特許第5717420号(P5717420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5717420-切削加工用粘着テープ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717420
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】切削加工用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20150423BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-267402(P2010-267402)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-119468(P2012-119468A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081341
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩和
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 理恵
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴広
【審査官】 馬場 進吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−238936(JP,A)
【文献】 特開2008−163276(JP,A)
【文献】 特開2010−073897(JP,A)
【文献】 特開平05−175332(JP,A)
【文献】 特開2008−166651(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0241436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被切削物から、半導体チップ、MEMSデバイス、機能性ガラス基板、又は半導体パッケージを製造するために使用される切削加工用粘着テープであって、
i) 基材と粘着層とを備え、
ii) 前記粘着層は、エラストマー(A)と、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり 平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)と、の混合物を主成分とする光 硬化型ゴム系粘着剤からなるとともに、
iii) 前記エラストマー(A)/前記共役ジエン系ポリマーの比率が質量比で30/7 0〜80/20の範囲
であることを特徴とする切削加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記共役ジエン系ポリマーの数平均分子量が2,500〜50,000であることを特徴とする請求項1に記載の切削加工用粘着テープ。
【請求項3】
波長700nm以上1200nm以下のレーザー光が前記基材と前記粘着層との両方を透過した際の光線透過率が、80%以上であり、ヘイズ値が10%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記基材が炭化水素系樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削加工用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被切削物から、半導体チップ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス、機能性ガラス部材、および半導体パッケージ等を製造するために使用される切削加工用粘着テープに係わり、詳しくは、電子回路やMEMSが形成された板状のシリコンウェハ等の被切削物、反射防止・フィルター機能等を有するガラス基材等の被切削物、および複数の半導体チップなどが一括モールドされた一括モールド体等の被切削物を仮固定し、該被切削物を所望のサイズに切削するための切削加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
板状の被切削物を仮固定して、所望のサイズに切削する技術を適用して製造される代表的な部材として、半導体チップ、半導体パッケージ、MEMSデバイス、液晶表示用・レンズ用ガラス部材、水晶発振子などが挙げられる。例えば、半導体チップは、通常、以下のようにして製造される。まず、シリコン等の単結晶棒(インゴット)を所定の厚さに切断して円板状のウェハを得て、その一方の面に、イオン注入,エッチング等の方法により複数の回路を形成する。そして、ウェハの回路形成面とは反対側の面をグラインダー等で研削して、ウェハを所定の厚さに加工する(バックグラインド工程)。このウェハのバックグラインド工程においては、回路を保護するとともに研削加工を容易にするために、回路形成面のほぼ全面にバッググラインドテープが貼付される。
【0003】
次に、研削加工が施されたウェハを、例えば、特許文献1に開示されているような方法により、各回路ごとに切断分離してダイを得る(ウェハダイシング工程)。ウェハの切断方法としては、ダイヤモンドカッター等のブレードを用いて切削するブレードダイシング法や、レーザー光によりウェハを表面側から内部側に向かって溶融させながら掘り進んでいくレーザーアブレーション法が知られている。また、近年では、特許文献2に開示されているように、レーザー光をウェハの内部に集光して改質層を形成し、テープエキスパンドなどの外力を加えることにより、改質層を起点とする亀裂を表裏面に進展させ分割を行うステルスダイシング法も知られている。
【0004】
このウェハダイシング工程においては、ウェハをダイシングテープで強固に固定して切断分離を行う。そして、ウェハダイシング工程後のピックアップ工程においては、例えば、特許文献3に開示されているように、紫外線等の光を照射するなどしてダイシングテープの粘着剤の粘着力を低下させ、ダイシングテープからダイを糊残りなく容易に剥離してピックアップする。次に、ピックアップしたダイを、パッケージにマウントする。複数のダイをマウント可能なパッケージの場合は、各所定箇所にそれぞれダイをマウントする。
【0005】
次に、マウントしたダイの端子とパッケージの端子とを金線等で電気的に接続する(ボンディング工程)。ボンディングによる配線が完了したら、衝撃や水分などからダイを保護するため、樹脂等の封止材により封止を行う(モールディング工程)。そして、封止されたパッケージを各ダイごとに切断して切り離せば、半導体チップが完成する(パッケージダイシング工程)。パッケージの切断方法としては、ウェハダイシングの場合と同様に、ブレードダイシング法,レーザーアブレーション法,及びステルスダイシング法が知られている。
【0006】
このパッケージダイシング工程においては、例えば、特許文献4に開示されているように、パッケージをダイシングテープで強固に固定して切断分離を行う。そして、ウェハダイシング工程の場合と同様に、パッケージダイシング工程後に、紫外線等の光を照射するなどしてダイシングテープの粘着剤の粘着力を低下させ、ダイシングテープから半導体チップを糊残りなく容易に剥離してピックアップする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−201642号公報
【特許文献2】特開2004−1076号公報
【特許文献3】特開昭61−28572号公報
【特許文献3】特開2001−257181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のような切削加工技術による半導体、MEMSなどの製造プロセスにおいては、前記各工程のうち、バックグラインド工程、ウェハダイシング工程、及びパッケージダイシング工程において、それぞれ各工程に応じた粘着テープが使用されるが、これらの粘着テープにおいて一般的に使用されているアクリル系粘着剤に対しては、(1)グラインドあるいはダイシング時にウェハやパッケージなどの被着体が動かないようにしっかりと保持しておく必要があるため、また、(2)チップサイズやパッケージのサイズが小型化されてきたため、粘着力のさらなる向上が求められていた。
【0009】
また、アクリル系粘着剤は、ウェハなどの被切削物に対する粘着力はほぼ十分であるものの、パッケージなどの一括樹脂モールド体被切削物に対する粘着力が若干低いため、パッケージダイシング工程に用いる粘着テープの粘着剤としては、必ずしも十分な性能を有しているとは言えなかった。さらに、上記のように被着体(被切削物)の種類によって粘着力に差があるため、上記の3つの工程の全てに、特にウェハダイシング工程とパッケージダイシング工程に対して、共通の粘着テープを使用することは難しく、粘着テープを製造する側および使用する側の両者にとって、管理面や使用面での煩わしさがあった。
【0010】
さらに、ステルスダイシング法においては、ウェハやパッケージの粘着テープ(ダイシングテープ)を貼付していない面側からレーザー光を照射する場合には問題なくダイシング出来るが、粘着テープ(ダイシンングテープ)を貼付している面側からレーザー光を照射する場合には、切断不良を起こすおそれがあった。この理由は、完全に現象が解明されているわけではないが、少なくとも、粘着テープのレーザー光の波長における全光線透過率が低かったり、ヘイズ値が高かったりすると、レーザー光量が弱められたり、集光が十分に行われなくなるため、ウェハ中心部に改質領域が十分に形成されず、ウェハ中心部から亀裂がウェハ両表面側へ精度良く伝わらずに、切断不良を起こすものと思われる。
【0011】
そのため、ステルスダイシング法において粘着テープを貼付している面側からレーザー光を照射する場合には、従来の粘着テープ(ダイシングテープ)の中でも、特に、使用するレーザー光の波長における光線透過率が低いものや、ヘイズ値が高いものは、必ずしも十分な性能を有しているとは言えなかった。
【0012】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、電子回路やMEMSが形成された板状のシリコンウェハ等の被切削物、反射防止・フィルター機能等を有するガラス基板等の被切削物、および複数の半導体チップなどが一括モールドされた一括モールド体等の被切削物を仮固定し、該被切削物を所望のサイズに切削するために使用される切削加工用粘着テープ、すなわち、ウェハあるいはガラスのダイシング工程およびパッケージダイシング工程の両プロセスに使用可能である切削加工用粘着テープであって、しかも、レーザー光を用いたダイシングに好適であり、さらに、粘着力が強い切削加工用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記課題を解決するため、鋭意検討した結果、基材上に、エラストマー(A)と、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)と、を所定の割合で配合した混合物を主成分とする光硬化型ゴム系粘着剤を塗工した粘着テープを用いれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る切削加工用粘着テープは、板状の被切削物から、半導体チップ、MEMSデバイス、機能性ガラス基板、又は半導体パッケージを製造するために使用される切削加工用粘着テープであって、基材と粘着層とを備え、前記粘着層は、エラストマー(A)と、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)と、の混合物を主成分とする光硬化型ゴム系粘着剤からなるとともに、前記エラストマー(A)/前記共役ジエン系ポリマー(B)の比率が質量比で30/70〜80/20の範囲であることを特徴とする。
【0015】
なお、本明細書においては、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0016】
また、本発明に係わる切削加工用粘着テープは、前記共役ジエン系エラストマーの数平均分子量が2,500〜50,000であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係わる切削加工用粘着テープは、700nm以上1200nm以下のレーザー光が前記基材と前記粘着層との両方を透過した際の光線透過率が、80%以上であり、ヘイズ値が10%以下であることが好ましい。なお、本発明における光線透過率とヘイズ値は、粘着層を設けていない基材側から測定した値と定義する。
【0018】
また、本発明に係わる切削加工用粘着テープは、前記基材が炭化水素系樹脂で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る切削加工用粘着テープは、基材と粘着層とを備え、前記粘着層は、エラストマー(A)と、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)と、の混合物を主成分とする光硬化型ゴム系粘着剤からなるとともに、前記エラストマー(A)/前記共役ジエン系ポリマー(B)の比率が質量比で30/70〜80/20の範囲であるので、被切削物に対する粘着力が強く、かつ、切削後の紫外線照射により粘着力を低減することが出来る。
【0020】
よって、板状の被切削物から、半導体チップ、MEMSデバイス、機能性ガラス部材、および半導体パッケージ等を製造するプロセスの複数の工程、例えば、ウェハのダイシング工程およびパッケージダイシング工程の両プロセスに使用可能である。
【0021】
さらに、所定波長のレーザー光が基材と粘着層との両方を透過した際の光線透過率を80%以上、ヘイズ値を10%以下としているので、レーザー光を用いたダイシングに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る切削加工用粘着テープの一実施形態の構造を示す断面図である。
図2】半導体製造プロセスを説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る切削加工用粘着テープの実施の形態を、図1の断面図(切削加工用粘着テープの長手方向に直交する平面で切断した断面図)を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
本実施形態の切削加工用粘着テープは、基材1上に、粘着層2と剥離フィルム3とが該記載順序で積層されてなる。粘着層2は、エラストマー(A)と、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)と、の混合物を主成分とするゴム系粘着剤からなる。なお、基材1と粘着層2の間に、所望の他の層を介在させてもよい。
【0025】
本実施形態の切削加工用粘着テープは、粘着層2が、エラストマー(A)と、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)と、の混合物を主成分とする光硬化型ゴム系粘着剤からなるので、アクリル系粘着剤と比較して粘着力が高い。また、ウェハやガラスに対する粘着力とともに、エポキシ樹脂に代表される樹脂モールドパッケージに対する粘着力も十分であるため、被切削物の種類を選ばず、ウェハあるいはガラスのダイシング工程及びパッケージダイシング工程のいずれの工程においても好適に使用することができる。
【0026】
さらに、エラストマー(A)と、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)と、の混合物を主成分とする光硬化型ゴム系粘着剤は、レーザー光の波長における光線透過率が80%以上と高く、ヘイズ値が10%以下と低いので、ステルスダイシング法において切削加工用粘着テープを貼付している面側からレーザー光を照射する場合にも、本実施形態の切削加工用粘着テープは好適である。
【0027】
本発明の光硬化型ゴム系粘着剤に用いるエラストマー(A)の種類としては、特に限定されるものではなく、従来から粘着剤として使用されていたものが使用できる。具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリシアノブタジエン、ポリペンタジエン、ポリイソブチレンなどの共役ジエンホモポリマーや、スチレン−ブタジエンブロック共重合ポリマー、スチレン−イソプレン共重合ポリマー、イソブチレン−イソプレン共重合ポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ポリマー、α−スチレン−ブタジエン−α−スチレンブロック共重合ポリマーなどの共役ジエン系共重合ポリマーや、さらには天然ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。また、上記ポリマーを水添したポリマーも使用することができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、粘着特性、透明性などの観点から、イソプレン系ポリマーや天然ゴムが好適に用いられる。
【0028】
また、本発明の光硬化型ゴム系粘着剤に用いられる(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)の種類としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ブタジエン系ポリマー、イソプレン系ポリマー、ペンタジエン系ポリマー、ジメチルブタジエン系ポリマー、フェニルブタジエン系ポリマー、ジフェニルブタジエン系ポリマー、あるいはこれらを水添したポリマーなどに、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上となるように導入されたものが挙げられる。
【0029】
これら、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマーは、例えば、共役ジエン系ポリマーに、二塩基性不飽和酸無水物を反応させることにより酸無水物基を導入した後に、酸無水物基の一部または全部に、エステル部分に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法、あるいは、末端に水酸基が導入された共役ジエン系ポリマーの水酸基に、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するイソシアネート化合物(例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート化合物など)を反応させる方法により得ることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、粘着特性、透明性、エラストマーとの相溶性などの観点から、イソプレン系ポリマーやブタンジエン系ポリマーに、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上となるように導入したものが好適に用いられる。
【0030】
また、本発明の光硬化型ゴム系粘着剤におけるエラストマー(A)/(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)の質量比は30/70〜80/20の範囲である。エラストマー(A)の割合が30質量%未満(すなわち、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系エラストマー(B)の割合が70質量%超過)であると、光硬化型ゴム系粘着剤全体の凝集力が不十分となり、被切削物に対しての粘着力が低下し、糊残が発生するので、通常ダイシング工程において、例えばダイのラインずれ、ダイフライ発生(チップ飛び)やチップの汚染などの支障をきたす。
【0031】
一方、エラストマー(A)の割合が80質量%超過(すなわち、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)の割合が20質量%未満)であると、板状被切削物の切削後に光照射しても、粘着力が十分に低下しないため、ピックアップ工程において、切削加工用粘着テープから切削物を糊残りなく容易に剥離してピックアップすることが困難になる。
【0032】
また、本発明で用いる(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマーの数平均分子量は、2,500〜50,000であることが好ましい。数平均分子量が2,500未満であると、光硬化型ゴム系粘着剤全体の凝集力が不十分となり、粘着力の低下、糊引き、糊残などが発生しやすくなるとともに、1分子当たりの極性が高くなるので、総じて、エラストマー(A)との相溶性が悪くなり、光硬化型ゴム系粘着剤全体の透明性が低下しやすくなる。したがって、通常ダイシング工程において、例えばダイのラインずれ、ダイフライ発生(チップ飛び)やチップの汚染などの支障をきたす。また、ステルスダイシング工程において、レーザー光の透過性が低下し、ウェハ中心部に十分な改質層が形成されず、外力を加えても個片化できなかったり、チップが破損したりするおそれがある。
【0033】
一方、数平均分子量が50,000を越えると、光硬化型ゴム系粘着剤における(メタ)アクリロイル基の量が少なくなるので、板状被切削物の切削後に光照射しても、粘着力が十分に低下しないため、ピックアップ工程において、切削加工用粘着テープから切削物を糊残りなく容易に剥離してピックアップすることが困難になるおそれがある。
【0034】
また、本発明で用いる光硬化型ゴム系粘着剤には、所望により、光重合開始剤、粘着付与剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、顔料、充填剤、希釈剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、剥離調整剤、静電防止剤化助剤、その他の配合剤などを添加することができる。これらの添加剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択すれば良い。
【0035】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル系開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系開始剤;α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などの芳香族ケトン系開始剤;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール系開始剤;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系開始剤;ベンジルなどのベンジル系開始剤;ベンゾインなどのベンゾイン系開始剤;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどのα−ケトール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;カンファーキノン系化合物;ハロゲン化ケトン系化合物:アシルホスフィノキシド系化合物;アシルホスフォナート系化合物などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0036】
粘着付与剤としては、例えば、水添テルペンフェノール樹脂,スチレン系樹脂,重合ロジンエステル,水添ロジンエステル,テルペン樹脂,テルペンフェノール樹脂,水添テルペン樹脂,芳香族系石油樹脂,脂肪族系石油樹脂,水添芳香族系石油樹脂又は水添脂肪族石油樹脂等が用いられる。粘着付与剤の配合量は、エラストマー(A)100質量部に対して、2〜200質量部が好ましい。また、ダイシング後に紫外線を照射して粘着力を低下させる工程を考慮すると、出来るだけ紫外線の吸収が少ないものを選択することが好ましい。
【0037】
以下に、本発明の一例として、半導体製造プロセスと、該プロセスにおける本実施形態の切削加工用粘着テープの使用方法とについて、図2を参照しながら説明する。
【0038】
まず、ウェハ製造工程において、シリコン等の単結晶棒(インゴット)を所定の厚さに切断して、円板状のウェハを得る。インゴットの種類は特に限定されるものではなく、シリコンの他には、シリコンカーバイド(SiC),サファイア,リン化ガリウム(GaP),ヒ化ガリウム(GaAs),リン化インジウム(InP),窒化ガリウム(GaN)等があげられる。
【0039】
次に、回路形成工程において、ウェハの一方の面に、イオン注入,エッチング等の方法によって所望の回路を複数形成する(図2の(a)を参照)。そして、バックグラインド工程において、ウェハの回路形成面とは反対側の面(以降においては、ウェハの裏面と記すこともある)をグラインダー等で研削して、ウェハを所定の厚さに加工する(図2の(c)を参照)。
【0040】
このウェハのバックグラインド工程においては、回路を保護するとともに研削加工を容易にするために、回路形成面のほぼ全面にバッググラインドテープが貼付される(図2の(b)を参照)。本実施形態の切削加工用粘着テープは、このバッググラインドテープとして好適である。本実施形態の切削加工用粘着テープは、粘着層2がゴム系粘着剤からなるので、ウェハに対する粘着力が高い。よって、確実に回路を保護することができるとともに、研削加工が容易となる。
【0041】
次に、ウェハダイシング工程において、研削加工が施されたウェハを各回路ごとに切断分離してダイを得る(図2の(d)を参照)。ウェハの切断方法としては、ダイヤモンドカッター等のブレードを用いて切削するブレードダイシング法(図2の(d)を参照)や、レーザー光によりウェハを表面側から内部側に向かって溶融させながら掘り進んでいくレーザーアブレーション法が適用可能である。
【0042】
また、レーザー光をウェハの内部に集光して改質層を形成し、テープエキスパンドなどの外力を加えることにより、改質層を起点とする亀裂を表裏面に進展させ分割を行うステルスダイシング法も適用可能である。ステルスダイシング法は、ウェハの回路形成面に熱によるダメージを与えることがない、加工屑(切り屑や溶融飛散物)が発生しない、削りしろが無いためウェハ1枚あたり製造できるダイの個数が多いなどの利点を有する。
【0043】
このウェハダイシング工程においては、ウェハをダイシングテープで強固に固定して切断分離を行う。本実施形態の切削加工用粘着テープは、このダイシングテープとして好適である。本実施形態の切削加工用粘着テープは、粘着層2が、エラストマー(A)と、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均2個以上有する共役ジエン系ポリマー(B)と、の混合物を主成分とする光硬化型ゴム系粘着剤からなるので、ウェハに対する粘着力が高い。
【0044】
また、ステルスダイシング法に使用されるレーザー光の波長における光線透過率が80%以上と高く、ヘイズ値が10%以下と低いので、切削加工用粘着テープを貼付していない面側からレーザー光を照射してウェハのステルスダイシングを行う場合はもちろんのこと、切削加工用粘着テープを貼付している面(裏面)側からレーザー光を照射してウェハのステルスダイシングを行う場合にも、本実施形態の切削加工用粘着テープは好適である。
【0045】
切削加工用粘着テープを貼付している面側からレーザー光を照射してウェハのステルスダイシングを行う場合には、その波長のレーザー光が基材1と粘着層2との両方を透過した際の光線透過率が、80%以上、ヘイズ値が10%以下であることが好ましい。光線透過率が80%未満、ヘイズ値が10%超であると、切削加工用粘着テープを透過することによってレーザー光が弱められるため、またレーザー光が散乱して十分に集光できないため、ウェハ中心部に十分な改質層が形成されず、外力を加えても個片化できなかったり、チップが破損したりするおそれがある。なお、ウェハのステルスダイシングを行う際のレーザー光の波長は、700nm以上1200nm以下が好ましいが、一般に良く使われる波長は1064nmである。
【0046】
また、レーザー光の透過率を十分なものとし、さらにレーザー光の屈折を最小限にする(レーザー光の直進性を妨げない)ためには、基材1が、炭化水素系を主成分とする本発明の粘着剤の材質と同じ、すなわち屈折率がほぼ同じである炭化水素系樹脂で構成されていることが好ましい。炭化水素系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリスチレン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレンーメチル(メタ)アクリル酸エステル、エチレンーエチル(メタ)アクリル酸共重合体等のポリオレフィン系樹脂があげられる。
【0047】
その他に使用可能な樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,ポリウレタン,ポリアミド,ポリイミド等があげられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合又は積層して用いてもよい。ステルスダイシング法によるダイシングを行う場合は、レーザー光の波長における基材の光線透過率は85%以上、ヘイズ値は10%以下であることが好ましい。基材の光線透過率が85%未満、ヘイズ値が10%超過であると、粘着テープとした時に、粘着テープ全体の光線透過率が80%以上、ヘイズ値を10%以下にすることが困難になるおそれがあり、前述したようにステルスダイシングの工程で支障が生じる。
【0048】
ここで、ウェハダイシング工程の具体的手順の一例として、ステルスダイシング法によるダイシングを説明する。まず、基材1側を下方に向けて切削加工用粘着テープをダイシング装置(図示せず)の基台上に取り付ける。そして、切削加工用粘着テープから剥離フィルム3を取り除き、現れた粘着層2の上にウェハ(例えば直径200mm、厚さ100μmのもの)を載置して固定する。
【0049】
続いて、ダイシング装置を作動させて、切削加工用粘着テープを貼付している面(裏面)の側からウェハにレーザー光を照射する。レーザー光は、切削加工用粘着テープを透過して、ウェハの内部に集光する。レーザー光が集光した部分には改質層が形成されるので、テープエキスパンドなどの外力をウェハに加えることにより、該改質層を起点とする亀裂を表裏面に進展させてウェハの分割を行うことができる。これにより、ウェハをダイシングし、複数のダイを得る。ダイの形状や寸法は特に限定されるものではないが、例えば、縦5mm、横5mmの正方形である。なお、レーザー光は、切削加工用粘着テープを貼付していない面(回路形成面)の側からウェハに照射してもよい。
【0050】
次に、ピックアップ工程において、ダイシングにより得られたダイをピックアップして、パッケージの所定箇所にマウントする(図2の(e)を参照)。このパッケージは、1個のダイをマウントするタイプのものでもよいし、図2の(e)に示すように、複数のダイをマウントし、後に切断して複数の半導体チップを得るタイプのものでもよい。
【0051】
なお、ダイのピックアップの前に切削加工用粘着テープの粘着層2を硬化させ、粘着層2の粘着力を低下させる。すなわち、粘着層2を構成するゴム系粘着剤は光硬化型粘着剤とし、所定の処理、例えば紫外線照射を行って粘着層2を硬化させれば、その後のピックアップ工程において、切削加工用粘着テープからダイを糊残りなく容易に剥離してピックアップすることができる。
【0052】
前述の所定の処理とは、切削加工用粘着テープに電子線、紫外線などの光を照射する処理である。なお、硬化させる作業の作業性やコストなどを考慮すると、紫外線照射処理が好ましい。
【0053】
次に、ボンディング工程において、マウントしたダイの端子とパッケージの端子とを金線等で電気的に接続する(図示せず)。ボンディングによる配線が完了したら、モールディング工程において、衝撃や水分などからダイを保護するため、エポキシ樹脂に代表される樹脂等の封止材により封止を行う(図2の(f)を参照)。そして、パッケージダイシング工程において、封止されたパッケージを各ダイごとに切断して切り離せば、半導体チップが完成する。パッケージの切断方法としては、ウェハダイシングの場合と同様に、ブレードダイシング法(図2の(g)を参照),レーザーアブレーション法,及びステルスダイシング法が適用可能である。
【0054】
このパッケージダイシング工程においては、パッケージをダイシングテープで強固に固定して切断分離を行う。本実施形態の切削加工用粘着テープは、このダイシングテープとして好適である。本実施形態の切削加工用粘着テープは、粘着層2がゴム系粘着剤からなるので、パッケージに対する粘着力が高い。また、ステルスダイシング法に使用される波長のレーザー光の透過率が高いので、切削加工用粘着テープを貼付していない面側からレーザー光を照射してパッケージのステルスダイシングを行う場合はもちろんのこと、切削加工用粘着テープを貼付している面側からレーザー光を照射してパッケージのステルスダイシングを行う場合にも、本実施形態の切削加工用粘着テープは好適である。
【0055】
切削加工用粘着テープのレーザー光の透過率については、切削加工用粘着テープをウェハダイシングに用いる場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。また、基材1が炭化水素系樹脂で構成されていることが好ましい点についても、半導体製造プロセス用粘着テープをウェハダイシングに用いる場合と同様であるので、この点についても詳細な説明は省略する。なお、パッケージのステルスダイシングを行う際のレーザー光の波長は、700nm以上1200nm以下が好ましい。
【0056】
ここで、パッケージダイシング工程の具体的手順の一例として、ブレードダイシング法によるダイシングを説明する。まず、基材1側を下方に向けて切削加工用粘着テープをダイシング装置(図示せず)の基台上に取り付ける。そして、切削加工用粘着テープから剥離フィルム3を取り除き、現れた粘着層2の上にパッケージを載置して固定する。続いて、ダイシング装置を作動させて、円形のダイシングブレードを回転させてパッケージを複数に切断する。
【0057】
最後に、ウェハダイシング工程の場合と同様に、パッケージダイシング工程後に、紫外線等の光を照射するなどして半導体製造プロセス用粘着テープの粘着層2の粘着力を低下させる。そして、パッケージダイシングによる切断物を、切削加工用粘着テープから糊残りなく容易に剥離してピックアップすれば、半導体チップが得られる(図2の(h)を参照)。
【0058】
このようにして得られる切削物小片の種類は特に限定されるものではなく、集積回路(IC,LSI)、トランジスタ、メモリー、ダイオード、センサー、MEMSデバイス、機能性ガラス部材、樹脂パッケージ等があげられる。
【0059】
なお、切削加工用粘着テープの厚さは特に限定されるものではないが、30〜300μmが一般的であり、好ましくは40〜200μmである。また、各層1,2の厚さは特に限定されるものではないが、基材1の厚さは30〜300μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。また、粘着層2の厚さは1〜100μmが好ましく、5〜80μmがより好ましい。
【0060】
さらに、切削加工用粘着テープの長さは特に限定されるものではなく、帯状の長尺物でもよいし、ダイシング工程において使用するウェハやパッケージなどの被切削物の大きさに応じた長さ,形状の短尺物でもよい。例えば、ウェハダイシング工程の場合は、ウェハ1枚分の長さ,形状に適した短尺物でもよい。
【0061】
さらに、粘着剤の形態は、通常は液状(エマルジョン型,水溶液型,又は溶剤型)であるので、液状の粘着剤を基材1の上に塗工して、溶媒である水又は有機溶剤を揮発させれば(すなわち乾燥させれば)、基材1の上に粘着層2を形成することができる。また、粘着剤をセパレータフィルム上に塗工して、乾燥した後に、基材1を貼り合わせる方法により、基材1の上に粘着層2を形成しても良い。塗工方法は特に限定されるものではなく、ディップコート法,ロールコート法,カーテンコート法,ダイコート法,スリットコート法等の公知の方法を採用可能である。
【実施例】
【0062】
本発明の切削加工用粘着テープの構成について、実験例によって具体的に説明する。ただし、本発明の切削加工用粘着テープはこれに限定されるものではない。
【0063】
〔実験例1〕
天然ゴム(ペールクレープIV号)63質量部、石油樹脂(荒川化学工業社製、アルコンM−100)50質量部、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(PIS)(分子量17,000)37質量部、光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184)2.5質量部をトルエンに溶解した粘着剤溶液(粘着剤A)を用意して、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ上に、粘着剤層の乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布・乾燥した。そして、粘着剤層側に、厚さ100μm、1064nmにおける光線透過率91.2%、ヘイズ値1.8%のポリエチレンフィルム基材を貼り合せて、図1に示した構成の粘着テープを作製した。
【0064】
〔実験例2〕
実験例1において、天然ゴム(ペールクレープIV号)をスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体(日本ゼオン社製、クインタック3620)に、石油樹脂(荒川化学工業社製、アルコンM−100)を石油樹脂(日本ゼオン社製、クイントンS100)に、それぞれ変更した粘着剤Bを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作製した。
【0065】
〔実験例3〕
実験例2において、粘着剤層の乾燥後の厚さを10μmから20μmに変更した以外は、実験例2と同様に粘着テープを作製した。
【0066】
〔実験例4〕
実験例1において、天然ゴム(ペールクレープIV号)63質量部を80質量部に、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量17,000)37質量部を20質量部に、それぞれ変更した粘着剤Cを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0067】
〔実験例5〕
実験例1において、天然ゴム(ペールクレープIV号)63質量部を30質量部に、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量17,000)37質量部を70質量部に、それぞれ変更した粘着剤Dを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0068】
〔実験例6〕
実験例1において、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量17,000)を、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量2,800)に変更した粘着剤Eを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0069】
〔実験例7〕
実験例1において、天然ゴム(ペールクレープIV号)をスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体(クレイトンポリマーズ社製、クレイトン1101)に、石油樹脂(荒川化学工業社製、アルコンM−100)を石油樹脂(日本ゼオン社製、クイントンP195N)に、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレンポリマー(分子量17,000)を、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリブタジエン(Pbd)(分子量2,800)にそれぞれ変更した粘着剤Fを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作製した。
【0070】
〔実験例8〕
実験例1において、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量17,000)を、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン分子量2,400)に変更した粘着剤Gを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0071】
〔実験例9〕
実験例1において、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量17,000)を、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量35,000)に変更した粘着剤Hを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0072】
〔実験例10〕
実験例1において、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量17,000)を、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量54,000)に変更した粘着剤Iを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0073】
〔実験例11〕
実験例1において、厚さ100μm、1064nmにおける光線透過率91.2%、ヘイズ値1.8%のポリエチレンフィルム基材を、厚さ100μm、1064nmにおける光線透過率82.0%、ヘイズ値8.8%のポリエチレンフィルム基材に変更した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0074】
〔実験例12〕
実験例1において、厚さ100μm、1064nmにおける光線透過率91.2%、ヘイズ値1.8%のポリエチレンフィルム基材を、厚さ100μm、1064nmにおける光線透過率80.0%、ヘイズ値10.5%のポリエチレンフィルム基材に変更した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0075】
〔実験例13〕
実験例1において、天然ゴム(ペールクレープIV号)63質量部を28質量部に、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量17,000)37質量部を72質量部にそれぞれ変更した粘着剤Jを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0076】
〔実験例14〕
実験例1において、天然ゴム(ペールクレープIV号)63質量部を82質量部に、メタクリロイル基を1分子当たり平均2個有するポリイソプレン(分子量17,000)37質量部を18質量部にそれぞれ変更した粘着剤Kを使用した以外は、実験例1と同様に粘着テープを作成した。
【0077】
〔実験例15〕
アクリル酸ブチル(BA)モノマーユニット/2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)モノマーユニット=80/20の質量比からなるアクリル酸エステル共重合体100質量部、アクリル基含有オリゴマー(荒川化学工業社製、ビームセット255)50質量部、コロネートL(日本ポリウレタン社製イソシアネート系架橋剤)4質量部、光重合開始剤(BASF社製イルガキュア184)2質量部を酢酸エチル/トルエン混合溶剤に溶解した粘着剤溶液(粘着剤L)を用意して、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ上に、粘着剤層の乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布・乾燥した。そして、粘着剤層側に、厚さ100μm、1064nmにおける光線透過率91.2%、ヘイズ値1.8%のポリエチレンフィルム基材を貼り合せて、図1に示した構成の粘着テープを作製した。
【0078】
〔実験例16〕
実験例15において、厚さ100μm、1064nmにおける光線透過率91.2%、ヘイズ値1.8%のポリエチレンフィルム基材を、厚さ100μm、1064nmにおける光線透過率80.0%、ヘイズ値10.5%のポリエチレンフィルム基材に変更した以外は、実験例15と同様に粘着テープを作成した。
【0079】
上記のようにして作製した各切削加工用粘着テープを用いて、以下の評価を行った。表1に各粘着テープの粘着剤組成を(表1中の数値の単位は質量部である)、表2にそれぞれの評価結果を示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
〔評価〕
(1)光線透過率およびヘイズ値
測定装置(日本分光株式会社製、近赤外可視紫外分光光度計V−570)を用いて、粘着テープの粘着剤層を設けていない側から光を入射し、波長1064nmにおける光線透過率とヘイズ値を測定した。
(2)粘着力
被着体として、シリコンウェハとエポキシ樹脂パッケージを用意し、これら被着体に対する初期粘着力(紫外線照射前)をJIS Z
0237(2009)に準じて測定した。
(3)ダイシング特性評価
A)ウェハのブレードダイシング
厚さ100μmの8インチシリコンウェハに粘着テープを貼り合わせ、ディスコ社製のダイシングブレードにより、3mm×3mmのチップサイズに切断し、任意の範囲における100個のチップについて、ダイフライ(チップ飛び)の発生数および紫外線照射・エキスパンド後のピックアップ成功数を評価した。
B)ウェハのステルスダイシング
厚さ100μmの8インチシリコンウェハに粘着テープを貼り合わせ、波長1064nmのレーザー光を粘着テープ面側から、5mm×5mmのチップサイズになる切断ラインに沿って入射し、ウェハの内部に改質領域を形成し、任意の範囲における100個のチップについて、紫外線照射・エキスパンド後の切断分離成功数を評価した。なお、レーザー光の照射の走査回数は2回を標準とした。
C)エポキシ樹脂パッケージのダイシング
厚さ800μm、ワークサイズ50mm×100mmのエポキシ樹脂パッケージに粘着テープを貼り合わせ、ディスコ社製のダイシングブレードにより、5mm×5mmのチップサイズに切断し、任意の範囲における100個のチップについて、ダイフライ(チップ飛び)の発生数および紫外線照射・エキスパンド後のピックアップ成功数を評価した。
【0083】
〔評価結果〕
実験例1〜7および9の粘着テープは、ウェハのブレードダイシング、パッケージのブレードダイシングにおいて、ダイフライ(チップ飛び)は全く発生せず、ピックアップも全く問題なかった。また、ウェハのステルスダイシングにおいても、切断分離成功率は95%以上と良好であった。
【0084】
実験例8は、粘着テープの光透過率とヘイズ値がやや劣るため、ステルスダイシングにおいて、切断分離成功率は93%と、実験例1〜7および9と比較してやや劣る結果となったが、ウェハのブレードダイシング、パッケージのブレードダイシングにおいて、ダイフライ(チップ飛び)は全く発生せず、ピックアップも全く問題なかった。
【0085】
実験例10は、紫外線照射後の粘着力の低減効果がやや劣るため、ウェハとパッケージのピックアップ成功率は94%と、実験例1〜7および9と比較してやや劣る結果となったがとなったが、ウェハのステルスダイシングにおいては、切断分離成功率は99%と良好であった。
【0086】
実験例11は、粘着テープの光透過率とヘイズ値がやや劣るため、ステルスダイシングにおいて、切断分離成功率は92%と、実験例1〜7および9と比較してやや劣る結果となったが、ウェハのブレードダイシング、パッケージのブレードダイシングにおいては、ダイフライ(チップ飛び)は全く発生せず、ピックアップも全く問題なかった。
【0087】
実験例12は、粘着テープの光透過率とヘイズ値がやや劣るため、ステルスダイシングにおいて、レーザー光照射回数2回では切断分離成功率は90%を下回ったが、レーザー光照射回数4回とすることで切断分離性効率は90%となり、実験例1〜7および9と比較してやや劣る結果であるものの、ウェハのブレードダイシング、パッケージのブレードダイシングにおいては、ダイフライ(チップ飛び)は全く発生せず、ピックアップも全く問題なかった。
【0088】
実験例13は、初期粘着力が低いため、ウェハのブレードダイシング、パッケージのブレードダイシングにおいて、ダイフライ(チップ飛び)が発生し、特にパッケージのブレードダイシングにおいては、最終的なピックアップ成功率は89%と悪かった。
【0089】
実験例14は、初期粘着力は高いものの、紫外線照射後の粘着力の低減効果が劣るため、ウェハのブレードダイシング、パッケージのブレードダイシングにおいて、ウェハとパッケージのピックアップ成功率は、それぞれ89%、87%と悪かった。また、ステルスダイシングにおいても、切断分離成功率は88%と悪かった。
【0090】
実験例15、16は、パッケージに対する初期粘着力が低いため、パッケージのブレードダイシングにおいて、ダイフライ(チップ飛び)が発生し、最終的なピックアップ成功率は89%と悪かった。また、実験例16は、粘着テープの光透過率とヘイズ値も劣るため、ステルスダイシングにおいても、切断分離成功率は89%と悪かった。
【0091】
以上の結果より、本発明の切削加工用粘着テープは、被切削物のダイシング工程およびパッケージ工程の両プロセスに使用可能であるとともに、レーザー光を用いたダイシング工程にも使用可能であることが分る。
【符号の説明】
【0092】
1 基材
2 粘着層
図1
図2