップカバー本体部材5の上側部5aとガター部材11の第2壁部14に連接した爪部体24の頭部との間で、フロントウィンドシールド2の下端部2aを挟持している。カウルトップカバー本体部材5の上側部5aと爪部体24とによって、支持するフロントウィンドシール保持部6が構成されている。
【0061】
フロントウィンドシール保持部6をカウルトップカバー本体部材5の上側部5aと爪部体24とによって構成した構成例について、以下では説明を行うが、フロントウィンドシール保持部6の構成としては、カウルトップカバー本体部材5の上側部5aと爪部体24とを用いた構成に限定されるものではなく、フロントウィンドシール保持部6の構成として爪部体24の頭部を用いることなく、カウルトップカバー本体部材5の上側部5aの裏面側に、フロントウィンドシールド2の下端部2aを挟持する挟持部を上側部5aと一体に構成しておくこともできる。
【0062】
カウルトップカバー本体部材5の上側部5aの裏面側に、フロントウィンドシールド2の下端部2aを挟持する挟持部を構成した場合には、第2壁部14の上端縁14aが上側部5aの裏面
側に形成した挟持部に近接するように、あるいは、上側部5aの裏面側に形成した挟持部よりも車両後方側に位置するように構成しておくことができる。このように構成しておくことにより、水路部16の断面積を大きく構成しておくことができる。
【0063】
第1壁部13の上端縁13a及び第1壁部13の内面に連接した薄板部材30の上端縁は、カウルトップカバー本体部材5の上側部5aの下面に接触又は近接した配置構成になっている。カウルトップカバー本体部材5の上側部5aの下面に延設された縦壁5cの根元部には、脆弱部40が形成されている。
【0064】
縦壁5cの根元部に形成した脆弱部40は、大きな衝撃荷重がボンネットフード上やカウルトップカバー1上に加わったときに破断するように構成されている。脆弱部40が破断することによって、カウルトップカバー1はフロントウィンドシールド2の上側に乗り上げるように移動することになる。そして、フロントウィンドシールド2の下端部2a側の縁部が、車外側に露出してしまうのを抑制することができる。
【0065】
図2のVII−VII断面として示した
図7に示すように、水路部16の底面を構成している底壁部12には、車幅方向における所定の部位に排水用の排出部17が設けられている。排出部17は、カウルトップカバー1の下に設置されている電装部品等に排出部から排出された排水が被らない複数の領域に形成されている。
【0066】
図7では、排出部17を底壁部12に形成した構成例を示しているが、排出部17を構成する部位としては、底壁部12に形成することに限定されるものではなく、水路部16の両端部や第2壁部14等に形成しておくことができる。
【0067】
また、
図7におけるA断面部、B断面部、C断面部の状態を重ね合わせて示した
図8に示すように、水路部16を構成する底壁部12は、車幅方向において隣接する排出部17間の中央部の部位から各排出部17に向かって下り傾斜の傾斜面として形成されている。
【0068】
即ち、
図7におけるA断面部において、底壁部12の内面に配設した薄板部材30の底面33aの高さ位置は、B断面部における薄板部材30の底面33bの高さ位置よりも高い位置に形成されており、B断面部における薄板部材30の底面33bの高さ位置は、C断面部における薄板部材30の底面33cの高さ位置よりも高い位置に形成されている。
このように底壁部12は、車幅方向において隣接する排出部17間の中央部の部位から各排出部17に向かって下り傾斜の傾斜面として形成されている。
【0069】
次に、
図2〜
図7を用いて、カウルトップカバー本体部材5の下側部5bに設けたクリップ取付部材25の構成と、ガター部材11に設けられ、クリップ取付部材25に係合するクリップ部材20の構成について説明する。
【0070】
図2〜
図7に示すように、クリップ取付部材25は、車両後方側が開口した挿入穴26を有するボックス部形状に構成されており、挿入穴26における車幅方向の左右は、切欠かれた形状に構成されている。即ち、挿入穴26は車幅方向の左右両側部が切欠かれた切欠溝27として構成されている。挿入穴26は、クリップ部材20に設けた挿入部材21を挿入させることができる構成であれば、切欠溝27として構成しておくことに限定されるものではなく、車幅方向の左右が切欠かれていない挿入穴として構成しておくこともできる。
【0071】
切欠溝27として構成した場合には、挿入部材21の左右方向の両端部が切欠溝27からはみ出るように構成しておくことができる。そして、切欠溝27からはみ出した挿入部材21の左右両端部を、水路部16を構成している底壁部12に連接させた構成にしておくことができる。このように構成することによって、挿入部材21の強度を向上させることができる。
【0072】
切欠溝27は、上部材片27aと下部材片27bとを備えた形状に構成されており、切欠溝27内に挿入した挿入部材21を、上部材片27aと下部材片27bとの間における挟持力で把持することができる。挿入部材21の底面には、弾性力により出没自在の係合爪22が設けられており、切欠溝27の底面には、係合爪22を係止する係合孔28が形成されている。
【0073】
図2に示すように、係合爪22と係合孔28とによって、切欠溝27内に挿入した挿入部材21の抜止めを行う係止部を構成している。係止部の構成としては、係合爪22と係合孔28との組合せによる構成に限定されるものではなく、他の公知の抜止め構成を採用することができる。
【0074】
また、係合爪22と係合孔28との組合せ構成を用いた場合でも、係合爪22と係合孔28とが形成される部位は、それぞれ挿入部材21の底面及び切欠溝27の底面に限定されるものではない。挿入部材21及び切欠溝27における他の部位に形成しておくことができる。
【0075】
図3、
図4には、ガター部材11に設けたクリップ部材20をカウルトップカバー本体部材5のクリップ取付部材25に係合させる前の状態を示している。
図2、
図5、
図6には、ガター部材11に設けたクリップ部材20をカウルトップカバー本体部材5のクリップ取付部材25に係合させた状態を示している。
【0076】
また、
図3に示すように、挿入部材21の挿入方向に沿った案内溝29を切欠溝27の下部材片27bに形成しておき、案内溝29に係合する凸部21aを挿入部材21の下面に形成しておくことができる。案内溝29に凸部21aを係合させることにより、挿入部材21の車幅方向へのズレを防止できる。
【0077】
クリップ部材20は、爪部体24を介して第2壁部14に連接した構成になっている。
図2に示すように、ガター部材11をカウルトップカバー本体部材5に装着し、カウルトップカバー1を車両に搭載したとき、爪部体24の頭部はフロントウィンドシールド2の下端部2aの下面に当接する。そして、爪部体24とカウルトップカバー本体部材5の上側部5aとの間に、フロントウィンドシールド2の下端部2aを挟持しておくことができる。そして、フロントウィンドシールド2の下端部2aを支持するフロントウィンドシールド保持部6を、爪部体24とカウルトップカバー本体部材5の上側部5aとによって構成しておくことができる。
【0078】
このようにフロントウィンドシールド保持部6を構成することができるので、ガター部材11を配設することになるフロントウィンドシールド2の下端部2aの下方におけるスペース領域、即ち、エアボックス3内を有効利用することができる。
【0079】
次に、
図13(a)、(b)を用いて、本願発明に係わる水路部16による排水量が、従来例2のような略L字断面形状の水路での排水量に比べて大きくなることを説明する。
図13(a)では、従来例2を示す
図15において用いた部材符号をそのまま用いている。また、
図13(b)では、本願発明に係わる
図2において用いた部材符号をそのまま用いており、図示としては、カウルトップカバー本体部材5の下側部5bの図示を省略している。また、ガター部材11としては、薄板部材30以外の部材の図示を省略している。
【0080】
図13(a)に示すように、従来例2では断面形状が略L字形であるので、薄板底壁65bの先端部67を通る水平面と薄板前壁65aと薄板底壁65bとによって囲まれる三角形の面積が、略L字断面形状の水路における断面積となる。また、車両からの振動や車両の操舵状況等によって、薄板底壁65bの先端部67から水路内を流れている排水が落水し易くなっている。そのため、そして、パネル部62とフロントウィンドシールド61の隙間から浸入した水は、矢印で示すように水路からこぼれてしまう危険性が生じる。このように、略L字断面
形状の水路を用いた場合には、安定した排水を行うのが難しくなっている。
【0081】
図13(b)に示しているように、本願発明に係わる水路部16は、第2壁部14を堰として機能させることができる。そして、水路部16の断面積としては、
図13(b)の二点鎖線で示すように、フロントウィンドシールド2の下端部2aの一部が水没した状態にまで拡大させることができる。そして、カウルトップカバー本体部材5の上側部5aとフロントウィンドシールド2の隙間から浸入した水は、矢印で示すように水路部16内からこぼれることなく排水することができる。
【0082】
そして、第2壁部14の高さ位置を調節することによって、水路部16の断面積が所望の断面積となるように調整することができる。これによって、水路部16を流れる流水を、水路部16の途中で落水させることなく、確実に排出部17から排水させることができる。