(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の抵抗測定装置には、以下の解決すべき課題が存在している。すなわち、この抵抗測定装置では、同期整流回路が、入力した交流信号を交流定電流の周波数の半周期ごとに反転させることにより、具体的には、例えば
図9に示すように、入力した交流信号S1を反転させて反転交流信号S2を生成する。次いで、交流定電流に同期した同期信号Stに基づき、同期信号StがHighレベル(同期信号Stの前半の半周期T1)のときには、交流信号S1を出力し、Lowレベル(同期信号Stの後半の半周期T2)のときには、反転交流信号S2を出力することにより、同期整流信号Sreを生成する。続いて、この同期整流信号Sreを平均化して、同期整流電圧(直流電圧)Vrを生成する。この場合、この同期整流電圧Vrは、同期信号Stと交流信号S1とがほぼ同期しているとき(位相差が少ないとき)には、測定対象の直流抵抗分に比例した電圧となることから、この同期整流電圧Vrに基づいて、測定対象の直流抵抗(純抵抗)が測定される。
【0006】
しかしながら、例えば、純抵抗にインダクタンス成分が直列に接続されている測定対象においては、この測定対象に供給している交流定電流と、この測定対象に発生する電圧降下に基づいて生成されて同期整流回路に入力される交流信号との間、つまり、同期信号Stと交流信号S1との間に
図10に示すように位相差が生じ、特に、測定すべき純抵抗がインダクタンス成分に対して小さいとき(インダクタンス成分の影響が大きいとき)には、同図に示すように、この位相差が90°に近くなる。この状態においては、同期整流信号Sreは、同期信号Stの一周期のうちの前半の半周期T1においては、正側部分A1の積分値と負側部分A2の積分値(斜線を付した部分を参照)とがほぼ同じになり、また後半の半周期T2においても、正側部分A3の積分値と負側部分A4の積分値(斜線を付した部分を参照)とがほぼ同じになるため、この同期整流信号Sreを平均化して得られる同期整流電圧Vrは極めてゼロボルトに近い値となる。
【0007】
これにより、例えば、接地抵抗検査のときのように、測定した測定対象の抵抗値(測定地点の接地抵抗)と、予め規定されたしきい値とを比較して、測定した抵抗値がしきい値を超えるときには不良であり、測定した抵抗値がしきい値以下のときには正常であると判別する検査において、本来の純抵抗が大きいために不良と判別すべき測定対象の抵抗値を、正常であると判別する虞があるという解決すべき課題が存在している。なお、同様の課題は、純抵抗にキャパシタンス成分が接続されている測定対象においても発生する。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、インダクタンス成分やキャパシタンス成分が純抵抗成分に接続されている測定対象の純抵抗値を誤測定する事態を回避し得る抵抗測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の抵抗測定装置は、測定対象に交流電流を供給する電流供給部と、前記交流電流と同一周波数で、かつ位相が一致した同期信号を出力する信号出力部と、前記交流電流が前記測定対象に流れているときに当該測定対象の両端間に発生する交流信号を検出して出力する電圧検出部と、前記同期信号および前記交流信号を入力して、当該同期信号の半周期毎に当該交流信号を反転させて出力することによって同期整流信号を生成すると共に、当該同期整流信号を平滑して同期整流電圧として出力する同期整流部と、前記同期整流電圧に基づいて前記測定対象の純抵抗を表示する表示部とを備え
、前記同期整流部は、前記同期整流信号の波形のうちの前記同期信号の前半の半周期および後半の半周期のうちの少なくとも一方における波形についての予め規定された極性側の振幅を当該極性側の交流信号の最大振幅よりも小さい規定値以下に制限する抵抗測定装置
であって、前記同期整流部は、入力した前記交流信号を反転して反転交流信号として出力する反転回路と、入力した当該交流信号および当該反転交流信号を前記同期信号の半周期毎に交互に出力することによって前記同期整流信号を生成する切替回路と、当該同期整流信号を平滑して前記同期整流電圧を生成する平滑回路とを備え、前記反転回路における前記予め規定された極性側の電源電圧の絶対値が前記規定値に規定されている。
また、請求項2記載の抵抗測定装置は、測定対象に交流電流を供給する電流供給部と、前記交流電流と同一周波数で、かつ位相が一致した同期信号を出力する信号出力部と、前記交流電流が前記測定対象に流れているときに当該測定対象の両端間に発生する交流信号を検出して出力する電圧検出部と、前記同期信号および前記交流信号を入力して、当該同期信号の半周期毎に当該交流信号を反転させて出力することによって同期整流信号を生成すると共に、当該同期整流信号を平滑して同期整流電圧として出力する同期整流部と、前記同期整流電圧に基づいて前記測定対象の純抵抗を表示する表示部とを備え、前記同期整流部は、前記同期整流信号の波形のうちの前記同期信号の前半の半周期および後半の半周期のうちの少なくとも一方における波形についての予め規定された極性側の振幅を当該極性側の交流信号の最大振幅よりも小さい規定値以下に制限する抵抗測定装置であって、前記同期整流部は、入力した前記交流信号を反転して反転交流信号として出力する反転回路と、当該交流信号および当該反転交流信号の少なくとも一方の信号についての前記予め規定された極性側の振幅を前記規定値以下に制限して出力する電圧制限回路と、当該電圧制限回路から出力された前記一方の信号、並びに前記交流信号および前記反転交流信号のうちの他方を前記同期信号の半周期毎に交互に出力することによって前記同期整流信号を生成する切替回路と、当該同期整流信号を平滑して前記同期整流電圧を生成する平滑回路とを備えている。
【0010】
また、請求項
3記載の抵抗測定装置は、請求項1
または2記載の抵抗測定装置において、前記表示部は、目盛が表示された表示パネル上において前記同期整流電圧に基づいて指針を駆動して前記純抵抗を指し示すアナログメータで構成されている。
【0011】
また、請求項
4記載の抵抗測定装置は、請求項1
または2記載の抵抗測定装置において、前記同期整流電圧を電圧データに変換するA/D変換部と、前記電圧データで表される前記交流信号の電圧値と前記交流電流の電流値とに基づいて前記測定対象の純抵抗を算出すると共に、当該算出した純抵抗を前記表示部に表示させる処理部とを備えている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1
または2記載の抵抗測定装置では、同期整流部が、同期整流信号の波形のうちの同期信号の前半の半周期および後半の半周期のうちの少なくとも一方における波形についての予め規定された極性側の振幅をその極性側の交流信号の最大振幅よりも小さい規定値以下に制限する。
【0016】
したがって、
これらの抵抗測定装置によれば、測定対象に含まれているインダクタンス成分などが純抵抗に比べて十分に小さく、交流信号が同期信号にほぼ同期した状態となっているときには、測定対象の抵抗値を正確に測定可能としつつ、測定対象に含まれているインダクタンス成分などの純抵抗に対する影響が大きくなり、同期信号に対する交流信号の位相がずれて、両信号間の位相差がほぼ90°になっている状態であっても、本来ゼロオームではない測定対象の純抵抗の抵抗値をゼロオームに近い値として誤測定する事態を確実に回避することができる。
また、請求項1記載の抵抗測定装置によれば、同期整流部の反転回路に対して作動電圧として供給される電源電圧のうちの予め規定された極性側の電源電圧の絶対値を規定値に規定することにより、特別な回路を追加することなく、同期整流信号の波形のうちの同期信号の前半の半周期および後半の半周期のうちの一方における波形についての振幅を規定値以下に制限して、本来ゼロオームではない測定対象の純抵抗の抵抗値をゼロオームに近い値として誤測定する事態を確実に回避することができる。
また、請求項2記載の抵抗測定装置によれば、反転回路、切替回路および平滑回路という同期整流部の基本構成に、交流信号および反転交流信号の少なくとも一方の信号についての予め規定された極性側の振幅を規定値以下に制限して出力する電圧制限回路を追加するという簡単な構成により、本来ゼロオームではない測定対象の純抵抗の抵抗値をゼロオームに近い値として誤測定する事態を確実に回避することができる。
【0017】
また、請求項
3記載の抵抗測定装置によれば、測定対象の抵抗値を表示する表示部をアナログメータで構成したことにより、簡易な構成で抵抗値を表示させることができる。
【0018】
また、請求項
4記載の抵抗測定装置によれば、同期整流電圧を電圧データに変換するA/D変換部と、電圧データで表される交流信号の電圧値と交流電流の電流値とに基づいて測定対象の純抵抗を算出して表示部に表示させる処理部を備えたことにより、表示部をLCDなどのデジタル表示器で構成することができ、測定した抵抗値を確認の容易な数値で表示させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、抵抗測定装置の実施の形態について説明する。
【0024】
抵抗測定装置1は、
図1に示すように、電流供給部2、電圧検出部3、同期整流部4、A/D変換部5、処理部6および表示部7を備え、測定対象8における純抵抗Rの抵抗値Rxを一例として四端子法によって測定する。
【0025】
電流供給部2は、予め規定された一定の電流値(既知)の交流電流I(つまり、交流定電流、本例では、振幅が一定の正弦波電流。以下では、交流定電流Iともいう。)を生成して、測定対象8に供給する。また、電流供給部2は、交流定電流Iと同一周波数で、かつ位相が一致した同期信号Stを生成して出力する。これにより、電流供給部2は、同期信号Stを出力する信号出力部としても機能する。電圧検出部3は、一例として、不図示の交流増幅回路で構成されて、交流定電流Iが供給されたときに測定対象8の両端間に発生する交流信号としての交流電圧Vを検出して出力する(本例では、交流信号S1として出力する)。
【0026】
同期整流部4は、同期信号Stおよび交流信号S1を入力して、同期信号Stの半周期毎に交流信号S1を反転させて出力することによって同期整流信号Sreを生成すると共に、生成された同期整流信号Sreを平滑して同期整流電圧(直流電圧)Vrを出力する。これにより、同期整流部4は、同期検波回路として機能する。
【0027】
本例では一例として、同期整流部4は、反転回路11、切替回路12および平滑回路13を備えて構成されている。反転回路11は、一例として、入力抵抗11aを介して反転入力端子に交流信号S1が入力されると共に、非反転入力端子が基準電位(グランド電位)に接続されて、入力抵抗11aの抵抗値と帰還抵抗11bの抵抗値とで規定される増幅率で交流信号S1を反転増幅して、反転交流信号S2として出力する演算増幅器11cを備えて構成されている。本例では、入力抵抗11aの抵抗値と帰還抵抗11bの抵抗値とが同一に規定されて、増幅率が1に規定されている。また、演算増幅器11cに対して作動電圧として供給される正電源電圧(正極性側の電源電圧)Vcおよび負電源電圧(負極性側の電源電圧)Vdのうちのいずれか一方(この例では、正電源電圧Vc)の絶対値が、交流信号S1の最大振幅よりも高い値に規定され、かつ他方(この例では、負電源電圧Vd)の絶対値が、交流信号S1の最大振幅よりも低い規定値(Vd1)に規定されている。つまり、負電源電圧Vdは、電圧値(−Vd1)に規定されている。
【0028】
この構成により、反転回路11は、
図2,3に示すように、入力した交流信号S1の負側の波形については、等倍で反転増幅して反転交流信号S2の正側の波形として出力する。一方、反転回路11は、入力した交流信号S1の正側の波形については、反転増幅して負極性の反転交流信号S2を生成する際に、絶対値が負電源電圧Vdの絶対値(規定値Vd1)以上となる増幅動作が制限されている。このため、反転回路11は、正極性側の波形が交流信号S1の負側の波形の反転波形となり、負極性側(予め規定された極性側)の波形の振幅が規定値(Vd1)以下に制限(リミット)された反転交流信号S2を生成して出力する。なお、負電源電圧Vdが上記の電圧値(−Vd1)に規定されている反転回路11では、出力される反転交流信号S2の負側の波形の振幅は、実際にはこの電圧値(−Vd1)の絶対値(つまり規定値(Vd1))よりも反転回路11の構成によって定まる値だけ若干小さい値以下に制限されるが、本例では発明の理解を容易にするため、規定値(Vd1)以下に制限されるものとして説明する。
【0029】
切替回路12は、同期信号Stに同期して、入力端子aに入力される交流信号S1と入力端子bに入力される反転交流信号S2とを、同期信号Stの半周期毎に交互に出力端子cから同期整流信号Sreとして出力する。
【0030】
以上の構成により、同期整流部4は、交流信号S1を同期信号Stの半周期毎に反転させると共に、同期信号Stの後半の半周期における波形についての負極性側(予め規定された極性側)の振幅を負電源電圧Vd(予め規定された定電圧の一例)以下に制限して、同期整流信号Sreを出力する。
【0031】
平滑回路13は、一例としてローパスフィルタで構成されて、同期整流信号Sreを平滑することにより、
図1,2,3に示すように、同期整流電圧Vrを出力する。この場合、同期整流電圧Vrは、
図2に示すように、交流信号S1が同期信号Stに同期しているときには、電流供給部2から測定対象8に交流定電流Iが供給される構成と相まって、測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxに比例した電圧となる。
【0032】
A/D変換部5は、同期整流電圧Vrを入力すると共に、その電圧値の絶対値を示す電圧データDv(測定対象8の両端間に発生する交流電圧Vを示すデータでもある)に変換して、処理部6に出力する。処理部6は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、電圧データDvに基づいて測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxを算出する。また、処理部6は、算出した純抵抗Rの抵抗値Rxを表示部7に表示させる。本例では一例として、表示部7は、数値表示可能なLCD(Liquid Crystal Display)などのデジタル表示器で構成されている。このため、処理部6は、純抵抗Rの抵抗値Rxを示す数値を表示部7の画面上に表示させる。
【0033】
次に、抵抗測定装置1の動作について、図面を参照して説明する。
【0034】
この抵抗測定装置1では、電流供給部2が、測定対象8に対して交流定電流Iを供給すると共に、同期信号Stを生成して同期整流部4の切替回路12に出力する。この状態において、電圧検出部3が、測定対象8の両端間に発生する交流電圧Vを検出して、交流信号S1として出力する。
【0035】
同期整流部4では、反転回路11の演算増幅器11cが、上記したように負電源電圧Vdの絶対値が交流信号S1の最大振幅よりも低い電圧に規定された状態で、交流信号S1を反転増幅することにより、正極性側の波形が、交流信号S1の負極性側の波形の反転波形となり、負極性側の波形が、負電源電圧Vdで制限された交流信号S1の正極性側の波形の反転波形となる反転交流信号S2を生成して出力する(
図2,3参照)。
【0036】
切替回路12は、同期信号Stに同期して入力端子aと入力端子bとを出力端子cに交互に接続することにより、入力端子aに入力される交流信号S1と入力端子bに入力される反転交流信号S2とを、同期信号Stの半周期毎に交互に出力端子cから同期整流信号Sreとして出力する。本例では一例として、切替回路12は、
図2,3に示すように、同期信号StがHighレベル(同期信号Stの前半の半周期)T1のときには、交流信号S1を同期整流信号Sreとして出力し、Lowレベル(同期信号Stの後半の半周期)T2のときには、反転交流信号S2を同期整流信号Sreとして出力する。また、平滑回路13は、この同期整流信号Sreを平滑して、同期整流電圧Vrを出力する。次いで、A/D変換部5が、この同期整流電圧Vrを電圧データDvに変換し、処理部6が、この電圧データDvに基づいて純抵抗Rの抵抗値Rxを算出して、表示部7に表示させる。
【0037】
この場合、本例では、反転回路11から出力される反転交流信号S2は、負極性側の波形の振幅が負電源電圧Vdの絶対値(規定値Vd1)で制限されているが、測定対象8に含まれているインダクタンス成分が純抵抗Rに比べて十分に小さい(インダクタンス成分の影響が極めて小さい)ときには、
図2に示すように、交流信号S1が同期信号Stに同期する(つまり、交流信号S1および同期信号Stの位相が一致している。位相差がゼロとなっている)状態となっている。これにより、切替回路12から出力される同期整流信号Sreは、交流信号S1および反転交流信号S2の正側の波形のみが交互に同期整流信号Sreとして出力される(交流信号S1を全波整流したときと同じ波形の信号として出力される)。このため、同期整流部4から出力される同期整流電圧Vrは、測定対象8についての純抵抗Rの抵抗値Rxに比例した電圧となる。したがって、表示部7に表示されている抵抗値Rxを確認することにより、測定対象8の抵抗値Rxを正確に測定することが可能となる。
【0038】
一方、測定対象8に含まれているインダクタンス成分の純抵抗Rに対する影響が大きくなり、例えば、
図3に示すように、交流信号S1が同期信号Stに対してほぼ90°進んだ状態のときには、同期整流電圧Vrは測定対象8についての純抵抗Rの抵抗値Rxに比例した電圧とはならないため、測定対象8の抵抗値Rxを正確に測定することはできない。しかしながら、この状態であっても、本例では、反転交流信号S2の負極性側の波形の振幅が規定値Vd1に制限されているため(つまり、反転交流信号S2の負極性側の波形の最小値が電圧値−Vd1に制限されているため)、切替回路12から出力される同期整流信号Sreは、その波形のうちの同期信号Stの後半の半周期T2における波形(同期信号StがLowレベルのときの波形)についての予め規定された極性(負極性)での振幅だけが規定値Vd1以下に制限された状態となる。
【0039】
これにより、同期整流信号Sreは、同期信号Stの一周期のうちの前半の半周期T1においては、正側部分A1の積分値と負側部分A2の積分値(斜線を付した部分を参照)とがほぼ同じになるものの、後半の半周期T2においては、正側部分A3の積分値と負側部分A4の積分値(斜線を付した部分を参照)とが相違する状態(正側部分A3の積分値>負側部分A4の積分値)となる。このため、同期整流部4の平滑回路13から出力される同期整流電圧Vrは、正側部分A3の積分値から負側部分A4の積分値を減算した値を2で除した値となることから、
図3に示すように、ゼロボルトでない電圧として出力される。したがって、この抵抗測定装置1では、測定対象8に含まれているインダクタンス成分の純抵抗Rに対する影響が大きいときには、測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxについて正確には測定できないものの、本来ゼロオームではない測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxがインダクタンス成分の影響を受けてゼロオームに近い値として測定される事態が回避されている。
【0040】
このように、この抵抗測定装置1では、同期整流部4が、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの後半の半周期T2における波形についての予め規定された極性(本例では負極性)の振幅を規定値Vd1(負電源電圧Vdの絶対値)以下に制限する。
【0041】
したがって、この抵抗測定装置1によれば、測定対象8に含まれているインダクタンス成分が純抵抗Rに比べて十分に小さく、交流信号S1が同期信号Stにほぼ同期した状態となっているときには、測定対象8の抵抗値Rxを正確に測定可能としつつ、測定対象8に含まれているインダクタンス成分の純抵抗Rに対する影響が大きくなり、同期信号Stに対する交流信号S1の位相がずれて、両信号St,S1間の位相差がほぼ90°になっている状態であっても、本来ゼロオームではない測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxをゼロオームに近い値として誤測定する事態を確実に回避することができる。
【0042】
また、この抵抗測定装置1によれば、同期整流部4の反転回路11(具体的には、反転回路11の演算増幅器11c)に対して作動電圧として供給される正電源電圧Vcおよび負電源電圧Vdのうちの、上記した予め規定された極性(本例では負極性)の電源電圧(つまり、負電源電圧)Vdの絶対値を交流信号S1の最大振幅よりも小さい値に規定することにより、特別な回路を追加することなく、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの後半の半周期T2における波形についての負極性側(予め規定された極性)の振幅を規定値Vd1以下に制限することができる。
【0043】
また、この抵抗測定装置1によれば、同期整流電圧Vrを電圧データDvに変換するA/D変換部5と、電圧データDvに基づいて測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxを算出して表示部7に表示させる処理部6とを備えたことにより、表示部7をLCDなどのデジタル表示器で構成することができ、測定した抵抗値Rxを確認の容易な数値で表示させることができる。
【0044】
なお、上記の抵抗測定装置1では、反転回路11を電圧検出部3と切替回路12の入力端子bとの間に配設することで、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの後半の半周期T2における波形についての負極性の振幅を規定値Vd1(負電源電圧Vdの絶対値)以下に制限する構成を採用しているが、図示はしないが、この構成に代えて、電圧検出部3と切替回路12の入力端子aとの間に増幅率が1倍の非反転回路を配設して、この非反転回路に対して作動電圧として供給される正電源電圧および負電源電圧のうちの、上記した予め規定された極性(本例では負極性)の電源電圧(つまり、負電源電圧Vd)の絶対値を交流信号S1の最大振幅よりも低い値(例えば規定値Vd1)に規定することにより、
図4に示すように、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの前半の半周期T1における波形についての負極性の振幅を規定値Vd1(負電源電圧Vdの絶対値)以下に制限する構成を採用することもでき、この構成によっても、両信号St,S1間の位相差がほぼ90°になっている状態であっても、本来ゼロオームではない測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxをゼロオームに近い値として誤測定する事態を確実に回避することができる。なお、以下の説明において、上記した抵抗測定装置1の構成要素と同一の機能を有するものについては同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0045】
また、上記の例では、反転回路11や非反転回路に供給される正電源電圧Vcおよび負電源電圧Vdのうちの、上記した予め規定された極性(本例では負極性)の電源電圧(負電源電圧Vd)の絶対値を交流信号S1の最大振幅よりも小さい規定値(本例ではVd1)に規定することにより、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの前半の半周期T1または後半の半周期T2における波形についての予め規定された極性(負極性)の振幅を規定値Vd1以下に制限する構成を採用しているが、
図5に示す同期整流部4Aのように、反転回路11に供給される負電源電圧Vdの絶対値を正電源電圧Vcの絶対値と同じように交流信号S1の最大振幅よりも高い値(一例として、正電源電圧Vcの絶対値|Vc|と同じ値。つまり、負電源電圧Vd=−|Vc|)に規定して、反転回路11から反転交流信号S2を交流信号S1の反転信号としてそのまま出力させつつ、この反転交流信号S2における上記の予め規定された極性(負極性)の振幅を電圧制限回路14を用いて規定値Va以下に制限する構成(つまり、反転交流信号S2の負極性側の波形が電圧値−Vaを超えて低下しないように制限する構成)を採用することもできる。
【0046】
この電圧制限回路14は、一例として、
図5に示すように、反転回路11の出力(演算増幅器11cの出力端子)と切替回路12の入力端子bとの間に直列に接続された抵抗14a、入力端子bにカソード端子が接続されたダイオード14b、およびダイオード14bのアノード端子と基準電位(グランド電位)との間に高電位側が基準電位に接続された状態で配設された定電圧源14c(電圧値Va)を備えている。ここで、電圧値Vaは、交流信号S1の最大振幅よりも小さい値に規定されている。
【0047】
この構成により、この電圧制限回路14は、ダイオード14bの順方向電圧を無視すれば、反転交流信号S2における正極性側の波形についてはそのまま出力し、負極性側の波形については、その振幅を規定値Va以下に制限して出力することが可能となっている。このため、反転交流信号S2に代えて、この電圧制限回路14から出力される新たな反転交流信号S2a(
図2,3参照)を切替回路12の入力端子bに入力することで、この同期整流部4Aを備えた抵抗測定装置1によれば、電圧制限回路14の分だけ回路部品が増加するものの比較的簡単な回路構成により、反転回路11に供給される負電源電圧Vdの絶対値を交流信号S1の最大振幅よりも小さい規定値Vd1に規定する上記の構成と同様にして、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの後半の半周期T2における波形についての負極性の振幅を規定値Va以下に制限することができる。したがって、この抵抗測定装置1によれば、反転回路11、切替回路12および平滑回路13という同期整流部4Aの基本構成に電圧制限回路14を追加するという簡単な構成で、両信号St,S1間の位相差がほぼ90°になっている状態であっても、本来ゼロオームではない測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxをゼロオームに近い値として誤測定する事態を確実に回避することができる。
【0048】
また、この電圧制限回路14を反転交流信号S2側に配設する構成に代えて、図示はしないが、交流信号S1側、つまり、
図5における切替回路12の入力端子aの前段に配設することもできる。この構成では、電圧検出部3と切替回路12の入力端子aとの間に非反転回路(負電源電圧Vdの絶対値を交流信号S1の最大振幅よりも小さい値に規定した非反転回路)を配設した上記の構成と同様にして、電圧制限回路14が、入力した交流信号S1の正極性側の波形についてはそのまま出力し、交流信号S1の負極性側の波形については、その振幅を規定値Va以下に制限して出力する。したがって、この構成によれば、
図4に示すように、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの前半の半周期T1における波形についての負極性側の振幅を規定値Va以下に制限できるため、上記した構成の作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
また、上記の例では、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの前半の半周期T1における波形、または後半の半周期T2における波形のうちの一方の半周期における波形についての負極性側の振幅を規定値(Vd1またはVa)以下に制限する構成を採用しているが、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの前半および後半の各半周期T1,T2における波形についての負極性側の振幅を共に規定値(Vd1またはVa)以下に制限する構成を採用することもできる。
【0050】
この構成は、例えば、
図1に示す同期整流部4の構成においては、この構成に加えて、上記したように切替回路12の入力端子aの前段に上記の非反転回路を追加することで実現することができる。また、
図5に示す構成においては、この構成に加えて、上記したように切替回路12の入力端子aの前段に別の電圧制限回路14を追加することで実現することができる。また、他の例として、
図6に示す同期整流部4Bのように、切替回路12の後段に電圧制限回路14を配設することでも実現することができる。
【0051】
このように、同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの前半および後半の各半周期T1,T2における波形についての負極性側の振幅を規定値(Vd1またはVa)以下にそれぞれ制限する構成を採用することにより、同期信号Stの前半および後半のうちの一方の半周期(T1またはT2)における波形についての負極性側の振幅のみをこの定電圧以下に制限する構成と比較して、
図7に示すように、負側部分の積分値をさらに減少させることができるため、同期整流部4Bが、同期信号Stおよび交流信号S1間の位相差がほぼ90°になっている状態での同期整流電圧Vrをより高い電圧で出力することができる。したがって、この構成によれば、本来ゼロオームではない測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxをゼロオームに近い値として誤測定する事態をより一層確実に回避することができる。
【0052】
また、上記の例では、電流供給部2が信号出力部としても機能して、同期信号Stを出力する構成を採用しているが、この機能を電流供給部2から削除して、同期信号Stを出力する信号出力部を電流供給部2とは別個に配設する構成を採用することもできる。また、電流供給部2が予め規定された一定の電流値(既知)の交流定電流Iを生成して測定対象8に供給し、処理部6が測定対象8の両端間に発生する交流電圧Vの電圧値を示す電圧データDvに基づいて測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxを算出する構成を採用しているが、この構成に代えて、電流供給部2が未知の電流値の交流電流を生成して測定対象8に供給し、この交流電流の電流値を別途設けた電流計で測定し、処理部6が、この電流計で測定された電流値と、上記の電圧データDvに基づいて測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxを算出する構成を採用することもできる。
【0053】
また、上記の例では、同期整流部4内で生成される同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの前半および/または後半の半周期(T1および/またはT2)における波形についての予め規定された極性(負極性)側の振幅を、この極性側の交流信号S1の最大振幅よりも小さい規定値(Vd1またはVa)に制限する構成を採用しているが、図示はしないが、反転回路11の正極性の電源電圧(つまり、正電源電圧)Vcの絶対値を交流信号S1の振幅よりも小さい値(Vc1)に規定する構成や、電圧制限回路14におけるダイオード14bおよび定電圧源14c(電圧Va)の極性を反対にして接続する構成を採用することにより、同期整流部4内で生成される同期整流信号Sreの波形のうちの同期信号Stの前半および/または後半の半周期(T1および/またはT2)における波形についての予め規定された極性(正極性)側の振幅を予め規定された規定値(Vc1またはVa)以下に制限する構成を採用することもできる。
【0054】
また、上記の抵抗測定装置1では、同期整流電圧VrをA/D変換部5で電圧データDvに変換し、処理部6がこの電圧データDvに基づいて測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxを算出して、LCDなどで構成された表示部7に表示させる構成を採用しているが、アナログメータで表示部7を構成することにより、
図8に示す抵抗測定装置1Aのように、同期整流部4に表示部7を直接接続して、A/D変換部5および処理部6を省いた簡易な構成とすることもできる。この場合、アナログメータとは、可動コイル型電圧計や可動鉄片型電圧計などのように、目盛が表示されている表示パネル上において指針が入力電圧に応じた角度だけ回動する電圧計をいうものとする。なお、抵抗測定装置1Aについては、抵抗測定装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0055】
この抵抗測定装置1Aにおいても、同期整流部4から出力される同期整流電圧Vrは、
図2に示すように、交流信号S1が同期信号Stに同期しているときには、電流供給部2から測定対象8に交流定電流Iが供給される構成と相まって、測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxに比例した電圧となることから、測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxがアナログメータで構成された表示部7に表示される(指針で指し示される)ため、測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxを測定することができる。
【0056】
また、測定対象8に含まれているインダクタンス成分の純抵抗Rに対する影響が大きくなり、同期信号Stに対する交流信号S1の位相がずれて、両信号St,S1間の位相差がほぼ90°になっている状態であっても、
図3に示すように、同期整流電圧Vrはゼロボルトでない電圧として出力されることから、アナログメータで構成された表示部7はゼロオームを指し示すことはない。したがって、この抵抗測定装置1Aにおいても、測定対象8に含まれているインダクタンス成分の純抵抗Rに対する影響が大きいときには、測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxについて正確には測定できないものの、本来ゼロオームではない測定対象8の純抵抗Rの抵抗値Rxがインダクタンス成分の影響を受けてゼロオームに近い値として測定される事態を回避することができる。
【0057】
また、この抵抗測定装置1Aにおいても、同期整流部4に代えて、同期整流部4A,4Bなどの上記した他の構成の同期整流部を使用してもよいのは勿論である。